周波数変調と復調

変調と復調
ー 周波数変調 ー
Nicodimus R.@LSPeCs
周波数変調(FM)
搬送波の周波数を信号で変化させている変調方式
搬送波
vc  EC cos C t
信号
vs  ES cos S t
角周波数偏移
 (t )  C   cos S t
だとすると、FM被変調波は
v fm EC cos  (t )
と表せる。但し、 (t)は角周波数偏移 (t)の時間積分であ
る。
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FM被変調波
v fm
t

 EC cos  (t )  EC cos   (t )dt 
 0

t

 EC cos  {C   cos(S t )}dt 
 0




 EC cos C t 
sin(S t ) 
S


搬送波周波数
信号成分
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FM被変調波
v fm
変調指数



 EC cos C t 
sin S t 
S


 EC cosC t  m f sin S t 

f
mf 

S
fS
但し、
f : 最大周波数偏移
fS:信号周波数
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FM被変調波


f
sin S t 
v fm  EC cos C t 
理論式
f sm


実際の変調では信号電圧 ES cos S t が搬送波を変調する。
信号振幅ESと最大周波数偏移 fの関係を以下に導出する。
まず理論式の
f
sin S t
f sm
は位相を表す項なので、微分すると角周波数偏移 mが求められる。
d f
f
m 
sin S t 
2f S cos S t  2f cos S t   cos S t
dt f S
fS
cos(x)の最大値は1なので最大周波数変数は fであることが分か
る。最大周波数偏移は信号振幅に比例し、
f  k f Vsm
と表される。但し、kfは周波数偏移係数である。
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信号
vc  EC cos C t
FM波形
被変調波
v fm  Vcm cost  k f ES sin S t 
搬送波
vs  ES cos S t
信号振幅 大
周波数
高
小
大
小
大
低
高
低
高
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FM信号の周波数スペクトル
FM被変調波
v fm  EC cosC t  m f sin S t 
上の式を展開すると v fm  EC cos C t cos(m f sin S t )
 EC sin C t sin(m f sin S t )
ベッセル関数を用いると
v fm



 EC cos C t  J 0 ( m f )  2 J 2 n cos 2nS t 
n 1



 EC sin C t  2 J 2 n 1 ( m f ) sin(2n  1)S t
n 1
但し、Ji(i=0,..,n)は第1種ベッセル関数である。
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v fm
fc
fc +fs
fc +2fs
fc +3fs
fc +4fs
fc –4fs
fc –3fs
fc –2fs
fc –fs
周波数スペクトル
FM信号の周波数スペクトル
周波数



 EC cos C t  J 0 ( m f )  2 J 2 n cos 2nS t 
n 1



 EC sin C t  2 J 2 n 1 ( m f ) sin(2n  1)S t
n 1
搬送波周波数fcを中心に上下に信号周波数fsの整数倍の成分が現
れる(無限に続く)。
AM信号と違って、FM信号の周波数スペクトルは必ず幅を持つ。
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AMとFM信号のスペクトルの違い
FM信号
送信電力のほとんどが搬送波
に使われる。信号成分のスペク
トラムは搬送波の両隣に一つ
ずつしか存在しない。
fc
fc +fs
fc +2fs
fc +3fs
fc +4fs
周波数
fc –4fs
fc –3fs
fc –2fs
fc –fs
fc
fc +fs
fc –fs
周波数スペクトル
周波数スペクトル
AM信号
周波数
送信電力のほとんどが信号伝
送に使われる。信号成分のス
ペクトラムは無限に存在する。
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占有周波数帯域幅
FM被変調波の周波数スペクトルは無限
に続いているのだが、実際には無限に帯
域が使える訳ではない。一般的に適切な
帯域で制限を掛ける。その帯域を占有周
波数帯域という。
占有周波数帯域幅
B
周波数スペクトル
f  f s
実用的な占有周波数帯域幅(B)は以下の
式で与えられる。
B  2(f  f s )
fc
周波数
補足:
FM被変調波において、帯域制限で多少
の信号成分を失っても復調は出来る。
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周波数変調回路
コンデンサマイク
C2
L3
L1
L3
L1
出力
出力
ハートレー発振回路
周波数変調回路
発振周波数は
1
0 
( L1  L3 )C2
例えばC2を変えれば発振周波数が変わる。
コンデンサマイクは入ってくる音の大きさで
容量が変わる物。容量が変わると発振周
波数が変わるので、(搬送波の)発振周波
数が入力信号で変調されることになる。
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FM被変調波の復調
周波数の変化
FM被変調波はAM被変調波と違って、信号情報(電圧振幅)を周波数の変化として
持っているためその信号を復元するには周波数の変化を電圧振幅に変える必要が
ある。
線の傾きが
kf ×fsmに
相当する
f
VS
信号電圧振幅
出力電圧振幅
周波数変調
左上の図はFM被変調波の信号振幅と
周波数偏移の関係を表すもの。
一方、FM被変調波の復調は左下の図
のように表すことができる。この時の線
の傾きをKvだとすると、復調で得られる
信号振幅VOは
VO  K v  f
VO
f
 K v  k f  f sm  VS
線の傾きをKv
と相当する
被変調波の周波数変化
元の信号と同じ電圧振幅を得るために
はKv=1/(kf ×fsm ) である必要がある。
FM被変調波の復調
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ピークディファレンシャル検波
R
V1
L
V2
出力振幅(対数)
上記回路の出力電圧の周波数特性は以下
のようになる。
実際にシミュレーションすると以下のような
結果が得られる。上段は入力波形(FM被
変調波)で下段は出力波形である。
出力を見ると、AM被変調波に似た波形が
得られたため、後はAM被変調波と同様の
検波を行えばよい。但し、一般的にFM被変
調波の電波の振幅は小さいので一度増幅
してから復調した方がよい。
入力周波数(対数)
よって、仮にV1がFM被変調波ならV2には周
波数によって振幅の変わる波が出てくる。
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Phase Locked Loop (PLL)
位相同期回路とも言う。基本的な構成は以下の回路ブロックで表される。
ミキサ
(mixer)
入力周波数
VVCO
(filter)
フィルタ
電圧制御発振器
(voltage controlled oscillator)
VCO
(divider)
分周器
出力周波数
VVCO : VCOの制御電圧
PLLは入力周波数と出力周波数の関係が f out  N  f in になるように働く。
但し、1/Nは分周期の分周比である。N=1の場合、入力と出力周波数は等しくなる。
例えば、入力にFM被変調波を入れるとPLLは出力が同じFM波を出すようにVCOの制御
電圧を変化させる。そのため、VCOの制御電圧には周波数変調される前の信号が得られ
る
(FM被変調波はVCOの制御電圧に変調したい信号を使うことで得られるからである)。
補足:分周比を変化させることによって出力周波数を変化させることができるのでPLLは
周波数生成器(frequency synthesizer)として使われる。
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振幅変調と周波数変調の比較
振幅変調
周波数変調
搬送方法
搬送波の振幅を変えて搬送 搬送波の周波数を変えて搬送
する
する
変調回路
ちょっと複雑
復調回路
簡単(同調回路とダイオード 正確に復調する場合はちょっと
だけ)
複雑(PLLまたはピークディファ
レンシャル回路)
雑音耐性
搬送波の振幅に情報を乗
せるため雑音によって振幅
が変わり、情報も壊れてし
まう。よって、雑音に弱い。
簡単(周波数を変えられる発振
回路があれば作れる)
搬送波の周波数に情報を乗せ
るため雑音があっても振幅だ
けが変わり情報である周波数
は変わらない。よって雑音に強
い。
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