日本進化学会ニュースvol.9 No.2

日本進化学会 入会申込書
<年月日(西暦)>
年
月
日
№
Vol . 9 No . 2
ふりがな
名
November 2008
前
ローマ字
所
属
所属先住所または連絡先住所
〒
TEL
FAX
e-mail
以下から選ぶかまたはご記入下さい(複数記入可)
専門分野
人類、脊椎動物、無脊椎動物、植物、菌類、原核生物、ウイルス、理論、
その他(
研究分野
)
分子生物、分子進化、発生、形態、系統・分類、遺伝、生態、生物物理、情報、
その他(
)
以下から選んで下さい
一般会員
・
学生会員
注)研究生や研修生などの方々の場合、有給ならば一般会員、無給ならば学生会員を選んで下さい。
学生会員は必要に応じて身分の証明を求められる場合があります。
申込方法/上記の進化学会入会申込書をご記入の上、下記の申込先へ郵便・ FAX ・ e-mail でお送り下さい。
申 込 先/日本進化学会事務局 〒 102-0072 千代田区飯田橋 3-11-15 UEDA ビル 6F(株)クバプロ内
● TEL : 03-3238-1689 ● FAX : 03-3238-1837 ● http://www.kuba.co.jp/shinka/ ● e-mail : [email protected]
第 10 回大会報告
1
2
<年会費の納入方法>
4
【年 会 費】
一般会員
賛助会員
3,000 円 / 学生会員
9
2,000 円
30,000 円(一口につき)
17
46
53
59
【納入方法】
① 銀行振込みをご利用の場合
(銀 行 名)三井住友銀行
(支 店 名)飯田橋支店
(口座種類)普通預金口座
(口座番号)773437
(口座名義)日本進化学会事務局
代表
株式会社 クバプロ
② 郵便振込みをご利用の場合
(口座番号)00170-1-170959
(口座名義)日本進化学会事務局
64
69
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
1
日 本 進 化 学 会 第 10 回 大 会 の ご 報 告
大会実行委員長・高畑 尚之(総合研究大学院大学)
ご存知のように本年は、日本進化学会創立10 周年にあたるとともに、故木村資生博士によって分
子進化の中立説が提唱されて以来 40 周年にあたります。さらに、ダーウィンの生誕からは200 年目
また種の起原刊行からは150 年目の前夜ということであり、各国で「進化」に関する関心が高まり
さまざまな行事が準備されている年でもあります。進化学史におけるこのような記念すべき年に東
京大学駒場キャンパスをお借りして、2008 年 8 月 22 日(金)から24 日(日)まで本大会を恙無く開催
できたことは責任者としておおきな喜びです。
本大会のプログラムについては、進化学に関係した広い分野をできるだけカバーし、かつ国際性
を高めたいと願っていました。その結果、13 件のシンポジウムのテーマは分子から人間社会まで及
び、そのうち6 件が英語で行われました。同様のことは、20 件のワークショップについてもいえま
す。この他に、夏の学校(4 件)
、公開講演会、ポスター(一般 127 件、高校生 11 件)と口頭発表
(64 件)がありました。また、大会の前日には、神奈川県にある湘南国際村にて、高校生を対象と
した国際サテライトシンポジウムを各方面のご協力をえて開催しました。趣旨は大会のそれと同じ
で、進化学の面白さや国際会議の雰囲気を若い人に感じてもらうことでした。全体として盛りだく
さんの企画になりましたが、これはひとえにプログラム委員のご尽力によるものです。
駒場キャンパスでは多くの方にお世話になりました。セキュリティーに関することの他、博物館
における展示にもご協力をいただきました。また、学生や研究生のみなさんの献身的な働きは大会
運営の要でした。この経験がこれからのご活躍の糧になることを願ってやみません。皆様のお陰で、
700 名以上の会員と非会員の参加者に質の高い情報交換の場を提供できたことに対して、心からお
礼を申し上げます。最後に、日本進化学会、総合研究大学院大学、東京大学、およびシンポジウム
やワークショップのオーガナイザーからは、絶大な財政的支援を賜りましたことを記しておきたい
と思います。
2008 年 9 月
日本進化学会第 10 回大会収支決算
収入項目
学会からの大会援助金
大会参加費
懇親会費など
総合研究大学院大学より補助
企業参加費
合計
確定金額(円)
1,500,000
2,613,000
1,261,850
4,500,000
23,000
9,897,850
支出項目
確定金額(円)
招待講演者旅費補助
2,730,048
シーラカンス搬送費・移設作業・保険代
757,065
進化学会大会ポスター
73,000
予稿集
366,240
大会会場費
499,100
運営費(アルバイト謝金等)
1,105,150
雑費(発送費、修理費、手数料、雑貨)
168,083
機材、会場設営
607,992
懇親会等
1,366,256
ポスター軽食
120,000
サテライト会場費・同時通訳・バス借り上げ 704,750
サテライトポスター・チラシ
182,910
学会からの大会援助金返金
1,217,256
合計
9,897,850
2
日本進化学会ニュース Nov. 2008
2008 年度学会賞等
授賞理由
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
3
持つLWS 遺伝子が種の分化と形成に関与したこ
とを示した。さらに LWS 遺伝子を詳細に研究
し、視覚の適応が種分化を引き起こしてきたこ
選考委員長(会長)
長谷川眞理子
やタンパク質の1 次配列の解析だけで明らかに
とを明らかにした。これらの研究成果はアメリ
できる生命科学の研究には限界がある。特に、
カ科学アカデミー紀要(PNAS)や PLoS Biology
タンパク質の分子進化、機能や構造の進化につ
などの雑誌に発表されている。活発な研究活動
【日時】2008 年 8 月 2 日(土)13 時〜 15 時 30 分
いて研究を推進しようとする際には、この限界
と、優れた研究業績は日本進化学会研究奨励賞
【場所】UEDA ビル6 階(株)クバプロ
は明らかである。郷通子博士の進化学における
の授賞にふさわしい。
【出席】長谷川眞理子(会長:動物行動学)
大きな貢献は、タンパク質の立体構造に基づい
斎藤成也(副会長:ゲノム進化学)
た分子進化および立体構造と遺伝子構造の進化
塚谷裕一(進化発生学)
についての研究を発展させたことである。タン
厳佐
パク質の分子進化は従来アミノ酸の1 次配列の
庸(進化生態学)
【研究奨励賞受賞者】
●沓掛展之博士(総合研究大学院大学)
「哺乳類の社会進化に関する至近・究極要因の
総合的理解」
郷通子会員(右)に日本進化学会賞を授与する長谷川
眞理子会長(左)
パクである。一般に、EF-1α遺伝子は全生物の
共通祖先から垂直伝播してきたと考えられてき
たが、稲垣博士は、一連の研究により実際のEF-
西田治文(古植物学)
置換の過程についての解析が中心として行われ
颯田葉子(事務幹事長:分子進化学)
てきたが、ここに立体構造を基礎にしてその機
沓掛博士は、哺乳類(ヒトを含む霊長目、食
1α進化は垂直伝播だけで説明できないことを明
能や構造、また遺伝子の構造との関連で分子の
肉目、齧歯目)の詳細な行動観察・生態調査に
らかにした。最近では、世界に先駆けてEF-1α
進化を捉えるという新しい視点を取り入れた。
基づき、動物における社会進化を進化生態学の
を起源とする新奇ペプチド伸長因子様タンパク
これらの研究は、タンパク質の立体構造と遺伝
観点から研究してきた。動物の社会構造・社会
(EFL)を報告した。さらにEF-1α・EFL 遺伝子
子の構造の関連に関する世界的な議論に大きな
行動には大きな種間・種内変異が見られるが、
が共存する珪藻類を同定し、その細胞内では2
影響を与えた。さらに、郷博士はタンパク質の
沓掛博士は社会的多様性の決定要因として「繁
種のEF 遺伝子が機能分化している可能性を指
立体構造と機能単位に関する研究に基づき、ゲ
殖の偏り」に着目し、種間比較法を用いた分析
摘した。また綿密なEFL 遺伝子探索により、珪
寺井洋平博士(東京工業大学)
ノム配列解析から明らかになった未知のタンパ
により、多様な社会構造を還元的に理解する理
藻類では水平伝播したEFL 遺伝子の2 次的消失
沓掛展之博士(総合研究大学院大学)
ク質の機能の推定や、立体構造のモデリングの
論的枠組みを提唱した。社会生活のコストに関
が頻繁におこっていることを明らかにした。今
稲垣祐司博士(筑波大学)
方法開発等にも貢献した。郷博士が長年にわた
する研究では、個体間の対立やその結果生じる
後の研究の発展が大いに期待され、日本進化学
り取り組んできたタンパク質の立体構造と機能
ストレスが個体の適応度や社会行動に与える影
会研究奨励賞の授賞にふさわしい。
中井咲織氏(立命館宇治中学校・高等学校)
の進化に関する研究はタンパク質の分子進化研
響を研究し、協力的社会における個体間の競争
なお、8 月 15 日に公益信託進化学振興木村資
究の発展に新たな視点と論点をもたらした点で、
の存在を示した。また、動物は個体間の対立を
生基金の木村資生記念学術賞(木村賞)の選考
大きく評価されている。以上の業績は進化学会
低減させる行動(対立解決行動)によって群れ
委員会が開催され、日本進化学会から推薦され
賞授賞に十分値する。
生活を維持していることを明らかにした。大型
【オブザーバー】 大田竜也
選考の結果、下記の方々への授賞を決定した。
【結果】
○日本進化学会賞受賞者(木村賞候補者)
郷
通子博士(お茶の水女子大学)
○研究奨励賞受賞者
○教育啓蒙賞受賞者
た郷通子博士が木村賞受賞者に選ばれた。
各受賞者の業績と授賞理由は下記の通りであ
る。
哺乳類の動物行動学分野での有望な若手研究者
【研究奨励賞受賞者】
●寺井洋平博士(東京工業大学)
として、日本進化学会研究奨励賞の授賞にふさ
わしい。
「種の分化と形成の分子機構に関する研究」
【日本進化学会賞受賞者】
●郷
通子博士(お茶の水女子大学)
「タンパク質の立体構造と遺伝子の構造の進化
的起源に関する研究」
寺井博士は種の分化と形成の機構を分子レベ
ルで明らかにすることを目標に研究を行ってき
た。ヴィクトリア湖のカワスズメ科魚類を材料
に、種の分化と形成に関与してきた多くの候補
【教育啓蒙賞受賞者】
●中井咲織氏(立命館宇治中学校・高等学校)
「中等教育における「進化のしくみ」を中心とし
た授業の開発とその普及」
ここ 10 年の間に、中学や高校の教科書から
「進化」はどんどん消えていった。その要因に
は、進化を正しく理解している生物教員が少な
【研究奨励賞受賞者】
●稲垣祐司博士(筑波大学)
「垂直伝播、機能分化、水平移動によるEF-1αと
その関連因子の進化」
いために、これまでも授業でほとんど教えられ
てこなかったことや、教科書が「進化のしくみ」
を適切に理解できる構成になっていなかったこ
とが考えられる。そこで、
「進化はわかりやすく
今日、多種多様な生物のゲノム配列が決定さ
遺伝子を解析し、光受容体のタンパク質成分の
ペプチド伸長因子1α(EF-1α)は、タンパク
短時間で教えられる」ことを示すために、「進
れ、プロテオーム解析もすすんでいるが、DNA
オプシン遺伝子群の中で、長波長領域に吸収を
質合成に関わる進化的に高度に保存されたタン
化のしくみ(突然変異と自然選択)
」を小学生
4
日本進化学会ニュース Nov. 2008
に15 分間で教えるサイエンスショーを開発して
賞)や、ダーウィン展(大阪展)のワークシート
発表し、子ども審査で3 位に入賞した。それ以
づくり参加、進化学プレシンポジウム2008 での
降、理科教育系雑誌への論文発表、進化の授業
法についての講演、新しい学習指導要領に向け
5
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
発表など、研究者や一般人に対しても進化教育
への理解を深める情報を発信している。これら
(1 筑波大・院生命環境、2 日本学術振興会特
石川麻乃、三浦 徹(北大院・環境科学)
[P-082] キンギョの進化的起源
1
別研究員(DC1)
)
1
2
小見山智義 、小林広幸 、舘野義男 、猪子英
1
2
2
1
俊 、五條堀孝 、 池尾一穂 ( 東海大学医学
2
[P-108] 植物オルガネラにおけるRNA エディテ
ィングの部位とタンパク質立体構造の関係
た進化の単元構成の提言などを行っている。同
の中井氏の活動と功績は、今後の進化学におけ
部、 国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ 研究
郷 通子 1, 2, 3、由良 敬 4(1 お茶大、2 長浜バイ
時に、大学研究者に向けた進化教育の提案(日
る進化教育の啓蒙の範となるものであり、日本
センター)
オ大・バイオサイエンス、3 東京医科歯科大、
本進化学会第 6 回東京大会で優良ポスター賞受
進化学会の教育啓蒙賞の授賞にふさわしい。
[P-101] 形態変化を伴う誘導防衛は複数回進化
4
お茶大・院人間文化創成科学)
したか?
吉田祐樹 1、高林純示 2、岡田清孝 3(1 京都大・
2
3
院理、 京都大・生態研センター、 基生研)
ポスター賞 報告
今年度のポスター賞は、大会実行委員の田辺
[P-102] クレプトクロロプラストを持つ新規渦
よる存続
山口晴代
秀之、大田竜也が担当し、幅広い分野をカバー
佐藤行人、橋口康之、西田 睦(東京大学海洋
することを念頭に、合計12 名の審査員(末尾参
研究所)
規、河田雅圭、倉谷
滋、小林一三、
嶋田正和、佐々木顕、颯田葉子、高野敏行、
1
、甲斐 厚 、中山 剛 、井上 勲
徹
1
高校生ポスター賞
照)により、なるべくすべてのポスター発表を
◆優秀ポスター賞
見聞きしたうえで、各審査員が良いと考えたポ
[P-005] 戻し交配で戻らない!?―アイナメ属の
スター発表(高校生ポスター発表は除く)を投
種間交雑における Hybridogenesis(雑種発
票する方法で選定した。各審査員は最大10 件ず
生)の可能性―
つ投票し、得票数の多い順に、最優秀ポスター
1
今西
田辺秀之、舘田英典、深津武馬、三浦
鞭毛藻の共生体の起源を探る
1, 2
●審査員
1
2
3
1
木村幹子 、河田雅圭 、宗原弘幸 ( 北大院・
2
3
平成20 年度高校生ポスター賞には、11 件の応
件、優秀賞 4 件、敢闘賞 5 件を決定した。
募があった。高校生ポスターは、ポスター会場
昨年度の高校生ポスターでは参加者全員に参
の入口付近に設置し、多くの大会参加者が閲覧
加賞を高校生に授与したが、一律に参加賞を授
賞(1 件)
、優秀ポスター賞(4 件)
、優良ポスター
環境科学、 東北大院・生命科学、 北大・FSC)
できるようにした。一般のポスター発表時間の
与するのではなく最優秀賞、優秀賞などに分け
賞(5 件)を以下のように決定した。結果は懇親
[P-021] ツノカメムシ類における宿主−腸内細
1 時間前に高校生発表者は集合しポスター発表
ることが望ましいという意見を受け、今年度は
会で発表され、長谷川眞理子 日本進化学会会長
菌間の共種分化と新規な共生細菌伝達器官
を開始した。一般のポスター賞より1 時間前に
最優秀賞、優秀賞、敢闘賞を授与するに至って
開始したのは、高校生ポスター賞受賞者の発表
いる。高校生のポスターの内容を閲覧していた
を一般のポスター発表の時間に行うためである。
だいた方々には賛同していただけると思うので
名でポスター賞を授与した(賞状は後日郵送)
。
(lubrication organ)の発達
1
1
2
1
菊池義智 、細川貴弘 、二河成男 、孟 憲英 、
3
1
1
◆最優秀ポスター賞
深津武馬( 産総研・生物機能工学、
鎌形洋一 、
審査員・コメンテーターが各々のポスターの説
あるが、実際には今年度の高校生のポスターの
[P-075] 魚類特異的ゲノム倍化に由来する多数
2
明を受けコメントしその後に審議することを非
レベルは非常に高く、またここ数年でのレベル
常に密なスケジュールの中で行った。各ポスタ
アップには目を見張るものがあった。その中で
ーを端的に説明した高校生、また様々なコメン
これら三賞を決定することは容易ではなく、長
トをしていただいた審査員の方々には感謝の意
時間の審議を経てやっと決定できたものである。
を表したい。高校生ポスターのコメンテータ
本年度も全ての参加者に賞を授与しているが、
ー・審査員には長谷川眞理子会長、斎藤成也副
本年度の敢闘賞は「かなり頑張って健闘してい
会長、三中信宏審査員、田村浩一郎審査員にお
る」というもので、ただ単なる参加賞ではなか
隠蔽擬態した蛾の枯葉模様の進化
願いし、長谷川会長、斎藤副会長はほぼすべて
った。敢闘賞を受けた高校生にはこの賞を受け
鈴木誉保、倉谷 滋(理研・ CDB)
のポスターを、三中審査員、田村審査員には関
たことを誇りに思っていただきたい。そのよう
◆優良ポスター賞
連分野のポスター(ほぼ半数のポスター)を担
な混戦のなかで2 件の高校生ポスターが最優秀
[P-054] アブラムシの表現型多型を制御する遺
当しコメントおよび評価していただいた。そし
賞を受賞した。
の重複遺伝子の sub-neofunctionalization に
3
放送大・自然の理解、 産総研・ゲノムファ
クトリー )
[P-024] チャルメルソウ節に見られる花の匂い
の送粉シンドローム
1
2
1
1
岡本朋子 、奥山雄大 、加藤 真 ( 京大院・
2
人環、(財)岩手生工研)
[P-057] 拘束と変形が生み出す形態デザイン:
懇親会会場における授賞式でのポスター賞受賞者たち
伝子群の網羅的解析
て約 90 分の後に審査員が集まって、最優秀賞 2
長谷川会長からの言葉にあるように今年度の
6
日本進化学会ニュース Nov. 2008
審査の中であがった意見で重要なことの一つは、
「生きた生物を自分の目で見て、その生命現象
を自らのアイデアで探求する」ことである。こ
れは高校生の方だけでなく我々自身にもあては
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
会大会での高校生にポスター発表の機会を設け、
波長による体色変化を実験的に調べてい
より多くの高校生がチャレンジできるよう長く
る。実験計画に改良の余地がある: 1)
継続していければと願う。
地域個体群による体色差(黒/白)が報
(高校生ポスター賞担当
大田竜也)
まることであるが、既存の知識にとらわれず先
入観のない若い世代にはより大切にしていただ
きたい。大学生や大学院生の研究にも劣らない
告されているが、同一地域での体色変異
によって決まっているのか、それとも環
学会長からの言葉:
境中の光波長で決まるのかを確認する必
日本進化学会での、高校生のポスター発表は、
要がある; 2)光波長の違いによる体色
高校生のポスターもあったが、必ずしもそれら
今年も例年のごとくにたいへんレベ ルが高い発
変化の発生が、地域個体群による差があ
が最優秀賞を受賞しなかった理由の一つはここ
表が多く、この分野の今後を心強く感じさせる
るのかどうかを調べる必要がある。
にあると感じる。私自身、多くの既存の研究か
ものでした。どの発表にも、対象に対する思い
[HP-02] 敢闘賞
ら得られた視点・論点にとらわれ新鮮なアイデ
入れと努力が感じられ、参加されたポスターの
清真学園高等学校
アが出てこないジレンマに陥ることがある。そ
中からいくつかだけを選ぶのは難しいことでし
佐藤隆太郎、門井 悠、大野谷成美、
指している。極めて単純な実験装置を用いて大
の一つの理由は「生物の生きている姿を見てい
た。それでも、高校生とは言え、研究の完成度、
根本奈緒、佐藤敬近、金子桃子、渡邊 峻
変面白い結果を得ている。菌類によるプラスチ
ない」ためであり、長い進化時間をかけて生じ
問題設定 のおもしろさ、対象に対する理解の深
た多様な「生物を直視している」限りはアイデ
さなどを基準に、審査員の先生方は、研究者と
アに枯渇することはない。高校生の方々にはこ
しての誠実な態度で判定を行ってくださいまし
現地の実情についての報告をしている。生息す
同定は技術的な困難さは残ると思う。
のような点に注意していただき、 高校生
であ
た。結果は、発表のとおりです。 高校生のみな
る生物に関する詳細な考察は評価でき、また、
[HP-05] 優秀賞
るが故に持つ新鮮な眼力をもって生物を直視し
さんには、実際の生物を見ることによって、そ
ガラパゴスに迫り来る様々な問題(社会的、環
東邦大学付属東邦高校
今後の進化学を担っていただきたいと切に願う。
こで発見した生物現象に興味を持ち、工夫を重
境的)の所在もよくわかる。ただし、現地ガイ
松原拓哉
最後であるが高校生ポスターの関係者の方か
ねることによって、生物進化の面白さを明らか
ドの視線が色濃く反映されすぎている気がする。
ら、賞状は各受賞者個人と所属の学校に作成し
にしていくという視点を大事にしていただきた
初めてかの地を踏んだ者ならではの視点も重視
ていただけないかと依頼があり、その要望に応
いと思います。生物の世界は実に多様で、まだ
すべきではなかったか。
えることにした。各々の高校生にとって、また
まだ謎に満ちています。自然を自分の目で観察
[HP-03] 敢闘賞
参加学校にとって記念・名誉となるもので大切
することによって、そんな謎はいくらでも見つ
兵庫県立神戸高等学校
tRNA のイントロンの数や長さを調べており、ま
にしたいという意を受け、高校生ポスターを実
けることができるはずです。高校生の新鮮な目
山本 理
た、スプライシングに関連するエンドヌクレア
施した甲斐があり非常にうれしかった。進化学
で、既存の研究枠組みにとらわれず、素朴な疑
「進化の実験室
長谷川眞理子会長より賞状の授与
「生分解プラスチックの土壌細菌による分解」
ガラパゴス島探訪」
ガラパゴスに実際に足を踏み入れることで、
「外的環境の変化におけるミドリムシの反応」
プラスチックを分解する土壌菌類の同定を目
ック板への「着色」に着眼して、それぞれの菌
種を分離していく手順は興味深い。最後の菌の
「tRNA のイントロンとエンドヌクレアーゼの共
進化」
原始生命におけるイントロンの進化を考察す
るため、いくつかの古細菌と真核生物について
ーゼとの関係についても注目しているところは、
ミドリムシの走光性というなじみ深い現象を
本格的な分子進化研究の片鱗を伺わせる。将来
掘り下げている。吸光スペクトルの特性から、
が楽しみな研究であるが、イントロンとエンド
ミドリムシが利用している波長が他の緑色植物
ヌクレアーゼの関連については、直感的思い込
とは違っていると指摘した視点さらにクロマト
みに支配されている傾向もあり、科学的論理に
グラフィーを用いて実際にミドリムシに含まれ
基づいた自己批判的な眼も必要。広い視野を持
ている光合成色素を抽出した点は評価できる。
って研究を進めてほしいと思う。
高校生ポスターへのコメント:
できればもう一歩踏み込んで「未知の光合成色
[HP-06] 敢闘賞
[HP-01] 優秀賞
素」が何なのかを探る道筋を示して欲しかった。
安田学園
埼玉県立蕨高等学校
あとポスターの作り方にやや難がある。
西岡英智
近藤大介、田村勇二
[HP-04] 優秀賞
問から出発して、研究に取り組んでいただきた
いと思います。
これからも、おもしろくてレベルの高い発表
を期待します。
(日本進化学会会長
長谷川眞理子)
「フナムシの地域傾向性について」
高校生ポスター発表風景
7
フナムシの地域個体群における体色変異と光
埼玉県立蕨高等学校
秋山浩輝、榊原真悟、田中慎也
「Ventor、Watson 両者のSNP 解析からみる変異
の有無と発病との関連性」
SNP 解析から疾病原因遺伝子について考察す
8
日本進化学会ニュース Nov. 2008
るヒトゲノム計画の目的にもそった研究で、誰
もが持つ一般的な興味に素直に取り組んだ姿勢
9
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
「メタボローム比較による大腸菌欠損株の代謝
解析」
は好感が持てる。一方、このような研究は誰が
教科書に出てくる基本的な事項である代謝に
やっても同じような結果になってしまい(例え
興味を持ちメタボローム比較を行った研究で、
Akira Sasaki (Department of Evolutionary Studies
ば [HP-08])
、研究において重要な独創性が出し
基礎科学や微生物への純粋な姿勢は好感が持て
of Biosystems, The Graduate University for
にくい点にも注意する必要がある。一般的な研
る。今回は限られたデータ量が原因で結果の信
Advanced Studies (SOKENDAI))
究手法にとらわれず、独自の解析方法にもチャ
頼性に疑問が残るところが残念であるが、今後
レンジしてほしかった。今後の発展に期待した
も頑張って欲しい。解析に独自の方法を取り入
い。
[HP-07] 最優秀賞
れることにチャレンジしてほしい。
[HP-10] 最優秀賞
日本大学三島高等学校
埼玉県立熊谷西高等学校
石井将仁
堀口智博
「ミシマバイカモ(Ranunculus nipponicus
(Makino) Nakai var. japonicus (Nakai) Hara)
の系統分類上の位置づけ」
「ガムシ亜科 3 属 3 種の生態と系統」
演者は根っからのナチュラリストであり、研
究対象であるガムシの生物としての全体を丸ご
みごとなプレゼンテーションであった。演者
と理解しようとする姿勢が印象に残る。過去の
は社会的にも関心を集めているミシマバイカモ
研究例の乏しい対象を研究するにあたって、演
の系統学的な位置を調べている。今回の結果そ
者は正しい系統学的なセンスと直観(これも正
のものは必ずしも明瞭ではないが、研究の視点
しい)によって、まっとうな博物学の研究をす
と今後のビジョンは評価すべきものがある。将
すめている。今後が期待される。なおガムシに
来性を感じる。
ついての情報は東京農業大学の昆虫研究室に問
[HP-08] 敢闘賞
い合わせればいいだろう。
暁星国際学園
石黒 宗
「Watson とVentor の個人ゲノムを用いたSNP 解
析による変異の特定とその考察」
[HP-11] 敢闘賞
秋田県立大舘鳳鳴高等学校
木村舞子、齋藤勇佑
「ヒトはどうしてヒトなのか?」
SNP 解析から疾病原因遺伝子について考察す
ヒトとチンパンジーの違いをゲノムレベルで
るヒトゲノム計画の目的にもそった研究で、誰
比較し、ヒトの特徴を司る原因を考えようとい
もが持つ一般的な興味に素直に取り組んだ姿勢
うもので、人類共通の大きなテーマにチャレン
は好感が持てる。一方、このような研究は誰が
ジしようとする姿勢には好感を持った。差異が
やっても同じような結果になってしまい(例え
検出された領域についての情報をデータベース
ば [HP-06])
、研究において重要な独創性が出し
で調べるだけでなく、独自の解析方法も含めて
にくい点にも注意する必要がある。一般的な研
直接データを解析することにもチャレンジして
究手法にとらわれず、独自の解析方法にもチャ
欲しかった。種間の差異と種内の差異を比較し、
レンジしてほしかった。今後の発展に期待したい。
種内変異を超えない種間差異については安易な
[HP-09] 優秀賞
結論を出さずに慎重な考察を行っている点は評
東京都立戸山高校
価できる。時間切れの研究成果という印象が否
大野 瞳
めないところが残念でした。
8 月 23 日
13:00 〜 16:00
D 会場
【PUB-1】日本の進化学史:極東の岸辺にダーウィ
ンの波紋は広がった
三中信宏(農環研/東大・院・農生)
【PUB-2】自然人類学が描く「日本人」のなりたち
篠田謙一(国立科学博物館人類研究部)
【PUB-3】方言から日本語のルーツを探る
大西拓一郎(国立国語研究所)
【PUB-4】文化と制度から見た日本人の心理
山岸俊男(北海道大学社会科学実験研究センター)
【S02-2】Coevolution in space: Effects of spatial
structure on a bacteria-phage arms-race
*Michael Brockhurst1, Tom Vogwill1, Angus
Buckling2 (1 School of Biological Sciences, Liverpool Univ. ; 2 Dept. Zoology, Oxford Univ.)
【S02-3】Evolutionary community assembly experiments
Tadashi Fukami (Dept. Zoology, Univ. Hawaii at
Manoa)
【S02-4】Evolutionary and ecological dynamics
of predator-prey systems in microcosms
Takehito Yoshida (University of Tokyo)
S1
協力の進化:社会・脳・ゲーム
企画:巌佐 庸(九大・院理)
8 月 22 日
9:30 〜 12:00
A 会場
【S01-1】協力の進化:社会・脳・ゲーム
巌佐 庸 (九大・院理)
【S01-2】罰の反応関数型の進化と協力レベルにつ
いて
○中丸麻由子 1、Ulf Dieckmann2(1 東工大・社理
工、2 IIASA)
【S01-3】空間構造による協力の進化則
○大槻 久1、Christoph Hauert2、Erez Lieberman3、
Martin Nowak4(1 東工大・社会理工、2, 3, 4 ハーバ
ード大・ PED)
【S01-4】互恵的協力行動の脳神経基盤
○鈴木真介 (理研・ BSI)
【S01-5】社会科学における「協力の進化」
○渡部 幹 (早大・高研)
S2
Organizers : Akira Sasaki (The Graduate University for Advanced Studies) and Takehito Yoshida
(Tokyo University)
9:30 〜 12:00
Organizer : Naruya Saitou (National Institute of
Genetics)
August 22
9:30 〜 12:00
Room C
【 S03-1】 Welcome to World of Phylogenetic
Network!
Saitou Naruya (National Institute of Genetics)
【S03-2】Phylogenetic Supernetworks
Stefan Grunewald (Chinese Academy of Sciences
& Max Planck Partner Institute for Computational Biology)
【S03-3】Identification of phylogenetic networks
under model misspecification
Hidetoshi Shimodaira (Tokyo Institute of Technology)
【S03-4】Relic of ancient recombinations deciphered through phylogenetic network analysis
Experimental Coevolution and Theories
August 22
S3 Phylogenetic Networks for Evolutionary
Studies
Room B
【S02-1】Host-parasite arms race in space : theoretical perspective and implication
○ Takashi Kitano1 (1Ibaraki Univ.・ College of
Engineering)
S4 The 40th anniversary of the neutral theory
Organizers : Naoyuki Takahata (The Graduate
University for Advanced Studies)
Augsut 22
9:30 〜 12:00
Room D
10
日本進化学会ニュース Nov. 2008
【 S04-1】 THE IMPORTANCE OF KIMURA
S
NEUTRAL THEORY IN MOLECURAL EVOLU-
11
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
S7 Neo-mutationism and phenotypic
evolution
三田和英 2、山本公子 2 (1 東大・院新領域、2 農業
斎藤成也 3 (1 大阪大学大学院医学系研究科、2 生理
生物資源研)
学研究所、3 国立遺伝学研究所)
TION TODAY
Organizers: Naoko Takezaki (Kagawa University)
William Provine (Dep Ecology and Evolutionary
and Tatsuya Ota (The Graduate University for
った野外実験とEST による候補遺伝子探索
乳類の匂い受容体をモデルに
Biology, Cornell University)
Advanced Studies)
○矢原徹一、廣田 峻、新田 梢、安元暁子 (九
東原和成(東京大学大学院新領域創成科学研究
大・院理)
科先端生命科学専攻)
【S04-2】The Nearly Neutral Theory in Genome Era
Tomoko Ohta (National Institute of Genetics)
【S04-3】The neutral theory of molecular evolu-
August 24
9:00 〜 11:30
Room B
【S07-1】The new mutation theory of phenotypic
【S09-2】昼咲きから夜咲きへの進化: F2 雑種を使
【S11-3】嗅覚メカニズムの進化的変遷:昆虫と哺
【S09-3】異生態タイプ間異質倍数体(IETA :Inter-
evolution
ecological-type allopolyploid)形成を介した適
tion: Origins, growth, and current status
Masatoshi Nei (The Pennsylvania State Universi-
応放散
Organizer: Mariko Hasegawa (The Graduate Uni-
Masatoshi Nei (The Pennsylvania State Universi-
ty)
工藤 洋 (京大・生態研)
versity for Advanced Studies)
【 S07-2】 Elucidation of phenotypic adaptations:
ty)
S5
ヒトの生活史
企画者:颯田葉子
(総研大・葉山高等研究センター)
8 月 22 日
9:30 〜 12:00
E 会場
【S05-1】ヒトの生活史とヒト固有の性質の進化
長谷川眞理子 (総研大・先導研)
○北野 潤 1、Joseph Ross1、森 誠一 2、久米 学 3、
Shozo Yokoyama (Department of Biology, Emory
Catherine L. Peichel1 (1Fred Hutchinson Cancer
2
【S07-3】SINE の挿入によって哺乳動物の脳は作ら
れた?
高齢社会の視点から−
【S05-3】ヒトの成長・加齢パターンの進化
○濱田 穣 (京大・霊研)
tem from viewpoint of comparative genomics
【S05-4】ネオテニー仮説の再検討
Natural selection and human evolution
Organizer : Ituro Inoue (Tokai University)
企画者:小林一三(東大・メディカルゲノム)
9:00 〜 11:30
A 会場
【S06-1】近縁多数系列の全ゲノム配列比較解析の
展望
○小林一三、河合幹彦、鶴 剛史 (東大・メディカ
ルゲノム)
【S06-2】ヒト腸内常在菌のゲノム及びメタゲノム
解析
○服部正平 1 (1 東大院・新領域)
【S06-3】ゲノム進化過程の解明に向けた近縁細菌
ゲノム比較のインフォマティクス
○内山郁夫 (基生研)
August 24
9:00 〜 11:30
Room C
【S08-1】Natural selection in bitter taste recep-
○馬場 理 1、平松啓一 1 (1 順天堂大・医・細菌)
【S06-5】レンサ球菌のゲノム解析に基づく進化と
多様性獲得機構の解析
中川一路 (東大・医科研・感染症国際研究セン
ター)
S10
大進化・論
8 月 24 日
13:00 〜 15:00
A 会場
【S12-2】 The cuckoo fungus manipulates termite
Human Growth and Development University of
Texas)
tems, The Graduate University for Advanced
ics)
を考える
五條堀孝(国立遺伝学研究所・総合研究大学院
進化)
細胞感覚
【S13-2】貝殻基質タンパク質に見られるダイナミ
ックな適応進化
部門)
○遠藤一佳、更科 功 (筑波大・生命環境)
8 月 24 日
13:00 〜 15:00
C 会場
哺乳類とショウジョウバエの比較から
富永真琴(岡崎統合バイオサイエンスセンター
(生理学研究所)細胞生理部門)
D 会場
【S09-1】鱗翅目昆虫の擬態紋様形成の遺伝的基盤
○藤原晴彦 1、山口淳一 1、二橋 亮 1, 2、岡本 俊 1、
【S13-1】過去、現在、未来における海洋化学環境
企画者:富永真琴(生理学研究所・細胞生理理
【S11-1】TRP チャネルを介した温度受容の多様性:
企画者:大島一正、長谷部光泰(基生研・生物
B 会場
栗原晴子 (長崎大学・海セ)
S11
適応進化を支えた遺伝基盤
15:15 〜 17:15
と炭酸カルシウム合成生物の進化
【S08-3】Deleterious Mutations and Human Dis-
井ノ上逸朗 (東海大学総合医学研究所)
ー)
8 月 24 日
大学
【S08-4】ヒト疾患へのダーウィン医学的アプローチ
S13 バイオミネラリゼーションとゲノム進化:
海洋環境から形態形成へ
企画者:岩瀬峰代 (総研大・葉山高等研究センタ
木村亮介 (東海大学医学部)
長田直樹 (独立行政法人 医薬基盤研究所)
Studies ; 2 RIKEN BSI)
quence 1Mb away from the Shh coding region
集団の自然選択の痕跡
eases: Genomic Perspective
cial naked mole-rats
*Nobuyuki Kutsukake1, 2, Masayuki Inada2, Kazuo
宮田 隆 (生命誌研究館)
【S10-2】 Evolutionary conserved non-coding se-
【S10-3】大進化を論じるためのオミックス的基盤
【S08-2】ゲノムワイド SNP 解析で同定されたヒト
【S12-3】How (not) to build consensus in euso-
Okanoya2 (1Dept. Evolutionary Studies of Biosys-
Toshihiko Shiroishi (National Institute of Genet-
9:00 〜 11:30
Dept
爆発と遺伝子の多様化を中心に―
acts as limb bud-specific Shh enhancer
8 月 24 日
2
○ Kenji Matsuura (Okayama University)
企画者:五條堀孝 (遺伝研/総研大)
Stephen Wooding (The McDermott Center for
S9
Ecology and Conservation, Exeter Univ ;
Zoology, Cambridge Univ.)
○大島一正、長谷部光泰 (基生研・生物進化)
tor genes
【S06-4】全ゲノム配列比較で解明するブドウ球菌
属の病原性と薬剤耐性
and cetaceans: new insights into an enduring
*Michael Cant1, Rufus Johnstone2 (1 Centre for
【S10-1】形態進化と分子進化の関連―カンブリア
S6 近縁全ゲノム配列比較から明らかに
なるゲノム進化のダイナミックス
Room D
behavior by the sophisticated egg mimicry
【S07-5】The evolution of the central nervous sys-
S8
13:00 〜 15:00
puzzle
Takashi Gojobori (National Institute of Genetics)
尾本恵市 (総研大・シニア上級研究員)
August 24
【S12-1】The evolution of menopause in humans
ー)
る寄主転換のメカニズム
【S07-4】頭部形成におけるOtx シス配列のevolution
Evolution of social behaviour
Res Center、 岐阜経済大、 自然共生研究センタ
相沢慎一 (CDB、理研神戸)
鈴木隆雄(東京都老人研・副所長)
8 月 24 日
3
【S09-5】複合形質の遺伝基盤:植食性昆虫におけ
岡田典弘 (東工大、生命理工)
【S05-2】ヒトの生活史におけるビタミンD −今日の
【S09-4】トゲウオの種分化とその遺伝的基盤
molecular analyses of dim-light vision proteins
University)
S12
【S11-2】電位センサー蛋白の多様性から見た細胞
膜電位シグナル伝達機構の進化
岡村康司 1、Thomas McCormack 2、黒川竜紀 1、
【S13-3】ゲノムが新しい構造を生み出すロジック:
脊椎動物の軟骨進化から
○和田 洋 (筑波大・院生命環境)
【S13-4】脊椎動物における硬組織の起源と多様性
の進化:ゲノム重複と縦列遺伝子重複
○川崎和彦 (ペンシルバニア州立大・人類学)
12
日本進化学会ニュース Nov. 2008
もたらす適応進化
企画者:中桐斉之(兵庫県立大)
、向坂幸雄(茨
城県立医療大)
WS1
オルガネラの進化のダイナミズム
企画者:早川敏之 (大阪大)
8 月 22 日
13:30 〜 15:30
8 月 22 日
【WS01-1】細胞内共生の終着駅?:貝類寄生虫パ
ーキンサスの色素体
15:40 〜 17:40
C 会場
【WS01-2】原虫におけるメンブレントラフィックの
多様性
会における無駄の意味―
○長谷川英祐、石井康規 (北大・院農)
1
1
1
○富樫辰也 、宮崎龍雄 ( 千葉大学海洋バイオ
と種間非対称な交尾中隔離
感染研・寄生動物、2 筑波大学・院・生命環境・
○浅見崇比呂 1、Amporn Wiwegweaw1、杉 緑 1、
構造生物科学)
関 啓一 2 (1 信州大・理、2 東邦大・理)
○見市文香 1、野崎智義 2 (1 群大・医、2 国立感染
症研究所・寄生動物部)
【WS03-4】雄と雌の出会いから見た進化
村上 哲明(首都大)
8 月 22 日
13:30 〜 15:30
【WS03-5】絶滅するESS 性比
【WS02-1】被子植物における種概念とDNA 分類 〜
隠蔽擬態した蛾の枯葉模様の進化
○堀 孝一、関根靖彦 (立教大学・理)
○鈴木誉保、倉谷 滋 (理研・ CDB)
(理研)、長谷部光泰 (基生研)
8 月 22 日
15:40 〜 17:40
WS5
ゲノム解析から見える自然選択
8 月 23 日
9:00 〜 11:30
A 会場
【WS05-3】ヒト系統におけるシアル酸関連分子の
進化
○中尾 央 (京大・院文)
田村浩一郎 (首都大・院理工)
学研究所)
【WS02-2】シダ植物の配偶体フロラ〜分子同定で
野昌裕 ((独) 農業生物資源研究所 QTL ゲノム育
いて〜
金鍾 明 1、栗原志夫 1、岡本昌憲 1、中南健太郎 1、
○佐藤博俊 (首都大・院理工)
藤 泰子 1、川嶋真貴子 1、田中真帆 1、神沼英里 3、
【WS02-4】好蟻性昆虫の形態進化の可塑性と寄主
への適応
丸山宗利 (九大博)
【WS02-5】真洞窟性陸貝ホラアナゴマオカチグサ
3
3
4
3
4
遠藤高帆 、望月芳樹 、小林紀郎 、花田耕介 、
2
発現研究チーム、 横浜市立大・木原生物学研・
植物ゲノム発現制御システム、3 理研・生命情報
○亀田勇一 1、福田 宏 2、加藤 真 1 ( 1 京大・院人
プ)
【WS04-4】体細胞から幹細胞への分化転換におけ
る動物と植物の違い
個体群動態と行動生態の相互作用が
○倉田哲也 1、西山智明 1, 2、長谷部光泰 1, 3, 4 ( 1 JST・
Evolution of leaves
Organizer : Hirokazu Tsukaya(Tokyo Univ., NIBB)
August 23
9:00 〜 11:30
Room D
【WS08-1】Overview: Evolution of leaves
WS6 動物のデザインの進化をめぐる多元
的ダイナミクス
企画者:鈴木誉保(理研)
、三浦 徹(北海道大)
豊田哲郎 、篠崎一雄 ( 理研 PSC ・植物ゲノム
基盤研究部門、4 理研 PSC ・機能開発研究グルー
WS3
WS8
後藤大輝 (ペンシルバニア州立大学 比較ゲノ
1
の驚くべき多様性
環、2 岡山大・農)
【WS05-6】霊長類における精子競争と Y 染色体の
ム・バイオインフォマティックスセンター)
○関原 明 1, 2、松井章浩 1、石田順子 1、諸澤妙子 1、
【WS07-6】生物学における「個体」と階層性
○田中泉吏 (京大・院文)
進化
蔽種の識別と宿主特異性の解析〜 DNA 情報を用
【WS07-5】進化心理学の論理の批判的考察
○松本俊吉 (東海大・准教授)
自然選択とゲノム浮動
野澤昌文 (ペンシルバニア州立大・分子進化遺伝
応答に関するトランスクリプトーム解析
○石田知子 (慶大・院文)
【WS07-4】文化進化理論における哲学的諸問題
○長崎英樹、中嶋舞子、堀 清純、江花薫子、矢
【WS04-3】タイリングアレイを用いた環境ストレス
○森元良太 (慶応大・非常勤講師)
層性―
【WS05-5】嗅覚受容体遺伝子ファミリーの進化:
種研究センター)
と闇
【WS07-3】遺伝情報を考える―発生のもたらす階
か?
【WS04-2】次世代シークエンサーによるイネゲノム
C 会場
【WS07-2】知識としての進化学
究センター)
【WS05-4】ゲノム解析から見える自然選択は本当
加藤友彦、田畑哲之 (かずさDNA 研究所)
9:00 〜 11:30
○三中信宏 (農業環境技術研究所/東大・院・農
早川敏之 (阪大・微研)
E 会場
【WS04-1】マメ科植物の比較ゲノム解析
3
8 月 23 日
【WS07-1】
【種】に楯突けば角が立つ:種問題の光
学生命科学)
解読とSNP 検出
【WS02-3】菌根性キノコ類オニイグチ属における隠
企画者:森元良太(慶応大)
○花田耕介、篠崎一雄 (理化学研究所 植物科学研
◯奥山雄大 1 (1 岩手生物工学研究センター)
海老原淳 (科博・植物)
WS7 哲学はなぜ進化学の問題になるのか
(パート 3): 哲学的観点からみた進化生
物学の諸問題
遺伝子の機能探索
東アジア産チャルメルソウ属をモデルとして〜
見えてきたもう一つの世界〜
【WS06-5】拘束と変形が生み出す形態デザイン:
グナル配列の獲得過程の予測
【WS05-2】負の選択圧を受けている新規の小さい
○佐藤修正、中村保一、金子貴一、浅水恵理香、
E 会場
○藤本仰一 (JST ・複雑系生命)
○鈴木善幸 1 (1 遺伝研・生命情報 DDBJ)
企画者:伊藤 剛 (農業生物資源研究所)、花田耕介
企画者:奥山 雄大(岩手生物工学研究センター)
、
究センター)
the branch-site test of positive selection
○吉村 仁 (静大・院創造)
WS4 ゲノム・トランスクリプトーム情報
から植物の進化に迫る
WS2 DNA 分類が解き明かす知らざれる
生物多様性の姿
節足動物の体節形成の進化
【WS05-1】False-positive results obtained from
○小林和也 (北大・農・動物生態)
○渡邊洋一 (東大・院医)
【WS06-4】数理モデルで繋ぐ形態とネットワーク:
○花田耕介、篠崎一雄 (理化学研究所 植物科学研
企画者:鈴木 善幸(遺伝研)
【WS01-4】ミトコンドリアタンパク質合成系の進
化:線形動物を中心に
○藤村衡至、岡田典弘 (東工大・院生命理工)
システム研究センター)
○中野由美子 1、中野賢太郎 2、野崎智義 1 (1 国立
オルガネラmitosome の特殊性〜その機能と役割〜
ための発生学的基盤
【WS04-6】ゲノムデータに基づくオルガネラ移行シ
【WS03-3】同時雌雄同体の種間対称な交尾前隔離
【WS01-3】 赤痢アメーバ原虫のミトコンドリア残存
た東アフリカ湖産シクリッドの形態進化を調べる
生物進化、4 総研大)
性機能とその役割
【WS03-2】配偶子の行動と異型性の進化
○松崎素道 (東大・院医・生物医化学)
ERATO、2 金沢大・学際・ゲノム機能、3 基生研・
【WS04-5】シロイヌナズナ重複遺伝子が持つ冗長
【WS03-1】なぜみんなが働かないのか?―アリの社
C 会場
13
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
8 月 23 日
9:00 〜 11:30
B 会場
【WS06-1】発生の可塑性は、進化可能性となりう
Hirokazu Tsukaya ( 1Graduate School of Science,
the University of Tokyo ; 2NIBB)
【WS08-2】Towards Understanding Evolutionary
Diversification in Leaf Form
*Miltos Tsiantis, Angela Hay, Michalis Bark-
るか?
oulas, Alex Tattersall, Paolo Piazza, Evangeia
○三浦 徹(北大・地球環境)
Kouyoumoutzi, Huw Jenkins, Gemma Bilsbor-
【WS06-2】ショウジョウバエ模様の種内多型につ
いて
○高橋 文 (遺伝研・集団遺伝)
【WS06-3】シクリッドの進化発生学:適応進化し
ough and Carla Galinha (Dept. of Plant Sciences,
University of Oxford)
【WS08-3】Coordination of leaf development by
KNOX1 genes via evolutionarily conserved
14
日本進化学会ニュース Nov. 2008
【WS10-3】8 の字ダンスによるミツバチコロニーの
regulation
【WS12-2】硬骨魚イトヨにおける逆行進化のメカ
○ Naoyuki Uchida1、Neelima Sinha2 (1 奈良先端
採餌戦略
ニズム
大・バイオ、2 UC-Davis ・ Plant Biology)
岡田龍一 (徳島文理大学香川薬学部)
○北野 潤 1、Dan Bolnick2、David Beauchamp3、
【WS08-4】Genetic Framework for Development
【WS10-4】アリロボットが示す適応的行動と自律
3
4
5
Michael Mazur 、森 誠一 、中野孝教 、Catherine
1
1
2
3
分散制御
L. Peichel ( Fred Hutch、 テキサス大、 USGS・
Takahiro Yamaguchi 1* and Hirokazu Tsukaya2 (1
○菅原 研 (東北学院大・教養)
ワシントン大、4 岐阜経済大、5 総合地球環境研)
National Institute for Basic Biology. ; Grad. Sch.
【WS10-5】アリのコロニーサイズ依存的自律分散
制御機構の進化とポリシング
Sci, U. Tokyo)
【 WS08-5】 The origin and evolution of shoot
1
system in land plants
2
( 琉球大・農、 東工大・院社会理工学)
Mitsuyasu Hasebe (National Institute for Basic
Biology)
WS9 祖先型遺伝子、タンパク質再構築に
よる進化史研究
企画者:小川 智久(東北大)
、山岸明彦 (東京薬
WS11 統合データベースの活用法 :
ゲノム情報などを使いこなした効率的な
研究のために
企画者:金子聡子 (お茶の水女子大学・生命情報
8 月 23 日
12:00 〜 14:00
A 会場
【WS09-1】全生物の共通の祖先超好熱菌仮説の実
12:00 〜 14:00
C 会場
【WS11-1】統合データベースプロジェクトとライフ
○坊農秀雅 (大学共同利用機関法人 情報・システ
○山岸明彦 (東薬大・生命)
ム研究機構 ライフサイエンス統合データベース
【WS09-2】祖先型タンパク質再構築による魚類ガ
レクチンの加速的適応進化過程の解析
センター)
北大・院生命、2 長浜バイオ大)
○河野 信 (大学共同利用機関法人 情報・システム
○白井 剛 (長浜バイオ・バイオサイエンス)
1
○藤本明洋 1, 2、木村亮介 3、大橋 順 1、角田逹彦 2、
○小北智之 (福井県大・生物資源)
WS13 微生物を使った実験生態学・進化学
の展開
8 月 23 日
14:10 〜 16:10
1
2
1
2
院・情報科学)
○河村正二、松本圭史、知念秋人 (東大・院新領
センター)
1, 2, 3
1
( 阪大・院生命機能、
阪大・院情報、3ERATO ・ JST )
【WS13-3】大腸菌を用いた共存系の構築
柏木明子 (弘大・農学生命)
【WS13-4】自立型マイクロコズムを用いた細胞内
びALD タンパク質電荷の進化解析
○岡本 忍、中尾光輝、藤澤貴智、中村保一 (か
共生の進化と生態系のモジュール化の解析
○佐藤行人、西田 睦 (東京大学海洋研究所)
ずさDNA 研究所)
中島敏幸 (愛媛大・院理工)
【WS13-5】マイクロコズムを用いた実験から見えて
8 月 23 日
12:00 〜 14:00
企画者:北野 潤 (Fred Hutchinson Cancer ReB 会場
【WS10-1】移動知と社会適応
○淺間 一 (東大・人工物)
【WS10-2】アリのコロニー帰属性と社会的攻撃行
8 月 23 日
12:00 〜 14:00
E 会場
【WS12-1】環境変化に伴う急速適応のメカニズム
〇尾崎まみこ 1、城所 碧 1、岩野正晃 1、花井一光 2
2
( 神戸大・理・生物、 京都府立医科大・精神機能)
son Cancer Research Center、2 岐阜経済大、3 土
木研・自然共生研究センター)
8 月 23 日
14:10 〜 16:10
C 会場
【WS15-1】DNA 配列の多様性から探る種分化の機
構:ヒト−チンパンジーの分岐を例に
高橋 亮 (遺伝研)
○手島康介 (総研大)
【WS15-3】汎熱帯海流散布植物の系統地理:全球
レベルのDNA 多型解析
高山浩司 1, 2 ○ (1 JSPS 特別研究員、2 千葉大・院理)
【WS15-4】DNA 多型の解析方法と集団遺伝学的背
景
○角友之 (総研大・葉山)
WS16
言語の起源と進化
くるもの:細胞外 DNA とメタトランスクリプト
企画者:橋本 敬 (北陸先端科学技術大)、岡ノ谷
ーム解析
一夫 (理研)
○石井伸昌 1、府馬正一 1、中森泰三 1、川端善一
2
1
郎 ( 独立行政法人 放射線医学総合研究所 環境放
8 月 23 日
14:10 〜 16:10
E 会場
【WS16-1】イントロダクション:言語を支える能力
射線影響研究グループ、2 大学共同利用機関法人
の進化からなにが見えるか
人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)
○橋本 敬 1、岡ノ谷一夫 2 (1 JAIST ・知識、2 理研
及び保全策への応用
○北野 潤 1、森 誠一 2、久米 学 3 (1Fred Hutchin-
動に関する神経基盤
1
search Center)、森 誠一 (岐阜経済大)
企画者:舘田英典(九州大)
、高橋 亮 (遺伝研)
【WS15-2】塩基配列データに自然選択の痕跡を探す
【WS13-2】実験的に細胞内共生系の構築を目指す
1
WS15 ゲノムの多様性から探る生物集団の
構造と歴史(2)系統地理学と集団遺伝学
の接点を探る
A 会場
で出現した相互作用を中心とした現象の解析
2
企画者:辻 和希 (琉球大)
徳永勝士 1 (1 東大・医学部、2 理研・ゲノム医科学
研究センター、3 東海大・医学部)
から学ぶ
○岸本利彦 、四方哲也 ( 東邦大・理、 大阪大・
WS12 人為的環境下における進化のメカ
ニズム、及び、保全策への応用
【WS14-5】ゲノムワイド SNP データベースを用い
山平寿智 (新潟大・理)
○森光太郎 、四方哲也
WS10 ロボティックスとバイオロジーの連
携による超個体の適応的行動の研究
太田博樹 (東大・院新領域)
た毛髪の形態決定遺伝子の探索
ンター)
物ゲノム情報統合の試み
木村亮介 (東海大・助教)
塑的変化と適応進化
研究機構 ライフサイエンス統合データベースセ
【WS11-4】KazusaAnnotation Suite :植物関連生
いたオセアニア人類集団における自然選択の探索
森長真一 (九大・院理)
エゴ校)
【WS12-4】地球温暖化に伴うメダカの生活史の可
人材育成活動の紹介
域)
【WS14-2】ゲノムワイド SNP タイピングチップを用
ナズナ近縁種を用いたタイリングアレイ解析
金子聡子 (お茶の水女子大学 生命情報学教育研究
【WS09-5】祖先配列の最尤推定に基づく PGI およ
○橋口康之 1 ・西田 睦 1 (1 東大・海洋研)
【WS14-4】高山寒冷適応のゲノム基盤:シロイヌ
の進化的推移の復元
【WS09-4】祖先配列推定によるオプシン吸収波長
応進化の網羅的探索
ん研究センター、2 カリフォルニア大学サンディ
【WS13-1】大腸菌を使った耐熱化実験進化系の中
【WS11-3】統合データベースプロジェクトにおける
B 会場
Suzannah Rutherford ( フレッドハッチンソンが
【WS11-2】統合TV: 動画によるデータベースの使い
方講座
解析
1
企画者:岸本利彦 (東邦大)、森光太郎 (大阪大)
○小川智久 1、今野 歩 1、村本光二 1、白井 剛 2 ( 1 東
【WS09-3】祖先型推定によるアルカリ適応進化の
○平手良和 1、Wyming Lee Pang2、Jeff Hasty2、
サイエンス統合データベースセンター
験的検証
14:10 〜 16:10
【WS14-3】ヒトとメダカの集団比較ゲノム学
【WS12-5】海洋環境変化と生物の小進化:日本海
学教育研究センター)
8 月 23 日
科大)
【WS12-3】環境撹乱下における遺伝的緩衝作用と
表現型可塑性の果たす役割
○辻 和希 1、菊地友則 1、大西一志 1、大槻 久 2
8 月 23 日
【WS14-1】イトヨ嗅覚受容体遺伝子群における適
and Evolution of Unifacial Leaves in Monocots
2
15
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
BSI)
WS14 適応遺伝子探索の新展開:
ゲノム情報を用いたアプローチ
企画者:橋口康之 (東大)、西田 睦 (東大)
【WS16-2】コミュニケーション能力の進化において
繰り返し生じるボールドウィ ン効果
○鈴木麗璽、有田隆也 (名大・院情報科学)
16
日本進化学会ニュース Nov. 2008
【WS16-3】言語と社会性の起源 〜自閉症治療から
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
【WS18-5】ヒト精神活動関連遺伝子<I>ASAH1</I>
の示唆〜
における正の自然選択
北澤 茂 (順天堂大学医学部)
○金 慧琳 1、高畑尚之 1、颯田葉子 1 (1 総合研究大
【WS16-4】胎児・新生児における知覚―運動マッ
学院大学・葉山高等研究センター)
チング能力とその進化的基盤
明和政子 (京都大学大学院教育学研究科)
【WS16-5】認知考古学からみた心の進化
時津裕子 (産業技術総合研究所 認知行動システム
WS19
機構
速い進化と遅い進化:進化の加速
8 月 24 日
15:15 〜 17:15
C 会場
実の共進化
企画者:岡田典弘 (東工大)、丸山茂徳 (東工大)
8 月 24 日
13:00 〜 15:00
B 会場
【WS17-1】河からゲノムまでを包含する新しい生命
進化論の提唱
◯東樹宏和 (産総研)
【WS19-2】形質置換:カワトンボの種間交雑と種
変動とその生命進化への役割の解明
の数の進化
○上村佳孝 (慶大・商)
【WS17-4】レトロポゾンを指標とした有胎盤類の
初期系統進化
と食草転換
院生命理工、2 東工大・院理工)
実施委員会: 高畑尚之委員長をはじめ、長谷川
【SSE1-2】メダカ属魚類を用いたアジアの環境モニ
員 9 名、ポスドク7 名および会場となる東京大学駒
タリングの試み
場キャンパスの教員5 名、合計21 名で企画を進め実
○木下政人 1、○井上広滋 2 (1 京大・院農、 2 東
施した。
交通の便を考え、東京大学駒場キャンパスでの開
たのは、長谷川寿一副委員長をはじめとする東京大
ー、2 総研大)
学の方々の力が大きかった。またポスドクたちは、
○二橋 亮
WS18 進化医学:分子進化の立場から
見た疾病
企画者:藤 博幸 (九州大)、由良 敬(お茶の水
女子大)
って会場を飛び回り、アルバイト学生に細かい指示
○菊池 潔 (東大・水実)
を行うなど目覚ましい働きを見せた。
15:15 〜 17:15
WS20 意識の起源と進化
8 月 24 日
15:15 〜 17:15
D 会場
【 WS20-1】 Coupling/Decoupling dynamics と し
ての意識
○中島敏晶 1, 2、大谷仁志 2、颯田葉子 3、宇野泰広 4、
池上高志(東大・総合文化研究科)
明里宏文 5、石田貴文 6、木村彰方 1, 2 (1 東医歯大・
【WS20-2】意識における相互作用同時性
3
4
難研、 東医歯大・院疾生、 総研大、 新日本科
茂木健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究
学、5 医薬基盤研、6 東大・院理)
所)
【WS18-2】著しい集団分化を示す可視的形態形質
の表現型と関連する遺伝子多型の探索
藤本明洋 1、木村亮介 2、○大橋 順 3 (1 理研・ゲノ
【WS20-3】時間と時計
号的なダイナミクス
波大・人間総合科学・生命システム医学)
○杉田祐也、谷 淳 (理化学研究所 脳科学総合研
ミン酸受容体遺伝子群の分子進化学的解析
◯柴田弘紀 (九大・生医研)
【WS18-4】核内受容体-リガンド相互作用の進化的
9:00 〜 11:30
E 会場
究センター)
【WS20-5】意識の進化
岡ノ谷一夫 (理研・脳センター)
【WS20-6】2 匹のサルの相互作用にみる意識起源の
東京大学駒場キャンパス12 号館と13 号館に集中さ
せ、東大生協「駒場コミュニケーションプラザ2 階
Dining 銀杏」をポスター会場とした。この2 つの会
場をつなぐ道の途中に駒場博物館が位置する。なる
球史から温暖化世界をみる―
べく参加者の移動を少なくしようと考え、12 号館と
鈴木紀毅 (東北大・院理)
13 号館でシンポジウム・ワークショップ・公開講演
【SSE2-2】地球温暖化による生物進化と生物多様性
会および一般口頭発表を行うことにした。その点は
の変化
意図通りだったが、教室の大きさにばらつきがあ
河田雅圭 (東北大・生命科学)
り、収容人数が少ない会場では立見が出る場合もあ
った。日程・時間枠に企画者の希望を反映させたの
SSE3
MEGA4 による分子系統解析
企画者:田村浩一郎 (首都大・院理工)
8 月 24 日
13:00 〜 15:00
E 会場
【SSE3】MEGA4 による分子系統解析
田村浩一郎 (首都大・院理工)
で変更の余地はあまりなかったが、セッションの配
置等をもう少し検討するべきだったかもしれない。
ポスター会場である「駒場コミュニケーションプラ
ザ2 階 Dining 銀杏」は建物が新しく、空調も整っ
ていたので、真夏の開催であったが比較的快適に過
郡司ペギオ-幸夫 (神戸大・理学研究科)
【WS20-4】意識的な記号的計算の背後にある非記
ム医科学研究センター、2 東海大・医・法医、3 筑
【WS18-3】統合失調症関連遺伝子としてのグルタ
8 月 24 日
【SSE2-1】温暖期地球の生物はどうなったか?―地
関連遺伝子の分子進化と自然選択
2
地球環境変化と進化学
・藤原晴彦 ( 東大・新領域・先端
生命、2 生物研)
A 会場
SSE2
1
企画者:池上高志(東大・総合文化研究科)
【WS18-1】霊長類におけるToll-like receptor(TLR)
自身も発表をこなしながら、発表会場の責任者とな
ムの進化
企画者:河田雅圭(東北大・生命科学)
構と紋様形成
1
催としたが、当日の運営がなんとかスムーズに行え
○新屋みのり 1, 2 (1 遺伝研・系統生物研究センタ
大会の場所:口頭発表・受付・休憩室・本部を
【WS19-5】多面発現:アゲハチョウ幼虫の発色機
1, 2
大会実行委員の庶務係として、本大会の運営につ
いて簡単にまとめましたので報告いたします。
眞理子進化学会会長を含む総合研究大学院大学教
○松尾隆嗣 (首大・理工)
○西原秀典 1、丸山茂徳 2、岡田典弘 1 (1 東工大・
8 月 24 日
を与える生殖細胞
岩瀬 峰代(総合研究大学院大学大学)
田中実 (基礎生物学研究所・生殖遺伝学研究室)
【SSE1-4】フグとメダカの比較から見える魚類ゲノ
【WS19-4】前適応:ショウジョウバエの味覚変異
小宮 剛 (東工大・院理工)
E 会場
【SSE1-3】メダカの量的形質とその遺伝学的解析
林 文男 (首都大・生命)
【WS17-3】全球凍結からカンブリア紀初期の環境
9:00 〜 11:30
大・海洋研)
内多型
【WS19-3】機能転移:ショウジョウバエの交尾器
丸山茂徳 (東京工業大学)
企画者:成瀬 清 (基生研・バイオリソース)
【SSE1-1】誰でも性は変わりうる?〜性分化に影響
【WS19-1】軍拡競走:ゾウムシの口吻とツバキ果
地球の歴史と生命の進化
SSE1 メダカの生物学―発生、遺伝、進化
から環境科学まで―
8 月 23 日
企画者:林 文男 (首都大)
研究グループ)
WS17
17
ごすことができたと思う。しかし、あまり業者の方
SSE4
植物の生態学
と打ち合わせができないままにポスターボードの搬
企画者:矢原徹一(九大・院理)
8 月 24 日
15:15 〜 17:15
【SSE4】植物の生態学
矢原徹一(九大・院理)
E 会場
入・設営が行われたため、通路が狭くなってしまっ
たのは少し残念だった。なお、駒場博物館にてシー
ラカンスの展示を行い、進化学会参加者に見学して
もらうことができたのは、東工大の岡田先生と駒場
博物館の伊藤先生のご協力のおかげである。シーラ
カンスの標本の搬入・搬出には本大会から経費を支
解析
考察
出したが、大会の一部を駒場博物館の関連行事とし
○白井 剛 (長浜バイオ・バイオサイエンス)
○藤井直敬 1 (1 理研)
て位置づけてもらえたので、東京大学の施設使用料
18
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
19
を軽減することができた。ご協力いただいた東京大
彩で面白いセッションを提供することができた半面、
り間際になってもほとんど申し込み者がおらず、急
ソース関係7 名、実施委員(会員・発表者含む)21
学駒場キャンパスの教職員・警備員の方々には深く
2 日目のお昼休みが30 分間しかとれないなど、スケ
遽、関係者にメールで連絡させてもらった。今後は
名、アルバイト学生(会員・発表者含む)24 名で
感謝している。
ジュールには余裕がなくなってしまった。一般口演
高校の理科教員で作っている組織に早めに依頼する
あった。但し、公開講演や夏の学校の参加者(一
大会ホームページ:今大会は総研大の国際シン
の応募は予想を上回る64 件であった。1 会場増やす
などの対応が望ましい。今大会の高校生ポスター発
般・無料)には、受付を通らずに聴講していた方も
ポジウムとしての位置づけもあったため、参加に必
ことで、応募者の希望を受け入れることはできた
表は、一般のポスター発表と同じ会場で行い、一般
十数名いたようである。
要な情報を英語ページに掲載した。そのため、招聘
が、ワークショップと口頭発表で6 会場のセッショ
のポスター発表中に審査委員会を開き、表彰式も同
今大会の特徴としては、非会員の招待講演者と高
講演者に加えて9 名の日本語圏以外の一般参加者を
ンを並行して行うことになった。今回はHP に掲載
会場で行ったため、より多くの聴衆をあつめたので
校生の参加者が多かったことがある。非会員の招待
受け付けることが可能になった。なお、日本語で提
した当初のスケジュールには大幅な変更を加えず
はないだろうか。多くの進化学会参加者が取り囲む
講演者は参加費を徴収しない規則を適用した。ま
供しているトップページや参加登録ページにおいて
に、応募者の希望を受け入れる方針をとった。しか
中で、最優秀賞、優秀賞、敢闘賞の賞状が長谷川
た、高校生ポスター発表者は参加費を徴収しないと
は内容を更新するたびに書き換える方針をとったた
し当初の企画どおりに心を鬼にして発表演題を制限
眞理子進化学会会長から高校生たちに手渡された。
いうルールがあったことから、シンポジウム・ワー
め、参加者から以前の掲載情報を見ることができな
するか、いったんHP に掲載した内容を変更するか
名前を呼ばれたポスター発表者は照れながらである
クショップの聴講についても高校生以下は参加費を
くなったとの指摘を受けた。英語ページ作成のノウ
して、もう少し余裕のあるスケジュールを組んだ方
が嬉しそうに受け取り、一般参加者も温かく拍手を
徴収しない方針をとった。
ハウやさまざまな問題点を次回大会の実施委員に引
がよかったかもしれない。開催地、施設、応募者数
送っていた。参加ポスター発表は11 件であった。
き継げば、今後の大会ホームページは参加者にとっ
などは毎回変わるため、演題の採択数とスケジュー
企業・団体展示:出版社 2 社(共立出版、放送
(お弁当販売について)本大会は第2 日目と3 日目
て見やすくなるだけでなく、大会実施委員の労力削
ルの組み立てについては流動的な要素が多く、すべ
大学出版会)が13 号館の1、2 階のフロアーにて展
がそれぞれ土曜、日曜にあたっていたことと、特に
減にもなると考えられる。また、問い合わせ先のメ
てを満足させるプログラムを提供するのは難しいと
示販売、化学同人は書籍目録の机上配布という形で
第 2 日目昼食時間は 30 分しか取れなかったために
ールアドレスを統一することも学会として重要では
改めて感じた。
参加した。なお、今回は各バイオリソースの展示
「お弁当の販売」を行った。しかし、おそらくは価
反省など:
ないか。進化学会本部でホームページを管理し実行
口頭発表:昨年度からこの発表形式を採用して
(マウス、棘皮動物、メダカ)に、ポスター会場お
格が800 円という高めの設定だったことや、購買数
委員が書き換える体制を作る必要性があるのではな
いるが、
「座長を誰にお願いするか」
「発表データの
よび13 号館の1 階フロアー・休憩室を提供した。こ
の見積りが甘かったことにより、売れ残りが出てし
いかという意見がでた。少なくとも大会ホームペー
取り扱い」など工夫しなければならない点はまだ多
れらは参加者にとっても面白く見ることのできた展
まった。お弁当の手配や販売(呼び込み含む)は実
ジのフォーマットとメーリングリストのアドレスを
い。今回は発表者が次の演者を紹介する形式をとっ
示だったのではないだろうか。
施委員、アルバイト学生のパワフルな動きによって
進化学会本部が管理することをお願いしたい(http:
た。若手にとっては練習の意味もありこれはこれで
サテライトシンポジウム: 進化学会前日の8 月
//www.sendou.soken.ac.jp/esb/esj2008/index.htm
よかったかもしれないが、やはりよい質問者ばかり
21 日に総研大葉山キャンパスにて「高校生のための
l を参照)
。
ではないのでうまく捌ける座長を配置することも考
進化学」と題して行われた。駅からの送迎バス、同時
(ポスター作成について)大会アナウンス用のポ
大会プログラム:今大会はシンポジウム(企画
えられる。また、時間管理およびウイルス対策を考
通訳を入れるなどいろいろと工夫したが、夏休み期
スターの作成がかなり遅くなってしまった。早めに
基本的にはうまくいっていたのだが、もう少し前も
って具体的な準備や検討の余地があったと思う。
型)13 件、夏の学校(企画型)4 件、ワークショップ
え、時間を指定して 1 台のレンタル PC にデータを
間のせいか高校生の参加者は予想以上に少なかった。
準備を進め、本部事務局からのお知らせと一緒に会
(応募型)20 件、一般講演(応募型)は口頭発表 64
いれてもらうようアナウンスしたつもりだったが、
このようなイベントを企画する場合、かなり前から
員に配布を行うなどの改善が必要である。
演題およびポスター発表 127 演題、高校生ポスター
徹底することができなかった。そのため自身のパソ
広報活動を行わなければならないことを痛感した。
(置き引きについて)会期中に2 件ほど、置き引
11 演題となった。確実に参加者は増えているようで
コンを使用する演者もおり、パソコンの付け替え等
懇親会:懇親会の会場はポスター会場と同じ「駒
きの被害があった。参加者の自己責任が基本である
ある。今年は日本進化学会 10 周年という節目でも
にかかる時間は発表の進行に大きな影響を与えてし
場コミュニケーションプラザ2 階 Dining 銀杏」で、
が、張り紙を張るなど注意を喚起する必要があった
あり、分子進化の分野では木村資生博士が提唱した
まった。発表者への連絡方法も含めて十分な検討が
参加者は当日参加を含め235 名であった。総会と受
かもしれない。
中立説 40 周年にもあたる。それにふさわしい進化
必要だったと考えている。
賞講演が長引いて20 分ほど遅れてのスタートとなっ
=実施委員=
*総研大・葉山:高畑尚之、佐々木顕、
学会大会の企画として、国際的に活躍される研究者
ポスター発表:ポスター発表の演題は127 件。初
たが、東京大学のケータリングサービスが柔軟に対
を数名招聘してシンポジウムを企画することになっ
日に「駒場コミュニケーションプラザ2 階Dining 銀
応してくれたので、問題なく進行することができ
長谷川眞理子、颯田葉子、大田竜也、
た。講演者招聘に必要な資金は総合研究大学院大
杏」で行われ、熱心な議論が繰り広げられた。夕方
た。また、環境(程よい広さ、マイク設備)が整っ
田辺秀之、沓掛展之、岩瀬峰代、相馬雅代、
学との共催により確保することができた。当日はプ
にポスター発表の時間を設定したこともあり、今大
ていたので、
「手伝ってくれたアルバイト学生の紹
金 慧琳、西岡 輔、井川 武、中林 潤、
ログラム委員の協力もあり、使用言語を英語とする
会ではサンドイッチ・助六寿司・お菓子とソフトド
介」
「駒場博物館の紹介」そして「ベストポスター
セッションが6 件開かれ、国際シンポジウムとして
リンクを用意した。椅子も配置したので和んだムー
賞の発表」などを参加者にきちんと聞いてもらうこ
も充実したものとなった。進化学会本部からの要請
ドになり、概ね好評を得た。なお、次の日に懇親会
とができた。ただ、当日参加者が予想以上に多かっ
もあり、夏の学校は進化学の裾野を広げることをめ
場として使用することになっていたので、掲示は初
たこと、そして若い参加者が多かったことから、飲
ざして4 件を開催した。各担当者とも、その意図を
日限りとなったが、もう少し長く掲示できた方がよ
み物は十分だが料理が不足気味であった。
十分に汲んでわかりやすく面白いセッションを企画
かったかもしれない。また、ポスターボードの列間
していただいたと思う。熱心に聴いていた参加者の
の確保は次回大会では考慮をお願いしたい。
大会参加者数:大会参加者は757 名で、その内
大槻亜紀子、五條堀淳
*東大・駒場 :長谷川寿一、嶋田正和、伊藤元己、
齋藤慈子、吉田丈人
長谷川 眞理子(総合研究大学院大学)
訳は会員 408 名、非会員 104 名、非会員の招待講演
今年は、日本進化学会の第10 回ということは、創
高校生ポスター発表:昨年度はレベルも高く多く
者69 名、高校生とその引率が101 名、公開講演・夏
立 10 周年記念である。そのことで特別に式典は行
ワークショップに申請された20 件はいずれも甲乙
の参加者がいたということで、東京大会でもかなり
の学校の参加者 19 名、出版関係(読売新聞 、朝日
わなかったが、今回の公開シンポジウムは、10 周年
つけがたく、絞り込まずに採択することにした。多
参加者がいるだろうと予想していた。しかし、締切
新聞社、NHK、
(株)
羊土社)4 名、展示・バイオリ
記念ということを念頭に、企画者としては、
「進化」
中には高校生や一般の方も多く見受けられた。
20
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
21
と「日本」をキーワードに構成しようと考えた。日
られるべき壮大なドラマであることを示してくれた。
ールトとして想定しているものが違うこと、それが
成立する条件を網羅的に解析した結果によって、社
本進化学会は、進化についての研究と研究者間の交
日本人の起源はたかだか6 万年前である。そこには、
あるがゆえに、誰もがそのデフォールトに基づいて
会規範や倫理的判断の基本が明らかになってきた。
流を促進し、その成果を一般社会に還元することを
東南アジア全体での人間の移動に伴う縄文人の到来
自らの行動を決めるため、ある種の均衡状態ができ
また他人が他のメンバーに対してもっている評価を
使命としている。そのこと自体に国境はないのだ
があり、さらに、朝鮮半島からの弥生人の到来があ
あがる、それこそが文化と呼ばれるものである、と
知ることや伝えることが重要で、このメカニズムが
が、そして、科学研究に国境を持ち込むのも筋違い
った。
いうことを明確に表して秀逸であった。
はたらくためには言語が必要であると考えられる。
ではあるのだが、
「日本」進化学会である以上、日
数年前、50 万年前、60 万年前、100 万年前という
10 周年を記念して、これらの講演が、日本の進
本という国、文化、風土に焦点を当ててみることに
古い時代の石器が日本で次々に「発見される」こと
化学の行方に対して一つの指針を与えてくれること
も、意義はあると思われた。誰しも、自分たち日本
が相次ぎ、自然人類学の知識と、日本の考古学の発
を期待したい。
人について知りたいと思うものだ。そして、この個
見との間に大きなギャップが生じた。結局、これら
別例の研究成果は、一般性、普遍性の探求にとって
の考古学的発見は捏造であったことが判明したが、
がない場合には、処罰行動が消えてしまいそのため
も意味があるはずである。
篠田氏の講演は、日本国内だけに目を向けた、閉じ
に協力も維持されない。中丸によると空間構造のあ
進化の考えは、日本文化が生み出したものではな
い。西欧の考えが輸入されて広まった。今でこそ、
進化学は日本の大学や研究所でさかんに研究されて
た研究世界の脆弱さをも示すものであった。
日本人の起源を取り上げたあと、次に興味がある
次に、中丸麻由子(東工大)が、コストのかかる処
罰による協力の成立の数理的基盤について話した
(Dieckmann との共同研究)。処罰行動が存在する
とそれによって協力は維持される。しかし空間構造
巌佐 庸(九州大学)
る格子モデルでは、処罰行動と協力とがともに進化
協力の進化は生物学にとって基本的課題である。
することができることを示した。このときコストや
のは、日本語の起源である。日本語は、世界の他地
群れ生活をする動物や社会性昆虫の協力成立の問題
処罰の関数形によって進化すべき協力レベルが異な
る。特に、処罰行動が協力レベルのさまざまな関数
いるが、一般社会における進化の理解が正確である
域のどの言語と近いのか、人類学が明らかにする日
は分かりやすい例であるが、単細胞生活のものから
とは思われない。
「進化論」は、日本にどのように
本人の起源と、日本語の起源とは合致するのか?
多細胞生物が成立する過程、さらには自己複製する
から選んだときには、閾値が存在してそれ以下の協
伝えられ、受け入れられたのか、このテーマは、是
このような疑問に光をあてていただこうと、大西拓
複数種類の分子から生命が出現する生命の起源も、
力しかしない個体には強い処罰を行い、閾値以上の
一郎氏に講演をお願いした。
協力進化の例といえる。
協力にはまったく処罰を行わないといったタイプの
非とも第一に取り上げたいものであった。この点に
結論から言うと、日本語の起源の研究はきわめて
協力の進化機構としては、従来から認められてき
日本に進化の考えをもたらしたのは、エドワード・
難しく、日本語がどこか他の言語と親和性が強いと
た血縁淘汰や互恵的利他主義に加えて、ここ数年の
モースであった。モースは、ルイ・アガシの弟子で
いう確固たる証拠はないようだ。しかし、日本語の
間にたとえば評判を共有することによるものなど新
あるが、アガシは反進化論者であった。反進化論の
方言を詳しく調査した大西氏の研究によると、長野
たな進化機構が研究されてきた。
弟子のモースがなぜ進化論者であったのか、三中氏
あたりを境として、日本語方言には、東と西に大き
他方で、社会科学において実験をもちいる手法が
は、西欧における学者の世代交代を示す。三中氏
く分かれる変異が存在する。これが、篠田氏の講演
発展し、人間は従来の理論経済学が仮定してきたよ
共同研究)
。淘汰が弱い条件においてペア近似とい
は、また、日本や中国などの東洋世界が自然界を探
による、日本古来の縄文人と渡来の弥生人の分布と
うな合理的な選択をしないことがはっきりしてきた。
う手法やコアレセンスの数理を用いることによって、
求してきた伝統を振り返り、1)東洋では、個別の
拡散とに結び付けられれば興味深いのであるが、ま
さらには、脳科学ともむすびつき、人々の相互作用
頂点当たりの辺の数(グラフの次数)が一定である規
事態の記述に対する執念が非常に強い、2)一方、理
だまだ確固たる証拠がないようである。
や互いの行動を評価する際の脳活動の測定から、人
則グラフについては解析的な条件が導かれた。協力
がどのように意思決定をしているかについてのメカ
した結果相手が受ける利益B と協力した本人が被る
ニズムに迫る研究が進んでいる。
コストC との間に、B >kC が成り立つと協力が進化
関しては、三中信宏氏に講演をお願いした。
論というものは、現実との対応なしに天から降って
最後に、日本人の文化的特性に関する研究の紹介
くるごとくに提示されるものとして存在した、とい
を、山岸俊男氏にお願いした。日本人は集団志向で
う特性を指摘した。つまり、理論が、現実との対応
個人主義ではないが、アメリカ人は個人主義である、
ものが、協力を維持させるにあたってもっとも有効
である。
つづいて、大槻久(東工大)が、プレイヤーの間の
ネットワーク関係の形によって、協力の進化しやす
さを解析した結果を示した(Nowak、Hauert らとの
本シンポジウムでは協力成立条件に関する理論的
する。ここでk は次数である。この条件はk を平均次
数におきかえることによりより幅広いグラフについ
によって修正を受けるという、事実と理論との間の
日本人は他人を信頼しているが、アメリカ人はそう
研究と脳神経活動を探る研究、社会科学での実験に
循環が薄いのである。したがって、
「進化論」もそ
ではない、などなど、一般に流布している彼我の違
よる協力の維持と成立の総説を行って今後を展望し
てもほぼ成り立つことが大規模なシミュレーション
のような風土の中で広められることになり、日本固
いはいくつもある。それはいったい何なのか、社会
た。
で確かめられている。また状態更新のルールによっ
生活における文化の違いとは何なのだろう? これは
まず最初に、企画者の巌佐庸が、協力の進化につ
次に取り上げたのは、日本人の起源である。人類
文化の問題ではあるが、人間性の進化という普遍的
いての生物学の議論を簡単にまとめた。そのあとヒ
きに範囲と相互作用の範囲が異なる場合について上
の起源、ホモ・サピエンスの起源を背景に、この日
な問題を念頭においた上で文化による個人の行動の
ト社会において特に重要と考えられる間接互恵にも
記の不等式条件を拡張した結果も示した。社会での
本列島に人間が住み始めたのはいつなのか、日本人
違いを研究している山岸氏に講演をお願いした。
とづいた協力の進化についての研究を簡単に紹介し
人々のつながり方と協力レベルは社会科学において
た。ヒトの社会では、ヒト以外の生物よりも遥かに
も重要な問題であるとの指摘が質疑の中でなされた。
については、膨大な量の研究が行われてきた。しか
高いレベルの協力がみられるが、その原因として、
鈴木真介(理化学研究所BRI)は、脳活動の測定
日本人の起源を考えるとき、たかだか極東の小さ
し、そのような違いをもたらしている根源的な要因
個々のプレイヤーに「よい」
「わるい」といった評
によって人々が他のプレイヤーの行動をみて他人を
な列島に住む人々の起源の話だと、矮小化して考え
は何なのか、それを明らかにしようとすれば、人間
価、もしくは評判がはりつけられ、その情報をメン
評価するプロセスにおいてどの部分が働いているか
てはいけない。篠田氏の講演は、日本人の起源の考
というものは何を手がかりに自らの行動を決めるの
バーで共有することによって互いに協力行動を成立
を計測する研究を報告した。非血縁者間の協力の形
察が、180 万年ほど前のアフリカでのホモ・エレク
かについて、研究者自身がかなり深い洞察を持って
させることができる機構についての数理的条件の研
成・維持にとって重要な、互恵的協力の背後にある
トスの出現とその旧大陸への拡散、そして、再び20
いなければならない。山岸氏の研究は、日本人、ア
究がある。本人が協力したかどうかだけでなくその
脳神経メカニズムについての研究である。17 名の被
万年ほど前のホモ・サピエンスのアフリカでの出現
メリカ人それぞれが、他者は自分をどう見ている
ときの相手の評判がどうだったかによって次の時刻
験者に機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)中で囚人
とその拡散という、まさに人類史全体の中でとらえ
か、他者とはどんな存在であるかについて、デフォ
での評価が変わることが必要である。協力がうまく
のジレンマ・ゲームを、協力者、非協力者とそれぞ
有の状況が作り上げられた。
はどこから来たのかについて、篠田謙一氏に講演を
お願いした。
日本人とアメリカ人の社会的態度の表面的な違い
ても結果が異なってくる。さらに大槻は、繁殖すると
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日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
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れ行わせた。その結果、ゲームでの利得に応じて脳
界をリードする研究を行ってきた研究者を集めて、
共進化のホットスポット、静置する系をコールドス
うに、微生物を用いた実験共培養系は、共進化に対
の報酬系(線条体、前頭葉内側部)が活動するこ
形質の共進化の研究について深い交流を行おうとい
ポットとみなして、ホットスポットからコールドス
する様々な理論を検証する上でまたとないシステム
とが分かった。また、非協力者とゲームを行ってい
う趣旨で、佐々木顕(総研大)と吉田丈人(東京
ポットへファージを移住させることがファージの進
であると言えよう。この分野から、今後さらに驚く
べき発見がされることを期待してやまない。
る際に特に、右前頭葉外背側部(rDLPFC)
、右前
大学)が企画したシンポジウムである。まず、宿主
化を早めるかといった問にも実験的に答えたのであ
島皮質(rAI)が活動した(rDLPFC は認知的抑制、
と病原体の共進化について理論的な研究を行ってき
る。
rAI はネガティブな感情処理にそれぞれ関連がある
た佐々木顕(総研大・葉山)が、以下に続くMichael
Brockhurst 氏の発表に会場が圧倒された余韻を残
と考えられている)
。これらの結果は、互恵的協力
Brockhurst 氏、深見理氏、吉田丈人氏の発表につ
したまま、講演は次の深見理氏(ハワイ大学)の講
行動の脳神経基盤として、(1)我々は報酬系の活動
いて、理論の側からみた「みどころ」の概説を含め
演に移った。深見氏はPaul Rainey 氏らとの共同研
によって「基本的には他者に対して協力した方が得
て紹介した後、寄生蜂の毒性と宿主抵抗性の軍拡競
究によって、試験管内にバクテリア(Pseudomonas)
である」と学ぶ、(2)しかし、非協力者と出会った
走、植物の遺伝子対遺伝子相互作用にもとづく軍拡
のある祖先系統を放り込むと、やがて試験管内の局
本シンポジウムは系統ネットワークをいろいろな
場合にのみ、上記の協力的動機を抑制し(rDLPFC)
、
競走、空間構造が宿主・病原体の共進化動態に与
所環境のニッチに特殊化した系統がつぎつぎに分化
方面から考えようと企画したものである。英語を用
非協力行動を行う、というふうにまとめることがで
える影響についての自らの研究成果を紹介した。寄
し、こうして出現した多様な系統が安定に共存する
いて、4 名が講演した。最初、世話人の斎藤成也が、
きると結論した。講演の議論では、フロアから脳活
生者の毒性と宿主の抵抗性の程度が、ともに相手を
群集を構成するに至るという驚くべき実験結果をつ
動計測の専門家も加わり、実験の詳細にわたる質疑
上回る方向に進化する結果として、際限なく上昇し
ぎつぎと発表してきた。これは競争種(系統)の形
が行われた。
斎藤 成也(国立遺伝学研究所)
Welcome to World of Phylogenetic Network!
と
題して、系統ネットワークの紹介を行った。地理的
たのち(軍拡競走)
、ついには行き過ぎた防御コス
質置換および形質分岐を実験的に示す画期的な成果
に分化した集団が交配可能なあいだにふたたび遺伝
最後の講演者である渡部幹(早稲田大学)は、社会
トを避けるべく抵抗性を放棄した宿主遺伝子型の侵
であった。ビクトリア湖が干上がった後にシクリッ
子の交流を行う場合があることは古くから知られて
科学において、関連したどのような関連研究が行わ
入に至るという軍拡競走理論の予測は、次の講演者
ドで起こった急速な適応放散と種分化に匹敵するか
いたが、遺伝子レベルでの網状進化は、1980 年代
れてきたかについて紹介した。本セッションのそれ
Michael Brockhurst 氏(リバプール大学)らが、バ
もしれないほどの大規模な形質の多様化を、世代時
以降に理論研究とデータ解析が進んだ。
までの講演に関連して自ら行った社会心理学や実験
クテリアの抵抗性とファージの感染力について共進
間の短いバクテリアで実験的に再現する試みと言っ
第 2 演者のStefan Grunewald は、系統ネットワー
経済学の成果を説明した。従来からの合理的選択を
化実験で示したみごとに示した結果と密接に対応し
ても良いかもしれない。本講演では、特に、試験管
クの理論研究で第一線に立っているひとりである。
するとする仮定が成り立たないことを示し、大規模
ていること等を指摘して、いよいよ共進化実験に関
内で祖先系統から分化をとげつつある群集に、ある
昨年Mol. Biol. Evol.誌に発表した、四つ組の情報を
な協力社会を実現できている主要な説明原理として
する以降の講演に移った。
遺伝子型を侵入させるとき、その導入の時期、ある
用いるQNet の理論と応用、およびSupernetwork と
いは導入する系統の順番によって、後に構成される
いう新しい概念を示した。
現在最も有力な説は間接互恵性であると結論した。
Brockhurst 氏は蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)
各講演についてさまざまな議論があり、フロアか
とファージφ2 の実験共培養系をもちいてオックス
群集構成がまったく異なることを明瞭に示した、最
らの質問や議論が盛んに行われた。ことに渡部が、
フォード大学のAngus Buckling 氏との共同研究を
近の研究成果について発表していただいた。
第3 演者の下平英俊は、系統樹を最尤法で推定す
る時に、モデルとデータのあいだの関係において系
社会科学の実験が示すヒトの行動選択の研究成果を
行ってきた。数百世代を重ねて共進化を繰り広げる
最後の講演は、企画者でもある吉田丈人氏(東京
つぎつぎと紹介されたことは、進化学会のほとんど
バクテリアとファージの系統を、各時刻で「凍結保
大学)による、食う食われるの関係にあるクロレラ
第4 演者の北野誉は、実際のデータ(ABO 式血液
の会員には新しい情報で、多くの参加者が興味をも
存」し、後に解凍した集団を用いて、
「現在」のバク
とワムシの共培養実験において、クロレラが捕食者
型遺伝子およびRh 式血液型遺伝子の塩基配列)か
統ネットワークが生じることを示した。
った。公開講演会において北海道大学の山岸教授が
テリアに「未来」のファージを感染させて抵抗性を
に対する抵抗性を急速に進化させたという Nelson
ら系統ネットワークを作成し、それらの生物学的意
講演されたが、本シンポジウムの渡部さんの講演と
測るといった、時間を自由に操る画期的な実験デザ
Hairsone Jr., Steve Ellner 氏(共にコーネル大学)
味を考えるにはどうしたらよいかを議論した。
も関連して、近年の社会心理学や実験経済学の進展
インを彼らは考案した。これにより、どの時点をと
との共同研究の発表であった。クロレラとワムシと
このシンポジウムが、日本で系統ネットワークを
は目が離せないことが多くの進化生物学者にとって
っても、バクテリアは数世代前のファージに対して
流出入する栄養素の個体群動態モデルを実験的に検
普及するのに少しでも役に立ったことを世話人とし
「現在の」ファージに対してよりも高い抵抗性をも
証する過程で、理論的にはありえない捕食者と被食
て期待している。
も明らかになった。
本セッションは、社会科学および認知科学に対す
ち、逆に「未来」のファージには低い抵抗性をもつ
者の個体数振動の「位相関係」が発見され、ここか
る進化生物学の接点を示すものである。今後、進化
こと、同様にファージの感染力も過去のバクテリア
らクロレラにおける捕食抵抗性が実験集団のなかで
生物学を1 つの核にして幅広い範囲の諸科学が融合
系統に対して強く、未来の系統に対して弱いことな
急速に進化したことが見いだされ、個体群の振動と
していく可能性が感じられた。
どが実験的に示されたのである。これは、バクテリ
クロレラ遺伝子型の相対頻度の振動の両者が結合し
アのファージに対する抵抗性と、ファージの感染力
て複雑な実験時系列が理論的に再現されるまでの劇
このシンポジウムは、分子進化の研究に多大な影
とが、数百世代にわたって際限なく増大したことを
的な研究の過程に、引き込まれてしまうような講演
響を与えた故木村資生博士を偲ぶ機会でもあった。
示している。Brockhurst 氏らは、さらに培養ライン
であった。
木村は30 代ですでに集団遺伝学の祖であるフィッ
高畑 尚之(総合研究大学院大学)
間で培養液を部分的に混合することにより、バクテ
共進化は、マダガスカル島で発見された長い距を
シャー、ホールデンとライトの後継者とみなされて
佐々木 顕(総合研究大学院大学・葉山高等研究センター)
リアとファージの移住の過程を導入し、
「空間構造
もつランに対してそれを特異的に採蜜するガの存在
いたが、40 代の前半に分子進化の原動力は自然選
大会初日、まだ少しだけ朝の冷気を残した東京駒
のもとでの遺伝子交流が共進化を加速するか」を検
を予言したダーウィンの時代から、つねに進化生物
択に中立な突然変異であることを発見し、自然選択
場キャンパスで、シンポジウム「実験共進化系と理
証した。さらに、試験管を定期的にシャッフルする
学者を魅了してやまない話題であったが、実証研究
万能の考えからパラダイムのシフトをもたらした。
論」が始まった。宿主と病原体、捕食者と被食者の
方が、静かに置くときよりも共進化が速く進行する
にはさまざまな困難が伴ってきた。しかし、本シン
1980 年代になるとDNA の配列情報に裏付けされて、
軍拡競走や、競争種(系統)の形質置換について、世
ことを発見するとともに、シャッフルする培養系を
ポジウムが発する明瞭なメッセージから明らかなよ
中立説は広く受け入れられるようになった。少しオ
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日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
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ーバーな表現になるが、それは木村が命を賭して守
もある。日本発の中立説が今後どのように展開して
られた。例えば、幼児のフローラが成長するとまっ
ったからだ。このプロセスで木村は変わり、その師
いくのか、若い人への刺激になったなら幸いである。
たく違ってくることが示された。ヒトはヒトゲノム
と常在菌ゲノムからなる超有機的体であるという概
であるクローの人生も変わった。
今世紀になると、中立説を正の自然選択を検出す
る帰無仮説とみなす傾向が強くなる。果たして中立
小林 一三(東京大学)
念は、ヒト進化を考えるうえで重要であろう。また、
ここ十余年間、細菌と古細菌の解読全ゲノム情報
DNA シークエンス解析の加速化、低コスト化、ヒ
説の今日的な意義は、そのようなものにすぎないの
颯田 葉子(総合研究大学院大学)
配列数は指数関数的な増加を続けている。細菌での
ト常在菌ゲノム解読・メタゲノム解読をめぐる世界
であろうか。このシンポジウムでは、木村とゆかり
ヒトと他の霊長類とで異なる表現形の一つが、生
倍化時間は1 年半、古細菌での倍化時間は3 年であ
情勢も報告された。
の深い3 人の著名な研究者にその意義について講演
活史である。霊長類の生活史は、主に幼児期・子ど
る。この増加は、昨年からのシークエンス決定技術
内山郁夫(基礎生物学研究所):ある程度離れた
をお願いした。当初演者のひとりとしてジム・クロ
も期・思春期・オトナ期・老齢期で構成されてい
のイノベーションによる加速と低コスト化、これも
細菌間ゲノムを比較し、
「コア」構造を抽出しよう
ーの承諾をえていたが、春先に手術をしたため来日
る。ヒトでは幼児期/子ども期および老齢期が他の
進行中の情報技術のイノベーションにも支えられ
というインフォマティクスの手法が紹介された。こ
が不可能になった。大変残念である。木村との深い
霊長類と比べて長い。ヒトの長い幼児期/子ども期
て、止まる気配が無い。さらに、爆発的に増加して
れは、保存されて、しかもシンテニーの分断されな
つながりや趣旨から、このシンポジウムをクローに
および老齢期はヒトの生物学的特性や文化的特性の
いるメタゲノム情報のうち、原核ゲノムが大きな部
い単位を取り出そうという試みである。
「コア」は、
捧げることで、演者一同からご賛同いただいた。
獲得と大きく関連している。本シンポジウムでは以
分を占める。この膨大な情報塊を比較解析すれば、
垂直伝達されたと考えられる。それとの比較でゲノ
ウィル・プロヴァインは、中立説を歴史的に振り
下の4 名の講師から、このようなヒトの生活史の特
遺伝子とゲノムの進化の素過程とその生物学的意義
ム多型を解析する足場になる。
返り、その意義が自然集団の遺伝的多様性の理解に
性についての最新の知見を紹介いただき、その特性
を、きわめて高い分解能と信頼度で明らかにするこ
馬場理(順天堂・医):黄色ブドウ球菌などブドウ
あることを主張した。プロヴァインは以前、中立説
の生物学的、進化学的意義、また特性獲得に関わ
とができるだろう。とくに、細菌の種内属内のゲノ
球菌属の多数の解読ゲノム配列をもとに、それらの
の最もラジカルな点は分子進化と表現進化を分離さ
る遺伝的要因等について議論した。
ム配列比較によって、進化についての理解が画期的
病原性の進化が説明された。とくに病原性遺伝子、
せたことであるとしたが、今はDNA、タンパク質、
1. 長谷川眞理子
に深まろうとしている。全ゲノム配列は、ゲノムの
薬剤耐性遺伝子がある、ゲノムアイランドの著しい
一つのスナップショットに過ぎないが、そのスナッ
多型が、ブドウ球菌属細菌の進化に重要である。
表現型の3 分離に整理している。DNA は中立、タン
パク質は
ほぼ中立 (太田理論)
、表現型は自然選
2. 鈴木隆雄
「ヒトの生活史におけるビタミンD ―
今日の高齢社会の視点から―」
択である。
木村の長年の共同研究者であった太田朋子は、微
弱有害突然変異仮説から
「ヒトの生活史とヒト固有の性質の進化」
ほぼ中立
仮説への道の
3. 濱田
譲
4. 尾本恵市
プショットを多数繋げる「コマ落とし」手法によっ
中川一路(東大・医科研):レンサ球菌の2 種の
て、ゲノムのダイナミックな動きが現れてくるだろ
ゲノム解読から、ゲノム多様性が考察された。とも
「ヒトの成長・加齢パターンの進化」
う。それは、メカニスティックな実験的解析と相補
に、DNA 複製の起点と終点を軸としたときの右腕
「ネオテニー仮説の再検討」
して、ゲノム進化の素過程を詳細に明らかにするパ
と左腕の間での相互的な組み換えによって起こる逆
りを、そのときどきのデータを参照しながら講演し
長谷川は、ヒトの生活史についてヒトの社会性シ
た。元来、微弱有害突然変異仮説は木村の考えと
ステムとの関連から共同繁殖のプロセスの特性につ
大きな差異はなかったが、その後太田が正の自然選
いて紹介した。共同繁殖では、女性の出産、育児は
小林一三(東大・新領域):パラログ・クラスタ
ファージの病原因子遺伝子間のホモロジーによって
択を考慮するようになったのに対し、木村は純粋中
友人や親戚などに頼る割合が高く、父親の役割も他
ーの進化を黄色ブドウ球菌の約 10 株のゲノム配列
逆位をもたらす組み換えが起きている。S. mutans
立説に傾斜していく。太田は、発生過程や生理シス
の生物とは異なる。ヒトでの性選択があるとすれ
を比較して論じた。遺伝子の中央にあるヌクレオチ
では、CRISPR という獲得免疫系や制限修飾系によ
テムにおける分子間ネットワークの情報をもとに分
ば、女性側からの選択が重要となり、その理由は男
ド配列レベルで保存性の高い部分が関与した不等交
って、ファージ感染を阻害している。
子進化における正と負の自然選択の役割を論じた。
性との安定かつ長期的な関係を築けるかどうかとい
叉によってパラログの数の増減、内容の入れ替えが
どの講演も、ゲノム配列情報を利用したゲノム進
根井正利も30 年にわたって木村と親交があり、当
う点が重要になるためという説が紹介された。鈴木
起きるというモデルを提唱した。進化の単位が、ひ
化理解の新しい方向性を示すものだった。近縁ゲノ
初から中立説論争に関わってきたひとりである。根
はビタミンD の役割をヒトの皮膚やクル病などの骨
とつの遺伝子でなく、
「ある遺伝子の3 ′部分、遺伝
ム比較の方法は、細菌ゲノムに限らず、全ての生物
井は、 中立 という概念があまりにも厳密に定義さ
の病気との関連、またビタミンD の代謝についての
子間領域、下流の遺伝子の5 ′部分」であることを
でゲノム進化の素過程を明らかにするための有力な
れていることと、信憑性のない仮定に基づいてあま
知見に基づき、高齢者でのビタミンD 不足がもたら
示した。さらに、構造未知の遺伝子領域の両側を用
方法であることは間違いない。実際、ヒトでも1000
りにも性急に中立説を棄却する今日の傾向に対し
す骨の異常だけでなく、体力の個人差にもつながる
いた網羅的ホモロジーサーチによって、
「まったく
人ゲノム・プロジェクトが進行している。
て、厳しく批判した。とくに、非同義置換に関する統
ことを示した。濱田はヒトの成長パターンを他の霊
新しい基本立体構造を持つDNA 結合タンパク質を
計的検定結果が根拠に乏しく、多くは誤りであると
長類と比較し、成長パターンの特性を紹介した。ま
探し尽くす」試みを紹介した。これは、
「制限酵素
約 30 名だったろうか。微生物の実験研究に携わっ
述べたときには、この分野の第一人者らしい鋭さが
た特に脂肪蓄積の違いという視点でヒトと他の霊長
遺伝子と修飾酵素遺伝子が隣り合って、ゲノムを跳
ている研究者、ゲノム進化の研究者など。日曜の朝
あった。同時に、中立説のおかれている今日の立場
類を比較した。最後に尾本はヒトの特性の獲得の説
び回る」
「修飾酵素遺伝子は配列から直ちに解るが、
という時間にしては、集まりは良かったと感じたも
に大きな危機感を示した。この点で、根井は広い意
明として「ネオテニー仮説」の概要を紹介し、ヒト
制限酵素遺伝子は多様であり進化が速い」という観
のの、微生物以外の対象ではあるが同じくゲノム配
味での中立突然変異と中立説の意義を問うたのだ。
の様々特性がこの仮説に基づいてどのように説明さ
察に基づく。
列比較による進化解析を扱う含む二つのシンポジウ
れるかを紹介した。
ワフルな方法になるだろう。この方向での研究を5
位が頻繁に起こっている。S. pyogenes では、ファー
人が講演した。
ジが病原遺伝子を持ち込み、ある場合には、異なる
活発熱心に討論が行われた。オーディエンスは、
服部正平(東大・新領域):ヒト腸内フローラの
ムと同じ時間帯でオーディエンスを取り合う結果に
概念に対して三者三様の表現があった。しかし興味
本シンポジウムは行動学、生理学、遺伝学等広い
メタゲノム解析について紹介した。膨大な種類の細
なったのは、残念だった。もっとも、そういうことを
深かったことは、分子レベルの中立突然変異の重要
分野をカバーするもので、ヒトの生活史の特性を理
菌がいるフローラの DNA を端からシークエンスし
言い出せば、私にとっては、最初の「協力の進化」
性に関しては基本的に合意されていることだ。その
解するうえで、4 つの講演内容はみな興味深かった。
ていこうというアプローチである。これまでの培養
vs.「Experimental coevolution」に始まって、同時
可能細菌の解析からは得られない、膨大な情報が得
進行の話がどちらも面白そうで、どの会場に行けば
講演と最後のディスカッションを通して、 中立 の
上で新しい問題もあり、また木村が残した重要な課題
26
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Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
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よいか迷う、そして飛び回ることの繰り返しの忙し
5. Takashi Gojobori (National Institute of Genetics)
タが発表され、様々な側面から表現型の遺伝的基礎
い3 日間ではあったが。これは、つまりは、同じ問
The evolution of the central nervous system
を分子レベルで研究することが可能になった今、新
境に適応した地理的集団(亜種)が多数見られ、多
たな進化学的枠組みを考えるうえで非常に意義のあ
くの場合、同所域では行動による生殖隔離が存在す
るシンポジウムであったと思う。
る。このような行動隔離に関わる遺伝領域を、QTL
いへのアプローチの多様性が楽しめるのが、進化学
from viewpoint of comparative genomics
会の良い所ということだろうか。プラクティカルな
で発表した。トゲウオ科のイトヨには異なる生息環
根井正利先生は、多くの生物種のゲノムデータや
解析によって調べたところ、性染色体上の転座領域
一つの対策だろう。そして、時間厳守。ある学会で
ヒトのゲノムワイドの多型データを用いた集団間お
との関連が示唆された。この遺伝領域によって説明
見たもうひとつの解決策は、シンポジウム、ワーク
よび種間比較の解析から、感覚受容体多重遺伝子族
ショップも含めて、口頭発表者が、全員ポスター発
の進化において遺伝子重複、欠失などによる偶然性
表の場を与えられ、ポスターが会期中展示されると
が大きな役割を果たしていること(genomic drift)
ことを言えば、会場を同じフロアーにあつめるのが、
される遺伝分散は 25 %と少なかったのだが、行動
大島 一正、長谷部 光泰
(基礎生物学研究所・生物進化研究部門)
に関する遺伝領域を特定できたことは QTL 解析の
威力を示していると言えよう。
を示し、またその他の最新の知見と共に neomuta-
近年、遺伝子解析技術の向上により様々な形質の
次に企画者の大島らが「複合形質の遺伝基盤:植
tionism について説明された。横山竦三先生は光受
遺伝基盤が明らかにされつつあるが、こうした研究
食性昆虫における寄主転換のメカニズム 」について
容体であるロドプシンの吸収波長が水の表面近くに
の多くはごく限られたモデル生物を用いたものであ
の発表を行った。植物を餌とする昆虫類では、雌成
棲む魚と深い所に棲む魚では異なるが、このロドプ
る。その一方で、野生生物にはモデル生物に見られ
虫が卵を産む好みと、幼虫が植物を食べて成長でき
シンの吸収波長の変化は、魚類の進化過程で魚の棲
ない様々な適応形質が見られる。適応形質の遺伝基
る能力の両方が進化しないと寄主転換が起こらない。
竹崎 直子(香川大学)、大田 竜也(総研大)
息場所の変化にともない何度も起こったものである
盤はそれ自体が研究の対象として興味深いだけでな
寄主転換の遺伝基盤は興味深い問題であるが、植食
現在、分子進化においては自然選択による適応的
こと、また、吸収波長の変化に重要なアミノ酸の変
く、適応進化に伴う種分化の可能性を考えるうえで
性昆虫の多くが年 1 化性かつ実験室内での扱いが困
変化だけでなく中立突然変異の偶然による寄与が大
化をmutagenesis によって同定し、この機能的に重
もその遺伝基盤の理解は欠かせない。何とかして野
難であったためほとんど研究が進んでいない。講演
きいとする中立説が基本的な考え方として受け入れ
要なアミノ酸の変化は最近よく用いられている統計
外で見かける生物の不思議な生き様を遺伝基盤から
では、年多化性の小型蛾類クルミホソガを用いた寄
られている。しかし、表現型進化においては、自然
的方法では見つけられないことを示された。岡田典
解明できないだろうか。このような意図のもと、本
主転換の遺伝基盤を解明する試みが紹介された。
選択の役割が大きいとするネオダーウィニズムがこ
弘先生は、哺乳類でゲノム上に放散した SINE 族、
シンポでは様々な研究材料を用いた5 人の演者に発
れまでの一般的な考え方ではないだろうか。ペンシ
AmnSINE1 のうち100 コピーほどは保存性が高く何
表していただいた。
ルバニア州立大学の根井正利先生は、以前から表現
らかの機能を獲得した可能性があること、そのう
まず、工藤洋氏(京大・生態研)が「異生態タ
あった。擬態は大変興味深い適応進化であるが、そ
の分子実体にまで迫った研究例はほとんどない。こ
いうものだった。
最後の講演は藤原晴彦氏(東大・院新領域)によ
る「鱗翅目昆虫の擬態紋様形成の遺伝的基盤」で
型も結局はDNA 配列によってコントロールされて
ち、FGF8 とSATB2 という遺伝子の近くにあるもの
イプ間異質倍数体(IETA : Inter-ecological-type
いるのだから分子レベルの進化だけでなく表現型進
が哺乳類特有の前脳形成に転写エンハンサーとして
allopolyploid)形成を介した適応放散」という演題
の発表では、アゲハチョウ幼虫の擬態紋様に関与す
化においても、自然選択よりも突然変異が進化の推
関与していることを示された。相澤慎一先生は、脊
で、アブラナ科タネツケバナ属を例に変動環境への
る遺伝子を、カイコ遺伝子の発現パターンと比較す
進力として重要であると考えており、最近、多くの
椎動物の頭部形成に重要なホメオボックス遺伝子
適応と倍数化の関係を紹介した。タネツケバナ属の
ることで絞り込んだ結果が紹介された。個々の手法
知見をもとにこのneomutationism(新突然変異説)
Otx2 の2 つのエンハンサーは四足動物、シーラカン
概要と生息環境の詳細な説明とともに、2 倍体種に
の説明も織り交ぜて説明していただいたため、分子
を発表された。これを機会に、本シンポジウムで
ス・エイで保存されているが、真骨魚で1 つのエン
は湿地条件と非湿地条件のそれぞれに適応したグル
生物学的な実験になじみの少ない方にも、研究の流
は、以下のように neomutationism と表現型進化の
ハンサーで制御されており、他の真骨魚からゲノム
ープがあることが示された。さらに、この2 つのグ
れが分かっていただけたのではないだろうか。
遺伝的基盤について5 人の先生方に講演をして頂い
重複が起こる前に分岐したポリプテルスについての
ループ間の組み合わせによる 4 倍体の IETA は、い
今回の5 題の中で適応進化の分子実体にまで迫れ
た(講演タイトルは要旨集のものから少し変更され
エンハンサーを紹介し、脊椎動物での発生制御の多
ずれの両親種よりも変動環境に適応しており、IETA
ているのは最後の1 例だけであるが、全体を通して、
ている)
。
様性を示された。五條堀孝先生は脳・神経系に発現
が変動環境への進出を可能にしたことが示された。
野生生物を実験材料として用いるための様々な工夫
されている遺伝子がプラナリアやヒドラなどの生物
続いて矢原徹一氏(九大・院理)らは、
「昼咲き
が示されていたと思われる。それと同時に、野生生
とヒトではかなり異なることを示し、これらの生物
から夜咲きへの進化: F2 雑種を使った野外実験と
物を扱う面白さも十分に伝わったのではないだろう
に共通に発現する遺伝子もあるが、系統ごとに異な
EST による候補遺伝子探索」と題して、ハマカンゾ
か。適応進化の遺伝基盤を解明していくには、野外
る発現遺伝子が大きな役割を果たしていることを示
ウとユウスゲを用いた実験系を紹介した。昼咲きと
で実際に生物を観察し興味深い現象を見つけ出す分
された。
夜咲きでは送粉に訪れる昆虫が異なるため、花が咲
類学者や生態学者と、実験室内で遺伝子の特定を
1. Masatoshi Nei (The Pennsylvania State University)
Genomic drift of multigene families and neo-
mutationism
2. Shozo Yokoyama (Department of Biology, Emory
Elucidation of phenotypic adapta-
中立説が提唱されてから40 年という本大会で、本
く時間だけでなく、花の色や匂いも変える必要があ
目指す分子生物学者との協力が不可欠である。そし
tions: molecular analyses of dim-light vision pro-
シンポジウムでは、neomutationism についての講演
る。これら形質の遺伝基盤を調べるため、QTL 解析
て始めにも述べたように、研究者の興味も適応進化
とともに、色覚遺伝子の適応的進化、ゲノム中に大
とEST 解析の両方が行われてきたが、植物では色素
の分子実体そのものから、集団遺伝学的な解析への
きな割合を占めるレトロポゾンの進化、脊椎動物の
や匂い物質の代謝経路の研究が進んでいるため、こ
応用といったものまで様々であろう。このシンポが
発生過程に重要なエンハンサーの進化、あるシステ
うした情報とEST 解析を組み合わせることで研究が
異分野の研究者どうしが互いの情報と興味を共有し
ムにおける生物ごとの発現遺伝子の進化など、今
進展している様子がうかがえた。
University)
teins in vertebrates
3. Norihiro Okada (Department of Biological Sciences, Tokyo Institute of Technology)
Multiple
SINE insertion made our brain
Otx2 cis-
後、進化学の中心的テーマのひとつとなるであろう
ここからは動物を用いた研究の話となり、北野潤
sequence evolution for head development in ver-
表現型進化の遺伝的基盤についての大変興味深いお
氏 ( Fred Hutchinson Cancer Res. Center) ら が
tebrates
話を伺うことができた。多くの生物種のゲノムデー
「トゲウオの種分化とその遺伝的基盤 」という演題
4. Shinichi Aizawa (CDB, RIKEN)
合うきっかけとなれば幸いである。来年度以降もミ
クロとマクロの生物学をつなぐようなシンポが企画
されることを期待したい。
28
日本進化学会ニュース Nov. 2008
五條堀 孝(遺伝研・総研大)
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
29
進化が頻繁に起こっている可能性が高く、大進化を
ダカデバネズミの生態を研究し、個体間で形成され
理解するうえで、それらの分子基盤を明らかにする
る集団的意思決定のメカニズムについて実験的に検
次に古生物の研究から始められた遠藤一佳(筑波
ことの重要性を示した。
証した。動物において、群れを構成する個体が、複
大・生命環境)さんに「貝殻基質タンパク質に見ら
生物の進化において、大きな形態変化を伴う進化
化により形状の変化も予想されると考察していた。
数の選択肢からひとつの選択肢を選ぶことがあり、
れるダイナミックな適応進化」として、硬組織形成
を特に「大進化」という。現在、ゲノム重複の時期
社会行動の進化を理解する重要な切り口となりえ
を制御するタンパク質の進化についてお話いただい
や関係する遺伝子セットの出現時期が、大きな形態
る。ハダカデバネズミでは、女王は集団的意思決定
た。動物の硬組織である炭酸塩、リン酸塩、シリカ
変化が起きている進化的時期と必ずしも一致しない
長谷川 眞理子(総合研究大学院大学)
の遂行に寄与しないものの、その存在がワーカーの
いずれもカンブリア紀前期に様々な動物分類群にお
ことが、だんだん明らかになってきた。また、異な
進化生態学、行動生態学の分野をおいて、社会行
労働頻度を上昇させていた。これらの結果は、カー
いてほぼ同時に成立しており、系統学的分布から硬
る多くの生物種間でゲノム上非常に保存されている
動の進化は重要なテーマのひとつである。社会行動
スト制を持つ哺乳類における複雑な意思決定機構を
骨格は様々な系統で独立に進化したと考えられてい
領域と、ある特定グループにおいては保存されてい
の進化に関する近年の研究は、分子生物学的基盤、
示している。
る。このことは刺胞、軟体、節足、棘皮、脊索各
るがそのグループ以外の生物種間では大きく変異が
生活史、認知、コミュニケーション、複雑適応系など
総括すると、社会行動に関する理論的・実証的研
動物門の硬骨格に含まれる基質タンパク質の一次構
蓄積しているゲノム領域も、つぎつぎと明らかにな
の新しい研究方向性を含みながら目覚しい発展を遂
究の進展が分かる非常に刺激的なシンポジウムであ
造の比較からも支持される。軟体動物の貝殻の形成
ってきた。このようなゲノムや分子のレベルの知見
げている。本シンポジウムでは、3 名の研究者によ
った。講演者全員が若手(30 代)研究者であった
にはイオンポンプ、炭酸脱水酵素、基質タンパク質
を考慮しつつ、生物の大進化の進化機構を推測も含
る講演から、最近の社会行動研究の動向を概観した。
ことから、社会行動の進化に関して、今後のより一
などが関与する。これらのタンパク質のアミノ酸配
層の研究進展が期待される。
列の比較や遺伝子の系統解析を行い、アミノ酸配列
めて大胆に議論しあうことを目的として、以下の4
英国エクセター大学の Michael Cant(全て敬称
人の演者が講演をした。
略)は、ヒトの女性と鯨目二種のメスにみられる閉
の繰り返し構造の進化や、遺伝子重複とその後の機
S10-1
経後の生存期間に関する適応的分析を発表した。ヒ
能分化が別々の系統で独立に起きたことを示した。
発と遺伝子の多様化を中心に―
トの閉経後の生存期間に関しては、女性が孫を世話
そして、基質タンパク質による硬骨格形成の制御シ
宮田 隆(生命誌研究館)
することによって得られる利益に注目した「おばあ
形態進化と分子進化の関連―カンブリア爆
ステムがカンブリア紀に「完成されたもの」ではな
ちゃん仮説」が有名であるが、Cant はさまざまなデ
岩瀬 峰代(総研大)
sequence 1 Mb away from the Shh coding region
ータから、この利益のみでは閉経後の生存期間の進
物理的、化学的にダイナミックに変化する地球環
さらに、
「脊椎動物における硬組織の起源と多様
acts as limb bud-specific Shh enhancer
化を説明するには不十分であることを示した。代替
境の中で生物は進化している。生物が環境の変化に
性の進化」として詳細に硬組織形成に関わる遺伝子
城石 俊彦(遺伝研・総研大)
的な仮説として、ひとつの家族集団のなかで、二人
対応する際、遺伝子の変化(新しい遺伝子の獲得や
の進化を詳細に報告したのは川崎和彦(ペンシルバ
の女性が繁殖をめぐり競争する際のコストに注目し
喪失そして転写調節の変化)によって、形態的な特
ニア州立大・人類学)さんである。脊椎動物の硬組
た数理モデルを構築し、父系社会を形成する種にお
徴がもたらされる。本シンポジウムでは生体の構造
織の石灰化(リン酸塩形成)には、SCPP 遺伝子族
五條堀 孝(遺伝研・総研大)
いて、このコストが閉経後の生存期間の進化を説明
や形の維持、生体防御などに重要な役割を果たして
を形成する数多くの遺伝子が重要な役割を果たして
まず、宮田がゲノムの比較研究から、生物のカン
することを示した。このモデルを発展させ、父系社
いる硬組織(脊椎動物の骨や歯、無脊椎動物の外骨
いる。四肢動物と真骨魚類のゲノム上でのSCPP 遺
会と母系社会において、個体の年齢が変化した際、
格(殻)など)の形成過程に焦点をあて、環境の変化
伝子群のシンテニーの比較から、これらの共通祖先
していたことを示した。また、この多様な遺伝子の
集団内に自分の血縁個体がいる確率をシミュレーシ
からタンパク質や遺伝子の変化を通して硬組織形成
では、骨、象牙質、エナメル様組織、およびエナメ
多くは、遺伝子重複によってもたらされた可能性が
ョンし、個体の年齢によって協力行動の有効性がど
に至る適応進化のメカニズムを理解することを目的
ル質で用いられるSCPP 遺伝子が、この順序でゲノ
高いことを示唆した。これらのことから、個々の遺
のように変化するかを調べた数理モデルを発表し
に企画した。
ム上に並んでいたことを明らかにした。それぞれの
伝子の存在だけでなく、それらを統合的にどう機能
た。50 分にわたる長い講演であったが、刺激的な研
させるかという生物学的なプログラムやネットワー
究成果が存分に示された密度が濃い講演であった。
S10-2
S10-3
Evolutionary conserved non-coding
大進化を論じるためのオミックス的基盤を
考える
ブリア爆発のはるか以前に多様な遺伝子が既に存在
く、環境変化に応じて適応進化したと結論した。
最初に、
「環境生態学の視点」で栗原晴子(長崎
機能の獲得には、重複により生じた新しいSCPP 遺
大学・海セ)さんに「海洋の化学環境の変化が炭酸
伝子が次々と用いられてきたが、これらの祖先型
松浦健二(岡山大学)は、シロアリの巣中にみら
カルシウム(CaCO3)合成生物に及ぼす影響」につ
SCPP 遺伝子は、その後の縦列重複により生じた新
れる termite ball が、シロアリに寄生する卵擬態菌
いてお話いただいた。過去大気CO2 濃度や地殻の変
しい遺伝子に置き換わって行き、今日では系統特異
核菌であることを明らかにした一連の研究を講演し
動に伴い、海水のpH, [CO32 −], [Ca2 +], [Mg2 +] は
的なSCPP 遺伝子が相同的な硬組織の石灰化を調節
より、マウスの四肢の形態形成に必須な遺伝子カス
た。親・ワーカー・ヘルパーによる子・卵への世話
大きく変化し、それが炭酸カルシウム(CaCO3)合
しているということを示した。
ケードを明らかにした経緯を説明した。また、マウス
は、動物における社会行動の基盤をなすものである
成生物に対して大きな影響を及ぼし、生物の進化に
また、和田 洋(筑波大・院生命環境)さんは「ゲノ
の個体としての行動的な変異を遺伝子レベルで理解
が、この関係に菌がつけこみ、擬態によってシロア
関与したこと。また、人間の経済活動に伴う大気
ムが新しい構造を生み出すロジック:脊椎動物の軟
する試みについて議論を行い、このような発生学的
リの行動を操作、搾取する様から、進化の結果生じ
CO2 濃度の増加は海水中のpH, [CO32 −] 及び [Ca2 +]
骨進化から」として、遺伝子重複やドメインシャッ
研究が大進化の理解には重要であることを指摘した。
た自然の緻密さの好例といえよう。また、行動観察
は急速に変化させており、 [Ca2 +] / [Mg2 +] 比は
フリングなどを介した新しい遺伝子が生み出される
最後に、五條堀が、大進化のような大規模な形態
や行動実験、系統的解析や分子生物学的手法など
CaCO3 のミネラル構造に影響するため、[Ca2 +] が
ことが形態形成に重要な役割を持つことについて述
変化の分子レベルでの理解には、ゲノムだけでなく
の多様な手法を併用し、termite ball の生物学的特
増加すると、CaCO3 合成生物である円石藻類やサン
べた。さらに無脊椎動物には全く見られない遺伝子
遺伝子発現やプロテオームなど、いわゆる「Omics」
徴を明らかにする研究手法は、包括的アプローチの
ゴの結晶構造の合成速度が減少するというデータを
にコードされる軟骨の主要な基質の一つアグレカン
という大量で枚挙的なデータの解析手法が有用にな
有用性を示すものである。
示していただいた。さらに将来、CO2 濃度の増加が進
を例示し、新たに創成された遺伝子がネットワーク
めばCaCO3 合成生物の骨格の溶解や合成速度の変
に組み込まれその生成物であるたんぱく質が基質と
クの進化的発展が、カンブリア爆発のような形態的
な多様化には必須であったという見解を示した。
引き続き、城石は、マウスの大規模な実験的手法に
ってくることを指摘した。とくに、収斂進化や平行
沓掛展之(総合研究大学院大学)は真社会性ハ
30
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
31
度有効か東アジア産チャルメルソウ属をモデルとし
亀田勇一氏(京都大学人間・環境学研究科)は
発現させる制御機構の進化が必要であることを示し
中野由美子(国立感染研)は、原虫類の膜輸送系
て検討した。葉緑体DNA と核リボゾームDNA から
やはり真洞窟性という特殊な生態を示す陸貝ホラア
た。また、遺伝子がどのようなストラテジーで新規
に関わるRab(低分子量 GTPase)等の遺伝子をゲ
得られる情報は全く異なったものであり、人工雑種
ナゴマオカチグサについての話題を提供した。形態
の形質をもたらしているのかをたどることで、環境
ノムワイドに検索した結果を報告した。膜輸送系の
の稔性低下を有効に予測できるのは核リボゾーム
による分類から本種は日本列島各地の洞窟に広く分
と遺伝子との関係について考察を加えた。
複雑さと遺伝子数との相関から、膜輸送系の多様化
DNA だけであった結果から、被子植物のいわゆる
布する単一種であると考えられていたが、DNA 配
の背景について遺伝子レベルから議論した。
DNA バーコーディングを葉緑体 DNA のみで行おう
列からはそれぞれの石灰岩地ごとに大きな遺伝的分
とする潮流に対し注意を喚起した。
化が見られる著しく不均一かつ多様な実体であるこ
して利用されるには、これらの遺伝子を秩序立てて
その後、講演者の方に前に出ていただき、総合討
胞内共生と色素体進化について議論した。
論を行った。シスエレメントの進化と形態の多様性
見市文香(群大・医)は、赤痢アメーバのミトコ
との関係や、海洋の化学組成の変化ついて質問があ
ンドリア残存オルガネラmitosome について報告し
り、熱心な討論が交わされた。
た。プロテオーム解析での
本シンポジウムにおいて環境生態学、分子古生物
学、分子進化学、発生学と異なる視点を持った研究
mitosome は他生物で
は細胞質にみられる硫黄代謝系酵素を含有する
等
の知見から、その特殊性を議論した。
海老原淳氏(国立科学博物館)は逆に、シダ類に
とが明らかにされた。また近縁種との比較から真洞
おいて葉緑体 rbcL 遺伝子のDNA 配列が種同定に極
窟性が独立に複数回、海岸性の種から起源したこと
めて有効であることを利用して、形態からの種同定
も示唆され、従来あまり注意が払われてこなかった
が著しく困難なシダ植物の配偶体(前葉体)の種同
生物を、洞窟性という特殊な生態の進化を考察する
定による、
「配偶体フロラ」作成の試みを紹介した。
上で優れた題材として新たに脚光を当てた点が興味
化」をテーマに話していただいた。「環境の変化」
の遺伝子発現に必要なタンパク質合成系(翻訳系)
奥多摩のシダ配偶体集団において、個々の配偶体の
を引いた。
と「硬組織形成機能の獲得」に多角的に光をあてる
について報告した。mt 翻訳系に使用される特殊な
種同定を行った結果、この地域で胞子体が全く採集
あまり時間が取れなかった総合討論では「手法の
ことで、種を越えた共通性が見えてきた。また、そ
tRNA に対応し、ミトコンドリア用翻訳伸長因子
された記録がない種、あるいは極めてまれな種が配
一貫性に欠ける」という批判もあったが、企画者と
れに関わる遺伝子の創生や遺伝子ネットワークの形
(EF-Tu)が進化していることから、mt ゲノム上の
偶体としてはごく普通に生育していることを明らか
しては手法について強調する意図はあまり無かった
成に関する研究が進んでおり、環境と形態形成との
機能性 RNA と核ゲノムにコードされる因子の共進
にした。また、北米で独立配偶体として見つかって
のでご容赦いただきたい。むしろ、DNA 塩基配列
関係が明確に説明できる可能性が高くなっているこ
化について議論した。
者の方々に「バイオミネラリゼーションとゲノム進
渡邊洋一(東大・院医)は、ミトコンドリア(mt)
いた(配偶体世代のみで継続的に生育していて、そ
情報が利用できるようになったことによって、現在
とがわかった。と同時に「なぜ独立に何度もバイオ
本ワークショップは、企画者である早川が、研究
の胞子体は見つかっていない)コケシノブ科の配偶
では分類学で扱えない生物(あるいは幼生、配偶体
ミネラリゼーションという機能を獲得したのか」と
会等で講演者の方々の研究を知り、それらが示すオ
体は、それに最も近縁な胞子体が日本に生育してい
といった生育ステージ)は事実上無くなったことを
いった疑問をはじめ、いくつかの課題も明らかにな
ルガネラの進化・多様性に驚いたことが契機となっ
ることをrbcL 遺伝子の塩基配列の比較によって明
強調したかった。そのような意味では、全体を通し
った。本シンポジウムを機に分野をこえた研究ネッ
て企画されたものである。本ワークショップに来て
らかにした。
て「少し変わった生物を研究の主流に持ち込める」
トワークが形成され、生物の適応進化のメカニズム
いただいた聴衆の方々に新鮮な驚きを提供できたこ
佐藤博俊氏(首都大学東京・牧野標本館)は、一般
という分類学の魅力を伝えることには成功したので
が解明されていくことを期待している。
とを願うとともに、オルガネラの進化について興味
に形態による種認識が困難なことが多いキノコ類の
はないかと思っている。議論に加わって頂いた多数
をもっていただけたら幸いである。
モデルとしてオニイグチ属を対象としたDNA 分類
の聴衆の皆様に感謝を申し上げる。
の試みを紹介した。この系で興味深いのはオニイグ
チ属が特定の樹木と外生菌根という共生体を形成す
ることであり、ここから菌と植物の両者のDNA 配
早川 敏之(大阪大学)
奥山 雄大(岩手生物工学研究センター)
列を得ることにより、共生関係の種特異性の情報も
もと生命を維持し、進化してきた。このためオルガ
進化学研究において「多様性」というキーワード
同時に得られる点にある。結果、従来単一種とされ
伊藤 剛(農業生物資源研究所)
ネラの進化・多様性を知ることは、真核生物の進
はますます重要な意味を持ってきているが、系統分
ていたキノコの中に生殖的に隔離された複数種が存
化・多様性の理解に直結している。
類学は多様性を扱う上でも最も基礎となるものであ
在し、それぞれは菌根を形成する相手の樹木種に対
花田 耕介(理化学研究所)
長谷部 光泰(基礎生物学研究所)
本ワークショップでは、色素体、膜輸送系、ミト
る。特に、簡便にDNA 塩基配列情報が利用可能に
する選好性が異なるというこれまでに知られていな
いわゆる新型シーケンサーが実用化され、過去に
コンドリアを取り上げ、それぞれの進化とそれら進
なった近年においては伝統的な分類学では種認識が
かった知見が明らかにされた。
化がもたらす真核生物の多様性を紹介した。本ワー
困難であったような対象について、その進化過程や
丸山宗利氏(九州大学総合研究博物館)はアリ
可能な時代になった。植物においても、きわめて多
クショップでとりあげられた生物の多くは寄生生物
メカニズムの理解に結びつくような興味深い事実が
擬態などのために非常に形態が多様で可塑的であ
様な種でゲノムやトランスクリプトームの情報が爆
であり、モデル生物を扱う研究者にはなじみのない
多く明らかになってきている。このような中、本シ
り、それゆえ分類体系が混乱している好蟻性ハネカ
発的に増加し、研究の手法や考え方にも大きな影響
ものであったと思われる。しかし、特殊な進化を遂
ンポジウムではDNA 塩基配列情報を手がかりに最
クシ類におけるDNA 分類の試みについて紹介した。
を及ぼしている。本ワークショップでは、このよう
げてきた生物を対象とすることで、生命のもつ進化
前線で系統分類学的研究を行っている研究者5 名か
まず特殊な生態とその個体密度の低さから困難を極
な大量情報を利用した比較解析からどのような知見
のキャパシティーや可能性を知ることができ、本ワ
ら話題提供を受けた。
真核生物は、細胞内の様々なオルガネラの活動の
は考えられなかったような超大規模配列解析が実行
める採集の様子についての興味深い話題が提供さ
が得られているかを知るため、いち早く配列決定に
まず奥山雄大(岩手生物工学研究センター)は本
れ、分類学のフロンティアに立つ研究者の姿が想起
取り組み、また解析を行っている第一線の研究者に
シンポジウムの趣旨として、過去の研究のレビュー
させられた。本研究の結果から、大きく隔たった系
話題提供をお願いし、植物の進化研究の今後に関し
サスのもつ色素体について報告した。色素体由来の
からDNA 情報を分類学に取り込むこと(DNA 分類)
統群のハネカクシが、同様の生態的ギルドに対応し
て議論した。
イソプレノイド生合成に関わるMEP 経路遺伝子群
への展望を述べた。その上で、被子植物の系統分類
て著しい形態の相似を示している点が明らかにされ
最近、マメ科のモデル植物であるミヤコグサの全
の検索とDNA 局在の検討からの
パーキンサス色
に頻繁に用いられる葉緑体 DNA と核リボゾーム
た。それゆえに従来の形態に基づく分類体系が大き
ゲノム配列決定がかずさDNA 研究所によって報告
という発見をもとに、細
DNA の塩基配列情報が、それぞれ種認識にどの程
く誤っている可能性についても言及された。
された。同研究所の佐藤修正は、ミヤコグサのゲノ
ークショップはその一例を提供できたと考える。
松崎素道(東大・院医)は、貝類寄生虫パーキン
素体はゲノムをもたない
32
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
33
ム配列決定とアノテーションに関して報告するとと
ション情報の蓄積によって新たに研究することが可
換速度は突然変異率に等しい、突然変異率は遺伝子
ワークショップにおいては、会場に入り切れない
もに、ゲノム決定が進行中の近縁種であるタルウマ
能となってきた、遺伝子ファミリーを構成する遺伝
あるいはコドンに含まれる全ての塩基座位で等し
ほど多くの聴衆にお集まりいただき、活発に質疑応
ゴヤシやダイズとの比較解析から明らかになった高
子の数の進化解析、ある生物学的現象に関与すると
い、という仮定が暗黙的になされている。しかし、
答していただいた。本ワークショップで講演者なら
いレベルのシンテニーなどに関して紹介した。ミヤ
考えられる全遺伝子の網羅的進化解析、機能性RNA
実際には、コドン使用頻度の偏りが存在する場合や
びに聴衆の皆様が何らかのインスピレーションを得
コグサのゲノムが新規配列決定である一方、次の演
の進化解析、などに焦点をあて、最新の知見と今後
CpG 座位が高突然変異率を示す場合、これらの仮定
られたとすれば幸いである。
者の長崎英樹(農業生物資源研究所)は、すでに
の展望を議論することを目的として開催された。
は必ずしも成り立たず、結果として自然選択の検出
(1) 鈴木善幸(国立遺伝学研究所)
系統樹中の
に誤りが生じている場合が多々ある。自然選択の検
ネにおいて、コシヒカリを Illumina/Solexa で解析
特定の枝においていくつかのアミノ酸座位に働いた
出を正しく行うためには、これらの効果を正確に評
した成果を報告した。総量 58 億塩基のショートリ
正の自然選択圧を検出する方法として最近頻繁に用
価し、適切な補正を施すことが必要である。
ードを日本晴ゲノムに対応付けて検出した67,000 の
いられているbranch-site test について、コンピュー
SNP は今後の遺伝解析に貢献することが期待され
ター・シミュレーションならびに実際の配列解析か
のヒト個体間で、機能を持つ嗅覚受容体(OR)遺
動物の体のデザイン(形態)を理解しようという
る。理化学研究所の関原明はゲノムワイドのタイリ
ら、この方法が理論的に正の自然選択圧を検出し得
伝子数の分布を偽 OR 遺伝子数の分布と比較するこ
試みが、様々な領域で精力的に進められてきまし
ングアレイを用い、ストレス応答下でのトランスク
ないくらい少ない塩基置換しか起こっていない場合
とにより、両者の間には違いは見られず、機能性
た。昨今では、これらの各領域の垣根を越えて、領
リプトームをシロイヌナズナにおいて大規模に解析
でも正の自然選択圧を誤って検出し得ること、また
OR 遺伝子数の変動は偶然による影響が大きいこと
域横断的に理解をすることが求められつつあるよう
している。その結果、転写産物の多くがアンチセン
それがある特定の性質を持つコドン対の出現と高い
が分かった。また、哺乳類の種間比較においては
に感じます。そこで、本ワークショップでは、表現
ス鎖からも発現しており、タンパク質をコードして
相関を示すことを示した。
OR 遺伝子数は多様であり、遺伝子あたりの遺伝子
型可塑性、集団遺伝学、進化発生学、数理生物学、
シロイヌナズナ
増減率も大きいが、ショウジョウバエの種間比較に
進化形態学といった異なる研究領域から、興味深い
センス鎖転写に必要であることも判明し、詳細なメ
ゲノムの解読後もいまだ同定されていない、100 ア
おいてはOR 遺伝子数は似通っていて、遺伝子あた
生物現象を対象に研究を行っている若手の研究者を
カニズム研究が進行中である。倉田哲也(JST ・
ミノ酸残基以内の長さを持つ短い蛋白質をコードす
りの増減率も少ない。この違いはおそらく、OR 遺
中心に話題を提供していただきました。
ERATO)はマイクロアレイとSOLiD を用い、動物
る遺伝子を網羅的に発見することを目的として、蛋
伝子の発現制御機構が、哺乳類とショウジョウバエ
と植物で大きく異なる体細胞から幹細胞への分化転
白質コード領域では一般に機能的制約により負の自
で異なるためではないかと考えられた。すなわち、
可能性となりうるか?」という演題で、世代を超え
換能の違いに関して意欲的な研究を行っている。分
然選択圧が働いているという性質を利用し、新たに
哺乳類では細胞ごとにランダムにOR 遺伝子の発現
なくても環境変化に対応して可塑的に表現型を変え
化転換の容易なヒメツリガネゴケにおいてトランス
約 2,000 個の候補遺伝子領域を同定した。これらの
座位が決定されるため、遺伝子座位の増減にあまり
ることのできる性質(phenotypic accommodation)
クリプトーム解析を行うことにより、分化転換を促
候補遺伝子が実際に発現していることを実験的に検
制約が働かないが、ショウジョウバエでは細胞ごと
が、表現型の進化を促進できるのではないかという
進する因子の候補を同定した。
証するため、様々なストレス条件下における様々な
に発現するOR 遺伝子座位が決まっているため、遺
最近話題になっている説を紹介し、自身のデータと
シロイヌナズナ組織についてタイリングアレイを行
伝子座位の増減に制約が働いていると考えられた。
併せて議論を展開しました。これまでの進化の説明
日本晴という品種で全長ゲノムが発表されているイ
いないことが分かった。センス鎖での発現がアンチ
高速配列決定、発現解析は分子レベルでの進化解
析を大きく促進することが期待される。理化学研究
所の花田耕介は冗長と思われる重複遺伝子の役割を
(2) 花田耕介(理化学研究所)
(5) 野澤昌文(ペンシルバニア州立大学)
(6) 後藤大輝(ペンシルバニア州立大学)
い、発現を確認した。
(3) 早川敏之(大阪大学微生物病研究所)
シア
複数
鈴木 誉保(理化学研究所 CDB)
三浦(北海道大学)は、
「発生の可塑性は、進化
ヒト
では、突然変異により生じた遺伝的な変異が集団中
とチンパンジーのY 染色体を比較すると、X-degen-
に広がるといった、遺伝的な要因を重視します。し
シロイヌナズナにおいて検討した。その結果、重複
ル酸には、アセチル体とグリコリル体が存在する。
erate region において、ヒトでは16 遺伝子が存在す
かし、実際には、環境要因による発生プロセスの変
遺伝子によって遺伝子欠損を相補する傾向が明らか
グリコリル体を合成するシアル酸水酸化酵素の遺伝
るが、チンパンジーではそのうち4 遺伝子が偽遺伝
更も無視できません。様々な節足動物を用いた実験
になり、特に遺伝子のネットワークにおいて迂回路
子は、ヒトにおいて AluY 挿入によるエクソン欠失
子化している。これらの違いが進化の過程でどのよ
例を示しながら、その複数の形態が生み出される遺
が少ない場合に重複遺伝子の相補機能が働いてい
により機能を失い(偽遺伝子化)
、これが原因でヒ
うに生じたのかを明らかにするため、新たにゴリラ
伝的基盤とその背景にある進化のロジックについ
た。また、立教大学の堀孝一は、核移行したオルガ
トにはグリコリル体が存在しない。その偽遺伝子化
で X-degenerate region の塩基配列を決定し、遺伝
て、刺激的な提案をしました。
ネラ由来遺伝子がどのようにしてオルガネラへの移
時期は約 300 万年前と推定され、アセチル体のシア
子を同定したところ、ゴリラではヒトと同様に16 遺
高橋(国立遺伝学研究所)は、
「ショウジョウバエ
行シグナルを獲得したかをデータ解析と実験検証の
ル酸を好んで認識し感染するヒト熱帯熱マラリア原
伝子が存在することが分かった。また、ヒトとチン
模様の種内多型について」という演題で、キイロシ
両面から解明し、原核生物と真核生物の翻訳開始機
虫の出現年代も約300 万年前と推定されることから、
パンジーに共通に存在する12 遺伝子の比較におい
ョウジョウバエにみられる胸部三叉パターンの多型
構の差異が移行シグナル新規獲得につながったとい
シアル酸水酸化酵素遺伝子のヒト特異的な偽遺伝子
ては、チンパンジーでヒトよりも進化速度が速いこ
に注目し、その模様の進化と交尾相手選好性の変化
う説を提唱している。これら二名の、実験とデータ
化は、ヒト熱帯熱マラリアの出現と関連していると
とが分かった。一般に、ヒトやゴリラではメスが1
による生殖隔離との関係を調べました。遺伝子マッ
解析の間を機敏に往復しながら進化の実像に迫る研
みられる。また、ヒトのSIGLEC11 遺伝子は、遺伝
排卵期間中に交尾するオスの数はチンパンジーと比
ピングにより原因遺伝子としてebony を同定し、さ
究方法は、これからの分子進化研究のありかたを考
子変換によってヒト特異的に機能が変化し、かつヒ
較して少ないことから、精子競争はチンパンジーで
らに、地域間により表現型に違いのある集団を比較
える上でも大いに参考になった。
ト特異的に脳での発現を獲得していることから、ヒ
ヒトとゴリラよりも強いと考えられ、上述の結果
することで、この遺伝子の上流領域の一部と表現型
トの脳の進化に重要な役割を担った可能性があると
は、チンパンジーの Y 染色体で起きた hitch-hiking
変異の間に強い相関を発見しました。
考えられた。
が原因ではないかと考えられた。また、その際に正
藤村(東京工業大学)は、
「シクリッドの進化発生
の自然選択を受けた遺伝子は、ampliconic region に
学:適応進化した東アフリカ湖産シクリッドの形態
あるのではないかと考えられた。
進化を調べるための発生学的基盤」という演題の講
(4) 田村浩一郎(首都大学東京)
一般に、同義
鈴木 善幸(国立遺伝学研究所)
置換速度と非同義置換速度の比較によりアミノ酸配
本ワークショップは、ゲノム配列とそのアノテー
列レベルに働く自然選択を検出する際には、同義置
◇
◇
◇
演を行いました。爆発的な適応放散をした動物種の
34
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
35
代表的な例として、アフリカ3 大湖でのシクリッド
の中でも最も活気に満ちた分野のひとつである。哲
議されるべきだろうと考える。そして、「種問題」
に対し松本氏は、推論形式だけから進化心理学が科
が挙げられます。しかし、これらの発生学的、形態
学は、生物学から多くの知見を得るとともに、生物
はデータが足りないから解決できないのではなく、
学であることは正当化されないと主張した。さら
学的な研究はほとんど進んでいないのが現状です。
学に対して様々な疑問を投げかける。本ワークショ
われわれ自身がものを分類したがる
であ
に、心の進化的起源についての進化心理学の想定に
彼らは、個体の入手が比較的容易な河川種であるナ
ップでは、以下のテーマで議論をおこなった。森元
るからこそ解かれることはないと主張する。重要な
対しても批判を加えた。進化心理学では、現代人の
イルティラピアに注目し、その発生学的研究のため
良太(慶應義塾大学)
「知識としての進化学」
、三中
ことは、
「種問題」は解かれることのないまま一生
心の進化的起源は石器時代にあることが想定されて
の基盤作りを精力的に行いました。本 WS では、そ
信宏氏(農業環境技術研究所/東京大学)
「
【種】に
ついてまわる宿命を覚悟することであり、たとえ
いて、これは更新世以後の生態学的環境の安定性と
楯突けば角が立つ:種問題の光と影」
、石田知子氏
「種」がなくとも、
「いかにして種問題とともにずっ
いう前提に立脚している。松本氏は、心的な形質の
(慶應義塾大学)「遺伝情報を考える−発生のもた
と生きていくのか」を考えることである、と注意を
進化は単に生態学的環境だけでなく社会的環境の変
促した。
化にも影響を受けるため、その前提は必ずしも有効
のうち、発生ステージの記述、骨格形成、成長にお
ける形態変化の解析などを示しました。
分類者
藤本(東京大学、JST・ERATO)は、
「数理モデル
らす階層性−」
、松本俊吉氏(東海大学)
「進化心理
で繋ぐ形態ネットワーク: 節足動物の体節形成の
学の論理の批判的考察」
、中尾央(京都大学)
「文化
石田氏は、発生をおこなう生物と発生をおこなわ
進化」という演題の講演を行いました。節足動物の
進化理論における哲学的諸問題」
、田中泉吏(京都
ない生物の違いに注目し、それぞれの遺伝情報の使
中尾氏は、文化進化について哲学的考察を加え
体節形成では、長/短胚型の発生様式が知られてい
大学)
「生物学における『個体』と階層性」
。
われ方を考察した。生物学において遺伝情報という
た。文化の進化を取り扱う立場は主に3 つある。
(1)
表現は不可欠であるが、その情報概念がどのような
遺伝子とのアナロジーに基づくミーム論、
(2)社会
でないと批判した。
ます。反応拡散方程式により数理モデル化し、数千
森元は、進化学の成果がなぜ知識と呼びうるのか
のネットワークを計算機上で進化させて、この2 つ
について論じた。哲学は「知識(ソフィア)を愛する
ものであるかは明らかになっていない。石田氏は、
的学習に基づく二重継承説、
(3)進化心理学的な心
の発生様式を生み出す構造的な要因を探りました。
(フィロ)こと」を語源とし、あらゆるものを疑い、
現在の遺伝情報の扱われ方が生物間の生活様式の違
のモジュール性に基づく立場である。この中でも、
それぞれの様式に、feed-forward / feed-back loop
それが知識と呼びうるかを思惟してきた。もちろ
いを反映していないことに着目し、生活様式の違い
中尾氏は(2)と(3)の立場について両者の理論構造
といったサブモチーフが対応することを発見し、そ
ん、進化論や進化学の諸領域の主張も疑いにかけら
が遺伝情報の内容にどのような違いをもたらすかを
や基礎概念についての考察をおこなった。具体的に
れぞれの構造にかかる淘汰圧を推定しました。
れる。プラトン以来、知識には正当化が必要とされ
明らかにした。とくに、情報の使用者が情報内容を
は、特に(3)におけるモジュール概念をめぐる近年
鈴木(理化学研究所CDB)は、
「拘束と変形が生み
てきた。科学理論の正当化について、科学哲学者の
決めるという、
「目的意味論」と呼ばれる考えに基
の議論を分析しながら、最終的には(2)において中
出す形態デザイン:隠蔽擬態した蛾の枯葉模様の進
K. ポパーは、ある理論に反証される可能性がある
づき、発生をおこなう生物と発生をおこなわない生
心的な役割を果たしているいくつかのバイアス(権
化」という演題で、葉脈模様までをも模した枯葉模
ことが、その理論を正当化する条件だと考えた。と
物の違いを分析した。目的意味論によると、情報と
威/多数派バイアス)もまた、モジュールと呼びう
様の形態を形態測定法により定量的に解析すること
ころが、この反証可能性という基準に対する批判は
は情報の使用者に役立つものでなければならず、情
るものかもしれないと論じた。中尾氏は、両者は大
によって、そのデザインがもつ合理的な設計を調べ
多く、いまではあまり受け入れられていない。代表
報内容はその使用者に対し、情報の担い手がどのよ
きく対立してきたが、以上の考察に基づくなら、そ
ました。枯葉模様の表現型分散は著しく小さな値を
的な批判のひとつに、デュエム・クワインテーゼと
うに役立つかによって特定される。石田氏は、発生
の対立の重要な一部を解消することができることを
示し、機能的なモジュール構造をしていることを示
呼ばれるものがある。そのテーゼによると、ある理
をおこなう生物の場合、情報の使用者はエピジェネ
主張した。
しました。また、相同な形態システムには見られな
論をテストするには補助仮説を媒介にする必要があ
ティックな遺伝システムなどの発生メカニズム全体
田中氏は、生物学における「個体」を階層性の問
い新規の構造を生み出すことによって、枯葉模様が
り、その理論単独ではテストすることはできない。
であり、情報の内容は一個体の成体全体であるとす
題と絡めて論じた。ヤモリやバッタのように普段目
形成されていることを示しました。以上により、形
つまり、どんな理論もそれだけを反証することはで
る。他方、発生をおこなわない生物の場合、ゲノム
にする生物の「個体」はあまりに馴染み深い存在で
態要素がもつ高い可変性が新たな形態デザインの創
きないのである。ポパーの反証主義は、彼が科学理
を使って成体を再構成する過程がないので、情報の
あるため、その定義や位置づけに議論の必要性を感
出を促進していることを示唆しました。
論の正当化において演繹論理しか認めないことに起
内容は成体全体ではなく、表現型という成体の一部
じないことがある。だが、何をもって「個体」とす
当日は、広い会場であったにもかかわらず満員に
因する。それに対し森元は、確率や統計を用いた帰
のみであるとする。そして、これらの違いをもと
るのかについて、明確な合意には至っていない。む
なるほど盛況で活発な議論がなされました。今後、
納論理も正当化の方法論として認めること、および
に、進化において発生の過程が出現したことによっ
しろ、
「選択の単位」に関する議論などを煮詰めて
新たな進化学研究の潮流が生まれることを、企画者
理論を正当化するには補助仮説を明示する必要があ
て、表現型ではなく成体全体という、遺伝情報につ
いくと、個体とは何かという問題が争点として再三
一同望んでおります。演者の方々には、快くお引き
ることの重要性を強調した。
いての新たな階層が生み出されたことを示唆した。
浮かび上がってくる。田中氏は、個体の定義が困難
松本氏は、進化心理学に対する批判を報告した。
であることを示すと同時に、個体の複数の定義を列
受けいただき、また興味深い講演をしていただけた
三中氏は、古くから論争の絶えない「種問題」に
ことに感謝しています。また、機会を与えて頂いた
対して、
「いかにして種問題とともに生きていくか」
まずは、進化心理学が適応主義に立脚している点を
挙した。例として、一定の空間と時間を占めるもの
進化学会組織委員の方々にお礼を申し述べておきた
を主張した。E. マイアが生物学的種概念を提唱以
指摘し、グールドによる適応主義批判を紹介した。
を個体とする歴史的個体、部分間の因果的関連性と
いと思います。
来すでに70 年近く経つが、
「種」をめぐる論争はい
グールドは、社会生物学を批判したときの論点をほ
機能に着目した機能的個体、遺伝的に均一であるも
まだに終わりが見えない。
「種」が生物学的な実体
ぼそのまま進化心理学に適用した。松本氏は、グー
のを個体とする遺伝的個体、単細胞ボトルネックか
であるかどうかは生物学者にとって重要な問題とみ
ルドが社会生物学と進化心理学の重要な相違点を看
ら発生するものを個体とする発生的個体などが定義
なされている一方で、その「種」が形而上学的にど
過しているが、彼の批判は本質的には当たっている
として提案されていることを明示した。その上で田
のような存在であり得るのかという論議は生物学哲
と主張した。次に、進化心理学の推論形式について
中氏は、すべての生物がこれらの条件を満たしてい
学者にとっても関心がある。三中氏は、生物・非生
批判を加えた。進化心理学では「進化的機能分析」
るわけではないことを指摘し、ある基準のもとで個
森元 良太(慶應義塾大学)
物を問わず対象物の認知カテゴリー化はヒトが生き
と呼ばれる推論パターンを用い、これが仮説演繹法
体とされるものが、別の基準では個体とならない場
「生物学の哲学」のワークショップを開催するの
ていく上で切実な問題であるから、
「種問題」もま
に相当するものとされる。そして、この類似性から
合があることを例示した。また、機能的統合性、遺
は今年で3 回目となる。生物学の哲学は、現代哲学
た体系学や進化学よりももっと広い視野のもとに論
進化心理学が科学であることが正当化される。これ
伝的均一性、発生的ボトルネックなどの個体の条件
36
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
がそれぞれ進化の産物であり、階層進化に深く関わ
何度も繰り返し進化した形質であるが、真正双子葉
の発展を背景にして、現存するタンパク質の分子系
(2006); Science. 317:1544-1548 (2007).
ることも強調した。以上の考察から、個体という概
植物では見られない。その理由も含め、多くの謎が
統樹を辿り、祖先型タンパク質を甦らせてその機能
Watanabe ら J Mol Biol. 355:664-674 (2006).
念は進化理論の前提ではなく、進化理論で説明され
解き明かされるのではないかという期待が膨らむ発
や立体構造を実験的に検証することで、タンパク質
Konno らMol Evol Biol. 24, 2504-2514 (2007).
るものであることを結論づけた。
表であった。
の分子進化をあきらかにする新たな手法が報告され
また打田直行博士(奈良先端大)は、
「Coordina-
て い る ( 例 え ば Thornton ら 2004 ; 2006 ; 2007 ;
tion of leaf development by KNOX1 genes via evolu-
Watanabe ら2006 ; Konno ら2007)
。この祖先型タン
塚谷 裕一(東京大学大学院;基礎生物学研究所)
tionarily conserved regulation」と題して、シュー
パク質の再構築による実験的検証例として4 題の招
陸上植物が示す形態の多様性は、その大部分が、
ト形成と葉の形態制御に重要とされているクラス
待講演(山岸、小川、白井、河村)と一般講演1 題
葉や葉の変形した花器官の多様性である。近年、葉
37
辻 和希(琉球大学・農)
1KNOX 遺伝子の発現制御について講演した。これ
(佐藤)からなるワークショップを企画した(当初、
の形態形成に関する研究成果の蓄積が進み、エボデ
はKNOX 研究の中心地の1 つ、カリフォルニア大学
オレゴン大学のThornton 博士の招聘、講演も企画
む低次ユニットの間にいかに共同が成立し高次ユニ
ボ研究も実現可能な段階に達し始めた。これを機
のNeelima Sinha 博士の研究室でなされていた研究
したが、残念ながら都合がつかずに参加いただけな
ットが作られたのかを進化生物学の基本問題と捉え
に、最近、シロイヌナズナの研究成果を活かして、
で、単子葉植物においてこのクラスの遺伝子がどう
かった)
。本ワークショップでは、まず山岸氏(東京
ている。超個体としての昆虫のコロニーはこの問い
近縁属のタネツケバナ属の葉の形態形成のエボデボ
多様化したかを含め、まだまだKNOX の制御につい
薬科大・生命)が「全生物の共通祖先超高熱菌仮
に対するモデルシステムを提供している。同時に、
論文を出し続けているMiltos Tsiantis 博士をお招き
ては、謎が多いことを改めて聴衆に印象づけた。
説の実験的検証」とのタイトルで、祖先型変異だけ
アリなどの超個体はユニットが共同で働く自律分散
して、国内の代表的な研究陣を集めたワークショッ
プを企画した。
まずわたし自身は、上記のような研究状況のここ
数年の変遷について簡単に概観し、導入とした。
メイナード-スミスは潜在的にコンフリクトをはら
最後に長谷部光泰博士(基生研)は、ヒメツリ
でなく完全祖先型配列でも高い耐熱性を示し、コモ
ロボットの「生きたモデル」として工学でも注目さ
ガネゴケを用いた最近の膨大な研究の中から、n 世
ノート(全生物共通祖先)が超好熱菌であるという
れている。そこで、本ワークショップでは生物学と
代と2n 世代の切り替えに注目した解析の報告を行
仮説の実験的検証について述べた。次に小川(東北
工学の連携を通して「超個体」の新たな理解を目指
なった。シロイヌナズナでいうところの CURLY
大・院生命)は、
「祖先型タンパク質再構築による
した。なお、このワークショップは平成17 年に発足
続いて Miltos Tsiantis 博士(Oxford University,
LEAF(CLF)遺伝子に相当する遺伝子をヒメツリガ
魚類ガレクチンの加速的適応進化過程の解析」との
した科研費特定領域研究「身体・脳・環境の相互
UK)が、アブラナ科ミチタネツケバナの複葉の形
ネゴケで破壊すると、n 世代で作られるべきシュー
タイトルで、適応進化を示すアナゴガレクチンの祖
作用による適応的運動機能の再現―移動知の構成論
成機構について、「Towards Understanding Evolu-
ト、通常の葉的な構造と茎的な構造からなるシュー
先型タンパク質の機能・立体構造解析から、選択圧
的理解―」
(略称:移動知)の成果の紹介を兼ねて
tionary Diversification in Leaf Form」と題した講演
トは形成されず、異様な二叉分岐構造を形成すると
など進化過程のほか、糖鎖認識に関わる構造要素解
いる。なお、以下敬称は省略させていただいた。
を行なった。主に、オーキシン輸送体であるPIN1
いう。これが示すさまざまな特性から判断すると、
の局在ならびにクラス1KNOX 遺伝子の発現パター
これは2n 世代の構造らしい。このことは、n 世代と
「祖先型推定によるアルカリ適応進化の解析」のタ
工物研究センターの浅間一が超個体研究だけにとど
ンから、複葉形成を解明しようとするストラテジー
2n 世代の切り替えに、CLF 遺伝子の産物である
イトルで、洗剤に添加されている酵素のアルカリ適
まらない、工学、生理学、脳研究、生態学などを
である。一部はすでに Nature Genetics 40 : 1136-
Polycomb が働いていることを示唆する。しかも、
応にArg/Glu 残基の増加とLys/Asp 残基の減少が重
融合させたサイボーグ学とでも形容できそうな(実
1141 に掲載されたばかりなので、周知の読者も多い
コケでは通常、2n 世代は極めて単純な構造しか作
要であることを立体構造解析および祖先型配列によ
際に、昨年度のシンポで紹介されたようにサイボー
と思うが、このミチタネツケバナをモデルとした実
らないが、制約を解けば、二叉分枝能も有するとい
る解析で明らかにし、その有効性を示した。次に河
グ昆虫を使った研究も本領域では行われている)本
験系は、Tsiantis 博士のオリジナルのもので、シロ
うことが、伺える。種子植物の高度に複雑化したシ
村氏(東京大・院新領域)は、
「祖先配列推定 によ
領域の展望と可能性について、いくつかの研究成果
イヌナズナの実験植物としての長所を多く備えた良
ュートや葉の形成の、根源にあるシステムの解明
るオプシン吸収波長の進化的推移の復元」のタイト
を紹介しながら簡潔に解説した。2 番目の講演では、
い系である。これを使って、既に多くの突然変異体
に、今後もコケが手がかりを提供してくれるだろう
ルで、魚類あるいはクモザルの異なる吸収波長領域
神戸大学の尾崎まみこらがアリのコロニー識別の感
の単離、QTL マップ等も進めている状況が報告され
ことを、期待させる発表であった。
特性をもったオプシンが、環境に応じてどのように
覚神経行動学に関する研究成果を報告した。巣仲間
か否かを識別する際、アリは脳を使わず抹消レベル
明について述べた。白井氏(長浜バイオ大)は、
最初の講演者で、移動知の領域長である東大の人
た。複葉形成に関しては、既に多くのことが語られ
今回は、植物、しかも葉に限ったワークショップ
多様に進化してきたのかを祖先型変異による機能解
ながらも、肝心のパターン形成メカニズム等、多く
ということで、会場にはゆとりのある聴衆人数であ
析により示された。最後に、一般から採択された佐
すなわちセンサーである触覚感覚毛のレベルで行っ
の不明点が残されている。その他、花器官の数の制
ったが、密度の濃い内容が続き、参加した関連ジャ
藤氏(東京大・海洋研)が、
「祖先配列の最尤推定
ていることを明らかにした著者らの近年の驚くべき
御など、ミチタネツケバナならではの切り口で今後、
ンルの学生研究者にはよい刺激になったと思われ
に基づく PGI および ALD タンパク質電荷の進化解
成果(Ozaki et al. 2005, Science)に加え、近年話題
解明が進むと期待される。
る。始まったばかりの葉のエボデボが、数年後、ど
析」というタイトルで講演した。
の融合コロニー性のアリで生じているもう一段複雑
つづいて、山口貴大博士(基生研)が「Genetic
ういう変貌を遂げるか楽しみである。
全体を通しても、本ワークショップで取り上げた
な識別行動に関する最新の研究成果について解説さ
basis for the development and evolution of unifacial
『祖先型遺伝子、タンパク質再構築による研究手法』
れた。昆虫型ロボット開発の最大のネックはセンサ
leaves in Monocots」と題して、単面葉の発生と進
は、それぞれの進化過程を明らかにするだけでな
ーにあるだけにこの講演のインパクトは工学的にも
化について、イグサ属植物をモデルとした研究報告
く、タンパク質の構造と機能を明らかにする手法と
大きい。3 番目の講演は徳島文理大学香川薬学部の
を行なった。このイグサ属植物も、山口博士が独自
して、合理的デザインや進化工学的手法などと比較
岡田龍一による、ミツバチのダンス言語による情報
にモデル系として採用したものである。葉身に裏側
小川 智久(東北大学)
山岸 明彦(東京薬科大学)
してもより効率的で有効な手法であることが明快に
伝達に関する報告である。この良く知られたノーベ
示されたのが印象的であった。
ル賞研究の情報伝達システムには個体レベルでいか
葉のモデルとして期待以上の知見を与えてくれてい
近年、PAML など最尤法系統樹による祖先型配列
Thornton ら Nat Rev Genet. 5 : 366-375 (2004) ; Sci-
に信じられない量のノイズが含まれるのかを知らし
る様子が、報告された。単面葉は、単子葉植物では
推定法あるいはリコンビナントタンパク質発現技術
ence. 312:97-101
めるため、情報の誤差を名古屋ドームを借り切って
のアイデンティティーしか持たない特異な葉、単面
38
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
39
「測ってみた」実験結果などをユーモアたっぷりに
ム研究機構にライフサイエンス統合データベースセ
の会場でもワークショップが行われているなか、研
トヨの生態や生理、また、環境適応のメカニズムを
解説された。それでもコロニーレベルで機能してい
ンター(DBCLS : Database Center for Life Science)
究発表ではなく、インフラ整備のサービス紹介を主
知るということが、絶滅に瀕するイトヨ集団の保全
る事実は、裏にある集団レベルのフィードバックが
が設立された。このセンターの活動を紹介し、提供
目的とする当ワークショップに来て下さった聴衆の
策を考える上で必須であるということを意味する。
存在を暗示しているが、このことは、その後の質疑
しているサービスや情報の有効活用を目的として本
方々に感謝致します。
からみた印象では会場でも自ずと理解されたようで
ワークショップを企画した。
小北智之(福井県立大)が、次いで、
「海洋環境
変化と生物の小進化:日本海から学ぶ」と題して、
坊農は、統合 DB プロジェクトと DBCLS を紹介
一見同じように見えるシロウオに日本海型と太平洋
い、
「社会の生理学」の中心テーマである(日本語
した。PubMed を日本語で検索できるサイト、
「蛋
型の2 型が存在することを示す詳細な野外研究を報
でも解説書あり:シーリー著「ミチバチの知恵」青
白質核酸酵素」の全文検索、統合ホームページから
土社、1989)
。4,5 番目は、注目する現象と材料こ
の横断検索などのサービスについてデモを行った
ある。実際、講演者が専門とする個体生理学でな
告し、さらに、これら2 型の違いの基盤となる遺伝
北野 潤(Fred Hutchinson Cancer Research Center)
的メカニズムを追求するという野心的な研究例を紹
本ワークショプでは、人為的な環境開発が生物の
介した。この発表は、2 型の違いに考慮しない安易
院大学の菅原研と筆者辻のグループによる共同研究
河野は、動画によるデータベースの使い方などを
進化に与える影響、及び、そのメカニズムについ
な放流が、2 型間の交雑を招いたり、1 型の絶滅を
そ違うがこれを受けた社会生理学的な研究、東北学
(統合ホームページ http://lifesciencedb.jp/)
。
の成果の発表である。アリは自分の巣の大きさを
提供している「統合 TV」について紹介した。統合
て、私を含む計4 名の研究を紹介し、議論した。近
招いたりするかもしれないことを注意喚起するもの
「知っている」のは生物学的な事実だが、暗黒下で
TV を始めたいきさつとその歴史について説明し、動
年の自然開発によって、従来経験しなかったような
であった。
これがいかに可能なのかその仕組みは未解明であ
画コンテンツとして提供しているライフサイエンス
選択圧に多くの生物が曝されている。このような環
山平寿智(新潟大学)は、
「地球温暖化に伴うメ
る。想像された個体間の接触を介した自己組織化的
関連ツール
(primer 作成法など)や講演のビデオなど
境変化が生物進化や絶滅に与える影響、及び、その
ダカの生活史の可塑的変化と適応進化」と題して、
な制御機構の実像に、数理解析、化学分析、実ア
を紹介した(統合 TV ホームページ http://togotv.
際に生じる急速適応進化のメカニズムについて、野
温暖化が進んだ際に、個々のメダカ集団の生活史が
リを用いた実験とさらにアリロボットを用いたシミ
dbcls.jp/)
。
外、室内、理論など様々な面から行った研究を報告
どう変化し、絶滅リスクがどの程度あるかについて
ュレーションで迫ろうとするのがこの研究の目的で
金子は、統合 DB が行っている人材育成活動の紹
するとともに、それらを踏まえた保全策について考
の予測考察を発表した。この研究は、メダカの実験
ある。加えて菅原は本研究成果のゴミ集め群ロボッ
介をした。データベース構築者、アノテータ、キュ
察した。かつての進化研究は、ガラパゴス島のよう
室内での詳細な量的遺伝解析データをもとにシミュ
トへの応用の可能性を議論し、アリの分業を再現し
レータおよび高度利用者の育成の概要を紹介した。
な手つかずの自然環境でのみ研究できるという考え
レーションを行うという斬新な手法を用いており、
たロボットの研究を紹介した。辻は上記ロボット等
また、今年度お茶大で行った講義を題材に、統合ウ
が一般的であったように思われるが、近年になっ
今後、このようなアプローチがさらに多くの生物種
を用いた研究で至近メカミムズムが解明されつつあ
ェブサービスの提供するREST やSOAP についての
て、我々の近辺で起こる身近な進化にも注目が集ま
でなされることが期待される。
る、アリに見られるコロニーサイズ依存的な行動の
説明と具体的な使用例を示した(統合DB の教材・
るようになってきた。このことは、興味深い進化研
進化の機構(究極メカニズム)に関する近年の共同
人材育成ホームページ
究の題材が身近に眠っているということのみならず、
Center)が、最後に、
「環境撹乱下における遺伝的
進化生物学者が自らの成果を何らかのかたちで社会
緩衝作用と表現型可塑性の果たす役割」と題して、
研究の成果の一部(Ohtuski and Tsuji, Am. Nat.)
http://motdb.dbcls.jp/)
。
岡本は、統合DB プロジェクトのかずさDNA 研究
平 手 良 和 ( Fred Hutchinson Cancer Research
を紹介した。文理融合など学際的な研究の必要性が
所での取り組みとして、かずさアノテーションにつ
へ還元する必要性をも示しているように思われる。
浸透圧ストレスに対する反応、及び、その分子細胞
声高に奨励されているが、移動知が示した工学と生
いて紹介した(http://a.kazusa.or.jp/)。かずさア
私自身も含め、研究者は、とかく自らの研究業績の
生物学的メカニズムを、酵母を用いて解析する研究
物学の連携は、真に深い相互理解をもたらす生産的
ノテーションは、今後重要性の増すと考えられるゲ
みにとらわれ、その研究が如何に社会へ還元できる
を紹介した。酵母の浸透圧刺激への反応にいくつか
なものであることを参加者多くが共有できたのでは
ノムへのアノテーションやキュレーション作業を支
かという視点を欠く傾向があると思われる。そこ
の異なる戦略があるということがみごとに示され、
ないかと感じた。
援するウエブアプリーケーションである。実際に、
で、多くの進化生物学者がこのような問題に注目
酵母のような分子生物学の応用可能な生物種を用い
かずさアノテーションを用いて文献中に記述される
し、刺激的な研究題材を身近に発見するにとどまら
て、環境改変下での適応戦略の一般法則を見いだそ
遺伝子・タンパク質名を手作業で抜き出し、ゲノム
ず、社会への還元という視点を失わないようにする
うとする野心的な研究の将来性を示すものであった。
上の位置情報と関連づけるアノテーション「Gene
ことを意識して、このワークショップを開催した。
このように、人為的環境改変下における進化の研
Indexing」を行い、2008 年8 月末までに約2000 報の
このような趣旨に賛同して、参加発表頂いた3 名の
究には、進化学、遺伝学、生態学、理論生物学、分
植物関連生物のアノテーションを完了したことを報
方に、改めて感謝致します。
子生物学、生理学など分野の壁を越えた学際的なア
金子 聡子(お茶の水女子大学)
告した。また、このGene Indexing から得られる遺
北野潤(Fred Hutchinson Cancer Research Cen-
プローチが必要であり、多くの研究者がこのような
塩基配列決定やDNA マイクロアレイの技術の目
伝子と文献の二項関係をグラフとして可視化し、生
ter)が、まず、湖水の透明度の変化という人為的
テーマに興味を持って取り組み、さらに刺激的な成
覚ましい進歩により、大量の配列データや遺伝子発
物情報解析の題材としての可能性を示した。さら
環境変化によって急速に形態の進化を遂げたイトヨ
果が上がることを期待する。また、科学的知識を安
現プロファイルが日々産出されており、それらの情
に、ゲノム配列の上に様々なデータを統合的に重ね
を題材にして、急速進化の遺伝学的、生態学的メカ
易に実社会へ応用することの危険性については常に
報はデータベースから取得可能である。その一方
て閲覧することが可能な、ゲノムビューアgenoDive
ニズムについての研究成果を報告した(
「硬骨魚イ
意識しつつも、進化学者が何らかのかたちで保全へ
で、データを解析して新たな知見を得ることは、デ
の開発版を紹介した。
トヨにおける逆行進化のメカニズム」
)
。さらに、環
貢献できる道を今後も探っていきたいと考えている。
ータ量の多さゆえに困難になってきている。このよ
ライフサイエンス統合データベースセンターでは、
境改変に対応できずに絶滅の危機に瀕しているイト
うな状況をうけて、ライフサイエンス分野における
さまざまなデータベースやツールの使い方について
ヨ集団の例を挙げ、その絶滅要因として、開発に伴
データベースの統合化と維持のため、文部科学省に
最新の情報を随時更新しています。また、全国各地
う湧水枯渇、外来魚の移植、産卵遡上の阻害、種
よる統合データベースプロジェクトが立ち上がり、
で講習会を行っているので、興味のある方は是非ご
間交雑などを挙げた(
「環境変化に伴う急速適応の
森 光太郎(大阪大学)
平成19 年4 月に大学共同利用機関法人情報・システ
参加下さい(http://motdb.dbcls.jp/)
。最後に、他
メカニズム及び保全策への応用」
)
。このことは、イ
この目で進化を見たい。もともとハダニというマ
40
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
41
イナーな小動物を材料にして社会性の進化を考えて
中島氏は、テトラヒメナ(消費者)
−クロレラ(生
が進んでいるヒトでの研究の話題と、モデル生物
皆様、講演者の皆様、およびワークショップを聴講
いた私が、実験進化学という分野に飛び込んだ理由
産者)−大腸菌(分解者)の3 者をマイクロコズムと
(植物・魚類)の自然集団を使った研究を両方取り
して下さった皆様に、この場を借りて感謝いたしま
です。以前は、社会性成立の最初に起こることを知
いう自立閉鎖系に閉じ込めた実験をもとに、細胞内
上げることで、適応進化の研究を進める上でより広
るためにハダニを使ってそのプリミティブな親子関
共生の進化について発表されました。このような、
い視野を持つことができれば、と考えた。
係や同胞関係を研究していました。このような「起
完全閉鎖系を使った進化実験というのは前例のない
以下、各講演者の話を講演順に要約する。
こったことを推測する」方法も理解の仕方の一つで
ことですが、閉鎖系に置くことにより生態系の遷移
橋口康之・西田 睦(東大海洋研):ワークショ
すが、自然界に本当に起こったことはどう転んでも
を追跡することができます。その結果、独立−従属
ップの簡単な趣旨説明のあと、嗅覚受容体遺伝子群
目にすることができないのならば、実験下で「進化を
栄養生物間の細胞内共生は、生態系の遷移の成熟
に対する自然選択の検出を、ゲノムスキャンを用い
作る」こともまた面白い理解の仕方と考えたのです。
段階において進化する、という仮説が支持されまし
て行う研究について発表された。モデル魚類のイト
微生物を使った進化実験と言えば、世代時間の短
た。生態系の遷移の成熟段階は互いの依存度が高
ヨに見られる生態型(海洋型・淡水型)間での比較
本ワークショップは 2005 年に開催したシンポジ
さと実験条件の操作のし易さを武器に、ある一定環
く、共生関係が生じやすい環境が得られるためと考
を行うことで、生態的な多様化に伴う嗅覚の適応進
ウム『ゲノムの多様性から探る生物集団の構造と歴
境下で培養し続けて形質進化を観察する、ある形質
えられます。
化について議論がなされた。
史』
(第 7 回東北大会、於仙台)の続編として企画
す。
高橋 亮(遺伝研)
最後に石井氏は、細胞間相互作用物質として他の
木村亮介(東海大・医):オセアニア地域の人類
された。前回の反省(詳細は進化学会ニュース 6 巻
なってきました。歴史のリプレイとその解析です。
4 演者が示したような栄養物質だけではなく、DNA
集団を対象に、GeneChip を用いた大規模 SNP タイ
2 号 30-31 頁参照)を踏まえ、今回は遺伝子系図理
しかしせっかくリアルタイムで進化を見られるのな
もなり得ることを実証され、さらに微生物生態系を
ピングを行い、集団遺伝学的解析による適応候補遺
論(コアレセント理論)を基礎から説き明かすこと
ら、もっと生身の情報を取り出せるのではないか、
丸ごと解析する手法としてメタトランスクリプトー
伝子の探索を行なった成果が報告された。ヒト自然
を主眼に、趣旨説明(高橋)ののち、系統地理解析
たとえば、細胞内の構造や形質のばらつき、トラン
ム解析(HiCEP 法)を紹介されました。この解析
集団における適応遺伝子探索の最先端の状況につい
の実践(高山)
、ソフトウェアを用いた系図解析の
スクリプトーム、生き物とそれを取り巻く環境との
は、遺伝子の配列情報を必要としないもので、自然
ても議論がなされた。
実際(角)
、中立性検定を左右する諸要因(手島)の
相互作用はどんな風に変化していくのか。本ワーク
界のよく分からない群集を遺伝子発現という物さし
太田博樹(東大新領域):ヒト集団で見つかって
ショップではこのような疑問に挑戦している方々に
で比較できるのか、あるいは生物の進化を遺伝子発
いる適応遺伝子に着目し、日本に自然集団が分布す
昨今の DNA 解析技術の進展に伴い、自然界にお
現の側面から捉えることができるのか、など大きな
るモデル魚類であるメダカで、それらの遺伝子に対
ける生きものの分布や移動分散に関する系統地理学
可能性を秘めており、傾聴すべき内容でした。
する自然選択を調べた研究が紹介された。また、遺
的な知見も飛躍的な増大を遂げた。しかしながら、
伝学の実験が可能なメダカを集団遺伝学のモデル脊
現状では、得られた知見の信頼性を定量的に判断す
椎動物として確立する試みが示された。
る基準が形成されるまでには至っていない。
進化をもたらす選択圧の検証というスタンスが主と
講演をいただきました。
はじめに、岸本氏は従来の進化実験とは異なり、
高温適応初期に適応増殖不可能な高温条件と増殖
このように微生物を使った実験生態学・進化学の
可能な条件を繰り返し培養する環境変化を作り出し
分野においても、分子生物学、生理学、生化学、細
大腸菌を高温条件に適応させた結果、これまで不可
胞生物学的な手法を導入することで、遺伝子型と表
各紹介を行った。
森長真一(九大・院理):シロイヌナズナの近縁
遺伝子系図学は、多型パタンから生物集団の歴史
能と思われた46 ℃に適応進化した大腸菌を作り出
現型という点と点だけでなく、生物特有のやわらか
種であるハクサンハタザオ・イブキハタザオを用い
を推定する際の理論的な枠組みを与える分子集団遺
しました。さらにその進化過程では、細胞間相互作
な(ばらつきをともなった)属性を進化・生態とい
て、高山寒冷適応に関わる遺伝子を探索する研究に
伝学の一手法である。ゲノム進化の歴史と、分岐の
用の変化が起こったことを、生化学的な手法で相互
う文脈において捉えることができるのではないでし
ついての講演がなされた。シロイヌナズナで開発さ
比較的浅い集団間(種内の異所的な集団間等)の
作用物質を同定することによって明らかにされまし
ょうか。
れたタイリングアレイを活用し、独自の多様性の指
進化史とを結び付けるには、ある進化シナリオの下
標を用いた網羅的な多型解析の試みが示された。
で実現する多型パタンを定量的に表現する確率モデ
た。
次に柏木氏は、同じく大腸菌を使った実験進化系
藤本明洋(理研)ほか:HapMap データベースを
ルを解析の基礎に置く必要がある。この点で、系図
において、一定の環境下で一つの遺伝子型に固定す
活用した、ヒトの毛髪の形態決定遺伝子の探索につ
解析は、一般的な(種間の)分子系統解析とは全く
ることなく、細胞間相互作用によって進化の過程で
いて発表がなされた。ゲノムワイドな多型解析によ
異質の目的を有する。我々は、この視線の違いが分
って特定された、毛髪の形態に関わる原因遺伝子
子集団遺伝学の理解に大きな妨げとなっていると考
EDAR の進化的解析および機能解析の成果が示され
え、この障害を少しでも軽減することを目指し、本
た。
ワークショップが大会企画として採択された直後か
共存がおこることを示されました。更に、生化学的
橋口 康之(東京大学
海洋研究所)
に調べるため、栄養要求性大腸菌株を複数作り出
ここ数年のゲノム配列情報の充実は、適応進化研
し、相互栄養依存で共存する系を構築したことを紹
究に新しい展開をもたらしている。具体的には、(1)
介されました。このような系は、ウェットなシミュ
自然集団に存在する変異に着目し、(2) ゲノム配列
いずれの発表者も、自然集団に存在する多様性に
ら発表打合せを重ね、大会に備えた。異例とは思う
レーションと捉えると分かりやすく、相互作用項と
情報を活用して、(3) 集団遺伝学的な方法を使って
着目し、新規の手法を用いたゲノムワイドな適応進
が、企画関係者には二度に渡り東京までご足労いた
して、物質の漏出量を制御して培養する(シミュレ
適応遺伝子を特定する、という研究が、複数のモデ
化の解析を行うというものであり、非常に興味深か
だき、感謝している。
ーションを走らす)ことができます。
ル生物で可能になったことがあげられる。また「非
った。また、進化研究における実証的なアプローチ
大会当日、非常に残念なことに、我々と目的を共
続いて筆者は、テトラヒメナ(捕食者)と大腸菌
モデル生物」でも、近縁なモデル生物の情報を使う
の重要性も複数の発表者によって言及された。また
有するワークショップ『適応遺伝子探索の新展開:
(被食者)を使った細胞内共生構築の試みを紹介し
ことによって、適応進化の研究をより強力に進める
本ワークショップでは、予想以上に多くの聴講者に
ゲノム情報を用いたアプローチ』
(橋口康之さん、西
ました。細胞内共生では、進化の過程において細胞
ことが可能になってきている。このワークショップ
ご来場いただき、質疑応答も活発に行われた。進化
田睦さんによる)が同一の時間帯に開催される不幸
内部で起こる過程が興味深く、特に筆者は、蛍光タ
では、そのような現状を踏まえて、生物の自然集団
学会における、この分野に対する関心の高さを改め
に見舞われたものの、予想に反し、会場は100 名に
ンパクを発現する大腸菌を用いてセルソータや顕微
を対象に適応進化研究を進めている研究者の方に講
て認識した。
及ぶ聴衆で埋まり、立見が出るほどの盛況であっ
鏡で観察することが可能な系を構築しました。
演していただいた。特に、この分野でもっとも研究
最後に、今回の進化学会の企画・運営に関わった
た。方法論に関する講演が中心だったこともあり、
42
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
43
わかりづらい点も多々あったであろうが、こちらの
ールドウィン効果を考慮したモデルを作り、シミュ
倣する力を持つのかという問いに対し、ミラーニュ
ということさえも知らなかった。地球の46 億年の歴
目指すところが少しでも伝わったのであれば幸いで
レーションで解析を行った。このモデルでは、個体
ーロン仮説やメルツォフのlike-me 仮説は、模倣能
史は、その生命誕生以来の35 億年をとってみても
ある。大会全体を見渡しても、ms(*1 )
、IM、IMa
がシグナル生成・解釈を可塑的に変更できる場合
力が遺伝子レベルでコードされていると考えるが、
生命が生きるに適した温暖な気候が続いたのではな
( )等、集団遺伝学にとっては既に馴染みの深い
に、適応度への貢献が大きいが獲得が難しいコミュ
胎児の経験と能力の関係を考えると、このような仮
く、過酷な波乱に満ちた時であって、全宇宙的な観
解析ソフトウェアが、徐々にではあるが、周辺諸分
ニケーションの形態(レベル)へと進化が可能であ
説に再考を迫るものである。胎児、新生児の示す行
点から眺めなければ理解できない。これは将に眼か
野にも浸透しつつあることが伺え、今後の展開に期
ることが示された。一方、そのコミュニケーショ
動に関し、自由に動かすことができる限られた部位
ら鱗が落ちるという経験であった。私はこの経験を
待を抱かせるものであった。
ン・レベルはどこまでも高くなるわけではないこと
としての口唇部分の重要性、および、オウムなども
進化学会の会員と共有したいと望みこのワークショ
(*1 ) http://home.uchicago.edu/˜rhudson1/source
も示された。この結果は、原理的に適応度が高まる
するとされる音声模倣と自閉症児は難しいとされる
ップを企画したのであるが、それはある程度成功し
/mksamples.html
としても獲得が難しいコミュニケーションへは進化
行動模倣の違いが言語には重要なのではないかとい
たように思う。
できないということを意味する。この結果に対し、
った議論が交わされた。
*2
*2
(
) http://lifesci.rutgers.edu/˜heylab/heylabsoft-
ware.htm#IM
末筆ながら、発表打合せに同席してくださった橋
口康之さん、打合せの場所を提供してくださった田
嶋文生さん、ありがとうございました。
最初に丸山茂徳氏が約1 時間かけて地球に残され
これまでに得られている言語進化の研究との関係
時津は、人類、特にホモ属の進化過程においてど
た記録の解読の現状のoverview を行った。ハイライ
や、人間言語の進化に関してどこまで本研究の結果
のように認知能力、心ができてきたかを、骨や人工
トは全球凍結であるが、地球上で起こった2 回の全
が応用できるかについて議論があった。
物といった物質資料から探る認知考古学を紹介し
球凍結(23 億年前と8 〜 6 億年前)の直後に重要な
北澤は、社会性とコミュニケーションに関する障
た。ホモハビリス、ホモエレクトゥス、ネアンデル
生物学上の出来事が生じている。真核生物の誕生
害である自閉症の治療から、言語と社会性の起源を
タールの残した石器において、工程数の増加、準備
(約 20 億年前)と動物の誕生と大進化(6 〜 5 億年
考察した。応用行動分析による自閉症からの回復過
工程の採用など、知的能力の進化が見られる。その
前)である。大絶滅が起こったあとで新しい体制が
程の考察から、言語機能の回復には、非言語模倣と
他様々な資料から、初期人類は、技術的知能、博
生じるという相関関係は興味深いものである。全球
自他の視点の転換が重要であることがわかってき
物学的知能、社会的知能を持っていたことが伺われ
凍結の原因については諸説があると言うことである
橋本 敬(JAIST)
岡ノ谷 一夫(理研 BSI)
た。この応用行動分析をサルに対して行った結果、
る。しかし、初期人類は、文化、芸術、宗教、農
が、丸山氏の新説は、宇宙線の照射量の増大が地球
事物の模倣の習得は自閉症児の回復に比べて数十倍
耕といった、現生人類が示す重要な特徴を欠いてい
の雲の量を増大させ、それが結果的に地球を冷やし
2006 年の「言語の起源と進化」ワークショップ
遅く、運動の模倣はほとんどできないことがわかっ
る。ホモサピエンスは、このような文化のビッグバ
たというものである。これが成立するためには、地
における議論で、岡ノ谷は言語起源の考え方とし
た。リゾラッティ、アービブらはサルで見つかった
ンを4 〜6 万年前に起こしたが、これは、上記3 種の
球磁場の減少による放射線の地球表面への到達の増
て、主に「断続説」
「漸進説」
「前適応説」の3 つが
ミラーニューロンから推論し、ミラーニューロン言
知能を結びつける認知的流動性を獲得したことにあ
大が必須であるが、何が地球磁場を減少させたかは
あるという考えを述べた。その中で、前適応説、す
語起源説を唱えている。しかし、言語獲得で重要と
るだろう、そして、その結びつけには言語が大きな
解っていない。実際、スターバースト(それぞれ46、
なわち、言語起源以前にすでにヒトを含むある種の
考えられる模倣は、上記のとおりサルにはできな
役割を担ったであろうというミズンの主張が紹介さ
23、8 〜 6 億年前に起こった)の起こった時期と全
動物が持っていたいくつかの能力が複合して言語能
い。また、ミラーニューロンは自他の行動の両方で
れた。心の理論が現れた時期、教育(教える側)の
球凍結の時期は重なっている。更に、地球に降り注
力が完成したという考えが有力になってきている。
発火するため、自他の区別にも使えない。北澤はこ
重要性についての議論がなされた。
ぐ宇宙線の照射量は、銀河系の中での、とりわけ銀
そこで問題となるのは前適応した機能はどのような
れらの研究結果に基づき、言語の起源を明らかにす
ものだったのかという点である。それに加え、前適
応を支えるなんらかの機能があるのか、言語の獲
この4 つの講演でも、対象とアプローチに関し大
河が密集する銀河の腕と我々の太陽系との相対的位
るには、非言語模倣に必要なミラーニューロンに加
きな多様性がある。言語の起源と進化は非常に広い
置によっても規定されるため、周期的になることが
えられるべきもの、自他の視点転換に必要な神経作
分野にわたる知見を交差させ収束させる議論が必要
予想される。それぞれ4.2 〜4.8 億年前、2.9 〜3.5 億
得・運用を支える新たな機能があるのか、というこ
用、再帰性を支える神経メカニズムの3 つを調べて
であることが、今回のワークショップでも見て取れ
年前、1.3 〜2.0 億年前にこれら二つの軌道が重なり
とが議論されている。後者としては、再帰性という
いく必要があることを主張した。非言語模倣に社会
るだろう。今回は時間の関係から総合討論を行うこ
合った時期に大絶滅が起こったことが解っている。
機能がチョムスキーらの説を中心に検討され、この
的強化が効果があることの意味、自他の視点転換が
とができなかったが、十分な時間を総合討論に費や
地球上の生命の大絶滅をこのような宇宙歴史的な観
点に関連して昨年のワークショップでは、他にどの
多重な状況を理解できるという言語の機能との関連
すワークショップを開くことが重要だと思われる。
点から眺めるというのは正に圧巻であり、生命の歴
ような重要な機能・能力があるかという議論を行っ
などが議論された。
た。そして今回のワークショップでは、前適応自
ヒトは他種とは質的に異なる模倣能力を持ち、こ
体、あるいは、言語を支える機能として、言語を支
の能力は生得的で、知能や文化に非常に重要だと言
える能力の進化に注目した。
われている。なぜこのような模倣能力を持つのだろ
今回取り上げたものは、コミュニケーション(鈴木
うか。明和は、誕生前の赤ちゃんの認知能力につい
史のあたらしい視点を提供するものと思われる。
丸山氏の overview に引き続いて、小宮剛(東工
大)
、磯崎行雄(東大)
、西原(東工大)の各論が
岡田 典弘(東工大)
丸山 茂徳(東工大)
続いた。小宮氏はマリアノン全球凍結(630Ma)か
らカンブリア紀初期の環境変動のデータを紹介し、
麗璽)、社会性(北澤茂)、知覚 -運動マッチング
て4 次元エコーを用いて観察した。その結果、胎児
このシンポジウムは、地球の歴史が生命の進化に
カンブリア大爆発を用意した環境要因に付いて考察
(明和政子)
、心(時津裕子)という対象である。これ
は母親の声を認識していること、自己身体を知覚し
如何に甚大な影響を及ぼしたかという点についての
を行った。磯崎氏は同様な視点からエディアカラ生
らを、それぞれ、計算モデルのシミュレーション、
うまくコントロールしていることが分かった。この
最新の知見を紹介するために企画されたものであ
物群出現前後の環境変動について紹介した。西原氏
自閉症治療、胎児の観察、認知考古学というまった
ような能力は新生児が持つと言われるが、胎児はす
る。私はつい最近にこのワークショップの企画者の
は120Ma においても、南米、アフリカ、ユーラシア
く異なるアプローチで扱う4 件の発表があった。
でにそれを獲得している。この獲得過程を考える
一人である丸山教授と共同研究を開始したが、この
の三大陸がかろうじて陸繋がりであった可能性を示
と、母親の声を胎児期にたくさん聞いているなど、
ような知己を得る前は、例えば8 〜 6 億年前に全地
す地質学的データを示し、その直後にこの三大陸が
胎内経験の影響があることが分かる。人間はなぜ模
球が凍結した出来事、全球凍結(Snowball Earth)
分離したことが有胎盤哺乳類の分岐の原因になって
鈴木は、シグナルの生成と解釈という言語の基礎
となるコミュニケーション能力の進化について、ボ
44
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
45
球の表層環境や生命進化は連続的にゆっくりと変化
いるという可能性を示した。
地球の歴史が生命の進化に深い関連を持っている
してきたのではなく、核、マントル、表層、磁気圏
という視点はもちろん新しいことではない。しかし、
など生命圏を含めた多圏地球がシステムとして、同
地球上の生物大絶滅を宇宙史的観点から眺めるとい
時に急激に変動することがわかった。こうして、地
う視点は今までにないもので、今後より具体的な証
球史上の『特異点』が幾つか存在することに気づい
進化医学(evolutionary medicine)とは、病気と
拠の積み重ねでよりはっきりとした全体像が明らか
た。とりわけ、24 〜22 億年前と8 〜6 億年前に起こ
いう状態を進化的視点から捉えることでヒトの進化
形質が急速に変化すると同時に強い選択圧がかかれ
になれば、我々の生物理解も更に進展するであろ
った全球凍結事件とその2 〜 3 億年後に起こった生
を考える方法である。進化医学については、井村裕
ば進化的変化が加速されると予想されるが、本当に
う。今回のこの試みは今後の我々の研究がよりinter-
命進化の大事件との関係が重要であるとの認識に至
夫先生や長谷川 眞理子先生の著作よる優れた紹介
そうなのだろうか。このワークショップでは、昆虫類
disciplinary なものである必要があるということを示
った。そこで、新たに(2)特異点研究を開始し、陸
があるが、そのアプローチは多岐にわたり、集団遺
を材料として、軍拡競走(ゾウムシの口吻とツバキ
したという点からも有意義なエキサイティングなワ
上掘削を中心とした新段階の研究を開始した。8 〜
伝学、発生学、人類学、心理学など様々な分野で
果実の共進化)
、形質置換(カワトンボの種間交雑と
ークショップであったと思う。
6 億年前の動物誕生が最初のターゲットで、南中国
研究がなされている。今回、分子進化の観点から進
種内多型)
、機能転移(ショウジョウバエの交尾器の
がその記録を残すベストの地域である。既に 10 箇
化医学への取り組みを考えるきっかけとして、本ワ
数の進化)
、前適応(ショウジョウバエの味覚変異
所を超える掘削を完了し、その試料に基づいた学際
ークショップを企画した。5 人の方に講演いただい
と食草転換)
、多面発現(アゲハチョウ幼虫の発色
的な研究が進行中である。
たが、興味深かったのは、正の選択をうけいている
機構と紋様形成)という進化の加速機構について議
遺伝子の探索/解析という観点からの発表が多かっ
論した。最終日の最後の時間帯に開催されたにもか
た点である。
かわらず多くの人が参加し(約120 名)
、活発な質疑
(文責:岡田)
このシンポジウムの概要については既に上述され
ているので、私は地質学的視点からこのシンポジウ
ムの企画に至った背景を述べてみたい。
一方、宇宙物理学者は近年の充実した天体の観測
藤 博幸(九州大学)
由良 敬(お茶の水女子大学)
林 文男(首都大学東京)
進化速度に関わる要因として、遺伝的形質の変化
速度と、それにかかる選択圧の強度があげられる。
地質学者は地球に残された過去の記録に基づいて
や数値計算に基づいて、宇宙がしばしば、不連続的
生命の進化を議論してきた。特に化石の記録の解読
大変動を起こし、無数の恒星の誕生、膨大な量の銀
中島敏晶先生(東京医科歯科大学)には「霊長
については近年急速に精度が上がり、無数の論文が
河宇宙線が放出されること、とりわけ、この大事変
類におけるToll-like receptor 関連遺伝子の分子進化
最後の総合討論を行う時間がなくなってしまった
書かれるようになった。しかし、相互に矛盾する結
が24 〜22 億年前と8 〜6 億年前頃に起こったらしい
と自然選択」
、大橋 順先生(東京大学)には「アジ
が、個々の講演に含まれていた進化速度に関する議
果も少なくはなく、混沌としたイメージを抱かれる
ことを主張し始めた。近年、雷や雲の形成メカニズ
ア人で選択をうけている毛髪形態形成遺伝子」
、柴
論については今後の発展的課題になると思われる。
生物学者も少なくないだろう。
ムさえ宇宙線に深く関与し、
『地球の表層環境が宇
田 弘紀先生(九州大学)には「統合失調症関連遺
以下に、各講演者の発表内容の骨子を載せておく。
宙に支配されている』という新しい地球観が生まれ
伝子としてのグルタミン酸受容体遺伝子群の分子進
つつある。
化学的解析」
、金 慧琳先生(総合研究大学院大学)
競走」がエスカレートすることがある。ツバキシギ
私たち日本人グループは、明治以来、日本列島の
構造発達史(日本列島が形成された場所や機構を明
応答がなされた。個々の発表に重点をおいたため、
捕食者と被食者の関係では、武器と防御の「軍拡
らかにする)を最終ゴールとして、日本列島の地質を
宇宙線と突然変異の関係は生物学の古いテーマで
には「ヒト精神活動関連遺伝子 ASAH1 における正
ゾウムシは、ヤブツバキ果実内の種子に産卵するた
研究してきた。地質学的な時刻を特定するため、あ
もあり、質が向上した地球生命記録解読の研究とゲ
の自然選択」というタイトルで講演いただいた。ヒ
め、極めて長い口吻で果実を穿孔する。一方、ツバ
るいは古環境を調べるために化石を利用してきた。
ノム解読や生命の分子進化などと結びつけ、
『銀河
トの免疫系や精神活動に関わる遺伝子に対する自然
キは種子を守る厚い果皮を進化させることで、進化
生命の進化や進化プロセスの研究はゴールではなか
からゲノムまで』の総合的新研究を具体的なデータ
選択についての塩基配列比較あるいは集団遺伝学的
的に対抗している。ゾウムシのmtDNA の集団遺伝
った。その理由は日本列島の歴史が地球史 46 億年
に基づいて考えられる時代が到来したと感じた。生
解析は非常に興味深く、講演後の議論も活発に行わ
学的解析から、口吻長が大きく異なるゾウムシ集団
のうちの最近の 5 億年程度までしか遡れないこと、
命進化論は従来、
『研究というよりはエッセー』と
れた。白井 剛先生(長浜バイオ大学)には「核内
(9-21mm)がわずか14,000 年の間に分化したことが
更に、日本列島の地質は変成作用や変形運動を強く
いう非難の中で、岡田や宮田はこれを実証的な科学
受容体―リガンド相互作用の進化的解析」というタ
示唆された。集団間にみられるゾウムシ口吻長とツ
受けて、化石の記録が不完全なことが多いからであ
にまで発展させてきた。私は岡田と次の時代のあり
イトルで、構造生物学に基づく分子レベルでの共進
バキ果皮厚の集団間変異をもとに、この14,000 年間
る。
方、ブレイクスルーがどのようにして起こるのかに
化の解析について講演いただいた。白井先生とはワ
における両者の進化速度を「haldanes」という指標
1990 年に、私は、日本列島から飛び出して、地
ついて、日常的に議論を重ね、進化論に情熱を傾け
ークショップ後の雑談で、先の4 人の演者の方の発
で推定した。さらに、各世代でゾウムシ口吻とツバ
球を対象にした研究を開始した。その時に非常に明
てきたパイオニアを中心にした新興の学会で、岡田
表で出てきた正の選択をうけているサイトを立体構
キ果皮に働いたと推定される平均的な自然選択の強
確に、
『生命と地球の歴史』の解読を最終ゴールと
に引きずられながら、このシンポジウムを企画して
造上にマッピングして、その意味を考えてみると面
さ(haldanes /遺伝率)を計算した。その結果、
し、それまでの神秘的な地球生命史を検証可能な科
みた。
白いのではないかという話をした。オーガナイザー
14,000 年間に働いたとされる平均的な自然選択は、
としては、今回のワークショップをきっかけとして、
実験室で観察された自然選択よりもはるかに弱いこ
学に発展させることを意識した。そして、1998 年に
地質学者にとって、生命進化学会で講演される発
『生命と地球の歴史』
(丸山茂徳・磯崎行雄、岩波新
表は、直ぐには理解不能のことが多々あった。専門
そのような異分野の交流が生まれることを期待す
とがわかった。これは、口吻長や果皮厚に働く自然
書)を書いた。それから更に10 年が経過し、その
用語に惑わされ、十分な理解が得られたとは言いが
る。
選択の方向がたびたび入れ替わったか、すでに(共)
間、世界 25 カ国 35 研究機関との共同研究を通して
たいが、それ以上に、
『21 世紀が間違いなく生物学
研究は進展してきた。研究は、
(1)横軸46 億年研究
最後に謝辞を。柴田先生には、演者として発表い
進化的な平衡に達していることを示唆する。後者の
の黄金時代』になることを確信する興奮を覚えた。
ただいただけではなく、今回のワークショップの企
仮説が正しいとすれば、野外において軍拡競走が非
によって、地球史を1 億年間隔で区切り、地球規模
宇宙からゲノムまでを統一的に説明しうる新しい進
画にもご協力いただきました。また、最終日の最後
常に急速に起こったことになる(東樹宏和:産総
で試料を集め、大気の化学組成(酸素濃度、二酸化
化論を構築できる時代が訪れようとしている。
のワークショップであるにも関わらず、最後まで参
研)
。
炭素濃度など)
、気温、マントルの温度変化、大陸
地殻の生成率、海洋の化学組成、化石、地球磁場
強度などを測定或いは解読してきた。その結果、地
(文責:丸山)
加され討論に加わっていただいた聴衆のみなさんに
も感謝いたします。
近縁の2 種が同所的に生息するようになると、急
速に形質置換を引き起こすことがある。しかし、元
来近縁な2 種であるため、種間交雑が生じる可能性
46
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
47
も高い。形質置換は2 種の形態差を大きくするが、
通常、その構成は種間で異なっている。しかし、シ
ような記念の年に合わせたからというわけではなく、
しむことができました。
「こんな現象があるんだな」
種間交雑は2 種の形態差を小さくする。カワトンボ
ョウジョウバエ類の中には、種間だけでなく、種内
最近の進化学の大きな流れなのだと思いますが、遺
「この説明は私の扱っている系にも当てはまるかも」
とオオカワトンボは異所的集団と同所的集団が知ら
でもそれに匹敵する規模の多型が存在することが明
伝学と進化学との統合を扱ったシンポジウムやワー
「ここを詰めたらもっと面白くなるんじゃないかな」
れているが、同所的集団において、形態の種間差が
らかになってきた。新規遺伝子の獲得よりも既存遺
クショップが大変目立ちました。私もそれなりに遺
そういった、嗅覚を養う場でありました。スポーツ
大きい場合と小さい場合が認められる。各集団の核
伝子の喪失のほうが起こりやすいため、化学感覚に
伝子を使っていますが、私の場合は見る遺伝子自体
で喩えたら、基礎練習ばかりをどんなにやっても試
とミトコンドリアのDNA 解析を行うと、交雑が起
関わる遺伝子のレパートリーはより狭くなる(選択
にはあまり意味がなく、種判別のため、種の系統関
合では役に立たないように、試合感覚というのは大
こらず形質置換が生じている集団と、交雑が生じて
性が緩くなる)傾向をもつと考えられる。化学感覚
係の推定のため、集団間の遺伝的な交流の程度を推
事なことです。学会でいろいろな人の研究に触れる
形質置換が起こっていない集団があった。もし交雑
に関する種内での遺伝的多型の維持機構については
定するため、そのような目的のために、できるだけ
ことは、内容を記憶し知識を増やすこと以外に、何
が起こらなければ、2 種間で急速に形質置換が生じ
まだ不明な点が多いが、もし既存遺伝子の喪失によ
「中立な」遺伝子座を使って進化を考えようとして
といいますか、研究感覚とでも言ったらよいでしょ
るのではないかと考えられる(林 文男:首都大)
。
って食草転換が起こるとすると、遺伝子レパートリ
います。しかし最近の流れは、そのさらに一歩先に
オスの交尾器は、進化速度の速い形態形質であ
ーの多様性は、急速な食草転換を引き起こすための
あるようです。注目している現象を引き起こしてい
うか、その鍛練の場として最適だと思います。
ということで、今回の進化学会は、シンポジウ
る。昆虫類のそれは複雑化・多様化が特に著しく、
前適応となっている可能性がある(松尾隆嗣:首都
るまさにその遺伝子を突き止めて、中立な遺伝子と
ム・ワークショップという勉強の場、口頭発表・ポ
近縁な種間においても各パーツの相同性の決定が難
大)
。
比較することなどで働いている選択圧を検出した
スター発表という研究感覚養成の場、その2 つがう
まく棲み分けされていた大会だったと思います。
しい場合が多い。キイロショウジョウバエ種群の例
アゲハチョウの幼虫では、若齢が鳥のフンに擬態
り、進化できたものとできなかったものとの違いを
を中心に、移精・把握・創傷(交尾時にオスがメス
するのに対し、終齢は全身の模様を大きく変化させ
生む遺伝的な制約を考えたり、形質間のあるいは集
ただ改善を求める点があるとすれば、聴衆の交通
を傷つける現象)といった交尾の諸機能を担うそれ
て食草に擬態する。このようなアゲハチョウ特有の
団間の進化速度の違いを比較したり、形質の発現に
整理にもう少し座長の方々が気を配ってくだされば
ぞれの交尾器パーツが、進化的に交替していく現象
形質変化に関わる遺伝子を同定するため、これと幼
いたるまでのカスケードを見てみたり…と、様々な
良かったかなと思います。会場を分けて行っている
(機能転移)の事例を紹介した。昆虫類の交尾器は、
虫紋様の類似したシロオビアゲハ、およびこれとは
アプローチがありました。至近要因まで含めて進化
都合上、どうしても人の出入りが多くなります。結
複数の体節の付属肢に相当する構造が密集して形成
紋様が大きく異なるカイコを含めた3 種のゲノム比
のメカニズムを解明しよう。そのために膨大な遺伝
果、奥の方には空席があるのにもかかわらず、入口
されたものであり、隣接したパーツ間の機能転移に
較を行った。幼虫皮膚のcDNA ライブラリーの種間
情報を上手に利用しましょう。というのが前面に押
に密集した人にせき止められて立ち見すら出来な
よる速い形態進化が可能であると考えられる(上村
比較を行うと、幼虫の青色に関連するビリン結合蛋
し出されていた第 10 回大会だったと思います。
い、という会場がいくつもありました。個々の講演
佳孝:慶大)
。
白質に加えて、黄色の着色に関連する遺伝子や、さ
この分野は大変進展が早く、そのスピードについ
の合間に一言挟むだけでも、だいぶ渋滞が緩和され
植食性昆虫の寄主選択には、その植物で幼虫が生
らに紋様特異的なクチクラ蛋白質が、アゲハチョウ
ていくのは容易ではありません。遺伝学の理論や手
るのではないかな、と思いました。もうひとつ、受
育できるかどうかという生理的側面と、その植物に
やシロオビアゲハの幼虫において高率で発現してい
法の確立を専門とする方々が切り開いてくださった
賞講演を誰がどんな内容でなさるのかについて、掲
成虫が産卵するかどうかという行動的側面が関与す
た。これらの遺伝子をカイコのゲノム情報と照らし
ものを、このような学会のシンポジウムやワークシ
示が一切なかったのは、少し不親切かな、とも思い
る。食草転換には両方の変化が必要である。成虫の
合わせると、アゲハチョウやシロオビアゲハではパ
ョップで学び、それを研究室に持ち帰って自分の対
ました。でもまぁ、そんな重箱の隅をつつくような
化学感覚に関わる遺伝子機能の部分的喪失は、食草
ラログ数の変化が生じていた。複雑な擬態を行うこ
象としている実際の系に応用する、といった「分
要望しか思いつきません。
に対する選択性を解除する効果があると考えられ、
れらの幼虫では、その皮膚に発現する緑色や表面構
業」が、最も効率よく全体としての進化学を進展さ
私が思う、進化学会が誇るユニークな企画とし
その後の幼虫の生理的な変化を伴った食草転換の進
造が、他の通常の形質と比べて速い進化を起こして
せる方法なのだと思います。そのため、シンポジウ
て、
「高校生ポスター」と「進化学:夏の学校」が
化的引き金となり得る。化学感覚に関わる遺伝子は
いる可能性が高い(二橋 亮・藤原晴彦:東大)
。
ムやワークショップは、授業や説明会に喩えられる
あると思います。高校生ポスターは、そのレベルの
ような「勉強の場」という要素が強く出ていたよう
高さに驚かされました。夏の学校は、上述した田村
に思います。象徴的だったのが、MEGA の開発者
先生のMEGA のほかに、
「地球環境変化と進化学」
である田村浩一郎先生による「夏の学校: MEGA4
を聞きに行きました。こちらは一般の方々の聴衆が
ゲノム中で大きな遺伝子ファミリーを形成しており、
による分子系統解析」でした。私自身 MEGA には
多く、質問もたくさん出ました。このように誰でも
大変お世話になりました。私は配列データから手計
無料で聴講できる企画というのは、冒頭で述べたこ
算で系統樹を組み立てる知識も技術もありません。
とにも関係しますが、進化学の裾野を広げる上で、
にわずかに書かれているだけで、授業でも「ま、読
でも系統樹は書けます。言ってみれば分子進化遺伝
大変大きな役割を果たしていると思います。ぜひ続
んでおいてね」ぐらいに、扱われていたように思い
学を専門としていない私のような学生も、ソフトを
けていってもらいたいと思います。
ます。恥ずかしいことに、私が適応度という言葉を
正しく使えば遺伝情報を扱える、むしろ扱わなけれ
要旨集も素敵でした。学会では、会場となる大学
知ったのは、大学 4 年生になってからでした。自分
ばいけない時代だということです。田村先生による
の学生さんたちがよく行くという「うまい!安い!
院・環境科学物)
の中ではすでに当たり前に存在している進化学とい
夏の学校をはじめ多くのシンポジウムで、私はメモ
多い!」の3 拍子揃った店をリサーチするのをひそ
大会印象記に入る前にまず、この学会が今年でま
う学問は、実は一般にはまだまだ浸透していなく
帳が離せませんでした。
かな楽しみとしている私としては、
「駒場キャンパ
だ10 周年であるということに驚いています。私が大
て、日本ではまさにこれから成長せんとする学問な
学に入った時にはまだ、進化学会大会というもの
のだということをしみじみ感じました。
■ 木村 幹子(北大
は、日本には存在していなかったことになります。
そういえば高校でも、進化学的な話は教科書の最後
対照的に、一般の口頭発表や若手の発表者が多い
ス周辺の食事処情報」は大いに役に立ちました。当
ポスター発表は、新しい研究成果の発表と意見交換
然のことながら「東大生御用達ラーメン」は食べま
さて、そんなことを思った第 10 回記念大会です
の場、という要素が強かったように感じます。こち
した。やはりうまかった! 運営委員の皆様のご尽力
が、今年は中立説 40 周年でもあります。別にその
らの方は、勉強というよりは冒険といった感覚で楽
に感謝しつつ、筆を置きたいと思います。
48
日本進化学会ニュース Nov. 2008
■ 前田 太郎(海洋大学・院・応用生命科学)
学ぼうと考えたのです。
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
「ヒメハナカメムシ類とWolbachia の共進化:種内・
49
めており、そのため各分野について厚みのある議論
進化学会は私が初めて参加した学会でした。千葉
「ゲノムトランスクリプトーム情報から植物の進
種間におけるWolbachia 水平感染と組換えの可能性」
を聞くことができましたが、その半面、途中から聴
大に在籍していた学部 3 年次の時に、
「学会」の雰
化に迫る」においては、近縁種で正確なゲノムデー
など、共生細菌をもつ昆虫類の研究では、その共生
いたのでは、よく内容を理解できないものがあるよ
囲気を知りたいと思い、ちょうど東京で大会が開か
タが確立されていることで、次世代シーケンサーを
細菌の伝播様式の多様性や生態的な意味についても
うに思います。3 日間というのは学会として十分長
れていた進化学会に参加した(紛れ込んだ?)ので
もちいた比較的ラフな再シーケンシングによっても
興味深いものでしたが、特にパラフィルムを使っ
い開催期間であると思いますが、ワークショップや
した。漠然とドブジャンスキーの「Nothing makes
ゲノムレベルの変異の検出を行えることや、タイリ
て、動物や植物の体液を吸う食性を持っている昆虫
シンポジウムが多くを占めるという大会の特徴を考
sense except in the light of evolution 」の言葉にあ
ングアレイを用いた発現解析によって発現の様子を
の人工的な摂餌環境を整える手法には目から鱗が落
えれば、もう少し長い期間をとり、会場数を減らし
こがれていた私には、進化を前面に掲げている学会
DNA 上の2 次元方向について解析できるといった、
ちる思いでした。野生生物を扱う研究においては、
て、より多くのシンポジウムを聞けるようにしてい
というだけで胸が高鳴りましたが、そこでの発表を
ゲノムデータから派生する解析法の多様さを知るこ
いろいろな苦労がありますが、このような工夫によ
ただけたらと思いました。また、会場をテーマ毎に
聴いてさらに研究への思いを強くしたことを記憶し
とができました。
ってそれが克服されていくのを見ることができ、自
分けることで、関連のある発表が続くようにした
ています。それから4 年のブランクを経て、今回晴
「ゲノムの多様性から探る生物集団の構造と歴史
らも、野生生物(吸引食性のウミウシ)の研究をし
り、同テーマのものが同時間帯に重ならないように
れてポスター発表をさせていただきました。今回が
(2)系統地理学と集団遺伝学の接点を探る」につい
ている研究者として、柔軟な発想で研究上の困難を
していただけたらと思いました。
実質初めての進化学会参加であり、そのような私が
ては、もともと関心を持っていた分野であり、興味
解決していこうと、気持ちを新たにしました。
「共
学会印象記を書かせていただいて、場違いなことを
深く聴かせていただきました。各塩基サイト毎の系
進化による種分化と、右も左もわからないヘビ」で
書いてはしまわないかと不安ですが、初心者の印象
統樹を構築し、その樹形の変化から進化的イベント
は、「カタツムリの殻の巻きは右巻きの種が多く、
としてどうかご容赦ください。
を考察する(たとえば選択圧が掛かった部位をみつ
右巻きと生殖が難しい左巻きの種は進化しづらいは
会は、様々な分野の研究者が集まり、若手ものびの
けだす)という手法は、非常に鮮やかに感じられ、
ずだが、現実には左巻きの種はいくつか存在する」
びと議論できる自由な雰囲気があって良いと思って
で、ポスター筒を片手に乗り込んだ時には会場の新
有用遺伝子や、ある種をその種たらしめている遺伝
という謎に対して、右巻きに特化した捕食を行うヘ
います。実際に、ワークショップの企画者や演者に
しさと明るさに驚きました。ポスター発表中に、サ
子の探索において重要な手法になるのではないかと
ビの「発見」でその要因の一端をあきらかにしたと
若手が多く見られました。私もまだ研究員になった
ンドイッチなどの軽食のご提供があり、主催者の
思いました。また、理論中心の発表では、時折扱っ
いう研究が発表されていました。さらに人工的にカ
ばかりですが、ワークショップを企画する機会を得
方々のお気遣いに大変感謝いたしました。コアタイ
ている事柄を具体的に理解しづらいことがあります
タツムリの殻をつけたナメクジ(
「ナメツムリ」と
ることができ、大変よい経験ができました。若手に
ムが17 : 50 〜 19 : 30 という設定でしたが、軽食のお
が、このシンポジウムにおいては、最初に高山浩司
命名されていました)などをつかって蛇の捕食行動
もチャンスが与えられているということは、将来に
陰で落ち着いて有意義な議論を行うことができたと
さんらによる「汎熱帯海流散布植物の系統地理」の
を明らかにされていました。このような、一見素朴
向けてこの進化研究が盛んになっていくためにも、
思います。会場が1 フロアーのみであったため、見
お話があったために、実際の研究での問題点を常に
な実験を通して生物学的大問題を明らかにしている
非常によいことだと思います。
渡しがよく、説明を聞きたいポスターの空くタイミ
意識しながらその後の発表を聴くことができ、構成
ことに多いに触発されました。
「ミトコンドリアか
ングがわかり易かったことはよい点でした。一方、
として優れていたように思いました。
ポスター発表会場となった食堂は非常にきれい
■ 鈴木 誉保(理化学研究所 CDB)
進化学会も今年で10 回目を迎えました。進化学
また、ポスター賞などのように、わかりやすい評
ボルバキアか?:細胞内共生体の2 つの戦略の進化」
価のされ方があるということはよいことだと思いま
ポスターの列と列の間隔が少々狭く、盛況なポスタ
「統合データベースの活用法:ゲノム情報などを
では複雑な数式をつかった研究であるにもかかわら
した。もちろん、この賞を取れるか否かによって研
ーがあると、その前の通り抜けさえ困難になるのに
使いこなした効率的な研究のために」では、多くの
ず、そのエッセンスを山内淳先生が巧みに伝えてく
究の良し悪しがすぐに決まるものではありません。
は閉口しました。全体に、ボードを集めた「島」が
研究に有用な web サービスを知ることができまし
ださり、母性遺伝に着眼した、現世でミトコンドリ
しかし、学生や若い研究員にとってモチベーション
コンパクトにまとめられすぎていて、島の周囲は移
た。また、Wikipedia のように、公開されたゲノム
アのような細胞小器官化が生じない理論的理由付け
を高めるきっかけのひとつとしてよい制度だと思い
動しやすいのに、その中に入るとなかなか抜けられ
データの各遺伝子や塩基部位について、多くの研究
がよく理解できました。
「細胞内共生の終着駅?:
ます。ただ、ひとつ今後に向けて提案があるとすれ
ないという印象を受けました。私は幸いにも島の端
者がそれぞれの知識から情報を提供しあうという、
貝類寄生虫パーキンサスの色素体」では色素体の多
ば、口頭発表にもそうした評価基準があると、ます
にボードがありましたので、多くの方に見ていただ
オープンアノテーションの考え方には非常に惹かれ
様さを目の当たりにすることができ、まだまだ色素
ますよいのではないかと思いました。
くことができたのですが、ポスターの場所が島の中
るものがありました。次世代シーケンサーが多くの
体(葉緑体)の獲得過程や機能について多くの研究
心部になっていた人からは、自分のポスターにすら
データを輩出する時代において、情報を有機的に位
すべき課題があることを再認識しました。
なかなかたどり着けなかったという話を(冗談半分
置づけするフレームワークとして重要な考えである
にですが)聞きました。次回は改善していただけれ
と感じました。
今回の学会では、当初の予定を大幅に上回る応募
のために、併せて20 ものワークショップが開催され
惜しむらくは、発表が5 〜 6 会場にまたがったこ
ました。ワークショップのテーマにしても、動物あ
とで、興味を持っていたシンポジウムが重なってし
り植物あり微生物あり、あるいはゲノムの進化から
おりにも9 月のNature(Vol. 455, 7209)では「Big-
まい、聞き逃したものが多く有ったことです。ま
形態の進化、意識、ロボティックス、科学哲学と、
今大会では、特にゲノム関連の研究に注目して聴
Data」と題した特集が組まれ、次世代シーケンサー
た、明らかに関連する分野の発表が重なっているこ
その生物材料や研究ジャンルも多岐に渡りました。
かせていただきました。ゲノム解析についてはいま
などによって生じた巨大データをどう扱うかについ
ともあり、たとえば「適応遺伝子の探索」と「系統
進化研究が盛んであることの証明でもあり、大変歓
まで門外漢だったのですが、次世代シーケンサーや
て議論されています。この今日的な問題を今大会に
地理と集団遺伝」では、私は系統地理と集団遺伝を
迎すべきことであると思います。私自身もどの講演
Hicep など、解析のための様々な手法が考えられ、
おいて種々のシンポジウムがあつかっていることは、
聴いたのですが、適応遺伝子の探索を聴いた方と話
を聞きに行くのか、あまりの多さに迷うほどでした。
以前よりかはゲノムデータが身近になっていること
進化学会の先進性と学会員の方々の活発なご研究を
してみると、
「系統地理と集団遺伝」がその理論に
どのお話も大変興味深いもので、普段自分が考えな
から、興味を持ち始めているところでした。今回の
示すものと感じました。
重きを置いていたのに対し、「適応遺伝子の探索」
いような内容についても触れることができ、自分の
が実際の生物への適応例を扱っていたようでありま
幅がまた少し広がったように思います。しかし、そ
した。進化学会ではシンポジウムが発表の多くを占
の一方で、多くのワークショップが同じ時間帯に並
ばと思います。
学会ではゲノムデータを利用した進化研究のお話が
多くあったため、これを機にゲノム研究の最前線を
次に、個人的に興味深かった発表をいくつか上げ
させていただきます。
50
日本進化学会ニュース Nov. 2008
51
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
行して行われることになり、聞きたい講演をいくつ
致させる。参考文献で幾度もお世話になっている先
デボ、意識の進化まで、多方面の話が聴けることを
試みた(ポスター発表[P-075])
。その発表では、た
か聴くことができなかったのが残念でした。こうし
生方が目の前で発表されていることに、大いに気分
楽しみに参加している筆者には嬉しい限りであった
いへん多くの方からご質問をいただき、また有意義
た問題は、多くのワークショップの応募があればあ
が高揚した。内容はもちろん、聞き手に対する親切
が、一方で、忙しい合間を縫って参加される先生
なディスカッションさせていただいた。この場をお
るほど発生してしまうという、事務局にとってはう
なプレゼンテーションなどにも感嘆した。あとで声
方、諸事情を勘案しつつ大会スケジュールを組まれ
借りして御礼申し上げたい。とくに、メダカゲノム
れしい悲鳴でありずっとつきまとうものだとは思う
をかけるために、ノートの端に似顔絵や特徴をとど
たであろう実施委員会の方々の苦心が窺われる。
プロジェクトに関わった先生方(論文の主要著者)
のですが、もう少し時間にゆとりがあってもよいの
めておく。
上のような事情もあってか、どうしても、興味を
とお話できる機会を得られ、これは貴重な体験であ
もった演題どうしが同じ時間帯に重なっているケー
った。加えて幸いにも、筆者らの発表は本年度のポ
わたしは、今回の学会では、ひとつのワークショ
伝にまわった甲斐もあり、様々な分野の研究者が発
スに行き当ったが(例えば「WS14 適応遺伝子探索」
スター発表の最優秀賞を頂くことができたが、この
ップを企画させていただきました。広い会場で開催
表を聞いてくださった。なかでも、共生細菌の権威
と「WS15 系統地理と集団遺伝」など)
、今回は幸
研究は、豊饒なゲノムデータ群なくしては到底でき
ポスター発表のコアタイムが始まる。昼休みに宣
ではないかな、と思いました。
させていただいたのですが、会場は満員で質問も時
である深津武馬先生がゆらりと現れたときには、緊
い、会場どうしが比較的近接していたので助かっ
ない内容であったことを記したい。逆に言えば今
間いっぱいまで飛びかい、熱心な参加者の方々の勢
張と興奮で体が痺れる始末。発表に対する鋭い質問
た。会場間を行き来するわけである。が、そこで1
は、十数年前、否、数年前ですら実行できそうにな
いを感じました。演者の方々には、通常の講演で
と反論が浴びせられ、これこそが学会発表の意義で
つ残念だったのは、小教室を使った会場(A やC な
かった研究のアイデアを、ゲノムデータなどの信頼
は、自身の結果を発表して終わりという感じが多い
あると確信した。客観的かつ冷静な反駁は、研究を
ど)はしばしば混雑しており、時には教室内に入り
性の高い一次情報群に基づいて実践できる状況にあ
ので、問題意識を明確にすることと自身の立場を
進める上で非常に重要である。それと同時に、自分
づらいこともあったことだ。年々参加者が増えて喜
る。このような情報群は今後も飛躍的に増加する気
(ある程度極端に)明示的に示して講演をしていた
の研究を一番理解しているのも、明らかにするのも
ばしい一方で、余裕のある会場を確保し設定するこ
配であり、こうした状況は、遺伝子やゲノム自体の
自分である、という責任感が芽生えた。
とが、必須になりつつあるのかもしれない。なお、
進化だけではなく、エボデボや生態、集団生物学な
大会中、特に印象に残っているのは英語プレゼン
クロークおよび2 カ所に設置された休憩室でのサー
どの研究分野にも、かつてない新しい展開の機会を
今後の領域横断的な議論につながればと企画意図し
テーションである。外国人はもとより、日本人の英
ビス(お茶・お菓子・ゴミ袋類など)は、配慮の行
もたらしていくことだろう。
ました。ただひとつ残念であったことは、ワークシ
語についても流暢さ、イントネーション、発音すべ
き届いたものでたいへん有難かった。
ョップ全体の時間が押してしまい、議論が十分にで
てにおいて美しく、英語好きの私は聴き惚れてい
冒頭で述べたように、進化学会の内容は毎度多岐
毎度のことながらレベルの高さに驚かされてしまっ
きなかったことです。今後は、集会なども利用して
た。それに加えて、英語特有のスライド構成は、日
に渡るので、その印象を短く述べるのは難しい。が、
た。素朴な疑問を堅実で気の利いた研究へと発展さ
いきたいと考えております。
本語でも応用できる部分が多く、これも得るものが
筆者が専門とする領域の視点から述べれば、進化研
せたもの、バイオインフォマティクスを駆使して大
大きかった。
究モデルとしての「魚類」の有用性と重要性が、こ
胆な斬り口の提示を試みたもの、どれも若者ならで
だくことをお願いしました。こうすることで、聴衆
のみなさんに領域ごとの考え方の違いなどが伝わり、
いよいよ来年はダーウィンの生誕200 周年であり、
「種の起源」の出版 150 周年にあたります。進化学
2 日目、3 日目は生物の相互作用、分子、言語、
話を大会に戻すと、高校生のポスター発表には、
こ最近、さらに受け入れられつつあることを本大会
はの面目躍如たるものがあった。これは同じ若手
会の、また進化研究の今後ますますの発展を願うば
脳科学、認知などの様々な視点から進化を論じたワ
でも感じた。もともと魚類、とくに小型魚類は、発
(卵?)として負けてはいられない。実際のところ、
かりです。
ークショップを又に掛けた。もちろん移動時間はス
生過程を観察しやすいことから所謂エボデボなどの
彼らが大学で進化研究を専攻するのかは、何しろ数
ケジュールに組まれていないので、発表の最初と最
分野で広く活用されてきた経緯がある。また分子系
年後のことだから定かではないかもしれないが、自
後を聴き逃したりもしたが、多分野に渡る興味深い
統学も盛んで、魚類の系統枠や分岐年代は比較的高
分たちのアイデアを実行して形にし、学会でプレゼ
■ 坂本 佳子(大阪府立大学大学院
生命環境科学研究科)
当然のことながら、進化学会は「進化」をテーマ
研究に出会えたことは、進化学会ならではの収穫で
い信頼性で推定されていると言える。さらに昨年
ンする水準まで高めたという体験は、どんな進路や
としている。他の学会の区分は、扱う対象生物が何
ある。研究者が互いに支えあって構築する広大な科
(2007 年)、我が国で初めて全ゲノムを解読した多
分野に進むにしろ大きな糧となるのではないだろう
かによって決まっている場合があり、同じようなメ
学の世界に憧憬を抱いたのは言うまでも無い。
細胞生物としてメダカが注目を集め、また、行動学
か。彼らの活躍ぶりに筆者も思いを新たにするとと
カニズムを研究する者でも、対象生物が異なれば知
大学に戻ってからも興奮冷めやらぬ、といった感
研究で有名なイトヨのゲノム配列も公表された。こ
もに、筆者も含めた若者勢の積極的なアタックが、
り合う機会が少ない。その点、広い研究分野・対象
じで学会の思い出を周囲に熱く語り、次回大会に胸
うした流れから、充実しつつある魚類全ゲノムデー
学会や進化研究をさらに盛り上げていければと思う。
を視野に入れた進化学会は、他の学会とは違った角
を膨らませていた。
タ群に立脚した諸進化研究が急速に進展している。
■ 後藤 龍太郎(京都大学大学院
人間・環境学研究科)
最後になるが、有意義な時間を提供してくださっ
本大会でも、メダカ免疫関連遺伝子や孵化酵素遺伝
た大会関係者と参加者の皆様に、大変感謝申し上
子などの機能進化研究、魚類で蓄積された系統地理
進化学会の参加は京都大会に続き2 回目、発表は
げる。
情報を活用した分岐年代推定の方法論や「適応進
今回が初めてでした。私は、植物と昆虫の1 種対 1
化」に関与しているゲノム領域の探索、視物質や化
種の送粉共生系を材料に、その相互作用について、
学受容体の進化、さらには、イトヨ類縁種群を用い
野外実験や観察などの手法を用いて研究しているの
2005 年度より大会に参加させていただいている
ての種分化の遺伝的基盤の探求など、意欲的な試み
ですが、そんな「マクロ」の生態学をしている私に
間近になって発表を決意した。東京へ向かう最中、
が、今年は盛りだくさんな内容でボリュームのある
が多く発表されており、これらは筆者にとっても大
とって、進化学会は、分子生物学・進化ゲノム学が
研究室の誰とも連れ立たないことに一抹の不安を感
大会であった。合計 33 の企画シンポジウムおよび
きな刺激となった。
主流の少し敷居の高い学会だという印象がありまし
じたが、これが「自由」と同義であると気づくのに
ワークショップ講演が特に3 日間に渡って開催され
筆者自身も、真骨類(硬骨魚類の大部分)の祖
た。しかし今回は、共生系の進化について議論して
(前年までは実質 2 日間であったが)
、口頭/ポスタ
先で起きたというゲノム重複に着目して、メダカや
みたい題材があったので、思い切ってポスター発表
ー発表も計 191 演題と、かなりの数であった。遺伝
イトヨなどのゲノムデータを活用し、ゲノム重複後
させていただきました。短い時間ではありましたが
子/タンパク質/ゲノムの進化から数理、生態、エボ
の遺伝子存続/欠失の過程を詳細に推定することを
多くの方に話を聞いてもらうことができ、貴重なコ
度からの切り口で、貴重な交流の場を設けている。
進化学会第 10 回大会は、私にとって初めての学
会発表(ポスター)であった。私の所属する研究室
は、主に昆虫を扱っているのだが、群集解析や分類
に携わる人がほとんどで、進化を論じ合う学生が少
ない。大会に参加して助言をいただければ、と締切
それほど時間はかからなかった。
大会1 日目に、共生細菌に関する一般講演があり、
勢い込んで傾聴した。まずは先生方の名前と顔を一
■ 佐藤 行人(東京大学海洋研究所
分子海洋科学分野)
52
日本進化学会ニュース Nov. 2008
メントをいただきました。この場を借りてお礼申し
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
参加したい学会である。
53
い言葉ですが…)にあるのですが、
「速い進化と遅
会で見られるような隣のポスターを見にきた人のお
い進化」と題されたワークショップは非常にいい刺
かげで自分のポスターの説明ができないといったこ
ワークショップは本大会でも健在であった。特に2
激となりました。研究内容も勿論ですが、プレゼン
とはなかったように思います。しかし、ポスターの
のポスターを見に行けるのは嬉しい配慮でした。た
日目の午前中に開催された「WS6
動物のデザイン
の仕方についても参考になるところが多くありまし
前後の間隔が狭く、特にギャラリーの多いポスター
だ、発表されたポスターが100 枚以上もあったので、
の進化をめぐる多元的ダイナミクス」は非常に意欲
た。これからの研究活動に活かしていきたいと強く
の前を通り抜けるのに苦労したのを覚えています。
発表テーマによって幾つかのセクションに分けてい
的なワークショップであった。集団遺伝学(高橋先
思います。
会場のスペースの関係もあるとは思いますが、なん
ただけたら、限られた時間でポスターを見て回るう
生)
、生態学(三浦先生)
、進化発生学(藤村先生)
、
最後に、ポスター発表についてですが、コアタイ
えで助けになるかもしれません。
比較形態学(鈴木先生)
、数理生物学(藤本先生)
ムを発表番号で分けるという工夫が見られ、他の学
上げます。また、ポスター番号の偶数・奇数でコア
タイムが違っていたので、自分の発表の後、他の人
私は、植物とその送粉者の共進化について考えを
進化学会の名物ともいえる多様なシンポジウム、
とかならないものでしょうか。
といった多様な分野から集まった演者ではあるが、
巡らせることが多いのですが、それらが現在に至る
それぞれの発表では共通したひとつのメッセージが
までどのような共進化過程をたどってきたのかを実
繰り返されていた。つまり、デザインの進化を理解
際に再現するのはとても困難で、DNA による系統
するためには、遺伝型=表現型という一対一の関係
樹を基に間接的に推定する方法をとらざるを得ない
ではなく、多対多のネットワーク構造を頭に入れて
ように思います。そんな状況を時折歯がゆく感じて
おかなくてはいけないということだ。このネットワ
いた私にとって、シンポジウム「Experimental Coevo-
ーク構造が柔らかく変化することによって形が変化
lution and Theories」では、実験室下の微生物を用
するという考え方は尤もらしく思えるが、評価や解
いて共進化の動態を実際に捉えようとする研究が多
析の仕方が非常に難しい。非モデル生物を扱う自分
めました。しかし、本屋や図書館の進化の本のコー
く、その視点や方法論に触れ、非常に新鮮に感じま
にとっては、この考え方をいかに自分の研究に反映
ナーに行っても自分が満足できるような答えを得る
した。また、動物の社会行動を扱ったシンポジウム
させるかが課題である。3 日目の午後に開催された
ことはできませんでした。
「本で知ることができな
「Evolution of Social Behaviour」では、最近話題の
「S11
そして古生物学のことを知るにつれて「生き物は時
寺井 洋平(東京工業大学
間とともに、どのように移り変わってきたのだろ
生命理工学研究科)
う?」ということに興味を持ち進化について調べ始
いなら、自分で調べてみよう」この考えが生物進化
大進化・論」も印象深いシンポジウムであっ
の研究を始めるきっかけだったと思います。
「おばあさん仮説」についての発表の他、進化の妙
た。ボディプランの進化を分子レベルで理解するこ
とさえ思えるような生物(ターマイトボール・ハダ
とに焦点を当てているという点ではWS6 とも共通し
私はシクリッド(カワスズメ科魚類の総称)を用
カデバネズミ)を材料に、巧みな実験系を組んで行
ていた。特にこのシンポジウムではある調節配列
いて生物進化、特に種の分化と形成がどのように起
われた研究について発表があり、生物の進化につい
(つまり標的遺伝子の使い方)の変異がボディプラ
まず始めに2008 年日本進化学会研究奨励賞を受
こるかということを分子レベルで明らかにすること
て好奇心がくすぐられる構成で、興味深く聴かせて
ンを大きく変えうるという例について紹介されてお
賞したことをとても嬉しく思い、また日本進化学会
を目標として研究を行ってきました。研究対象のア
いただきました。
り、WS6 と同様、遺伝子の相互作用の変化によっ
と選考委員の方々と研究奨励記の執筆の機会をくだ
フリカのシクリッドとの最初の出会いは駅の切符売
て表現型が大きく変化するというメッセージが繰り
さった方々に感謝を申し上げます。これもこれまで
り場の待合室でした。この待合室に水槽が置いてあ
返されていた。
私の研究を支えて下さった多くの方々のおかげであ
り、
「珊瑚礁の魚のような青や黄色の魚だけど淡水
最後は、博物館のシーラカンスとハナカマキリを
見て、進化学会を後にしました。シーラカンスの卵
と稚魚の展示は、迫力がありました。大会と並行し
今回の学会では多くの先輩や仲間と知り合うこと
ると考えています。ありがとうございました。研究
魚?」と思うような魚が泳いでいました。それまで
て、このように直に進化の謎を考えさせられる展示
が出来た。悩みを共有できる同年代や少し上の世代
奨励賞受賞記として簡単にこれまでの研究を紹介さ
日本の淡水魚が好きで飼育していたので、とても不
の研究者がいるのは、良いものである。いつかここ
せていただきます。
思議な魚に感じました。それからそれらの魚がシク
があるのは良いことだと思いました。
進化学会では、進化という共通のテーマに対して
様々なアプローチの研究があり、自分の専門分野ば
で出会った人たちに面白いと言ってもらえるような
研究ができるように精進していきたい。
かりで、つい狭くなりがちだった研究に対する視野
を広げてくれる良い機会となりました。今回の大会
での経験を、今後の研究を進めていく上で糧にして
■ 土岐 和多瑠(東京大学大学院
農学生命科学研究科)
私は実家が横浜の八景島の近くにあり、ここで少
リッド(たぶんマラウイ湖産)であることを知り、
年時代を過ごしました。実家の近くには石の多い海
色よりも口内保育などの生態に興味を持ち、値段が
岸や砂浜があり、また米軍のタンクがあったために
安かったこともあって飼育を始めました。実際に飼
山の自然が開発されずに残っており、海と山で生き
ってみると気が強く、水槽の周囲や人をよく見てい
東京での開催ということもあって、これを機に入
物を採っては遊んでいました。何でも飼うのが好き
る好奇心の強い魚だったので気に入ってさらに数を
会しました。以前より進化学会の多様性の高さは聞
で昆虫やクモ、ヤモリから、流れ藻についているオ
増やしました。しかし、このときは将来研究する対
くところだったのですが、実際に参加してみてなる
ヤビッチャなどの魚を水槽で飼っていました。関東
象になるとは夢にも思っていませんでした。研究対
ほどと感じました。興味があるかどうかはともかく
では珍しいマツダイなども流れ藻からすくい採って
象にする機会は大学の学部4 年のときに訪れました。
として、実に様々な「進化」が論じられており、あ
飼っており、その生態の面白さを覚えています。そ
この頃、大学院進学を希望し研究室選びをしていま
まり多くの講演を聞くことはできませんでしたが、
んなある日、テレビの偉人を紹介する番組で
生物
した。進化の研究を行うことができる研究室は限ら
って、進化学会とは最も心躍る学会である。今回の
自分の狭い視野を多少なりとも広げることができた
学者
という職業を知りました。そのとき「毎日生
れていましたが、幸い近くにあった東京工業大学の
学会では、多くの発表が非常に面白く感じられた半
のではないかと思います。高校生による発表もあっ
き物と遊んでいる職業があるんだ。生物学者になり
岡田典弘教授の研究室を見学に行きました。一通り
面、自分の今のテーマがはたして生命の進化を解明
て、自分が高校生の時にこのような機会があったら
たい!」と、心から思いました。大学に入った頃は
分子進化や反復配列のSINE を用いた系統解析につ
ととてもうらやましく感じました。
生物学、考古学、古生物学に興味があり、そのどれ
いて説明を受けた後、
「こんなに面白い魚がいてこ
かを学びたいと考えていました(化学科でしたが)
。
れから研究をしてみようと思っているんだよ。まだ
いこうと思います。
■ 石川 由希(北海道大学大学院
環境科学院)
進化学会は2006 年大会に続いて2 回目の参加であ
った。進化に対する興味から研究者を志した私にと
する一端を担うことが出来るのかと考え込んでしま
った。初心に返るという意味でこれからも定期的に
自分の興味は生物の適応進化(これまた意味の広
54
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
55
やる人がいないから、うちに来てやってみない?」
のマックスプランク研究所との共同研究を行ってい
認められるのはそれほど簡単ではありませんでした。
しかし、これらの問題はどれも自分の専門分野では
と図鑑を見せられました。それがタンガニイカ湖の
ました。そのため、ドイツの研究所に滞在して実験
この当時(数年前のことですが)
、ヴィクトリア湖
ないので壁は高く、研究の進め方には困りました。
シクリッドでした。そのときすでにタンガニイカ湖
を行うことが何度もありました。研究所はチュービ
のシクリッドの種間の遺伝的多様性はヒト集団のそ
1)、3) の2 つの点のどちらも生態学的な研究が必須
産のシクリッドは湖の中でたくさんの種に分化した
ンゲンというドイツ南部の街にあり、この街は中世
れよりも小さく、種間の塩基置換はほとんど存在し
でしたので、当初自分で生態学的な研究をすること
ことだけは知っていたので「この魚を用いて生物進
の町並みが残るきれいで静かなところでした。研究
ないということが通説となっていました。そのため
を考えていましたが、このとき幸運にも Ole See-
化の研究をしたい」と思い岡田研究室に進学をしま
所では、下手な英会話、実験室の習慣の違い、実験
LWS 遺伝子の結果を協同研究者などに知らせても
hausen 博 士 と知 り合 うことができました。 See-
した。この後修士課程 2 年間と博士課程 3 年間は
に使う水質の違い、1 時間を超える英語での発表な
「そんなに変異があるはずがない」と半信半疑で、
hausen 博士は自分と同じようにシクリッドの種分
SINE 法を用いたシクリッドの系統関係の解析の研
ど大変なことも多かったですが、毎日ゲストハウス
重複した遺伝子のパラログを検出しただけではない
化に強く興味を持ち、生態学の面から研究を進めて
究を行い、共同研究を行っていた西田睦教授と佐藤
で自炊をしながら充実した研究生活ができました。
かと疑問視されていました。そこで様々な角度から
いました。博士とは初めて会った時から気が合い、
哲教授からシクリッドについて多くのことを教えて
当時所長であったJan Klein 教授から教えていただ
実験を行いLWS 遺伝子が単一であり、ヴィクトリ
シンポシウムが終わってからホテルのロビーで4 時
頂きました。
いた「主張したいこと以外の可能性がなくなるまで
ア湖産シクリッドで自然選択により多様化し、種の
間以上話し合っていたことを覚えています。See-
SINE 法の系統解析はスクリーニング、シークエ
データを出す」という考えは、系統解析しか行った
分化と形成に関与してきたということを示しまし
hausen 博士と共同研究を行うことにより、分子と
ンシング、PCR の繰り返しですが、根気よく実験を
ことのなかった私には厳しいことでしたが納得でき
た。しかし、LWS 遺伝子の種分化における役割と
生態の両面から種の分化と形成を研究することが可
続けることによって徐々にシクリッドの系統関係の
ることでもあり、現在でも心がけて研究を行ってい
自然選択に関しては可能性を示すにとどまり、課題
能となりました。2) の自然選択については自分な
全体像が明らかになってきました。研究を続けなが
ます。また、同じく共同研究を行っていた高畑尚之
として残りました。
りに考え、LWS 遺伝子の周辺領域を解析に用いる
ら「シクリッドでは適応と生殖的隔離はどちらが先
教授に集団遺伝学について多くのことを教えていた
に起こるのだろう?」とか「どうしたら種の分化や
だき研究を進めることができました。
このときまで順調に結果を出してきたように思え
ことを思いつきました。その後、舘田英典教授に集
ますが最大の問題点が残っていました。それは「論
団遺伝学的解析を丁寧に御指導いただき、自然選択
形成が起こる機構を研究できるのだろう?」などと
シクリッドの系統関係の推定で博士論文発表会を
文を投稿してもリジェクトされる」ということでし
がLWS 遺伝子領域に働いてきたことを示すことが
考えていましたが、それらのことを研究するための
終えた2 日後、いよいよ「種の分化と形成に関与し
た。論文作成の経験が足りないこともあり、投稿し
できました。4) のLWS 遺伝子の機能に関しては光
よい考えは思いつきませんでした。転機となったの
た遺伝子の単離」の挑戦を始めました。
「種内で固
ても投稿してもリジェクトで「リジェクト王」を自
受容体が専門の七田芳則教授、今井啓雄准教授に
はヴィクトリア湖産シクリッドの系統解析でした。
定した遺伝的変異が本当にあるのか?」
「失敗した
称するほどでした。そこで当時(現在も)論文をバ
御指導いただき、視物質の吸収波長の測定に成功し
タンガニイカ湖や河川のシクリッドではSINE の挿
ら研究者としてやっていけないだろう」と不安が募
ンバン雑誌に掲載していた二階堂雅人博士と自分を
ました。また河村正二准教授からのベクターの提供
入や塩基置換などの種内多型は種内にのみ見られる
りましたが、どうにか好奇心が勝りました。また、
比べて、何が足りないかなどを考えていました(論
と適切なアドバイスをいただいたことも成功に繋が
現象ですが、ヴィクトリア湖産シクリッドでは1 つ
このように結果が出そうになく突拍子もない研究計
文作成技術の稚拙さはもちろんですが)
。レフリー
ったと思います。このようにして、生態、集団遺伝
の種の種内多型が他の種でも同様に多型で見られま
画を行うことを快く承認してくださった岡田教授が
のリジェクト理由なども考え合わせ、行き着いた答
学、分子生物学の視点から研究を行い、なだらかな
した。つまり、種内多型が種内ばかりでなくほとん
いらしたからこそ遂行可能な研究でした。研究を始
えの1 つが「自分の研究、もしくはその研究分野が
光環境の変化に視覚が適応し、次いで適応した視覚
どの種の間でも保持されていたのです。このように
めて改めて気づいたことは、自分が系統解析で用い
新しくて認知度が低く理解されていない」というこ
に感度よく受容される色にオスの婚姻色が進化し種
種間が非常に近縁な場合、核遺伝子座でもミトコン
るPCR とシークエンシングしか技術がなく、知識も
とでした。そこで積極的に国内外の学会で口頭発表
分化が起きてきたということが明らかになってきま
ドリアDNA で系統樹を構築しても種が単系統とな
ないということでした。そこで文献を調べてはシク
を行い多くの人に面白さを説明するように心がけま
した。
ることはなく、種間の関係が1 つの種内の遺伝的差
リッドの種特異的な形質に関係のありそうな遺伝子
した。また共著者の書く文章やコメント、レフリー
これまでの自分の研究を振り返ると、自分は単に
異を検出しているような結果となってします。この
の候補を見つけ、その相同遺伝子をシクリッドから
の返答などから論文の作成方法を学んでいきまし
生き物に魅せられて好奇心で研究を進めただけであ
結果を初めて見たときは「いったい、なんだこれ
単離し、種間で比較することを繰り返し行っていま
た。特に分野が異なる論文は参考となり、発生学の
り、ほとんどのことは多くの方々に教わり、支援を
は?」と思いました。そしてそれまでの方法での系
した。そのような研究を続け、シクリッドの適応放
分野の川上浩一教授と共著したときは大変勉強にな
いただいて行うことができたと思います。一緒に研
統解析はヴィクトリア湖産シクリッドでは不可能と
散と関連のある遺伝子をいくつか見つけることがで
りました。このような論文作製法の習得と責任著者
究をしてくださった皆様にはとても感謝しており、
なり、研究は壁に突き当たりました。しかし、種内
きました。そして光受容体のタンパク質成分の遺伝
の岡田教授の努力により、徐々に論文が雑誌に掲載
この場を借りてお礼申し上げます。自分の研究は、
多型が種間で保持されているという現象が不思議で
子であるオプシン遺伝子の配列を決定していると
されるようになりました。
まだシクリッドの少数の種で種の分化と形成の機構
「何故そのようなことが起こってきたのだろう?」
き、ヴィクトリア湖のシクリッドの種間で長波長領
LWS 遺伝子が種の分化と形成に関わってきたこ
の一端を示すことができただけで、スタート地点に
ということを考え続けていました。そして行き着い
域(黄色〜赤色)に吸収帯を持つLWS 遺伝子の配
とが明らかになったことにより、ようやく研究の目
いるような状況です。まだまだ多くの魅惑の生き物
た考えが「種の分化や形成に関わった遺伝的変異は
列に数多くの塩基置換があることを見いだしまし
標の「生物進化の機構を明らかにする」ことに着手
が研究対象にいて多様に研究を進めていきたいと考
種内に固定していて種特異性を示すのではないか」
た。しかもその塩基置換のほとんどが非同義置換だ
することができるようになりました。この研究を行
えていますので、これからも皆様にいろいろ教えて
ということでした。さらに「種内に固定している変
ったのがさらなる驚きでした。そこで最も塩基置換
うために明らかにしなければならない重要な点は4
いただけましたら幸いです。
異を見いだすことにより、種の分化や形成に関わっ
の多いexon 4 の配列を各種 10 個体ずつから決定し
点あり、1) LWS 遺伝子がどのような生態的要因に
た遺伝子を特定できるのでは?」という考えに至
たところ、当初の予想に当てはまるような種間で配
適応してきたか、2) LWS 遺伝子が自然選択により
連絡先:
り、いつか種の分化と形成に関与した遺伝子を単離
列が異なり種内に固定している遺伝子であることが
適応的に分化して種内に固定してきたこと、3) LWS
寺井 洋平
したいと思うようになりました。
明らかになりました。予想通りの結果を出すことが
遺伝子と生殖的隔離との関係、4) LWS 遺伝子の違
東京工業大学 生命理工学研究科 生体システム専攻
できて大成功のように思えると思いますが、結果が
いによる光受容体の機能の違い、だと考えました。
Email : [email protected]
ヴィクトリア湖産シクリッドの系統解析はドイツ
56
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
57
的に進んでいたのではないかと残念にも思いました
が群れ内同性個体間でどのように分布するか)には
のだとしたならば、なぜそのような制約が存在する
が、紆余曲折によって、さまざまな隣接分野を知る
大きな種間差がみられ、多様な社会性を形成する主
のか。これらの疑問は、異なる動物を研究してきた
ことができたよかったと今では思っています。
要因と考えられています。私は、霊長目 31 種にお
からこそ、自分のなかにリアルな存在として現れた
けるオス間の繁殖の偏りを系統比較法によりメタ分
ものであり、従来の行動生態学、進化生態学は、こ
析し、繁殖の偏りを生み出す進化生物学的要因と、
れらの疑問に満足にいく回答を提供できないもので
簡単に要約すると、私の研究テーマは社会性の進
繁殖の偏りが社会行動の多様性にもたらす結果につ
す。社会性の進化に関して、より進化・系統を踏ま
先導科学研究科・
化に関する行動生態学、進化生態学です。社会性と
いて明らかにしました。この研究は、ひとつの分類
えた包括的な理解が必要であると感じると同時に、
生命共生体進化学専攻)
いっても、社会行動、社会構造、社会関係、
(広義
群を対象に、社会的多様性を決定する要因を示した
もっと多様な種における詳細な実証的研究が不可欠
には)繁殖行動を含む広範囲にわたる研究テーマと
世界で初めての研究となります。
であると感じます。
多様性と共通性
統合される進化生物学
研究の概要
沓掛 展之
(総合研究大学院大学・
いえるでしょう。
具体的には、以下の三つにまとめられます。
社会生活のコスト
記念すべき第 10 回大会において、研究奨励賞と
いう名誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。
このような賞をいただくことができたのも、現在ま
でに多くの先生方にご指導いただきました結果であ
り、また、多くの幸運に恵まれたおかげであると思
います。今年(2008 年)は、日本生態学会の宮地
賞と日本霊長類学会の高島賞をあわせて、一年間に
三つの学会賞をいただきました。研究者としては、
いまだ若葉印を外すことができない身であると思っ
ており、このような過分な評価に戸惑いと責任感を
感じております。ここでは、手短にではあります
が、私のこれまでの研究成果と雑感について述べさ
せていただきたいと思います。
研究の原点
理由は定かではないのですが、私は物心がついた
ころからの動物好きで、子供のころから漠然と、動
物に関係する職業につきたいと考えてきました。学
問的に動物の行動や生態を知りたいと志し、東京大
に入学したのですが、マクロ生物学の授業がほとん
どなくて、退屈に感じたことを覚えています。後期
課程の進路を探す際、マクロ生物学ができそうな理
学部生物学科人類学教室に進学をすることになり、
その結果、自然人類学を専攻することになったのは
予想外な出来事でした。大学院では、より専門に近
い研究室に移ることを考え、東京大・総合文化研究
科の(さらに予想外である)心理学専攻に進学し、
長野のニホンザルとタンザニアのチンパンジーの野
外研究で博士号をいただきました。ポスドクでは、
食肉目や齧歯目の研究を開始しましたが、またまた
予想すらしなかった遺伝学と脳科学の研究室を渡り
歩くことになりました。同業者に囲まれて研究する
環境が整っていたとしたら、現在よりも研究が効率
この原稿を書いている時点で、研究を始めてちょ
現在の状況についても少し述べさせていただきた
社会生活の代表的なコストとして、個体間の対立
うど 11 年が経ちました。小さいころ、図鑑やテレ
いと思います。現在は、神奈川県葉山にあります総
やその結果生じるストレスがあげられます。協同繁
ビを通じて見るだけの存在であった珍獣奇獣を、自
合研究大学院大学・先導科学研究科・生命共生体
殖するミーアキャットを対象とした研究では、血縁
分自身で研究をすることができ、贅沢な時間を過ご
進化学専攻において、長谷川眞理子教授とともに、
個体間に繁殖をめぐる対立が存在し、この対立が、
していると満足しています。しかし、自分の研究を
行動生態学・進化生態学の研究・教育を行っていま
優位個体から劣位個体への攻撃行動の生起、群れか
省みると、研究者としての自分の長所は何なのだろ
す。同専攻には進化生物学に関するさまざまなラボ
らの追放、ひいては劣位個体の繁殖抑制・阻害を引
うか? 自分の研究のオリジナリティーは何なのだ
があり、私自身も諸先生方に教わりながら研究者と
き起こし、劣位個体の適応度に負の影響を与えるこ
ろうか? と自問してしまうことがあります。上記
して成長していける場であると感じています。教育
とが分かりました。過去の研究では協同繁殖社会の
のように、私の研究は「社会性」という用語でかろ
に関しては、ラボができてまだ日が浅いので、試行
協力的側面のみが強調されてきましたが、私の一連
うじてつながっているものの、ひとつのテーマを徹
錯誤をしながら体制を整えている最中ではあります
の研究は協同繁殖社会における競争の存在を明示化
底的に掘り下げるということはできていません。ま
が、現在、院生が次々と集まってきており、喜ばし
した研究といえます。
た、研究対象も現在までに、ニホンザルに始まり、
いことに活発なラボになりつつあります。自分自身
また、霊長目(ニホンザル、チンパンジー、ヒト
チンパンジー、クロシロコロブス、幼児、ミーアキ
が刺激的な環境にいることによって成長することが
幼児)を対象とした研究では、行動学的指標によっ
ャット、ハダカデバネズミまで、じつに転々として
できた人間なので(たとえば、沓掛 2004)
、今度は
て個体のストレスレベルを定量化することに成功し、
きました。このように「浮気性」な研究スタイルを
自分がそのような環境を構築していきたいと考えて
個体のストレスレベルが社会行動を決定する至近要
採用していると、個別の種や研究テーマに関する理
います。
因であることを明らかにしました。
解が浅くなってしまいます。しかし、分類群を超え
対立解決行動の進化
総研大において、進化生物学における他分野の研
てさまざまな種を研究することによって、多様性と
究者と交流していると、進化生物学において「統合
動物が群れ生活を維持するためには、社会生活の
共通性の対比をすることの重要性を実感できたこと
進化生態学 consilient evolutionary ecology」 とで
結果生じるコストに対処する必要があります。対立
は大きな収穫であると思っています。たとえば、利
もいうべき、巨大な共通言語・学問分野が現れつつ
状態にある個体間の対立を低減させる行動は「対立
他的な社会を形成するといわれている、見かけが可
あるのではないかと、漠然ながら感じることがあり
解決行動」と呼ばれ、仲直り行動(攻撃直後の攻
愛らしいミーアキャットやハダカデバネズミ(気持
ます。Consilient とはE. O. Wilson が広めた「知識
撃個体と被攻撃個体間の親和行動)や挨拶行動(儀
ち悪いという人も多いでしょうが)であっても、個
の統合」という意味の Consilience の派生語です。
式化された親和行動)がその代表例にあげられま
体識別をして、じっくりと目を凝らして長時間観察
進化生物学という枠組みの中には、対立軸で言う
す。私の研究は、これらの行動に個体間の対立を低
してみると、それぞれの種独自の行動文法が理解で
と、マクロレベルとミクロレベル、生態的時間スケ
減させる機能が存在することを霊長目(ニホンザ
きるようになり、利己的な行動戦略を発見すること
ールと進化的時間スケール、至近と究極、実証と理
ル、チンパンジー、ヒト幼児、クロシロコロブス)に
ができます。このような行動戦略はどの動物にも共
論、ゲノムと表現型などがあるわけですが、近年の
おいて示しました。一方、ミーアキャット社会におい
通したものであり、研究対象種を理解する手がかり
情報伝達の速さと多様なツールの利用可能化に伴
ては、これらの対立解決行動が存在せず、対立状態
を見つけた気分になります。一方で、多彩な動物を
い、これらの対立軸を飛び越えた融合・コミュニケ
の緩和が存在しないという種間差を報告しました。
研究していると、社会性に関する幅広い種間差を自
ーション・共同研究が急速に進んでいるように感じ
多様な社会構造の進化
分の目で実感することができます。種間差を生み出
ます。このことは、進化学会の内容や参加者が、他
動物において、社会構造や社会行動に多様な種間
している種特異的な形質が(至近的にも究極的に
のマクロ生物学系の学会と大きく重複していること
差、種内差がみられます。行動生態学、進化生態学
も)なぜ存在するのか、社会性にみられる種間差は
からも察することができるでしょう。
において、これらの多様性を統一的に理解する試み
なんらかの適応の結果なのか、それともなんらかの
このような時代のなか、動物の行動・生態を観察
は始まったばかりですが、
「繁殖の偏り」
(繁殖成功
制約が働いた結果なのか、もしも制約が働いている
し、適応や自然淘汰といった進化生物学的現象の理
58
日本進化学会ニュース Nov. 2008
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
59
解を進めるという作業は、どちらかというと伝統的
規則性に大きな感銘を受けたのです。実際には研究
editing で有名なMike Gray の研究室があるという、
の連続だったことを覚えています。忙しい中でも大
なアプローチに位置づけられると思います。伝統的
生活では楽しいことばかりではなく就職を考えたこ
あらゆる意味で大変刺激的な場所でした。そのころ
島一彦さん、南部貴之さん(現大阪歯科大)
、飯田
ということは重要性が認識されつつも、声を小さく
ともありますが、指導してくださった大澤省三・堀
真核生物進化学の分野では、微胞子虫類の系統的
慶さん(現 UC Irvine)などと共同研究に恵まれま
してしまうとその重要性が見過ごされてしまいがち
寛両先生、別所義隆博士(現理研・GSC)のおか
位置に関する論争、原始的真核生物であると推測さ
した。また、海洋研究開発機構の瀧下清貴くん、京
な分野ともいえます。今後は、統合的な進化生物学
げでドロップアウトせず、学位をいただくことがで
れていたミトコンドリアを持たない原生生物(ラン
都大学農学部・神川龍馬くん、その指導教官である
的観点を行動・生態研究に積極的に取り入れ、社会
きました。当時の大澤先生の一連の研究の根底に流
ブル鞭毛虫類など)からの核コードミトコンドリア
左子芳彦先生と共同研究をする機会に恵まれ、研究
性の進化に関する理解を進めていきたいと思ってい
れていた思想は、例外的キャラクターをもつ生物を
遺伝子の発見、真核生物成立に関わる水素仮説の
の幅が大きく広がったことは大変感謝しております。
ます。
研究することにより生命現象の本質へ迫るというも
発表など、最近の真核生物進化を語るうえで避けて
2005 年8 月に筑波大学に転出しました。筑波大学
最後になりましたが、現在までにお世話になりま
のだったと理解しています。この基本姿勢は一貫し
通れないトピックがつぎつぎと起こり、その論争の
には橋本哲男先生、井上勲先生、中山剛先生、石
した諸先生方、とくに長谷川寿一、西田利貞、石
て私のこれまでの研究の基礎となっていると実感す
過程をつぶさに(ある時は論争当事者同士のE メー
田健一郎先生など、単細胞真核生物の研究者が集
田貴文、Tim Clutton-Brock、岡ノ谷一夫、長谷川
る今日この頃です。
ルまでも)体験することができたのは幸運でした。
結しており、このグループ内での真核生物系統に関
する共同研究はこれから大きな発展をしていくと思
眞理子(すべて敬称略)
、共同研究者の皆様、その
他の多くの方々に感謝申し上げます。
・沓掛展之 2004 広きバトルフィールドを求めて:
ケンブリッジ抜書
動物行動学会ニューズレター
45 : 13-20.
稲垣 祐司
(筑波大学)
学位取得後、大浜武先生(現高知工科大)のも
Ford のもとでは主に真核生物における翻訳終結因
とJT 生命誌研究館にて奨励研究員としてお世話に
子の進化に関する論文を発表しました。海外特別研
います。また橋本先生と私は筑波大学計算科学研究
なりました(1996-1998)
。当時真核光合成生物(所謂
究員任期が切れる際、恐る恐る「まだここで仕事し
センター・地球生物環境研究部門に属し、システム
藻類)のmt ゲノム(遺伝子)の解析はそれほど行
たいんだけど…」と Ford に尋ねたところ、あっさ
情報研究科のスタッフと共同研究を行っています。
われていなかったため、変異暗号の探索を行ってい
り「好きなだけいればいいよ」といわれ、結局合計
当研究センターはPACS-CS ・ T2K Tsukuba という
ました。一連の研究結果の特筆すべき点は、進化的
6 年間をDalhousie 大学で過ごすことになりました。
2 台のスパコンを運用しており、その計算資源を用
に独立した系統において同一の変異暗号が起きてい
Dalhousie 大 学 時 代 の後 半 は、 新 たに着 任 した
いた各種科学分野の大規模計算が可能です。現在
ること分かったことです。例えば、
(標準暗号で翻
Andrew Roger と主に研究を進めました。Andrew は
我々はこれらのマシンを使用し方法論的研究を推し
訳終結シグナルである)TGA コドンがトリプトファ
Ford の学生で、ウッズホール・ Marine Biological
進めており、近日中に興味深い結果を発表できると
ン指定に変化したmt 暗号は、明らかに真核生物の
Laboratory でのポスドクを終え、2000 年に准教授と
思います。
進化上で複数回発生しています。このようなmt 遺
してダルハウジー大学に着任したのです。とくに
これまで駆け足でこれまでの私の研究経歴を遡行
伝暗号進化を正確に推測するためには、真核生物種
Ford と仲違いしたわけでなく、当時バクテリアにお
して来ましたが、重要なのは未来です。今回いただ
間の正確な系統関係を知る必要があり、この頃から
ける遺伝子水平移動やゲノム進化に興味の関心が移
いた研究奨励賞を励みに、一層研究・教育に邁進し
分子系統解析の世界に足を踏み入れました。当時生
ったFord より、Andrew の興味が私の興味と極めて
ていくことをお約束させていただきます。
命誌研究館には、中村桂子先生、大澤先生、岡田
近かったこと、2 つの研究室はラボスペースを共有
節人先生などがいらっしゃり、研究以外にも大変楽
し、Andrew とFord とはまさに「共生関係」にあっ
しいお話をいろいろ伺いました。公共施設は全館禁
たため、自然な研究室の移動が可能でした。Andrew
煙というのは最近ではごく当たり前ですが、生命誌
のもとには、私のほかに Christian Blouin(現 Dal-
研究館は当然禁煙などではなく、ヘビースモーカー
housie 大 )、 Alastair Simpson( 現 Dalhousie 大 )、
今回、進化学会の皆様に研究奨励賞に選んでいた
の岡田・大澤両先生はお茶飲み場で紫煙を漂わせて
Jeff Silberman( 現 Arkansas 大 )、 Jan Andersson
だき誠に光栄に思います。現在、私は分子系統学を
いたことを思い出します。奨励研究員の任期は2 年
(現 Uppsala 大)などの国際色豊かなポスドクがひ
中心に研究を行っています。この分野では、核酸・
間でしたが、幸い学術振興会海外特別研究員に採用
しめき、主に真核生物系統に関する極めて活発な研
アミノ酸配列がどのような進化経路を経て現在の姿
され、1998 年の4 月にカナダ東海岸のハリファック
究が行われていました。今回の研究奨励賞受賞に結
に至ったかを推測することが研究の根幹をなしま
スにあるDalhousie 大学・ W. Ford Doolittle 研究室
びついたEF-1 αをモデルとした研究は、この時期に
す。今回このニュースレターに原稿を書く機会をい
に旅立ちました。
Andrew やChristian と行ったものも含まれます。ま
ただいたので、これまでの自分の研究がどのように
1998 年 3 月に結婚、バタバタと 4 月に2 人でハリ
た、Andrew が主導し Dalhousie 大・統計数学科の
2008 年現在に至ったか、
「遡行」していきたいと思
ファックスに出発しました。4 月の日本は桜が満開
Ed Susko、Chris Field らとのコラボレーションによ
います。
で暑いくらいでしたが、深夜に到着したハリファッ
る、系統解析の方法論に関する研究も始まりました。
中井 咲織
(立命館宇治中学校・
高等学校
[email protected])
学部4 年生から学位取得まで、一貫して名古屋大
クスは吹雪だったことを覚えています。借りたアパ
「カナダの移民になろうかな?」と考え始めた矢
学理学部生物学科にて真正細菌類マイコプラズマを
ートには家具などなく、最初の数週間は段ボールの
先、長浜バイオ大学に職を得ることができました。
理論など、さまざまな事象を小学生や中学生にもわ
もちいた遺伝暗号の進化を研究しておりました。所
上で食事をしていたことは懐かしい思い出です。当
6 年間のカナダ生活に終止符を打ち、2004 年 3 月末
かるように教えること、すなわち「知のユニバーサ
属する研究室を決定した大きな理由は、高校時代の
時の Doolittle 研には、Sandra Baldauf(現 Uppsala
に帰国、4 月から滋賀県長浜市の長浜バイオ大学に
ルデザイン」を目指して教育活動を行っている。そ
生物の教科書で遺伝暗号表を学んだことが影響を与
大 )、 Arlin Stoltzfus( 現 NIST)、 John Logsdon
講師として着任しました。実際のところ長浜には1
の一環として、進化のプロセスやメカニズムをわか
えたと思います。3 つのヌクレオチドの組み合わせ
(現 Iowa 大)などハイインパクトジャーナルに発表
年 4 ヶ月勤務したのですが、初めての授業や実習な
りやすく教える授業の開発やその普及活動をしてい
で20 種のアミノ酸と終結シグナルを指定するという
された論文の著者が多数在籍しており、隣にはRNA
どほとんどのことが初めての経験で、とにかく緊張
る。これらの活動を思いたったのには、2 つのきっ
中高の教員になって以来、最先端の科学や難しい
60
日本進化学会ニュース Nov. 2008
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Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
に、ウイルス進化論の存在はその前年に進化を教え
べき程度の進化なんてとても単純で、多分それは小
1 つめは、教諭として初めて採用になった学校で
た中学生に初めて教えてもらった:最近はこれらは
学生にも短時間で理解させることができるくらいの
の出来事である。先輩教諭から、学生時代何を研究
なりをひそめ、代わりにインテリジェントデザイン
ものなのに。
」と思ったのだが、私にはそれを主張
していたかと聞かれたので、
「貝化石やウニを使っ
が台頭しているようだ)
。そのうえ、その当時絶滅
するほどの根拠がなかったので、その場では発言す
て進化を研究してました。
」と答えると、驚きの答
寸前だったサイアス(旧科学朝日)には、池田清彦
ることができなかった。
えが返ってきた。
氏や養老孟司氏、金子隆一氏らのダーウィニズムを
しかしちょうどその頃、「サイエンスフォーラ
ることも多く、ここから生じている誤解も少なくな
かけがある。
このときのプレゼンテーションの一部をご紹介し
よう。
進化を理解するためには、まず「進化とは何か」
ということをはっきりさせる必要がある。一般には
「進化」という語が生物進化以外の場面で用いられ
否定する文章が頻繁に掲載されていたのである。こ
ム・科学の鉄人」という、小学生を前に15 分のサ
いからである。ポケモンの進化は実際には変態であ
ほら、その証拠に、進化学会ってないでしょ?(こ
んな状態では、熱心に勉強しようとする生物教員ほ
イエンスショーを行ってその腕前を競うというイベ
ることや、産まれてから起こった変化は遺伝しない
の会話は進化学会ができる1 年前のできごと。)進
ど、何が何やらわからなくなって進化の正しい理解
ントの開催が始まった。そこで、これに応募して、
ので進化ではないことをここで明言する(図 1)
。
化っていうのは仮説に過ぎないんだよ。どの学説が
に程遠い状態になっていても、何ら不思議ではない
進化のプロセスやメカニズムの重要な部分は小学生
それでは、進化とは何か。それは、
「祖先とはち
正しいのかわかってないんだから。それに、タイム
のである。生物教員がこうでは、生徒たちに進化を
相手でもたった15 分で理解できることを証明して見
がう子孫ができること」である。進化というと、ゾ
マシンでもない限りは証明できないでしょ?証明で
正しく教えることなど望むべくもない。
せようと思い立ったのである。私は「進化って何?
ウの進化など永い時間がかかるものと思われている
どうやって起こるの?」と題したプレゼンテーショ
が、寿命が短い生物では、進化はあっという間に起
ンを作り、小学3 〜4 年生中心の子どもたちを前に、
こる。例えばインフルエンザは1 年で新しいタイプ
「中井さん、進化っていうのは科学じゃないんだ。
きないものは科学じゃないんだよ。
」
この先輩教員の名誉のために付け加えると、彼は
ちょうどその頃、学習指導要領の改訂があり、中
学から進化が消えたり、高校でも進化は学ぶ者が非
1)
に進化する(図 2)
。
不勉強な教員でもダメ教師でもなく、新しい知見を
常に少ない生物Ⅱの、生態分野との選択という立場
サイエンスショーを披露した 。すると、そこそこ
よく勉強されていて、新しい教材づくりにも積極的
に追いやられてしまい、ほとんどの生徒は進化を学
受けがよく、子ども審査で3 位に入賞することがで
じゃあ、進化はどうやって起こるのか。それは単
な、大変熱心な教員であった。そんな彼の口から、
ばないで大人になることが決定した。それに対し
きた。これで、自信を持って他の生物教員に、
「進
純。突然変異と自然選択で起こる。突然変異によっ
進化は科学でないという言葉が出てしまうのであ
て、学校教員などから文部科学省に対する大きな批
化のメカニズムの基本なんて、小学生でもわかる程
て、様々な変異が生じる(図 3)。私たちの顔かた
る。尋常ではない。
判があがっていた。しかし、私は前述のことから、
度の簡単でシンプルなものなんですよ」と言えるよ
ちがみんなちがっているのも、すべて、祖先の誰か
別に進化が教えられなくなったのは今に始まったこ
うになった。
に起こった突然変異に由来している。そして、自然
しかし、そうなってもしかたない理由はいくつも
思い当たっていた。まず、ほとんどの理科教員は、
とではなく、文部科学省がこのような決定を下した
進化をきちんと学んだことがない。生物専門の教員
ことはとても自然なことだと感じていた。つまり、
ですら、大学で進化を学ぶ機会はその当時ほとんど
教員が進化をよくわかっていないので教えられず、
なかった(そして恐らく今も多かれ少なかれその状
教えてもらっていないからその子が大きくなって教
況は続いている可能性がある)
。したがって、進化
師になっても教えられず、またその子が教師になっ
を学ぶ機会は中学や高校での理科の授業に限られ
て…という悪い方向へのポジティブフィードバック
る。ところが、中学での進化の学びは、昔から進化
がかかっているのだ、と。この負のループを断ち切
の証拠や進化学説を羅列するのみで、たいていは
るには、まず生物教員に進化を正しく理解してもら
「進化のしくみはまだわかっていない」と締めくく
うことが最も有効な方法であると考えた。そこで、
られていて、生物の進化がどのように起こるのかを
生物教員に進化の基本を理解してもらうために、教
適切に理解できる内容ではなかった。それでは高校
で進化を勉強できるかというと、受験にほとんど出
ない進化の授業は飛ばされる傾向にあるので、進化
員にとって一番自信がなく、かつ一番おもしろい、
「進化がどうやって起こるのか」がわかる授業をつ
くろう、と考えたのである。
の正しい理解にはほど遠い。特に、1960 年代〜 80
きっかけの2 つ目は、進化学会第 5 回福岡大会で
年代に青春を過ごした人々にとって、その当時、ネ
初めて開かれた「進化学夏の学校」でのことであ
オラマルキズム・今西進化論などを支持する研究者
る。そのときの「進化学夏の学校」には多くの生物
がいたり、ネオダーウィニズムや中立説が対立的に
教員が参加し、進化の考え方の基本が根拠や実際の
捉えられたりしていた時期もあることから、進化論
現象とともに丁寧にレクチャーされたのだが、最後
は渾沌としているという印象をより引きずっている
の質疑応答で、ある高校生物教員から次のような意
ことだろう。さらに不幸なことに、最新の進化の知
見が出た。
見を勉強しようと書店の生物学書コーナーに行って
「丸一日お話を聞いて進化のことがよくわかった
も、
「ダーウィン進化論は間違っている!」
「自然選
が、その半面、進化はとても難しくて高校生に教え
択では進化を説明できない!」などの帯が躍る啓蒙
られないと感じた。もし教えるとしても、何時間も
書のオンパレードで、まともな進化本よりも「ウイ
かかってしまい、そんなに時間を割くこともできな
ルス進化論」や「重力進化論」などの、論文すらな
い。
」
い学説の本の方がずっと目立つのである(ちなみ
私はそれを聞いて、
「いやいや、高校生が理解す
図1
図2
図3
図4
62
日本進化学会ニュース Nov. 2008
63
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
選択によって、環境に不利な性質を持つものが取り
ない」ということである(図7)
。なぜなら、地球の
ある。これが全くの誤解であることを明言し、実際
くのは初めてのことで、受賞の記事を学校の学外用
除かれる。この作用によって、環境にあう性質のも
環境が将来どうなるかなんて、10 年先のことすら予
には全く逆で、進化は学べば学ぶほど多様性の重要
HP にひっそり載せてもらったところ、意外にもた
のが生き残る。これを適応といい、適応とは、まさ
測できないからだ。でも、1 つだけいえることは、
さを理解でき、各々の個性を認め合うことの理論的
くさんの生徒から「おめでとうございます」と言っ
に進化のことである(図 4)
。
ヒトは絶滅しやすい、ということである。なぜな
基礎となる学問なのだ、ということをわかってもら
てもらって、それなりに尊敬のまなざしを感じるよ
ここまで聞いても、
「いや、そんなに単純なしく
ら、変異が小さいから。(メダカ1 種の遺伝的変異
いたくて、あえて付け加えている。この話は基本的
うになり、賞の重さを実感しています。推薦してく
みでこんないろいろなかたちの生物に進化するなん
は3 %あるが、ヒトとチンパンジー間の遺伝的変異
に全くのオリジナルなので、公の場ではいつも少し
ださった嶋田正和さんをはじめ、皆様に感謝いたし
て信じられない!」という人もいるだろう。でも、
は1.2 %しかない。
)それではどうしたらいいか。み
不安を抱えながら披露していたのだが、科学の鉄人
ます。本当にありがとうございました。
ほんとに単純なんです。例えばイヌの品種。すべて
んなの友だちの中には、うるさい人やおとなしい人、
のときも保護者受けが大変よく、生物教員をはじめ
のイヌは、人間に都合のよいように人がオオカミか
頭がいい人や悪い人、スポーツのできる人やできな
とする他の方々からも「この話の中でこれが最も重
文献
ら進化させたものである。例えばダックスフントは、
い人、優しい人や意地悪な人など、いろいろな人が
要な部分だ」との声をいただいている。
1)中井咲織(2004)進化って何? どうやっておこるの?
アナグマを狩るために作られた犬である。ダックス
いる。いろいろな人がいるということは、どんなこ
このプレゼンテーションは小学生向けにつくった
フントを作るには、まず普通のイヌを用意する。そ
とが起きても、誰かが対応できるということである。
ものであるが、その最大の目的は、
「理科教員に進
れに子どもを作らせ、一番足が短いものを選んで交
互いの違いを認め合って、みんな仲良くするという
化を理解してもらうこと」である。進化というのは
配させることをくり返す(図5)
。このようにして、あ
ことは、道徳的にも、科学的にも正しいことなんで
かようにシンプルで機械的に進むものであるのだ、
らゆる品種はつくられている。ブルドッグは古代ロ
すよ!という話で締めている。この「みんないじめ
もう中等教育で教える程度のことはほとんど明らか
ーマ時代にはすでにいた品種だが、これはウシと戦
をやめて仲よくしよう」という話は、進化の学習と
になっているのだ、ということが中学教員や高校教
うために都合のよい形をいくつも持っている(図6)
。
は直接関係ない。しかし、
「進化論は優生学の基に
員に納得してもらえれば、自信を持って生物の授業
さて、私たちが一番知りたいのは、ヒトはこれか
なった理論で、そのような間違った考えを助長し、
で様々な生物現象に対して進化的な説明をしてもら
らどのように進化するのか、ということだが、その
ヒトラーのような人間を生み出す危険な学問であ
えるのではないか。そうすれば、負のループを断ち
答えはここまで勉強すればわかる。答えは「わから
る」という誤った解釈が昔の人ほど見られる傾向が
切ることができ、進化の理解が進む方向のポジティ
分かる進化のしくみ.日本進化学会2004 年大会 公開
ワークショップ「中学・高校でどのように進化を教
えるか?」口頭発表.
3)中井咲織(2005)変異と進化.理科授業づくり大会
ワークショップ 2005 口 頭 発 表 .
homepage.mac.
com/hohki/rika-ji-panf4.pdf
4)中井咲織(2006)進化基本の「き」:進化のメカニ
近畿ブロック進化学教育シンポジウム「進化をどう
やシンポジウムで発表したり
2 〜 5)
教 えるか」 口 頭 発 表 .
http://zoo2.zool.kyoto-
u.ac.jp/˜hirose/pdf/evolve.pdf
5)中井咲織(2007)小学生でもわかる『進化のしくみ』
、雑誌に文章を書
の授業.東京都生物教育研究会研修会 講演会・研究
いたり 6、7)、新しい学習指導要領に向けた進化の単
協議会「進化をどのように教えるか 2007 東京」口頭
元構成の提言 8)などをして、進化の新しい授業の提
発表.
案を行っている。同時に、進化生物学の研究者に進
6)中井咲織(2004)小学生でもすぐわかる進化の教え
化教育の重要性を理解していただけるよう、研究者
方―中等教育での発想転換に向けて―.遺伝2004 年
9)
に向けて進化教育の現状を示したり 、新しい進化
10)
教育の提案を発表する など、教育と研究の橋渡し
の役割も果たせればと考えている。先日行われた
「進化学プレシンポジウム2008」でも発表の機会を
いただき 11)、一般の方からマスコミ関係者まで多く
の反響をいただいた。
これらの活動によって、中学や高校の教科書が本
質的でおもしろい内容に変わってくれること、進化
の正しい理解が広く浸透することを期待している。
今後も、「No Evolution, No Biology.(ドブジャン
スキーの言葉を今風にアレンジしてみました)
」と、
世界の中心で小さく叫び続け、微力ながら進化生物
学の発展に寄与できればと考えている。
図8
html
2)中井咲織(2004)進化教育のエッセンス : 小学生にも
ズムとトンデモ進化理論について.日本生物教育会
生向けの授業を作った。これをもとに、教員研修会
図7
サイエンス
http://www.sci-fest.org/2004/stage2.
いる。
加えて、1 時間程度で楽しく進化が理解できる中高
図6
ショー発表
ブフィードバックが生まれるのではないかと考えて
このプレゼンテーションに遺伝的浮動などを付け
図5
サイエンスフォーラム2004 科学の鉄人
7 月号.
7)中井咲織(2006)教科書の「進化」単元に見られる
問題点と新しい進化授業の提案.月刊理科教室 2006
年 11 月号.
8)中井咲織(2005)科学リテラシー教育としての進化
教育―生物Ⅰに進化の単元を―.生物教育会第60 回
全国大会研究協議「高校生物の次期教育課程を考え
る」口頭発表.
9)中井咲織(2006)高校生物Ⅱ教科書の「進化のしく
み」勝手にランキング!
進化学会ニュース Vol.7
No.1.
10)中井咲織(2006)高校生物「進化」の問題点と生
物Ⅰ移行に向けた単元構成の提案.日本進化学会
2006 年大会ポスター発表.優良ポスター賞受賞.
最後になりましたが、このたびは日本進化学会教
11)中井咲織(2008)中等教育で進化をどう教えるか.
育啓蒙賞という栄誉ある賞をいただきまして、本当
ダーウイン生誕200 年記念プレ・シンポジウム2008 講
にありがとうございました。このような賞をいただ
演.
64
日本進化学会ニュース Nov. 2008
日本進化学会事務局活動報告(2007 年 9 月〜 2008 年 8 月)
2007 年
11 月 30 日
8月7日
進化ニュース Vol.8 No.2
発行
決算案・予算案ならびに会計監査(クバ
プロ)
、臨時執行部会
8 月 22 日
2008 年
1月 1日
2 月 15 日
〜 8 月 24 日 年次大会開催(東京大学)
長谷川眞理子会長の就任.
新執行部の活動開始
その他
生物科学学会連合第 18 回連絡会議に
・学会ウェブサイトならびにメーリングリストの運
出席(東京大学山上会館)
2 月 26 日
新評議員メーリングリストの開設
3月 1日
女子高校生夏の学校(仮名)準備委員
会に出席(オブザーバー)
4 月 25 日
内閣府主催・第 2 回みどりの式典に参
加(憲政記念館)
5月7日
第 7 回日本進化学会賞・研究奨励賞・
教育啓蒙賞の公告
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
副会長の職務の明記等、会則の改正に関する提
ことになった。
案があった。
15)その他
15-1)田村委員より、日本進化学会大会Web サイト
15-3)公益信託進化学振興木村資生基金と進化学会
について、大会終了後も維持し、また必要に応
と関係について審議された。日本進化学会賞、木
じてバックアップを取っていくことが提案され
村賞の公告に際しては学会事務局、中央三井信
た。
託銀行担当者との間で、密に連絡を取っていく
15-2)斎藤副会長より、学生会員の定義の明確化、
・大会における公開講演会ならびに高校生ポスター
日本進化学会 2008 年度総会報告
発表を企画した。
・日本進化学会 10 周年記念出版事業について、執
筆依頼等具体的な作業にとりかかった。
・女子高校生夏の学校(8 月14 日〜16 日)に進化学
会のポスター展示をした。
・
「ダーウィン展」
、
「進化学の世界」
、
「女子高校生
進化学会ニュース Vol.9 no. 1 の発行
夏の学校」
、
「高校生の進化学」等の共催/後援を
8月2日
学会賞選考委員会開催(クバプロ)
した。
【日時】2008 年 8 月 23 日(金)
、16:20 〜
○審議事項
【場所】東京大学駒場キャンパス13 号館 1323 号室
1)2008 年度中間決算ならびに2009 年度予算案[佐
○報告事項
藤会計](承認)
1)2008 年度大会報告
2)2009 年度大会準備について [渡邉年会幹事]
2)評議員会開催報告[颯田事務幹事長]
3)2010 年度大会開催候補地について [颯田事務幹
3)2007 年 9 月〜 2008 年 8 月業務報告[颯田事務幹
事長]
会計]
日本進化学会 2008 年度評議員会報告
【日時】2007 年 8 月 22 日(金)
、12:00 〜 14:00
10)学会創立十周年記念出版事業の進捗について
【場所】東京大学駒場キャンパス15 号館 409 室
○審議事項
○報告事項
1)2007 年 9 月〜 2008 年 8 月業務報告
11)2008 年度中間決算ならびに2009 年度予算案
項の改正について提案があり、以下のように改正
幹事からの報告
5)学会後援・共催等についての報告
「国際甲殻類学会」
、
「ダーウィン生誕 200 周年進
化学プレ・シンポジウム2008」
、
「女子高生夏の
学校」
「戦争と人類学」などへの後援・共催につ
いて報告がなされた。
6)2009 年度生物オリンピックについて
7)2009 生物学年に関する協力のお願い
長]
の報告[長谷川会長]
6)学会創立十周年記念出版事業の進捗について[斎
藤副会長]
7)学会細則改定について[颯田事務幹事長]
論が行われた。
3)学会賞・木村賞、研究奨励賞、教育啓蒙賞の報
4)男女共同参画、生物科学連合、法人化対応の各
5)進化学会賞・木村賞、研究奨励賞、教育啓蒙賞
12)評議員選挙に関する提案
日本進化学会細則第 3 章【役員の選出】第 7 条 6
された。
田事務幹事長]
5)その他(年会費納入について) [颯田事務幹事
[承認/別掲]また、会費納入率向上のための議
2)2007 年度決算報告
告。8 月 2 日に開催された選考委員会の報告がな
事長]
4)国際生物学オリンピックへの協力について [颯
4)2007 年度決算報告ならびに会計監査報告[佐藤
【議題】
ことが確認された。
営。
7 月 11 日
(出席 13 名、欠席 5 名[委任状 2 名]
)
65
された。
(改正前)6. 得票者中の上位の者より順に20 名を選
進化学会賞・木村賞、研究奨励賞、教育啓蒙賞の報告
【日時】2008 年 8 月 23 日(金)
【場所】東京大学駒場キャンパス13 号館 1323 号室
(改正後)6. 得票者中の上位の者より順に20 名を選
出する。同数得票者については、入会申し込みの
遅い順に順位を定める。
13)2010 年度大会開催候補地について
引き続き評議員の間で話し合われることとなっ
た。
14)学会賞の授賞対象について
8)JREC-IN についてのアンケートについて
斎藤副会長より、学会賞の授賞対象を外国人に
9)新法人法シンポジウムについて
も広げるかどうか提案があり、引き続き検討する
2.木村基金・木村運営委員長:「木村賞」の賞状
授与、副賞目録授与
出する。同数得票者については年齢の若い順に従
って順位を定める。
授与、木村メダルの授与
授賞式
○研究奨励賞受賞者(賞状授与)
1)日本進化学会・長谷川眞理子会長(学会賞選考
寺井洋平博士(東京工業大学)/沓掛展之博士(総
委員長)による受賞者と授賞理由の説明
2)公益信託進化学振興木村資生基金・木村克美運
営委員長によるご挨拶(木村基金の経緯と今年
度の受賞者の報告)
3)授賞式
合研究大学院大学)/稲垣祐司博士(筑波大学)
○教育啓蒙賞受賞者(賞状授与)
中井咲織氏(立命館宇治中学校・高等学校)
受賞講演・郷通子博士
記念撮影
※受賞講演終了後
○日本進化学会賞受賞者/木村賞受賞者 郷通子
博士(お茶の水女子大学)
1.日本進化学会会長:「日本進化学会賞」の賞状
※選考過程、受賞理由等の詳細については前述のと
おり
66
日本進化学会ニュース Nov. 2008
2007 年度収支報告書
収入
2007 予算 2007 決算
備考
① 会費収入
4,244,100 2,664,721
(1) 一般会費
2,346,300 1,758,914 3,000 円× 584 名、2,007 円× 3 名、893 円× 1 名※
(2) 学生会費
577,800
356,000 2,000 円× 178 名
(3) 滞納分
1,320,000
424,000 3,000 円× 118 名、2,000 円× 34 名、1,000 円× 2 名
(4) 前受金
92,000 一般会員3,000円×28名、2,000円×1名、学生2,000円×3名
(5) 口座引落手数料本人負担分
30,807 引落手数料 163 円× 189 名
(6) 振込名義人不明
3,000
② 利息
1,657
③ 2006 年大会要旨集売上
1,300
④ 大会より返金
500,000
当期収入合計
4,244,100 3,167,678
前年度繰越金
2,009,285 1,012,402
本年度収入合計
6,253,385 4,180,080
※会費請求の際に事務局が間違って2007 円として請求したため、振込手数料の100 円を引いた残額893 円の振込
をお願いした
支出
2007 予算 2007 決算
① ニュース作成・印刷料等
1,050,000 1,249,017
② ニュース送料
380,000
309,692
③ 業務委託費(前半期・後半期分)928,400
974,820
④ 事務費・通信費
700,000
476,069
(1) 選挙関連費
375,000
245,111
(2) その他
325,000
230,958
a 発送通信費
46,470
b 学会封筒代
96,180
c 学会賞用賞状・筆耕費用
74,490
d 郵便払込用紙印刷代
2,100
⑤ 会議費
20,000
21,000
⑥ 旅費、交通費
250,000
82,560
⑦ 負担金
30,000
110,000
(1) 生物科学学会連合運営費
20,000
20,000
(2) 日本分類学会連合分担金
10,000
10,000
80,000
(3) 自然史学会連合分担金(2004-2007)
⑧ 雑費
40,000
42,760
(1) SMBC ファイナンス手数料
40,000
40,015
(2) 振込手数料
2,745
⑨ 謝金
50,000
⑩ 大会援助金
500,000
500,000
⑪ 創立十周年記念企画準備金 2,000,000
⑫ その他
0
0
当期支出合計
5,948,400 3,765,918
次年度繰越金
304,985
414,162
本年度支出合計
6,253,385 4,180,080
2007 年 収入−支出
0
0
備考
8 -1 号 8 -2 号
8 -1 号 8 -2 号
前半期後半期各 487,410 円
(1), (2) の合計
(1), (2), (3) の合計
年 2 回(会員数に応じて変動する)
第 9 回大会(京都)
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
通帳残高
銀行(三井住友)
郵便局(振替口座)
郵便局(貯金口座)
314,524
98,758
880
414,162
2007 年 12 月 31 日現在
2007 年 12 月 31 日現在
2007 年 12 月 31 日現在
2008 年度中間決算報告書
収入
2008 予算(修正) 2008 中間決算
備考
①会費収入
4,836,100
2,660,800
(1)一般会費
2,494,800
1,737,000 3,000 円× 579 名
(2)学生会費
703,800
348,000 2,000 円× 174 名
(3)滞納分
1,637,500
518,993
(4)前受金
26,000
(5)口座引落手数料本人負担分
30,807 163 円× 189 名
②利息
905 銀行 904 円、郵便貯金 1 円
③誤入金
7,000 大会参加費を事務局に誤入金 5,000 円× 1 名、
非会員による入金 2,000 円× 1 名
当期収入合計
4,836,100
2,668,705
前年度繰越金
390,772
390,772
本年度収入合計
5,226,872
3,059,477
支出
2008 予算(修正) 2008 中間決算
備考
① ニュース作成・印刷料等
1,050,000
458,304 9-1 号
② ニュース送料
320,000
0 9-1 号 149,142 円支出予定
③ 業務委託費(前半期・後半期分) 928,400
487,410 前半期
④ 事務費・通信費
300,000
139,350 (1), (2) の合計
(1) 選挙関連費
0
0
(2) その他
300,000
139,350
a 発送通信費
150,000
80,970
b 学会封筒代
100,000
58,380
c 学会用賞状・筆耕費用
50,000
0
⑤ 寄付金
30,000
0 国際生物学オリンピック
⑥ 会議費
25,000
0
⑦ 旅費、交通費
120,000
0
⑧ 負担金
55,000
55,000 (1), (2), (3), (4) の合計
(1) 生物科学学会連合運営費
20,000
30,000 2008 年度会費(運営費)として
(2) 日本分類学会連合分担金
10,000
0
(3)自然史学会連合分担金
20,000
20,000 2008 年度分担金として
(4) 男女共同参画学年会費
5,000
5,000 第 6 期年会費として
⑨ 雑費
40,000
35,983
(1) SMBC ファイナンス手数料
40,000
35,143 年 2 回(会員数に応じて変動する)
(2) 振込手数料
0
840
⑩ 謝金
50,000
0
⑪ 大会援助金
500,000
0
⑫ 創立十周年記念企画準備金
1,000,000
0
ドメイン名登録料(darwin-200th.net)990 円、
⑬ その他
0
0
誤入金 5,000 円支出予定
67
68
当期支出合計
次年度繰越金
現在残高
本年度支出合計
2008 年 収入−支出
通帳残高
銀行(三井住友)
郵便局(振替口座)
郵便局(貯金口座)
現在残高
日本進化学会ニュース Nov. 2008
4,418,400
808,472
5,226,872
0
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
1,176,047
⑧負担金
110,000
(1)生物科学学会連合運営費
20,000
(2)日本分類学会連合分担金
10,000
(3)自然史学会連合分担金
80,000
(4)男女共同参画学年会費
⑨雑費
42,760
(1)SMBC ファイナンス手数料
40,015
(2)振込手数料
2,745
⑩謝金
0
⑪大会援助金
500,000
⑫創立十周年記念企画準備金
0
⑬その他
0
当期支出合計
3,789,308
次年度繰越金
390,772
本年度支出合計
4,180,080
1,883,430 2008 年 7 月 31 日現在
3,059,477
0
1,625,549
257,000
881
1,883,430
2008 年 7 月 31 日現在
2008 年 7 月 31 日現在
2008 年 7 月 31 日現在
2008 年 7 月 31 日現在
2009 年度 収入−支出
2009 年度予算書
収入
2007 決算 2008 予算(修正) 2009 予算
備考
① 会費収入
2,664,721
4,836,100 3,443,487
(1) 一般会費
1,758,914
2,494,800 2,328,000 回収率 8 割の場合(2,910,000 × 0.8)
(2) 学生会費
356,000
703,800
538,800 回収率 6 割の場合(898,000 × 0.6)
(3) 滞納分
424,000
1,637,500
545,880 回収率1 割2 分の場合
(4,549,000 ×0.12)
(4) 前受金
92,000
(5) 口座引落手数料本人負担分 30,807
30,807 163 円× 189 名
(6) 振込名義人不明
3,000
② 利息
1,657
③ 大会要旨集売上
1,300
④ 大会より返金
500,000
当期収入合計
3,167,678
4,836,100 3,443,487
前年度繰越金
1,012,402
390,772
838,472
本年度収入合計
4,180,080
5,226,872 4,281,959
※会費収入は2007 年度の会員数および未収金を元に算出
※ 滞 納 分 回 収 率 : 2005 年 度 806,000 / 1,571,000 = 0.51、 2006 年 度 499,000/2,640,000 = 0.18、 2007 年 度
424,000/3,275,000 = 0.12
支出
2007 決算 2008 予算(修正) 2009 予算
①ニュース作成・印刷料等
1,249,017
1,050,000 1,050,000
②ニュース送料
309,692
320,000
320,000
③業務委託費(前半期・後半期分) 974,820
928,400
974,820
④事務費・通信費
487,741
300,000
495,000
(1)選挙関連費
268,501
0
270,000
(2)その他
219,240
300,000
225,000
(a)発送通信費
46,470
150,000
50,000
(b)学会封筒代
96,180
100,000
100,000
(c)学会賞用賞状・筆耕費用 74,490
50,000
75,000
(d)郵便振込用紙印刷代
2,100
⑤寄付金
30,000
30,000
⑥会議費
32,718
25,000
50,000
⑦旅費、交通費
82,560
120,000
100,000
備考
2 回 (B5 版)
2回
(525,000)×年
(160,000)×年
(1), (2) の合計
評議員選挙費用
(a), (b), (c), (d) の合計
国際生物学オリンピック
0
新 入 会 員
氏
名
55,000
65,000
20,000
30,000
10,000
10,000
20,000
20,000
5,000
5,000
40,000
43,000
40,000
40,000
0
3,000
50,000
50,000
500,000
500,000
1,000,000
0
0
0
4,388,400 3,677,820
838,472
604,139
5,226,872 4,281,959
0
69
(1), (2), (3), (4) の合計
20,000 円/年から30,000 円/年に変更
10,000 円/年
20,000 円/年
5,000 円/年
(1), (2) の合計
年 2 回(会員数に応じて変動する)
0
平成 20 年 5 月 1 日以降平成 20 年 9 月 30 日までの登録による
英字氏名
所
小北 智之
得丸 公明
前田 亮平
成田 悠輔
懸樋 潤一
橋爪 善光
大原
海
立田委久子
Kokita Tomoyuki
Tokumaru Kimiaki
Maeda Ryouhei
Narita Yuusuke
Kakahi Jun-ichi
Hasidume Yoshimitsu
Oohara Hiromi
Tatsuta Ikuko
福井県立大学 生物資源学部
自然思想家
佐世保市亜熱帯植物園
東京大学経済学部、VCASI
岡山大学 大学院自然科学研究科
山口大学 大学院理工学研究科
東京大学 農学生命科学研究科
総合研究大学院大学 先導科学研究科
属
竹内 寛彦
Takeuchi Hirohiko
尾崎 有紀
Ozaki Yuki
笹川 一郎
立木 佑弥
別所 和博
池内 桃子
小野木章雄
松岡 暢宏
富田 基史
手塚あゆみ
矢野 史朗
高橋 幸雄
東
亮一
江澤
潔
Sasagawa Ichirou
Tachiki Yuuya
Bessho Kazuhiro
Ikeuchi Momoko
Onogi Akio
Matsuoka Nobuhiro
Tomita Motoshi
Teduka Ayumi
Yano Shiro
Takahasi Yukio
Higashi Ryoichi
Ezawa Kiyoshi
斉藤 大助
坂本 佳子
Saitou Daisuke
Sakamoto Yoshiko
黒島 麻衣
Kuroshima Mai
平尾
章
佐伯 晃一
Hirao Akira
Saeki Koichi
佐野 香織
小森
敏
Sano Kaori
Komori Satoshi
京都大学 大学院理学研究科 生物科学専攻
動物学教室 動物系統学研究室
奈良女子大学 大学院人間文化研究科
共生自然科学専攻
日本歯科大学 新潟生命歯学部 先端研究センター
九州大学 システム生命科学府
九州大学 システム生命科学府
東京大学 理学系研究科 進化多様性生物学大講座
社団法人家畜改良事業団家畜改良技術研究所
TIS 株式会社
東北大学 大学院農学研究科
東北大学 大学院生命科学研究科
東京大学 工学系研究科 精密機械工学専攻
盛岡大学 文学部
静岡大学 創造科学技術大学院 自然科学系教育部
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所
集団遺伝研究部門 斎藤研究室
基礎生物学研究所 生殖遺伝学研究室
大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科
緑地環境科学 昆虫学研究グループ
名古屋大学大学院 情報科学研究科 複雑系
科学専攻創発システム論講座 鈴木麗璽研究室
信州大学 山岳科学総合研究所
九州大学 大学院理学府生物科学専攻
数理生物学研究室
上智大学 理工学研究科 生物科学領域
東京大学 理学系研究科 生物科学専攻
専門分野/研究対象
脊椎動物、遺伝、生態
人類、生態
人類、理論、生態
生物科学専攻植物、
分子生物 分子進化、
発生 遺伝
理論、生態、情報
脊椎動物、分子生物、分子進化
生命共生体進化学専攻 人類 霊長類、生態 行動、
認知 言語の進化
脊椎動物、系統・分類
無脊椎動物、分子進化、系統・分類、生態
脊椎動物、形態、古生物
理論、生態
理論、生態
植物、発生
無脊椎動物、生態
植物、遺伝、生態
脊椎動物、分子生物、分子進化、形態、遺伝、生態
無脊椎動物、理論、生態
理論、人文科学、
無脊椎動物、形態、系統・分類、
人類、脊椎動物、分子進化、遺伝
脊椎動物、発生
無脊椎動物、生態
人類、脊椎動物、理論、形態、系統・分類、遺伝、
生態、情報
植物、生態
理論
脊椎動物、分子進化
人類
70
日本進化学会ニュース Nov. 2008
後藤
亮 Goto Ryo
山崎 真巳 Yamazaki Mami
山根 京子 Yamane Kyoko
那須
信 Nasu Makoto
Kryukov Kirill Kryukov Kirill
竹花 佑介
前田 太郎
舞木 昭彦
藤田 純太
飯田幸一郎
佐々木直文
坪山 佳織
堀池 徳祐
的場 知之
東 陽一郎
高橋 明香
井磧 直行
高橋 一男
松浦健太郎
小谷野 仁
吉田健太郎
長谷 武志
鈴木 彦有
丸山 宗利
美和 秀胤
菊川 信人
吉田いづみ
小島
瞳
小寺 啓文
宮澤 清太
岩嵜
航
秋田 鉄也
竹内 啓一
城川 祐香
小川 陽平
井川
武
神戸
崇
片山
平松
姚
三井
なつ
千尋
托雅
康弘
高田未来美
松井
淳
上田 千晶
南澤 直子
椿
玲未
西岡
輔
兼井 麻利
田中 絢子
磯村 成利
Takehana Yuusuke
Maeda Tarou
山形大学 大学院理工学研究科 地球共生圏科学専攻
千葉大学 大学院薬学研究院 遺伝子資源応用研究室
大阪府立大学 生命環境科学研究科
東京大学 大学院理学研究科 生物科学専攻
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所
集団遺伝研究部門 斎藤研究室
基礎生物学研究所 バイオリソース研究室
東京海洋大学 院 博士後期
脊椎動物、分子進化
植物、分子生物、分子進化、二次代謝
植物、分子進化、形態、系統・分類、生態、生物物理
人類、脊椎動物、分子進化
脊椎動物、遺伝
無脊椎動物、分子生物、分子進化、形態、系統・分類、
生態、細胞内共生
Mougi Akihiko
九州大学理学研究院 数理生物学研究室
理論、生態
Fujita Yoshitaka
京都大学フィールド科学教育研究センター 舞鶴水産実験所無脊椎動物、分子進化
Iida Kouichirou
名古屋大学 大学院生命農学研究科
無脊椎動物、分子生物、分子進化
Sasaki Naobumi
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学 植物、
原核生物、
理論、
分子生物、
分子進化、
系統・分類、
専攻生命環境科学系
情報
Tuboyama Kaori
北海道大学 農学部 生物資源科学科
脊椎動物、無脊椎動物、遺伝、生態
動物生態学研究室
Horiike Tokumasa
国立遺伝学研究所 人類遺伝研究部門
原核生物、分子進化、系統・分類
Matoba Tomoyuki
東京大学総合文化研究科
脊椎動物、生態
Azuma Youichirou
東京大学海洋研究所 海洋生命科学
脊椎動物、分子進化
部門分子海洋科学分野
Takahashi Sayaka
福井県立大学 大学院生物資源学研究科
脊椎動物、生態
海洋生物資源学専攻
Iseki Naoyuki
九州大学理学府
理論、生態
Takahasi Kazuo
国立遺伝学研究所
無脊椎動物、形態、遺伝、生態
Matsuura Kentarou
福山大学大学院博士前期課程 工学研究科 菌類、分子生物
Koyano Hitoshi
東京大学 大学院農学生命科学研究科
理論、生態
Yoshida Kentarou
財団法人岩手生物工学研究センター
植物、菌類、遺伝
Hase Takeshi
東京医科歯科大学 大学院生命情報学
理論、分子進化、生物物理、タンパク質間相互作用
ネットワーク
Suzuki Hikoyuu
東京工業大学 大学院生命理工学研究科
脊椎動物、分子進化
Maruyama Munetoshi 九州大学総合研究博物館
無脊椎動物、
好蟻性昆虫、
分子生物、
形態、
系統・分類、
生態、
生物物理
Miwa Hidetsugu
東京理科大学
植物、分子進化、系統・分類
Kikukawa Nobuto
京都大学 大学院理学研究科 動物学教室 脊椎動物、形態、系統・分類
東京医科歯科大学 大学院生命情報科学教育部 ウィルス、分子進化
Yoshida Izumi
Kojima Hitomi
岐阜大学多様性保全学研究室
植物、形態、生態
東京理科大学 理工学部 応用生物科学科 坂口研究室 無脊椎動物、分子生物、分子進化
Kodera Hirofumi
Miyazawa Seita
名古屋大学 大学院理学研究科
脊椎動物、無脊椎動物、分子進化、発生、形態
Iwasaki Wataru
東北大学大学院 生命科学研究科
理論、発生、生態、情報、システム生物学
Akita Tetsuya
横浜国立大学 大学院環境情報学府
植物、理論、生態
環境リスクマネジメント専攻 松田研究室
Takeuchi Keiichi
大阪府立大学 緑地環境科学科
無脊椎動物、生態
Shirokawa Yuka
東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻無脊椎動物、系統・分類、生態
Ogawa Youhei
岐阜大学 応用生物科学部 多様性保全研究室無脊椎動物、植物、生態
Igawa Takeshi
総合研究大学院大学 葉山高等研究センター 人類、脊椎動物、分子生物、分子進化、系統・分類
Kanbe Takashi
北海道大学 大学院農学研究科 生物生態
無脊椎動物、分子生物、分子進化、遺伝、生態
体系学講座 昆虫体系学研究室
Katayama Natsu
東京大学大学院
植物、形態
Hiramatsu Chihiro
生理学研究所
霊長類、生態
You Touya
筑波大学 生命環境研究科
北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 理論、情報
Mitsui Yasuhiro
Ken Daigoro Yokoyama Duke University
脊椎動物、情報
Paul Sheridan
東京工業大学 大学院情報理工学研究科
統計、分子進化、系統・分類
数理・計算科学専攻
Takada Mikumi
琉球大学 理工学研究科 海洋環境学専攻
脊椎動物、分子生物
Matsui Atsushi
京都大学 霊長類研究所 分子生理研究部門 遺伝子情報分野 人類、霊長類、分子進化、系統・分類
Ueda Chiaki
大阪大学 大学院理学研究科 生物科学専攻 無脊椎動物、分子進化、系統分類
Minamizawa Naoko 東京大学 理学系研究科 生物科学専攻
植物、発生、形態
Tubaki Remi
京都大学 大学院人間・環境学研究科
脊椎動物、無脊椎動物、生態
相関環境学専攻 加藤真研究室
Nishioka Tasuku
総合研究大学院大学 葉山高等研究センター 人類、分子生物、分子進化
Kanei Mari
東京大学 大学院理学系研究科 生物科学
植物、発生、形態
専攻発生進化研究室
Tanaka Ayako
九州大学 大学院システム生命科学府
植物、分子進化、遺伝
システム生命科学専攻
Isomura Narutoshi
総合研究大学院大学 先導科学研究科
人類、情報
生命共生体進化学専攻 5年一貫博士課程
Society of Evolutionary Studies, Japan News Vol. 9, No. 2
田中 隼人
宮川 一志
Tanaka Hayato
Miyakawa Hitoshi
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静岡大学 大学院理学研究科 地球科学専攻 無脊椎動物、形態、系統・分類
北海道大学 大学院環境科学院 生物圏科学 無脊椎動物、分子生物、分子進化、発生
専攻生態遺伝学講座
土岐和多瑠 Toki Wataru
東京大学 大学院農学生命科学研究科
無脊椎動物、形態、系統・分類、生態
亀田 勇一 Kameda Yuuichi
京都大学 大学院人間・環境学研究科
無脊椎動物、系統・分類
相関環境学専攻
大阪大学 大学院情報科学研究科 バイオ情報 菌類、原核生物、生態、生物物理
久保 勲生 Kubo Isao
工学専攻 共生ネットワークデザイン学講座
東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 理論、遺伝
三浦 千明 Miura Chiaki
松本 知高 Matsumoto Tomotaka 九州大学 大学院システム生命科学府 生命理学専攻 理論、分子進化
常木 静河 Tsuneki Shizuka
首都大学東京 大学院理工学研究科
植物、系統・分類
名古屋大学 大学院生命農学研究科 森林保護学 無脊椎動物、分子進化、生態
河崎 祐樹 Kawasaki Yuuki
幅
拓哉 Haba Takuya
信州大学 大学院工学系研究科 地球生物圏 無脊椎動物、生態
科学専攻 進化生物学講座
西山 智明 Nishiyama Tomoaki 金沢大学 学際科学実験センター
植物、分子生物、分子進化、発生、形態、系統・分類
マリアダスマヘンドラ Mariadassou Mahendra 東京大学 農学生命科学研究科 生物測定学研究室 理論、分子進化、系統・分類
東京工業大学 大学院生命理工学研究科
脊椎動物、系統・分類、遺伝、生態
ムジガニ センブア Mzighani Semvua
林田 明子 Hayashida Akiko
東京大学 総合研究博物館
脊椎動物、形態、生物物理
人類、情報
古川園智樹 Furukawazono Tomoki 慶應義塾大学 環境情報学部
柿嶋
聡 Kakishima Satoshi
東京大学 大学院理学系研究科 附属植物園 植物、系統・分類
小嶋 徹也 Kojima Tetsuya
東京大学 大学院新領域創成科学研究科
無脊椎動物、分子生物、発生、形態
近藤 公乗 Kondou Koujou
大阪府立日根野高等学校
肥田 宗友 Hida Munetomo
秋田県立大館鳳鳴高等学校
人類、分子生物
川平 清香 Kawahira Sayaka
総合研究大学院大学 先導科学研究科
理論、生態
生命共生体進化学専攻
小林 直樹 Kobayashi Naoki
東京工業大学
脊椎動物、分子進化、発生、系統・分類
横山 典侑 Yokoyama Noriyuki 静岡大学 工学研究科システム工学専攻
理論、生態
渡辺 衛介 Watanabe Eisuke
広島大学大学院
無脊椎動物、生態
小野 義隆 Ono Yoshitaka
茨城大学教育学部
菌類、系統・分類
遠藤 彩子 Endo Ayako
日本大学生物資源科学部獣医学科3年
守山 裕大 Moriyama Yuuta
東京大学大学院理学系研究科
脊椎動物、発生、形態
中川
淳 Nakagawa Jun
首都大学東京 都市教養学部 理工学系生命 無脊椎動物、分子生物
科学コース 細胞遺伝学研究室
中村
肇 Nakamura Hajime
植物、生態
貝沼 孝彦 Kainuma Takahiko
名古屋大学 農学部生命農学研究科 応用
発光生物、遺伝子解析
分子生命科学専攻 分子機能モデリング
嶋田 紀之 Shimada Toshiyuki
松平 一成 Matsudaira Kazunari 東京大学 大学院理学系研究科 生物科学
テナガザル・哺乳類、分子生態学
専攻人類生物学・遺伝学研究室
熊崎 瑞保 Kumazaki Mizuho
名古屋大学 大学院生命農学研究科
福世 真樹 Fukuyo Masaki
東京大学 新領域創成科学研究科 メディカル
ゲノム専攻 バイオ医療知財分野 小林研究室
富樫 朱美 Togashi Akemi
北海道大学 理学院 多様性生物学講座
昆虫
田村 光平 Tamura Kouhei
東京大学
関塚 大介 Sekiduka Daisuke
国立埼玉病院
川島 千尋 Kawashima Chihiro 国立埼玉病院
黒川
瞬 Kurokawa Shun
東京大学
村田 和人 Murata Kazuto
東北大学
小早川義尚 Kobayakawa Yoshitaka九州大学 理学研究院 生物科学部門
刺胞動物、発生生物学
菊池 正隆 Kikuchi Masataka
東京医科歯科大学 大学院 生命情報学研究室
政田 智啓 Masada Tomohiro
魚類、分子系統学
住田 朋久 Sumida Tomohisa
東京大学 大学院総合文化研究科
科学史
大槻
涼 Ootsuki Ryo
首都大学東京 理工学研究科 生命科学専攻 シダ植物、系統・分類
植物系統分類学教室
佐野 明子 Sano Akiko
畑野 俊貴 Hatano Toshiki
三浦謹一郎 Miura Kin-ichiro
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 すべての生物、分子生物学
メディカル・ゲノム専攻
前川
優 Maekawa Yu
静岡大学 理学部 地球科学科
中島 常安 Nakashima Tsuneyasu 名寄市立大学短期大学部
九州大学 システム生命科学府 生態化学研究室
満行 知花 Mitsuyuki Chika
三浦 宣夫 Miura Nobuo
東邦大学 大学院理学研究科 生物分子科学専攻
松尾
萌 Matsuo Moe
東邦大学 大学院理学研究科 生物分子科学専攻
野田
浩 Noda Hiroshi
東京農工大学 大学院連合農学研究科
植物、河川、植物生態学
西澤 裕文 Nishizawa Hirofumi
鈴木 清樹 Suzuki Sayaki
総合研究大学院大学
糸状菌、植物全般、植物病理学、理論生物学
長束 俊治 Natsuka Shunji
大阪大学 大学院理学研究科 化学専攻
人類、脊椎動物、無脊椎動物、菌類、分子進化
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日本進化学会ニュース Nov. 2008
会 員 所 属 変 更
熊澤 慶伯
猿橋
智
佐々木 剛
平石
界
篠原 明男
行弘 研司
古川
力
三上
修
出縄 政嗣
郷
康広
小橋 健司
坂手 龍一
パクチャアンホ
遠藤真太郎
川原 善浩
川口 眞理
坂神たかね
青木美菜子
四津 有人
等々力政彦
工藤
洋
山内
肇
川口 将史
藤田 宏之
平成 20 年 5 月 1 日以降平成 20 年 9 月 30 日までの登録による
名古屋市立大学 システム自然科学研究科
早稲田大学総合研究機構 イノベーションデザイン研究所
京都大学大学院 理学研究科 生物科学専攻 生物物理学教室
京都大学 こころの未来研究センター
宮崎大学 フロンティア科学実験総合センター 実験支援部門生物資源分野
独立行政法人 農業生物資源研究所
九州沖縄農業研究センター
立教大学 理学部 生命理学科
京都大学大学院 生命科学研究科 統合生命科学専攻分子情報解析学分野
京都大学 大学院理学研究科 京都大学霊長類研究所
市原市教育委員会 ふるさと文化課
産業技術総合研究所 バイオメディシナル情報研究センター(BIRC)
Biological Resources Research Department, National Institute of Biological Resources, KOREA
信州大学 総合工学系研究科 山岳地域環境科学専攻
独立行政法人 農業生物資源研究所 基盤研究領域 植物ゲノム研究ユニット
東京大学海洋研究所 分子海洋科学分野
北海三共株式会社
富士フイルム株式会社 R&D統括本部ライフサイエンス研究所
東京大学大学院医学系研究科 感覚・運動機能医学講座 リハビリテーション医学分野
東京大学
京都大学生態学研究センター
理化学研究所
愛媛大学 理学部 生物学科 村上研究室
京都大学 生態学研究センター
退 会
中山 功一、長井 はるか、吉田 重人、石川 健
日本進化学会ニュース Vol. 9, No. 2
発 行: 2008 年 11 月 10 日
発行者:日本進化学会(会長 長谷川眞理子)
編 集:日本進化学会ニュース編集委員会(編集幹事 深津武馬)
印刷所:福々印刷株式会社
発行所:株式会社クバプロ 〒 102-0072 千代田区飯田橋 3-11-15 UEDA ビル 6F
TEL : 03-3238 -1689 FAX : 03-3238 -1837
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