集中力 日本大学文理学部体育学科 スポーツ心理学演習 0901138番 宮田篤 0901140番 安田博幸 0901146番 石橋智子 0901141番 安則麻衣子 1.はじめに スポーツをするにあたり、集中力は必要不可欠であり、自分の力を 100%発揮するの に最も重要な能力の一つである。 そこで我々は、この集中力とは何なのか。また自分で集中力を高めることができる のか。という発想の元このレポートを作成した。 ① 普段何気なく言葉にしている『集中力』とは何なのかを調べる。 ② 集中力を高める効果的な方法を調べる。 ③ ②の方法を使って実験をし、集中力を高める方法が確実性のあるものかどうかを立証す る。 2.定義 ①集中の定義 人の脳の中では、各所の感覚が適切な仕事を行い協調することによって能率を上げたり力 を発揮したりしている。1 つの感覚が仕事をしている時、他の感覚はその感覚の邪魔になら ないようにあえて仕事をしない。例えば、勉強しているときに一番使うのは視覚であり、 集中していると周りの雑音や臭いは気にならなくなる。こういった感覚の協調関係を集中 という。 ②集中力の定義 先に述べた集中を上手く使う能力を集中力という。具体的な働きとしては、 ① 注意を集中する能力 これは注意の範囲を狭くし、一転に注意を集める能力である。例えば弓道など、的が 一つに限られる場面で必要とする。 ② 注意を払う能力 これは①と逆で注意の範囲を分散する能力で、サッカーの中田が試合中キョロキョロし ているのは周囲全体を把握するためであり、多くの情報を取り入れようとする時に必要 な能力である。 ③ 関係のないものによって気を散らされることを避ける能力 イアンソープはスタートのピストルが鳴った後、ゴールの壁にタッチす るまでの記憶がほとんどないらしい。これはレース以外の邪魔な情報を 一切除去し、集中を極限まで高めたことによって起こることである。つ まり、集中力を余計な情報へ向ける事を避ける能力である。 ③集中している状態 集中力はもろく壊れやすいが、自分の好きな事や好奇心の持てることには実に簡単に抜群 の集中力が発揮される。脳の中では、好きなものに対する好奇心や欲求という感情が TRH という脳内物質を発生させる。脳で作られた TRH は、身体に張り巡らされた自律神経の中 の交感神経を興奮させ、それにより緊張した体が集中力を高めることになる。緊張を現す 脳波はβ派で、逆にリラックスを表す脳波はα派である。通常の生活ではこの 2 つは混在 しており、どちらかが偏っている状態では集中しているとはいえない。理想的な集中の形 とは、α派とβ派が一定のリズムで出現している時で、適度な緊張とリラックスのバラン スがとれている時、人は集中している状態になるのである。 3.注意様式の分類 注意集中の分類は『向き』と『幅』に分けられ、されにその中から、注意の範囲『広い、 狭い』、注意の方向『外向き、内向き』の全 4 領域に分けられる。注意の方向で、 『外向き』 とは外の情報(味方がいる、あそこにボールがある)、『内向き』とは自身の心身や思考、の ことである。 ① 外へ広く向かう注意集中 複雑なスポーツ場面を認識するのに最適。状況を評価するときやチームスポーツなどで 用いられる。 ② 外へ狭く向かう注意集中 このタイプの注意は、反応の仕方が決まっているときに要求される。たとえばボールを ヒットするとき、1人の対戦相手に反応するときなどは、注意の範囲を狭くしなければ ならない。 ③内へ広く向かう注意集中 スポーツを分析的に見るときに最適。コーチはゲームのプランを立てたり、予想したり、 過去を思い出したりするのに、このタイプの注意を使う。すぐに学習する人は、この能 力に優れている。 ④ 内へ狭く向かう注意集中 自分の身体の状態に敏感にならなければならないときに最適。精神を統一したり、スキ ルをイメージの中でリハーサルしたりするときに要求される。 4.集中力と関係する要因 (1) 睡眠 集中力を高めるには、心身に疲れをためないことが大切である。 プロ野球選手の疲労回復療法の上位は 1 睡眠・・・普段:熟睡できる 89% 試合の前夜:熟睡できる 16% 〃 2 食事 3 マッサージ 4 入浴 :なかなか寝付かれない 16% 寝つきを良くするためには、 1酒を飲む 2 本を読む 3 音楽を聴く となっている。 生理学者たちは、疲労がたまるにつれて、脳の網様体に影響を及ぼす睡眠毒素*1 と呼ばれ る物質が体内に作られ、そのために眠くなる事を指摘している。また睡眠は、意識に対し てだけでなく体内の化学反応にも変化を引き起こすようであり、例えば眠っている猫から 採取した脊髄液を起きている猫の背中に注射すると、注射された猫はすぐに眠ってしまう。 そして、眠りが剥奪されるとたちまち健康が損なわれ、実験動物を2,3日でも眠らせな いようにすると死んでしまう。人間では、睡眠を奪われると、疲労やイライラが出て集中 力がなくなり始め、間もなく身体的・精神的混乱が始まり、幻想・幻覚が生じ、筋肉を使っ た動きが全くできなくなる。 *1睡眠毒素 おそらく睡眠物質のこと!! ・麻酔作用のある事で知られる ガンマシドロキシ酪酸。ガンマブチルラクトン。 ・その他睡眠物質 ガンマブロム、ムラミン酸ペプチド化合物、など・・・ 参考文献 睡眠の科学 鳥居鎮夫 朝倉書店 1984年 睡眠物質の候補(ヒトに関わるもの) トリプトファン、ピペリジン、メラトニン、アルギニンバソトシン、 デルタ睡眠誘発ペプチド、プロゲステロン、成長ホルモン、ノルジアゼパム、 ガンマブロム 参考文献 脳と睡眠 1989年 井上昌次郎 共立出版株式会社 (2)集中力を高める食品 1 集中力とともに記憶力を高めるレチシン(脂肪の一種) 肉類や大豆、麦芽、ピーナッツなどに多く含まれる。また卵と一緒に食べるとレチシ ンが更に加わりますし、大豆タンパクでは得られない必須アミノ酸のメチオニンも得 られて良い。 2 脳の血液の循環を良くする、エイコサヘンタエン酸 鰺や鯖などの魚に含まれている。また、ゴマに含まれるビタミン E2 も良い。 3 その他必要なビタミン ビタミン B1・・・うなぎ、大豆、豆腐、海苔、セロリ、ぬか漬け ビタミン B2・・・ほうれん草、牛乳、チーズ ビタミン C・・・オレンジ、キュウイ 4 その他 カルシウム補給にはゴマが最高。 またグルタミン酸ソーダも集中力と大いに関係がある。(高野豆腐、湯葉、ふ) 集中力を弱める食品 インスタント食品 淡色野菜 多すぎる肉類の摂取 漂白したもの 甘いもの 白米 など 以上が取り上げられているがその根拠については述べられておらず、よってあく までも推測の域を出ないがこれらを比較してみると、インスタント食品や多すぎる 肉類の摂取は血管を詰まらせる原因となるコレステロールが多く血液の流れを阻害 する。また、漂白した物、甘い物、白米、淡色野菜は血中の糖度を著しく引き上げ、 血液をドロドロにして血液の流れを阻害する。こうして見ていくとここに挙げられ た物は血液の流れを悪くすると言われている物ばかりである。このことから著者は 脳の血液循環が悪くなり集中力が弱くなると主張していると思われる。 超!!集中力 保坂栄之介 ヒット企画協会 1991年 (3)香り 香りのない時のミス率を100とすると ラベンダー系の香り・・・79.2 ジャスミン系の香り・・・66.8 レモン系の香り・・・45.8 ☆ ラベンダー系の香りは気持ちを落ち着かせるリラックス効果、レモン系の香りは眠気 を覚ませ、集中力を向上させる効果がある。 この事から朝はシトラス系の香りがする食べ物を食べると良く、また休み時間にはラ ベンダー系の香りや森の香りをかぐなど、時や場所によって効果的に香りを使い分け る事が集中力を維持したり、ミスを減らすのに大きな役割を果たす。 (4)ジンクス 常に最高の結果を期待されるアスリートたち。しかし、そんなプレッシャーのため孤独 やスランプに悩まされる事もある。そんな時アスリートたちは心のよりどころをみつける。 それが「ジンクス」。一種パフォーマンスにも見えるこのジンクスをいかにしてみつけ、糧 にしているのか・・・。 《ラグビー 松尾雄治》 「高校の時の話なんですけど、その時のラグビー部の部員全 員ユニフォームの下に女性用のパンティーはいてたんですよ。形とかガラは、シンプルな タイプでした。それをはくと勝てるんだよ。」 《バドミントン 陣内貴美子》 「試合の時は、いつも同じパンティーでした。あと、ブ ラジャーも。だから、試合終わったらホテルで違うパンツにはきかえて、手で洗って次の 日乾いたらそのパンツをはいてましたよ。だから、洗いすぎて薄くなってもはいてました」。 《F−1 鈴木亜久里》 「普通車にお守り貼るじゃないですか、だからF−1のマシン にも貼ろうと思って買ってきたんですけど、交通安全の買ってきたんですよ。F−1で交 通安全か、って思ったんですけど、一応貼っておきました。あと、神社に行った時お賽銭 箱に2千円入れてたんですけど、それじゃ勝てなかったんで、1万円入れたらどんどん勝 つようになったんですよ。でも、思うんですけど、ゲン担ぎが多いのは日本人だと思うん ですよ。外国は宗教がちゃんとしてるから日頃からお祈りとかしてるでしょ、でも日本人 は普段しないくせに、その時だけするんだよね。」 《マラソン 松野明美》 「あのですね、いい記録が出た時にはいてたクツ下は次の大会 でもはくんですよ。100 円の安いクツ下なんです。薄いピンク色のメーカー品じゃないもの なんですけど、生地が薄くて足のしめつけ感がちょうどいいんですよ。10 回くらいお世話 になりました。」 《バレーボール 益子直美》 「私、あるテレビ局のあるアナウンサーが会場に来ると試 合に負けるんですよ。その人が来ても話さなかったりするとまだいいんですけど、話すと 必ず負けます。しかも、その人よく話しかけてくるんでやっかいなんですよ。実はフジテ レビのアナウンサーなんです。」 《野球 原辰徳》 「長期的なジンクスと短期的なジンクスがあるんです。長期的なのは、 高校時代からやってるんですけど、ユニフォームを着る前にユニフォームに向かって「よ ろしくおねがいします」って言うんです。短期的なのは、車の運転の時に 10 時 10 分の位 置でハンドル握った時に勝てたら次の日も 10 時 10 分で握るんです。」 ☆スポーツの世界では、タブーとされている「セックス」 。その事にもジンクスがある 《ボクシング 具志堅用高》 「良くない。ボクシングは特に良くない。僕も、試合前8 週間ガマンしました。やっぱり疲れるからなんだよ。パワーがなくなっちゃう。 」 《野球 デーブ大久保》 「僕は全然気にしなかったですよ。ただ、Hすると背中を痛め るとは言われましたけどね。でも、野球選手は年間 135 試合してるからあまり気にすると 出来なくなっちゃうんですよ。それで、その話しを星野監督に聞いた事あるんですよ。昔 のピッチャーって中2日とか3日とかすごいスケジュールで投げてたから、 「どうしてたん ですか?」って聞いたら、それでも投げる2日前からはしなかったって言ってました。」 ☆食べ物に関するジンクス 《ラグビー 松尾雄治》 「明治大学の時なんだけど、先輩にどうやったら試合に勝てる んですか?って聞いたの、そしたら「ばかやろう、そんなの試合の前の日にステーキ食べ て、当日カツ丼を食べれば勝てるんだ」って言われました。ようするに、ステーキの敵と カツ丼の勝つなんですけどね。」 《ボクシング 具志堅用高》 「僕の場合は、アイスクリーム。計量終わった後必ずアイ スクリーム食べてたんだけど、ある時食べなかったら、負けちゃったんだよね。ちょっち ゅ悔しかった。」 《バドミントン 《野球 陣内貴美子》 「試合の当日、家を出る前に必ず梅干しを食べてました。」 デーブ大久保》 「野球選手はタコ食わないですね。4タコ(4打席ノーヒット) とか言われるんで。だから、寿司屋では絶対食わなかったですね。でも、ライバルにはす すめてました。ここのタコ上手いんだよって言って。」 《マラソン 松野明美》 「私は、レースの前の日必ずチーズケーキを3つ食べてました。 食べないでレースに出た時、42 キロ走ってる最中ずっと頭の中「チーズケーキ、チーズケ ーキ」ってグルグル回ってました。結果成績も悪かったです。」 《野球 デーブ大久保》 「長嶋監督にもあって、スイカって中心は種がないじゃないで すか、それで、東京ドームの選手サロンってシーズン中スイカ出るんですけど、そこに置 いてあるスイカ全部種がないところだけ食べられているんですよ長嶋監督に。何でそこし か食べないんですかって聞いたら「スイカなんて、種食べたらだめだよ」って、たんに贅 沢なだけだったんです。 」 ☆その他のジンクス 《大相撲 水戸泉》 塩をいっぱい盛る際、盛りが悪い時はすぐに負けてしまう 《大相撲 武双山》 取り組み前に懸賞旗の数を数えると勝てない 《ボクシング ガッツ石松》 リングシューズとかグローブは必ず左からつけた 《野球 松井秀喜》 しゃぶしゃぶを食べた次の日は大当たり 《野球 元木大介》 スパイクなど、靴は必ず右から履く 《野球 谷繁元信》 試合に勝ったら高速道路の料金所は同じゲートを通る 《野球 高橋由伸》 試合中、1年間同じお守りを右のポケットにいれる 《野球 佐々木主浩》 球場入りしたらかならずプリンを食べる 《野球 イチロー》 ヒットを打っている間は球場の自動販売機で同じボタン 《テニス 伊達公子》 試合前、かならずおにぎりを2個食べる ジャンクスポーツアスリートたちのナイショ話 栗原幹夫 KKベストセラー 2002年 このようにトップアスリートたちは「集中するために」 「勝つために」何らかのジンクス」 を持っている。そしてまた私たちのような一般の競技者でも持っているだろう。これをう まくコントロールできれば最高のパフォーマンスが発揮できるのだ。 (5)集中力に影響を及ぼす要因 ○物理的環境 ・ 周囲からの野次、期待 → 精神的プレッシャー ・ 自分のコンディション → 身体的、精神的に影響を及ぼす。 ・ 暑さ、寒さ、太陽、雨、風等の自然条件 → 身体的、精神的に影響を及ぼす。 身体的に影響を及ぼすものに関しては自己のある程度の管理でいくらでもコントロールできは しないだろうか。 例えば、一昔前は、部活中の水分補給は厳禁というクラブが多かった。『脱水症状の一歩手 前という状態は心をだんだんと無気力にしていくのだ。最初に頭痛がきてしばらくするとボーッと した状態になり、眠気がおそってくることもある。』とソフトボールの斎藤選手は言っている。 この状態では集中できるはずがなく、現在では練習中や試合中に水分補給をすることはごく 一般化している。ただ、ここで注意しなくてはならないのは、体が水分を欲した時にがぶ飲みし て満腹にし、体のほうが満足してしまうと、心にもそれが作用し、気持ち的にリラックスしすぎて 気が抜ける場合が多いということだ。「もう少し飲みたい」程度にとどめておくのがよい。 他にも、ライフセービングをしている鈴木選手は競技前、手には軍手をはめて冷えないように ケアしている。アップの量を調整して体調を調え、海の地形をチェックし、天候によって使用する ゴーグルを変えてレースに臨むこともある。レース中には頭の中で歌を歌っているそうだ。何も 考えないとふとした瞬間不安がよぎり逆に集中力を欠いてしまうという。 このように本人のちょっとしたケアで集中力をコントロールできるといえるだろう。 ○状況認知 精神的に影響を及ぼすものについても、自己の気持ち次第でコントロールし得る。 いわゆるプレッシャーについて。 スキーの荻原選手は、プレッシャーから個人戦結果を出せなかったが、次に団体戦があり落 ち込んでもいられなかった時に、このように考えていたという。『プレッシャーっていうのは絶対量 が決まってるんだと考えました。一日に10なら10という具合にですね。そうしたら、僕はもう個人 戦のときに何日分も先払いして消化済みなんだから、団体戦ではプレッシャーなんかまったくな いよって気楽な気持ちでできたんですね。』 そうしたプレッシャーに対する発想の転換が団体戦の金メダルにつながったと本人は振り返 る。 雨などの天候に左右される精神状態はどうか。 同じく荻原選手はレース中の悪天候についてこう語る。『やはり、僕も含めて他の選手もほと んどが気持ち的に嫌だなって思うものなんですよ。でも逆に僕の中ではそういうときこそチャンス だと思うようにしてますね。やはり他の選手が「ああ嫌だな」とマイナスに心が向かっているときに、 僕だけはチャンスだと考えられればそれだけでも心理面ではリードできるわけですから。』 JLA理事長の小峯力氏は2003年度全日本ライフセービング選手権大会の開会式の挨拶に おいて、生憎の天気について『この天気をああ嫌だと思うか。そもそも事故が起こるのはこのよう な天候のときで、このようなときこそライフセーバーの魂に火がつくことと思います。ここに集まっ たライフセーバー達はきっとこの天候をよしやってやるぞと捕らえているに違いない。』と力説し た。 5.集中力トレーニング技法 リラクゼーション 身体的・精神的なリラックスした状態を作り出すことによって、必要な事 柄に精神を集中する余裕を生み出す。 作業法 グリッドエクササイズ、ゆっくりとしたバランス運動、振り子のテストな どのような非常に努力を必要とする作業をあわせることによって、自分の 意図することに集中する能力をたかめる。 呼吸法 禅やヨガなどの呼吸法を練習させ、外的な刺激や雑念に妨げられないで、 呼吸に注意を集中する事を学ばせる。 バイオフィードバック法 バイオフィードバックを利用して、精神が集中しているときの状態にきづ かせ、いつでもその状態を作れるようにする。 凝視法 何かの物体を長時間注視する練習をさせることによって、注意の持続力を 高める事を狙っている。 妨害法 さまざまな妨害刺激の下で作業や練習をさせる事によって、妨害の影響を 受けないように妨害に対する抵抗力を高める。 自己分析法 練習や試合で、どのようなとき、どのようなかたちで注意がそれやすいか を分析し、自己の注意の特徴を把握して対策を考える。 キーワード法 注意をむけるべき刺激や、対象、動きや心構えなどを表す言葉をあらかじ めキーワードとして決めておき、試合中、注意が反れそうになったときそ の言葉を唱えることによって、注意を必要な対象に集中できるように練習 する。 イメージトレーニング 試合当日、試合会場に入るまでにやるべき事柄、入ってからやるべき事柄、 試合中になすべき事柄などあらかじめイメージトレーニングによってリハ ーサルしておき、自動的にそれらに注意をむけられるようにする。 ピークパフォーマンス法 最高の成績をあげたときの自分の精神状態を思い起こし、あるいはまた,最 高の状態で試合をおこなっているときの様子を想像し、イメージトレーニ ングによって、いつでもその精神状態を作り出せるように練習しておく。 遠観法 不安や心配事などによって注意がそれることを防ぐため、不安をもったり 心配しても何の役にも立たないどころかかえって害になる事、さらには、 勝敗にこだわることが実力の発揮を大きく妨げられることを理想的に理解 させ、いわゆる「開き直り」の境地を作り出す事によって「今、ここに」 集中できるようにする。 アフアメーション Affirmation により不安を取り除き、自分に自信をつけることによって注意 がそがれる事を防ぐ。 肯定的思考 物事を悲観的にとらえるのではなく、よいほうよいほうに楽観的に考える 習慣を形成することによって、不安や心配事を取り除き、注意がそれる事 を防ぐ。 過剰学習法 予想されるさまざまな試合場面を想定し、それぞれについて十二分な練習 をして、戸惑わないようにしておく。 スポーツメンタルトレーニング教本 鈴木一行 2002 6.実験 何もしていない状態と、集中力を高める方法を用いた状態の2パターンで実験を行い、 その結果、後者の方が高い数値が出れば、その方法は集中力を高めるのに効果的であ ると言え、集中力はトレーニングと環境により自分で高めることができると言える。 今回は集中力を高める方法として凝視法を用いる。 実験方法 用意するもの・・・グリッドエクササイズの格子図 84 27 51 78 59 52 13 85 61 55 28 60 92 04 97 90 31 57 29 33 32 96 65 39 80 77 49 86 18 70 76 87 71 95 98 81 01 46 88 00 48 82 89 47 35 17 10 42 62 34 44 67 93 11 07 43 72 94 69 56 53 79 05 22 54 74 58 14 91 02 06 68 99 75 26 15 41 66 20 40 50 09 64 08 38 30 36 45 83 24 03 73 21 23 16 37 25 19 12 63 ろうそく ストップウォッチ 筆記用具 場所・・・体育演習室 手続き まず、各被験者にグリッドエクササイズの格子図を配り、1分間の間にこちらが指定した ある数字を見つけ、順番に消していく。(たとえば23と指定された場合、23を探し出 して消し、その後順番に24,25と消していく。)この作業をいかに速くできるかを2パタ ―ンに分けて行う。 ① 被験者には机に座ってもらい、何の集中力を高める技法も施さない状態で行う。 ② 部屋を暗くし、蝋燭の火を20秒間見つめ、火を消してから10秒後に、同じように行 う。 得点 グリッドエクササイズ 16 14 12 10 8 6 4 2 0 一回目 二回目 A B C D E F G H I J K 一回目 9 15 11 14 8 7 5 6 5 10 2 二回目 11 6 8 13 13 10 8 5 5 10 11 被験者 10.結果 数値的な結果は、2 回目に良くなっている 5 人、変わらない 2 人、悪くなっている 4 人であ った。 残念ながらこの結果からは明確に「ろうそくの火を 20 秒間みつめると集中力が上がる」 という証明にはならなかった。 すなわち、この実験だけに関すると「自己で集中を高めることができる」という過程 は証明できない。 しかしこの実験を終えて実験方法に多少の不備が発見された。 ① その日の当人の睡眠時間や十分な食事を確保する術がなかった点 ② 体演に多少、周囲の雑音が入っていた点 ③ 実験の前にリラックスする術を施さなかった点 などである。 考察 今回の研究では、残念ながら自己で集中力を高める方法を見出すまでには至らなかった が、集中力の正体は、ぼんやりとではあるが見えてきた。つまり集中力とは、数ある感覚 機能の神経を特定の状況の中で必要なものだけに絞り込んだり、その感覚機能の使用の幅 を広げたり、余計な感覚機能の働きを抑制したりと、自分で必要な感覚機能を選び出し、 それをコントロールする能力であるようだ。そして、この能力はリラックスと程よい緊張 感のバランスがとれた時に最も発揮されるものである事が分かった。 また、普段の食事や睡眠時間、その日の体調やコンディション、その場の環境も集中力 に深い関係がある事が分かった。とすると、我々アスリートは、試合や本番でこの集中力 を最大限に発揮するための良いコンディションや良い環境を、自ら作り上げてゆく能力も また不可欠であると言えるのではないだろうか。 集中力とは、いつだってパフォーマンスのできを大きく左右するとても重要な力である。 この力を上手く発揮できれば、自分でも驚くようなプレーができたり、記録が出たり、自 分の限界を超える事もできるのである。 7.後書き 我々が集中力というテーマについて研究しようと決めた時、水落先生からまず頂いた 言葉は「集中力は難しいぞ」だった。実際、これまでにも多くの先輩がこのテーマに挑戦 し、解決できぬまま終わってきた。しかし、その事はかえって私の心の火をつけた。先輩 方の研究レポートなどを見せて頂いたことがこの炎に油を注ぐ形になったのだと思う。 我々はまず、集中力から連想されるものを全て紙に書き出し、その中で最も我々のテーマ に合うもの4つを抜粋した。そして、4人それぞれが自分の調べてみたいことを一つ選び、 それぞれに研究を進めていった。その後の予定としては、それぞれに研究した課題を持ち 寄り、4人の研究成果をまとめた上で、その調べたことを基に実験を行い、実験結果から 我々の仮説『集中力はコントロールできる』を証明するというものだった。しかし、四人 のスケジュールがなかなか合わず、研究の進み具合は順調とはいかなかった。そこで、我々 は、さらに課題を絞り込み、なあなあになりそうだった研究を完結の方向へもっていった。 結果は既にお分かりの通り、『集中力はコントロールできる』という仮説を肯定するには至 らなかった。そこで、我々のやったことを振り返ってみると、集中力の定義をはっきり決 めること、集中力に影響を及ぼす様々な外的要因を調べることだ。我々によって集中力の コントロールの仕方を発見することはできなかったが、このテーマについて新たな一歩を 踏み出せたと満足している。我々のレポートを読み、また後輩が別の手段でこのテーマに 挑戦してくれれば幸いである。 参考および引用文献 発掘!あるある大事典 http://www.kyv.co.jp/ARUARU/search/arushuuchuu/shuuchuu4.htm スポーツメンタルトレーニング教本 集中力!! 保坂栄之助 鈴木一行 ヒット企画協会 高畑好秀 2002 2002 ジャンクスポーツアスリートたちのナイショ話 メンタル強化バイブル 大修館書店 池田書店 栗原幹夫 2002 KK ベストセラーズ 2002
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