#1535、2015年11月15日 今週の話題 米国携帯電話の時刻表示 アメリカの携帯電話の時刻表示について、数年前から気になっていることが あります。ご存知の通り、米国では夏時間の制度があり、その切り替えに際して は、結構トラブルがあります。ちなみに英語で冬時間、夏時間は Standard Time、 Daylight Saving Time(DST)と言います。英語で Summer Time というと、「夏の 季節」ということになり、意味するところがかなり違ってきます。今回の場合は、 10月31日土曜日の夜から11月1日日曜日にかけて冬時間への切り替えが行 われました。夏時間から冬時間への切り替えの場合は、1時間加えられることに なります。時間に追われる仕事をしているときなどは、この1時間がかなりの助 けになったりします。 さて、問題は携帯電話の時刻表示に関わることです。日本では夏時間のシステ ムがありませんから直接の比較ができませんが、もしあったら、携帯電話の時刻 表示は即座に変わるようにシステムが設定されることでしょう。ところが、私が 米国で使っている携帯電話の場合には、すぐには変わらないのです。何時変わる のかと注意していましたら、5日目の木曜日にようやく変わっていました。よそ からの苦情が相次いで、ようやく重い腰を上げたという感じです。一方で、私が 日本から持ってきた日本のスマートフォンは、現地の冬時間へ即座に切り替わっ ていました。(添付したのは証拠写真です。 私が米国で契約している携帯電話はAT&Tで、ハードはノキア社のものです。 日本ではソフトバンクでの契約で、ハードは米国アップル社の iPhone です。で すから、問題は携帯電話のハードによるものではなく、明らかにキャリアのサー ビスシステムによるものです。これが日本であったら、抗議や苦情の電話が殺到 するでしょう。ところが、米国では忘れた頃に切り替わる、ということがまかり 通っているのです。おそらく、米国でもクレームは少なからずあるのでしょう。 しかしながら、米国の多くの企業で、多少のクレームについては、窓口での処理 だけで済ませ、本格的な対応はしないという内規があると聞いたことがあります。 -1- 左が米国の携帯電話、右側が日本から持ち込んだスマートフォン 確かに米国の時刻の問題は、簡単ではありません。アメリカは東西に長いので、 大陸だけでも、東海岸から西海岸まで4つの時間帯があります。それに、アラス カ、アリューシャン列島、ハワイを加えれば6つの時間帯になります。多くの州 は一つの時間帯でまとまっていますが、サウスダコタ州やネブラスカ州のように、 州の東西で時間帯が変わる所もあります。また、アリゾナ州やインディアナ州の ように、夏時間制を採用していない州もあります。私自身、時間帯の切り替えを 勘違いして、トラブルになったことは、一度や二度ではありません。冬時間から 夏時間への切り替えを忘れて、飛行機に乗り遅れたというような話はよく聞きま す。 このように、米国の時刻の問題は複雑です。しかしながら、現在のデジタル技 術とGPS技術をもってすれば、解決困難というほどのものではないでしょう。 現に、日本から持ち込んだスマートフォンでは、米国内できちんと対応がなされ ています。きめ細かなサービスを行う日本の携帯電話会社であれば、夏時間との 切り替えや、時間帯を越えての移動に際しての注意喚起の表示ぐらいは付けるで しょう。 時刻表示がきちんとしているからといって、それだけで新規のユーザーを取り 込むことはできないでしょう。しかし、このようなきめ細かなサービスの集大成 としての製品は、多くのユーザーの信頼を得ることができるでしょう。かつては 日本の大手エレクトロニクスメーカーの製品はそのような観点で評価されていま したし、現在でも米国の消費者が日本車を選ぶ理由は、信頼性ときめ細かなサー ビスだとされています。 このところ、世界市場で凋落の感を否めない日本のエレクトロニクス製品です が、信頼性やきめ細かなサービスというような観点で自らの商品を見直せば、復 活の道筋も見えてくるのではないでしょうか。ただし、ユーザーの信頼というも のは、ちょっとしたアイデアでできるものではありません。地道な実績の積み上 げが必要です。一旦失った信用を回復させるのは容易なことではありません。日 本のエレクトロニクスメーカーの“地道な”努力に期待したいと思います。日本 -2- 製品のブランド力はまだ残っています。それが地に落ちないうちに回復させる目 処をつけることが必要です。 DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター) 今週のヘッドライン 11月15日 1.University of Wisconsin-Madison(米国)11/1 これまでの技術に比べてはるかに高速で動くフレキシブル光トランジスタの 開発に成功。 2.Hutchinson Technology(米国のHDD部品メーカー)11/2 日本の電子部品メーカーTDKに事業を売却することで合意。一株あたり4 ドル。 3.DIGITIMES Research(台湾の市場調査会社)11/3 第3四半期における中国のタブレットAPの出荷は2430万ユニット。前 期比24.3%、前年同期比29.6%の減少。 4.OLEDWorks(ドイツのベンチャー企業)11/3 オランダの Philips 社から、OLED の事業とビジネスと製造設備を買収。OLED 光源の生産は継続。 5.Kimball Electronics(米国のEMS大手)11/3 ルーマニアの Olympia Park に新しい工場(床面積6150平方メートル) を開設。年末までに生産を開始する予定。 6.AT&S(欧州の基板メーカー最大手)11/3 中国の Chongqing Municipality で新工場を建設中。2016年初めに稼働 の予定。 7.Phidias(米国の装置メーカー)11/4 低価格で全ての電子部品を形成可能な3Dプリンターを実用化。プリント基 板の製作も可能。 8.Plexus(米国のEMS大手)11/4 カリフォルニア州 Fremont の工場(床面積46000平方フィート)を閉鎖 することを決定。200名の従業員は解雇へ。 9.Apple(米国のエレクトロニクス企業大手)11/5 -3- 発売以来、アップルウォッチの出荷は700万セットを越える。他の全ての メーカーの過去5四半期分の販売台数を上回る。 10.PEN Inc.(米国のベンチャー企業)11/5 Applied Nanotech 社と協力して、3Dプリンター用に、多機能の銅ナノイン クを開発。医療用などに、金属の製作が可能。 11.DIGITIMES(台湾の業界メディア)11/5 大手HDDメーカーはパーソナルコンピュータへの依存度を下げる。 Western Digital では34%まで低下。 12.Arlon(米国の基板材料メーカー)11/5 アラミド樹脂をベースにした銅張積層板とプリプレグの新しいバージョンを 発表。極めて高い寸法安定性。(〜4ppm) 13.DIGITIMES(台湾の業界メディア)11/6 SPIL, UMC などの台湾の大手半導体メーカーが合弁会社を設立することで合 意。パッケージ技術の確立が目的か。 14.MarketsandMarkets(米国の市場調査会社)11/6 基板の表面実装用設備の市場は、2020年には47.3億ドルの市場に成 長すると予測。平均成長率は9.84%/年。 15.空軍研究所(米国)11/5 新たにフレキシブル・エレクトロニクスのための研究所 FHE-MII(Flexible Hybrid Electronics Manufacturing Innovation Institute)を設立。ウェ アラブルにするために、伸縮性のあるデバイスの実現を目指す。 16.ZD Technology(台湾の基板メーカー最大手)11/9 10月の出荷額は113億台湾ドル(345億米ドル)で新記録。前月比2 2.5%、前年同月比26.1%の増加。中国の Huaian に建設中の新工場 は、来年第2四半期に稼働の予定。 17.TE Connectivity(米国の電子部品メーカー最大手)11/9 サーキットプロテクションデバイスの事業を、Littelfuse 社に3.5億ドル で売却。 18.Taipei Times(台湾の一般メディア)11/10 大手パーソナルコンピュータメーカーの10月の出荷が大きく減少。最近の 回復傾向から、再び縮小傾向へ。 -4- 19.Advanced Circuits(米国の基板メーカー大手)11/9 メディカル市場の事業を強化するために、カルフォルニア州 Redwood の基板 メーカーCoastal Circuits 社を買収。 20.DRAMeXchange(台湾の市場調査会社)11/10 最近の世界の DRAM 市場の80%以上を韓国メーカーが支配。Samsung: 56.9%, SK Hynix:26.4% 21.Sandler Research(米国の市場調査会社)11/10 世界の透明エレクトロニクスの市場は、ディスプレイなどの用途を中心に、 2019年間で年率59%の成長を維持すると予測。 22.DIGITIMES Research(台湾の市場調査会社)11/11 10月における世界のノートブックPCメーカーの出荷は、軒並み30%を 越える下落。前年同月比でも二桁の減少。 (注)このヘッドライン・ニュース・レターは速報性を重視するために、若干の 誤訳や数字の変換に誤りがある場合もございます。ご了承下さい。 DKNリサーチ 栄泰産業株式会社 DKNリサーチのイベントスケジュール * 日本テクノセンターセミナー 11月30日 「高機能高密度フレキシブル基板の設計と携帯用電子機器、ウエラブル機 器、医療機器への応用」(※DKNリサーチの紹介で10%割引) http://www.jtechno.co.jp/seminar/ID53IPR6Z9X/%E9%AB%98%E6%A9%9F%E8%83%BD %E3%83%BB%E9%AB%98%E5%AF%86%E5%BA%A6%E3%83%95%E3%83%AC%E3%82 %AD%E3%82%B7%E3%83%96%E3%83%AB%E5%9F%BA%E6%9D%BF%E3%81%AE%E8 %A8%AD%E8%A8%88%E3%81%A8%E5%BF%9C%E7%94%A8/ * 洋学史研究会 12月6日 青山学院大学 「仙台藩狼河原村有美堂文書に見る、蘭方医学と伝統医学の融合過程」 * インターネプコン 2016年1月15日 「モバイル機器と最新機能性フレキシブル基板」東京ビッグサイト www.nepcon.jp/seminar/ www.nepconjapan.jp/seminar/ 最近のDKNリサーチの論文、出版物 -5- 下記URLを開けてみてください。最近のものの一覧をみることができます。 コピーライトの問題がないものは全文を閲覧することもできます。 http://www.dknresearchllc.com/DKNRArchive/Newsletter/Newsletter.html http://www.dknresearchllc.com/DKNRArchive/Articles/Articles.html -6-
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