トロピカル多項式における因数分解について 理学部 情報科学科 加古研究室 水野加津 平成 24 年 8 月 3 日 1 はじめに 1. P の辺上の全ての整数点 IP を計算し、A0 = Ø とする トロピカル代数は通常の四則演算の代わりに x ⊕ y = min(x, y), 2. // Ai , 1 ≤ i ≤ m − 1 を求める。これは、辺 e1 ...ei によって到達する IP 内の点を計算する。 x¯y =x+y で和と積を定義する。0¯x = x である。また、x⊕0 6= x (a) v = v0 + kei , k ≤ ni が IP にふくまれるな ら、Ai に v を加える。 であることに注意しなければならない。 通常の演算と同じく、交換法則や分配法則は適用さ (b) Ai−1 の全ての頂点 u について、u+kei , k ≤ ni が IP に含まれるなら、Ai に u + kei を れる。ただし、トロピカル演算では減算は存在しない。 例えば、a = 10 ª 3 のとなる a は 3 ⊕ a = 10 を満たす 加える。 ものであるが、そのような a は存在しない。 2 3. // Am を計算 一変数の因数分解 Am−1 に含まれる全ての頂点 u について、もし u+kem , k ≤ nm が IP に含まれるなら、u+kem を Am に加える。 一変数のトロピカル多項式、例えば、 f (x) = a ¯ x2 ⊕ b ¯ x ⊕ c 4. Am が v0 を含むならば、与えられたポリトープ は分解可能である。 は min{2x + a, x + b, c} を意味するので、折れ線グラフになっている。線分の 交点は、b − a と c − b より このアルゴリズムで分解可能な場合、始点 v0 から始 まり、v0 に戻る頂点の列 {v0 , f (x) = a · (x ⊕ (b − a)) · (x ⊕ (c − b)) と因数分解出来る。ただし、b − a < c − b としてい る。もし、b − a ≥ c − b がなりたって居るならば、 f (x) = a ¯ x2 ⊕ c = a ¯ (x ⊕ c−a 2 2 ) となる。 このように、一変数のトロピカル多項式は一次の因 が求められるが、これがポリトープの分解になって いる。 5 多項式の可約性既約性 多変数の多項式はニュートンポリトープと呼ばれる整 数的なポリトープと関連づけられることが発見されて いる。もし多項式の因数がミンコフスキー和の意味で ニュートンポリトープの分解であるなら、因数にもな v0 + k1 e1 + k2 e2 , . . . , v0 + k1 e1 + · · · + km em = v0 } 子に完全に因数分解出来る。 3 v0 + k1 e1 , 結果 f (x) = x6 ⊗ y 3 ⊕ x3 ⊗ y 2 ⊕ x ⊗ y ⊕ x6 について、ニュートン多角形を求めると、 {(0, 0), (1, 1), (2, 1), (3, 1), (0, −3), (−6, 0)} る。結果、ポリトープが分解可能で分解を構築するか を頂点とする多角形になる。これに分解アルゴリズ どうかを判定するアルゴリズムは、多項式の因数分解 ムを適用すると、分解として {(0, 0), (1, 1), (1, 0)}、 にも有用であるという見解が得られる。今回は応用と {(0, 0), (1, 1), (3, 2), (3, 0)} が得られる。これから f (x) して、二変数の多項式を与え、ニュートンポリトープを は因数分解が可能であれば、 計算し、ポリトープの全ての整数サマンドを発見する。 このサマンドは多項式の全ての可能な因数のニュート ンポリトープに対応する。 4 判定アルゴリズム 二変数の多項式の係数を取り払い、ニュートン多角 形に変換する。頂点 v0 = (0, 0) を始点とする辺の列 f (x) = (x ⊗ y ⊕ x ⊕ · · ·) ⊗ (x5 ⊗ y 2 ⊕ x2 ⊗ y ⊕ x5 ⊕ · · ·) あるいは f (x) = (x3 ⊗ y 2 ⊕ x ⊗ y ⊕ x3 ⊕ · · ·) ⊗ (x3 ⊗ y ⊕ x3 ⊕ · · ·) のように因数分解されるはずであるということがわか {ni ei }1<i≤m が形成する整数凸多角形 P が分解可能か る。ここで · · · は凸多角形の辺あるい内部の点に対応 を判定する。 する項である。
© Copyright 2024 Paperzz