DNKリサーチ発 「JPCA SHOW 2015」

#1517、2015年6月7日
今週の話題
JPCA SHOW 2015
6月3日から3日間、東京ビッグサイトにおいて、恒例のJPCAショー20
15が開催されました。2008年の世界同時不況以来、縮小傾向が続いている
日本の民生エレクトロニクス業界のもとで、プリント基板業界も低迷が続いてい
ます。そのような厳しい市場環境の中で、日本のプリント基板産業がどのような
新しい動きをしているのか、絶好の機会ですので、3日間出かけました。
展示会としての規模はほぼ昨年と同じですが、来場者の数は増えているようで
す。ただし、出展社、出展内容については、かなりの変化が出てきているように
見えました。まだ、これといった大きな流れができているわけではありませんが、
多くのメーカーが、新技術や新製品を出してきており、新たな事業の方向を模索
している様子が見て取れます。これまでも、そのような動きがなかったわけでは
ないのですが、今年の場合、より具体的で、実用化という意味では、着実に前に
進んでいるようです。
JPCAショーの来場者の多くはプリント基板のユーザーというよりは、基板
メーカーの関係者が主体になっています。特に若いエンジニアや営業担当者にと
っては、基礎的な勉強をするよい教育訓練の場になっています。無料のオープン
セミナーでは、プリント板塾、品質管理講座、電子機器の分解分析などで、会場
に入りきれないほどの聴衆が集まっていて、関心の高さがうかがえます。
きちんと数えて見たわけではありませんが、海外からの出展や来場者は少なく
なっているような気がします。その分だけ、国内からの参加者が増えたというこ
とになります。ただし、海外の企業のアクティビティが全く無いかというと、そ
のようなことはありません。ある台湾の中堅フレキシブル基板メーカーの場合、
会社の社長が自らサンプルを抱えて売り込んでいました。サンプルは、e—ペーパ
ーディスプレイ用の4層フレキシブル基板で、全てがスクリーン印刷回路で、何
年か前に私が考えていた設計コンセプトそのものの回路製品でした。残念ながら、
私は日本で実用化のためのパトロンを得られませんでしたが、台湾メーカーは事
業化に成功したようです。
さすがに大手の基板メーカーは、それなりの大きさのブースを構えています。
しかし、ちょっと考えてみると、出展していない大手メーカーも結構あるようで
す。特に硬質基板メーカーに多いようです。一方、中堅メーカーでは、フレキシ
ブル基板メーカーのパフォーマンスが目立ちます。新規出展も少なくありません。
新しい技術の話題も豊富です。多かったのは、伸縮可能なエラスティック(スト
レッチャブル)回路と、そのサブストレート材料です。これまで参考出品程度だ
った、透明耐熱性フィルム(ポリイミドフィルム)の量産製品が紹介されていま
-1-
した。最近話題になっているウエラブルデバイスやメディカルデバイスへの適用
を想定しているようです。一時期過熱気味だった微細加工の競争はかなりクール
ダウンしています。実用化という観点では妥当な方向性かもしれません。ちょっ
と変わったところでは、アルミニウム箔を導体に使ったフレキシブル基板という
製品がありました。軽量化が要求される自動車用途などでは面白いかもかもしれ
ません。
ラージエレクトロニクスに関連して、プリンタブル・エレクトロニクスに関す
る新しい技術にもなかなか実用的なものが見られました。こちらも、一時期流行
った10ミクロン以下の超微細回路競争を脱して、30〜50ミクロン程度の回
路を高い信頼性で形成できることをアピールしています。また、伸縮する回路、
透明電極(銀ナノワイヤ)の形成なども実用的なレベルになりつつあるようです。
印刷技術としては、相変わらずスクリーン印刷が主流ですが、中にはグラビア印
刷で、異なる厚さを同時に印刷するなどというユニークなアイデアが提案されて
いました。
技術的な話ではありませんが、プリント基板を、インターネットを通じて販売
するサービスが紹介されていました。米国などでは、かなりプリント基板のネッ
ト販売が行われていますが、日本でも着実に浸透しつつあるようです。販売低迷
が続く日本のプリント基板業界にとって、事態を打開する新しい方向性として注
目されます。
JPCAショーは、業界団体が主催するイベントです。日本のエレクトロニク
ス業界が低迷する中で、プリント基板関連メーカーには、状況を打開すべく、新
しい方向性が求められています。そのような市場環境の中で、JPCAショーは
様々な形で情報を提供しており、その成果は少しずつではありますが、着実に実
を結びつつあるように見えます。
DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
今週のヘッドライン
2015年6月7日
1.IDC(米国の市場調査会社)5/19
世界のIoT市場は、2013年の422億ドルから、2018年には98
8億ドルに成長と予測。18.6%/年の成長率。
2.Nanowerk News(米国のメディア)5/20
ナノ量子ペーパー、柔軟で曲げることができる透明蛍光セルロースの実用化
が進む。
3.MIC(台湾の市場調査機関)5/21
2015年における世界のノートブックPCの出荷は、前年比2.7%減少
の1億67百万台に留まると予測。
-2-
4.Samsung Electronics(韓国のエレクトロニクス最大手)5/20
第1四半期に、タイでのテレビ生産を停止。ベトナムへ生産を移転するとの
憶測。
5.LG Display(韓国のディスプレイメーカー大手)5/19
壁紙のように、壁に貼り付けることが可能な55インチOLEDパネルを発
表。
6.Nokia(フィンランドの通信機メーカー大手)5/21
先に操業を停止したインド、チェンナイの工場を売却へ。一時は8000人
を雇用。
7.IC Insights(米国の市場調査会社)5/21
第1四半期における、半導体メーカートップ20社の売り上げ合計は、前年
同期比で9%の増加。
8.SEMI(米国の半導体製造装置業界団体)5/21
4月の北米半導体製造装置産業のB/Bレシオは、前月から0.06下がっ
て1.04に。出荷額、受注額とも増加。
9.TrendForce(米国の市場調査会社)5/22
2015年におけるアップル社の iPhone の出荷は、2億3千万台に達する
と予測。秋にリリースされる新モデルに期待。
10.Samsung Electronics(韓国エレクトロニクス最大手)5/22
台湾の半導体メーカーからの半導体調達を拡大へ。Himax、 Richtek、
Silergy 社などから。
11.Digitimes Research(台湾の市場調査会社)5/22
2015年における Samsung Display と LG Display の OLED 事業の capex
は、前年の7兆ウォンから、6.7兆ウォンに減少。
12.Daimler(ドイツの自動車メーカー大手)5/23
米国の Qualcomm 社と協力して、自動車用無線給電システムの実用化を目
指す。
13.DIGITIMES(台湾の業界メディア)5/25
アップル社の iPhone が好調のため、2015年における台湾の大手フレ
キシブル基板メーカーの出荷は大幅増の見込み。
14.MIC(台湾の市場調査機関)5/21
-3-
無線給電関連製品の市場は、2015年の20億ドルから、2019年に
は79億ドルに成長と予測。
15.Newbury Electronics(英国のプリント基板メーカー)5/20
プロトタイプのプリント基板を短時間で製造するサービス。朝9時までに
受注すれば、その日の内に納入。
16.IDC(米国の市場調査会社)5/26
2015年における世界のスマートフォン出荷は、前年比11.3%増の
14億4730万台に達する見込み。
17.Karlsruhe(ドイツの研究開発機関)5/25
三次元対象物に直接ELパネルを印刷するプロセスを開発。
18.TSMC(台湾の半導体メーカー大手)5/27
10nm ルールのパイロットラインが6月末までに稼働の予定。アップル
社の次世代プロセッサーA10への対応。iPhone7 や、他の iOS 製品用。
19.PCB Technology(イスラエルの基板メーカー)5/28
インドでのプリント基板製造のために、地元メーカーとの合弁会社の設立
を画策。6千万ドルの投資を見込む。
20.FlexEnable(英国のベンチャー企業)5/29
ガラスを使わない液晶パネルの実用化のためのブレークスルー技術を開発。
低コストのフレキシブルディスプレイに目処。
21.Hon Hai Precision(台湾のEMSメーカー最大手)5/30
タッチパネルメーカーの子会社、GIS 社(General Interface Solution
Holding Ltd.)を6月に台湾の株式市場で上場へ。
(注)このヘッドライン・ニュース・レターは速報性を重視するために、若干の
誤訳や数字の変換に誤りがある場合もございます。ご了承下さい。
DKNリサーチ
栄泰産業株式会社
DKNリサーチのイベントスケジュール
* JPCAショー2015 6月3日〜6日
*継電器・コンタクトテクノロジ研究会、6月19日、機械振興会館
「プリンタブル・エレクトロニクスの基本構成と応用技術
その5. アプリケーション例について」
-4-
http://www.elcontech.jp/
* コンバーテックセミナー 6月26日
「初手から学ぶプリンタブル・エレクトロニクス」
http://www.ctiweb.co.jp/seminar/pe2015/
最近のDKNリサーチの論文、出版物
下記URLを開けてみてください。最近のものの一覧をみることができます。
コピーライトの問題がないものは全文を閲覧することもできます。
http://www.dknresearchllc.com/DKNRArchive/Newsletter/Newsletter.html
http://www.dknresearchllc.com/DKNRArchive/Articles/Articles.html
-5-