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ISSN 1880-3032
広 島 大 学 技 術 セ ン タ ー 報 告 集
広島大学
技術センター報告集
第3号
広島大学技術センター報告集 第3号 平成18年度
発行:広島大学技術センター
TEL:082-424-6035 FAX:082-424-5890
URL:http://www.techc.hiroshima-u.ac.jp
18
年度
〒739-8524 東広島市鏡山1丁目1番1号
平成
発行年月:平成19年7月
第3号 平成18年度
表紙の言葉
この表紙は技術センターの各部門がお互いにコミュニケーションを
深めて協調し組織運営にあたる技術センターのイメージです。
巻頭言
技術センター長 藤久保 昌彦
広島大学技術センターが,広島大学に働く技術職員の全学一元化組織として
スタートして3年を経過しました.最初の2年間が,技術センター内の運営体制
あるいは相互協力の基盤作りであったとすれば,この1年間は,これからの技
術支援体制の具体像の構築および対外的な技術交流事業に,その基盤が大いに
活かされた年であったと思います.具体的には,運営会議および企画調整部会
の議論を経て,業務依頼・派遣システムの試案がまとまり,平成19年度からそ
の試行を段階的に開始することになりました.また定員削減への対応の議論を通じて,全学的視野か
ら適材適所に人材を配置する方針を明確化しました.さらに,工作分野,情報支援分野等では,従来
の部局を超えた技術支援が始まっています.しかしながら,これらを実効的な全学システムとして確
立・定着させるためには,試行によるフィードバックを通じた多くの議論が必要であり,これからが
正念場と位置づけています.一方,対外交流事業として,平成18年度は第6回機器・分析技術研究会
と第4回ガラス工作技術シンポジウムを技術センター主催で開催し,全国から多数の参加を得ると共
に活発な技術交流がなされました.これらは,技術センター職員の部門を超えた協力を基になし得た
ものです.
以上述べたように,技術センターとしての各種の体制整備および活動が行われていますが,技術職
員個々にとって最も大切なことは,日々,技術・技能を研鑽し,それを教育・研究支援に具体的に活
かすことに他なりません.またその成果を対外的に伝え,アピールすることが必要です.本年度もそ
うした成果の一部が,この技術センター報告集としてまとめられ,発刊の運びになったことは大きな
喜びです.本報告集を通じて広島大学技術センターの活動内容ならびに職員の技術シーズを広くご理
解いただくことができれば幸いです.
最後に,本報告集の編集にご尽力いただいた木庭亮二委員長を始めとする技術センター報告集編集
委員会の方々,投稿者の方々,そして種々ご援助いただいた学術部学術推進グループの方々に厚くお
礼を申し上げます.
平成19年4月
広島大学技術センター報告集 第3号 i
技術センターを未来に引き継ぐために
技術統括 岩谷 秀秋
技術センターを未来に引き継ぐために,現状把握と目指す将来像について
色々な機会を通じ議論を進めています.今後取り組む課題については将来構想
検討ワーキンググループなどの場で検討され,明確に見えてきたところです.
技術センターの課題
1.技術センターの活力を生む技術支援の創生
1.新しい技術力の開発と成長
1.教育・研究に期待される技術支援の確立
1.教育・研究に対する技術支援の集中と選択
更に検討を要することとして,技術センターへの関心が高まるとともに大学での技術センター活動
が盛り上がり,その活動により技術センターの価値がさらに高まっていく,“持続可能な技術セン
ターづくり”を目指すことが大切です.そのためには最善の技術センター運営が必要不可欠で,技術
センター職員の英知を集結していきたいと思う次第です.技術センター職員の活躍により大学の構成
員としての存在意義を高め,技術センターが総力を挙げて上記の課題に取り組む姿勢を発信しなけれ
ばなりません.
課題の解決については適性配置に基づく正当な評価などの環境整備が急務です.技術センターの連
帯意識を高め,技術力のプラットフォ-ム(土台)を固めて新しい企画に挑戦し,これまで以上に前
進した成果を得なければなりません.実際には,装置の設計製作,コンピュータのプログラム製作,
その他の技術などを開発し,新しい技術支援を通して技術力の向上を目指したいと考えます.また,
ソーシャル・イノベーションにより活性化した技術支援現場をつくり,技術センター職員の仲間が未
来に引き継ぐ堅実な技術センターになることを期待します.今後,世界トップレベルの総合大学を目
指す広島大学の実現に向けて積極的な役目を担えるように技術職員各自が得意とする技術の発展と開
拓に精進してまいりますので,皆さまにはご支援ご協力いただきますようお願いいたします.
平成19年3月
ii 広島大学技術センター報告集 第3号
広島大学技術センター報告集 第3号 iii
目 次
平成18年度技術センター研修会報告
技術センター研修会プログラム……………………………………………………………………………… 1
東京大学工学部・工学研究科 技術発表会 参加報告 ~他機関技術部の動き~
向井 一夫
技術副統括 ………… 3
清水 高
工学部等部門 ……… 7
三原 修
工学部等部門 ……… 11
菅 慎治
原医研部門 ………… 15
137
笹谷 晋吾
原医研部門 ………… 17
有機溶剤と特定化学物質
坂下 英樹
工学部等部門 ……… 19
生理学第2講座による生理学実習について
柿村 順一
医学部等部門 ……… 24
電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)の概要と運用状況
柴田 恭宏
理学部等部門 ……… 28
人力飛行機用 SDV
矢吹 祐司
工学部等部門 ……… 30
廃棄物処理の現状と展望について
ホスティングサービスを利用した工学部第四類 web サイトの構築
X線照射装置の出張出力測定
Cs線源の長時間照射における線量測定
物質化学システム専攻における有機微量元素分析システムについて
エコキャンパスの保全と利用―植物管理室の取り組みと提案―
岩谷 秀秋
技術統括 …………… 34
青山 幹男
理学部等部門 ……… 37
塩路 恒生
理学部等部門
技術研究報告
リン酸アフィニティークロマトグラフィーを用いた
細胞内のリン酸化タンパク質の分離・濃縮法
木下 恵美子 医学部等部門 ……… 39
臨床現場における薬毒物迅速検査システム(連載)
<その6> 15品目の簡便・迅速検査法の開発
西田 まなみ 医学部等部門 ……… 43
iv 広島大学技術センター報告集 第3号
技術センター主催事業
日本岩石鉱物特殊技術研究会 第49回総会・研究討論会を開催して
石佐古 早実 理学部等部門 ……… 47
佐藤 勇
理学部等部門 ……… 49
南 治志
理学部等部門
新谷 博志
理学部等部門
藤原 雅志
理学部等部門
平成18年度機器・分析技術研究会開催報告
藤高 仁
理学部等部門 ……… 50
ビオトープで遊ぼう(水生昆虫の観察)実施報告
―第55回広島大学大学祭に参加して―
塩路 恒生
理学部等部門 ……… 52
青山 幹男
理学部等部門
清水 高
工学部等部門
第四回ガラスシンポジウムを開催して
学外研修報告 ……………………………………………………………………………………………………… 57
学内講習会報告 …………………………………………………………………………………………………… 79
部門班別業務一覧 ………………………………………………………………………………………………… 83
広島大学技術センター報告集 第3号 v
技術センター研修会報告
平成18年度 広島大学技術センター研修会プログラム
開催日時:平成18年11月27日(月) 9:00~17:00
場 所:広島大学医学部 広仁会館 大会議室
9:00~9:05
日程等の説明
9:05~9:10
開会挨拶
9:20~10:15
研修会講演
司会 辻村 智隆(医)
藤久保 昌彦
センター長
座長 石原 博史(副統括)
「 放射線の基礎とセミパラチンスクの被ばく調査 」
10:15~11:05
大会参加発表
向井 一夫(副統括)
石佐古 早実,
研究会等を開催して―実施報告― 休憩
11:20~12:00
大会参加発表
佐藤 勇,藤高 仁(理)
座長 村上 義博(工)
廃棄物処理について
清水 高(工)
―工学研究科のゴミ分別・減量の取り組み―
ホスティングサービスを利用した工学部第四類 web サイトの構築
12:00~13:00
昼食・休憩
13:00~14:00
大会参加発表
(原爆放射線医科学研究所)
座長 勇木 義則(情)
東京大学工学研究科 技術発表会 参加報告
11:05~11:20
星 正治教授
三原 修(工)
座長 湯元 良子(医)
X線照射装置の出力測定
菅 慎治(原)
137Cs 線源の長時間照射における線量測定
笹谷 晋吾(原)
有機溶剤と特定化学物質
坂下 英樹(工)
14:00~14:10
休憩
14:10~15:10
大会参加発表
生理学第2講座による生理学実習について
座長 西田 まなみ(医)
柿村 順一(医)
広島大学技術センター報告集 第3号 1
ビオトープで遊ぼう(水生昆虫の観察)実施報告
―第55回広島大学祭に参加して―
青山 幹男(理),
清水 高(工)
先端物質科学研究科における新入生安全教育について
15:10~15:30
塩路 恒生,
ポスター発表
下岡 丈次(先)
座長 北川 和英(原)
電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)の概要と運用状況
柴田 恭宏(理)
人力飛行機用 SDV
矢吹 祐司(工)
物質化学システム専攻における
有機微量元素分析システムについて
岩谷秀秋(統括)
エコキャンパスの保全と利用
青山 幹男,
―植物管理室の取り組みと提案―
塩路 恒生(理)
15:30~16:00
写真撮影・休憩
16:00~16:40
ポスターセッション
16:40~16:50
伝達・報告
16:50~17:00
閉会挨拶
第3回技術センター研修会が上記のプログラムにて開催されました.
2 広島大学技術センター報告集 第3号
辻村 智隆(医)
技術統括
岩谷 秀秋
東京大学工学部・工学系研究科 技術発表会 参加報告
~他機関技術部の動き~
広島大学技術センター 工学部等部門
向井 一夫
1.はじめに
案内用ポスター
東京大学の技術系職員数は,約690名である.
技術部は,平成2年に部局単位で(名目上の)
組織化が行われたが実質的な業務・運営体制の
変更は無かったようで,法人化後は「教職員の
より一層の活性化を」との観点から,新しい体
制づくり等のため各系研究科単位での技術部組
織の新委員会設置や規則・規程の制定・改正に
ついて教授会で審議・承認されているようであ
る.
その東京大学から技術発表会のメール案内が
あり,それを見た時に『東大の技術職員に,動
きが出た !!』ということを感じた.メール本文
にあるように,これまでは各機関の事務部経由
の郵送で行っていた案内方法を直接技術部に向
けてメール発信し,自発表会をより積極的に広
報(アピール)することとした点,さらに,他
機関の技術職員を招いての“パネルディスカッ
ション”のパートが特別企画されていたこと.
討論の方式としてシンポジウムやパネルディス
2.期間・場所
カッションの形態はよく行われているが,技術
期間:平成18年9月26日
部内の発表会に他機関からのパネラーを入れて
場所:東京大学 工学部新2号館
のパネルディスカッションを着想したことに動
213講義室(大講堂)
きが感じられた.東京大学の技術職員数から見
ると一元化は困難と思っていたし,東京大学の
3.参加者等
場合は,研究大学独自の方法(手段)で運営さ
東京大学工学部・工学系研究科所属技術職員
れて法人化後も組織をどうのこうのということ
71名,東京大学内各学部・研究科19名(学生2
もないと思っていた.
名を含む),他機関(高エネルギー加速器研究
しかし,意見・情報交換を行うに連れて我々
機構,鹿児島大学,東北大学,横浜国立大学,
と共通する悩み・問題点・課題点があることも
東京工業大学,神奈川大学,広島大学)25名,
分り,それらに対する取り組みや情報をお聞き
合計115名.
することができたので報告する.
広島大学技術センター報告集 第3号 3
4.報告及び他機関の状況
よる組織運営・管理に関する報告,③橋本義徳
聴講した第21回工学部・工学系研究科技術発表
氏(KEK =高エネルギー加速器研究機構)によ
会は,口頭発表16件,ポスター発表7件(鹿児島
る大学が取り組んでいる組織化とは異なった方
大学・大角義浩氏発表を含む)と新企画のパネル
向に変革した KEK の技術職についての報告,
ディスカッション(2時間)の構成で行われた.
④細野米市氏(東京大学システム量子工学専攻,
聴講参加者は,開会当初は40~50名で,パネ
技術部調整室委員)による技術職員の処遇につ
ルディスカッションが始まる頃には100名近く
いての経過や現状・あり方を「規則」の観点か
へと特別企画への関心度の高さからか入室者が
ら報告,⑤吉田二郎氏(東京大学環境海洋工学
増えた.発表内容は専門性の高い研究的内容の
専攻,技術調整室委員)による技術職員の自覚
ものが多かったが,設計・測定の支援システム
について基本的な考え方,等が発表された.
や施設来所管理システムの開発談,専攻を越え
た共同発表(共著)では壁材等のアスベストの
パネルディスカッション風景
新検出分析法の試みを学生への教育を兼ねて学
生実験で行った発表もあり,それぞれの専門知
識を活かした技術職員らしさを感じた.技術部
の情報センター(技術部 HP の管理運営や広報
を行う.後述参照)もグループとして積極的に
口頭及びポスター発表にエントリーして報告を
行っていた.発表回数が0~1回の人も多くおら
れ,いろいろ検討も行われている.技術発表会
見直し会議で「全技術職員の参加と全員投稿
鹿児島大学の大角義浩氏は,全国の主な大
(二年に一度をミニマムとする)」等を目標に掲
学・機関の情報を調査されてその収集量は多大
げ,技術職員が参加しやすい大会を目指すとし
なものがあり,東北大学多元研の柴田吉郎氏
てこれらの方針について技術発表会の発表者募
は,強烈なリーダーシップで組織整備をされ,
集開始のお知らせで技術部長を通じて教員にも
高校生に対するインターンシップ制を用いた新
働きかけを行っている.又,表彰制度も,従来
人採用方法等も実施された.KEK の橋本義徳
行われていた“研究科長賞”・“技術部長賞”
氏は,組織化されて30年近くになる技術部が果
が,実行委員及び技術部職員代表によるノミ
たしてきた役割を評価しつつ確立されているは
ネート委員会が最優秀賞として“技術部長賞”
ずの組織にもその構成が研究現場に一致しない
を選定する方法に変更された.
歪みが出てきて,現場の上司(研究者)の評価
前技術部長の田中 知先生の「技術部と技術職
と技術部組織での上司の評価という二重構造等
員への期待」と題した基調講演から始まった“パ
問題点があり組織構成の変更について技術報告
ネルディスカッション”では,他機関から3名と
を出されている.細野米市氏は,規則・法律に
東京大学技術職員から2名のパネラー主張講演,
精通されており,「法」による技術職員の処遇
ディスカッションがあった.主張講演では,①
や変遷等に詳しい.吉田二郎氏は,研究教室系
大角義浩氏(鹿児島大学工学部技術部)による
技術職員の立場から技術職員の処遇を分かりや
全国各機関の調査情報を多く取り入れた技術支
すく説明し,個々の自覚が必要で主体性を持っ
援の変遷とあり方についての報告,②柴田吉郎
た技術部組織の必要性を力説されている.東京
氏(東北大学多元物質科学研究所技術室長)に
大学の教職員数を,表1に示す.事務系職員は
4 広島大学技術センター報告集 第3号
横ばい,技術系職員・教授・助教授は減少,講
(全員で36人),農・医-10数人)には150人位,
師・助手層は大幅増で,技術職員の業務→新助
残りの人数はその他のキャンパスや全国の附置
手への流れが危惧される.(東京大学では,大
研究所におられる.工学部では,以前は,技術
学全体で考えているが,技術職員→新助手につ
職員数が事務職員数より多かったそうだ.
いては未定)技術職員数の概略は,全学692人
工学部・工学系研究科技術部(19専攻,2室,
の中,本郷キャンパス(工-109人,理-22人
1機構)所属の技術職員数は109名.副研究科長
表1 東京大学教職員数(東京大学 HP http://www.u-tokyo.ac.jp/index/b02_03_j.html による)
技術系職員
事務系職員
教 授
助 教 授
講 師
助 手
2003年度
917 人
1458 人
1400 人
1258 人
135 人
1261 人
2004年度
788 人
1449 人
1420 人
1263 人
133 人
1315 人
2005年度
781 人
1443 人
1430 人
1264 人
134 人
1321 人
2006年度
692 人
1445 人
1250 人
915 人
264 人
1525 人
年度比 =06/03
↓ 0.75
→ 0.99
↓ 0.89
↓ 0.73
↑ 1.96
↑ 1.21
が技術部長となられることになっており,①研
部長の押印があれば時間外勤務手続きが可能と
究 ②教育 ③共通 の3基盤部門で構成され,
なった.
技術長職は置かない.技術部調整室で議論され
現在,技術部情報センターでは,
“技術職員情
たことを技術部会に上げていき,構成員の自主
報の公開を目指して”を掲げて担当者4名とアド
性を重視した方法で運営されている.調整室の
バイザー1名の計5名体制(本務とは別)で作業
委員は,6名で構成され,3名を技術部長が,残
を行っておられ,2006年度からは予算も計上で
り3名を技術職員が推薦して信任選挙による選出
きるようになっている.
を行っている.影山和郎技術部長のお話では,
理学部・理学系研究科技術部は,1990(H.2)年
再雇用者には配属先業務の他に共通的業務も手
に技術部組織規程により立ち上げられ,同規程は
伝ってもらう(配属先教員は補充がなかったこ
2006年4月に改正(6月から施行)されている.こ
とを考えると理解してくれる)
.前研究科長は,
の改正に先立ち,2005年度末から理学部・理学系
「研究室だけに所属して仕事をする技術職員の採
研究科技術委員会を設置,中教審での新助手との
用は認めない」と専攻長に宣言され,専攻全体
関係及び定員削減等の状況に対応するため,当面,
や研究科共通の仕事もやる人を採用するという
技術部のあり方,技術職員の位置づけ,予算・研
方針を取られている.
修等を審議するとされている.技術委員会は教員8
2003年度末に技術部長と教職員組合技術系職
名,技術職員4名,事務長で構成され,委員会の下
員部会との懇談会が行われ,技術職員に関する
に技術職員6名+αで構成する運営委員会を置き技
情報公開,職員間の交流不足,業務内容が見え
術部の運営を円滑に行っている.技術委員会の庶
にくいことなどが問題点として取り上げられた.
務は事務部人事係が行う.組織は三系で構成し,
それらの問題点の解消と技術職員情報の公開を
各系に技術長・副技術長を置き任期は2年で再任
促進する目的で技術部 HP を公開することを決定
可,技術職員の配置は技術委員会が専攻長・施設
し,2004年10月に技術部情報センターを立ち上
長の意見を参考にして決める.又,
「各系や部門を
げたそうである.HP 公開準備期間が少なかった
越えての異動も妨げない」
,
「所属と配属先の明確
ことで初期 HP 作成に当たっては外注を行い HP
化」
,
「複数の部門にまたがっての業務もできる」
関連業務もボランティアで行っていたが,技術
とも規定してあるそうだ.運営委員長(技術職員)
広島大学技術センター報告集 第3号 5
は教授会にオブザーバーとして出席することがで
リートが流され,確立しつつある「業務依頼・
き,運営委員会の下に実行委員会を置くこともで
派遣システム」それに伴う「人材育成のための
きる.前述の技術委員会,運営委員会,実行委員
評価システム」の構築に入った今,大学に対し
会は,広島大学技術センターのそれぞれ運営会議,
ても技術職員の主体性を尊重して当事者・大学
企画調整部会,各 WG に相当するものと思われる.
の構成員としての役割を分担させていただきた
技術部長は,理学系研究科技術委員会委員長(2名
いと願っているところです.とはいえ,細かい
の理学副研究科長の中,学術運営委員会委員長-
部分に目をやるとそれぞれに事情があり,越え
評議員-となっていない副研究科長)が充たる.
なければならないハードルが山積みです.それ
技術職員の人事権(昇任等)への関わり度につい
らを一つ一つ改善し,技術センター構成員の皆
ては,現在のところ少ないようだ.
さんが「良くなった,良かった」と実感できる
ことを望み,努力していきたいと思っています
5.おわりに
のでご協力をよろしくお願い致します.
今回の意見・情報交換でも,各技術部で組織
最後に,今発表会参加に際しては,藤久保昌
の運営形態・進み方が異なっていることを大い
彦技術センター長,岩谷秀秋技術統括,企画調
に実感したが,各大学・研究科の持てる条件
整部会各委員,学術部の皆様にご理解をいただ
(教員・事務部の考え方や技術部に対する理解
き,ご了承して下さいましたことに感謝いたし
度・協力度,及び,技術職員の技術力や時のス
お礼を申し上げます.又,こちらの状況説明に
タッフの力等の条件)が出揃ってそれらがマッ
技術センターパンフレットが大いに役立ちまし
チングしたところの技術部が組織として旨く動
たことも合わせてご報告致します.
いていくものと思う.(もちろん個々人の一層
の意識改革も必要条件だが……)
謝辞
鹿児島大学の大角義浩氏も紹介 されている
多くの情報提供をして頂きました,鹿児島大学
ように,平尾公彦先生(前東京大学工学系研究
工学部技術部の大角義浩氏,東京大学工学部技術
科長)は「大学内の各組織のトップは教員であ
部長の影山和郎先生,同技術部の山内政司氏,同
る必然性はない」,「すぐ実現できる訳ではない
理学部技術部 吉田英人氏,に感謝申し上げます.
1)
が,長くその部署に関わってきて経験のある方
が長になるべきです」と言われている.
(http://www.ttc.t.u-tokyo.ac.jp/special/ohzuno.pdf)
技術部組織や技術職員の処遇に対する考え方
参考資料 1)鹿児島大学工学部 大角義浩氏 著
「国立大学における技術支援のあり方-2005-」
への理解度は増しているが,現実はまだまだ課
題が多いと感じる.他機関の方との意見交換の
ポスターセッション会場で
場では,広島大学技術センターの組織化確立へ
の進捗状況は総合的に見て進んでいることをい
つも強く感じ,教員・事務部・技術職員の3本
柱の協力態勢が整っていることに感謝します.
藤久保昌彦技術センター長も,平尾公彦先生と
同じ様な考え方で,「技術職員に主体性を持っ
てもらいたい」と言っておられます.技術セン
ターというビルの建設現場の基礎枠にコンク
6 広島大学技術センター報告集 第3号
(右は,影山和郎 技術部長)
廃棄物処理の現状と展望について
技術センター 工学部等部門
安全衛生管理技術班 清水 高
1.はじめに
本学では学長,役員会をトップマネジメントとする環境マネジメントシステムを構築し,環境目
標・目的の作成などに取り組んでいる.また,施策の実働は部局単位で行うことを基本方針としてお
り,各部局では,環境会議を設置し,様々な活動を行っている.
工学研究科においては,研究室・実験室の整理・整頓,通路・廊下及び非常階段を避難通路として
確保すること,不要物・廃棄物の適正な処理,薬品及び実験廃液の正しい管理を行う等,環境に優し
いキャンパス形成を念頭に廃棄物処理を行っている.
東広島事業場(西条キャンパス)でのゴミ分別は法人本部の事務担当が大枠のルールを定めてい
る.各ダストヤードでは細部の分別方法を取り決めて運営している.著者は東地区エネルギーセン
ターダストヤードを担当しておりその管理内容を紹介する.
廃棄物処理等環境政策に関する行政は広島県の所轄であり,本学の環境政策実務は県の政策に則り
行うこととなる.広島県の環境政策のなかで「環境問題の動向」「環境政策の方向性」が本学の環境
政策実務の指針と捉え紹介する.
2.本学の環境基本理念
本学は環境省から環境報告書を作成すべき事業所の指定をうけ,「環境報告書2006」を公表した.
そのなかで①環境基本理念・行動方針 ②環境マネジメントシステム ③2005年度の目標と実績 ④
環境教育・研究の推進 ⑤社会への貢献 ⑥キャンパスの自然環境の保全 ⑦環境負荷削減への取組
⑧環境リスク低減への取組,を発表している.環境基本理念では,地球環境保全を21世紀の人類最大
の課題であると認識し,教育・研究・社会貢献を中心とした大学の全ての活動・行動を通じて,地域
社会・国際社会との連携の中で環境負荷削減に取組,環境保全に貢献するよう努める.と提言してい
る.
3.工学研究科のゴミの分別・減量化
東広島事業場(西条キャンパス)にはいくつかのゴミ集荷場があり,工学研究科は東エネルギーセ
ンター集荷場を管理している.ここは工学研究科・生物圏科学研究科・東体育館・課外活動施設他4
センターから廃棄物の搬入がある.工学研究科では専属の指導員を1名配置するとともに,ゴミ分別
のルールを策定し,学生・教職員へゴミの分別・省力化の協力を呼びかけている.
ゴミの分別方法・出し方(平成18年5月改訂版)を表1に示す.
表1とゴミ集荷場平面図を1枚のポスターにして掲示すると共に,部局内各専攻事務を通じて各研究
室に配布依頼し,協力を呼びかけている.廃棄物の分別収集のポイントは,産業廃棄物処分業者が収
集を拒む分別をしないことであり,①薬品・油を混入しないこと,又分離出来ない場合には,薬品・
油の成分証明書・分析結果を添付することが必要となる.②薬品を含んだ産業廃棄物を処分する場合
には特定資格を有する処分業者との契約が必要であるため,業者選定の情報収集を必要とする.
広島大学技術センター報告集 第3号 7
表1中の金属関係・粗大ゴミは,年3回程度実施している.これは各研究室・実験室で使用済みの一
斗缶・スプレー缶等の金属,実験・研究・教育で不要となった実験機器やその周辺機材,通常の可燃
ゴミ・プラスチックゴミと分別しているガラス・陶器・瓦礫・廃傘・廃木材・大型布製品等,備品と
薬品関係以外のものを対象にしている.研究室・実験室からの不要物排除及び整理整頓(労働安全衛
生法でいう5S)を進めるために欠かせない施策である.
表1.ゴミの分別方法・出し方(平成18年5月改訂版)
区 分
ゴミの種類
注意事項
持ち込み時間
可燃ゴミ
紙・布・吸い殻・ゴム・ かさばる物はつぶして
(赤色の指定ゴミ袋) 木クズ・残飯
減量する
月曜~金曜
9:00~16:00
ビン・カン
飲 料 用 の 空 き カ ン・ 空 飲料用以外は金属ゴミ・
(青色の指定ゴミ袋) きビン
薬品指定の時
同上
廃プラスチック
(透明なゴミ袋)
プ ラ ス チ ッ ク・ ポ リ バ 付 着 物( 食 べ か す ) が
ケツ・発砲スチロール あれば可燃ゴミ
同上
ペットボトル
(透明なゴミ袋)
飲料用ペットボトル
軽 く 水 洗 い し, キ ャ ッ
プ・ラベルを取る
同上
資源ゴミ
新聞,雑誌,本・書類, 種 類 別 に 分 別 し, 紐 で
ダンボール
くくる
同上
有害ゴミ
廃乾電池,廃蛍光管
バ ッ テ リ ー・ 特 殊 電 池
は担当者へ連絡
同上
回収業者が立ち会う学
薬品関係
実 験 用 容 器 類( ビ ー
部・ 研 究 室 名 を 記 入 す
毎月第1・3水曜
(容器類は洗浄,乾燥後, カ ー, 試 験 管 ) 薬 品 を
る. 薬 品 残 留, 注 射 針 13:00~13:15に受付
ダンボール詰め)
扱った機器類
は受付しない
金属関係
粗大ゴミ
一斗缶,スプレーカン,
実験機器金属・配線類, スプレーカンは必ず穴
ガ ラ ス, 陶 器, 瓦 礫, を あ け る, 備 品 は 持 ち
廃 傘, 廃 木 材, 大 型 布 込まない
製品
年3回実施
備品廃棄
事務手続き完了済みの
少 額 備 品, 消 耗 品 に 管
み 受 付, 固 定 資 産・ パ
理換えした物品
ソコンを除く
年2回
4.不要試薬・不明薬品の処理
本学では平成19年度内に薬品管理システムを導入予定である.このシステムは学内の全ての薬品を
登録管理するもので,既存の薬品を登録することからスタートする.
工学研究科では各研究室・実験室の薬品管理状況の点検を行い,不要薬品・不明試薬の洗い出しを
行った.その結果約1万点に及ぶ薬品・試薬が不要であることが判明した.薬品・試薬には,劇物・
8 広島大学技術センター報告集 第3号
毒物が含まれており取扱いには細心の注意が必要である.著者は専門業者と綿密に事前打ち合わせを
行い,以下の手順により薬品廃棄を行った.①リストアップ:各研究室の担当教員毎に廃棄処分を必
要とする薬品のリスト表を配布し,1品単位で記入依頼し回収集計する.②仕分け:1薬品毎にビニー
ル袋に入れ,ダンボール箱詰めにする.危険薬品等は他の薬品と同一に梱包しない.1箱毎に内容物
のリストを添付する.(作業は各研究室で実施する.ビニール袋・ダンボール箱はリスト集計により
業者が各研究室へ配布する)③集荷:ダンボール詰めの薬品は集荷日まで各研究室で保管する.集荷
スケジュールにより業者が各研究室を順次回収に回り,部局内に指定した場所に集荷する.④梱包・
搬出:業者により薬品を1品ずつラベル等確認のうえ梱包し搬出する.⑤マニフェスト票管理:法令
によりすべての事業者は産業廃棄物の処理を委託する際に産業廃棄物管理票(マニフェスト)を使用
することが義務付けられている.搬出時には管理票 A を受取管理する.最終処分終了確認は管理票
E 票の受領により行う.財務部契約課へマニフェスト A 票から E 票を整え発送し業務完了とした.
5.広島県の環境政策
広島県の環境政策について以下のとおり紹介する.
(1)環境問題の動向
【公害問題から環境問題へ】広島県では,昭和30年~40年代の高度経済成長期においては,瀬戸内海沿
岸を中心に,大気汚染や水質汚濁などの産業型公害の発生や,開発に伴う自然環境の破壊が進行し,大き
な社会問題となった.こうした事態に対処するため,
「広島県公害防止条例」や「広島県自然環境保全条
例」などを制定し,公害の克服や優れた自然環境の保全について相当の成果をあげることができた.
この間,都市化の進展とともに大量生産・大量消費・大量廃棄を基調とした社会経済システムが定
着し,水質汚濁などの都市・生活型公害は,依然として改善が遅れ,さらに,廃棄物排出量が増大す
るなど,環境への負荷を高めてきた.また,地球温暖化やオゾン層の破壊,海洋汚染,野生種の減
少,酸性雨など,地球的規模での環境問題が生じてきた.
このような環境問題に対処するため,「広島県環境基本条例」を制定するとともに,「広島県環境基
本計画」を策定し,環境保全に関する施策を推進してきた.
【国の動向】国のレベルでは,『循環型社会』の構築を目指して「循環型社会形成推進基本法」が制
定され「廃棄物処理法」等の改正とともに,「家電リサイクル法」等のリサイクル関連法令が制定さ
れた.また,都市域における自動車交通公害対策を強化する法令が制定されている.
自然環境の保全については,
「自然再生推進法」
「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」を制定し,
地球温暖化問題への対応については,
「地球温暖化対策推進法」の改正により,国民の取組を強化するた
めの措置が拡充されるなど,一人ひとりのライフスタイルの見直しがより一層求められることになった.
また,持続可能な社会を構築する上で,自発的な環境保全等の取組が重要であることから「環境保
全活動・環境教育推進法」が新たに制定され,各主体が連携し,環境保全の意欲の増進及び環境教育
の推進に努めるよう求められている.
(2)環境政策の方向性
【持続可能な社会を目指して】今日の環境問題の多くが,私たちの日常生活や通常の事業活動に起
因するものであり,私たちは,飛躍的な科学技術の進展と経済の発展により,資源やエネルギーを大
量に消費しながら,便利で豊かな生活を享受してきた.しかし,このことが廃棄物問題や地球温暖化
などの環境問題を引き起こしていることを理解しなければならない.
広島大学技術センター報告集 第3号 9
今,私たちがなすべきことは,私たちの社会を持続可能なものに変えていくことである.これまで
の資源・エネルギーの大量消費に依存した大量生産・大量消費・大量廃棄型のパターンから脱却して
いくためには,ライフスタイルや事業活動のあり方を見直していく必要がある.また,自然を尊重し
自然と共生することにより,将来の世代に良好な環境を継承していく必要がある.
【今後の取組】広島県では,持続可能な社会の実現をめざして,環境基本計画や広島県生活環境の
保全等に関する条例を制定し,「みんなで進める次代のための環境づくり」を施策方針として,次の
施策を重点に推進していくこととしている.
① 地球環境保全対策の推進
② 循環型社会の構築の推進
③ 自然との共生の推進
また,これらの施策の実行性を確保するため,「自主的な環境配慮を実践する人づくり」を進める
ための環境学習の充実・強化や「エコビジネスの育成」による環境技術面からのアプローチの強化等
による「環境保全と創造のための基盤づくり」を進めていくこととしている.
6.おわりに
我が国の環境政策は,公害問題から環境保全へ重点はシフトされ,特に「循環型社会」の構築をめ
ざしている.また,本学の環境基本理念においても,環境負荷削減の取組と環境保全に貢献するとあ
る.工学研究科では本学の基本方針に則り,廃棄物の分別収集のルールを策定し,ゴミの減量とリサ
イクル活動を推進している.
また,労働安全衛生法の適用により「5S」活動の推進と共に,部局内の廊下・非常階段等の避難
経路の確保,研究室・実験室の整理・整頓,薬品の適正管理等を進めている.
本学のリサイクル活動においては,古紙のトイレットペーパー化は成果をあげており,本学の需要
分をほとんどカバーしている.ペットボトルの分別については,近年成果が上がっているが,研究
室・事務室以外のところでは十分とは言えない状況である.
「5S」活動・リサイクル活動をより一層推進するには,本学学生への環境保全教育を進めることが
大切である.しかしながら本学学生の環境問題に対する意識を鑑みると,なかなかに安心出来ない状
況ではないだろうか.そのことは,幼児から小学・中学・高校と続く教育のなかで,環境教育が十分
に行われていない事が想像できる.
西条キャンパスとその周辺地域には,自然豊かで,貴重な動植物が多く生息している.この自然を
有効活用して,自然環境保全の重要性や,大量生産・大量消費・大量廃棄型社会からの脱却の必要性
を伝えなければならない.
本学では,施設マネジメント会議のもとに「環境保全・活用 WG」
(平成18年12月22日付け)を設置
し,この施策立案に着手したところである.技術センターから著者を含め4名が WG メンバーに加わっ
ている.WG 提案の施策により,貴重な自然環境や動植物が保全される事と共に,地域の子供達に,豊
かな自然とふれあう喜びや,次世代に豊かな自然を伝承することの大切さを知ってもらいたい.
参考資料
・広島大学 環境報告書2006
・広島県ホームページ 広島県の環境政策
10 広島大学技術センター報告集 第3号
ホスティングサービスを利用した工学部第四類 Web サイトの構築
技術センター 工学部等部門
建設・環境系技術班 三原 修
1.はじめに
本学の学部教育では,今年度の1年次入学生よ
り,
「教育プログラム」制度が適用されている1).
これに伴い,工学部第四類(建設・環境系)で
は,3つのプログラムを提供しており(図1)
,
入学希望者や高等学校等の教員に対して,入学
後の履修方法やプログラムの詳細について情報
発信するための Web ページが必要になった.
図1:工学部第四類における履修の流れ
本学情報メディア教育研究センター(IMC)で
3.サーバ管理の現状
は,学内の部局等を対象にして,昨年度よりホ
工学部第四類および大学院工学研究科社会環
スティングサービスを提供している2).そこで,
境システム専攻の組織は,旧土木教室,旧 ES
このサービスを利用して工学部第四類のオフィ
教室,旧建築教室(それぞれ,上記のプログラ
シャル Web サイトを新たに構築したが,本稿で
ムを担当)に分かれており,各教室(または研
は,類の概況,サーバ管理の現状,Web コンテ
究室)でそれぞれサーバを管理している.この
ンツの作成過程を交えて,その事例を紹介する.
ため,類(または専攻)全体の Web サイトを
運用する場合,特定の教室等のサーバを利用す
2.入学生の教育プログラムへの配属
ることは,管理面から考えて望ましくない.し
工学部第四類入学生は,教育プログラムへの
かも,これらのサーバは容量に余裕が無いもの
配属が2年次進級時に行われ,図1に示す3つ
が多く,サーバの増設・購入についても予算の
のプログラム(社会基盤環境工学,輸送機器環
制約がある.
境工学,建築)の中から選択することになる.
また,部局等で自ら Web サーバを運用すれ
しかしながら,本学工学部の1年次入学選抜
ば,サーバ管理者に対してセキュリティ上の管
は類単位で一括募集する形態をとっており(第
理責任が問われる.しかし,インシデント発生
四類の総募集定員は135名)
,また,各プログラム
のおそれもあり(深刻な被害の例としては,ク
には標準定員(各45名)が設けられている.した
ラッキングによるフィッシングページの掲載
がって,学生の希望が特定のプログラムに集中
等),セキュリティ対策を100% 完璧に実現す
した場合は,1年次の成績が考慮されて配属先
ることは困難な現状である.
が決定するため,希望に沿えないことがある.
特に第四類では,各プログラムの特徴(カリ
4.ホスティングサービスの利用
キュラム,卒業後の進路等)の差が他の類と比
IMC では現在,サーバ設定・管理ソフトウェ
較して顕著であるため,入学希望者向けに特化
ア HDE Controller(ISP Edition) を 導 入 し た ホ ス
した Web ページを新たに準備して,このこと
ティングサービスを提供している3).前章の理由
を広く周知する必要性が生じた.
により,工学部第四類では類全体でこのサービス
を利用して,Web サイトを運用することにした.
広島大学技術センター報告集 第3号 11
図2:Web ブラウザによる設定メニュー
(HDE Controller 3.5 ISP Edition)
図3:eng4のフォルダ構成(初期状態)
※ * = /home/lcvirtualdomain/eng4.hiroshima-u.ac.jp
(1)サービスの概要
サービス利用者(ユーザ)はバーチャルドメイ
(3)フォルダ構成・アカウント設定
ンの取得によって,Web サーバ,FTP サーバ,
取得したバーチャルドメイン eng 4のホスティ
DNS サーバ,メールサーバ,アカウント管理機
ングサーバに,管理者権限を持つアカウント
能,ログ管理機能,DB 機能等が利用可能である.
(admin)で Web ブラウザ(GUI)または FTP を用
これらの設定は図2に示すような Web ブラウ
いて最初にログインすれば,フォルダ(ディレク
ザ上の GUI から容易に実行することが可能であ
トリ)構成は図3のようになっている.
る.このため,サーバ管理の経験が少ないユーザ
この中に新規アカウントを作成することが可
でも,従来のコマンドベースの場合では難解であ
能であるが,そのフォルダは users 内に生成さ
る設定をわかりやすく行うことができるため,人
れる.このとき,公開フォルダ public_html が
的リソースの浪費が抑えられる.また,運用する
同時に生成されるため,各アカウントのユーザ
サーバ自体のセキュリティレベルが高いため(本
はこのフォルダ内にファイルをアップロードす
学の場合は IMC で一括管理)
,インシデント発生
れば,以下の2種類の内,管理者権限のユーザ
時にも迅速に対応してもらうことができ,安全な
に よ っ て 指 定 さ れ た 方 の URL(// の 直 後 に
サーバ管理を持続させることが可能である.
www. を入れても可)により,即時にファイル
を公開することが可能となる.
(2)バーチャルドメインの取得
・http://eng4.hiroshima-u.ac.jp/users/ アカウント名 /
本学では,部局等の組織単位であれば,申請
・http://eng4.hiroshima-u.ac.jp/~ アカウント名 /
によりこのサービスを利用することが可能であ
さらに,図3に示すように,ルートフォルダ(*)
に
る(現在は1申請につき容量3 GB).そこで,
も public_html が htdocs へのシンボリックリンクと
工学 部第四類では,URL の表示を考慮して,
して初期設定されており,この htdocs については
バーチャルドメイン(hiroshima-u.ac.jp のサブ
直接,http://eng4.hiroshima-u.ac.jp/で公開可能である.
ドメイン)を eng 4として申請・取得した.
そこで,工学部第四類グローバルのアカウント
この eng 4のホスティングサーバに,管理者
(global)に加えて,教育プログラムで Web ページ
権 限 の ア カ ウ ン ト(admin) で Web ブ ラ ウ ザ
を各自管理できるようにする必要性があるため,
(GUI)または FTP を使用して最初にログイン
各プログラム別にアカウント(社会基盤環境工学
すれば,フォルダ(ディレクトリ)構成は図3
プログラムは ceep,輸送機器環境工学プログラム
のようになっている.
は vesp,建築プログラムは absp)を作成した.
12 広島大学技術センター報告集 第3号
図4:工学部第四類グローバルサイトのトップページ
5.Web サイトの構築
・HOME
バーチャルドメイン eng4のサーバ(Web)上
(所在地,問い合わせ,リンク等)
に,工学部第四類の新しい Web サイトを,図
・入学案内
4に示すようなデザインにリニューアルして構
(オープンキャンパス,入学選抜方法等)
築した .
・教育プログラム
4)
(1)コンテンツ構成・URL
(共通教育,各プログラムのサイト)
工学部第四類の Web サイトをリニューアル
・卒業研究・進路
する最大の目的は,入学希望者を対象とした教
(研究室の紹介,進学案内,資格・進路等)
育プログラムの紹介であるため,サイトの構成
・キャンパスライフ
は階層を抑えたわかりやすいものにする必要が
(行事案内,学生支援,主要施設・設備等)
ある.
さらに,各プログラムのトップページへのリ
その結果,グローバル(第四類全体)および
ンクに対するアクセシビリティを考慮して,
各教育プログラム別にコンテンツを用意した上
URL を http://eng4.hiroshima-u.ac.jp/アカウント名/
で,図4のように,Web ページの上部にタブ
の形式で直接入力することによってアクセス可
を2階層に設けて Web サイトを構築した.な
能にするため,図3の htdocs 内から,各アカ
お,サイト内に含まれるコンテンツの構成は次
ウント内の public_html にシンボリックリンク
の通りである.
を設定した.
広島大学技術センター報告集 第3号 13
(2)Flash ムービーの配置
サイトの入り口に当たるトップページは,多く
の訪問者に直接閲覧されるため,そのコンテンツの
配置およびアクセシビリティは非常に重要である.
そこで,トップページ(グローバル)の中央に
は,図4に示すような写真を多用した Flash ムービー
を配置して,各教育プログラムを表現するイメージ
および授業の様子を同時に理解できるようにした.
さらに,ムービーの最後は,入学希望者に対して重
要な情報を掲載したページ(入学案内および教育プ
ログラム)への誘導のためのリンクを目立つように
図5:CSS・JS の適用例(head の部分)
※* =http://eng4.hiroshima-u.ac.jp
出現させることにより,それらのコンテンツに対す
るアクセシビリティの向上を図っている.
6.おわりに
工学部第四類の Web サイトは,IMC のホスティ
(3)Web ページのデザイン・機能
ングサービスの利用を開始して以来,随時修正を
(CSS ファイル・JS ファイルの適用)
繰り返してきた.しかし,掲載しているコンテン
サイト内における各 Web ページのデザイン
ツ(特に,各教育プログラムの部分)の構成につ
は,CSS(Cascading Style Sheets) フ ァ イ ル な
いては,再度検討すべき課題であり,アクセシビ
らびに JS(Java Script)ファイルを,一括して
リティの向上を考慮に入れて改善する必要がある.
適用することにより,図4のような形状に統一
また本学では,セキュリティポリシー施行の関
している.その適用の流れを図5に示す.
係から,ホスティングサービスによる Web サー
CSS では,1つのファイルによって,Web ペー
バ等の利用が普及するものと予測される.そのよ
ジの余白,背景色,フォントのサイズ・色等を個々
うな環境が整えば,専攻・研究室等の Web サイ
に設定することが可能である.したがって,この
トについても,バーチャルドメインを新規取得
CSS ファイルの設定に変更を加えることにより,
後,アカウントを設定(またはサブドメインを取
各 Web ページのデザインの一括更新が容易となる.
得)することにより,一括管理の実現が可能と考
また JS では,さまざまな機能を作成(定義)
えられる.
して各 Web ページに適用することが可能であ
る.その中でも,工学部第四類のサイトでは以
参考 URL
下の各機能を,それぞれ Web ページ内で実現
1)広島大学の教育プログラム(HiPROSPECTS)
するために,JS ファイルを使用している.
http://www.hiroshima-u.ac.jp/prog/
・タブ画像のスワッピング(ボタン機能)
2)広島大学情報メディア教育研究センター
・Flash ファイルのプラグイン(読み込み)
(IMC: Information Media Center)
・ヘッダ等の,各 Web ページに共通する部分
http://www.media.hiroshima-u.ac.jp/
これらの CSS ファイル,JS ファイル,および
3)HDE Controller
タブ画像のファイル(JPG)については,サイト
http://www.hde.co.jp/controller/
内の各 Web ページに共通して使用する.このた
4)広島大学工学部第四類
め,フォルダ(include)を用意して,その中にま
http://eng4.hiroshima-u.ac.jp/
とめることにより,ファイル管理を容易にした.
(http://www.eng4.hiroshima-u.ac.jp/)
14 広島大学技術センター報告集 第3号
X 線照射装置の出張出力測定
技術センター 原爆放射線医科学研究所部門
第二技術班 菅 慎治
1.はじめに
自然科学研究支援開発センター・生命科学実験部門・動物実験部に設置されている小動物 X 線照
射装置は放射線の生体への影響等に関する研究のために使用されている.しかし,この小動物 X 線
照射装置に取り付けていた放射線線量計が故障し正確な放射線照射線量が判らない状態であり,放射
線を用いた研究やその再現性等の問題となる.そこで,今回,原爆放射線医科学研究所・放射線先端
医学実験施設・放射線実験系にある,JARP 型電離箱及びイメージングプレートを用いてこの小動物
X 線照射装置の出力測定を行ったので測定方法及び測定結果を紹介する.
2.材料と方法
今回の測定では JARP 型電離箱(応用技研
C-110 0.6ml)とイメージングプレート(富士
フイルム BAS-IP MS 2040)の2種類の線量計を
用いて行った.JARP 型電離箱は放射線医学総
合研究所で所持する国家2次標準電離箱と比較
校正を行っている電離箱であり,3次標準とし
て中国地方医療照射場の測定の基準となってい
る.本電離箱を用いて,小動物 X 線照射装置
の標準測定条件である管電圧150kV,管電流
5mA,照射距離35cm における照射場中心の線
量率を測定した.更に,イメージングプレート
を利用し,照射場の X 線場のプロファイル測
図1 小動物X線照射装置照射台
定をあわせて行った.自然科学研究支援開発セ
ンター・生命科学実験部門・動物実験部に設置
されている小動物 X 線照射装置照射台を図1に
示す.イメージングプレートの読み出しには遺
伝 子 先 端 放 射 線 実 験 施 設・ 遺 伝 子 実 験 系
BAS2000を利用した.
3.結果及びまとめ
今 回 の 測 定 の 結 果, 中 心 位 置( 照 射 距 離
35cm,管電圧150kV,管電流5mA)における線
量率で31.24±0.34が得られた.また,イメージ
ングプレートを用いた測定より,y 方向には平
図2 IP で測定した X 線装置線量プロファイル
坦であるが,x 方向には12%程度の強度斑がみ
広島大学技術センター報告集 第3号 15
とめられた.また,照射マニュアルでは35cm
射が正しく行えるよう貢献したい.
の照射位置に置いてプロファイルが直径14cm
の円と記されているが,実測では,長径20cm,
4.謝辞
短 径18cm 程 度 の 楕 円 状 で あ っ た. 測 定 プ ロ
自然科学研究支援開発センター檜山英三教
ファイルの例を図2に示す.
授,下村浩助手,技術センター辻村智隆技術
今回の測定結果は,最近行われた本照射装置
長,北川和英技術専門職員,笹谷晋吾技術員,
の照射録の記述と違いがあり,装置付属の線量
原爆放射線医科学研究所先端医学実験施設両角
計が故障した後の照射において異なる線量を照
真里子技術補佐員には測定方法から解析にいた
射していた可能性を示唆するものである.自然
るまでご支援をいただきここに深謝いたしま
科学研究支援開発センターと連携し利用者の照
す.
16 広島大学技術センター報告集 第3号
Cs 線源の長時間照射における線量測定
137
技術センター 原爆放射線医科学研究所部門
第二技術斑 笹谷 晋吾
1,はじめに
現在,低線量・低線量率の生物影響は,急照射影響との相違や適応応答などを理解する為の重要な
テーマとなっている.原爆放射線医科学研究所においても137Csγ 線を用いた低線量率における生物影
響を研究する実験が計画されている.しかしながら,この照射はインキュベータ内で長時間培養細胞
への照射が必要であり,散乱線の影響など不確定な要因も多く通常の方法では正しい線量が決定でき
ない.そのため,今回原爆放射線医科学研究所・放射線先端医学実験施設・放射線実験系にある電離
箱と TLD(熱蛍光線量計:Thermoluminescent Dosimeter)を併用して,まさに試料の位置における線
量測定を行ったので測定方法及び測定結果を紹介する.
2.測定器
本測定では電離箱(図1 キャピンテック社製 PM-30)と TLD(図2 パナソニック社製 UD-170L)の
2種類の線量計を用いて行った.電離箱とは電極ではさまれたガスで満たされた容器である.放射線
の直接,間接的な電離作用を受け,容器内の気体中に生成した電子やイオンがそれぞれの反対電位の
電極に集まり,電気信号として線量を観測する線量計である.また,TLD とは BeO などの結晶に放
射線を照射した後,数100℃に加熱すると吸収線量に比例した蛍光を発することを利用した線量計で
ある.今回用いた電離箱は3次標準電離箱である JARP 型電離箱と比較校正を行っており,精度は1%
以下である(原爆放射線医科学研究所・放射線先端医学実験施設・放射線実験系の JARP 型電離箱は
中国地方医療照射場の測定の基準となっている).本測定の環境であるインキュベータ内のような閉
鎖空間での線量測定は同時測定のため電離箱ではコードと測定器で接続されていることから測定する
ことが難しい.そのため,小型で持ち運びでき,フェーディングが少なく,長時間の使用でも測定値
に対する信頼性が高い TLD を併用した.
図1 電離箱(キャピンテック製 PM-30)
図2 TLD(パナソニック社製 UD-170L)
広島大学技術センター報告集 第3号 17
3.照射及び測定
事前測定として,使用する TLD の内,再現性の良い素子を選び出すため,50個の素子を60Coγ 線で
40cGy 照射し,校正定数を決定する操作を3回行った.この結果を用いて,安定した素子を48個選び
出し,137Csγ線照射場測定に用いた.
線量率測定のための照射体系の概要を図3に示す.電離箱位置における線量率は,電離箱により評
価する.TLD は,電離箱位置,並びに,インキュベータ表面及びインキュベータ内ディッシュ位置
に配置し,それらの位置における線量率の相対関係を評価する.電離箱で評価した線量率と,TLD
による位置ごとの線量率の相対関係より,各位置の線量率を算出する.さらに,これらの値が距離の
2乗に反比例しているかどうか(1/r2則)を検討することにより,散乱線の寄与を評価する.
図3 137Csγ線照射場の模式図
4.結果及びまとめ
今回の測定によりインキュベータ内の試料の線量率は0.0406 cGy/min,0.0040 cGy/min であり,指
示された線量率(0.04 cGy/min,0.004 cGy/min)とほぼ同じであることがわかった.このような結果
から使用したインキュベータ内は散乱線などの影響は少なかったが,材質が異なるインキュベータに
ついては照射条件が異なるため注意が必要である.今回の実験のような環境及び条件における線量測
定において,この測定方法は有効であるが今後ガラスバッジの使用など異なる測定方法についても検
討していきたい.
5.謝辞
本測定にあたり,原爆放射線医科学研究所線量測定・評価研究分野の星正治教授,遠藤暁助教授,
田中憲一助手,放射線先端医学実験施設の北川和英技術専門職員,菅慎治技術主任,両角真里子技術
補佐員には測定方法から解析にいたるまでご支援をいただきここに深謝いたします.
18 広島大学技術センター報告集 第3号
有機溶剤と特定化学物質
技術センター 工学部等部門
安全衛生管理技術班 坂下 英樹
1.はじめに
膚や粘膜を通して吸収され,血流にのって循環
平成16年度からの法人化に伴い,国立大学に
して麻酔作用を生じ,肝臓などにより化学変化
も労働安全衛生法が適用されるようになり,関
を受け,種類により特定部位に体内蓄積される
係法令である有機溶剤中毒予防規則(以下,有
ものがあり,やがて排泄されます.神経障害,
機則と略す)と特定化学物質障害予防規則(以
肝障害,腎障害,造血障害などを起こすことが
下,特化則)の適用も受けるようになりまし
知られています.
た.これを契機に,有機溶剤と特定化学物質に
全ての有機溶剤は神経障害を起こします.メ
よる健康障害を防止するための様々な取り組み
タノール,酢酸メチルは視神経に障害を,ノル
が各大学において行われてきています.
マルヘキサンは多発性神経炎を生じます.クロ
本稿では,代表的な物質を例に挙げながら,
ロホルム,四塩化炭素等の有機塩素化合物と
有機溶剤と特定化学物質の有害性,物理的な性
N,N- ジメチルホルムアミドは肝障害を生じま
質,使用状況,作業環境の改善方法,法規制な
す.また,クロロホルム,四塩化炭素等の有機
どについての概説を試みました.内容の多くは
塩素化合物は腎障害を起こし,尿中蛋白陽性と
成書の要約に過ぎないかもしれませんが,有機
なります.トルエン,キシレンなどは含まれる
溶剤と特定化学物質について考えていただける
ベンゼンにより造血障害を起こし貧血になりま
きっかけとなりましたら幸いです.
す.
2.有機溶剤と特定化学物質
(2) 特定化学物質
有機溶媒のことを工業的には有機溶剤とい
特定化学物質は麻酔や窒息といった急性の障
い,人体に有害であり,かつ広範囲に使用され
害を起こすものがあるほか,体内に吸収されて
ている物質54種類が,労働安全衛生法 におい
種類により異なる部位に一定量蓄積され,気管
て規定されています.大学ではクロロホルム,
支や肺,肝臓,腎臓,造血器官,神経系など吸
アセトン,ジクロロメタン,メタノール等が比
収部位以外に慢性の障害を引き起こすことが知
較的多く使用されています.
られています.
特定化学物質はがんをはじめ,胎児の奇形,神
急性障害として,有機溶剤による麻酔作用,
経や循環器・呼吸器その他の部位に重要な健康障
塩素,アンモニア,一酸化炭素,硫化水素,シ
害を生じることが判明している,または疑いが強
アン化水素による窒息を生じます.
い物質53種類が,労働安全衛生法 において規定さ
慢性障害として,神経系には水銀,鉛,アル
れています.大学ではベンゼン,フッ化水素,ホ
キル水銀,四アルキル鉛,マンガン,二硫化炭
ルムアルデヒド等が比較的多く使用されています.
素などが障害をもたらします.石綿,クロム化
3)
3)
合物,ヒ素化合物の粉じんは気管支や肺にがん
3.有害性
(1)有機溶剤
有機溶剤は,付着部位に炎症などを生じ,皮
を生じます.水銀,ヒ素,一部の有機溶剤は肝
臓に障害をもたらし,黄疸,脂肪肝,肝硬変を
生じます.カドミウム,水銀は,腎臓に働き腎
広島大学技術センター報告集 第3号 19
炎,ネフローゼなどを生じます.ひ化水素,ベ
す.クロロホルムは第1種有機溶剤であり,管
ンゼンなどは造血器官である骨髄を冒したり溶
理濃度は10 ppm(空気1立方メートルに10 ml
血を起こします.
のクロロホルム蒸気),年間使用量は約4トンで
す.以下,第2種有機溶剤のうち概ね1トン以上
4.物理的性質・挙動
使用されている物質を10種類挙げました.
有機溶剤は一般に揮発性が大きく,温度が高
いほど高濃度の蒸気を発散します.空気と一定
の割合で混合すると爆発性混合ガスとなるの
表1 有機溶剤の使用量等
物質の種類
区分
管 理
濃 度
年 間
使用量
クロロホルム
有1
10 ppm
4 ton
ノルマルヘキサン
有2
40
5
ジクロロメタン
有2
50
4
キシレン
有2
50
1
トルエン
有2
50
1
メタノール
有2
200
4
ど違わないため再び床に沈むことは無いため,
イソプロピル
アルコール
有2
200
2
換気が十分ではない場所では,有害な濃度の蒸
酢酸エチル
有2
200
2
気に作業者が長時間ばく露される危険性があり
テトラヒドロフラン
有2
200
1
ます.
ジエチルエーテル
有2
400
1
アセトン
有2
500
7
で,健康への影響だけではなく,火災危険性に
ついても注意が必要です.蒸気の比重が空気よ
り大きく拡散しにくいため,空気の動きの少な
い場所では高濃度のまま床に滞留します.高濃
度の蒸気は時間がたつにつれて拡散して,空気
と混合して上昇してきます.数百 ppm 程度に
希釈された有機溶剤蒸気の比重は空気とほとん
特定化学物質には,常温で気体,液体,固体
である物質がそれぞれあり,物理的性質はそれ
(有1:第1種有機溶剤,有2:第2種有機溶剤)
ぞれ大きく異なります.特定化学物質も作業に
よってエネルギーを与えられて,ガスまたは蒸
特定化学物質は規制の厳しいものから順に第
気( 気 体 ), ミ ス ト( 液 体 ), 粉 じ ん ま た は
1類,第2類,第3類等に区分されています.表2
ヒューム(固体)などの形で空気中に発散し,
のようにフッ化水素,ベンゼンは特定第2類物
呼吸器,皮膚,消化器から人体に侵入して健康
質であり,ベンゼンは特別管理物質でもありま
障害の原因となります.
す.管理濃度はそれぞれ2,及び1ppm であり,
使用量は両者とも0.5トン程度です.ホルムア
5.大学での使用状況
ルデヒドは,特化則ではなくガイドライン4)に
広島大学において使用されている有機溶剤,
より特定作業場における濃度として0.25ppm が
特定化学物質のうち使用量が比較的多い物質に
定められています.
ついて,法令上の区分,管理濃度,年間使用量
大学においては少量多品種の化学物質が使用
について表1に示します.管理濃度とは,有害
されているとよく言われますが,有機溶剤,特
物質に関する作業環境管理の良否を判断する際
定化学物質とも表に挙げた物質は比較的多く使
の管理区分を決定するための指標です.年間使
用されています.使用されている研究室には偏
用量は少し古いデータですが大学全体の値を概
りがあり,大量に使用されている研究室もあり
数で示しています.
ますので,適切な対応を行わなければ健康被害
有機溶剤は規制の厳しいものから順に第1種,
の可能性も考えられます.
第2種,第3種に法令上の区分がなされていま
20 広島大学技術センター報告集 第3号
れます.また,同報告において廃液をポリタン
表2 特定化学物質の使用量等
物質の種類
区分
管 理
濃 度
年 間
使用量
クで保管している間の揮散量も無視できない大
フッ化水素
特2
2ppm
0.5 ton
ベンゼン
特2,特
めた状態で4週間保管した場合,クロロホルム
1
0.5
ホルムアルデヒド
特3
(0.25)
は約5 %,ジクロロメタンは約15 %が揮散する
1
との結果が示されています.また,ふたが開い
(特2:第2類物質,特3:第3類物質,特:特別
管理物質)
6.大気への排出
きさであることが指摘されています.ふたを閉
ている場合には1日でほぼそれに匹敵する量が
揮散してしまうことが報告されています.廃液
の取り扱いと保管場所には注意が必要です.
有機溶剤等の揮発しやすい物質を使用した
時,大気にどのくらいの割合で揮散し作業環境
7.作業環境の改善方法
を汚染するかは大きな問題です.PRTR 排出量
有害化学物質がガスやミスト等として拡散
等算出マニュアル に,工業的に有機溶剤など
し,皮膚,呼吸器などから人体に侵入して蓄積
を使用した場合の大気への排出係数の例が示さ
し,健康障害に至る連鎖を,早い段階で断ち切
れており,いくつか抜粋して表3に示します.
ることが重要です.根本的な対策から順に,有
表からジクロロメタンは溶剤として使用された
害化学物質の代替物質への転換,実験装置・方
場合33.6%が,洗浄の場合89.1 %が蒸発して大
法の改良による有害物発散防止,局所排気装置
気中に放出されることが,ベンゼンは溶剤とし
の使用,全体換気,作業環境測定による管理状
て使用された場合65.8%が大気へ排出されるこ
態チェック,保護具の使用,特殊健康診断によ
とが読み取れます.物質により排出係数は大き
る異常の早期発見と治療,作業行動の改善と
く異なりますが,有機溶剤等については一般的
いった対策が挙げられます.
に非常に大きな割合が大気へ移行すると言えま
同じ使用目的を達成できる有害性のより少な
す.
い物質があるときには,その有害物質の使用を
5)
止めて代替物質へ転換することが最良の対策で
表3 大気への排出係数の例
物質名
区分
トリクロロエチレン
排出係数
(kg/t- 取扱量)
す.例えば,2005年4月から管理濃度がこれま
での10分の1の1ppm に強化された特定化学物
質であるベンゼンは,工業的には原料として使
溶剤
洗浄
有1
979
838
用される以外,溶剤や分析用途には極力使用し
テトラクロロエチレン
有2
643
790
ないようにされているようです.大学でも代替
ジクロロメタン
有2
336
891
物質への転換を進める必要があると思われま
ベンゼン
特2,特
658
―
す.
実験の前に作業手順書を作成することは,有
一方,大学の研究室において使用された場合
害物の発散を最小化する作業内容・作業行動の
の大気への排出量はどうでしょうか.有機溶剤
検討に役立ちます.また,実験室と居室は分け
であるクロロホルムとジクロロメタンについて
ることが望ましいので,増改築・改装等の際に
大気揮散量の推定 が行われていますが,クロ
はぜひご検討下さい.
6)
ロホルムは3~4割程度,ジクロロメタンは5~7
割程度と報告されています.工業的に使用され
8.局所排気と全体換気
た場合とあまり変わらない状況であると考えら
ドラフトなどの局所排気装置は,有害物の発
広島大学技術センター報告集 第3号 21
散源に近いところに吸込み口を設け,有害物が
態で,管理の継続的維持に努めることとされる
拡散する前になるべく発散したときのままの高
状態です.第2管理区分は,気中有害物質の濃
濃度の状態で吸込み,作業者が汚染気流に曝露
度の平均が管理濃度を越えない状態で,作業環
されないように搬送排出する装置であり,作業
境を改善するため必要な措置を講ずるよう努め
環境対策において非常に有効な装置です.第1
るべき状態です.第3管理区分は,気中有害物
種または第2種有機溶剤,第1類または第2類の
質の濃度の平均が管理濃度を越える状態で,直
特定化学物質を使用する場合には局所排気を行
ちに作業環境を改善するため必要な措置を講ず
うことが基本的に義務付けられています.特定
るべき状態です.同時に,有効な呼吸用保護具
化学物質の使用場所をまとめて,ドラフトを効
の使用,健康診断の実施その他労働者の健康の
率的に使用するといった試みは本学でもすでに
保持をはかるため必要な措置を講ずることが求
行われているところです.
められます.
一方全体換気は,有害物質を希釈して排出す
作業環境の状態の把握を,嗅覚などの感覚で
る装置ですが,危険の無い濃度まで有害物の濃
行うことは適切ではありません.管理濃度の低
度を下げることは非常に困難であり,局所排気
い有害物質については危険な濃度でも臭いによ
装置等の補助として使用されるべきものです.
り感知することは困難です.また管理濃度の高
有機溶剤業務については,局所排気装置の設
い物質についても,人間の嗅覚はすぐに臭いに
置が困難な場合に,労働者に送気式マスクまた
慣れてしまい臭いを感じなくなります.
は有機ガス用防毒マスクを使用させることによ
り,全体換気装置の使用が認められています
10.呼吸用保護具
が,必要換気量(表4)を得られるもので無け
健康障害を防ぐには,作業環境の改善を第一
ればなりません.
に行うことが必要です.呼吸用保護具は労働者
の有害化学物質へのばく露をさらに低減させる
表4 全体換気装置の必要換気量
消費する有機溶剤等の区分 換気量 Q(m3/min)
目的等のために使用するのが正しい使い方で
す.
第1種
Q =0.3W
呼吸用保護具は給気式とろ過式に分かれま
第2種
Q =0.04W
す.給気式には送気マスクと空気呼吸器があり
第3種
Q =0.01W
ます.送気マスクはコンプレッサーで新鮮な空
(W は作業時間1時間に消費する有機溶剤等の
量(g))
気を送ります.空気呼吸器は空気ボンベを背負
うタイプです.これらは酸素濃度18 %未満の
環境でも使用できます.2種類以上のガスが混
9.作業環境測定
在する場合や,濃度が不明な場合にはこれらを
作業環境測定は作業環境管理のために行われ
使用します.
ます.定期的に行われる法定の有害物質の作業
ろ過式には防じんマスクと防毒マスクがあり
環境気中濃度の測定は,作業環境測定士が行う
ます.これらは酸素濃度18%未満の環境では使
ことが定められています.作業環境測定の結果
用できません.防じんマスクは粉じん等に有効
の評価は,作業環境の状態を3つの管理区分に
です.粒子捕集効率が99.9 %以上である RL3
区分することにより行われます.
または RS3という規格のものを使用して下さ
第1管理区分は,作業場所のほとんどの場所
い.防毒マスクは吸収缶の種類ごとに有効なガ
で気中有害物質の濃度が管理濃度を越えない状
スが決まっています.よく使用される直結式小
22 広島大学技術センター報告集 第3号
型は濃度0.1%以下の場合にのみ有効です.使
法規制のかかっていない化学物質も多く使用さ
用時間を記録して管理し,破過(吸収剤が飽和
れていると考えられますので,十分な注意が必
して除毒能力を失った状態)前に吸収缶を交換
要です.有機溶剤と特定化学物質に関して取り
することが必要です.
扱いや健康に不安がありましたら,衛生管理
者・産業医にご相談ください.大学における安
11.法規制
全衛生への取り組みは,まだまだ始まったばか
有規則と特化則の要求事項の一部を表5にま
りです.様々な機会を捉えて,継続的に作業環
とめました.有規則では注意事項等を掲示し,
境の改善に取り組んでいく必要があります.
第1種,第2種といった区分を色等により表示し
なければいけません.特化則では立入禁止と飲
参考文献・資料
食禁止の表示が必要です.作業主任者の設置は
1)厚生労働省安全衛生部化学物質調査課編
試験研究業務については除外されますが,業務
(2004)『特定化学物質等作業主任者テキス
内容が試験研究以外なら大学においても必要で
ト』中央労働災害防止協会
す.有機溶剤の第1種,第2種,特定化学物質の
2)厚生労働省安全衛生部化学物質調査課編
第1類,第2類の物質を使用する際には基本的に
(2004)『有機溶剤作業主任者テキスト』中央
局所排気装置を使用する必要があります.局所
労働災害防止協会
排気装置の定期点検は1年以内ごとに1回行うこ
3)“厚生労働省法令等データベースシステム”.
とが必要です.作業環境測定,特殊健康診断は
(労働安全衛生法施行令別表第6の2:有機溶
半年以内ごとに1回行うことが必要です.
<http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/index.html>
表5 法規制の比較
有規則
特化則
掲示
注意事項等
―
表示
区分,色
立入・飲食禁止
作業主任者
剤,別表第3:特定化学物質)
試験研究の業務は除外
局所排気装置
局排定期点検
第1種
第1類
作業環境測定
第2種
第2類
特殊健康診断
4)“職域における屋内空気中のホルムアルデヒ
ド濃度低減のためのガイドライン”
<http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/03/h0315-4.
html>
5)経済産業省・環境省(平成13年4月)『PRTR
排出量等算出マニュアル』p237
6)野村直史 , 水谷聡 , 鈴木靖文他(2004/11/17
-19)『京都大学におけるクロロホルム,ジク
ロロメタンの大気揮散量の推定』廃棄物学会
12.おわりに
研究発表会講演論文集 15回(分冊1):p390
大学では,危険な化学物質であるにもかかわ
~392(廃棄物学会)
らず,工業的にあまり使用されていないために
広島大学技術センター報告集 第3号 23
生理学第2講座による生理学実習について
技術センター 医学部等部門
医学科技術班 柿村 順一
1.はじめに
は次の通りである.
医学部医学科では3年次生前期に専門教育科
まず被検者の皮膚に,辺長1センチメートル
目の一環として「組織細胞機能学」が開講され
内に100区画(各区画の面積は1mm2)が区切ら
ている.これは疾病の原因およびその診断と治
れた方眼印判(図1.A)を押し,測定部位を決
療の原理を理解する上で必要となる生理学,生
定する.その後,痛点を記録する際には刺激針
化学,そして分子生物学の基礎知識を習得する
(図1.B)を,触点・圧点を記録する際には刺激
ことを目的とするものである.これに伴い,生
毛(図1.C)を軽く皮膚に当て(図2),感覚が
理学実習も行われており,生理学第1講座およ
生じた点を図3に示すように,方眼用紙に記録
び第2講座が担当している.本報告では,生理
する.
学第2講座に割り当てられているもののうち,
筆者が担当している項目について紹介する.
なお,医学部医学科のカリキュラムの特徴に
ついては広島大学医学部の web サイトに,組
織細胞機能学の詳細については web シラバス
にそれぞれ掲載されている.
2.実習の概要
生理学実習は4日間の実習が2回行われており
(2006年度は4月および6月),生理学第2講座は8
図1.皮膚感覚計測に使用する道具類.
方眼印判(A)
,刺激針(B)
,刺激毛(C)の写真
項目の課題を担当している.
筆者は「ヒト皮膚感覚の計測」および「視
野・近点の測定」の2項目を担当している.前
者は「触覚・痛覚」,後者は「視覚」を題材と
したものであり,いずれも「感覚系」の項目で
ある.
両項目共に学生に検者・被検者を経験しても
らうように設定しており,得られた結果を基に
レポートを作成・提出させている.
3.実習の各項目について
(1) ヒト皮膚感覚の計測
皮膚上の種々の感覚点の分布およびその差異
を調べることを目的としている.本実習では,
触点・圧点および痛点を取り上げている.方法
24 広島大学技術センター報告集 第3号
図2.皮膚感覚計測の操作
各区画内を順に刺激毛もしくは刺激針で刺激す
る.
行うように,また測定部位の目視を禁じ,先入
観をできるだけ取り除いて計測を行うように指
示している.
図3.皮膚感覚の計測結果
刺激針を用いて記録した痛点の分布(一例)を
示す.
また,皮膚の触圧点の密度の尺度としての2
図5.2点識別閾の計測結果
記録の一例を示す.体の長軸に垂直な方向の計
測値が小さい傾向が認められる.
(2)視野・近点の測定
点識別閾の計測も行っている.方法は次の通り
白色および赤・緑・青各色(所謂,光の三原
である.計測部位において,体の長軸に対して
色)の視野の違いを確認すること,および遠近
平行および垂直な方向にディバイダ(図4.A)
調節の理解を深めることを目的としている.
の両端を一様の圧で接触させる(図4.B).2点
視野の測定は,石原式視野計(図6.A)およ
が接触していると判定した場合には徐々に2点
び各色の円板を取り付けた検査棒(図6.B)を
の間隔を狭め,最終的に「皮膚上の2点に加え
用いて行い,各色を判別できる限界点の角度を
られる刺激を2点として識別できる最小距離」
測定し,記録用紙に記録する.また,白色検査
を求め,記録用紙に記録する(図5).
棒を用いて,盲班の位置を確認する(図7).
近点の測定は,Scheiner の装置に準じたもの
を用いて行っている.これは参考資料を元に,
太さ5mm のプラスチック角棒および厚さ0.5mm
のプラスチック板(共に田宮模型製)を用いて
製作した(図8).手前の衝立板に開けられた二
つの小孔から針を注視させた状態で,針を眼に
近づけると,どのように努力しても針が2本に
図4.2点識別閾の計測
ディバイダ(A)を用い,指先,手のひら,腕
部など複数の部位にて計測を行う(B).
分かれて見えるようになってくる.このとき,
「針が明らかに1本に見え,かつ最も眼に近い場
所」が近点に相当するので,その距離を測定す
る.2006年度の実習の結果では,5センチ前後
それぞれの計測において,指先・腕・額など
の値を示す学生が多かった.近視の割合が高い
複数の部位を学生に選択させ,部位間の比較を
からであろうと考えられる.
広島大学技術センター報告集 第3号 25
図8.近点測定に使用した器具
衝立板の*部に開けられた2つの小孔から,移
動する針(矢印)を注視して測定する.
4.実習を通じて
皮膚を刺激毛で軽く触れた程度の小さな刺激
図6.視野測定に使用する器具
石原式視野計(A)および白色検査棒(B)の
写真.実習には白色のほか,赤・緑・青の三色
の検査棒も使用する.
に対して応答する部位が存在する一方で,2点
識別閾は数センチに及ぶ結果が得られる部位が
あるなど,感覚には鋭さと共に,ある程度の鈍
さも存在するものと考えられる.
触圧覚や痛覚,視覚など受容した感覚に対す
る表現には抽象的に感じられるものもある.さ
らには,その訴えはあくまでも被検者(臨床に
おいては患者様)の主観を基に表現されるもの
である.一方で,訴えを聞く検者(臨床におい
ては医療従事者)も感覚に対して自分なりの判
断基準を持っていると言っても過言ではない.
つまり,同じ「痛い」という表現を聞いても,
どの程度の痛さを想像するかは,人それぞれ異
なってしまう.そのような経緯から,感覚の評
価を明確に数値化することも非常に困難なこと
と考えられる.
本実習を通じて,感覚を表現すること,その
訴えを基に判断することの難しさを少しでも実
感してもらえればと思っている.実習を終えた
学生からも,この点に関して実感できたと言う
図7.視野測定の結果
記録の一例を示す.白色に対する視野が最も広
くなり,緑色に対する視野が最も狭い.
感想が得られており,ある程度の達成感を感じ
ることもできた.
さらには,得られた結果や知見を,他の人に
読んでもらうものとしてまとめる機会は,今後
少なからずあるはずである.そのためのトレー
26 広島大学技術センター報告集 第3号
ニングの一つの機会として捉えてもらえると幸
6.参考資料
いである.
1)広島大学 医学部 第2生理学教室 編 生理学実
今後も実習の更なる充実を目指し,必要に応
じて項目,器具,手法などの改良を行う予定で
ある.
習指針
2)尾崎 俊行 編(1988)生理・薬理学実習書:
(広川書店)
3)星 猛,他 訳(1996)医科生理学展望:(丸
5.謝辞
本実習を行うにあたり御指導,御鞭撻を賜り
ました広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 神経
生理学 緒方宣邦教授に厚く御礼申し上げます.
また,実習のセットアップ,デモンストレー
ションに協力いただきました 同講座 大学院生
鄭泰星氏に深く感謝いたします.
善)
4)覚道 幸男,他 著(1999)歯学生理学実習書
第6版:(医歯薬出版)
5)井出 千束,他 訳(1999)フィッツジェラル
ド神経解剖学:(西村書店)
6)杉 晴夫 著(2003)コメディカルのための生
理学実習ノート:(南江堂)
広島大学技術センター報告集 第3号 27
電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)の概要と運用状況
技術センター 理学部等部門
研究実験技術班 柴田 恭宏
1.はじめに
された X 線分光器(波長分散型 X 線分光器,
広島大学自然科学研究支援開発センター
WDS)を備えているため,Si(Li)の半導体検
(N-BARD)の低温・機器分析部門 物質科学機
出器(エネルギ分散型分光器,EDS)と比較し
器分析部(http://www.sci.hiroshima-u.ac.jp/kiki/)
てエネルギ分解能がよい.
では,10種類以上の分析機器が一元的に管理・
さらに,固体試料を溶液化などして“破壊”
運用され,学内共同利用機器として研究支援の
せず,“非破壊”に近い状態で分析に供するこ
役割を果たしている.電子プローブマイクロア
とができる.ただし,高い分析精度を求める場
ナライザ(EPMA)は学内共同利用機器のひと
合において,電子線を照射する面が鏡面研磨仕
つであり,著者は操作担当者としてその任にあ
上げであることが望ましいので,現実的には試
たっている.
料に対してある程度の加工や調製が必要であ
以下,EPMA の概要と現在の運用状況を紹
る.しかし,分析の目的や精度に対する要求を
介する.
満たす状況であれば,文字通りの“非破壊”分
析も可能である.
2.EPMA の概要
これらの主な特徴に加えて,機器操作が比較
EPMA(Electron Probe MicroAnalyzer)は,固体
的簡単であること,平面での元素分布分析が可
試料表面に細く絞った電子線を照射し,試料と
能であることなども利点として挙げられる.
電子線の相互作用により発生する特性 X 線を
つぎに,EPMA に不向きな試料および分析
検出することで,試料を構成している元素とそ
内容について述べる.
の量を知ることができる分析機器である.固体
電子線照射位置では局所的に温度が上昇し,
試料表面の化学組成分析を行う機器として,大
試料の分解などが起こる場合がある.このよう
学のみならず一般企業および研究機関などで広
な状況下では,単位時間あたりに発生する特性
く利用されている.
X 線の強度が変動する可能性がある.X 線強度
EPMA は様々な分析手法のなかで,表面組
の変動は分析結果に多大な悪影響を与えるた
成分析法として位置づけられており,“ミクロ
め,熱に対して不安定な試料は EPMA に不向
ンオーダーの局所分析”・“測定可能元素の幅広
きといえる.
さ”・“非破壊分析”の3点を機器の特徴として
また,試料や分析条件により値は変わるが,
挙げることができる.
検出限界はおよそ数10ppm~数100ppm なので,
照射する電子線の直径は,一般的な定性・定
微量元素の分析には適さない.ほかにも,ガス
量分析条件であれば1ミクロン程度に細く絞る
の放出量が多い試料は装置内の真空度を悪化さ
ことができ,試料における特性 X 線の発生範
せるため不向きな試料といえるし,ホウ素から
囲の広がりを考慮に入れても,ミクロンオー
酸素までの軽元素は重元素と比較して検出感度
ダーの局所分析が可能である.
が劣るため分析精度がやや落ちる.
また,ホウ素からウランまでの元素すべてを
その他,分析の障害となる様々な要素が存在
検出可能であり,分光結晶と検出器により構成
するが,それらは分析条件の見直しや試料調製
28 広島大学技術センター報告集 第3号
の工夫によって改善できる場合もあるので,文
EPMA の利用に際して,利用者本人が装置
献等で調べていただくか,操作担当者にご相談
を操作する“直接測定”と,操作担当者に分析
いただきたい.
を依頼する“依頼測定”を選択できる.現在の
ところ EPMA には操作担当者が配置されてい
3.運用状況
るので,機器のメンテナンスやトラブル発生時
N-BARD の低温・機器分析部門 物質科学機器
の処理のみならず,依頼測定,分析上の技術相
分析部には新旧2台の EPMA が設置されている.
談,直接測定に必要な技術習得に向けた操作指
新しく導入された EPMA は2003年3月より運用
導などの要望に幅広く応じることができる.た
開始され,装置に付与された機能の充実度の点
だし,マシンタイムが混みあっている状況で,
から稼働率が高い.平成16年度では利用件数
操作技術習得のためだけに長い時間を充てるこ
9374件,利用時間1600時間,平成17年度では利
とは難しく,将来的に直接測定を希望する利用
用件数9442件,利用時間2027時間となっている.
者は,依頼測定の過程でトレーニングを積み,
必要な操作技術を習得した段階で直接測定へ移
利用者の所属は,理学研究科,工学研究科,
行する.
先端物質科学研究科,生物圏科学研究科,教育
学研究科,総合科学研究科と広範にわたり,そ
4.おわりに
のなかで理学研究科が利用時間全体の約7割を
様々な組成分析法が確立している現在では,
占めている.この利用実態は,EPMA に対す
EPMA よりも“空間分解能”,“エネルギ分解
るニーズが理学研究科に多く存在することを示
能”,“検出感度”などの面で優れた分析機器は
していると同時に,学内全体に散在するニーズ
多く,表面組成分析のニーズは寄せられるもの
に対して N-BARD の EPMA が効率的な“受け
の,高分解能・高感度の分析結果を求める利用
皿”の役割を果たしている表れと捉えている.
者に対して,EPMA の能力では十分応えるこ
また,過去に利用実績のない研究分野や研究
とができないケースがたびたび発生している.
室などから装置利用に関する問い合わせがあ
しかし,ある程度の空間分解能およびエネル
り,これは表面組成分析に対する恒常的ニーズ
ギ分解能を備え,主成分あるいは少量成分であ
の存在を示していると思われる.そこで,機器
れば定性・定量分析が比較的容易で,かつ,試
分析講習会実施や HP での広報機会を通じて潜
料調製が非破壊に近い状態で行われるために試
在的ニーズに働きかけ,学内共同利用機器とし
料が本来有する組織と化学組成の対応関係が把
ての役割を果たせるよう努めている.
握しやすいなどの理由から,EPMA は今後も
近年,オープンキャンパスなどの大学施設公
活用され続けると思われる.
開の機会に関連した装置見学およびデモンスト
操作担当者としては,効率的な機器運用への
レーション実施の申し込みが増えている.これ
取り組みや新たな分析技術の習得を通じて,利
らについては,マシンタイムの調整を行い,で
用者の利便性向上により一層貢献したい.
きる限り要望に応じている.
広島大学技術センター報告集 第3号 29
人力飛行機用シャフトドライブ SDV の製作
―試作 SDV から本番機用 SDV まで―
技術センター 工学部等部門
設計・工作系技術班(工学部学校工場)矢吹 祐司
1.SDV 搭載の理由
HUES の人力飛行機は,他のチームにない双
発機なので,単発機に比べ駆動系の『メカニカ
ルロス』が大きいのと単発機以上の『パワー』
が必要になってくる,そこで人間パワーを高効
率で引き出す『SDV』を搭載することと少しで
も伝達効率を良くするため『オールシャフトド
ライブ化』にすることで効率を良くしパワー
UP につながるように『オールシャフトドライ
ブ SDV』を搭載したいという学生の要望があ
り,まずは『駆動系重量』『剛性』『パワーUP
分』のバランスを考えながら試作品を設計・製
作することにした.
『駆動系内蔵オールシャフトドライブ』は,
以前からの私の願望でもあった.
(第1図)SDV 部品各種
また,HUES 4.0は,シャフト&チェーンドライ
2.SDV を人力飛行機用にアレンジ設計
ブを廃止しオールシャフトドライブにするため,
私は , 実物の SDV を見たことがなかったの
SDV 用ギア BOX が必要となる,ギア BOX は,
で,メーカーのホームページのイラストなどを
ペダル取付け幅が自転車と同じかそれ以下になる
参考にして試作段階では , 自転車と同じ感覚で
よう出来るだけ横幅寸法をコンパクトにし,本番
ペダリングが出来るようにと着水時の安全面を
用では,更に SDV 以外の駆動系をすべてカーボ
考えて,本番用では , 更に軽量化を考えて SDV
ンフレームに内蔵するため SDV 用ギア BOX・
に必要な部品(第1図)を人力飛行機用にアレ
SDV 用テンション BOX とドライブシャフト・セ
ンジして設計・製作をしていく .
ンターギア BOX がパイプ内で組立て・取付けが
30 広島大学技術センター報告集 第3号
出来るように,市販品パーツ(スパイラルマイタ
2箇所追加し剛性 UP と高回転域でもスムーズ
ギア・ベアリングなど)の規格表とにらめっこし
にペダリングできるよう回転半径の大きい『ス
て強度・剛性・パーツ寸法・取付け位置・組立て
プロケットの歯数36T』に変更した(第4図).
方法・メンテナンスなどを考え設計する(第2図)
.
(第4図)SDV 試作 Ver,2
(第2図)SDV とギア BOX
(3)SDV 試作 Ver,3
3.SDV の試作
(1)SDV 試作 Ver,1
ペダリングに若干癖が出てくるが,アームの
剛性を完璧にするため従来の関節式アームから
製作条件は,定常プロペラ回転数160rpm,ペダ
『スライド式アーム』に変更しテストした結果,
リング最大ストローク330mm,SDV 関係重量4kg
アーム剛性は完璧・SDV 周りのカーボンコッ
以内で,シャフトドライブ SDV を試作し『不具
クピットフレームの強化は従来の SDV より容
合・改良点』など見るために『在り合わせの材
易にできることが解ったが,スライド式アーム
料』で出来るだけ安価にコンパクトに製作する.
を SDV 試作 Ver,2に取付けるように設計したた
アームは製作途中で剛性の比較をやりたく
めアームがパイロットの脹ら脛を掠めることに
なったので2種類製作したが,捩れ合成の差は
なり不採用になった(第5図).
あまり出なかった.(第3図).
(第3図)SDV 試作 Ver,1
(2)SDV 試作 Ver,2
試作のフレームが剛性に欠けるため補強板を
(第5図)SDV 試作 Ver,3
広島大学技術センター報告集 第3号 31
(4)SDV 試作 Ver,4
用ネジは鉄(S45C)からチタン(BT340)に変更
ペダリングのストロークがパイロットにマッ
し,市販のスパイラルマイタギア(M=2.0,Z=20)
チングしないので『チェーンを68リンク』に変
の材質は,鉄(S45C)で出来ているのでボス部分
更し試作の最小双胴ギア BOX と組み合わせて
の肉を出来るだけ削り落としジュラルミン(7075)
単発の練習台に,試作アーム Ver,3を Ver,2に戻
の段付き軸を圧入して軽量化した(第8図)
.
し双発の練習台として酷使したためとクラッチ
保持部品の強度不足でセンターギア BOX のワ
ンウェイクラッチが破損したが,修理は後回し
にして本番用駆動系の製作を急いだ結果,ク
ラッチ修理を終え Ver,4が完成したのは,2005
年の大会数日前である(第6図).
(第8図)ギア BOX 部品名称
また,SDV アームは剛性 UP と人力飛行機ら
(第6図)SDV 試作 Ver,4
4.ディスタンス用 SDV の製作
しさをアピールするために,カーボン丸パイプ
とアルミ(5056)を使用して製作した,剛性は
完璧なものになった(第9図).
5月に行ったテストフライトの結果,チェーン
&ドライブシャフト駆動系の欠点が判明し試作
SDV 駆動系にもめどがついてきたのと駆動系内
蔵用フレームに使用する市販のカーボン角パイ
プの寸法が決まったのでディスタンス用 SDV と
駆動系の製作を2005年5月下旬頃から開始した .
(第9図)SDV アーム
試作の SDV 用ギア BOX では,フレームパイプ
SDV と駆動系の製作を急ピッチで行って完
の3面に穴をあけてしまうのでフレームの強度が
成したディスタンス用 SDV(第10図),駆動系
出せにくいと学生の要望が有り,スパイラルマイ
がすべて組上がったのは2005年7月9日です.
タギアの組立て方法と BOX 構造の設計を変更し2
面の穴あけ加工だけでいいようにした(第7図)
.
(第7図)ギア BOX
更なる軽量化のため,軸はステンレス(304)
からジュラルミン(7075)に,ベアリング押さえ
32 広島大学技術センター報告集 第3号
(第10図)ディスタンス用 SDV
5.SDV 搭載エルゴメータ
2006年3月に,『SDV とエルゴメータを連結
してトレーニングが行いたい』と学生の要望が
あり,エルゴメータに試作 SDV が搭載できる
ように改造した.(第12図)
(第12図)SDV 搭載エルゴメータ
6.タイムトライアル用 SDV
30回大会は,ディスタンス部門とタイムトラ
イアル部門のダブルエントリーでいこうと人力
飛行機を2機分設計し製作を開始.大会に間に合
(第13図)タイムトライアル駆動系
わすように2006年2月中旬からタイムトライアル
SDV と駆動系を製作したが4月下旬発表の書類
審査の結果,タイムトライアル部門は不合格に
7, 最後に
なったが,駆動系のみ製作を続行した.
2005年から2006年と SDV 搭載の駆動系を製
駆動系の特徴は,ディスタンス機と同じく
作してきて,タイムトライアル用の駆動系は,
SDV 以外すべてフレーム内蔵オールシャフトド
かなり完成度の高い駆動系に仕上がってきてい
ライブ構造で,フェアリング幅を更に狭く(空力
ると思います.そして更に大幅の軽量化をする
を良く)するためとコックピットフレームの軽量
には,予算の都合が有りますが,アルミ(5056)
化のためアームの取付け位置を上部から下部へ移
で製作した部品をマグネシウム合金で作り換え
動,単発機になったため,ワンウェイクラッチを
て,完璧な駆動系にしていきたいと思います.
SDV 用ギア BOX に内蔵,ギア比は2対1(M=1.5
Z=40 Z=20)
,80mm ×60mm 角パイプに内蔵.胴
謝 辞
体桁用ギア BOX は試作の最小双胴ギア BOX に
技術協力をして下さいました(有)オーテッ
スペーサーを取付けて,入力側のスパイラルマイ
ク様と製作協力してくれた広島大学技術セン
タギアには四角錐穴をあけて小径の作業穴だけで
ターの野口靖祐技術職員に感謝の意を表しま
カーボンパイプ内でドライブシャフトが簡単に連
す.
結できるように改良して製作した.
(第13図)
広島大学技術センター報告集 第3号 33
物質化学システム専攻における有機微量元素分析システムについて
技術センター 工学部等部門
情報・化学系技術班 岩谷 秀秋
1.はじめに
有機化合物中の炭素,水素,窒素などの含有量を正確に測定する有機微量元素分析システムは従来
のように基礎化学を支える分析ばかりでなく,有機パイ電子系に基づく機能物質の開発研究に広く利
用され,特に有機電導体の探索に用いられてきた.
2.有機微量元素分析システム
物質化学システム専攻には有機化学の研究を
3.物質化学システム専攻における分析・解析
システム
遂行するための応用化学分析室に有機微量元素
筆者が働いている物質化学システム専攻の応
分析システムを始め,液体 NMR,固体 NMR,
用有機化学研究室では新しい機能をもった多く
質 量 分 析(GC-MS,TOF-MS),X 線 結 晶 構 造
の化学物質を合成している.高度な合成技術を
解析,ESCA 等,先端機器による分析 ・ 解析シ
使って合成した特定用途の目的にかなう新しい
ステムが完備し,昼夜を問わず,データの収集
機能を持つ有機分子材料は物質化学システム専
に務めている.有機電導体の開発研究に使用し
攻の分析・解析システムを利用し,新しい機能
ている有機微量元素分析システムの装置はパー
の発現を確認して評価をしている.応用有機化
キン・エルマーPE 2400(写真1)である.試
学研究室の仕事からみた物質化学システム専攻
料は錫箔に包んで燃焼管(940℃)に落下させ,
の分析・解析システムを図1に示す.
錫の燃焼反応熱(1800℃)により純酸素中で完
全に燃焼される.生成ガスは混合・制御された
4.有機微量元素分析システムの構成と必要性能
後,フロンタルクロマトグラフ法により分離さ
応用化学分析室で使用しているパーキン・エ
れ,熱伝導検出器(TCD)で検出される.
ルマーPE2400型元素分析本体は マイクロプ
ロセッサー技術を採用した分析部(①燃焼部,
②還元部,③ガス混合部,④分離部,⑤検出
部)とデータ処理部の2つの機能がまとめられ
ており,その本体,純正ガス部,試料採取部
(Electrobalance), 計 数 記 録 部(Printer) の4つ
の部で構成されている.有機微量元素分析シス
テムの構成概略(分析部)を図2に示す.また
必要性能を下記に記載する.
写真1 有機微量元素分析システム
34 広島大学技術センター報告集 第3号
図1 分析・解析システム
① 難燃性物質や妨害元素・官能基を含む物質
試薬を用いて有用な新規化合物を合成してい
を多く取扱う為,高温燃焼1800℃以上である
る.また,研究の仕上げになる論文作成(特に
こと.
化学論文受理のジャッジ)に,論文の実験記載
② 個人差による挿入速度の違いから測定誤差
欄の新規化合物には元素分析データが必須であ
を無くする為に試料導入方法については重力
り,有機微量元素分析システム業務が有機化学
を利用した落下方式であること.
の研究に必要不可欠となっている.
③ 分析時間を短縮するため,ガスクロマトグ
応用有機化学研究室では,有機電導体の高電
ラフ法のように前の成分の完全分離を待たず
導体を求めて有機合成化学の立場からカルコゲ
に次の成分定量ができるフロンタルクロマト
ン原子(硫黄,セレン,テルル)を有する拡張
グラフ法の機能があること.
パイ電子系分子を用いる有機電導体の開発をお
④ 燃焼管などのメンテナンスを簡便にするた
こなってきた.有機微量元素分析システムは一
めに,吸収管分離方式よりもカラム分離方式
般的に有機化合物の組成分析に広く利用されて
の機能を有する燃焼管であること.
いるが,有機電導体の開発において同定の測定
手段の一つになっている.現在のところ,有機
5.物質化学システム専攻における有機微量元
素分析システムの役割
合成により新規に得た有機電導体は有機溶媒や
水に溶け難く,再結晶による精製や NMR 測定
NMR,MS,X 線結晶構造解析等とともに有
等は非常に困難である.それ故,構成有機分子
機微量元素分析システムは有機化合物の構造決
である電子供与体,電子受容体ならびにそれら
定に重要な情報を与えてくれる.筆者が所属す
を用いて創った有機電導体には難溶性の化合物
る応用有機化学研究室では有機合成技術を駆使
が多く,有機微量元素分析システムを用いる高
して新しい反応試薬の調製や,その新しい反応
温完全燃焼による生成ガス分析から元素組成
広島大学技術センター報告集 第3号 35
図2 元素分析システムの概略図
比,純度を測定し,その組成結果から電導性分
成理論値(重量%)から±0.3%以内の誤差で
子錯体の有機電導体を確定している.有機微量
あることが要求される.分析測定にあたって常
元素分析システムは有機電導体の開発に必要な
に下記の点について注意を払わなければならな
同定手段であり,カルコゲン原子を有する有機
い.
電導体の開発研究に一役担っている.
① 天秤に関しての清掃,較正
② ガス,試薬の純度,品質管理
6.まとめ
③ ベースラインの安定注視(装置のクセを熟知)
分析測定に提供されるサンプルは量が少な
④ 人為的秤量誤差を防ぐ為の工夫,特に高密
く,モノマー,オリゴマー,ポリマー等
さま
度の強粘性液体試料,揮発性液体試料
ざまな化学構造式をもつ有機化合物である.サ
⑤ 新規有機化合物ができている可能性が高い
ンプルを無駄にしないように分析依頼申し込み
ときの分析測定は NMR や X 線結晶構造解析
書に記載してある推定化学構造式から的確な燃
等と合わせて検討する.
焼条件を決定することが重要です.分析測定対
象の新規有機化合物が論文に記載されるには組
〔参考資料〕
パーキンエルマー分析技術資料 EA
36 広島大学技術センター報告集 第3号
エコ・キャンパスの保全と利用
―植物管理室の取組みと提案―
技術センター理学部等部門
研究実験技術班 青山 幹男,塩路 恒生
1.はじめに
されている里地生物の多くが絶滅危惧生物として
広島大学東広島キャンパスは,西条盆地の中
報告されているが,東広島キャンパスでは約30種
央部に位置する丘陵地を造成して統合移転した.
類の動植物が確認されている.いずれも移転前か
造成前にはアカマツ林やブドウ畑が広がり,谷
ら維持されてきた里地に生存していた生物であり,
あいには溜池や水田が作られていた.この里地
全国的に見ても貴重な種が多く残存している.
環境はキャンパス内の一部に点在して残され,
キャンパスの里地生態系を保全し希少生物を保護
貴重な生物が生息・自生する里山生態系として
することは,地域の文化遺産を守ることでもある.
認識されていた.このため,キャンパスの環境
保全管理をすすめるための基本計画のコンセプ
3.保全の方法
トを「みんなで創る水と緑のエコ ・ キャンパス」
基本的には伝統的な農耕管理にあわせた生態
とし,シンボル的イメージとして「ホタルとギ
系の保全を継続することとする.具体的には
フチョウの舞うキャンパス」を目標に掲げた.
① マツ林を冬に毎年下刈りをして,ササユリ,
エヒメアヤメなどの陽地性植物を保護する.
2.なぜ里地を保全?
② 伝統的な水辺管理と同様に湿地,水路,水田
すべての生物が多様な自然環境に適応し,ま
跡の草刈や土上げを行い,ホタルなどの水生昆
た生物相互の結びつきの中で進化繁栄してき
虫やカエル,サンショウウオなどの保全を行う.
た.その結果,それぞれの生態系ごとの構成種
③ 外来生物のブラックバス,アメリカザリガ
が異なり,生態環境が変化することでその地域
ニなどを駆除し放流を防止する.さらに,帰
に生活していた種が衰退絶滅し,別の種の繁栄
化植物の除草を行う.
が進むこととなる.
④ 在来の野生生物も地理的な遺伝的変異があ
わが国の水田を中心とした農耕文化は,長年の
るため,ホタルやメダカなどの移入による遺
あいだ維持管理されてきた里山と溜池や水路など
伝子攪乱を防止する.
による独特の自然環境を創りだし,そこに生息す
⑤ 生態実験園で賀茂地域の里地植物の植栽展
る動植物が共存していた.しかし,このような生
示を行い,遺伝子プールとして保全する.
態系は,われわれの生活様式の変化により山を利
用しなくなり,農業土木技術の発達により生物の
4.情報の公開と利用
生息が困難で画一的な環境を作り出してきた.ま
キャンパスの生物はまだまとまった記録がそ
た,水質汚濁や富栄養化による環境の変化ととも
ろっていないため,調査と記録を進め情報を公
に外来生物の増殖により大きく影響を受けている.
開する.
国内では絶滅したトキと同様に今日最も絶滅の
さまざまなテーマの観察会を企画し,貴重な
危機にさらされているのが里地の水辺生物といわ
里地生態系に親しむとともに環境問題について
れている.最も身近でその反面絶滅の危険にさら
考える場として利用する.
広島大学技術センター報告集 第3号 37
:
1mm
10
38 広島大学技術センター報告集 第3号
技術研究報告
リン酸アフィニティークロマトグラフィーを用いた
細胞内のリン酸化タンパク質の分離・濃縮法
技術センター 医学部等部門
総合薬学科技術班 木下恵美子
KIKINOSHITA Emiko: Enrichment of phosphorylated proteins from cell lysate using a novel phosphate-affinity
chromatography at physiological pH.
1.はじめに
する.この Phos-tag にアガロースビーズを結合
ヒトゲノム解析の完了とともにクローズアッ
させた Phos-tag アガロースは,リン酸アフィニ
プされるようになったタンパク質の機能解析
ティクロマトグラフィーの担体として私達が開
(プロテオミクス)の中でも,リン酸化タンパ
発したものである(図1A)4).以前に私達はこ
ク質の研究(リン酸化プロテオミクス)は生命
れを用いてリン酸化ペプチドの精製法を確立
科学の重要な課題の一つである.プロテインキ
し, 現 在 Phos-tag ア ガ ロ ー ス は http://www.
ナーゼはヒトでは518種類もの遺伝子が明らか
phos-tag.com において日本国内向けに販売され
にされており,その複雑で多様なネットワーク
ている.
によって行われる生体内のタンパク質リン酸化
反応を理解することは,様々な生命現象や病気
発症メカニズムの解明,さらに病気の治療法の
3.細胞抽出液からリン酸化タンパク質を分離
するクロマトグラフィーの概要
開発につながる.
今回は,細胞抽出液からリン酸化タンパク質
生体内のタンパク質リン酸化反応の全体像を
を分離するカラムとして Phos-tag アガロースを
解析するためには,複雑な生体試料液中に存在
利用する方法を開発した.Phos-tag アガロース
する微量なリン酸化タンパク質を網羅的に分離・
はサンプル量や解析の目的に応じて,スピンカ
濃縮することが重要な技術となる.本稿におい
ラム法(スモールスケール)とオープンカラム
て,私達の研究グループで開発したリン酸基を
法(ラージスケール)を選択できる(図1A).
捕捉する機能性分子のフォスタグ(Phos-tag)
カラム操作の流れと使用バッファーを,図1B
を用いた細胞抽出液中のリン酸化タンパク質の
に示す.
分離・濃縮方法を報告する
様々なタンパク質が混在する複雑な試料の分
1)
.本法の長所は,
2,3)
生体試料からリン酸化タンパク質を変性させる
離においては,ペプチドの分離に用いた条件を
ことなく分離・濃縮できることであり,溶出し
大きく改善する必要があった.細胞抽出液を試
たリン酸化タンパク質は様々な解析方法に適用
料とする際の問題点は,目的としないタンパク
できる.
質が非特異的に吸着してしまうことと,結合し
た目的のタンパク質が溶出困難なことである.
2.リン酸アフィニティークロマトグラフィー
担体としての Phos-tag アガロース
非特異的結合の原因として,Phos-tag と酸性タ
ンパク質のカルボン酸基との親和性やアガロー
Phos-tag は,2つの亜鉛イオンを持つ錯体化
ス本体とタンパク質の静電気的結合が考えられ
合物で,中性 pH の水溶液中においてリン酸モ
たが,結合バッファーに1M の酢酸ナトリウム
ノエステルイオン(R-OPO3 )を選択的に捕捉
を添加することによって,酢酸イオンによるカ
2-
広島大学技術センター報告集 第3号 39
図1 Phos-tag アガロースを用いた細胞抽出液からのリン酸化タンパク質分離の概略(文献3より転載)
ルボン酸基との結合阻害,及びイオン強度増大
による静電気的結合の緩和の両方の効果を得
4.EGF 刺激後の A431細胞抽出液からのリン
酸化タンパク質分離・濃縮例
た.また,細胞抽出液には,Phos-tag とリン酸
実施例として,細胞内タンパク質リン酸化反
基の結合を阻害する可能性のある試薬(EDTA,
応についてよく研究されている EGF 刺激後の
界面活性剤,バナジン酸など)が含まれる場合
A431細胞の抽出液からリン酸化タンパク質を
が多い.したがって,細胞抽出液に対して4倍
分 離, 濃 縮 し た 結 果 を 示 す.EGF 刺 激 し た
量以上の結合バッファーを混合したサンプルを
A431細胞(107個)を,Tris-buffered saline(TBS)
カラム容積の1.25倍を超えないように添加する
で 洗 浄 後,0.5mL の 細 胞 溶 解 液(50mM Tris-
ことで,結合至適条件を維持した.溶出におい
HCl(pH7.4),0.15M 塩 化 ナ ト リ ウ ム,0.25%
ては,Phos-tag とリン酸基の結合を無機リン酸
デ オ キ シ コ ー ル 酸 ナ ト リ ウ ム,1.0%NP-40,
の添加によって競合的に解離させるが,タンパ
1mM EDTA,1mM PMSF,各1µg/mL アプロチ
ク質サンプルの場合,タンパク質とカラム担体
ニン,ロイペプチン,ペプスタチン,1mM バ
との静電気的な結合を解除するような適切な塩
ナジン酸ナトリウム,1mM フッ化ナトリウム)
を添加する必要があった.塩化ナトリウムで高
で溶解し,2mg/mL のタンパク質濃度の抽出液
い溶出効果を得られたため,溶出バッファーは
を調整した.
10mM のリン酸緩衝液と1M の塩化ナトリウム
図2A に,20µg のタンパク質を含む細胞抽出
を添加することにした.
液をスピンカラム法(ゲル容積50µL)で分離
し,素通り・洗浄画分と溶出画分を分析した結
果を示す.各画分を限外ろ過ユニットで濃縮し
40 広島大学技術センター報告集 第3号
図2 EGF 刺激後の A431細胞抽出液からのリン酸化タンパク質の分離・濃縮(文献2および3より改変・転載)
て半量づつを SDS-PAGE,および抗リン酸化チ
抽出液をオープンカラム法(ゲル容積1mL)で
ロシン抗体を用いたウエスタン解析に供した.
分離した結果を示す.分離前の細胞抽出液と溶
溶出画分のタンパク質量は,素通り・洗浄画分
出 画 分 を1レ ー ン あ た り の タ ン パ ク 質 量 が
のそれよりも少なかった.一方,チロシンリン
0.5-1µg,素通り・洗浄画分は2.5µg になるよう
酸化タンパク質はほぼ全て溶出画分に得られ
に SDS-PAGE に供した.ゲル染色像(a)から,
た.これは,Phos-tag アガロースがリン酸化タ
分離前および各画分の3者のバンドパターンが
ンパク質を特異的に捕捉したことを示してい
異なる事が確認できた.溶出画分の22kDa 付近
る.図2B に,0.5mg のタンパク質を含む細胞
の明瞭なバンドを切り出し,MS 解析を行なっ
広島大学技術センター報告集 第3号 41
た結果,リン酸化タンパク質として報告されて
マトグラフィー法ではタンパク質を変性させる
いるトランスジェリン2であることが分かった.
条件を用いるためにその後に適用できる解析法
さらに EGF 刺激によってリン酸化レベルが上
が限られたが,本法はその問題点を解決する技
昇することが知られている MAPK,SHC,お
術といえる.
よび Erb2/HER2の3種類のタンパク質の抗リン
Phos-tag を用いた技術は本稿で報告した以外
酸化抗体を用いたウエスタン解析から(b-d),
にも,PVDF 膜上のリン酸化タンパク質を化学
分離前の細胞抽出液ではシグナルが弱い,また
発光シグナルとして検出するウエスタン解析
は非特異的シグナルとの区別がつかない結果
法5),タンパク質のリン酸化状態の違いを移動
だったものが,溶出画分では明瞭なシグナルと
度の違いとして分離する電気泳動法5-6),遺伝
して検出でき,これらのリン酸化タンパク質を
子の一塩基多型(SNP)をタイピングするた
効果的に濃縮できたことが示された.図2C に,
めの電気泳動法7) なども開発しており,Phos-
オープンカラム法で得た各画分のタンパク質
tag 技術が今後の生命科学の広い研究分野で大
(20µg)を2次元電気泳動解析した結果を示す.
きく貢献することと期待している.
Pro-Q Diamond リン酸化タンパク質ゲル染色と
SYPRO Ruby 全タンパク質ゲル染色の比較から
参考文献
も,Phos-tag アガロースカラムによってリン酸
1)Kinoshita E, Takahashi M, Takeda H, Shiro M,
化タンパク質が特異的に分離されたことが証明
Koike T.:Dalton Trans., : 1189-1193, 2004
された.2次元電気泳動ゲルにおいてリン酸化
2)Kinoshita-Kikuta E, Kinoshita E, Yamada A,
タンパク質が明瞭なスポットとして確認できる
Endo M, Koike T: Proteomics, 6 : 5088-5095,
ことは,その後の MS 解析での網羅的解析など
2006
に有効であろう.図2D に,オープンカラム法
3)木下英司 , 木下恵美子,小池 透 : 羊土社,
で得た各画分の収量を示す.Phos-tag アガロー
バイオテクノロジージャーナル,7, 217-220,
スカラムで50% のタンパク質を非リン酸化物
2007
として排除し,22% のタンパク質を溶出画分
4)Kinoshita E, Yamada A, Takeda H, Kinoshita-
に得た.ロスの原因は,アガロースビーズに吸
Kikuta E, Koike T: J. Sep. Sci., 28: 155-162,
着するタンパク質があることや,限外ろ過ユ
2005
ニットで各画分を濃縮する操作によって失われ
ることが考えられる.
5)Kinoshita E, Kinoshita-Kikuta E, Takiyama K,
Koike T: Mol. Cell. Proteomics, 5: 749-757, 2006
6)Kinoshita-Kikuta E, Aoki Y, Kinoshita E, Koike
5.まとめ
Phos-tag アガロースを用いたリン酸アフィニ
ティーカラムクロマトグラフィーによって,細
T: Mol. Cell. Proteomics, 6: 356-366, 2007
7)Kinoshita E, Kinoshita-Kikuta E, Koike T: Anal.
Biochem., 361:294-298,2007
胞抽出液から効果的にリン酸化タンパク質を分
離・濃縮する方法を確立した.この方法はタン
謝辞
パク質を変性させない条件で操作を行うという
この研究は広島大学大学院医歯薬学総合研究
特徴を持つので,得られたリン酸化タンパク質
科創薬科学講座 小池 透 教授,木下英司 は多様な解析法と組み合わせた網羅的リン酸化
助教授のご指導のもとに行ったものであること
タンパク質研究に適用できる.市販されている
を銘記し,心より感謝いたします.
カラムなど,既存のリン酸アフィニティークロ
42 広島大学技術センター報告集 第3号
臨床現場における薬毒物迅速検査システム(連載)
<その6> 15品目の簡便・迅速検査法の開発
技術センター 医学部等部門
医学科技術班 西田まなみ
1.はじめに
に誰もが入手可能な市販の検査キットを組み合
本シリーズの目的
1)
で示したように,中毒の
原因となる物質がわかれば適切な治療を施すこと
わせ,生体試料中の中毒原因物質15種が迅速に
検査できるように工夫3)した(写真1)
.
ができるが,何を摂取(暴露)したのかわからな
いときには,患者の試料等から原因となる物質を
分析する必要がある.迅速さが求められる医療現
場では,簡便で迅速な検査法を用いて中毒原因物
質の推定とある程度の量的な“あたり”をつけ
て,治療指針(診断)の一助とすることが求めら
れている.これらの検査結果と治療法の積み重ね
により,同様な中毒が発生した際に有効な治療が
可能となる.原因物質が推定できれば,確認試験
図1 中毒治療に役立つ迅速検査法
と併せて定量を行い,時系列血液(血漿)濃度に
より適切な治療指針が得られる.治療薬物モニタ
2.迅速検査法
リング(TDM)は歴史があるが,試料中の原因
上記15品目を高価な分析機器を用いないで使
物質分析はまだ充分ではない.
用する器具類が簡単に入手できる迅速な検査法
中毒を起こす化学物質はわれわれの身の回り
として,市販されている検査キット(環境用,
には数万とも言われているが,これらの物質を
生体試料用など)を利用する.15品目検査用の
すべて分析することは不可能に近い.日本中毒
試料として血清(アセトアミノフェン,テオ
学会分析委員会(旧分析のあり方検討委員会)
フィリン),全血(青酸化合物)および尿(上
では,1)死亡例が多い中毒,2)分析が治療
記以外)を用いる.
に直結する中毒,3)臨床医から分析依頼の多
い中毒の観点から,分析結果が治療に役立つと
(1)メタノール
される中毒原因物質15品目(1 . メタノール,
・北川式検知管;光明理化学工業(株)
2 . バルビタール系薬物,3 . ベンゾジアゼピン
本検知管はメタノールが酸性条件下でクロ
系薬物,4 . 三・四環系抗うつ薬,5 . メタン
ムを還元する反応を利用したもので,黄色か
フェタミン,6 . アセトアミノフェン,7 . サリ
ら淡青色へと変色することによって確認でき
チル酸,8 . ブロムワレリル尿素,9 . 有機リン
る.この反応はメタノールに特異的な反応で
系農薬,10. カーバメート系農薬,11. パラコー
はなく,他のアルコール類,エーテル類,エ
ト,12. グルホシネート,13. 青酸化合物,14. ヒ
ステル類などの還元作用を有する化合物に
素,15. テオフィリン)を提言2) した.この提
よっても起こり,見かけ上の検査値が高くな
言を受け,著者らは高額な分析機器を使用せず
る.従って,メタノールの特定にはガスクロ
広島大学技術センター報告集 第3号 43
マトグラフでの分析が必要となる.
(7)サリチル酸
(2)バルビタール系薬物
・塩化第二鉄反応
(3)ベンゾジアゼピン系薬物
・北川式検知管;光明理化学工業(株)
(4)三・四環系抗うつ薬
フェノール性の水酸基は塩化第二鉄と反応
(5)メタンフェタミン
して赤褐色になることが知られている.サリ
・トライエージ(Triage®);シスメックス㈱
チル酸も分子内にフェノール性の水酸基を有
Triage で検出できる薬物は,フェンジクリ
していることから,同様に反応をして赤褐色
ジン(PCP),ベンゾジアゼピン類(BZO),
となる.本反応はフェノール性の水酸基を有
コ カ イ ン 類(COC), ア ン フ ェ タ ミ ン 類
する化合物に起こり,サリチル酸に特異的な
(AMP), 大 麻 類(THC), オ ピ エ ー ト 類
ものではない.サリチル酸の検査には5%塩
(OPI),バルビツール酸類(BAR),三環系
化第二鉄水溶液を用いるが,急ぎの検査には
抗うつ薬類(TCA)の8種である.金コロイ
その都度,試薬調整をしなくても良いように
ド粒子免疫法に基づくイムノアッセイ法で,
検知管とした.
化学的に標識した薬物と尿中に存在する薬物
(8)ブロムワレリル尿素
との抗体に対する競合反応を利用している.
(9)有機リン系農薬
(6)アセトアミノフェン
・アセトアミノフェン検出キット;関東化学㈱
・有機りん系農薬検査キット;関東化学㈱
尿中の有機リン系農薬の迅速検査キットに
血清中アセトアミノフェンの迅速検査キッ
ついても,開発(特許第2952359号)し,販
トがなかったことから,著者らが開発(特願
売している(写真2).4-(4-ニトロベ
2002-154713)し,関東化学㈱から販売して
ンジル)ピリジン(NBP)は,薄層クロマト
いる(写真2).試料中のアセトアミノフェ
グラフィーでの有機リン系農薬の呈色試薬と
ンを酸加水分解して o - アミノフェノールと
して利用されている.本キットは水溶液の状
する.生成した o - アミノフェノールはアル
態で有機リン系農薬と NBP とが反応し,検
カリ性下でフェノール系化合物と反応してイ
査試料中に含まれている有機リン系農薬を検
ンドフェノール(青色)を形成することが知
出できるように改良したものである.検査試
られている.この反応を利用し,臨床現場に
料中に有機リン系農薬が含まれていると,ピ
おいて簡便な操作で検査できるようにキット
ンク色~赤紫色に変色するが,一部の有機リ
化したものである.
ン系農薬では着色しないものもある.有機リ
ン系農薬検査キットによってブロムワレリル
尿素も同様に呈色するが,両者の区別はコリ
ンエステラーゼ阻害活性の有無により判別す
る.
(10)カーバメート系農薬
・コリンエステラーゼ阻害活性キット;和光
㈱,チッソ㈱
検査紙に含まれている基質が酵素(コリン
図2 検出キットと反応結果
有機りん系農薬検出キット(上)
アセトアミノフェン検出キット(下)
44 広島大学技術センター報告集 第3号
エステラーゼ)と反応して分解され,青色色
素が生成する反応を利用したものである.検
査試料中にカーバメート系農薬などのコリン
エステラーゼの阻害活性を有する化合物が存
本検知管は血液中のシアンを検出する検知管で
在すると,コリンエステラーゼの働きを抑え
ある.分離管に注入された血液からシアン化水
て基質が分解されなくなり,青色色素が生成
素を分離し,検知管に充填されている pH 指示
されない.
薬の変色によってシアンを検出するものであ
(11)パラコート
る.検知管の変色域(長さ)は血液中のシアン
・ハイドロサルファイトを用いる還元反応
濃度と相関性があることから,定量も可能であ
・北川式検知管;光明理化学工業㈱
る.
パラコートはアルカリ性の水溶液中でハイ
(14)ヒ素
ドロサルファイトなどの還元剤によって還元
・Mercoquant Arsen Tests;関東化学㈱
を受けると青色に変化する.この反応を利用
ヒ素は酸性条件下で加熱することによって
し,尿などの検査試料にハイドロサルファイ
銅に付着する.また,加熱することで気体と
ト含有の水酸化ナトリウム水溶液を加える
なる(昇華)性質をもっている.本検査では
と,尿中に存在するパラコートが確認でき
試料中のヒ素を銅板に付着させて生体成分か
る.パラコートと類似の化合物であるジク
ら分離し,銅板のヒ素を昇華させて再度分離
ワットも検出可能であるが,パラコートと異
する.再分離したヒ素を塩酸で溶解させて
なり緑色に変色する.尿中のパラコートをア
キットの検査試料とする.キット付属の試薬
ルカリ性としてハイドロサルファイトで青色
を加えることでヒ化水素(アルシン,AsH3)
に着色するが,試薬の酸化により呈色しない
が生成する.これが試験紙の反応部分に含ま
ことがある.ガラス管に封入した検知管によ
れている臭化水銀(Ⅱ)と反応し,黄茶色の
り空気を遮断し,いつでも安心して利用でき
ハロゲン化ヒ素水銀錯体を形成することによ
るようにした.
り,ヒ素化合物の確認が可能となる.
(12)グルホシネート
・バスタ定性キット;アベンティス・クロッ
プ・サイエンス・ジャパン
(15)テオフィリン
・アキュメータ・テオフィリン;日研化学㈱
アキュメータ・テオフィリンは酵素免疫ク
・薄層クロマトグラフ法(ニンヒドリン反応)
ロマトグラフ法を利用しており,血中テオ
グルホシネートはその分子内にアミノ酸の
フィリン濃度を簡便に測定できる.
構造を有しているため,アミノ酸特有の呈色
反応であるニンヒドリンによって呈色する.
3 . 検査結果の検証
これを利用して,ペーパークロマトグラフ法
前記の(1)メタノール検査では,試料を加
により生体成分と分離後,ニンヒドリンを噴
熱して気化した物質をメタノール検知管で検知
霧することによってグルホシネートを検出で
する方法であるが,エチルアルコールも同時に
きる.しかし,ペーパークロマトグラフ法で
検出される.飲酒とメタノール中毒の区別はで
は結果が判明するまでに2時間を要し,救急
きず,検査試料中に揮発性物質があるという程
医療現場での検査には利用困難である.本検
度に留めておくことが必要である.迅速検査法
査ではより短時間で検査可能な薄層クロマト
で陽性結果が得られても必ず確認検査が必要で
グラフ法を利用し,グルホシネートの検査を
ある.
行う.
(13)青酸化合物
・北川式検知管;光明理化学工業㈱
4 . 確認および定量
一般に薬毒物を分析する際に,いわゆる生体
広島大学技術センター報告集 第3号 45
試料成分から中毒原因物質を抽出し,純化した
5 . 参考文献
後に分析機器で分析する.原因物質を正確に分
1)西田まなみ,広島大学技術センター報告集,
析するためには特性に合った機器を用いる(図
1).紙面の関係で機器による分析法は省く.
1, 96-105, 2005.
2)吉岡敏治,郡山一明,植木真琴他5名 薬
毒物分析の指針に関する提言,中毒研究,
12, 437-441, 1999.
3)奈女良 昭,西田まなみ,屋敷幹雄他,中
毒治療に役立つ迅速検査法.じほう ,2005.
6.謝辞
このシステムは広島大学大学院医歯薬学総合
研究科法医学,屋敷幹雄先生,奈女良昭先生の
ご協力により構築したものであり,深謝致しま
図3 薬毒物分析の流れ
46 広島大学技術センター報告集 第3号
す。
技術センター主催・協力事業
日本岩石鉱物特殊技術研究会
第49回総会・研究討論会を開催して
技術センター 理学部等部門
石佐古 早実
1.はじめに
日本岩石鉱物特殊技術研究会は,全国の各国
立大学法人等で,主に地球科学とその関連領域
の研究試料の製作・調製に関与する技術者によっ
て組織されている.本研究会では,技術者相互
の技術開発と知識の向上に努めることを目的と
して,1年に一度各所属機関の持ち回りで総会・
研究討論会を開催し,試料を製作する上での技
図.日高洋 教授による挨拶
術研究発表・討論・情報交換等を行っている.
我々技術者が製作を依頼される試料は色々な性
5.まとめと感想
質や特徴を備え,また,広範な研究分野からの様々
近年,“西暦2007年問題”として取り上げら
な要望に対応するため製作方法もそれぞれに合致
れているように,本研究会も退職者が増加傾向
したものであることが求められる.これら要望に
にあり,今後の活動等に少なからず影響が出る
沿った試料を製作するためには本人の努力も勿論
ことは必至である.その状況下,総会で話し合
必要ではあるが,研究会を通じて得られる専門技
われたなかに,どのようにしてこれまで培って
術者相互の知識や情報は極めて有益なものとなる.
きた技術を後継者に伝えるかが大きな問題とし
これにより自身が一層のスキルアップを図ること
て挙がった.当面の対策として,これまでの技
ができ,多方面への技術の提供が可能となる.
術発表や報告等をまとめて冊子にする方向で調
今回,本学において第49回総会・研究討論会
整することとなり,完成すれば貴重な財産とな
を開催したので報告する.
る.
また,今回の研究討論会では,研究発表に加
2.期間・場所
え,新企画として企画討論(課題研究)を行っ
平成18年9月27日・28日
た.新企画は,各技術者が同一の試料(3点)
広島大学大学院理学研究科 大会議室
を製作し,製作した試料および製作方法や用い
た機械・器具・消耗品等をレポートに記載した
3.参加者
ものを持ち寄り,製作についての発表,さら
大学,鉱山系および地質調査系企業
に,製作された試料を顕微鏡で観察し,仕上が
23名(内,広島大学 3名)
りの状態や製作方法について具体的な意見交換
を行い,技術や知識の向上を図ることを目的と
4.開催内容
している.結果として,各人の製作した試料の
1日目:講演,総会
完成度には相違が見られ,併せて,これらにつ
2日目:研究討論会
いての研究発表により適切な製作手法を学ぶこ
(研究発表,総合討論,企画討論(課題研究))
とができた.今後もこのような企画を継続し,
広島大学技術センター報告集 第3号 47
技術の研鑽・伝承に努めていきたい.
だき大変お世話になりました.また,準備等に
さいごに,開催にあたり,本学理学研究科長
あたってご助力いただいた技術センター理学部
清水洋 教授,同研究科地球惑星システム学
等部門の柴田恭宏 技術職員をはじめ,同部門
専攻長 日高洋 教授,同専攻 狩野彰宏 助
の皆さま,ならびに理学研究科地球惑星システ
教授,早坂康隆 助手にはご挨拶,ご講演いた
ム学の学生諸氏には大変お世話になりました.
48 広島大学技術センター報告集 第3号
第四回ガラス工作技術シンポジウムを開催して
技術センター 理学部等部門
佐藤 勇・南 治志・新谷 博志・藤原 雅志
1.はじめに
このシンポジウムは,国公立機関に勤務して
いる理化学ガラス技術者が,ガラス技術の継承
と発展及び,技術者同士の交流またそれらを通
してお互いの知識を向上させることを目的に,
1998年に第1回のシンポジウムが大阪大学産業
科学研究所で開催されました.その後全国の国
公立機関に所属する理化学ガラス技術者が中心
図.研修風景
になって CONNECT(全国国公立機関ガラス技
術者の会)を設立し現在では,この会が中心に
における技術的なものから職場環境の改善な
なって会員が在籍する各大学が持ち回りで2年
ど,幅広く発表され活発な討論がなされました.
に1度開催されています.
(詳細は第4回ガラス工作技術シンポジウム報告
集にて公表)また技術実演では当ガラス加工室
2.期間・場所
に来ていただき作業方法や工具の説明,輻射熱
期間 平成18年10月19日,20日 による多角形ガラスの製作等を行いました.
場所 学士会館2階レセプションホール
5.おわりに
3.参加者等
ガラス工作技術シンポジウムでは同じ職種の
国公立機関に勤務している理化学ガラス技術
仲間が日常業務の中で生じる様々な問題,疑問
者28名 一般参加4名
が報告され,またその解決に至る経緯などもあ
り自らの日常業務の改善や技術・知識の向上に
4.研修内容
役立つ内容でした.また今回は,実行委員とし
特別講演:『カリフォルニア大学リバーサイ
て開催準備に携わり日常業務では経験できない
ド校における技術職員の状況など』
様々な経験をすることができ,これらの経験を
広島大学大学院理学研究科化学専攻
今後の業務に活かして行きたいと思います.最
山本陽介教授
後になりましたが,開催にあたり御協力いただ
技術報告
きました技術センターの皆様に深く感謝いたし
技術発表は12件(内1件実演)でガラス工作
ます.
広島大学技術センター報告集 第3号 49
平成18年度機器・分析技術研究会開催報告
技術センター 理学部等部門
研究情報機器技術班 藤高 仁
1.はじめに
員といった組織形態をとり実行委員長には技術
機器・分析技術研究会(以下研究会)は分析
統括に,副実行委員長には副統括2名にそれぞ
技術の発展と伝承を目的として平成7年度に開
れ就任いただいた.実行委員は担当別にグルー
催された分子科学研究所技術研究会に始まり,
プ化し,各担当グループから代表者を選出し
平成8年度からは各開催機関の技術部等主催に
た.選出された代表者にて代表者会議を開催
よる持ち回りで,広島大学にて12回を数える.
し,企画立案や懸案事項の協議を頻繁に行っ
また平成16年度の法人化後は,多くの技術職
た.実行委員会会議では代表者会議での協議結
員が安全衛生業務に係わることになったことか
果を報告し検討いただいた.
ら,作業環境測定技術に関する意見も積極的に
<実行委員長>
交換し合う場として活用されている.
総責任者(1名)研究会開催にあたり実行委
員の統括をおこなう.
2.広島大学開催に至るまでの経緯
<副実行委員長>
研究会の開催地等連絡調整組織として地域代
実行委員長の補助及び会計担当(1名),実行
表者会議があるが,その地域代表者に選出され
委員長の補助及び総務担当(1名)
ている藤高より研究会を広島大学で開催させて
<実行委員>
ほしいとの希望があり,平成14年3月に理学部
○総務(2名)学内外関係者及び部署と連絡
等技術部所属職員において協議した結果,研究
調整・委員会等会議の設定及び資料作り等,
会開催の方向で意見がまとまり,その後に開催
○会計(2名)物品の購入・予算の管理等,
された地域代表者会議にて広島大学での協議結
○会場(5名)口頭及びポスター発表会場の
果を報告したところ,平成18年度の開催予定と
準備・進行等,○受付(5名)参加受付・名
なった.
札 掲 示 板 製 作・ 名 札 製 作, ○ 広 報(2名 )
しかし平成16年度の国立大学法人化に伴い,
ホームページ・ポスターの製作等,○報告集
広島大学では全教室系技術職員が技術センター
(2名)報告集の編集及び製作,○情報交換会
への所属に変更となったため,目的として上げ
(2名)イベント企画・会場準備・進行等,○
た活動実績及び組織力の向上の意味から,理学
案内(1名)案内板製作・来場者への案内等
部等部門による開催ではなく,広島大学技術セ
<協力員>
ンター主催として研究会の開催を希望した.
受付・案内・情報交換会・ポスター発表会場
そこで要望書を作成のうえ平成16年10月の技
の各補助(27名)
術センター企画調整委員会(現企画調整部会)
に提出し,技術センター主催による機器・分析
技術研究会開催が承認された.
4.研究会について
(1)開催期間・場所
<開催期間>
3.開催組織・委員会会議について
平成18年9月14日10時~15日15時30分
実行委員長,副実行委員長,実行委員,協力
<口頭発表会場>
50 広島大学技術センター報告集 第3号
広島大学 総合科学部南講義棟1階 L102室
平成18年9月15日
<ポスター発表会場>
<9:00~15:30,口頭発表14件>
広島大学 総合科学部東講義棟1階ラウンジ
○前日に引き続き南講義棟1階 L102室にて口
(2)参加者
全国学術振興機関の技術職員:207名
(3)発表件数
頭発表を行った.
<15:30,閉会式>
○岩谷実行委員長の挨拶をもって終了した.
口頭発表:24件
ポスター発表:40件
(4)研究会開催スケジュール
5.情報交換会
14日の夕刻より情報交換会が開催され日頃の
平成18年9月14日
業務等の情報交換を行った.またポスター賞の
<9:00~,受付>
表彰や次期開催地スタッフによるユニークな
<10:00~10:30,開会式>
PR が行われ,大変盛り上がった.
○開会にあたり岡田副学長及び藤久保技術セ
ンター長より歓迎のご挨拶をいただいた.
6.まとめと感想
<10:30~15:10,口頭発表10件>
後日アンケートの集計を行った結果,概ね順
○開会終了後続いて口頭発表が行われた.
調に運営されていた様子が伺えたが,経験不足
や準備不足により迷惑をかけた点も判明し反省
のうえ今後の活動に活かさなければならない.
今回広島大学技術センターにて全国規模の研
究会を開催するにあたり技術統括がリーダー
シップを発揮し,関係職員がお互いに協力する
ことによって,このような大きな事業が成し遂
げられ,組織化することの意義を実感した.
<15:10~15:40,ディスカッション>
○大阪大学産業科学研究所技術室長山田様よ
7.さいごに
り化学系汎用機器利用ネットワークについ
ご参加,ご協力いただいた関係機関の皆様及
て情報提供があり活発な討論が行われた.
びご尽力いただいた広島大学関係者の皆様に深
<15:40~16:00,次期開催地 PR >
く感謝いたしますと共に,今後開催されます本
○次期開催地富山大学によるプレゼンテー
研究会が益々盛会となるよう願っております.
ションが行われた.
<16:00~17:40,ポスター発表 40件>
○会場を移動しポスター発表が行われた.
広島大学技術センター報告集 第3号 51
ビオトープで遊ぼう(水生昆虫の観察)実施報告
―第55回広島大学大学祭に参加して―
技術センター 理学部等部門
研究実験技術班 塩路 恒生,青山 幹男
工学部等部門
安全衛生管理技術班 清水 高
1.はじめに
工学部西側の松林と角脇川に囲まれた区域に
は,自然の湧き水による湿地帯があり,水生昆
虫やメダカ,カエル等の多種多様な生物が生息
しており,「工学部ビオトープ」として利用さ
れている.また,松林にはエヒメアヤメ,サギ
ソウなどの希少植物も自生している.
4.企画概要
(1)ビオトープ内に生息している水生昆虫の観
察の場を提供した.
(2)事前に確保しているメダカをプレゼントし
た.
(3)ビオトープ内に植えている花菖蒲の株分け
苗をプレゼントした.
地域社会に自然豊かなキャンパスの情報と水
(4)昆虫・メダカのお絵かきの場を提供した.
生昆虫とのふれあいの場を提供する事を目的と
(5)参加者へのアンケート調査を行った.
して,本年度初めて大学祭の行事として技術セ
ンター主催の企画を計画し実施したので報告す
5.企画までの準備
る.
2.実施日時
平成18年11月4日(土)11:00~17:00
3.実施場所
工学部ビオトープ周辺(角脇川周辺)
8月と9月の2回,工学部等部門,理学部等部
門,先端物質科学研究科部門のスタッフによ
り,ビオトープの草刈り・整備作業を行った.
52 広島大学技術センター報告集 第3号
東広島キャンパスの各学部および大学周辺の幼
稚園・保育所にポスターを配布し宣伝した.
会場看板
6.当日のようす
参加者:小学生37名,幼児23名,大人101名
合計168名
受付では,参加者に企画の内容と注意事項の
書いたプリント・メダカの飼い方,ハナショウ
ブの育て方の書いたプリント・アンケート用紙
技術センター職員10名が,朝8時30分より準
の配布を行った.
備作業を開始し,テントの設営,危険防止の安
全ロープ張り,案内板の設置等を行った.
朝から自前の虫取り網をもった親子がたくさ
ん訪れた.
広島大学技術センター報告集 第3号 53
参加者は,平均で1時間,長い方で2時間ぐら
観察・お絵かきコーナーとしてテントを設置し,
いビオトープでの体験を楽しまれました.
参加者に自由に生き物の絵を書いてもらった.
メダカをいっしょうけんめい追いかける子供
プレゼント用のメダカは,数百匹準備し,1
たち.
人に4~5匹のメダカをペットボトルに入れて水
草をそえてプレゼントした.
夢中になって,おもわず湿地のなかに裸足で
ハナショウブの苗は,ピンクと白を各100株
ずつ準備し,1人2株ずつ配布した.
54 広島大学技術センター報告集 第3号
入っていく小さな女の子.
取れたかな?熱心に網をのぞきこんでいます.
女の子に人気のあったお絵かきコーナーでの
力作.
さわやかな秋晴れの一日,子供の頃を思い出
されたお父さん方もたくさんおられました.
当日は,ニホンアカガエル,マツモムシ,イ
モリ,オオコオイムシ,ヤゴ(写真),カワニ
ナなどの水生生物を観察することができまし
た.
捕まえたメダカや水生昆虫などは,またもと
の場所に返してあげました.
7.アンケートの結果
配布数60部(回答42部)
問1.あなたはこの企画をどこで知りましたか?
・当日会場に来て(18名)
会場となった「工学部ビオトープ」は,ふだ
・人から聞いて(7名)
んから自然の触れ合いの場として親しまれてい
・幼稚園・保育所のポスターを見て(5名)
ます.
・大学のポスターを見て(4名)
・大学のパンフレットを見て(4名)
・大学のホームページから(3名)
広島大学技術センター報告集 第3号 55
問2.ここの場所はすぐわかりましたか?
6.今後の課題
・わかった(35名)
・子供が一時的に集中して虫取り網が不足し
・わかりにくかった(6名)
たこと,またメダカプレゼントのコーナーでの
問3.ビオトープの体験は楽しかったですか?
メダカの受け渡しが混雑してしまったことな
・とても楽しかった(34名)
ど,参加者が殺到したときにどう対処すべきか
・まあまあ楽しかった(5名)
今後考慮する必要があると感じた.
問4.来年もこの企画があれば,また遊びに来
たいですか?
7.おわりに
・ぜひ来たい(32名)
ビオトープの言葉の意味とは「まとまりのあ
・また来てもいい(8名)
る景観をもつ野生生物の生息する地域」と定義
問5.「こんなことができたらいいなあ」と思っ
されています.この企画を行ったビオトープを
たことがあれば書いてください.
含め,角脇川と工学部の間の一帯の里山的自然
・捕まえた虫を家に持ち帰りたい
は,長く継続的に行われてきた里山管理により
・春や夏の自然の様子を知る展示があれば良い
守られてきた貴重な自然環境であります.キャ
・年に2回ぐらいこの企画をしてほしい
ンパスでのビオトープ管理を考える時,「自然
問6.この企画に参加して,感じたこと,思っ
生態系の保全」が本来の目的となるべきであ
たことを自由に書いてください
・いろいろなアドバイスをいただき大変楽し
かった
・自然にふれあえて良かった
り,それに配慮した維持管理が必要であると思
われます.また,このような自然環境の学習の
場を地域社会の人々に提供できることは,大学
にとって有意義なことと考えます.
・ビオトープを学校でつくり,授業に活用で
きたら良い
8.謝辞
・ビオトープの生物の拡大展示をしてほしい
この企画は,技術センター主催として行いま
・外からの持ち込みがないように気をつけて
した.協力いただいたスタッフの方々に深く感
・小さな命も大切に
謝いたします 56 広島大学技術センター報告集 第3号
学外研修報告
ネットワークシステム研究会
系技術の研究は,日々邁進しており,情報技術
新開 薫(医学部等部門)
知識の乗り遅れをしないように,今後の職務遂
1.はじめに(目的等)
行に反映させていけるように努力が必要だと,
現在,日常業務内で必要不可欠のコンピュー
感銘しました.
ターは有線・無線ネットワークを用いてイン
ターネットでの情報収集を,ホームページ閲
質量分析講習会【初級者コース】
覧・検索やメールの送受信により行う等,使用
田井 里佳(原爆放射線医科学研究所部門)
目的や用途に応じて,常時ネットワーク回線に
1.はじめに(目的等)
接続し使用されております.今回は,そのネッ
現在,業務の一つとして,MALDI-TOF/MS
トワーク運用上必要なシステムの基本構造・応
によるタンパク質の同定サービス,及び装置の
用理論を研究開発・試験運用されている事例を
維持・管理を行っている.これまで,質量分析
知識習得して業務へ活用する目的で,様々な報
に携わってこられた方々に教わりながら業務を
告がなされている研究会に参加して参りまし
行ってきたが,質量分析の基礎や理論について
た.
一から学び,業務に必要な知識を習得し,整理
2.場所・期間
することを目的として参加した.
期間:平成18年5月18日,19日
2.場所・期間
場所:京都大学百周年時計台記念館2階
期間:平成18年6月8日,9日
国際交流ホール3
場所:日本化学会・化学会館
3.参加者等
3.参加者等
情報分野工学専攻系の国立・私立大学研究
企業の研究開発部門等の分析業務担当者,大
者,通信事業系大手企業の研究・開発技術者
学の研究者,学生等 37名
等,主催大学内の学生等
4.研修内容
4.研修内容
① MS 基本用語
本研究会では,ネットシステム上でのセッ
②マススペクトルの読み方
ション課題の発表と質疑応答が行われた.マル
③質量分析装置
チドメイン環境化でのサ―ビス ID での分散処
④イオン化法
置・ 応 答 速 度 の UP,SIP サ ― バ を UA( ユ ー
⑤フラグメンテーション
ザーID・パスワ―ド保持)認証を経由しての
5.まとめと感想
IP 電話発着信の通信速度向上とユーザー増加
質量分析はバイオ,ナノテクノロジーに欠か
への構築等,分散型コンテンツ管理での性能安
せない測定技術であるが,m/z の尺度の精密性,
定化配置法では,DL 性能維持のまま,コンテ
精度,確度とイオン強度の尺度の精度,確度,
ンツミラ―数を減少させるという提案も共感で
それらに関連したイオン化,分析計,測定技術
きる内容でした.
など理解すべき項目は多い.しかし,これらは
5.まとめと感想
物理的素養をかなり必要とするため,独学では
セッションごとにわかりやすいプレゼンで,
理解し難い点が多々あった.また,いろいろな
質疑応答時にも演者の方々が細かくシステムの
方から教わってきたので,個人的見解も含まれ
構築論理・動作現象の説明等に対応されていた
ており,整理しなおす必要もあった.これらの
ことが印象深かったです.とても有意義で業務
ことを考えると,基礎理論の理解と整理,及び
内容に持ちいれるような事例などもあり,情報
最新の情報等を習得できた本講習の受講は,今
広島大学技術センター報告集 第3号 57
後の業務遂行に反映させていけるものと考え
ネットワーク管理業務に就くことになり,
る.一方で,質量分析技術の研究は,日々進歩
ネットワークに関する知識を増やす必要性を感
しており,またその適用分野も多岐にわたって
じていた.ちょうどその時,当研修が開催され
いるため,新しい技術・知識に乗り遅れないよ
ることを知り,受講を決心した.
う今後も情報収集する努力が必要であると強く
2.場所・期間
感じた.
期間:平成18年7月4日~7日
場所:国際高等セミナーハウス(長野県)
刈払い機取扱作業者安全衛生教育講習会
3.参加者等
岩崎 貞治,山根 栄,木原 真司(生物圏科
情報システムに関係する大学職員 8名
学研究科部門)
4.研修内容
1.はじめに(目的等)
PKI の基本を織り成す共通鍵暗号と公開鍵暗
生物圏科学研究科部門・技術班では,草刈作
号について,非常に詳しい講義を受けた.さら
業において刈払い機を使用している.
に,認証局や証明書についても学び,手元のパ
刈払い機による作業は,立ち姿勢や歩行,傾
ソコンを実験用ネットワークに繋いで操作して
斜などでの機械の使用を行なうため,転倒や刈
みることで,どのように認証局の信頼関係が出
刃の跳ね返りなどにより,刈刃に接触する災害
来ていくのかを確認した.
が多く発生していることから適切な取扱が求め
その後,PKI 技術を自分の部局でどのように
られる.そこで今回,刈払い機取扱作業者安全
利用することができるかを考え,発表を行っ
衛生教育講習会を受講した.
た.
2.場所・期間
5.まとめと感想
期間:平成18年6月19日
PKI 技術について,基本的な部分から実践的
場所:広島県立林業技術センター
な部分まで知ることができた.自分の部署での
3.参加者等
利用方法を考えたことで,PKI 技術の優れてい
49名
る面と使いにくい面の両方を知る事ができた.
4.研修内容
今後も日常業務の中で効果的に利用する方法を
(1)刈払い機に関する知識(2)刈払い機を
模索していきたい.
使用する作業に関する知識(3)刈払い機の点
検及び整備に関する知識(4)振動障害及びそ
平成18年度ネットワーク管理担当者研修
の予防に関する知識(5)関係法令(6)刈払い
開内 幸治(工学部等部門)
機の整備手順(実技教育)
1.はじめに(目的等)
5.まとめと感想
教室系技術職員として研究室のネットワーク
刈払い機による作業は常に危険を伴うもので
保守管理の要望がある.今回,LAN の運用管
あり,その為の知識・整備力は最低限必要であ
理に必要な基礎的知識・技術を習得するために
ると感じた.今後,この講習会で学んだことを
本研修に参加した.
全て実際の作業の中で生かしていきたい.
2.場所・期間
期間:平成18年7月5日~7日
平成18年度情報処理軽井沢セミナー
場所:NTT 西日本研修センタ
中川 敦(情報メディア教育研究センター等部門)
3.参加者等
1.はじめに(目的等)
20名(大学等においてネットワーク管理業務
58 広島大学技術センター報告集 第3号
を担当,若しくは担当を予定している教職員)
間違いだらけの Winny 対策セミナー
4.研修内容
三原 修(工学部等部門)
ネットワーク概要,LAN を構築する技術,
1.はじめに(目的等)
TCP/IP のネットワーク層プロトコル,ルーティ
不特定多数の PC 間でファイル交換(共有)
ング,TCP/IP のトランスポート層プロトコル,
を行うソフトウェア(Winny 等)の使用によっ
TCP/IP のアプリケーション層プロトコル,学
て,Antiny をはじめとした暴露型のウイルスに
術情報ネットワーク
感染し,個人情報や組織内の機密情報の漏えい
5.まとめと感想
被害が続出している.しかも,一連の Winny
運用管理における基礎知識についての講義
関連報道が結果として火に油を注ぐ形となり,
後,本研修の主催である国立情報学研究所の計
深刻な社会問題にまで発展した.その現状を詳
先生より学術情報ネットワーク(SINET/スー
しく知り,根本的な解決策(ソリューションに
パーSINET,次世代ネットワーク)について講
よる実例)を探るため,シトリックス・システ
義を受けた.
ムズ・ジャパン株式会社と住商情報システム株
自分の知識が再確認でき,また不足していた
式会社の共催による Winny 対策セミナーに参
知識が習得できた.特にネットワーク上に流れ
加した.
るパケットのヘッダの変化が理解でき,たいへ
2.場所・期間
ん有意義だった.
期間:平成18年7月11日
場所:晴海アイランド トリトンスクエア
危険物取扱者保安講習
オフィスタワーZ
坂下 英樹(工学部等部門)
3.参加者等
1.はじめに(目的等)
企業等におけるシステム・情報管理者
危険物取扱者免状(甲種)の交付を受けてお
4.研修内容
り,危険物の取り扱い作業に従事しているた
・Winny による情報漏えいの仕組み
め,3年以内毎にこの講習の受講が義務付けら
・情 報 漏 え い 対 策 ソ リ ュ ー シ ョ ン(Citrix
れている.
2.場所・期間
期間:平成18年7月11日
Presentation Server)の紹介
・ネ ッ ト ワ ー ク 脆 弱 性 検 査 ツ ー ル(eEye
Retina Network Security Scanner)の紹介
場所:東広島市消防局
5.まとめと感想
3.参加者等
このセミナーでは,(Winny に限らず)情報
危険物取扱者 約200名
漏えいを起こさないためにはどう対応しなけれ
4.研修内容
ばならないかということに重点が置かれ,その
規制の要点・過去3年間の法令改正事項,危
ためのソリューションとして,クライアントに
険物の火災予防に関する事項
は情報を残さない方法に加え,情報漏えいの原
5.まとめと感想
因であるネットワーク脆弱性を検査する方法に
関係する法令改正:指定数量未満の危険物等
ついても紹介された.
に関する技術上の基準は,市町村条例で定める
情報漏えいを防ぐために,ユーザーが Winny
ものとされ,平成18年6月1日より施行された.
のようなファイル交換ソフトウェアを使用しな
事故事例などがビデオを交えて紹介され,安全
いことは当然であるが,情報漏えい自体が起き
対策の重要性を再確認した.
ないようにするためにはデータの管理方法に特
広島大学技術センター報告集 第3号 59
に注意を払わなければならない.今回のセミ
(7)著作権保護と電子透かし
ナーで紹介されたソリューションは,この問題
(8)情報漏えい対策
に対して別の視点から捉えたものであるため,
(9)セキュリティガイドライン
たいへん興味深いものとなり,参考になった.
(10)個人情報保護
5.まとめと感想
平成18年度情報セキュリティ担当者研修
安全性と利便性はトレードオフの関係にあ
三原 修(工学部等部門)
り,100%のセキュリティを実現することは不
1.はじめに(目的等)
可能である.それゆえにセキュリティ対策で
本学では,今年度より「情報セキュリティポ
は,考え方そのものが最も重要であることを認
リシー」が施行されており,部局等のネット
識しなければならない.情報セキュリティ全般
ワーク(サブネット)管理者に対して,情報セ
について基礎的な部分から理解できたため,有
キュリティ強化対策を策定・推進することが求
意義な研修であった.
められている.そのために必要不可欠である,
情報セキュリティ・情報保護にかかわる基礎知
CSI ネットワークマスター虎の穴第6回
識を習得するため,国立情報学研究所が主催す
開内 幸治(工学部等部門)
る標記研修(関西会場:NEC ラーニング株式
1.はじめに(目的等)
会社および大阪大学による共催)を受講した.
教室系技術職員として研究室のネットワーク
2.場所・期間
保守管理の要望がある.そこで,ネットワーク
期間:平成18年7月12日~14日
管理に必要な知識・技術を修得するために本セ
場所:NEC 関西ビル(大阪市)
ミナー「小~中規模のネットワーク構築 A to
3.参加者等
Z」に参加した.
大学等において情報管理業務に従事する職員
2.場所・期間
(25名)
期間:平成18年7月20日
4.研修内容
場所:広島市まちづくり市民交流プラザ
情報セキュリティ概要全般(以下の内容を講
3.参加者等
義形式で実施)
53名(CSI 会員,学校関係者,一般企業)
(1)情報セキュリティの現状:セキュリティ
4.研修内容
インシデント,セキュリティ被害の実例
(2)インターネットセキュリティ概要:脅威
・データリンク層とネットワーク層の役割
・ハブ,スイッチ,ルータの違い
の種類,不正侵入の手口,コンピュータウ
・ネットワーク設計
イルス
・アドレスの割り当てポリシー
(3)セキュリティ対策:ファイアウォール,
リモートアクセスによる認証,ウイルス対
策,無線 LAN 対策
(4)デスクトップセキュリティ対策
(5)暗号技術:暗号化方式,認証局の利用,
・スタティックルーティングとダイナミック
ルーティングの違い
・ダイナミックルーティングの動作原理
・ダイナミックルーティングを用いたバック
アップ,バランシング
電 子 署 名, 暗 号 メ ー ル, 電 子 署 名 法,
・広域 Ethernet を利用した WAN 構築
VPN,IC カード
・インターネット VPN を利用した WAN 構築
(6)バイオメトリクスによる認証
60 広島大学技術センター報告集 第3号
・ネットワーク構築
・ネットワークトラブルシューティング
する.日本ボイラー協会広島支部の方の熱意を
5.まとめと感想
感じた.
本セミナーは主にデータリンク層とネット
ワーク層の役割,ルーティング(ダイナミック
第21回大学等環境安全協議会技術分科会
ルーティング),ネットワーク設計,構築につ
坂下 英樹(工学部等部門)
いての講義でした.先日受講したネットワーク
1.はじめに(目的等)
管理担当者研修で得た知識があったため,内容
大学等における環境安全管理,化学物質等の
がよくわかり,さらに深い知識が習得でき,た
管理,及び有害な廃液・廃棄物の処理技術に関
いへん有意義でした.特にスイッチとハブ,
する研修と,それらに関する諸情報の交換を行
ルータの違いやネットワークを構築する際の機
うこと.
器(スイッチ,ルータ)の選択によるメリッ
2.場所・期間
ト,デメリットが分かりました.
期間:平成18年7月27日,28日
場所:島根県民会館(松江市)
平成18年度二級ボイラー技師準備講習会
3.参加者等
木原 真司(生物圏科学研究科部門)
環境安全管理,廃棄物の処理に携わる大学等
1.はじめに(目的等)
の教職員,及び関係企業から,約150名
二級ボイラー技士準備講習会は,二級ボイ
4.研修内容
ラー技士免許をより確実に取得するための講習
環境報告書に関するパネルディスカッショ
会である.
ン,安全衛生に関する各大学における取り組み
ボイラーの技術は発展し,より大規模なボイ
事例(TIG 溶接に伴う放射線被ばく,アスベス
ラーが私たちの生活に溶け込んでいる.その反
ト調査,化学物質への曝露防止対策,事故事例
面,それは事故の際重大な被害を出す恐れも孕
と再発防止策,大学自前での作業環境測定),
んでいる.そのため,ボイラー技士免許の試験
及び廃棄物処理の問題(医療廃棄物,ドイツ及
は確実な技術者を必要とし,その試験は難度が
びアメリカの状況)についての講演
高い.その他法改正などもあり,変動するボイ
5.まとめと感想
ラー技士免許試験に対応すべく,今回この講習
環境報告書の作成には,どこの大学も苦労さ
会を受ける事となった.
れている印象で,内容の充実は来年度以降との
2.場所・期間
声が多く聞かれた.学生のシステムへの取り込
期間:平成18年7月20日,21日
み・意識向上と,第3者評価の実施などの課題
場所:広島商工会議所
が挙げられていた.気になったトピックを3つ
3.参加者等
挙げる.TIG 溶接に使用するタングステン電極
48名 学生・社会人等
には Th(α線,β線,γ線を放出する)が含
4.研修内容
まれているものがあり,粉じん曝露への注意が
(1)ボイラーの構造に関する講習(2)ボイ
必要である.職域におけるホルムアルデヒド濃
ラー関係法令の講習(3)燃焼及び燃料に関す
度指針値0.25ppm(厚生労働省)は,医学部の
る講習(4)ボイラーの取扱に関する講習
解剖実習においては局所排気装置を導入しない
5.まとめと感想
と守れない.アスベスト含有製品の基準が,9
過去数年の問題と今年の傾向を照らし合わせ
月より1%から0.1%へ強化される.
ながら,独自の解釈の元,念入りに試験を予測
広島大学技術センター報告集 第3号 61
中国・四国地域大学附属農場協議会
職務遂行に必要な基本的,一般的知識及び新
東脇 隆文,積山 嘉昌(生物圏科学研究科部門)
たな専門的知識,技術等を習得するため.(竹
1.はじめに(目的等)
田)
職務遂行に必要な基本的,一般的知識及び専
直線距離にして最も近くて,且つ海により遠
門的知識・技術等の習得や各大学との情報交換
い大学「愛媛大学」がどんな活動をしているの
を目的とした.
か,またどのようなキャンパスなのかが興味深
2.場所・期間
く,とにかく愛大の研修に参加を希望した.ま
期間:平成18年度7月27日,28日
た,中四国地方の大学技術職員の皆さん,特に
場所:高知大学農学部
愛大の技術職員の皆さんが学生実験をどのよう
3.参加者等
に工夫し,指導しているかということと,その
36名
実験を実際に体験し,現状について情報交換が
4.研修内容
出来ることを期待して研修会に参加した.(下
全体会議,体験発表(鳥取大,高知大),分
岡)
科会,南国フィールド見学
中国・四国地区国立大学法人等の技術専門職
5.まとめと感想
員の職にあるものが,その職務遂行に必要な基
分科会で法人化後の労働安全対策等について
本的,一般的知識および,新たな専門的知識・
話し合いがあり,どの大学も必要な資格は取得
技術等を習得し,職員としての資質の向上を図
し,学生に対しては特別教育を行われている大
ることを目的とする.今回の研修の生命系分野
学もあった.情報交換や親睦を深めることがで
では,医学分野の講義や実習が盛り込まれてい
き,とても有意義であった.
る.医学分野は普段の業務と分野的に重複する
ものの,なかなか触れる機会がない内容である
平成18年度中国・四国技術職員研修
ので,視野を広げる良い機会だと考え参加し
石原 正文( 工 学 部 等 部 門 ), 藤 原 雅 志
た.(川北)
(理学部等部門),竹田 重寿(生物圏科学研究
2.場所・期間
科部門),下岡 丈次,川北 龍司(先端物質
期間:平成18年8月23日~25日
科学研究科部門)
場所:放送大学愛媛学習センター(愛媛大学
1.はじめに(目的等)
城北キャンパス内),愛媛大学医学部
現在,設計・工作系技術班に配属され,もの
ゼミナール室
つくりを主とした業務に携わり受託工作・工作
3.参加者等
実習の技術指導を行っている.昨今学生の理工
中国・四国地区国立大学法人,中国・四国地
系離れが問題にされており,ものつくり教育が
区高等専門学校等の技術職員 51名
重要視され創成型実習等が取り入れられるよう
4.研修内容
になった.今回の研修会には,実体験型の実験
(1)大学の現状等について
授業「基礎科学実験」実習の受講と技術職員間
(2)イノベーションの潮流と産学官連携マネ
の情報交換・ネットワークの構築を目的として
ジメント
参加した.(石原)
(3)高周波を利用した2つの研究
職務遂行に必要な基本的,一般的知識及び新
(4)コース別
たな専門的知識の習得,他機関の職員との交流
①基礎科学実験の導入と実施(石原,藤原,
を目的として参加した.(藤原)
62 広島大学技術センター報告集 第3号
下岡)
基礎科学実験「アルミ合金の鋳造」
(石原)
,
「点接触型ダイオードとラジオの製作」
(藤
原)
,
「スターリングエンジンの製作」
(下岡)
②新技術コムギ胚芽無細胞タンパク質合成法
とその医学的応用(竹田,川北)
今回の研修では,入学定員,産学官連携マネ
ジメント,環境問題への取り組みや,職場にお
ける安全衛生など,大学が求められている現状
について改めて認識した.「環境浄化微生物え
ひめ AI 誕生秘話」を聴講し,余剰汚泥の減少,
脂肪細胞と健康(竹田,川北)
水質改善及び消臭効果があることから西条ス
脂肪組織を用いたホルモン作用の検証(竹
テーションでも散布をして効果を確かめたい.
田,川北)
また,担当業務に関わる分野のみならず,他の
(5)食料生産ロボットの現状と将来
分野の講義を聴けて非常に有意義な研修であっ
(6)環境浄化微生物えひめ AI 誕生秘話
た.今後の業務を遂行していくうえで,今回の
(7)職場における安全衛生について
研修で得られた情報を大きく活用していきた
5.まとめと感想
い.また,他機関の技術職員と交流できたこと
今回の研修会の講義内容は,法人化後の大学
により刺激になった.(竹田)
の現状が報告され,どのようにして産学官連携
2日目のコース別講義と実習は,理工学部の1
しマネジメントをすればよいか,さらに外部資
年生を対象とした基礎科学実験コースであっ
金を獲得した研究の具体例の報告,また外部よ
た.講義では理工系学生に対し実験に興味を持
り1人の県職員(技術系職員)が環境浄化微生
たせるか,やる気をださせるかという視点か
物(えひめ AI)を開発し地域事業として取り
ら,苦労をして現在の物理基礎実験にたどりつ
組まれたこと,少女坪田愛華さんが命とひきか
いたという事であった.実習ではスターリング
えに環境保護を訴えて書かれた本「地球の秘
エンジンを製作したが,いかに安価に原理原則
密」が報告され講義された.同じ立場の技術職
を発見した科学史上重要な法則を実現するかと
員の自分は,社会・地域貢献について何ができ
いう点をクリアした実験方法に驚いた.同時に
るだろうか,業務に取り込み,結果(見返り)
基礎的な実験内容であるが,理論は高度であっ
を求めずに自らの技術等を投入する事と再認識
た.
が出来た.この種の研修会にありがちな聴講だ
実際にランプで暖めて,針金のクランクシャ
けの受け身の内容でなく分野別(機械系)の実
フトが回ると感動ものであった.将来この実験
験・実習を取り入れ,プレゼンテーションにま
を受講した愛大生の中から夢のスターリングエ
で展開し質疑応答を行い受講者中心の研修にも
ンジン実用化を成し遂げる者が出現するのでは
なり内容的にもバランスの取れた研修であっ
と思った.
た.今後,工作実習にプレゼンテーションを取
工学系学生に対する導入の基礎実験として
り入れた授業も考えてみたい.(石原)
は,おおいに参考となった.(下岡)
全体講義では幅広い内容の講義を受けること
全体講義においては普段はあまり関わりのな
ができた.あまり自分の職務に係わりは無かっ
い分野の講義であり,視野を広げることができ
たが,勉強になった.コース別実習では普段と
たと思う.特に「イノベーションの潮流と産学
は逆の受ける側,学生の立場で実習の雰囲気を
官連携マネジメント」では,講師は民間出身で
味わうことができた.その経験は今後の実習な
教授に就任されたという経緯であったため,民
どに活かせると思う.また,研修を通して他機
間の見識にも触れられる貴重な経験であった.
関の技術職員と情報交換するなど,交流が持て
たことはとても有意義であった.(藤原)
「職場における安全衛生について」は普段,衛
生管理者としての職務を遂行していることもあ
広島大学技術センター報告集 第3号 63
り,内容には期待していたが,内容は一般向け
3.参加者等
のもので,衛生管理者としては少々物足りなさ
国立大学法人・高等専門学校の技術職員 64名
を感じた.「環境浄化微生物えひめ AI 誕生秘
4.研修内容
話」では発酵食品に用いる微生物を利用した画
基調講演,技術発表,特別講演を聴講した.
期的な浄化法ではあるが,人工培養微生物を環
基調講演は,「ネットワークの現状と将来展望
境中に大量散布することによる環境破壊や危険
について(九州工業大学ネットワークデザイン
性について全く触れられていないことが気に
研究センター長 尾家祐二)」.技術発表は,
なった.
「サーバ・PC のシステム環境に関するもの」,
物理学関係講義「高周波を用いた2つの研究」
「コンピュータウイルスに関するもの」,「Web
は全く畑違いの分野ではあったが,わかりやす
ベースのアプリケーション開発に関するもの」,
い講義で面白く,同時に研究予算の獲得の重要
「画像処理に関するもの」など広範囲.特別講
性や難しさも新たに認識させられた.分野別講
演 は,「 学 生 と の ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 ~Cosmo
義「新技術コムギ胚芽無細胞タンパク質合成法
Scheduler D~(九州工業大学知能情報工学科 路その医学的応用」では,自分自身が組み替え
小出洋)」で,Java を用いた3次元 GUI ベース
タンパク質を発現させる手法を用いた研究に従
のスケジュール管理アプリケーション(Duke's
事していることもあり,参考となる新しい知識
Choice Award 受賞)のデモ.
が多く得られ非常に有意義であった.実習のほ
5.まとめと感想
うも,普段は使う機会のない動物細胞の実験で
参加の主目的から九工大技術部を中心とした
はあったが,デリケートな生きた動物の脂肪細
報告とする.技術発表を通して,事前調査どお
胞の取り扱いの難しさを経験できたのが有意義
り自主開発の姿勢および専門技術者としての自
であった.(川北)
立心が感じられた.これは広大と比べ全般に小
規模なニーズ対象(障害時の影響範囲が小さ
第2回情報技術研修会
い),および日本初の情報系学部であるため情
勇木 義則(情報メディア教育研究センター等
報工学を職務とする技術職員比率が他大学と比
部門),柿村 順一(医学部等部門)
べて高いという組織環境(業務に対する技術職
1.はじめに(目的等)
員数の充実度)の2点が主要因と推察される.
技術職員独自開発の IC カードシステムによ
具体的な内容としては,IC チップ内臓の学生
る入室管理・出欠管理の実運用化を一例に,技
証を使った授業出欠確認システムやシステム不
術職員の技術力は高く,総じて技術開発に積極
具合対応のプログラムなどが安価にて開発・構
的である事前調査を踏まえ,(1)情報担当者と
築でき,またニーズへの柔軟な対応がし易いと
して,また技術センター職員の情報関連研修強
いうメリットが挙げられる.反面,保守の継続
化の一環として「最新技術の収集」(2)将来構
性(開発者の技術伝承をどうするか)に課題が
想担当者として「独自開発実態と専門技術集団
残る.これに関しては技術伝承のための勉強会
としての自立状況調査」(3)九州地区初である
発足の報告もあった.開発を通してのスキル
情報系技術研究会の「実施背景および日常職務
アップ,勉強会による技術伝承など具体的な試
体制に関する意見交換」を主目的に参加した.
みに触れ,技術センターが目指す専門技術者集
2.場所・期間
団に向けてアプローチの一つとして活かしたい
期間:平成18年8月31日,9月1日
と考える.
場所:九州工業大学情報工学部 講義棟2階
64 広島大学技術センター報告集 第3号
第18回情報処理センター等担当者技術研究会
ある.広島大学では削除したメールは確認でき
吉田 朋彦(情報メディア教育研究センター等
ないのでその点で少し不安を感じた.
部門)
学生の PC 必携化に関しては,すでにいくつ
1.はじめに(目的等)
かの大学で実施され,広島大学でも検討されて
この研究会は全国の情報系センターの技術担
いるが,授業で必ずしも活用されていないな
当者が研究発表や情報交換を行うことのできる
ど,まだ踏み切るには検討課題も多いとの印象
数少ない研究会である.したがって事情が許す
を受けた.
限り参加し,積極的に広島大学の情報を提供
本学のセキュリティ対策については,ファイ
し,また同時に他大学の運用を参考にしたいと
アウォールなどの制限は比較的ゆるいが,ウイ
考えている.
ルス対策ソフトの全学的導入などは多くの関心
今回は広島大学の情報セキュリティについて
を集めたようである.
説明した.他大学の状況については,特に迷惑
なお,本研究会は来年度,広島大学で開催さ
メール対策などについて知る目的で参加した.
れる予定である.
2.場所・期間
期間:平成18年9月7日,8日
日本生薬学会第53年会
場所:金沢大学自然科学系図書館 G1階 AV
末吉 恵津子(医学部等部門)
ホール
1.はじめに(目的等)
3.参加者等
日常の業務として植物からの成分の抽出,単
国立大学法人情報系センター技術職員等 48名
離,および構造決定を行っており,一般的な植
4.研修内容
物についての研究報告は目にする機会が多いの
「広島大学の情報セキュリティ対策」という
に対して,いわゆる「漢方」や「生薬」に関す
タイトルで,メディアセンターが行っているセ
る最近の研究に触れる機会は意外と少ない.今
キュリティ関連サービスやネットワーク設定な
回は自身の研究成果を発表する事に加えて,生
どについて紹介した.
薬に関する知識を深め,今後の研究活動の参考
他の大学からの発表として主なものは
とするために本学会に参加した.
・学生の PC 必携化
2.場所・期間
・e-Learning に関する教材開発など
期間:平成18年9月29日,30日
・迷惑メール対策
場所:日本薬科大学
・システム更新に関する情報
3.参加者等
などが中心的な話題であった.
大学・研究所・製薬および化粧品企業の薬学
5.まとめと感想
系研究者と学生,病院・薬局に勤務する医師や
迷惑メール対策に関してはどこの大学も苦心
薬剤師など約600名
しているようである.専用の装置を購入し,迷
4.研修内容
惑メール判定を行い,自動的に隔離するところ
1日目:会長講演,学会賞受賞講演,特別講
までは同様であるが,隔離されたメールをどう
演,シンポジウム,一般研究発表(口頭および
処理するかで対応が分かれているようである.
ポスター)の聴講
多数派なのは,隔離されたメールを Web イン
2日目:特別講演,奨励賞受賞講演,シンポ
ターフェイスなどでユーザーが確認できるツー
ジウム,一般研究発表(口頭およびポスター)
ルを提供し,誤判定に備えるシステムのようで
の聴講と自身のポスター発表
広島大学技術センター報告集 第3号 65
5.まとめと感想
「新規院内製剤ネオ・ブロー氏液に関する Q
今回の大会は例年に比べて特に「漢方」につ
& A と臨床効果」という演題で,ポスター発
いて扱った演題が多かったようで,成分研究の
表を行った.ネオ・ブロー氏液に関する質問で
話から,薬局での患者さんの漢方薬の購買動向
最も多いのは溶解性に関するもので,保存条
や有効性の評価についての講演,また漢方に関
件・期間に関する問い合わせも多く寄せられ
する中国の古い文献の調査など多岐に渡り,他
た.ネオ・ブロー氏液の臨床効果については,
の学会では得られない情報が一度に得られ有意
難治性の慢性中耳炎や外耳道炎患者に使用さ
義であった.また,会長講演および奨励賞受賞
れ,現在までのところ副作用も無く,比較的良
講演では,多くの写真を用いて,経験に基づい
好な治療成績が得られている.
たフィールドワークに関する興味深い話がなさ
5.まとめと感想
れ,研究室と圃場(薬草園など)とフィールド
非常に関心度が高く,質疑応答時間以外でも
(現地調査)のバランスが重要であることを
質問が殺到するほどであった.また,約1000演
知った.今後研究を行う上で,研究室の中だけ
題中ベストポスター賞10名の中の一人に選出さ
で完結してしまわないように,目的意識を外に
れ,非常にうれしく思った.今後も,臨床症
向ける姿勢の重要さを実感した.また,2日目
状,使用薬剤(原液,4倍希釈液),使用方法
に行ったポスター発表では,他大学の研究者か
(塗布,耳浴,点耳),効果,副作用について,
ら機器分析や構造決定法に関する質問を受け,
データ収集を行い,よりよい治療法の構築に寄
その場で直接意見交換できたことは有意義で
与していきたい.
あった.
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習会
第16回日本医療薬学会
笹谷 晋吾(原爆放射線医科学研究所部門)
湯元 良子(医学部等部門)
1.はじめに(目的等)
1.はじめに(目的等)
原爆放射線医科学研究所放射線先端医学実験
院内製剤であるブロー氏液は,MRSA 感染
施設には,3MV イオン加速器が設置されてい
性中耳炎・外耳炎等に優れた臨床効果を示すこ
る.当装置は加速器本体タンクに放電防止用
とが報告されているが,これまでは,調製に4
SF6ガスを7気圧で充填している.当装置の昇
~5日を要していた.
圧回路およびイオン源のメンテナンスにおい
そこで,短時間で再現性良く調製可能な新規
て,SF6ガスをパージしタンク内で作業を行う
処方「ネオ・ブロー氏液」を開発し,学会等で
必要がある.この作業は酸素欠乏環境に陥りや
報告してきたが,全国の医療施設から多数の問
すい閉鎖環境である.このような酸素欠乏環境
い合わせが寄せられているため,「Q & A」と
における作業の安全性を確保する知識及び技能
いう形で報告した.
を習得するため,今回の講習会に参加した.
2.場所・期間
2.場所・期間
期間:平成18年9月30日,10月1日
期間:平成18年10月10日~12日
場所:金沢市観光会館
場所:林業ビル(広島市)
3.参加者等
3.参加者等
大学の教育関係者,医療従事者,製薬会社関
土木コンサルタント会社などに在籍する現場
係者等 約4500名
作業従事者,約60名
4.研修内容
4.研修内容
66 広島大学技術センター報告集 第3号
酸素欠乏等の発生メカニズム,病理及び症
を見学し,自分の勤務地と比べての改善点など
状,酸素欠乏危険作業における注意点,保護具
を模索した.さらに同センター所有の高速観測
等の使用方法,酸素濃度測定,炭酸ガス濃度測
調査船「はす」に乗船し,船舶本体,ならびに
定,酸素欠乏事故時の対応及び救命方法,関係
搭載観測器具の性能評価,琵琶湖の特性などを
法令
実地にて検分した.
5.まとめと感想
5.まとめと感想
酸素欠乏危険作業に関わる必要な知識及び技
研修議題としては,昨年東京大学で起きた潜
能を体系的に学ぶことができ,大変効果的な講
水事故に対する討論が最も活発であった.我々
習であった.実際に現場で行われている酸素な
自身が潜水作業を行うことからも他人事ではな
どの濃度測定を体験できたことは特に有意義で
く,さらに自分自身だけでなく同行者や来所者
あった.今後は,今回の研修内容を職場におい
の安全をどう守るかということの難しさが改め
て実践し,事故の起こらない安全な職場環境を
て浮き彫りになった.特に技術の熟練度は重要
形成していきたい.
であり,生死を分ける第一の境目がここに存在
する.しかしながら,学生にそれを求めるのは
第33回国立大学法人臨海・臨湖・センター技術
難しく,我々自身も需要がなければ潜水作業を
職員研修会議
行わない.生命を守るための技術力保持のため
山口 信雄(理学部等部門)
には,特に業務がなくとも定期的に潜水を行う
1.はじめに(目的等)
必要があるとの認識を共有したものの,その費
全国に散らばっている臨海・臨湖・センター
用をどうするか等いくつかの問題点が提示され
の技術職員が年に一度集合し,研修会議が開か
た.また,外来者の技術力確認をどうするかも
れている.研修者は毎年この研修会に出席し,
難題である.今回外来者に対する「野外におけ
他の臨海実験所等の技術職員との活発な意見交
る教育研究活動安全衛生管理計画書」を他大学
換を通して各地の生物層や採集・飼育方法,船
から入手した.適切な時期に研修者の職場で生
舶維持・操船技術の収集につとめている.ま
かしたいと考えるが,スタッフ内に意見の相違
た,全国レベルでの円滑な実験生物の流通を目
もあり難しい.
指して,人間関係の構築も行っている.
2.場所・期間
玉掛け技能講習・クレーン特別教育併合講習会
期間:平成18年10月11日~13日
笹谷 晋吾(原爆放射線医科学研究所部門)
場所:京都大学生態学研究センター
1.はじめに(目的等)
3.参加者等
原爆放射線医科学研究所放射線先端医学実験
参加者27名(技術職員19名,OB2名,所長会
施設には,3MV イオン加速器が設置されてい
議オブザーバー2名,京都大学生態学研究セン
る.当装置のメンテナンスにおいて,加速器本
ターオブザーバー4名)
体のタンク上部をクレーンにより移動させて作
4.研修内容
業を行う必要がある.この時玉掛け作業も付随
研修者は同会議に出席し,他技術職員の活動
するが現在は一人しか有資格者がおらず,過度
報告を受けた.特に東京大学で起きた潜水事故
の負担がかかり安全面で憂慮される.このた
(ポスドク1名死亡)の詳細報告並びにその後の
め,クレーン操作や玉掛け作業を伴う業務にお
取り組みについて,特に活発な議論がなされ
いて業務従事者の負担を軽減し,安全性を確保
た.また,京都大学生態学研究センターの施設
する知識及び技能を習得するため,今回の講習
広島大学技術センター報告集 第3号 67
会に参加した.
会であった.中央畜産会の方に広島県畜産協会
2.場所・期間
の方や,久保さん(広島県)を紹介して頂い
期間:平成18年10月20日~22日
た.交流を深めることができ,とてもプラスに
場所:中特会館(広島市),三菱重工株式会
なった.良い物を真似するのではなく吸収し,
社広島製作所(広島市)
3.参加者等
当農場に合ったものを模索し業務を遂行してい
きたい.
約70名
4.研修内容
平成18年度主任者部会年次大会(第47回放射線
クレーン・玉掛け等に関わる知識(力学,電
管理研修会)
気等)及び実技,関係法令
木庭 亮二(理学部等部門)
5.まとめと感想
1.はじめに(目的等)
クレーン操作及び玉掛け作業は,重大事故を
放射線施設の管理を行ううえで,法令や国際
起こしやすく,緊密な連携体制の中で正確に作
情勢における新たな情報の把握は非常に重要な
業を行うことが安全を確保するうえで重要であ
ものとなってくる.今回参加した主任者部会年
る.今回の講習ではこれらの作業を安全に行う
次大会では監督官庁である文部科学省を含め,
にあたっての基本的な知識や方法を学ぶことが
国内の様々な機関の管理者が集まり,国際情勢
できた.今後業務においてクレーン操作や玉掛
からの今後の法令改正についての情報をはじ
け作業に従事するときは,今回の講習で得られ
め,一般的な管理についての新たな試みまで幅
た知見を職場においても周知して,安全な職場
広い範囲での報告があり,この場で国内の様々
環境を形成していきたい.
な施設からの情報を得て今後の施設管理に生か
すことを目的として参加した.
平成18年度全国優良畜産経営管理技術発表会
2.場所・期間
積山 嘉昌(生物圏科学研究科部門)
期間:平成18年11月9日,10日
1.はじめに(目的等)
場所:長崎ブリックホール
職務遂行に必要な基本的,一般的知識及び新
3.参加者等
たな専門的知識等を習得することを目的とし,
放射線許可施設の放射線取扱主任者及び管理
参加した.
者が参加(約300名)
2.場所・期間
4.研修内容
期間:平成18年11月2日
・放射線関連法令に関する講演・特別講演
場所:虎ノ門パストラル新館 鳳凰の間(東
・放射線主任者部会の各分科会からの発表及
京都)
び報告
3.参加者等
・機器展示・ポスター発表等
中央畜産会,全国肉用牛振興基金協会,農林
・放射線関連の国際情勢についての講演
水産省,畜産関係者等 約200名
・放射線に関する次世代技術についての講演
4.研修内容
5.まとめと感想
酪農経営,肉用牛繁殖経営,肉用牛肥育経
法令や国際情勢に関する講演では,今後の放
営,養豚経営,採卵鶏経営
射線に関する行政の方向性が見え,大変参考と
5.まとめと感想
なった.現在の施設管理についても考えさせら
今回一般で参加したが,とても意義深い発表
れ,施設運営をどう行うべきか参考となった.
68 広島大学技術センター報告集 第3号
分科会の発表では行政への対応等,施設運営
性・有害性の排除が重要であること,安全配慮
における具体的な内容が示され,実務上大変有
義務とは民法に規定されている社会通念上相当
意義なものであった.また,その中で放射線施
とされる防止手段を尽くす義務であること(記
設における社会貢献事業が紹介され,現在当施
録類で証明)などを学んだので,リスクアセス
設でも検討している内容であり,今後の参考資
メントの実施,記録類の充実などを検討した
料となる有意義な講演であった.
い.各大学の安全衛生管理については,安全衛
ポスター等においては様々な施設における新
生担当者の技術の向上,大学等構成員の安全衛
たな手法での管理や測定方法が紹介され,放射
生への意識向上,作業環境測定や特殊健康診断
線について再度勉強をするいい機会であった.
における課題,作業環境改善事例などについて
参考になったものについては今後の施設管理に
情報が得られたので,今後,安全衛生管理の向
生かして生きたいと思う.
上のため参考にしたい.環境報告書について
は,企業などの事例を聞いて,作成していくこ
第24回大学等環境安全協議総会・研修会
とで次第に環境に対する取り組みが向上してい
坂下 英樹(工学部等部門)
く効果があると感じた.
1.はじめに(目的等)
大学等における環境安全管理,化学物質等の
第28回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム
管理,及び有害な廃液・廃棄物の処理技術に関
湯元 良子(医学部等部門)
する研修と,それらに関する諸情報の交換を行
1.はじめに(目的等)
うこと.
注射剤に代わるタンパク質性医薬品の投与経
2.場所・期間
路を開発する上で,その経肺吸収メカニズムを
期間:平成18年11月9日,10日
明らかにすることは非常に重要であり,その吸
場所:府中グリーンプラザ(東京都府中市)
収のバリアとなっているのが肺胞上皮細胞であ
3.参加者等
る.そこで,培養Ⅱ型肺胞上皮細胞を用い,イ
環境安全管理,廃棄物の処理に携わる大学等
ンスリンの取り込み特性について検討を行い,
の教職員,及び関係企業から,約210名
血漿中の代表的タンパク質であるアルブミンの
4.研修内容
取り込みと比較検討を行った結果を発表し,生
中央労働災害防止協会の講師による大学にお
体膜輸送に関する新しい情報を収集することを
ける労働安全衛生マネージメントシステムに関
目的とする.
する講演では,その概要と導入におけるポイン
2.場所・期間
ト等が説明された.大学等の労働安全衛生につ
期間:平成18年11月9日,10日
いてのパネルディスカッションでは,5つの大
場所:静岡県コンベンションアーツセンター
学より課題・問題点について発表があり討議さ
グランシップ
れた.環境報告書に関するパネルディスカッ
3.参加者等
ションでは,文科省の事務官,一般企業,2つ
薬学系および工学系大学の教育関係者,製薬
の大学により報告書の内容について発表があり
会社および工学系企業関係者等 約400名
討議された.
4.研修内容
5.まとめと感想
「Endocytosis of proteins in alveolar type Ⅱ
労働安全衛生マネージメントシステムについ
epithelial cell line RLE-6TN」という演題で口頭
ては,リスクアセスメントによる潜在的危険
発 表 を 行 っ た. 培 養 Ⅱ 型 肺 胞 上 皮 細 胞 RLE広島大学技術センター報告集 第3号 69
6TN においてアルブミンは主にクラスリン介
この研修では,ネットワーク全般について基
在性のエンドサイトーシスにより細胞内に取り
礎的知識及びそれに関する演習により,今まで
込まれる.一方,インスリンは一部クラスリン
の職務経験との整合性の確認を通して更にその
介在性のエンドサイトーシスにより細胞内に取
理解が深まった.今後の情報関係の職務を遂行
り込まれますが,大部分はクラスリンおよびカ
する上で有意義な研修であった.
ベオリン非介在性エンドサイトーシスにより取
り込まれることが示唆された.
平成18年度放射線安全管理講習会
5.まとめと感想
寺元 浩昭(理学部等部門)
発表に対し,フロアから質問をいただいたの
1.はじめに(目的等)
で,これを今後の研究に役立てたい.また,生
今回参加した講習会では文部科学省の担当官
体膜輸送に関する資料収集も行った.今後はレ
をはじめ,放射線施設の検査業務を行う指定機
セプターとの関連も含め,インスリンのⅡ型肺
関の担当官等による講演が行われる.最近の安
胞上皮細胞における取り込み機構について検討
全行政の動向や安全管理のポイント,他の放射
していきたいと考えている.
線施設におけるトラブル対応事例等の講演が行
われ,施設管理を行っていく上で有益な情報を
平成18年度第2回ネットワーク管理担当者研修
得ることができる.今後の業務を円滑に行える
松本 健治(先端物質科学研究科部門)
よう,それらの情報収集を目的とし,参加し
1.はじめに(目的等)
た.
今日の高度情報化社会において,情報伝送路
2.場所・期間
を安定的に管理するためのネットワークに関す
期間:平成18年12月12日
る知識を習得することは極めて重要である.現
場所:広島県民文化センター内 鯉城会館サ
在,ネットワーク,ワークステーション管理に
ファイア
おいて,メンテナンス作業を行う必要がある.
3.参加者等
そこで,ネットワーク管理に必要な基礎的知
中・四国地方放射線施設等関係者70名程度
識・技術を習得するため,講習会に参加した.
4.研修内容
2.場所・期間
・放射性同位元素等の規制に係わる最近の動向
期間:平成18年11月29日~12月1日
・定期確認・定期検査を踏まえた安全管理の
場所:NTT 西日本研修センタ(関西会場)
3.参加者等
20名(大学等において,ネットワーク管理業
ポイント
・放射線施設におけるしゃへいの考え方のポ
イント
務を担当,若しくは担当を予定している教職
・事業所におけるトラブル対応事例報告
員)
・放射線を中心とする原子力関連リスク・コ
4.研修内容
ミュニケーション
ネットワークとは,イーサネット,ネット
5.まとめと感想
ワ ー ク を 構 成 す る 機 器,IP, ル ー テ ィ ン グ,
最近の法定の定期検査,定期確認の実施結果
RIP,ARP,ICMP,TCP,UDP,FTP,
から実際にあった指摘事項の事例,注意点等の
TELNET,SSH,無線 LAN,リモートアクセス
講演もあり参考になるものがいくつかあった.
とは,学術情報ネットワーク等について
今後の検査等において指摘を受けることのない
5.まとめと感想
よう,これまでより一層注意深く管理を行って
70 広島大学技術センター報告集 第3号
いく必要があると再確認することができた.ま
5.まとめと感想
た,施設のしゃへいの考え方について専門的な
今回参加した情報セキュリティセミナー2006
話を聞くことができ大変勉強になった.実際に
は独立行政法人情報処理推進機構の講師により
は施設の建設時の他には必要になってくること
最新の情報セキュリティの技術および知識を修
は少ないが,放射線に関する知識をより深める
得できた.特に,被害事例の解説はこの先,い
ことができたと思う.この他にもいくつかの新
かに対策していくかを検討していく上で参考と
しい情報を得ることができ,有意義なものに
なった.
なったと感じる.
また広島大学がおこなっている情報セキュリ
ティポリシーに基づいた様々な取り組みを理解
情報セキュリティセミナー2006
するうえで大変貴重なセミナーであった.
藤高 仁(理学部等部門),村上 義博(工学
部等部門),勇木 義則(情報メディア教育研
平成18年度「家畜人工授精及び家畜体内受精卵
究センター等部門)
移植に関する講習会」
1.はじめに(目的等)
積山 嘉昌(生物圏科学研究科部門)
現在の社会は情報であふれているが,その情報
1.はじめに(目的等)
を管理制御する事は個人や組織及び国の資産を守
牛は1年1産であり,1個体から多数の子を生
るために大変重要である.本セミナーでは情報管
産することは難しい.人為的処置を施すことに
理の基礎からマネジメントにわたる幅広い情報を
より卵子の数を増加させ,優秀な能力を持つ雌
得ることができる.今後技術センターにて展開さ
牛から多数の子牛を生産することができる.そ
れるであろう,情報技術の全学的サポートへの技
のためには資格が必要なことから講習会を受講
術や知識を習得するために参加した.
した.
2.場所・期間
2.場所・期間
日時:平成18年12月13日
期間:平成19年1月5日~30日
場所:島根県民会館
場所:(財)中国四国酪農大学校(岡山県)
3.参加者等
3.参加者等
情報セキュリティの基礎及び情報セキュリ
26名(うち一般参加者5名)
ティマネジメントに携わっている一般企業およ
4.研修内容
び学術機関の職員(約120名)
講義:概論,受精卵の生理形態,受精卵の処理
4.研修内容
実習:体内受精卵の処理,受精卵の移植
情報セキュリティ 基礎コース
5.まとめと感想
・インターネットにおける脅威の変遷
1ヶ月の長期間であったが,講習会中,講師,
・コンピュータウイルス・スパイウェア・フィッ
一般参加者の方や大学校の生徒達と交流,情報
シング・ワンクリック不正請求等の被害事例
交換でき,有意義なものであった.これらの得
と被害に遭わないための対策について
たものを本農場の業務や広島県の牛の増産に貢
情報セキュリティ マネジメントコース
献していきたい.
・情報セキュリティ対策・被害事例・セキュ
リティポリシー・評価認証と税制
・セキュリティ対策自己診断テスト・事業継
続計画 等
平成18年度高エネルギー加速器研究機構技術職
員シンポジウム
勇木 義則(情報メディア教育研究センター等
広島大学技術センター報告集 第3号 71
部門),石佐古 早実(理学部等部門)
れも有益な情報収集ができた.(1)は自己評価
1.はじめに(目的等)
や外部評価など組織機能化の実証報告があり,
本シンポジウムは,技術職員の組織運営,評
試行計画の具体化に大変参考になった.(2)は
価,後継者育成など,技術職員に特化したテー
多くが「根本的な見直しの必要性あり」の試行
マについて全国規模で意見交換が行われる数少
分析を踏まえての「見直し案報告」であり,期
ない場であるとともに,技術職員の組織化に積
待した試行成果報告は得られなかった.一方,
極的に取り組んでいる大学・研究所等の最新情
見直し案が広大計画と大筋同じ方向性にあった
報が得られることもあり,年々盛況となってい
ことから,2年超に及ぶ検討期間の意義を実感
る.多くの大学等が学部規模での組織化を進め
し,充分な試行準備期間の重要性を再認識し
ている中,本学技術センターの全学規模の一元
た.(3)は各大学の方針,特に,組織化の主体
組織化は注目されており,四年前から進捗報告
が,‘事務組織(人事の評価システムの一貫)’
を行っている.今回は石佐古技術長が現状報告
‘技術組織の長(副学長,学部長等)’‘技術職
を,勇木技術長が情報収集を主目的に参加し
員’などと異なり,それぞれの学内事情が読み
た.
取られ,興味深かった.その中で,広大のビ
2.場所・期間
ジョン共有型組織体制のもと,技術センターが
期間:平成19年1月11日,12日
主体となって ' センター長・技術統括・依頼
場所:高エネルギー加速器研究機構3号館セ
者・事務組織(特に人事)' の連携機能組織を目
ミナーホール
指す計画報告は,他大学の技術職員組織構築に
3.参加者等
資するニューモデルとなるものと確信してい
国立大学法人・国立高等専門学校法人・大学
る.絵に描いた餅にならぬよう着実に試行・実
共同利用機関法人の技術職員 91名
施していきたい.
4.研修内容
意見交換会の「技術職員の再雇用」について
基調講演の聴講および現状報告,意見交換会
は,実際再雇用されている参加者の JAXA およ
を通しての情報収集.基調講演は,「X 線が描
び阪大での実態および「技術職員のリーダの役
出する三次元の像(東京理科大学教授 安藤正
割」については,本格運用まで導いた熊本大学
海)」,現状報告は,「口頭発表27件(大学21,
リーダの持論をもとに進められたが,時間的制
研究所5,高専1)とポスターセッション13件
限もあり,具体的な結論に至らなかった.
(大学10,研究所3)」があり,石佐古技術長は,
今後の意見交換の進め方を検討する必要があ
「広島大学技術センター将来構想 PDCA - Plan
ると思う.充実した意見交換会にするため,中
から Do に向けて-」と題して発表した.意見
四国の大学で事前の意見交換を実施し,課題・
交換会は,「技術職員の再雇用,技術職員の
対策を整理した上で,高エネシンポジウムに臨
リーダの役割」について行われた.
むなど広大でできそうなところから取り組んで
5.まとめと感想
いきたい.
状況報告は,中期計画を睨んでいるものの
(1)本格運用報告(技術部時代から組織化に取
ガス溶接技能講習
組んだ大学等),(2)試行報告(独法化のタイ
岡本 和也(理学部等部門)
ミングで試行開始の大学等),(3)計画報告と
1.はじめに(目的等)
いった未だ様々な状況においての報告であっ
ガス溶接の装置の取り扱い方,ガス溶接・溶
た.広大は(3)段階であることもあり,いず
断の仕方を習得する目的で受講した.
72 広島大学技術センター報告集 第3号
2.場所・期間
4.研修内容
期間:平成19年1月15日,17日
酪農の現状と課題及び今後の取り組み
場所:広島県労働基準協会 志和教習所
乳質改善対策における組織体制と搾乳立会の
3.参加者等
有用性
一般企業及び大学関係者等 45名
乳房炎発生予防技術の取り組みと対策
4.研修内容
衛生的乳質改善への取り組み
ガス溶接等に用いる可燃性ガスおよび酸素の
乳質改善効果検証シート
知識,ガス溶接等の装置の構造および取り扱
講演会「牛群検定普及と牛群検定を活用した
い,労働安全教育,関係法令,実技
乳質改善の取りくみ」
5.まとめと感想
5.まとめと感想
ガス溶接・溶断の基本的な知識・技術の習得
今回の研修では,体細胞数が増加する原因と
が出来た.特に,酸素は高圧ガスの状態で容器
対処方法を学んだ.搾乳時に,牛乳や乳頭にな
の温度を40度以下に保たないと爆発する恐れが
るべく細菌が付着しないようにすること,ド
ある.また,酸素が体にかかると燃えやすくな
ロップレッツやミルカーが空気を吸わないよう
り危険である.酸素が18%以下になると不完全
に作業をすることを改めて認識し,搾乳方法を
燃焼を起こし,一酸化炭素が発生するなど,受
改善する必要があることを感じた.今後の業務
講するまで酸素が危険だと考えていなかった
を遂行していくうえで,今回の研修で得られた
が,注意しなければならない.
情報を基に乳質改善に貢献していきたいと考え
溶接機器の構造や使用方法が理解できた.仕
る.
事でガス溶接・溶断を行っている方もいて参考
になった.
第2回安心と安全のための教育シンポジウム
ガス容器に,ガス調整器やホース等を取り付
下岡 丈次(先端物質科学研究科部門)
ける際に,接続部からガス漏れがないか確認す
1.はじめに(目的等)
ることも重要である.今回受講した内容を活か
学内電子掲示板のイベント・講演会という項
し,安全に配慮した業務を行えるようにした
目で標記の案内があり,ホームページを開いて
い.
見ると,安全教育の実践例や巡視活動の活性化
法・化学実験の小さな失敗例また産業現場での
総合的乳質改善研修会
防災活動を見据えた人による教育機関に於ける
窪田 浩和,竹田 重寿(生物圏科学研究科部
安全・安心教育など,衛生管理者をしている私
門)
にとって大変興味深く,学部2年生の実験開始
1.はじめに(目的等)
時の安全教育,また大学院新入生の安全教育,
職務遂行に必要な基本的,一般的知識及び新
そして巡視活動時の参考になるものと思い参加
たな専門的知識,技術等を習得するため.
をした.
2.場所・期間
2.場所・期間
期間:平成19年1月25日
期間:平成19年1月30日
場所:三次ロイヤルホテル
場所:大阪大学銀杏会館 阪急電鉄・三和銀
3.参加者等
行ホール
広島県酪農協同組合,一般畜産農家,獣医
3.参加者等
師,畜産技術センター(約60名)
大学の教員・職員その他産業界から安全に係
広島大学技術センター報告集 第3号 73
わる者(およそ120名程度)
テキストエディタによる Web コンテンツ作
4.研修内容
成(Web 開発)は,HTML を記述するだけの
大阪大学工学研究科の事例として,フロン
シンプルな場合には十分可能であるが,複雑な
ティア研究センターでは教員・職員が一体と
機能を組み込む場合はその作業が極めて困難に
なって,組織マネジメントや教育・研究水準を
なる.
高め,活気ある大学組織運営を目指すための
自 分 は 現 在,Web 開 発 に 旧 Macromedia 社
「人間力アッププロジェクト」を学内に公募し
(現在は Adobe 社により買収)製の Dreamweaver
ており,このシンポジウムはこのプロジェクト
MX を 使 用 し て い る が, そ の 最 新 版
として採択された物であり,「世界に通用する
(Dreamweaver 8) で は,XML,CSS 等 の 一 般
Professional Engineer を育てるための安全教育」
的な標準規格から PHP5,XSLT のような最新
の活動の一環として開催されているとのことで
技術まで対応した Web 開発が可能である.今
あった.
回 は,Adobe 社 が 主 催 す る 標 記 セ ミ ナ ー
大阪大学での安全衛生管理システムの紹介が
「Dreamweaver で Web アプリケーション開発」
あり,その中で部屋毎に安全衛生管理チェック
が開催されたため,Dreamweaver のさまざまな
シートを作成して部屋の出入り口に掲示してい
機能とその利用による作業の効率化に関する知
る.そのチェックシート作成者にアンケート調
識を得る目的で参加した.
査を行いその分析の紹介があった.
2.場所・期間
その他安全教育を違った切り口での紹介や安全
期間:平成19年2月6日
衛生教育の方法論など6事例の報告を聴講した.
場所:六本木アカデミーヒルズ49 タワー
5.まとめと感想
ホール
大阪大学工学研究科での取り組みは教職員が
3.参加者等
学生も取り込んで,より安全で安心な教育研究
約300名(HTML コーダー,プログラム開発
環境を構築しようとしていると言うことが理解
者,Web ディレクター,Web デザイナー等)
出来た.また産業界からの発表は大学での安全
4.研修内容
安心教育の充実を計るようにという,産業界か
(1)Adobe 社による Dreamweaver の紹介
らの要請であった.最後の総合討論での司会者
(2)現場で Dreamweaver を活用している開
が述べた,企業は組織的で大学は集合体である
発者(4名)によるオーバービューデモ
との観点は実情を言い当てており,大学での安
・開発者から見た Dreamweaver
全衛生活動の困難さを言い表していると私は理
・Dreamweaver の拡張機能
解した.
・データベースとの連携
またパネリストの1名の方が言った,KYT 活
・XSLT
動を行うことでより安全・安心な教育研究環境
(3)上記講演の全講師,ゲストパネリスト,モ
の構築が可能になるということは,一つの方法
デレーターによるパネルディスカッション
であり大変興味深く,今後は企業の KYT 活動
5.まとめと感想
を調査すべきだと思った.
今回のセミナーは主に開発者向けで,マニュ
アルや書籍ではカバーされていない機能等を中
Adobe Dreamweaver セミナー
心とした内容であったため,自分自身の予備知
三原 修(工学部等部門)
識の無さもあって全体的に難しく感じたが,最
1.はじめに(目的等)
新版の Dreamweaver を用いた場合には開発作
74 広島大学技術センター報告集 第3号
業を効率化できることやさまざまな応用が実現
4.研修内容
可能なことを知り,同時に Web 開発の最新動
1日目には名古屋大学総長による特別講演を
向に接することができた点で有意義なものに
聴講した.続けて開催された機械・ガラス工
なった.
作,装置技術,回路・計測・制御技術,極低温
また,パネルディスカッションの最後には,
技術,情報・ネットワーク技術,生物科学技
Adobe 社より,「より良い製品開発のためには,
術,分析・環境技術,実習・実験技術の各研究
顧客(ユーザー)からのフィードバックが,日
会(口頭発表)の聴講,およびポスターセッ
本の場合はもっと必要」という要望があって,
ションにて情報交換を行った.
強く印象に残った.このことは Web 開発者が,
また,下記の演題について口頭発表及び座長
製品のユーザーとしてはもちろん,逆に Web
を行った.
サイト閲覧者からの意見や要望を積極的に取り
・学生実験(情報工学)の紹介(発表):寸
込む姿勢が必要という点においても同様である
と思った.
田 祐樹
・後根神経節における電位依存性ナトリウム
チャネルの機能解析(発表):柿村 順一
平成18年度名古屋大学総合技術研究会
・学生実験 H 会場セクション1(座長):寸
柿村 順一(医学部等部門),藤高 仁(理学
田 祐樹
部等部門),菅 慎治(原爆放射線医科学研究
5.まとめと感想
所部門),坂下 英樹,寸田 祐樹(工学部等
特別講演では「学生の理系離れ」が話題の一
部門)
つとして取り上げられていた.技術系の職に就
1.はじめに(目的等)
いている者として,魅力を伝えることの重要性
本研究会は,各教育・研究機関の技術者が,
を改めて感じた瞬間であった.各研究会におい
広範囲な技術的研究支援活動について発表する
ては,担当業務に関わる分野からのみならず,
ものである.筆者らは通常業務の範囲内のみな
他の分野の発表からも有意義な情報や知識が得
らず,他の分野における基本的・一般的な知識
られた.今後の業務遂行に是非とも活用してい
および新たな専門的な知識の習得・技術向上,
きたい.(柿村)
情報交換を目的として参加した.(柿村)
情報系の実験に関する発表は他にほとんど見
名古屋大学総合技術研究会に於いて,日頃
られなかったものの,研究会全体を通しては大
行っている技術業務の一端である実験に関する
変有意義な技術交流を図ることができた.学生
発表を行い,研究会での発表を通して現状の問
を対象とする実験は,どこの組織に於いても学
題点等を客観的に認識し,技術交流によって得
生の興味を引くよう工夫が見られ,最近の傾向
られた意見や情報を基に,今後の業務遂行に役
として,実践的,創成型,PBL(Problem Based
立てることを目的として参加した.(寸田)
Learning),といったキーワードが散見された.
2.場所・期間
また,情報・ネットワーク技術研究会におい
期間:平成19年3月1日~2日
ては,殊にスパムメールに関する対策が多く見
場所:名古屋大学 IB 電子情報館,工学部,
られ,昨今のサーバ管理者にとっての課題を浮
経済学部
き彫りにしていた.
3.参加者等
本研究会に参加し,技術交流によって得られ
大学,高等専門学校,大学共同利用機関等の
た情報を基に,更なる技術の向上及び知識の幅
技術職員700名以上
を広げ,業務へと組み込んでいきたい.(寸田)
広島大学技術センター報告集 第3号 75
平成18年度解剖技術研究・研修会
島大学解剖学教室で取り組んでいる問題点の改
石原 博史(技術副統括),清水 伸輝(医学
善策(実習法の改良等)を報告した.(清水)
部等部門)
5.まとめと感想
1.はじめに(目的等)
大学の解剖施設,解剖処置方法等,各大学の
本会は日本解剖学会学術日総会に併行して行
実状がよくわかる研修となった.
われる解剖技術研究会であり,解剖学会関係の
また,近年医学部,歯学部,看護学のみなら
諸教室の技術職員,解剖組織技術士の研修を目
ず,コメディカル,の重要性が問われていると
的としている.
ころであり,解剖学実習を行える,場所と時間
形態学分野における技術の伝承と発展を基本
を考えると教育講演で模型による解剖学教育の
理念とし,日常の技術業務に関する発表を行
必要性を改めて感じました.(石原)
い,現状の問題点等の研究会での発表を通し
解剖学技術研究研修会に参加して御遺体保存
て,意見交換を行い,今後の業務遂行に役立て
に欠かすことの出来ないホルマリンの有害性が
ることを目的としている.
問題視されており,各大学とも解剖学実習中の
2.場所・期間
ホルマリン濃度の低減を行う為の処置室・実習
期間:平成19年3月26日(月)
室の改修,改善策等がなされている.技術職員
場所:大阪大学 中ノ島センター
をはじめ教員,学生への注意として感染防護対
3.参加者等
策を今後とも考えていき,安全に作業を行える
医学部,歯学部,各大学の解剖技術者,約40名
よう進めていきたい.(清水)
4.研修内容
今回の講演内容は,日常業務を中心とした内
日本薬学会第127年会
容であり,「 発生学的及び機能学的模型による
濁川 清美,末吉 恵津子(医学部等部門)
解剖学教育 」,「 細胞死とは何かー特に,研究
1.はじめに(目的等)
技法について 」,「Sihler 染色による僧帽筋末梢
現在私は,キノン化合物の蛋白質及び脂質ホ
神経の観察と今後の展開 」,「Invitro コラーゲ
スファターゼ阻害作用を検討している.この検
ン線維形成の分子機序についての電顕的証明」,
討結果を,大学や企業の薬学研究者が参加する
「 大阪大学における解剖実習の現状について,
本会で発表し,議論することによって,研究の
感染防護を念頭とした改装 」,「 群馬大学医学
さらなる発展に繋げたいと考えた.(濁川)
部の献体業務,解剖実習のご紹介 」,「 富山大
大学,病院,企業に勤める薬学系研究者の1
学における遺体防腐処置方法と業務改善の取り
年間の研究の成果である発表を聴くことで,そ
組みについて 」,「 広島大学における献体の取
れぞれの専門分野での最先端の情報に触れる.
扱いについて 」,「 これまでの業務を礎に 」,
さらに自身の研究成果を発表し,他者と交流し
と各大学の現場の現状が把握できる内容となっ
意見交換することで,新しい知見を得,今後の
た.(石原)
研究に活かす.(末吉)
今回の研修会で私は,広島大学における献体
2.場所・期間
の取扱いについて報告した.広島大学では年間
期間:平成19年3月27日~30日
の献体受領数(80体前後)が多く,医歯学部の
場所:富山市総合体育館,富山国際会議場等
解剖学実習終了後の毎年度末の御遺体現有数が
3.参加者等
増加傾向にある点と,今年度からカリキュラム
大学,研究所,企業等の研究者,学生等,約
の変更における問題点が生じてきている為,広
8千名
76 広島大学技術センター報告集 第3号
4.研修内容
表を視聴することにより,ナフトキノン化合物
「ナフトキノン化合物シコニンによるインス
の作用やシグナル伝達研究についての新たな情
リンシグナル経路の活性化」と題し,ポスター
報を得ることができた.これらを今後の業務に
発表を行った.本研究では,ナフトキノン化合
反映させていきたいと考えている.(濁川)
物が,蛋白質ホスファターゼと脂質ホスファ
普段はあまり触れることのない臨床での研究
ターゼを阻害することによって,インスリンと
成果を知ることができたのは,大変有意義で
同様の細胞応答を引き起こすことを示した.発
あった.専門範囲のみに偏りがちな知識を,多
表時には,蛋白質ホスファターゼの抑制がレセ
少なりとも埋めることが出来たように思う.
プターチロシンキナーゼ活性化を起こす機序
また,化合物の単離と各種アッセイを組み合
や,キノン化合物が引き起こすインスリンシグ
わせた実験についての発表を多く目にし,実験
ナル活性化以外の作用等について議論を行っ
方法やそれにより得られた結果の評価法を知る
た.また,生物化学分野の研究を中心に,ポス
ことができた.これらは直接今後の研究に活か
ター発表並びに口頭発表を視聴した.(濁川)
せそうである.さらに,3日目に行ったポス
5.まとめと感想
ター発表では,他大学の研究者から化合物の構
自身のポスター発表での議論により,研究に
造に関する質問を受け,その場で直接意見交換
ついての新たな課題を見出した.また,他の発
できたことは有意義であった.(末吉)
広島大学技術センター報告集 第3号 77
学内講習会報告
放射線業務従事者に対する教育及び訓練
岩石薄片製作実習
継続教育
期間:平成18年4月5日~7日
期間:平 成18年4月24日,5月23日,6月20日,
場所:理学部 特殊加工技術開発室
光学系試料製作部門 学生実習室
28日,7月19日,7月31日,11月20日,
主催:理学部 地球惑星システム学科
場所:自然科学研究支援開発センター
内容:岩石薄片の基礎的な製作方法(岩石の切
アイソトープ総合部門
断・研磨・貼付等)の実習,および機
主催:自然科学研究支援開発センター
械・器具等の取り扱い方法についての安
内容:新規教育訓練を受講し,放射線業務従事
全教育を行った.また,製作中に起こる
者となった者においては,立入り後1年
ケガ等は過去の事例に基づいてその都度
を超えない期間毎に教育訓練を受講する
説明を行った.なお,技術センター職員
必要がある.放射線取扱主任者が十分な
(石佐古早実)および大学院生が実習指
知識及び技能を有していると認めた者に
導を担当した.
ついては,項目の一部又は全部を省略す
参加者:学生22名
ることが可能となっており,一部を省略
した形で実施した.講師は自然科学研究
放射線業務従事者に対する教育及び訓練
新規教育
期間:平成18年4月3日,17日,19日,20日,28
支援開発センター(中島覚助教授,稲田
晋宣助手,松嶋亮人助手)及び技術セン
ター職員(木庭亮二,寺元浩昭).また,
日,5月22日,6月26日,7月10日,9月19
技術職員は施設使用に関する諸注意,試
日,10月16日,12月13日,14日,18日,
験問題の回答等についての講義等を担当
平成19年1月10日,3月15日
した.
場所:自然科学研究支援開発センター
アイソトープ総合部門
参加者:教職員,学生,大学院生,研究員など
合計186名
主催:自然科学研究支援開発センター
内容:放射線業務に従事する前又は管理区域に
分析機器利用講習会
立ち入る前に行うもので,法令で6時間
期間:平成18年5月15日~19日
以上の教育訓練が義務付けられている.
場所:自然科学研究支援開発センター
内容は,放射線の人体に与える影響,放
主催:自然科学研究支援開発センター
射性同位元素等の安全取扱,放射線障害
低温・機器分析部門 物質科学機器分析部
防止法,放射線障害予防規程の4項目が
内容:教職員・学生を対象に,基本的な機器分
規定されている.講師は自然科学研究支
析技術の習得を目的として自然科学研究
援開発センター(中島覚助教授,稲田晋
支援開発センターに設置している分析機
宣助手,松嶋亮人助手)及び技術セン
器( 電 子 プ ロ ー ブ マ イ ク ロ ア ナ ラ イ
ター職員(木庭亮二,寺元浩昭).また,
ザー・超伝導核磁気共鳴装置など)の操
技術職員は学外施設,アイソトープ総合
作方法及び分析の具体例を紹介した.技
部門使用に際する諸注意等についての講
術センター職員2名(柴田恭宏,藤高仁)
義を担当した.
が指導スタッフとして参加した.
参加者:教職員,学生,大学院生,研究員など
参加者:教職員,大学院生及び学部生52名
合計140名
広島大学技術センター報告集 第3号 79
廃液回収システム講習会
講習内容
期間:平成18年5月15日,5月30日,
(1)保護具説明会
7月20日,11月16日,11月28日
説明者 ㈱シゲマツ製作所広島営業所
場所:環境安全センター,工学研究科 B4棟117
木村所長
講義室,生物圏科学研究科 C -206講義
(2)保護具装着訓練
室,歯学部 B 棟2階第4講義室 指導者 ㈱シゲマツ製作所広島営業所2名
主催:環境安全センター
内容:廃液回収を利用する教職員,学生を対象
工学研究科管理棟大会議室にて,保護具
3組を準備し,使用方法等の指導を受け,
とし,特に新しく赴任された方,初めて
学生・教職員が実際に保護具を装着し
実験廃液を出される方などには参加をお
た.技術センター職員(清水 高)は保
願いし,廃液回収システムの講習会を実
護具装着指導スタッフとして参加した.
施した.東広島キャンパスと霞キャンパ
参加者:工学研究科36名,先端物質化学研究科
スにおいて,それぞれ前期と後期に開催
7名,合計43名
した.約1時間かけて廃液の分別方法,
事務手続き,廃液回収日の手順,消防法
実用ガラス細工講習会
に関係する安全上の注意点等を説明し,
期間:平成18年8月1日~2日,8月7日~10日
質疑応答を行った.実施会場が東広島
場所:理学部 特殊加工技術開発室2F
キャンパスの場合には,環境安全セン
ガラス素材応用部門
ターの排水及び廃液処理設備の見学も
主催:技術センター理学部等部門
行った.技術センター職員(坂下英樹)
機器・試料製作技術班
は教員とともに講師として参加した.
内容:職員 ・ 学生を対象に,実験に使うガラス
参加者:教職員,大学院生及び学部生
器具の簡単な改良や修理など実用的なガ
計約150名
ラス加工技術の習得を目的とした,基礎
となるガラス細工の実技講習会を開催し
毒性可燃性ガス及び特殊高圧ガス使用に伴う保
た.技術センター職員(南治志,新谷博
護具講習会
志,佐藤勇,藤原雅志)が指導にあたっ
期間:平成18年7月6日
た.
場所:工学研究科管理棟大会議室
参加者:大学院生および学部生 16名
主催:工学研究科部局長支援グループ
内容:毒性可燃性ガス及び特殊高圧ガスの貯蔵
大学院生のための金属工作実習
設備(シリンダーキャビネット)を有す
期間:平成18年8月7日~9日,11日
る施設においては,緊急時の対応として
場所:理学部 特殊加工技術開発室 1F
保護具(空気呼吸器,防毒マスク,保護
金属素材応用部門
衣,保護長靴及び防護手袋)を設置する
主催:技術センター理学部等部門
こととなっている.また,毒性可燃性ガ
機器・試料製作技術班
ス及び特殊高圧ガス使用者は保護具の装
内容:理学研究科・先端物質科学研究科の大学
着訓練を行うとされている.工学研究科
院生を対象に,基本的な金属加工技術の
では教職員・学生を対象に保護具説明会
習得を目的として,当部門に設置してい
及び装着訓練を実施した.
る工作機械(普通旋盤・フライス盤・
80 広島大学技術センター報告集 第3号
ボール盤など)の安全教育および取扱い
輝平盛重,清水高,寸田祐樹,坂下英樹,
方法,加工手順を指導して,参加者が文
塩路恒生,青山幹男,石佐古早実,石飛
鎮を製作した.技術センター職員(村中
義明,藤高仁)が会場準備・受付係・観
正志,石飛義明,浅田竜也,岡本和也)
察補助係・プレゼント係等を分担のうえ
が指導を行った.
事業を実施した.
参加者:大学院生および学部生 15名
参加者:小学生37名,幼稚園児23名,幼児7名,
大人101名 合計168名
第55回広島大学祭
「ビオトープで遊ぼう(水生昆虫の観察)」
工学研究科・生物圏科学研究科・国際協力研究
期間:平成18年11月4日 8:30~17:30
科合同防災訓練
場所:工学部ビオトープ周辺(角脇川護岸東
期間:平成18年12月14日
側)
主催:技術センター
内容:第55回広島大学祭において,小学生・幼
稚園児を対象とした地域社会の親子に自
場所:工学研究科 B4棟116講義室及び D5棟東
広場
主催:工学研究科環境保全・安全衛生委員会
内容:非常災害(地震,火災)が発生した場合
然豊かなキャンパスの情報公開と水生昆
の生命・身体の安全を確保することや,
虫とのふれあいの場を提供することを目
被害を最小限に止めること及び非常災害
的に,「工学部ビオトープ」を会場とし
時の初期消火等の要領を身につけるため
て大学祭事業を実施した.
に, 教 職 員・ 学 生 を 対 象 に,3研 究 科
事業内容:
1.虫取り網によるビオトープ内の水生昆虫
の観察会
2.ビオトープ内の花菖蒲の株分け苗プレゼ
ント
(工学研究科・生物圏科学研究科・国際
協力研究科)合同防災訓練を実施した.
訓練内容
1.防災訓練 講演会 演題「防災と避難」
講演者 東広島市消防署
3.事前に確保しているメダカプレゼント
第一当直司令官 土井 孝氏
技術センター職員(清水高,塩路恒生,
2.消火器を使用した消火訓練
青山幹男)が企画立案し,技術センター
指導者 東広島市消防署員4名
職員(向井一夫,輝平盛重,石原正文,
工学研究科 D5棟東側緑地帯広場で,消
村上義博,清水高,藤枝洋二,野口靖祐,
火器の使用方法等の指導を受け,学生・
寸田祐樹,坂下英樹,下岡丈次,塩路恒
教職員20名が実際に消火器を使用した実
生,青山幹男,石佐古早実,村中正志,
演 訓 練 を 実 施 し た. 技 術 セ ン タ ー 職員
石飛義明, 藤 高 仁 ) に よ り 事 前 に ビ オ
(清水高)が企画立案し,消防署への申
トープの清掃・整備を行った.大学祭の
請,講師派遣依頼,会場準備,3研究科担
準備においては技術センター職員がポス
当者との連絡調整,防災訓練の司会進行
ター製作及び広報活動(地域の幼稚園・
を行った.
保育所への掲示依頼及び学内掲示),会場
看板製作(清水高,塩路恒生),幼児用腰
参加者:工学研究科65名,生物圏科学研究科31
名,国際協力研究科15名 合計111名
掛け椅子製作(島内信廣)を行った.大
学祭当日は技術センター職員(向井一夫,
広島大学技術センター報告集 第3号 81
部門別業務概要一覧
情報メディア研究教育センター部門
◎学内ネットワークサービス業務
・学内基幹及び部局支線ルータ保守
本学 LAN は東広島,霞,東千田3地区の基幹スイッチを中核とし,およそ60の部局支線ス
イッチを通した約170のサブネットより構成
・全構成員対象メール,Web サービス提供
本学構成員2万人に対するメールアカウント提供とホームページの開設
・ネットワークセキュリティ対策
ウィルス感染・スパム発信ホストチェック,該当者への警告メール送信,該当 IP アドレス
のアクセス制限処理
・情報コンセント,無線 LAN のサービス提供
学内およそ50箇所の情報コンセント(有線・無線)を設置
・ホスティングサービス提供
部局・研究室単位でのメール・WEB・DNS 機能の提供
・ハウジングサービス提供
広大 WWW サーバ,もみじサーバ等全学対象サーバの安定稼動に適した環境スペースの提供
◎全学対象情報システムのサービス業務
・教育用,自習用端末室(9室,700台)の運用管理
700台の PC の同一環境(Windows と Linux のデュアルブート)での提供
・デジタルアーカイブ/インターネット配信サービス
利用者からの授業・講習会・講演会映像の受け入れ,メディアセンターホームページからの
視聴サービス
・科学技術計算/統計/可視化等教育研究用ソフトの利用支援
ハイパフォーマンスコンピュータを用いた科学技術計算,アプリケーションサーバによる
SAS,IDL などの統計ソフトや可視化ソフトの提供
◎学生実習の技術指導
・JAVA プログラミング実習での教員学生サポート
広島大学技術センター報告集 第3号 83
理学部等部門
◎実験装置・機器・試料等の製作・改良・メンテナンス及び利用支援業務
・ガラス加工
理化学実験機器・部品等の製作・修理,ガラス・石英ガラス・セラミック等材料の穴あけ
切断・接合・平面研磨加工等
・金属加工
理化学実験機器・部品等の製作・修理,金属・非鉄金属・樹脂の各種切削加工・溶接・接
着,手仕上げ作業,各種機械の調整・修理等
・光学系試料製作
岩石・合金等無機化合物試料の切断,薄片(約30μ 厚)・研磨片の製作,各種試料の機械・
手作業による鏡面研磨等
・木材加工
理化学実験機器用架台・ケース・棚等の製作・修理,木材の各種切削加工・板厚加工等
・工作機械類の利用支援
・教職員,学生への実験装置・機器類の製作・改良のための考案,設計アドバイス
・利用者向け講習会等実施
金属加工,ガラス加工,薄片製作方法等
◎分析機器の操作,保守及び分析測定・解析業務
・分析機器の保守,依頼分析測定及び操作指導
◎高圧ガス製造施設の維持管理
・寒剤の供給,ヘリウム液化システムの運転,保守,管理
◎放射光施設の維持管理及び教育・研究支援業務
・放射光発生装置(光源・加速器)業務
放射光の安定化(電子ビーム安定化)
加速器本体及び周辺機器・設備の維持管理
・ビームライン(放射光利用実験)業務
ビームライン及び実験装置の維持管理
放射光実験装置ユーザーのサポート,実験・研究
◎放射性同位元素等施設の維持管理及び教育・研究支援業務
・使用・貯蔵・保管・廃棄施設の設備・機器の安全取扱指導・助言
・放射線モニタリング,廃棄物処理,事故対策
・放射線業務従事者登録,被ばく管理,健康診断等
・法定の記帳・記録及び各種申請書類の作成
◎生物系施設・設備の維持管理及び教育・研究支援業務
・附属研究施設等の維持管理
両性類研究施設,臨海実験所,植物実験所及び自然植物園,温室,圃場等
・実験材料の採集・飼育・繁殖・栽培管理
ホヤ,ウニ,ナメクジウオ,カエル,コオロギ,珪藻,植物,植物標本等
・船舶の操船・維持管理,観察会等の運営管理,来学者・見学者の対応・案内等
・研究・実験・実習の補助及び研究活動
・ホームページの保守管理,各種データ処理
84 広島大学技術センター報告集 第3号
医学部等部門
◎医学系教育・研究支援業務
・植物,動物,人体組織標本(光学顕微鏡用・電子顕微鏡用)の作製,試料作製
・各種関連機器の操作及び管理
・研究実験機器,実験実習機器の作製及び保守管理
アクリル加工,アナログとデジタルの電気回路の作成
・人体解剖介助業務及び遺体保存処理
・電気生理学的及び生化学的手法による神経細胞の機能解析
・生体試料中薬毒物の分析,前処理法及び機器分析法・迅速検査法の開発
・学生実習での技術指導・支援
◎薬学系教育・研究支援業務
・天然物における生理活性成分の単離及び解析
植物からの化合物の単離及び構造解析と構造活性相関の検討
・機能性分子の開発・新規リン酸化タンパク質分析法の開発
リン酸化タンパク質のウエスタン解析法,電気泳動による分離法の開発
・薬物動態関連研究・ドラッグデリバリーシステムの開発研究
・治療薬物モニタリング法の開発と臨床応用
抗菌薬の PK/PD 研究・医薬品からの薬物の放出特性の解析等
・細胞増殖調節に関わる遺伝子解析
・薬物の細胞内情報伝達経路に対する作用解析
蛋白質の修飾・細胞内局在・分子間及び分子内相互作用解析等
・学生実習での技術指導・支援
◎ RI 共同研究実験施設業務
・放射性同位元素等施設の維持管理
放射性同位元素の使用,貯蔵,保管,廃棄設備の維持及び放射線モニタリング
・放射性同位元素及び機器の安全取扱指導,助言
・放射線業務従事者等の管理及び法令関係業務
利用者登録及び被ばくの管理,健康診断,教育訓練の企画実施
◎動物実験施設業務
・動物,植物の飼育及び育成管理
広島大学技術センター報告集 第3号 85
工学部等部門
◎ものつくり・実習等の教育支援業務(学校工場)
・機械系学生の「工作実習」の技術指導,「CAD/CAM」授業のサポート
・実験装置・機器類の製作,改良のための考案・設計アドバイス
・フェニックス工房(ものつくり施設)の管理運営
・金属・非鉄金属・樹脂・木材等の加工
汎用機械(一般的機械)を使用した作業
NC 機械(マシニングセンター,NC 旋盤,ワイヤ放電加工機,モデリングマシン)を使用
した作業
手工具(手仕上げ加工,組み立て調整)を使用した作業
溶接(アーク溶接・アルゴン溶接,プラズマ切断,塩ビの溶接機)を使用した作業
◎土木・建築系実験機器の運転・保守管理及び研究支援業務
・実験装置及び計測装置等の設計,加工,組立,改良及び計測,データ収集,整理,サンプル管理
・計測器,試験機,クレーン等の運転,保守管理
・論文作成補助,学生実験の準備,支援
・環境測定及びワークステーション,サブネットワーク等の維持管理,ホームページ保守管理
◎電気電子系学生実験及び実習等への教育支援業務
・工学部第2類学部生への電気・電子系及びシステム・情報系工学実験担当
・教養ゼミ等,講義への技術的教育支援
◎化学系実験装置の維持管理及び研究支援業務
・分離・精製,同定測定技術
◎大型強度試験機関連業務
・大型構造物試験機の管理・保守・運転操作業務
・大型構造物強度実験・実物大構造物強度実験支援業務
・大型天井クレーン保守・運転・操作業務
◎工学研究科部局長支援業務
・電気設備・給排水設備・建物・緑地等に関する維持保全業務
・工学部庁舎清掃に関する業務
・工学部内の廃液回収業務
・工学部内廃棄物処理・ごみ処理に関する業務
・工学部の各種点検等の連絡調整業務,光熱水量検針報告業務
◎工学研究科の安全衛生に関する業務
・環境保全・安全衛生委員会関連業務
・安全衛生巡視・地震対策業務
・薬品・高圧ガス・特定機械・防災施設等の管理業務
◎実験廃液の回収及び処理業務
・実験廃液の回収
依頼票の処理,廃液の分別指導,連絡調整,各種集計
・実験廃液の処理
燃焼処理,凝集沈澱処理,吸着処理,水質管理,廃棄物管理
・設備の維持管理
◎一般実験系排水処理(業務委託)の管理監督業務
86 広島大学技術センター報告集 第3号
生物圏科学研究科部門
◎酪農及び肉牛生産システム開発と飼養管理業務
・乳牛及び肉牛の繁殖,個体別飼養管理,郡飼育管理,放牧管理
・乳牛の搾乳,子牛の哺育
・飼料設計,飼料配合
・データ処理とデータベース化
◎草類生産システム開発と改良及び圃場管理業務
・草地管理(作付け計画,埋草調整,乾草調整,機械整備)
・データ処理とデータベース化
◎学生実習及び体験学習補助業務
・教員,院生,学部生の研究補助及び共同研究
◎研究機器の製作,改造,修理及び研究支援業務
・各種実験装置・器具等の設計,製作,改造,修理
・教員,学生の作業の補助,指導,アドバイス及び安全管理
◎食品製造,実験実習支援業務
・食品製造,実験実習補助
◎精密圃場の維持管理及び研究支援業務
・畜舎,圃場管理 教員,学生の研究補助及び共同研究
◎水産系教育,研究支援及び建物維持管理
・船の操船,維持管理 実験装置の管理
・データ処理及び教員,学生の研究補助
・施設の維持管理
広島大学技術センター報告集 第3号 87
先端物質科学研究科部門
◎研究支援
・HUT カルチャーコレクション保存株(菌類などの株のコレクション,1400種以上)及び各研
究室保有株の維持管理
菌株の維持,更新,データベース管理,他機関等への分譲,他機関等からの管理委託
・微生物等のアンプル作成業務
・半導体デバイスの回路シミュレーション
◎研究機器の製作,改造,修理及び利用支援
・半導体関連研究機器及び光学・電子測定機器等の部品設計・製作,改造修理及びメンテナンス
・学生への技術的アドバイス
研究機器・器具製作のための工作機械・工具の使い方,設計方法,図面の書き方,材料選
定,装置の運転など
◎研究設備,装置及び情報関係設備の維持管理
・クリーンルーム関連設備の維持管理
集塵,空調,ヘパユニット,スクラバー,ドラフトチャンバー等の点検・修理,液体窒素タ
ンクの保守・管理
・走査型電子顕微鏡の保守・管理
・ワークステーション等の管理
アカウント管理,バックアップ,アプリケーションソフトェアの導入,ライセンス管理など
◎電気電子系学生実験及び実習等への教育支援
・工学部第二類学部生への電気電子系工学実験担当
実験指導,レポート指導,TA 指導,実験機器の製作・保守
・工学部第三類学部生への基礎化学実験担当
実験指導,TA 指導,実験器具の製作及び試薬調整
・電気系における基礎的な工作実習
◎安全衛生に関する改善業務
・衛生管理者による安全衛生の啓蒙,巡視,新入生への安全教育
・研究用実験室,学生実験室及び工作室の整備
88 広島大学技術センター報告集 第3号
原爆放射線医科学研究所部門
◎密封されていない放射性同位元素等使用施設の維持管理
・使用,貯蔵,廃棄施設の安全管理
・設置機器の点検と使用法に関する指導及び助言など
・放射性同位元素等によって汚染された廃棄物に関する処理など
◎放射線発生装置及び照射装置使用施設の維持管理
・照射線量,照射線量率,エネルギー分布の測定など
・照射実験の際の装置操作
・放射線量を測定する機器の精度管理
・照射実験を行う際に用いる器具などの開発
◎放射線に係る法令に定められた測定と記録
・個人被ばく線量
・管理区域内外及び事業所境界の空間線量率測定
・表面汚染密度濃度
◎放射線業務従事者の教育訓練
・放射線業務従事者(教職員及び大学院生)に対する教育訓練
◎放射線に係る法令関係業務
・関係法令(放射線障害防止法,電離則ほか)の施設への適用とその運営
・施設に関する変更時の各種申請書類の作成
・公的機関が実施する立入検査等への対応
◎教育・研究支援業務
・培養細胞の管理,培養細胞を用いた実験
・遺伝子解析,細胞生物学的解析
・実験動物の飼育管理
・各種標本・試料作製,整理,保管
・分析機器,実験機器の維持管理
・研究・実験補助,学生実習の準備,講義支援
・緊急被ばく医療推進センターが開催する講習会への協力(講師派遣・実習指導等)
◎原爆被爆者データベース管理業務及び開発業務
・被爆者関連情報の維持管理及びプログラム開発とシステム構築
◎原爆・被ばく関連資料の整理,保管,解析
◎原爆放射線医科学研究所電子計算機システムの維持管理
・サ-バ,ネットワーク,端末の維持管理
広島大学技術センター報告集 第3号 89
各種受賞者
賞の名称
日本金属学会
研究技術功労賞
第16回
日本医療薬学
会年会ベスト
ポスター賞
受賞者の
所属・氏名
受賞理由
授与者
工学部等部門
向井一夫
長年にわたり,教育・
研 究 用 の 試 験・ 実 験
装 置, 機 器・ 部 品 類
および各種テスト
ピ ー ス の 設 計・ 製 作
や, 難 加 工 性 材 料 の
成形・加工に携わり,
機械系学生の工作実
社団法人
習の授業において技
日本金属学会
術指導をおこない教
育 補 助 を し て き た.
そ の 姿 勢 は, 広 島 大
学 に お け る 金 属, 材
料研究の発展に多い
に 貢 献 し て お り, そ
の業績は高く評価さ
れる.
医学部等部門
湯元良子
第16回 日 本 薬 学 年 会
で発表した 「 新規院
内 製 剤 ネ オ・ ブ ロ ー
氏液に関するQ&A
と臨床効果 」 989件の
発 表 中, ベ ス ト ポ ス
ター賞8件の一つに選
ばれ表彰されたため.
90 広島大学技術センター報告集 第3号
第16回
日本医療薬学
会年会会長 宮本謙一
推薦者の
所属・氏名
授与
年月日
広島大学
大学院
工学研究科
教授 柳澤平
平成18年
3月21日
平成18年
10月1日
編集後記
平成16年4月に発足した技術センターも4年目となり,過渡期に入りました.全学的な支援
ニーズに応えるため,技術員各々の仕事だけでなく,技術センターの運営にも変化が訪れて
います.そういった中,平成18年度報告集編集委員会で報告集第3号の編集を行ってまいり
ましたが,技術員各々が今までの仕事に加え,新たな試みを始めているということを実感し
ました.技術センターがイニシアチブを取った,学内だけでなく学外向けの講習会やイベン
トが増えてきたのも,その変化の一部だと思います.与えられた仕事をこなしていくだけで
はなく,自分達のシーズを全学的に示していく姿勢が重要となってきていると感じました.
技術センターには多分野にわたり様々なシーズを持った人間が集まっております.まだまだ
様々なことを行っていけるだけの潜在力を有していると私は思います.本報告集などもその
実施についての報告を掲載し,技術センターの潜在力を多くの方に示せるものになっていけ
ばと期待しています.
最後に,私のような若輩者が編集委員長を務めさせていただいたにも関わらず,本報告集
の編集を無事終えることができましたのは皆様のご協力のお蔭と考えております.本報告集
の発行に際し,ご助言・ご協力をいただきました藤久保昌彦技術センター長,岩谷秀秋技術
統括,平成16・17年度報告集編集委員会委員長,同副委員長に厚くお礼申し上げます.ま
た,学術部学術推進グループ,技術センター職員の皆様,投稿者の皆様のご協力に深く感謝
いたします.
委員長 木庭 亮二
平成18年度技術センター報告集編集委員会
委員長
木庭 亮二
(理学部等部門)
副委員長
柿村 順一
(医学部等部門)
副委員長
寺元 浩昭
(理学部等部門)
中谷 宣弘
(医学部等部門)
坂下 英樹
(工学部等部門)
土橋 誠
(工学部等部門)
木原 真司
(生物圏科学研究科部門)
笹谷 晋吾
(原爆放射線医科学研究所部門)
広島大学技術センター報告集 第3号 91
ISSN 1880-3032
広 島 大 学 技 術 セ ン タ ー 報 告 集
広島大学
技術センター報告集
第3号
広島大学技術センター報告集 第3号 平成18年度
発行:広島大学技術センター
TEL:082-424-6035 FAX:082-424-5890
URL:http://www.techc.hiroshima-u.ac.jp
18
年度
〒739-8524 東広島市鏡山1丁目1番1号
平成
発行年月:平成19年7月
第3号 平成18年度