田中裕也セミナー「ガウディ建築を解く はかるとちえ」

田中裕也セミナー「ガウディ建築を解く はかるとちえ」
9 月 5 日(木)13:00 ~ 15:00 チ・カ・ホ北 4 条広場
9 月 5 日、この日は JIA 建築家大会 2013 北海道の大会開始日で
あり、その口火を切ってスペインの建築家 A. ガウディの世界的
研究者であり、実測家の北海道稚内市出身の田中裕也氏のセミ
ナーが、札幌市の玄関ともいえる札幌市駅前地下歩行空間(チ・
カ・ホ)内の北 4 条広場で催された。
田中裕也氏はスペインバルセロナ市在住で渡航 35 年が過ぎて
いる。当日は「はかるとちえ」という題目で、スペインに向かう
プロセスからの話が始まった。当初自転車でスペインまで向かう
計画であったが膝の故障で断念、ウラジオストックからシベリア
横断鉄道に乗りスペインバルセロナを目指した。20 代後半の田中
氏は英語もスペイン語も当時は話すことはできず、まさに体あた
りの渡航であったが、シベリア鉄道の車内の同室の外国人に英語
と酒を学びながらバルセロナに到着する。
バルセロナに到着した田中氏は、言葉もままならずに生活を開
始。そこで始めたのがグエル公園の実測と作図であったという。
その第一歩は階段の一段一段の計測であった、氏曰くいちばん測
田中氏曰く「はかる」ことによりガウディの思想や斬新性が
りやすいところからということである。実に計測と作図に 8 年の
(彰国社)
、
より見えてくるという。2012 年には『ガウディの建築』
歳月をかけた長さ 5メートル近いインキングされた実測図は圧巻
(長崎出版)など、次々と出版も
2013 年には『ガウディ・コード』
である。続いてサクラダファミリア教会はアクソメ図でこちらも
されており、ぜひ一読されたい。
5 年の時間を費やした大作である。そのような活動は今日まで 30
数年続き、A. ガウディの全ての作品が実測図となっており、そ
の図面は有に 1,000 点にのぼるという、その成果はバルセロナ工
科大学も認め、研究と活動により博士号の授与もされている。ま
た、ガウディ研究の第一人者でガウディ研究所所長の同大のバセ
ゴダ教授(故人)からも最晩年に教授の研究を継続するための母
印入りの認証も渡されている筋金入りである。
小西彦仁(北海道支部/ヒココニシ設計事務所)
* JIA 建築家大会に合わせ札幌市内のギャラリー創で田中裕也実測図
展も開催された。
*田中氏の尽力により、UIA 東京大会を機に JIA 北海道支部はカタル
ニヤ建築家協会と国際交流を行っている。
シンポジウム「建築家資格制度の目指すところⅡ」
2013 年 9 月 5 日(木) 15:30 ~ 17:30
行の『登録建築家資格制度の「これまで」と「これから」
』vol.5 参
札幌市教育文化会館 302 号室
照)
、引き続き芦原会長から、先の総会後に行われた会員懇談会
●パネリスト
芦原太郎(JIA 会長) 河野 進(資格制度委員会委員長)
司会進行:大澤秀雄(資格制度委員会委員)
で提示された、
「JIA 正会員ルート」の内容と考え方、従来の「社
会制度経由ルート」との関係などについて詳しい説明があった。
会長からの説明の概要は以下の通りである。
■「社会制度経由ルート」とは
北海道大会初日の 9 月 5 日、昨年度横浜大会での「建築家資格
建築設計者の国家資格制定を目指す運動は、明治以来連綿と
制度の目指すところ」につづく「建築家資格制度の目指すところ
続いてきた。戦後昭和 25 年に建築基準法、建築士法が制定され、
Ⅱ」シンポジウムが開催された。冒頭、司会者から昨年度のシン
昭和 27 年には日本建築士会連合会が設立された。一方で、エン
ポジウムの内容について簡単な説明があり(詳しくは 2013.03 発
ジニア法に近い建築士法では不十分であると考える建築家達に
よって、より上位の建築家法を目指して旧家協会が設立された。
その後、建築士会連合会の制定した専攻建築士制度のなかの統括
設計専攻建築士と、2002 年に旧家協会の流れを汲む JIAの登録建
築家とを統合していこうという二会合意がいったんは為されたが、
JIA 内では専兼問題、芸術性、独立性を重要視する立場からの反
対、建築士会連合会では、統括設計専攻建築士である木造建築士、
二級建築士を除外して一級建築士だけを統合するわけにはいかな
いとの見方から、両会ともに内部の事情でその先に進むことは難
しい状況にある。この、JIA 登録建築家と建築士会連合会の統括
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まった。それをさらに推し進めて、JIA 正会員は全員が登録建築
「社会制度経由
家になるというのが「JIA 正会員ルート」である。
ルート」はフロー図の通り、統括専攻建築士との合一の協議を重
ねて新民間資格の制度を設計し、社会制度となる段階で専業兼業
を問わないものにして国家資格への移行を待つというものであっ
たが、
「JIA 正会員ルート」では、正会員が全員登録建築家になっ
て他会に先んじて UIA 基準の建築家になっておいて、国家資格
への移行の準備を終えておくというものである。UIA アーキテ
クトは世界に 140 万人、日本で 5 万人程度と見られている。JIA
正会員 5,000 人が、また、さらに多くの正会員がフロー図右下の
UIA 基準国家資格の枠に先に入っておこうというイメージである。
JIA 正会員と登録建築家の話なので当然専業建築家のみが対象と
なる。国家資格になる段階で「専兼は問わない」ことになるだろ
設計専攻建築士とを統合し、他団体の意向も留意しつつ社会制度
う。
設計として成熟させ、未来の UIA 基準の国家資格への移行の準
備をするこの流れを「社会制度経由ルート」と称する。
(フロー図
参照)
■資格制度の現在
2003 年、登録建築家制度スタート。JIA 会員限定で、UIA 基準
に照らして建築士法に足りない素養、能力や認識を実務訓練を受
けることによって習得したものが登録建築家として認定、登録さ
れることが制度の骨子であった。まずは実務訓練の監督者をつく
るために実績認定によって多数の登録建築家が生まれた(実務訓
練制度は思うように進まず、実績認定による登録建築家の数が圧
倒的に多いというジレンマが現在の資格制度にはある)。2008 年
内野輝明(四国支部徳島地域会/内野設計)
今後への意見交換
◦正会員要件と登録建築家要件を合一すると、
ま ず CPD 取 得 義 務 で 多 く の 会 員 が 資 格 を
失っていく、もしくは退会することが予想さ
れるが、ネガティブに考えず会員増強の運動
要素として前向きに考えたい。 (芦原会長)
◦北陸では先般、建築士会、事務所協会、JIA、三県三会合同の
会が開催された。他の地方支部でも、JIA 会員が士会、事務
からのオープン化への取り組みで、2009 年には JIA 会員外でも要
協の会員でもあるという状況は多く、行政に対しても市民に
件を満たせば認定されることになったが、財政面、組織面の諸問
対しても協働態勢にある場合は多い。中央での他会との調整
題のクリアは困難で、認定登録機関は JIA 内部に置かれたままと
なった。セミオープン化といわれる所以である。その後、CPD
等の更新要件を満たせない方々が年々増え、登録建築家は全体に
減少傾向にある。
■「JIA 正会員ルート」へ
前回のシンポジウムでは、建築士会連合会との協議を進める
「社会制度経由ルート」の継続が確認されながら、議論の中で登
録建築家と正会員要件を整合していく方向性は示された。他会と
の協議待ちではなく JIA 単独で進められる建築家法制定への道を
模索できないか、同時に登録建築家制度を再度活性化できないか
という声も多数出ていた。そのような声を受けたかたちで、この
たび芦原会長から新たに「JIA 正会員ルート」が提示された。
公益社団法人に移行する際の定款改定で、正会員要件には一級
建築士であることが明記され、必要な実務実績の 3 年間は 5 年間
に改められ、正会員要件と登録建築家要件の整合が具体的に始
と平行して、地域での協議や協働を進めていくべきであろう。
(北陸支部 近江美郎)
◦全国大会を三会合同で開催して、会費もセット料金になど、
極端なことも三会の間で話題になっている。
(芦原会長)
◦資格制度を持つ五会での一般向けパンフレットが製作されて
いる。市民には、専門家が集まって建築ができるという理解
を深めてもらうこと、行政には国家資格を超えて自己研鑽を
続けている団体として認識されることがプロポ参加要件につ
ながる(岐阜県岐南町、鹿児島県阿久根市で実績あり)ことな
どが期待される。
(四国支部 内野輝明)
◦こういった動きから、会員に対しても登録建築家であること
のメリットが説明できる。名刺に「日本建築家協会正会員・登
録建築家」と刷る、カードやバッジをつくってアピールするな
どできることはたくさんある。
(芦原会長)
◦また、教育の世界にも踏み込んでいきたい。古い概念で図面
を描かないと通らないなど旧態依然の現行建築士国家試験の
不備を訴えていくなど、社会的に貢献する運動の仕方を考え
て推進していきたい。
(近畿支部 小島孜)
◦ UIA 建築家基準に合わせるためには、制度再設計などの作業
が必要である。実務訓練制度は会員の事務所のスタッフなど
の準会員が正会員になるために必要な訓練であると読み替え
るなど、現行制度のうまく機能していない部分の改修もあわ
せて行う必要がある。
(芦原会長)
◦このたび組織された職能・資格制度委員会と、既存の資格制
度委員会は、
「JIA 正会員ルート」の推進のため、協働して、会
員の意見を聞きながら、山積する課題をこなしていく段階に
きたといえよう。
(関東甲信越支部 大澤秀雄)
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