#1539、2015年12月20日 今週の話題 セミコンジャパン2015 エレクトロニクス業界の1年を締めくくるイベント、セミコンジャパン201 5が、12月16日から東京ビッグサイトで3日間開催されました。翌年のエレ クトロニクス産業の動向を占う上で重要な展示会ですので、最終日になりました が、金曜日に様子を見に出かけました。 会場に近づいて嫌な感じがしてきました。この手の展示会で最終日のお昼ごろ というと、かなりの人出があるのが普通ですが、今回の場合、かなり少ないので す。いつもなら、国際展示場の駅に列車が着くと、会場入り口まで人の列が続く ものですが、今回はとぎれとぎれです。もしかして、場所か日時を間違えたので はないだろうかと心配になってしまいます。 確かに展示会はありましたが、会場は東館だけで、それも6ホールあるうちの 5ホールだけを使っての開催です。かつて幕張メッセで全てのフロアを覆い尽く していたのに比べれば、おそらくその展示規模は半分以下になっているでしょう。 まさに日本の半導体産業の落日を表している感じです。開き直れば、別に今年初 めてのことではないので、それほど驚くほどのことではないかもしれませんが、 今回も大きなリバウンドの兆しはなかったというのが第1印象です。 私は、自分の興味が材料や組み立てなので、後工程を中心に見て回りましたが、 やはり来場者の少なさは否めません。また、かつては韓国や台湾のメーカーが 10 人単位でチームを組んで視察や調査に来ていたものですが、そのような風景 はもう見られません。もう日本から学ぶことは無くなってしまったのでしょうか。 ショーの事務局としては、「IoT」をメインテーマとして掲げ、そのための大 きなスペースを設けていますが、参加企業の展示を見ると、いまひとつ内容が曖 昧で、「IoTとは何なのか?」を知りたい人々にとっては歯がゆいものに終わっ ているようです。来場者の人気もいまひとつです。そのような中で、Amazon Web Service 社のデモンストレーションが多くの観客を集めていました。米国の電気 自動車メーカー、Tesla 社のモックアップモデルが展示され、結構人が集まって いましたが、何を訴えたいのか、売り込みたいのか、今ひとつ明確ではありませ ん。無料セミナーや、企業個別のレクチャーなど、新しいスタイルでの試みがな されていましたが、聴衆の入りの具合はいまひとつのようでした。 出展社としても、主要な半導体メーカーやパッケージメーカーの展示がほとん どないだけに、いささかインパクトに欠ける内容です。そのような中で、一部の 製造設備や検査設備のメーカーは、それなりに意欲的な展示だったと言えるかも しれません。DISCO 社や Advantest 社などはかなり大きなスペースに、多くの新 製品を展示し、かなりの人を集めていました。東レエンジニアリング社は化学部 -1- 門との共同出展でしたが、検査装置には興味深いものがありました。素材メーカ ーでは、日本電気硝子社の極薄ガラステープ、信越ポリマー社の粘着キャリアシ ートなどにユニークなものが見られました。一方で大手装置メーカーでは、大し た展示がなく、商談のためのサロンが主体のようなブースも複数見られました。 おもしろかったのは、ミニマルファブという会社で、会場でCMOSのチップを 現場で製作するというデモンストレーションで、その周りには何重もの人垣がで きていて、細かいところはよく見ることができないような状況でした。 地方からは、東北6県が地元のユニークな企業を紹介しておりました。多くは 金属加工、プラスチック加工、表面処理などの受託加工のメーカーでしたが、そ れぞれユニークな技術やサービスを持っているようで、見るべきものがありまし た。大学の研究室の出展もかなりの件数になっています。また、高等工業専門学 校もまとまった展示をしていました。 ちょっと気になったのは、中古装置のディーラー、設備のリース会社の出展が 多かったことです。これまでもなかったわけではありませんが、以前は小ぢんま りとした地味なブースがほとんどでした。ところが今年の場合は、かなり大きな ブースで、ディスプレイにもお金をかけています。場所もメインストリートの目 立つところです。それだけ中古装置の市場が大きくなっているということなので しょうが、素直に喜べないところです。 海外からは、ドイツが意欲的で、大きなブーススペースを取り多くの企業がま とまった展示をしていました。ほとんど私が知らないような企業ばかりですが、 さすがに山椒は小粒でもピリリと辛いという感じがします。こんなところに固有 技術がありうるのだ、というお手本と言えるかもしれません。他には、アメリカ、 ロシア、韓国、台湾などがまとまった出展をしていましたが、いずれも少数企業 の参加で、いまひとつ吸引力は感じられませんでした。 全体としては、やはり半導体メーカーの出展がほとんどないので、メインスト リームの動きがつかめません。世界の半導体市場は拡大しているだけに、日本の 半導体産業の低迷ぶりが目立つ形になり、その様子が展示会に現れているのでし ょう。残念ながら、現在言えることは、来年も日本の半導体産業、エレクトロニ クス産業は苦しい状況が続くだろうということです。 DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター) 今週のヘッドライン 2015年12月20日 1.Research and Markets(米国の市場調査会社)12/4 世界の光ファイバー用コネクターの市場は、2020年には49億ドルの規 模に成長すると予測。年平均の成長率は9.9%。 2.TSMC(台湾の半導体メーカー最大手)12/7 中国に12インチウェハーの半導体工場を建設する計画。デザインサービス センターも開設へ。 -2- 3.University of California(米国)12/7 1Vでスイッチングする新しいトランジスタを実現。最新のトランジスタに比べ て、消費電力を90%以上削減。 4.Micron(米国の半導体メーカー大手)12/7 プエルトリコの DRAM の組立検査工場を閉鎖し、業務を中国へ移管する計画。 5.IDC(米国の市場調査会社)12/9 2015年第3四半期における、世界の大型液晶パネルの出荷は、前年同期 比で12%減少の2億700万枚に。 6.SEMI(米国の半導体製造装置業界団体)12/7 第3四半期における世界の半導体製造装置の出荷額は、全年同期比で9%増 の96億ドル。受注額は7%減の87億ドル。 7.Research in China(中国の市場調査会社)12/9 2015年における世界の自動車用プリント基板の市場は、前年比6.5% 増の52.8億ドルの規模。 8.BCC Research(米国の市場調査会社)12/10 世界のエレクトロニクス用化学品、材料の市場は、2015年の229億ド ルから、2020年には305億ドルにまで成長と予測。年率5.9%の成 長率。 9.Samsung Display(韓国のディスプレイメーカー)12/10 透明 OLED ディスプレイパネルの量産を12月中に開始の予定。米国向けの ショーケース用途。 10.Samsung Display(韓国のディスプレイ大手)12/10 中国の携帯電話メーカーからの強い要請により、小型、中型の OLED パネル の価格を2016年半ばまでに20%下げることを目指す。 11.Stanford University(米国)12/10 カーボンナノチューブを使ってベアチップの三次元積み上げパッケージ技術 を開発中。実用レベルでのプロトタイプ製品を完成。 12.Dow & DuPont(米国の化学メーカー大手)12/11 両社は合併することで基本的に合意。世界最大の化学会社が誕生。合併後、 相当規模のリストラの可能性。 -3- 13.Quanta Computer(台湾のエレクトロニクス大手)12/11 11月のノートブックPCの出荷は380万台で、前月比50万台の増加。 台湾の Asustek 社、米国のHP社向けが好調。 14.Foxconn(台湾のEMS最大手)12/11 2015年11月の出荷額は95.66億台湾ドルで、前月比1.11%、 前年同月比で37.34%の減少。 15.DIGITIMES(台湾の業界メディア)12/11 台湾のパーソナル・コンピュータ関連のメーカーは、少なくとも2016年 の上半期までは、マイナス成長を見込む。 16.DIGITIMES(台湾の業界メディア)12/11 11月の台湾フレキシブル基板メーカーの出荷動向。ZDT 社は98.5億 NTD でこれまでの最高記録。Career Tech は15.5億 NTD、Flexium は18. 8億 NTD で、前年同月比でマイナス成長。 17.DIGITIMES(台湾の業界メディア)12/14 2015年における Asustek や ECS などの大手マザーボードメーカーの出荷 は、前年比で10%程度減少する見込み。 18.University of Leuven(ベルギーの大学) 12/14 シンガポールの国立大学と協力して、次世代のエレクトロニクス用に、気相 での結晶形成プロセスを開発。最も空隙率の高い物質を実現。 19.Apple(米国のエレクトロニクス企業大手)12/14 台湾北部にプロダクションラボラトリーを開設。とりあえず50名の技術者 を採用、液晶や OLED の技術を開発。 20.3M(米国の電子材料メーカー大手)12/15 世界のスマートフォン、タブレットPC、薄型テレビなどの需要は低迷して おり、10月には1500名の従業員を削減。株価は5%の下落。 (注)このヘッドライン・ニュース・レターは速報性を重視するために、若干の 誤訳や数字の変換に誤りがある場合もございます。ご了承下さい。 DKNリサーチ 栄泰産業株式会社 DKNリサーチのイベントスケジュール -4- * インターネプコン 2016年1月15日 「モバイル機器と最新機能性フレキシブル基板」東京ビッグサイト www.nepcon.jp/seminar/ www.nepconjapan.jp/seminar/ 最近のDKNリサーチの論文、出版物 下記URLを開けてみてください。最近のものの一覧をみることができます。 コピーライトの問題がないものは全文を閲覧することもできます。 http://www.dknresearchllc.com/DKNRArchive/Newsletter/Newsletter.html http://www.dknresearchllc.com/DKNRArchive/Articles/Articles.html -5-
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