SFに 描 か れ た 21 世 たかなし しゅんいち 高梨 俊一 一般教育助教授 み さき VS 紀 のりひろ 御前 憲広 一般教育専任講師 な可能性というのは、以前からいろいろ 象徴っていうんでしょうか。 指摘がある。ただそういったものに人間 高梨:象徴っていうか、コミュニケーシ 司会:いよいよ 2001 年を迎えたわけです が乗ったり、過去なり未来なりから情報 ョンボードみたいな。 が、2001 年というと SF では有名な「2001 をとってくるっていうところまではでき 年宇宙の旅」という映画がありました。 御前:それに触れることによって、人類 ないんじゃないかと。 が進化してきた。400 万年前に初めて道 たいへん難しい映画だったと思うんです 御前:未来から通信を受け取ることはも 具を使うようになる直前にモノリスに触 が、どういうふうに読み解いたらいいの しかしたら可能かもしれないなあと、根 っているわけです。 か、その辺からお話を始めていただきた 拠なしに思ってます。今まで SF 小説に書 高梨:それとおもしろかったのは、 「2001 いと思います。 かれて、不可能だと思われていたことは、 年∼」と比べると、われわれの現実のほ 御前:あれには、もとになる発想がある だいたいが実現しているんですよ。オー んです。「地球幼年期の終わり」という、 うが負けてるんですよね。今、人類は一 ソリティーが可能だといえばまず可能で、 同じ原作者の A.C.クラークの本の中に、 生懸命ちっぽけな宇宙ステーションを作 不可能だといってもまあ可能だという ってますけど、 (「2001 年∼」では)もう 人間が、現在の人類からさらに進化して でかいやつができていて、人類は火星に 「クラークの三法則」注)の第一法則ってい 別の生命体に移っていくという発想があ うのがあるんです。ですからタイムマシ 行っていて、木星に行けるような宇宙船 りまして、その後、そうは問屋がおろさ ンももしかしたら将来できるかもしれな も作っていると。しかし、一つだけわれ ないぞ、というのが「2001 年∼」なんで い、とは思ってますけど、千年先か二千 われのほうが勝ってると思ったところが すね。人類が進化していく間、コンピュ あるんです。フロイド博士という人が、 年先か。それから、まだ実現してないの ータが人類と同じようなレベルの知性を は バ サ ー ド ・ ラ ム ・ ジ ェ ッ ト。バ サ ー 宇宙ステーションの公衆電話から地上の もつようになり、それを見ていた超存在 ド・ラム・ジェットに乗って行けば、原 自宅に電話をかけるんですが、ものすご が人類とコンピュータを戦わせて、勝っ 理的には宇宙の果てまで行ける。それは い電話料金払ってるんですよね、ほんの たほうを生き延びさせるというテーマの ちょっと話すだけで。当時の考え方だと、 物理学の法則には反していないんです。 話なんです。で、ボーマン船長と HAL が 司会:バサード・ラム・ジェットという 宇宙から地球に電話をかけたらすごく高 戦って、ボーマン船長が勝った結果、新 のはどんなものなんですか? いだろうというイメージでおもしろがっ しい人類の祖先となるスターチャイルド 高梨:簡単にいいますと、宇宙空間には てつくったんでしょうけれども、通信衛 が誕生する。 ごくわずかですが水素がありますね。そ 星を使っての電話代はわれわれのほうが 高梨:そうですね、私もだいたい御前先 れを、地球の軌道ぐらい大きな磁気かな はるかに安いだろうと(笑) 。そういう点 生と同じ考え方なんですけれども、あれ んかの網を使って吸い込んで、核融合さ ではこちらのほうが進歩してるかな。 は機械と人間が共に進化していく話でも せてエネルギーを得て進んでいくという ありますね。 「2001 年∼」は、猿が初め システムです。 て道具を使うことによって人間になって 司会:燃料は積まなくていいんですか? いきます。道具のほうも人類の頭がよく 司会:「2001 年∼」では、道具の進化と 高梨:ええ、ただスピードには上限があ なっていくのと同じように、ある意味で いうようなことが描かれているわけです りますけどね。止まっている水素を吸い 手を取り合って進化していき、進化の原 が、SF に登場する機械の中で、有名だけ 込んで加速してそれを放り出すわけです 因をつくった超存在に、一緒に会いに行 れどまだ実現していないものというとど から。 くわけですよね。その最後のところで不 んなものがあるでしょうか。 御前:タイムマシンとそれがなんで関係 一致がおきて死闘になるわけですけれど 御前:なんといってもタイムマシンです するかというと、バサード・ラム・ジェ も、超存在がそれを望んでいたのかどう ね。科学啓蒙書として「タイムマシンの ットがうまく働いたとすれば、光速に近 かっていうと疑問ですね。人類と機械を いスピードが出る。そうすると光の速さ 対等に見ると仲良く来られるはずなのに、 作り方」という本がありますが、これを 読んでもタイムマシンはできません。 「タ なんで一方しか来ないの、と超存在の方 イムマシンの作り方」っていう題名なん も思っていたんじゃないかなという気も 第一法則− 著名だが年配の科学者が、なにご ですけど、タイムマシンがどうしてでき しなくはありません。 とかが可能だと言えば、それはまずまちがいなく 正しい。しかし彼が不可能だと言えば、たいてい ないかということが書いてあるわけです 司会:「2001 年∼」では、黒い板がシン の場合はまちがっている。 ボリックに使われていますが、どういう (笑)。今の物理学の法則に合わないから 第二法則− 可能性の限界を知る唯一の方法は、 それを超えて不可能の段階に入ることである。 なんですが。 意味があるんでしょうか。 第三法則− 充分に進歩した技術は、魔法と区 御前:あれは、モノリスっていうんです。 高梨:量子レベルでしたら、一般相対性 別できない。 理論の範囲内で時間逆転したりするよう 訳すと一つの石という。それが超存在の @@@@@@@@e? 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Takanashi 高梨: 40 年ぐらい前ですかね、手塚治虫 さんが描いたマンガで透明人間ものがあ りまして、これが非常によくできてまし て、透明人間になるんですけど、目だけ は見えるんです。よく見るとわかっちゃ うんですけどね。やっぱり手塚先生たい したもんだな、と後で思って。 司会:じゃ、眼球だけ動いてるんですか。 高梨:そうです。なかなか不気味でした、 その絵は。手塚さんの絵ですから非常に 目が大きいんですけどね(笑)。 司会: SF っていうと火星旅行とか宇宙ス テーションなんていうのが定番ですが、 こんなのも資金さえあれば実現可能なん でしょうか。 御前:あとは資源ですね。たとえば、火 星にしょっちゅう旅行すると宇宙船をあ ちこちに捨ててまわるわけですね。ある いは燃料を捨ててしまうわけですから、 そういう、資源が枯渇するという問題が なければ、火星旅行はすぐにでもできる んじゃないかな。そうでもない? 高梨:今、NASA なんかが考えている火 星旅行というのは、火星にとりあえず宇 宙船を送りこんでおいて、火星のごくわ ずかな水とかそういったものを分解して、 帰りの燃料はそれを使って間に合わせよ うというプランのようですね。実際にや ろうと思うと燃料節約型にならざるを得 ないのかもしれません。 司会:それから、軌道エレベーターなん ていうのもあるようですが、これはどん なものなんでしょう。 御前:静止衛星と赤道上の1点とを綱で 結んで、それをつたって人工衛星との間 を上下しようというアイデアなんです。 利点は、物を持ち上げるときに反対側に 同じ重さをつけておけば、エネルギーが ほとんどいらないこと。問題点は、まだ 3万6千 km のかなたから地上までつな ぐ素材が存在しないということです。お もりをつけるかつけないかというのは ぜんぜん問題じゃないんです。綱が自 分の重さで落っこちて切れちゃう。 高梨:ロケットを打ち上げる場合にす ごく損なのは、打ち上げているときに エネルギーの大部分を使って残ってる燃 料を運んでいる点です。ところが軌道エ レベーターの場合ですと、物を上げたり 下ろしたりするだけのエネルギーです。 燃料を上げるために無駄な資源を使わな くていい。それが最大のメリットでしょ うね。 御前:学術論文なんかでも、その可能性 が書かれていて、ぜんぜん荒唐無稽な話 じゃないですよ。 司会:では逆に、SF でも予測できなかっ たような機械って、何かありますか? 高梨:やっぱり携帯電話ですね。もちろ ん SF の中でも、テレビ電話とかもっと高 級そうな機械はたくさん出てきますけれ ど、ごく普通の市民の誰もがポケットに 入れていて、いつでもどこでも世界中の 人と話ができるっていう世界は、私が知 るかぎりではそういう SF はありません。 あとはパソコンとインターネットでしょ うね。SF には、神様のように頭のいいコ ンピュータが人類を支配していたり、人 類に協力しているものはたくさんありま すけれど、現在のインターネットみたい に、個別的にもデータもたいしたことは ないんだけれども全世界につながってい て、それを検索すればいろんなことが簡 単にわかるような世界、それも集中シス テムじゃなくて、分散システムでやって るっていうのはないですね。 御前:携帯電話のかわりに、中央コンピ ュータを管理しているメッセージボード みたいなものがあって、電話ボックスみ たいなところに入ってメッセージを聞く とか見るとか、そういう感じのものはあ るんですけど、各人がコンピュータを持 ってるというのは、つい最近ですね。 司会:機械だけじゃなく、21 世紀の社会 全般のありかたについて、SF ではどんな ふうに描かれていますか? 御前:ソ連の SF なんかは、とにかく将来 は世界全体が社会主義国になってて、ユ ートピアが現れるというふうに描かれて いましたけど、反ユートピアというよう 1960 年代には、こんなものが実現・予測されていました。(A.C. クラーク「未来のプロフィル」より) 年代 輸 送 通 信 情 報 過 去 1800 機関車 カメラ バベイジ計算機 電信機 用 具 製 造 蒸気機関 生物学 化 学 無機化学 物理学 16 1850 汽船 有機化学 1910 真空管 Circular 1930 1940 ラジオ 人工衛星 GEM (エアカー類) テレビ レーダー テープレコーダー トランジスター メーザー 電子計算機 レーザー サイバネティックス 海水からのマグネシウム分離 原子力 染料 染色体発見 遺伝子発見 遺伝学 ヴィタミン発見 プラスチック開発 College of Science and Technology Nihon University 1950 ジェット ロケット ヘリコプター ジーゼル機関・ガソリン機関 マス・プロダクション 窒素の固定 進化論 分光器 エネルギー保存の法則 エックス光線 電子説 電磁気学 放射能 原子説 1920 飛行機 電話 蓄音機 事務用機械 工作機械 電気器具 尿素の合成 理工 1900 自動車 アイソトープ 量子論 蜂の言語 ホルモン 波動力学 相対性理論 中性子発見 原子の構造 不確定性原理 核融合爆弾 オートメーション 合成化学 抗生物質学 硅素 トランキライザー ウラニウム核分裂 粒子加速機 無電天文学 I.G.Y. VOL.30 2001.WINTER No.107 な 小 説 も あ り ま し て、た と え ば ジ ョ ー と思うんですが、江戸時代は太陽のエネ ジ・オーウェルの「1984 年」という小説 ルギーを使って、作ったものはリサイク は完全な管理社会になっている。オルダ ルして生きてきたわけです。世界中でも ス・ハックスリィが書いた「すばらしい し、石油に限らず、エネルギーは全部外 新世界」という小説も、全部が試験管ベ へ輸出しないで自分たちのところだけで ビーになってて、父親とか母親という概 使いたいとなると、日本はたちまちのう 念がない。生まれてきた子どもは全部い ちにエネルギーが足りなくなる。そうす っしょに集められて、すごく丁寧に育て ると、江戸時代に実験したことをもう一 られるという世界を書いています。 度やるべきじゃないかと、そういう話で 司会:そういう、未来が管理社会とか全体 す。これはアンチユートピアです。 主義社会だというSFは多いんでしょうか。 司会:今、エネルギー問題のお話が出ま 御前:多いですね。たいていは、第二次 したが、現実でも環境をめぐってさまざ 世界大戦前後に集中しています。コンピ まな問題があります。SF で、環境問題に ュータが支配するっていう話もけっこう 関した小説というのはあるんでしょうか。 ありますよ。 御前:冗談で言えば横田順弥の「宇宙ゴ 高梨:コンピュータ支配社会というのは、 ミ戦争」なんかがそうです。それぞれの 管理主義社会のいきつくところですよね。 惑星でゴミを捨てる場所がなくなって、 御前:そのタイプの究極の SF はクラーク お互いにゴミを捨てあいに行くという話 の「都市と星」です。そこでは、人間は ですね。 新しく生まれないんです。死にたくなっ 高梨: J.G.バラードの「燃える世界」で たらコンピュータのところに行って、コ は、海の表面に人類がいろんなゴミを捨 ンピュータがその人間がもってる情報を てた結果、高分子ポリマーが海の表面を 全部記憶して、肉体を抹消する。しばら 全部覆っちゃうんです。そのために海水 くすると同じ情報をもった人間が、コン が蒸発しなくなって、地球が全部砂漠化 ピュータによって再生される。そういう していくと。あと、B.W.オールディスの 背景の話ですね。 「地球の長い午後」の舞台は超未来で、地 司会: SF にはバラ色の未来ってないんで 球が温暖化して二酸化炭素を出しすぎた しょうか(笑)。 せいで、植物が大量に繁茂して世界を支 御前:ないことはないですよ(笑)。J.P. 配している様子を描いています。 ホーガンの「未来の二つの顔」とか。こ 御前:さっきのゴミの話に戻るんですけ れも最初にコンピュータと人間が戦って、 ども、21 世紀は、たぶん日本ではゴミを そこで機械と人間が共存していく社会を 捨てる場所がなくなる可能性が大きいん 選ぶか、それとも戦ってどちらかが滅び で、ゴミを再生する技術が進歩するんじ るような社会を選ぶかという話で、結局 ゃないかと思います。今でもやろうと思 最後には共存して生きていくという選択 えばやれないことはないんですけど、要 をコンピュータのほうがするんです。 するに金がかかるんでしょうね。 高梨: 70 年代ぐらいにはよくヒッピー的 ユートピア未来 SF みたいなのってありま 司会:いろいろとお話しいただきました したよね。将来は、人類が医学とかの科 が、最後に、ではいったい人類はこれか 学技術は使いながらも、一方で重厚長大 らどうなっていくのかということは、SF な技術とか、捨てちゃうものは捨ててし ではどんなふうに描かれているんでしょ まって、田園的なところで暮らしていく うか。 という。 御前:石川英輔の「2050 年は江戸時代」 御前:最初に「地球幼年期の終わり」と という小説では、確か石油の輸入が止ま 「2001 年∼」とを関連させたんですけど も、「地球幼年期の終わり」は人類が新し ったせいで江戸時代の生活に戻ったんだ 現 在 未 来 1960 宇宙船 通信衛星 1970 1990 2000 宇宙観測所 月着陸 核融合ロケット 惑星着陸 翻訳機 トランシーバーの普及 1980 惑星植民 原子核の構造 2020 核融合動力 鯨類言語学 地球外環境生物学 サイボーグ 重力波 特集:21世紀! 夢を語ろう。 2030 無線エネルギー 海底鉱業 時間感覚の増進 論理語 ロボット 2050 N. Misaki うという生命なんです。で、最近の若い 人たちが、インターネットとか携帯電話 で喋らないではいられないというのは、 そういう方向への一歩ではないか、と思 ってるんですが、いかがでしょうか。 司会:そこでは個人というものはなくな っちゃうんですか。 御前:うん、全部、みな完全にひとつの 精神体になるわけだから。 司会:肉体もなくなるんですか。 御前:肉体もそのうちほろびるでしょう。 肉体はそなえたまま宇宙に旅立っていく 話ですので。 高梨:そういう形で人類が肉体を脱ぎ捨 てて高いステージに行くというのがある 一方で、コンピュータ内の、いわゆるサ イバースペース、バーチャルスペースの 中に、人間の記憶とか意識とか個性とか っていうものを、一つのプログラムとし てとりこんでしまって、プログラムとし て人間が生きていくというのもあります ね。人間の本質をプログラム化してしま えば、いちばん安上がりに維持できる。 実際の社会でいろんな体験をするのはた いへんだけど、バーチャルスペース上で やればすごく簡単という考えですね。 司会:今日は楽しいお話をありがとうご ざいました。SF はけっして夢物語ではな く、現実がどうなのか、どうあるべきな のかを考えるうえで、役立つことがよく わかりました。21 世紀、SF に描かれたよ うな人類滅亡に至らないように考えてい きたいと思います。 2060 2070 重力管理 “宇宙駆動” 記憶レコーダ 地球外生物 との接触 天候管理 人工突然変異 2080 準光速達成 教育機 2090 恒星間飛行 物質移動 機械知能の 物品再生の 人間凌駕 ための記録機 惑星工業 気候管理 2100 地球外生物 との邂逅 世界頭脳 複写製造機 宇宙工業 宇宙鉱業 遺伝管理 知能動物 生物工学 亜核構造 2040 地球の構造 惑星の構造 探査 探査 全地球図書 精神感応 装置 館 人工知能 燃料電池 蛋白の構造 2010 い生命体として進 化していくという 話なんですけど、 進 化 す る 先 は 、人 間の意識とか精 神が完全 に一体 化して しま 核触媒 人工生命 不滅の生命 人工冬眠 宇宙空間時間 の歪曲 理工 Circular 17
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