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オランダだより
第 13 便
2009 年 9 月 30 日
【 イスラエル 】
今回はイスラエルの園芸についてご紹介します。5 月 5 日~7 日にテルアビブにて、Agritech2009 という園芸に関する展
示会が開催されましたので参加しました。前回の 2006 年にも訪問しましたので今回は 2 回目のイスラエルです。テルアビブ
へは、アムステルダムから直行便で約 5 時間の距離です。ヨーロッパ人にとってイスラエルはリゾート地であり、特に今年か
らはロシア人もビザが必要なくなったということで、たくさんの人が灼熱の太陽を求めて紅海のリゾート地に来ているそうで
す。日本人にとってはパレスチナ問題、ガザ地区侵攻などのイメージが強いイスラエルですが、エルサレム、死海、紅海な
ど観光地としても大変お勧めです。
【 Agritech2009 】
Agritech2009 は、イスラエルで最大の農業に関する展示会です(写真 1)。イスラエルの農業は、砂漠気候をうまく活用しな
がら発達し現在は輸出産業になっています。特に、野菜の輸出が増加しており(図1)、ほとんどの野菜生産者がグローバ
ルギャップを取得しています。そのため、冬場の欧州の野菜市場ではオランダの競合国となっています。イスラエルの国土
面積は日本の四国ほどの大きさですが、南北に細長く南下するほど乾燥した砂漠気候になります。砂漠といっても、夏季を
除いては園芸作物の栽培には大変適した気候条件で、ほとんどのハウスでは加温設備なしで果菜類が栽培されています。
しかし、水資源が乏しいため灌水技術が非常に高く、輸出にも力を入れており、展示会も灌水に関するものが多いのが特
徴です。出展企業は約 200 社、来場者は世界 100 カ国以上か
ら約 25,000 人となっています。灌水は農業では必須の技術な
ため、世界中からの来場者がいるのが特徴です。ただ、世界
不況のためか前回よりも規模が 20%ほど小さくなっており、イ
スラエルを代表する灌水メーカーと肥料メーカーの出展があり
ませんでした。オランダで毎年開催されている HortiFair もそう
ですが、近年市場占有率の高い大手企業にとっては展示会の
価値も変わってきたのかもしれません。今年の展示会では、中
国とインドからの団体の来場者の多さに驚きました。おおよそ
来場者の 20~30%は、中国人とインド人のように思いました。
写真 1 Agritech2009 の様子
写真 2 家庭排水のろ過装置と給水装置
もしかしたら、もっと多いかもしれません。あるインド人に話を聞いてみたところ、イスラエルの灌水メーカーが来場を呼びか
けているそうです。また、中国人向けの灌水に関するセミナーも開催されていました。一方日本人は、2 日間で見かけた方
は数名と言ったところでしょうか?やはり日本人にとっては、イスラエルは遠い国なのでしょうか?次回は、2012 年 5 月 15
日~17 日に開催予定です。興味のある方は、ぜひ参加してみてください。なお、イスラエルの出国検査は世界一厳しいの
でそれだけは了解しておいてください。荷物を全部開けられて、手続きに 3 時間かかりました。
【 水資源と作物 】
ほとんど雨が降らないイスラエルでの農業は、露地栽培、施設栽培を問わず灌水が必要になります。その場合、灌水用
の水源として何を利用するかが一番の課題です。「水はタダ」という考えの日本ではあまり考えられないことですが、世界的
には水は有限な資源で効率的な活用方法が求められています。イスラエルでは、通常灌水には上水道を利用しているそう
ですが、価格がおおよそ 100 円/m3(日本の上水道の価格とほぼ同じ)と高く、他の水源を色々と模索しているそうです。
その水源として注目されている一つ目が家庭排水です。この場合、水質に問題がある場合があるので BOD(生物化学的
酸素要求量)と COD(化学的酸素要求量)を調査しながら使用しているそうです(写真 2)。現在のところは花卉のみで利用さ
れており、果樹では生食用のブドウで試験がされているそうです。なお、野菜に関しては安全性が不明なため利用が見送ら
れています。二つ目の水源は帯水層です。帯水層とは、ほとんど動かない地下水域のことです。オランダの半閉鎖型ハウ
スで熱を溜めるために使っている帯水層と同じです(オランダだより第 12 便参照)。イスラエルにも、地下 200m 程度に帯水
層があるのですが、塩分濃度が高いため今まで関心が寄せられていなかったそうです。帯水層を利用開始した当初は、上
水と帯水層の水を混合して使用していましたが、現在では帯水層の水のみで栽培している作物もあるそうです。トマトやパ
プリカでは帯水層の水を利用することで、品質と日持ちが良くなったそうです。日本で言う高 EC 栽培です。この場合、肥料
は微量要素のみを追加すればよい場合もあり肥料代の節約にもなるそうです。栽培方法は施設内での土耕栽培ですので、
塩類集積が懸念されるところですが、定期的に上水のみを灌水することでこの問題は解決できるそうです。日本人から見る
と、この話は本当かと疑うような内容ですが、砂嵐が起こるようなサラサラした砂地での栽培ですから、ロックウール栽培の
ように容易に除塩ができるようです。現在では、帯水層の水を利用した栽培の可能性が確認できたため、高 EC 灌水でも栽
培可能な台木や品種の選抜も行っていました。見学したミニトマトハウスでの給液は EC9 だそうです(写真 3)。またオリーブ
などの果樹栽培にも帯水層の水が利用されています(写真 4)。この場合、オリーブの品質が非常に良くなり、オイルの採取
量は 200%になったそうです。帯水層の水を利用したオリーブ栽培では塩類集積の問題があるそうですが、マルチをするこ
とで解決できるそうです。なお、イスラエルでの果樹栽培も輸出向けが主力で、以前は柑橘類が多かったそうですが価格が
暴落したため、現在は世界的に需要が高まっているオリーブが増えているそうです。
写真 3 帯水層の水を利用したミニトマト栽培
写真 4 帯水層の水を利用した砂漠での
オリーブ栽培
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