業務外で従業員が死亡した場合の社会保険手続き

業務外で従業員が死亡した場合の社会保険手続き
創立 5 年目の会社ですが, 残念なこ
とに, このたび従業員が業務外で死亡
しました。 このような場合にどういっ
教えてください。
また, 今後のために従業員の家族が亡くなった場合
の手続きも, あわせて教えてください。
た手続きをしなければいけないのかを
●ポイント
まず資格喪失手続きが必要とな
る。 給付に関しては, 埋葬に必要な
費用を補助することを目的とした埋
葬料 (費) がある。
1.
被保険者が死亡した場合
消し, 資格喪失届として使用します。 機械で読み取
りますので, 汚さないように丁寧に記入しましょ
う。 届出用紙の 「⑤離職年月日」 は死亡年月日とな
り, 「⑥喪失原因」 は 「 1 .
離職以外の理由」 にな
ります。 添付書類はタイムカードと労働者名簿で,
提出期限は死亡日の翌日から10日以内となってい
ます。
死亡とは, 病気・ケガによる死亡のほか自殺や喧
嘩, また 1 年以上行方不明であったり, 死体が発見
されないなども含みます。 つまり, 死亡の事実また
はその確認ができれば, 原因は問われません。
(2) 埋葬料 (費) の請求
従業員である被保険者が労災に関係しない事由で
死亡したときには, 健康保険から埋葬料が家族に支
給されます。 家族がいないときは埋葬を行った人に
(1) 社会保険・雇用保険の手続き
従業員である被保険者が死亡した場合, 社会保険
対して埋葬費が, 埋葬料の範囲内で埋葬にかかった
額が支給されます。 請求書は共通で 「埋葬料 (費)
と雇用保険の被保険者の資格を喪失させることが必
支給申請書」 を使用し, 提出先は所轄社会保険事務
要になります。
所または健康保険組合となります。
①健康保険・厚生年金保険:「被保険者資格喪失届」
①埋葬料:「埋葬料 (費) 支給申請書」 (健康保険法
(健康保険法施行規則29条, 厚生年金保険法施行
施行規則85条 1 項)
規則22条)
家族に対し, 「埋葬料」 として 5 万円が支給され
「被保険者資格喪失届」 に健康保険被保険者証を
ます。 「家族」 とは被扶養者や同居である必要はな
添付し, 所轄社会保険事務所または健康保険組合に
く, 一部でも生計維持関係があれば該当します。 生
提出します。 被保険者に被扶養者がいる場合も忘れ
計維持関係がなければ, たとえ親族でも支給されま
ずに回収し, あわせて提出します。 なお, 届出用紙
せんが, 埋葬を行った場合は 「埋葬費」 が支給され
の 「④資格喪失年月日」 は死亡日の翌日となります
ます。
カ 備考」 には 「○月×日
ので, ご注意ください。 「
申請書は家族埋葬料と同じ書式なので, まず 「被
死亡」 と記入します。 提出期限は死亡日の翌日か
保険者」 に○をして埋葬料の請求書とします。 そし
ら 5 日以内となっていますので, 遅れずに提出しま
て 「⑨被保険者 (請求者) の氏名と印」 には, 申請
しょう。
者である家族の署名・押印が必要となり, その申請
②雇用保険:「被保険者資格喪失届」 (雇用保険法施
者の給付金の振り込まれる金融機関も忘れずに記入
行規則 7 条)
してもらいましょう。
「被保険者資格喪失届」 を所轄ハローワークへ提
仮に死亡事由が第三者行為による場合には, 「第
出します。 この届出用紙は, 資格取得時に所轄ハ
三者の行為による傷病届」 の提出も必要になります
ローワークから発行されたもので, 氏名変更届と同
ので, 「⑬第三者行為によるものですか」 欄も注意
じ用紙になっているので 「氏名変更届」 を二重線で
して確認します。
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労務事情
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最後に, 申請書に事業主の証明または死亡に関す
る証明書類 (死亡診断書, 死亡検案書などの写し)
と被保険者証を添付 (健康保険法施行規則85条 2
項) して, 死亡日の翌日から 2 年以内に提出しま
す。 ただし, これは時効成立の期限ですので, 早め
が必要であれば忘れずに行いましょう。
2.
家族が死亡した場合
(1) 社会保険の手続き
被扶養者となっている従業員の家族の方が亡く
にできる手続きは早めに対応することが必要です。
なったときは, 被扶養者の削除手続きを取る必要が
②埋葬費:「埋葬料 (費) 支給申請書」 (健康保険法
あります。
施行規則85条 1 項)
家族がいなくて埋葬を行った人がいる場合には,
・健康保険:「被扶養者 (異動) 届」 (健康保険法施
行規則38条 2 項)
その人に対し 「埋葬費」 が支給されます。 支給額
「被扶養者 (異動) 届」 に被扶養者の健康保険被
は, 5 万円の範囲内で実際に埋葬にかかった実費額
保険者証を添付して, 所轄社会保険事務所または健
が支給されます。 具体的な中身として, 霊柩代, 霊
康保険組合へ提出します。
柩車代, 霊柩運搬人夫代, 供物代, 僧侶謝礼代など
「④異動の別」 は 「削除・ 2 」 を○で囲み, 該当
がありますが, 飲食等の接待費, 香典返し代等につ
する被扶養者の名前を記入します。 そして 「⑪被扶
いては対象外となります。
ハ 理由」
養者でなくなった日」 には死亡日翌日を, 「
埋葬費の請求手続きは埋葬料と同じですが, 埋葬
には死亡と記入します。
にかかった費用の領収証の添付がさらに必要となり
ます (健康保険法施行規則85条 2 項)。
(2) 家族埋葬料の請求
・家族埋葬料:「埋葬料 (費) 支給申請書」 (健康保
(3) その他の手続き
険法施行規則96条)
死亡により退職するときの給与計算は, 年末調整
被扶養者である家族の方が亡くなったときも, 被
計算をすることになっています。 また, もしご遺族
保険者が亡くなったときと同様に埋葬料として 「家
などの権利者から請求があった場合, 請求後 7 日以
族埋葬料」 が支給されます。 金額も同じく 5 万円で
内に賃金を支払わなくてはなりません (労働基準法
す。 埋葬料の請求と違う点は, 請求用紙に 「被保険
23条)。
者」 ではなく 「家族」 に○をして, 「家族埋葬料」
社会保険料は前月分を当月分から控除する方法に
の請求書とすることです。
なっています。 資格喪失日の月分は控除しないこと
になっていますが, 月末の死亡であれば翌日 1 日が
(3) その他の手続き
資格喪失日となり, 死亡日によっては, 社会保険料
その年最初の給与支払いを受ける前日までに提出
の徴収も必要になります。 賃金締切日のサイクルと
してもらった 「扶養控除等 (異動) 申告書」 の訂正
よく照らし合わせて, 徴収が必要であればきちんと
をしてもらい, 死亡日後はその扶養親族等の数に基
徴収しましょう。 雇用保険料は, 亡くなっていても
づいて源泉徴収をします。 また家族手当の支給があ
最後に支給する賃金から徴収することになっていま
る場合には, 手当額が変更するかどうか就業規則等
す。
で確認しましょう。 その変更により大幅な固定的賃
なお, 住民税の異動届も忘れずに提出します。 残
りの住民税を一括徴収するか, 普通徴収なのかは最
寄りの市町村役場でご確認ください。 ただし, 1 月 1
日以降であれば一括徴収が義務づけられています。
退職手当が支払われる場合は, 就業規則に沿って
金の変動があれば, 3 カ月経過後に月額変更に該当
するかどうかも注意が必要です。
他にも, 同じく就業規則・慶弔規程等を確認し対
応洩れのないようにしましょう。
(㈲人事・労務
パートナーコンサルタント
礒谷哲夫)
計算し支給します。
他にも就業規則を確認し, 慶弔規程 (香典・生
花・電報の手配等) ・社内積立・団体保険等の処理
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