グローバル競争の要点:業界別アプローチ - Strategy

この文書は旧ブーズ・アンド・カンパニーが PwCネットワークのメンバー、Strategy& になった
2014 年 3 月 31 日以前に発行されたものです。詳細は www.strategyand.pwc.com. で
ご確認ください。
グローバル競争
の要点:
業界別
アプローチ
著者:ブーズ・アンド・カンパニー
監訳:加藤 瑞樹
長引く不況下にあって、経営者が、政治や規制、変わり身の
第二は、戦略と結びついた各社独自のケイパビリティであ
早い消費者、物価上昇といった外部の問題に注意を向けるの
る。成 功する企業では、これらが結びついて相互に補強し合
はやさしい。しかし、あらゆる変化を生み出すのは、じつのと
う
「ケイパビリティシステム」となり、その企業が得意とすると
ころ内部要因である。同一の競争環境下において、成 功する
ころが明確になる。ディズニーの若 年層向けマーケティング
企業があれば失敗する企業もあるのはその証左である。
や、アマゾンのオンラインリテールの巧さは突出した例であ
企業の成功は、当該企業のケイパビリティ・ミックス(ビジ
るが、これらは同業他社が等しく有するわけではなく、優れた
ネスプロセス、知見、スキル、人材、組織形態の組み合わせ)に
企業固有のケイパビリティである。
よって決 定づけられる。とりわけ近年のような困難な時期に
ブーズ・アンド・カンパニーでは、成功を規定するケイパビリ
あっては、経営者は「今後、業界で勝ち抜くために必要なケイ
ティシステムの検討を重点的に行っている。本稿では、10 の
パビリティを当社は持っているか」と問いかけるべきである。
業種それぞれについて、強みの源泉となる特徴的なケイパビ
どの 企 業 も 必 須で 充 足すべきケイパビリティは 2 つある。
リティをご紹介する。
第一は、たとえば小売業におけるサプライチェーン管理や、通
信事業者におけるネットワーク構築・安定運営などのように、
当該セクターで事業を行う限りはどの企業も満たすべきケイ
パビリティである。
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特集 ◎ 新しい日本的経営に向けて
トーマス・A・スチュワート
([email protected])
加藤 瑞樹(かとう・みずき)
([email protected])
ブ ーズ・ア ンド・カ ン パ ニ ー の チ ーフ
ブーズ・アンド・カンパニー 東京オフィスの
マーケティング・アンド・ナレッジ・オフィ
ヴァイス・プレジデント。金融、総合商社、
サー。
航空、鉄道、医療、公的金融機関、官公庁な
どに対し、企業再生、新規事業戦略、民営
化支援、M&A 、
業務・組織の構造改革など
のプロジェクトを数多く手がける。東京オ
フィスの金融セクター、トランスポーテー
ションセクターのリーダー。
1. 化学
「 Natural Supply Chain 」を
活用せよ
化学会社にはコントロールできない競
争条件がいくつかある。顧客の立地や、原料の供給元の立地
などがそうであるし、石油・天然ガスの新たな共有元は原料コ
ストを変動させる。世界経済の動向により、需要も左右される。
この業 界における1つの重要なケイパビリティは「 Natural
定した売上利益を享受することができる。化学薬品自体を比
較的低価格で販売し、顧客がより付加価値の高いサービスや
商品を求めてくるように仕向けることができるのである。
デニス・キャシディ Jr.(ヴァイス・プレジデント /ダラスオフィス)
([email protected])
ジャヤント・ゴットペーガー(プリンシパル /ヒューストンオフィス)
([email protected])
マルクス・モラビッツ(ヴァイス・プレジデント /フランクフルトオフィス)
([email protected])
Supply Chain」の活用である。
「 Natural Supply Chain」では、まず化学会社の製品ポー
トフォリオを 3 つの大きなカテゴリー(基礎化学品、特殊化学
*「 2012 年ブーズ・アンド・カンパニー 化学業界の見通し」については、
(英文)。
booz.com/chemicals-2012 を参照
品、石油化学品)に分類したうえで、生産者がどのように付加
価値をつけるかによってさらに細分化する。市場の要件に応
じ、企業全体に共通の要素を適用することが目的である。た
2. 産業財
とえば、リードタイムが長く、標準的な供給量の場合にはある
ストロング型の製品管理を
パターンの物流管理を行い、リードタイムが短い製品や発注
取り入れよ
にフレキシビリティを持たせる必要がある製品には別の物流
管理を行う。
重機、建設、建築資材、タービン・風車な
このケイパビリティは、化学会社の経営の有効性を格段に
どの製造・保守会社が、その独自のケイパビリティの発展に投
高める。
「 Natural Supply Chain」を導入したある大手メー
資するこのうえない機会が訪れている。
カーは、フルフィルメントに要する時間を 20 %短縮し、在庫を
最も期待できることの1つは、製品管理の改善である。多く
40 %減らし、操業コストを約 20 %削減させた。
の 企業では、意 思 決 定がさまざまな部 署 の間で寸断されて
もう1つ の ケイパビリティは、
「 ソリューション・プ ロ バイ
いる。製品ラインの維持・廃棄は営業部が、改良版の発売時期
ダー」としての価値提供である。このケイパビリティは、顧客
は研究開発部が、サプライヤー選 定の最終決 定は業務部が、
が原料と製品を最大限に活用できるように手助けする。
といった具合である。権限を有しているように見える製品管理
たとえば、スイスの化学会社ロンザ・グループは、動物細胞
者には、じつのところ重要な意思決定権はなく、状況の監視に
および微生物培養、さらにはライフサイエンス製造に関する専
とどまっている。低コストのメーカーでは、立 派だが必要 の
門技術を提供している。顧客である製薬会社は、製品をより短
ない高価な機能は拒絶され、高級品メーカーでは、顧客の体験
時間で市場に送り出すことができる。
を損なうようなコスト削減 策は阻止される。このようなアプ
この種のケイパビリティを構築する企業は、持続可能で安
ローチは局所的には有 効だが、顧客 の声をたなざらしにし、
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イノベーションが遅 れ、製品の収 益 性は期待外れに終わる、
のビジネスオペレーションの変更を可能にした。これは、デジ
といった結果を招くケースが多い。
タル・トランスフォーメーションをスタートさせたテクノロジー
これに対し、ストロング型の製品管理は、製品管理者の立場
企業に、インダストリー・バーティカル(特定セクターにおいて
を部署横断的な役割にまで押し上げ、イノベーションの時期、
相互に関係を持つ企業のバリューチェーン)の有力なパート
価格設定、チャネル戦略、その他製品ポートフォリオの成功に
ナーになる機会が与えられる、ということを意味する。
関わるあらゆる意思決 定権を、製品管理者に与える。このこ
しかし、一流のIT企業がこの役割を担うためには、新たなケイ
とが、企業の戦略を製品・サービスの設計からローンチにまで
パビリティシステムを構築する必要がある。各インダストリー・
浸透させる。ストロング型の管理を実践する企業では、製品
バーティカルがどのようにビジネスを行うのか、付加価値を高
管理者が戦略判断の中心となる。
める機 会はどこにあるのか、新テクノロジーは各インダスト
ストロング型の製品管理が十分に生かされた場合、それはア
リー・バーティカルが直面する固有の問題の解決にどう貢献で
カウンタビリティ・モデルとなる。すなわち、結果に対する責任
きるのかを、より深く理解しなければならない。
は、総合的な視点に欠ける複数の人間ではなく、製品のライフ
IT企業は、顧客と協力し、企業の境界をまたいでスケールアッ
サイクルの観点で見ることができる1人が負う。競争環境の激
プできるような業界特有のソリューションを構築することを学
化、顧客の要求水準の増大に対しては、これが他社と差をつけ
ばなければならない。そして、とくにサプライチェーン全体で、
るケイパビリティになりうる。顧客とのつながりが深まり、企業
他社には不可能なセキュリティと信頼性を提供しなければなら
が適 正な見 返りを得て市場で勝ち組になる可能 性が 高まる
ない。言い換えれば、IT企業は、新種の顧客
(垂直産業に組み込
からである。
まれ、デジタルの道を進む企業)のために、顧客の意見を取り入
れ、カスタマイズされた新オペレーティングモデルを提供する
ダン・ホランド(プリンシパル /デトロイトオフィス)
([email protected])
バリー・ヤルゼルスキ(ヴァイス・プレジデント /フローハムパークオフィス)
([email protected])
アービンド・コーシャル(ヴァイス・プレジデント /シカゴオフィス)
([email protected])
マリアン・ミューラー(プリンシパル /フローハムパークオフィス)
([email protected])
*
「 2012 年ブーズ・アンド・カンパニー 産業財業界の見通し」については、
(英文)。
booz.com/industrials-2012 を参照
3. ハイテク
必要がある。
今井 俊哉(代表取締役 / 東京オフィス)
([email protected])
アレックス・コスター(プリンシパル /チューリッヒオフィス)
([email protected])
ケニー・クルツマン(シニア・ヴァイス・プレジデント /ヒューストンオフィス)
([email protected])
マシュー・ル・メルル(ヴァイス・プレジデント / サンフランシスコオフィス)
([email protected])
ピエール・ペラドー(ヴァイス・プレジデント /パリオフィス)
([email protected])
*
「 2012 年ブーズ・アンド・カンパニー ハイテク業界の見通し」については、
(英文)。
booz.com/tech-2012 を参照
バリューチェーンを
デジタル化せよ
クラウド・コンピューティング、コネク
ティビティ、ビッグデータ分析など、複数のトレンドが重なり、情
4. 自動車
ブラックスワンに備えよ
報通信技術(ICT)企業とその顧客はこれまでに築きあげたビ
ジネス手法を考え直さざるをえなくなっている。テクノロジー
2011年、米国の自動車・軽トラック販売
は最終的にその期待に応えている。
台 数 は 1,25 0 万 台を 超 え た。2 010 年 の
昨今の IT 技術は、ヘルスケア、公共事業、輸送などのさまざま
1,160 万台からは伸びているが、2000 年の 1,730 万台には遠
な業界が次から次へと、製品ラインナップ、市場参入戦略、社内
く及ばない。2010 年代半ばの自動車メーカーの売上は、世界
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特集 ◎ 新しい日本的経営に向けて
各国からの廉 価な 新 型モデルの急 速 な流 入、新興市場 の 需
5. 製薬
要増大、日系自動車メーカーとデトロイトの自動車メーカー
効果的に市場に出よ
の米国でのシェア争いなど、多数の予測できない要因によっ
て左右されるだろう。
この 20 年間、大手製薬会社は、ベスト
自動車メーカーにとって一番重要なケイパビリティは、やは
セラー 処 方 薬をベースとした 販 売・マー
りオペレーションの最適化である。自動車メーカーは基本に
ケティング手法に依存してきた。しかし、もはやこのモデルで
立ち返る必要がある。すなわち、市場が望む新 型車の開発、
成長を生み出すことはできない。
需給のバランス調整、新技術への上手な投資である。
製薬会社は今後、製品を市場に出すための特徴的な新しい
また、昨年発生した日本の地震・津波とタイの洪水は、
「ブ
ケイパビリティシステムの構築に力を入れる必要があり、新興
ラックスワン
(予測できない出来事)」型の大きな災害であり、
市場においてはとくにそうである。世界の医薬品市場に占め
このことがもう一つの重要なケイパビリティ、すなわち「費用
る新興市場の割合は、2010 年の 19% から、2015 年には 30 %
効 率 の 高 い方 法 で の サプライチェーン 混 乱 回 避とリスク管
に増大すると予想される。
理」を浮き彫りにした。
今後は、保険会社と協力し患者の便益に寄与するような環
こうした恐ろしい出来事の後では、すべてのリスクを評価
境を創ることも重要であるし、法令遵守管理プログラムや電
し、大がかりな緊急時対策を練ろうとする傾向が現れるのは
話ホットラインサービスの充実など、付加価値を創出する患
当然である。しかし、より焦点を絞った、柔軟性に富んだ予防
者向けサービスの開発も重要なケイパビリティになる。わず
策がより高い効果を上げるにもかかわらず、費用のかかる冗
かな便益のための過剰投資でなく、価値が実際に得られる場
長なサプライチェーンを構築することは妥当と言えない。
所に投資する必要がある。
企業は、重要性、被害の確率、費用、実行容易性などのファ
また製薬会社は、医薬品の処方者だけでなく、看護師や薬
クターに従い、ブラックスワン対策の優先順位づけを行うほ
剤師を含むヘルスケアシステムの全関係者をターゲットとす
うがよい。たとえば、重要な電子部品を 1カ所で生産すること
る、マルチステークホルダー型マーケティングに向かう必要
は、魅力的な規模の経済を創出する一方で、大きなリスクを
がある。そのためには、社内におけるさまざまな機能間の緊
も生む。異なる地 域の 少なくとも 2 カ所の施 設を稼 働させる
密な協力体制が必要になる。
必要がある。サプライチェーンに深く根 差した機 動的な対応
これと連動し、コマーシャル・トレード・チャネル
( CTC)管理
システムの開発は非常に難しいが、これを避けて通ることは
の 進化も必要である。CTC ケイパビリティの 例としては、製
できない。それがこのケイパビリティの真髄だからである。
薬会社から薬局への直接販売( DTP)などの新しい流通モデ
ルの構築が挙げられる。DTP は、ターゲットを絞ったロイヤ
マイケル・ベック(シニア・エグゼクティブ・アドバイザー /シカゴオフィス)
([email protected])
ブライアン・コリー(ヴァイス・プレジデント /シカゴオフィス)
([email protected])
スコット・コーウィン(ヴァイス・プレジデント /ニューヨークオフィス)
([email protected])
ルティプログラムへの道を開く。
その他の例としては、メキシコ、ブラジルなどの新興市場
によく見られる、患者ロイヤルティ・カード・スキームもその
一つである。これら新たな CTC モデルの成否は、サードパー
ティーとの新たな提 携関係( DTP 用の 物流サービス会社や、
エバン・ハーシュ(ヴァイス・プレジデント /クリーブランドオフィス)
([email protected])
ロイヤルティ・カード・プログラムの運営会社など)ならびに製
ジャン・ミェチニコフスキ(ヴァイス・プレジデント /シカゴオフィス)
([email protected])
体制の構築にかかっている。
*
「 2012 年ブーズ・アンド・カンパニー 自動車業界の見通し」については、
(英文)。
booz.com/auto-2012 を参照
品供給部門、マーケティング部門、調達部門との緊密な協力
ペテル・ベーナー(ヴァイス・プレジデント /ベルリンオフィス)
([email protected])
リック・エドマンズ(シニア・ヴァイス・プレジデント /ワシントン DCオフィス)
([email protected])
マルクス・エアハルト(ヴァイス・プレジデント /ニューヨークオフィス)
([email protected])
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グレッグ・ロッツ(ヴァイス・プレジデント /ワシントン DCオフィス)
([email protected])
*「 2012 年ブーズ・アンド・カンパニー 製薬業界の見通し」については、
(英文)。
booz.com/pharma-2012 を参照
欧州・中国ではすでに多くの企業が努力しており、このプロセス
で競合他社の先手を取っている。
マット・イゴール(ヴァイス・プレジデント /ニューヨークオフィス)
([email protected])
J. ニーリー(ヴァイス・プレジデント /クリーブランドオフィス)
([email protected])
リチャード・ローリンソン(ヴァイス・プレジデント /ロンドンオフィス)
([email protected])
6. 消費財
ショッパー・マーケティングに
投資せよ
*
「 2012 年ブーズ・アンド・カンパニー 消費財業界の見通し」については、
(英文)。
booz.com/cpg-2012 を参照
この業界は非常に幅広く、多様であり、
すべての消費 財企業に役 立つケイパビリティ群を 1つだけ選
ぶことは困難である。ただし、ショッパー・マーケティングは、
7. 通信
あらゆる一般消費財( CPG )カテゴリーに豊富な成長機会を
体験を提供せよ
提供すると言える。
ショッパー・マーケティングとは、購買時に消費者と関わり、
集 中 化 が 進 む 複 雑 な 市 場で 勝 つため
影 響力を与えるための取り組みを指す。こうした取り組みに
通 信 事 業 者 は 多 彩な 戦 略を 追 求して い
は、店内ディスプレイ、デジタルキオスク、ショッピングリスト・
るが、なかでも興味深い戦略の 1つが、体験プロバイダーへの
アプリ、e クーポンなどがある。たとえば、コナグラ・フーズ・イ
志向である。体験プロバイダーとは、焦点を絞ったアプリケー
ンクは、新たなショッパー・ソリューション・プログラム
「 Give
ションとコンテンツの魅力的な組み合わせや、ハイレベルな
Every Night New Flavor(毎晩、新しい味を)」を開発した。
オンラインユーザー 体 験を顧客に提 供することを意味する。
これは、炒め物やパスタといった人 気メニューのレシピを紹
多くの通信事業者にとってこの道を進むことは非常に難しい
介するもので、調理に必要な材料が一覧性をもって表示され
が、必須のケイパビリティを備えた事業者、投資をいとわない
る。同社は、専用サイトを立ち上げ てデジタルクーポンを提
事業者にとっては期待できる戦略である。
供し、また検 索エンジンにも広告を出し、店舗外でのショッ
この 戦 略 に 必 要 なケイパビリティは、画 期 的 な 新しいア
パー・アウェアネスを強化した。店舗内では、ポップやクーポ
プリケーションとサービスの開発、世界クラスのユーザーイン
ンブックによって、レシピとその材料が置かれた棚に来店者
ターフェースの構築、優れた顧客サービスの提供などである。
を誘導する。
5,800万の顧客に携帯音声通話、データ通信、マルチメディア
このプログラムは、商品販売数、売上高、収益で、前年の二
サービスを提 供する NTTドコモは、これをいち早く取り入れ
桁増をもたらした。同時に、コナグラと提 携した大手食品小
た典型例である。同社は、eウォレット、最新型のパーソナルア
売業者のシェアを著しく増大させた。こうした形で小売業者
プリ、音楽、ビデオクリップ、ゲームへのアクセスなど、多彩な
を勝たせることにより、メーカーは好 条 件 のディスプレイス
画期的サービスを提供してきた。
ペース、小売業者のウェブサイトでの視認性向上、小売業者の
この モ デル は、日 本 な どの 最 も 進 ん だ 通 信 市 場 だ け に
ロイヤルティプログラム 加入者へ のアクセスなど、より価値
見 ら れ る わ け で は な い。ト ル コ 最 大 の 通 信 事 業 者 Turk
の高い機会を手にすることができる。
Telekomunikasyon AS は、シン プル な ユーザー イン ター
ショッパー・マーケティングのすべてを熟知している消費財
フェースと家庭用テレビ電話機などの画期的デバイスを介し、
企業や、とくにデジタルメディアと組み合わせたときに、ショッ
テレメディスン(遠隔医療)サービス、子ども向け音楽やおと
パー・マーケティングをフル活用するために必要なケイパビリ
ぎ話の朗読のオーディオ、2 つの e ラーニング・ポータルを含
ティを構築した消費財企業は、まだ存在しない。しかし、米国・
む多様なインターネット・サービスを提供しており、2008 年に
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特集 ◎ 新しい日本的経営に向けて
は、遠隔医療事業の子会社のみで 1,800 万米ドルの売上を上
ことにより、マーチャンダイジングのケイパビリティを全体的
げている。
に高める必要がある。
とくに競争が激しく、倹約基調が見られる低所得から中所
バフジャト・エルダルビッシュ(ヴァイス・プレジデント /ベイルートオフィス)
([email protected])
ローマン・フリードリッヒ(ヴァイス・プレジデント /デュッセルドルフオフィス)
([email protected])
マイケル・ピーターソン(ヴァイス・プレジデント /デュッセルドルフオフィス)
([email protected])
カリム・サッバー(シニア・ヴァイス・プレジデント /ドバイオフィス)
([email protected])
*「 2012 年ブーズ・アンド・カンパニー 通信業界の見通し」については、
(英文)。
booz.com/telco-2012 を参照
得の市場では、景気見通しが暗い時期には有効な広告宣伝が
不可欠である。クーポンを多用するような顧客に対し、特 性
に合わせた広告宣伝を用意し、提携メーカーと特定消費者グ
ループを対 象としたプロモーションイベントを 企画すること
も求められる。また、その 結果をより正確に評価するために
必要な測定・分析能力を磨くことも重要である。
デニズ・カグラー(プリンシパル /シカゴオフィス)
([email protected])
ニコラス・ホッドソン(ヴァイス・プレジデント / サンフランシスコオフィス)
([email protected])
カーラ・マーチン(ヴァイス・プレジデント / サンフランシスコオフィス)
([email protected])
8. 小売
顧客ニーズの目利きになれ
いまや来 店客がオンラインデバイスを
マルセロ・タウ(プリンシパル /シカゴオフィス)
([email protected])
*「 2012 年ブーズ・アンド・カンパニー 小売業界の見通し」については、
(英文)。
booz.com/retail-2012 を参照
店 舗 に 持 ち 込 む 時 代 で あ る。小 売 業 者
は、業務効率を高めることにより利益を引き上げるためのケ
イパビリティと、より豊かな顧客体 験を通じて売上を引き上
げるためのケイパビリティを伸ばしていくことになる。
9. 銀行
もう1つ の ケイパビリティは目に見 えにくいか もしれない
顧客志向のケイパビリティを
が、一部の小売業者にとっては最も重要な差別化要因になる
構築せよ
だろう。製品カテゴリーにあまりとらわれず、顧客ニーズに基
づいたアプローチを考案する能力である。
成 長 へ の 道 が 限ら れる 銀 行 セクター
消費者が倹約に走るこの時代に、適正な商品を適正な店に
は、向こう3 ∼ 4 年にわたって超 競 争環 境に置かれるだろう。
適正な価格で置くことは不可欠である。消費者は、選りすぐり
銀行は、革新的な金融サービス会社だけでなく、決済アプリ
の商品を求めており、好みのスタイル・価格・体験がすべて1つ
を提供する携帯電話会社などのノンバンクとの競争にも直面
の店舗に揃うことを望む。また、その土地その店ならではの
することになる。同時に、銀行は煩雑で時間がかかる、よそよ
テイストを求めてもいる。
そしい扱いを受けがちであるなど、顧客の長年の不満を解消
小売 業 者は、次のような 問いかけを自らに行う必 要 が あ
する必要もある。
る。地 域性や販売圏の特性によって、各店舗の商品アソート
銀行は、財務管理、人材管理、リスク管理、オペレーション、
メントをどのように変えるべきか。他のカテゴリーや商品と
IT、買収や統合を通じ、さまざまな面で差別化を図ってきた。
比較して、1つのカテゴリーや商品にどれだけのスペースを独
しかしこれらのケイパビリティは、すでに競 争上の基 本的必
占させるべきか。価格をどうすべきか。いつ、どのように宣伝
須条件になってしまった。銀行が持続可能な「勝つ権利」を獲
すべきか。
得するためには、本当の意味で他行との差別化を図ることが
各店舗をローカライズし、マーチャンダイジングを適 正に
できる追加的なケイパビリティに投資しなければならない。
行うことは、近道のない非常に困難な仕事である。多くの小
それは、多様なプロセス・手法・スキルを結びつけ、より顧客
売業者は、人材、IT、分析ツール、プロセス、組織を一体化する
志 向 の ケイパビリティシステムを構 築 することを意 味 する。
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その要素は企業によって異なるが、オンラインと支店を取り
企業の脆弱さに乗じて顧客を奪い取るには絶好の時である。
込んだ一体型マルチチャネル顧客体験の設計、顧客にフォー
また、最 新技 術を活用して顧客体 験を高めることにより、
カスした製品・サービスの提供、銀行内の組織階層全体にお
他社との差別化を図るという意味でも好機と言える。売上を
ける協力関係の形成、企業の境界を超えた提携などが挙げら
伸ばすことに腐心する少なくないライバル企業は、この重要
れる。
なケイパビリティへの投資を怠るだろうが、長い目で見ればそ
これらの新しいケイパビリティへの投資には多額の費用が
れは重大な過ちになりうる。
かかるため、どこかから資 金を調達する必要がある。おそら
新たな情 報 技 術、すなわち豊富なインターフェースと新 型
くは、手数料の値上げではなく、オペレーションコストの削減
ディスプレイを 備え たタブレットコンピュー タ、パワフルな
によることになるだろう。銀行は、ムダのない、テクノロジー
4G ネットワーク、パブリッククラウド、プライベートクラウド
によるプロセス再設計を通じ、つねにコストに注視しなけれ
などが爆発的に広がりを見せ、企業は画期的でより効率的な
ばならない。
方法で顧客と関わることができるようになった。今後さらに、
また、従 来はサービスの範囲に置いていたものの有償化・
顧客とのつながりが複数のチャネルを通じてスピードアップ
商 品 化 な ど を 通じ、収 入 増 の 機 会を 模 索 する 必 要 も あ る。
し、常時接続されたフルサービスとなり、ソーシャルメディア
Amazon 、AMEX 、GE、UPS など多くの企業が、社内で利用
などを 通じた相互関係がより協調的で信 頼できるものにな
するために構築したケイパビリティを新たな収 入源に転換し
る、という未来像が想像できる。
ている。こうした時代にあっては、どの銀行もそれと同じこと
いくつかの資 産管理会社は、これらのケイパビリティを集
をすべきなのである。
め、顧客の本当の問題に対する解決や、顧客とアドバイザリー
の従来の関係の変革に向けて力強いケイパビリティシステム
ポール・ハイド(ヴァイス・プレジデント /ニューヨークオフィス)
([email protected])
アシシュ・ジャイン(ヴァイス・プレジデント /シカゴオフィス)
([email protected])
コーリー・ユリンスキ(ヴァイス・プレジデント /ニューヨークオフィス)
([email protected])
*
「2012 年ブーズ・アンド・カンパニー 銀行業界の見通し」については、booz.
(英文)。
com/retail-banking-2012を参照
を作り上げるだろう。いつの日か、資 産管 理会社からさまざ
まなサービスを提 供される投 資 家 が、別の 事 業 を 起こすか
もしれない。高い能力を持つ資産管理会社は、あらゆるセク
ターのための成長エンジンになりうるのである。
ジョン・ロランダー(ヴァイス・プレジデント /ニューヨークオフィス)
([email protected])
スリニ・ベンカテスワラン(ヴァイス・プレジデント /ニューヨークオフィス)
([email protected])
ゴーティエ・ヴァンサン(シニア・エグゼクティブ・アドバイザー /ニューヨークオフィス)
([email protected])
10. アセットマネジメント
eリレーションシップを強化せよ
*
「2012 年ブーズ・アンド・カンパニー アセットマネジメント業界の見通し」に
ついては、booz.com/wealth-asset-2012を参照
(英文)。
投 資 家にとっては困 難 な 時 代である。
多くの投資家はどこに資 金を投じてよい
のか、誰を信じればよいのかで迷い、自信を持てずにいる。彼
らは従 来にましてしっかりしたアドバイスを必要としている
(“Winning Moves for 12 Industries” by the par tners and
practices of Booz and Company; introduction by Thomas A.
Stewart, strategy+business, Issue 66 Spring 2012)
が、この数年間で酷い目にあったことから資産管理会社への
信頼は崩れかけている。
資 産 管 理 会 社の 経営も同じく大 変 である。現 在の市場は
異常なほど流動的であるため、長年にわたって築いてきた競
争上の地位も安泰とは言えなくなっている。しかし投資家は、
新たな関係を積極的に試すようにもなっているため、ライバル
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