アメリカに操られる日本 - Aya インターネットサービス

佐藤文明の長編ノンフィクションノベル
『アメリカに操られる日本』
―日本はなぜ、アメリカに追従するのか。その謎を解く。
1
「アメリカに操られる日本」
らい向きもあろうかとは思うが、少しで
ネットで読むにはあまりにも長すぎ、つ
からの刊行が可能となったのである。
著作権を当方が取得するに至った。他社
しかし、その準備の過程でアメリカの
同 時 多 発 テ ロ( 9・1 1) が 勃 発。 現 実
が本書の想定する枠組みを越えてしまっ
本を売っているのは誰なのか。この国の
もあって、政府高官を含む日本の要人多
ら持ち込まれた。出版社のバックアップ
物語の企画は1999年、某出版社か
が危険な坂を転げ始めたため、ここで発
いままに、国際情勢が急変。日本の進路
だが、すぐに手を入れる時間的余裕がな
た。もちろん、改訂も計画されていたの
物語の経緯
も目を通していただければ幸いである。
CIAの日本コントロールを許すな
年、アメリカに壊された
失われた 10
日本経済。にもかかわらず、どこまでも
要 所 に 巣 食 う CIA
エージェントによる
日本支配の舞台裏に迫る。
数の取材協力をいただくことができた
表することとした。
たため、全面改訂が必要になってしまっ
この物語は某出版社によって刊行され
が、ことの内容から取材源の秘匿が絶対
アメリカに追従する日本。アメリカに日
る予定であった。いまもなお、抜本的に
条 件 と さ れ た。 本 書 が 物 語 ス タ イ ル を
攻撃やこれに追従する日本の動きが急で
後、手を入れ、最終稿は2001年1月
本書の脱稿は2000年9月で、その
一部、実名を避けているのは無駄な訴訟
具 体 的 な 証 言 に 基 い た 真 実 で あ る。 が、
本 書 の ほ と ん ど は 公 開 さ れ た 情 報 や、
物語の真相
修正を加えて出版する計画もある。しか
採っているのもそのためで、内容は極め
あり、このままでは取り返しがつかなく
に完成している。本稿はその過程でまと
で時間を奪われたくないため、および取
てノンフィクションに近い。
なる、という思いから、急遽、ネットで
まりを見たもので、最終稿ではない。最
材源の秘匿を維持したいためのものであ
し、 ア メ リ カ に よ る 9・ 11
以降の国際
人権に対する挑戦や、アフガン、イラク
の発表に踏み切ることとした。
終稿はペーパーでのみ行っている。
にもかかわらず更新が滞り、迷惑をかけ
ア ク セ ス が ひ じ ょ う に 高 率 で あ る こ と、
相容れないものとなり、担当編集者の立
が、この間に出版社の方針が筆者とは
るCIAのスパイ網を恐れているからで
彼らが一様に政府内に張り巡らされてい
る。政府高官を含め、秘匿が必要なのは、
これはまた、佐藤のホームページへの
て い る こ と、 な ど へ の お 詫 び で も あ る。 場も悪くなった。そのため、交渉に及び
2
9・1 1 以 降、、 日 本 で CIA
が想定し
ていなかった出来事が起こった。小泉内
CIAの謀略
う
ある。彼らによって失脚されることを恐
この事実は恐ろしいことである。取材
閣の成立である。予想外だったため、小
もノンフィクションに賭ける筆者として
はできない。しかし、フィクションより
語によって、現実の人物を想定すること
県石見市に関係する人物である。この物
ために、つなぎとして創作したのが島根
この物語をフィクション仕立てにする
も必要だったため、両者をかみ合わせた。 ン」に関する情報を交換し合った。
ある親ロ派の中心人物・鈴木宗男の排除
かない。その際、外務省の新しい動きで
に乗り出した。 CIA
としては、小泉を巻
き込み、親中派・真紀子を追い落とすし
面会要請を無視し、対中国外交に積極的
登用である。真紀子はアーミテージーの
そ の た め、 小 泉 は CIA
の想定外の人事
を行うことができた。田中真紀子の外相
そ の 当 時 は 英 文 の サ イ ト が 中 心 で、「 エ
仲 間 は そ れ か ら ひ と し き り、「 エ シ ュ ロ
とがすべての始まりであった。チャット
る」という奇妙なメッセージを寄せたこ
インターネットのチャット仲間の一人が
だ中学二年生だったときのことである。
て知ったのは、今から四年前、英司がま
初章「警戒」
ることなど不可能だ 。そのことを心しよ
。アメリカはすべてを利用し尽くす 。
を断ってきたある外務省の高官は「その
泉に
れているからである。
件 は 口 が 避 け て も 話 せ な い。 墓 場 ま で
は、筆者なりの想像力を働かせたつもり
結果は両者が潰れ、外務省はふたたびア
シュロン」の情報を発見するのも、読み
いている
船
・ などの)階段状編隊」を意味する英
語だが、どうやらこれはアメリカ、イギ
突然「おまえたちのメールは覗かれてい
磯崎英司が「エシュロン」の存在を始め
である。
メリカ派の天下となった。できすぎの展
込 ん で 理 解 す る の も 困 難 を 極 め た。 が、
の 工 作 員 は 着 い て い な か っ た。
CIA
だが、
いちおう、
お断りしておこう。「本
開だ。そして小泉によるアメリカ追従で
持っていく」とまで語っている。これが
書の記述はフィクションであり、現存す
をお読みいただきたい。
ら決まっている 。 CIA
にたずなを着けら
れることなく、アメリカ大使を勤め上げ
せん」……、ということで、ぜひ、本編
物語りの真相である。
るいかなる個人、団体とも関係はありま
あ る 。イ ラ ク 問 題 特 別 顧 問・ 岡 本 俊 夫、 それが却ってみんなの好奇心、探究心を
元 ア メ リ カ 大 使、 彼 は CIA
の た め に 働 刺激したのである。
。自衛隊の派遣は任命のときか 「ECHELON」とは「(軍隊 飛
・ 行機
現実への展開
3
リスなど「UKUSA」同盟に加入する
が配置されている。
グ、日本の三沢基地にも重要な傍受施設
ン」情報の底の浅さを、チャット上で嘲
ら新聞の記事にもなり始めた「エシュロ
笑しあったりしていたのである。
局(NSA)がイギリスの政府情報本部
大の諜報機関、アメリカの国家安全保障
加五か国の諜報機関)に通報されるので
そして、
収集を依頼したクライアント(参
で、写真以外に確かな記憶はない。
のころからか剃り落としてしまったよう
N S A の 本 部 に 集 め ら れ、 分 析 さ れ る。 たしか口ひげを蓄えていたのだが、いつ
英司の父・磯崎正太郎はフリーランス
(GCHQ)に呼びかけて始まったもの
ある。
としての押し出しに欠ける。それを補う
な通信情報は、すべてが一度、アメリカ
これらの傍受施設でキャッチした重要
英語圏五カ国が、世界に張り巡らせてい
る盗聴網を意味するコードネーム(暗号
名)なのである。
で、東側の軍事情報に限らず、当初から
ためのひげだったようで、年を重ねた結
者)こそがアメリカ中央情報局(
Central
果その必要を感じなくなったものであ
そして、その最大のクライアント(注文
る。
のライターである。英司が小さいころは
西側の政治経済情報を盗聴のターゲット
)、すなわち、CI
Intelligence Agency
Aなのである。その発注量の大きさを考
仕事柄なのか、いつも物知り顔で、何
のメリーランド州フォートミードにある
にしていた。
え れ ば、
「 エ シ ュ ロ ン 」 は ま た、 C I A
かといえば教えを授けようとする父の態
この盗聴網は一九七〇年ごろ、世界最
レックス、衛星通信、Eメール、インター
の世界盗聴ネットワークだといっても過
度が気に入らなくて、だんだんとしかと
司が父をあらためて見直したのは、自分
やや細面の柔和な顔立ちで、ライター
ネット、マイクロウェーブ、FM波、短
言ではない。
国際電話、携帯電話、ファックス、テ
波 ・・・・・
。つまり、世界を飛び交うあら
ゆる通信を根こそぎ傍受しようとするも
「 お ま え た ち の メ ー ル は 覗 か れ て い る 」 を決め込むことが多くなった。そんな英
というのも嘘ではなかったのだ。
のである。
NSA最大の傍受施設はイギリスのメ
しか知らないと思っていた「エシュロン」
ン」
に関する日本語サイトも増えてきた。 のことを、驚くほど詳しく知っていたと
翌年の一九九九年になると「エシュロ
リーフィールド、オーストラリアのパイ
英司たちはこれらのサイトを競って発見
ンウィズヒルにあり、アメリカのバック
ン ギ ャ ッ プ の ほ か、
「エシュロン」参加
しては読み漁った。そして、そのころか 「 ひ ょ っ と し た ら ラ イ タ ー と い う の は、
きである。
国ではないドイツのバードアイブリン
4
であるノードと呼ばれる場所に装置をつ
線を使っている。その盗聴には回線の節
それにね、Eメールはインターネット回
盗聴を避けることもできる。
だ。どうセレクトするかを知っていれば
要なものだけをセレクトして盗聴するん
いものを盗聴すると思うかい。彼らは必
てみてごらん。盗聴したってしょうがな
「 み ん な じ ゃ な い よ、 も っ と 冷 静 に 考 え
答えた。
れてるんだ。ほんとだよ」
「 電 話 だ っ て メ ー ル だ っ て、 み ん な や ら
たのである。
あ、許せるか」と思えるようになってき
の 態 度 も や む を え な い も の が あ る。
「ま
そんな風に考えてみると、父のいつも
れない」
そうでなければできない仕事なのかもし
主張を理解し、賛成してくれた。しかし、 題になった。受け取ったパソコンのデー
に提案してみた。仲間はみんな、英司の
英司はさっそくこの考えをチャット仲間
ないんだ」
これ以上は許さないぞ、と考えるほうが
まれる可能性はそれほど高くない。
いない。だから日本どうしのメールが読
わけだね。だけど日本の回線にはついて
カ国内だけでもそんなに必要だ、という
ドに装置をつけている、という。アメリ
そのため、
アメリカでは今、七か所のノー
可能性がある。でもこれはあくまでも可
置をつければすべてのメールが読まれる
だよ。だから、世界のどこか一か所に装
と て つ も な い 物 知 り な の か も し れ な い。 こを通って通信されるかはわからないん
自 分 の コ ン ピ ュ ー タ に 必 要 な ソ フ ト が、
たといっていい。
タの2000年誤作動問題)一色になっ
がって、チャットはY2k(コンピュー
とりわけ、九九年の年末が近づくにした
関する話題であった。
確率はほとんどないんだよ。わかるだろ。 号ソフトをめぐる問題、サイバーテロに
能性にすぎない。実際には、そこを通る
瞬く間にチェックされている。
げ さ に 考 え ず に、 い ま は こ れ ぐ ら い だ、 し た と き、 英 司 は 妙 な こ と に 気 づ い た。
だから、やられてる、もうだめだ、と大
二〇〇〇年の三月にはコンピュータ・
つか装置をつけたいと考えているに違い 「 こ れ っ て、 自 分 の コ ン ピ ュ ー タ が 覗 か
いい。CIAはきっと日本の回線にもい
ウィルス「I/Love/You」が話
そして、これに代わって登場したのが暗
いった。
ン」に関するチャットは急速に減って
の で は な く な っ て き た た め、「 エ シ ュ ロ
情報そのものも当初に比べて、珍しいも
英司がそういったとき、正太郎はこう
けて読み取るんだ。インターネットは通
冷静な議論は長続きせず、「エシュロン」 タがやられるだけではなく、自動的に友
れているってことではないのか」
に接続し、必要なソフトをダウンロード
マイクロソフトのY2k対策用サイト
信経路を回線の事情で勝手に変える。ど
5
の「I/ROVE/YOU」対策だとい
うのである。
消去する。これもいつしか英司の習い性
た。
「 ク ッ キ ー」 を 受 け 取 っ た ら す ぐ に
る警戒感をいっそう強く持つことになっ
に合わせた上で、もう一度文面を眺めて
み 箱 に 入 れ よ う と ポ イ ン タ ー を「 削 除 」
英司も雑誌の忠告に従い、メールをご
英司は以来、コンピュータ通信に対す
「こんなに始末の悪いウィルスをいった
になっていた。
みた。と、どうだろう。文字化けと思え
人あてにメールを出して感染させてしま
いだれが、何のために作ったんだろう」
それからしばらくの歳月が流れたときで
うことだった。
にののしった。しかし、もっと恐るべき
ある。
英司は怪しいメールを受け取って、 た文面に、字間こそ大きく開いているも
チャット仲間はウィルス製造犯を口々
ことが二か月後に発生した。フィリピン
うろたえた。
のの、カタカナとひらがなが交互に顔を
警察当局が、製造犯と思われる人物を特
出しているではないか。
のメールは安全です」という書き出しの 「 こ れ は 何 か の 暗 号 だ。 文 字 化 け な ん か
定し、そのアジトを急襲した、というの 「 お 願 い し ま す 」 と い う タ イ ト ル と「 こ
である。いったいなぜ、犯人が特定でき
ほか、すべてが文字化けしている。ほか
れているので、どこから送られたもので
い つ ぞ や 巷 を 騒 が せ た コ ン ピ ュ ー タ・
ても、これを開く気にはならないのだ。
り出す能力を持った男が、こんなことに
ウイルスに感染する恐れがある。
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メールの本文をプリントアウトしてみ
英 司 は 早 速、 い く ぶ ん 緊 張 し な が ら
じゃない」
たのだろうか。それが信じられない。
あ る か を 追 跡 す る こ と は 簡 単 だ。 ま た、
ウイルス「I/ROVE/YOU」では
に添付ファイルがついているのだが、と
「 ク ッ キ ー」 を 使 え ば、 そ の パ ソ コ ン 所
ないが、ファイルを開けばハード・ディ
確かにメールには通信記録が組み込ま
有者の基本情報を覗くことができる。
無警戒だったとはどうしても信じられな
送 信 者 は「 [email protected]
」と
あ る。 も ち ろ ん 心 当 た り は な い。 コ ン
スクのソフトやデータを破壊する悪質な
い。
ピュータ雑誌によればこんな場合は「そ
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しかし、である。高度なウィルスを作
「 ぼ く ら が ま っ た く 知 ら な い、 追 跡 の 裏
のまま削除しましょう」というのが最善
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英司はこの奇妙な暗号に、思わず吹き
古文が交じっているために、とっても
わかりにくい。ワープロソフトも、誤り
を 指 摘 す る 信 号 を 出 し て い る。 だ か ら、
この置き換えが正しいのかどうか、自信
はない。
どもの他愛ないいたずらだな」と思った
知りたり。故に、危うし」がとても気に
うにか意味が通じる。とすると、「われ、
で も、「 海、 ら ぶ、 い、 に 」 を 除 け ば ど
からだ。
「こんなのは暗号なんかじゃな
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が、 そ の 結 果 を 語 る 前 に、 話 を 一 気 に
ワ ク ハ、 ヒ ト ク セ ヨ。 ト キ、 オ ノ ズ ト、 一〇年と二カ月前の一九九一年一一月に
クレリ。ヒラカスモ、カマヒナシ。ネカ
なる。このまま放っておいてもいいもの
ノイズを払うと文面はこうなる。
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ラブ、イ、ニ、ケサル。サクルニハ、ヒ 結局、英司は父・正太郎にアドバイスを
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知りたり。故に、危うし。海、らぶ、 CIAの謀略 第 章
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・・ 「われ、
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1 「陰謀」
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3#Uc。。 ・
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! ・ } ) しかず。添付を、あまたに送れり。開か 「篠山くんはあの話をどう思うかね」
構いなし。願わくば、秘匿せよ。時、
・・・
・
l・・ ずも、
スピーカーがチェンジして、立食式の
P(
.?1WW>J
゙
TT)5#_?
パーティー会場がいっそうの喧騒に包ま
55|5HUH。 ・
;""・・・た ・
{K怐● '33l 自ずと、来たれり」
8
が、篠山グループが陣取る隅の円テーブ
かと見まごうほどに鼻先を赤くした男
うすっかり出来上がっているのではない
その人波を掻き分けるようにして、も
に酒を注いでまわっている。
数刻前から和装のコンパニオンが来場者
れる。東京・丸の内のパレスホテル、
パー
だという、あの話さ。あの話をきみはど
がおもわず『CIAにやられた』と叫ん
崩壊したという第一報に接して、鄧小平
ンブルグ門が開放され、ベルリンの壁が
からきみも知っているだろう。ブランデ
り の 挨 拶 に、 も う 耳 を 傾 け る 者 も な く、 「 篠 山 く ん、 も う 旧 聞 に な っ て し ま っ た
ルルームでのことである。似たり寄った
う思うかね」
うなキャビアで半ば埋もれている。
り皿の上には生ハムやサーモンが山のよ
聞が何者かの圧力に屈して田村を切っ
といわれるまでになったが、その毎朝新
追 及 に よ っ て、 毎 朝 は「 社 会 部 の 毎 朝 」
田村の社会部的な手法による疑獄事件の
の社会的使命を終えている。
たが、一九八三年、田村の死によってそ
追及を売りに、根強いファンをもってい
トな提言を行う週刊新聞で、政界疑惑の
告の掲載を一切せず、政財界にストレー
で デ ス ク を 勤 め た 篠 山 啓 志 と『 プ レ
す、というので、毎朝に対する、あるい
その田村が時事問題に直言する新聞を出
篠山グループとは『週報・プレヴュー』 た、との、確度の高い噂が流れた。
ヴュー』の周辺で仕事をしていた若手の
は毎朝のバックで圧力をかけた何者かに
ルに近づいてきた。花井沢秀道という業
篠山啓志とは『週報・プレヴュー』時
フリーのライターが結集して生まれた臨
界紙の記者である。
代の記者仲間だが、その、謹厳実直な社
対する報復か、という噂が飛び交い、
『プ
ら大いに注目された。しかし、田村はつ
時 編 成 の 取 材 チ ー ム で、「 取 材 プ ロ・ シ
「 取 材 プ ロ・ シ ン ク 」 は 正 式 に は 三 年 前
いに、そのことを語らぬままに世を去っ
風が肌に合わなかったのか、ほどなく退
の一九八八年に解散しているのだが、仕
たのである。
レヴュー』創刊当時はマスコミ関係者か
もっとも、おいしい話があればどこに
事領域の近さもあって、その後もゆるや
社会部的なセンスで政治を切る、ある意
ンク」を名乗った。
でも顔を出す男で、今日の新雑誌創刊記
かな交流が続き、業界からは篠山グルー
職して、現在の『エレクトロ・コミュニ
念パーティーも、アルバイト原稿の口を
味で「シンク」は、この田村の遺志を継
ケーションズ』に移っている。
求 め て や っ て き た の は い う ま で も な い。 プと目されている。
いだ取材チームだともいえた。
部記者だった田村ひさしの個人紙で、広 「鄧小平がそ う叫んだってお かしくはな
が、それよりもまず、確実な利益を、と 『 週 報・ プ レ ヴ ュ ー』 は 元 毎 朝 新 聞 社 会
いうわけだろうか。花井沢が手にする取
9
い。実際、CIAが仕掛けた、といって
だ、と、まあこんなところだろう」
このところがわからない。知りたいもん 「堀田、ちょっと説明してやってくれ」
気楽なパーティーでもありすっかり和
も間違いではないからだ。でもな、あん
んでいたためだろう。突然お鉢を回され
て、堀田はやや戸惑い気味だった。しか
し、堀田はまた普段からよく弁の立つ男
花井沢はあきらかに、おもしろくなさ
たが考えているようなものとはちょっと 「うむ、まあそんなところだ」
違う」
そうな表情を見せた。
篠山がちょっとおどけたそぶりで花井
である。一度しゃべり始めると、しり上
鄧小平が「CIAにやられた」と叫ん
「 で、 そ の 何 が お ま え と は 違 う と い う ん
のは。おれはまだなにも言ってはいない 「 そ れ は な、 お ま え が 考 え て い る よ う な
だという、この話、一説には鄧小平が江
沢に答えた。
派手な工作や立ち回り、スパイ映画もど
沢民にそう話したというものもあるのだ
がりに流暢になっていく。
ぜ」
きの大謀略などはなかった、ということ
が、この話がジャーナリストたちの裏情
だ」
「 あ あ、 こ い つ は 失 礼。 確 か に ま だ な に
さ。だからといって、この歴史的な大事
「 何 だ よ、 お れ が 考 え て る こ と っ て い う
も言っちゃあいなかった。でもわかるん
もたらされたとき、篠山啓志はにやりと
報に乗って「元シンク」の忘年会の席に
といえば嘘になる。鄧小平がそれに気づ
笑って、こういった、という。
件にCIAがまったく絡んでいなかった
いていたとしても不思議はない」
だよ。よし、それじゃああんたが考えて
いることを当ててみせようじゃないか」
パーティーに退屈し始めていた篠山グ
ループはもちろん、
近くにいた何人かも、 「おいおい、
何だよ。おまえはそれを知っ 「 お い お い、 C I A だ っ て よ。 C I A が
何もしなくたって、遅かれ早かれベルリ
読めていたよな。もっとも、CIAの関
ているとでも言うのかよ。えっ、どうな
篠山は「元シンク」のメンバーをぐる
与がまったくなかったわけでもない。鄧
この話の行方に聞き耳を立てた。
CIAがベルリンの壁崩壊にあたって何
りと見渡し、最年長の、といってもメン
小平はそのことを言っているのかもしれ
ンの壁が崩壊することぐらい俺たちには
かを企んだ。そして、その何かを鄧小平
バーは篠山を除けばみなおなじぐらいの
ないな」
んだ」
が知っている、と考えている。おそらく
年恰好で、大差はなかったのだが、信頼
「 つ ま り こ う い う こ と だ。 花 井 沢 く ん は
歴史をひっくり返すような大謀略に違い
度からみて堀田豊を指名した。
俺たち、とはいうまでもなく、篠山グ
ない。が、それがいったい何なのか。そ
10
は、 世 界 の 穀 物 生 産 量 や 貿 易 量 に よ っ
「 だ か ら、 そ の こ ろ の メ ン バ ー に と っ て
していた。
ムを組み、主に国際的な食糧問題を追及
シンク」
は解散前、
篠山啓志を中心にチー
いう、決定的な敗北のシナリオを選択せ
して、ソ連はアメリカからの穀物輸入と
な穀物不足が予想された。この危機に際
改革では解決不可能な、慢性的、恒常的
なもの。すなわち、政治経済的な努力や
地球全体の温暖化と一体になった傾向的
ド出身のパウロ二世を教皇にしたローマ
率いる連帯労組が足場を築き、ポーラン
現れた。この社会不安の上に、ワレサが
現し、ついで、主食であるパンの不足が
を食用に回したため、まずは肉不足が出
ランドである。ポーランドでは飼料穀物
そのしわ寄せが真っ先に現れたのがポー
こ れ は 気 ま ぐ れ な 気 候 変 動 で は な く、 削減せざるを得なくなった。
て、世界の政治の動きを予想してみるこ
ざるを得なかった。
ループ「元シンク」のこと。
「取材プロ・
とが習い性になっていたんです。そんな
た。 ソ 連 は 発 表 し て い ま せ ん で し た が、 ター政権が一七〇〇万トンに及ぶ穀物の
生産量が年々急落していることがわかっ
中、ソ連の穀物生産量、とりわけ小麦の
対ソ禁輸措置をとり、ソ連が追い詰めら
ガニスタン侵攻の報復措置として、カー
その結果、一九八〇年にはソ連のアフ
社会不安を演出した。そして、バチカン
算し、輸出量を決定して、東欧の適度な
る。CIAは穀物の収穫量と貿易量を計
この舞台をセットしたのがCIAであ
である。
ンカトリックが援助の手を差し延べたの
きる。
これはCIAの分析官の仕事です」 れたこともある。しかしこのときはアル
衛星写真を分析すればほぼ正確に計算で
ゼンチンやオーストラリアからの買い付
これがベルリンの壁の崩壊につながった
堀田は気象衛星と偵察衛星をひとしき
もっとも、アメリカからの穀物輸入で
というのなら、おそらくその通りである
とのタイアップを取り付けて、ワレサ支
ソ 連 の 穀 物 生 産 の 落 ち 込 み は、 コ ル
まかなえたのはソ連国内での消費量に過
し、これにCIAが関与していたという
けが成功し、ソ連は急場を凌ぐことにな
ホーズと呼ばれる集団生産方式の金属疲
ぎなかった。東欧はそれ以前から慢性的
のであれば、これもその通りである。鄧
り強調してみせてから、およそこんな風
労、自然条件を無視した過剰な生産計画
な穀物不足に喘いでおり、これを支えて
小平の叫びには、理由があるのである。
援の陣形を作り出したのである。
による土地の疲弊など、さまざまな要因
きたのがソ連からの穀物援助だったので
だが、CIAの構想の中に、ベルリンの
る。
が絡んでいるが、最大の原因はユーラシ
ある。ところがソ連は次第にこの援助を
に話を続けた。
ア内陸部の平均気温の低下である。
11
篠山啓志がしたり顔で、そう断言した
い。ソ連解体となればアメリカの援助は
を防ぐにはソ連みずからの解体しかな
リカに援助を求めるとなると、ソ連に回
に、 直 接 東 欧 に 食 糧 援 助 を 行 う こ と で、
のは、チェルノブイリで原発が大事故を
まずソ連に向けられます」
ンの壁は崩壊する。このままでは東欧は
東欧の切り崩しを狙っていた。たとえ切
起こしたときであった。それはソ連の穀
堀田が篠山の予言を披瀝する間、ワイ
壁崩壊までは含まれてはいなかったはず
り崩しに失敗したとしても、東欧に穀物
倉地帯、あるいはヨーロッパの穀倉地帯
ングラスを傾けながら篠山はいかにも得
る分が不足することになる。ソ連がこれ
市場を確保できるなら、それで十分なの
と呼ばれたウクライナの大部分に壊滅的
意然として聞いていた。篠山が堀田を指
やっていけない」
である。
な打撃を与えた。
だ。実際、アメリカはソ連の手を通さず
ポーランドはその実験場であった。もっ
名したのは、この予言のくだりを他人の
が、
これで一層の減産を余儀なくされる。 口からしゃべってもらいたかったからだ
ただでさえ不足気味のソ連の穀物生産
は、 こ こ が 東 欧 最 大 の カ ト リ ッ ク 国 で
東欧への食糧援助の復活は金輪際ありえ
とも、実験場にポーランドが選ばれたの
あったから、というだけではない。ここ
ない。東欧各国はこのことを痛感させら 「 篠 山 さ ん の 着 眼 点 に 共 鳴 し て、 わ れ わ
らである。
この程度の展望が、一気に世界の歴史を
あったはずだ。
返せる。CIAにも、その程度の展望は
セロ理論」である。はさんでしまえば裏
言葉に従えば「ドミノ理論」ならぬ「オ
ツを裏返すチャンスが生まれる。堀田の
これでした。アメリカの食糧援助には限
『ソ連の崩壊』篠山さんが出した結論は
にも読めなかった別な要因が発生したか 「
書き換える事件に発展したのは、CIA
界があって、東欧すべてが崩壊し、アメ
こまで広がるかに移っていった。
壁崩壊にとどまらず、この雪崩現象がど
が始まったのである。問題はベルリンの
こうして、切り崩すまでもないなし崩し
然である。
側の援助を取り付けたいと考えるのは当
れることになる。となれば、われ先に西
れます。アメリカの援助が行き届かない。
壊すると、東欧の一部に政情不安が生ま
もオセロ理論の一種でしょう。ソ連が崩
いうまでもなく、東欧の崩壊です。これ
ソ連の崩壊はもう目前です。こうなれば
し て そ れ は 現 実 の も の と な っ た ん で す。
ような結論に達するのは必然でした。そ
世界を見たとき、われわれシンクがこの
最大の戦略物資である、という視点から
れは食糧問題をテーマに選んだ。食糧は
ろうと思われた。
をひっくり返すことができれば、東ドイ
「 こ れ で 決 ま り だ な。 遠 か ら ず、 ベ ル リ
12
またソ連の援助が途絶えた朝鮮民主主義
ことを期待した。が、花井沢は堀田をぴっ 「 た、 た し か に そ れ は ち ょ っ と 変 で す よ
とが、CIAのカウンターパンチに倒さ
ね。だからそれはきっと、誇張して伝え
めいめい、カクテルにフルーツ、チー
れた、と伝えられた。そのほうが話とし
たりとマークしてバーまでついてきてし
ズなどの軽いつまみを口にしながら最近
ては面白いですからね」
人民共和国が苦境に追い込まれます。そ
堀田の口調は次第に熱を帯び、テーブ
の仕事のことなどを話す。ただ一人、ス
ら れ た ん じ ゃ な い で す か。 C I A の ボ
ルを囲む人たちを惹きつけた。今はなき
コ ッ チ を ぐ び ぐ び や っ て い た 花 井 沢 が、 「そんなものはおまえの当て推量だろう。
まった。篠山はやむなく花井沢とはちが
グループ・シンクが堀田の口に乗り移っ
突然「どうせならウイスキーをボトルで
して、この結論もいま現実のものとなり
たかのようだった。もっとも、広い会場
も ら い ま せ ん か 」 な ど と 言 い だ す。 が、 という伝聞を出発点にして問題を考えて
ディーブロウが効いてきた、と話したこ
にはいくつも似たような輪ができてい
いるんじゃなかったのかね。それを勝手
うテーブルに席を取った。
て、熱弁者が一人二人、中にいる。二次
これに乗る者はだれもいなかった。
に入れ替えてしまったんじゃあ話しにな
つつあります」
会シフトが自然に形成されていくのであ
それで臍を曲げたのか、あるいは酔いが
花井沢はちょうど正面に座っていた磯
俺たちはそもそも『やられた、と叫んだ』
る。
らん。ちがうかね」
はじめた。
回ったのか、突然、花井沢が大声を挙げ
篠山グループもそのままホテルの一階
崎に同意を求めた。磯崎正太郎、おなじ
きのはおかしい。納得がいかん。第一だ 「取材プロ・シンク」の元メンバーである。
に移動。ラウンジの奥にある「ロイヤル 「 堀 田 君、 と い っ た か な。 や っ ぱ り さ っ
バー」で飲みなおすことになった。コー
な、食糧がじわじわ減産する程度のこと
伝聞を出発点にして問題を考えた結果
ナーにカウンターはあるものの、人数が
多いため、
ボックスシートを三卓占領し、 で、 鄧 小 平 が 叫 び 声 を 上 げ た り す る か。 が 伝 聞 の 書 き 替 え に な っ た わ け だ か ら、
花井沢の非難はあたらない。それに「元
『CIAにやられた』なんて叫んだりす
分かれて座ることになる。
いきなりの剣幕に圧倒されて、花井沢
叫
「 ん だ 」と い う も の で は な く、 国 家 主
席の座を江沢民に譲ったばかりの鄧小平
シンク」が接した伝聞にはもう一説ある。
シックな店の雰囲気にはおよそ似つかわ
の斜め前に座っていた堀田がたじろぐ。
篠 山 と し て は 少 々 デ リ カ シ ー に 欠 け、 るか」
しくない花井沢が別行動を取ってくれる
13
う言おうとして言葉を呑んだ。酔った花
どに興味はありませんよ」と、磯崎はそ
「 わ た し た ち は、 伝 聞 を 前 提 に し た 話 な
そもそもすれちがっている。
と
」 いう「伝聞を前提にして」問題を考
えたかったのだろう。とすれば、議論は
いた 」というものである。
が、花井沢としては「伝聞を出発点にし
が、挨拶にやってきた江沢民に「ささや
してもその場合、事故は偶発的なもので
引き金にしたものだとしよう。そうだと
歩譲ってソ連の崩壊がチェルノブイリを
理のわかるやつがいる。もし仮にだ、百
「 ほ れ み ろ、 お ま え ら の グ ル ー プ に も 道
を注いでしまった。
である。だが、この日はどうやら火に油
仲裁役をおおせつかう。損な役回りなの
が彼だった。そのため、しばしば喧嘩の
磯崎もよくゴールデン街に連れて行かれ
問 題 と 結 び つ け た の は お ま え で は な く、
いや、待て、篠山だ。ソ連の崩壊を食糧
味 が よ く わ か る。 そ う だ ろ う、 堀 田 君。
あげた。これなら『やられた』という意
止した。あるいは発砲禁止命令をでっち
CIAは何らかの形でその発砲命令を阻
は ず だ。 天 安 門 事 件 の と き の よ う に な。
発発砲すれば事態は大きく変わっていた
グ門に人々が押しかけたとき、戦車が一
ありそうな話をすれば、ブランデンブル
だ。そしてその事実を、中国のスパイ組
いった」
篠山だろう。おい、篠山のやつはどこへ
たが、飲んだ席でいつも一番クールなの 「 な に、 こ れ は た と え ば の 話 さ。 実 際 に
このとき、花井沢は以外に冷静だった。
井沢にそういってみたところで、とても
はない。CIAによって仕組まれたもの
はありませんよ」という言葉尻だけを捕
織がキャッチしていた」
て」というよりも や「られた、と叫んだ
通 じ る と は 思 え な か っ た か ら だ。
「興味
らえて、頭に血が上っても始末が悪い。
うのがいた。新宿の古い飲み屋街で、こ
昔、ゴールデン街ジャーナリスト、とい
すれば、話は違ってきます」
と鄧小平が叫んだ』ということを前提に
なことを世界も、アメリカ市民も許すは
のぼる人を死の危険に巻き込んだ。そん
人を、いや、ことによったら数百万にも
す。数万の人を理由なく殺し、数十万の
そんな工作が発覚したらCIAは破滅で
のではやむをえない。すこしつきあって
はないが、名指しされ、居所を探された
沢とは飲みたくないという気分に変わり
篠山啓志はその言葉を飲み込んだ。花井
で出かかったが、
ルデン街じゃあないんだぜ」と、のどま
「 お っ し ゃ る 通 り『 C I A に や ら れ た、 「 い く ら な ん で も そ れ は あ り ま せ ん よ。 「おいおい、勘弁してくれよ、ここはゴー
こにたむろしては自己主張の強い議論
ずがありません」
クールな磯崎でも、声が上ずった。が、 静かにさせようか、と考えた。
を 戦 わ す。 篠 山 や 花 井 沢 は そ の 世 代 の
ジャーナリストである。
14
を意味しているはずだろう。おまえが言
と叫ぶ以上、それはなんらかの工作活動
いる」そう感じた篠山は、グラスを片手 いつらのことを言っている 」
「 い い か ね、 花 井 沢 く ん。 C I A の 工 作
な」と、磯崎正太郎はそう思ったが、遅
い な い。
「相手にしないほうがいいのに
堀田、花井沢と磯崎のやり取りは見えて
国務省の役人と何も違わない。いや、む
「おい、
篠山、
鄧小平がCIAにやられた、 員といったって、普段やっていることは
か っ た。
「堀田や磯崎がやりこめられて
官というカバーをかぶって、各国の大使 「おれは 何も一般論を聞こう としている
しろ工作員の多くが普段は国務省の外交
する工作員だっているだろう。おれはそ
も
「 ちろん情報の収集や分析を任務とす
る者はいる。しかしべつに謀略を専門と
るわけじゃあない」
んじゃあない。鄧小平がCIAにやられ
だよ」
仕掛けられるものではない、ということ
わったときのつけは大きい。そう簡単に
ラ ン・ コ ン ト ラ 事 件 の よ う に 失 敗 に 終
でなければ成功は難しい。つまり、国民
ば自国民をも欺いた上で行われる。そう
むしろ歴史的な偶然に支えられたレア
がら年中、工作に、謀略に飛び回ってい 「 そ ん な こ と は い っ て い な い。 そ れ ら は
う食糧戦略はアメリカの経済外交であっ
館に詰めている。そして国務省がやるよ
た、といっている以上、実際に何らかの
とはいえ、篠山にはこの間の花井沢と
て、工作ではない。そんなものは国務省
うなことをやっているのさ。スパイ映画
工 作 が あ っ た ん だ ろ う、 と い っ て い る。
の 謀 略 説 を 採 り た い の だ ろ う。 し か し
「 花 井 沢 く ん、 き み は ど う し て も C I A
だ。
ング・フルーツを一切れ、口に放り込ん
ろすと、まずは目の前にあったカッティ
れらもみな、謀略じゃあないというつも
ンの命を狙っているといわれている。こ
Aは暗躍している。今もイラクのフセイ
としたキューバはどうだ。アジェンデ政
篠山は堀田と磯崎の間に入り、腰をお 「それじゃあカストロ首相を暗 殺しよう
いいか、たしかに小麦の輸出量をどうす
手 な 工 作 は な か っ た ろ う と い っ て い る。
いっていない。おまえが考えるような派
アでもヴェトナムでもコンゴでも、CI 「だから はじめから工作がな かったとは
権を転覆したチリはどうだ。インドネシ
るか、なんてことは国務省か商務省の仕
きっちりマークしている」
諜 報 機 関 も 優 秀 だ ぞ。 C I A の 動 き は
おまえは知らんかもしれないが、中国の
の合意を取り付けていない。だから、イ
ケースだ、といっている。謀略はしばし
がやればいいことで、CIAがしゃしゃ
のような派手なことは何もない」
な、CIAといっても基本は諜報機関な
りか」
に席を移ってきた。
り出るまでもないだろう」
んだ。主な任務は情報の収集と分析。年
15
工作というには遠すぎるんじゃないか」 「 そ れ は 違 う ぞ、 花 井 沢。 C I A が 日 本
だ。 風 が 吹 け ば 桶 屋 が 儲 か る 式 の 話 で、 にをしているかわかったもんじゃない」
しかし、それはいったいいつのことなん
「そこでCIAが動いた、というんだろ。 界から舐められる。世界の現実は謀略の
でも表向きには、という話だがな」
にもバチカンは世界のカトリックの総本
力が不可欠だった。でもな、まがりなり
ンドを切り崩していくにはバチカンの協
事だろう。だがな、それによってポーラ
すぎている。そんなことだから日本は世
ることなど考えられない。これはあくま 「 篠 山、 お ま え は C I A の 暗 躍 を 軽 視 し
山だ。アメリカ一国との外交取引に応じ
坩堝なのだよ。CIAだって、日本でな
ない」
そう簡単に組み立てられてられるはずが
ても、歴史をひっくり返すような謀略が
んだ。歴史の流れを利用することはでき
日本は大変なことになる」
ぎる。これをおろそかにすれば、いずれ
前に、日本社会は情報の管理に無関心す
ろ、といいたい。CIAがどうのという
過ぎないと見える情報収集に気をつけ
わないようにみえる活動、合法の活動に
いたい。国務省の役人とほとんど何も違
に、CIAの日常活動に注意しろ、とい
ことだ。おれはむしろ、謀略説を吹く前
う。それはわかる。だが、それは過去の
いかにCIAだといっても全能ではない 「 だ か ら そ れ を 警 戒 し ろ、 と い う ん だ ろ
ない」
のだったなどと、おれたちも考えてはい
工作が直接ベルリンの壁崩壊を狙ったも
はないといっているだろう。それにこの
だ。その力を怖れるあまり、彼らの術中
いからだ。CIAがその気になれば、日
のようにCIAを過大評価するやつが多
うやって意図的に謀略説を流すことさえ
ど朝飯前だと思っているやつが多いから 「 な に を ば か な こ と を。 C I A は な、 そ
本での政界工作や謀略を仕掛けることな
あるんだぞ。力を過大に評価させたいか
るんだ。韮山はCIAのエージェントか」
るわけではない。CIAを庇ってどうす
威を言っている。情報管理の話をしてい
で大きな顔をしていられるのは、あんた 「 話 を す り か え る な。 お れ は C I A の 脅
「 ほ ら み ろ、 そ う だ ろ う。 だ か ら 別 に 工
にはまる。敵に回されたくないと思うか
「だから最初からそんなに派手なもので
作なり謀略があったと考えるのが自然
という、その話の出所さえ疑ってみる必
らな。だからそもそも、鄧小平が叫んだ
「いまの日本ではたまたま謀略を仕掛け
要があるんだ。調べてみたら花井沢だけ
らだ」
る必要がないだけだ。戦争直後は実際に
じゃないか。鄧小平はそのことをいって
「 花 井 沢 く ん、 あ ん た は ど う し て も 派 手
が吹きまくっていた、ということだって
いる」
な 謀 略 と 結 び つ け た い ん だ な。 し か し、 数々の謀略を仕組んできた」
16
「 な ん だ っ て、 お れ が エ ー ジ ェ ン ト だ と
考えられないことではないんだ」
うに見える磯崎よりも上であることが多
に欠けるわけではなく、いかにも精密そ
なるんじゃないかと思ったよ」
したぜ。また磯崎が割ってはいることに
る。 堀 之 内 は 磯 崎 や 堀 田 よ り も 少 し 若
「言い出したのはおまえだ。ふざけるな」 山 グ ル ー プ の 堀 之 内 久 子 も 同 席 し て い
よくもそんなことを」
く、
『 週 報・ プ レ ビ ュ ー』 の 記 者 経 験 は
いう顔をして、さっさと逃げ出しますね」
街じゃないんだ。こんな人知りませんと
ありません。それにあそこはゴールデン
の流れパンチを食らったらひとたまりも
花井沢さんはでかいからなあ。あんな男
「いやいや、そいつだけはごめんですね。
「 昨 日 は 参 り ま し た ね。 ほ ん と に ど う な
ない。大学を出てからすぐ日本ジャーナ
い う つ も り か。 ふ ざ け る ん じ ゃ あ な い。 い。まずまずのコンビなのである。
ることかと思った。それにしても篠山さ
リスト・スクールで学び、その実践過程 「それにしても、昨日の話はおもしろかっ
この日も仕事の打ち合わせで、おなじ篠
んがあんなにオーバーヒートするのも珍
専門学校卒業後の押しかけメンバーであ
を抱いてしまう。しかし、それがCIA
CIAと聞くと謀略と直結したイメージ
の思うツボだとは考えもしなかった」
る。
しい。
今にも殴りかからんばかりだった。 の授業で「取材プロ・シンク」を知った。 た。おれなんかもつい、花井沢と一緒で、
よほど虫の居所が悪かったんだろうな」
パレスホテルでの雑誌創刊パーティー
「 ほ ん と、 い っ た い な に が あ っ た の。 突
然大声を張り上げるんだもの、びっくり 「 0 0 7 と か、 ス パ イ 大 作 戦 の イ メ ー ジ
の翌日、
磯崎正太郎はおなじ丸の内の一角で、再
よ」
重なるところが多く、よく、一緒に仕事
のメンバーの中でもとりわけ守備範囲の
ない。
で、議論の中身はまったく飲み込めてい
堀之内は終始別なテーブルにいたの
なくてはならないものなんだ、スパイは
ばかりじゃなく、スパイ活動は国を守る
はああしたスパイ映画も反共宣伝という
が強いからね。まあ、考えようによって
び堀田豊と会っていた。二人は元シンク
をすることがある。
英雄的愛国者なんだ、というプロパガン
めぐる意見対立さ。そして、互いに相手
堀田は磯崎とは対照的で、あごの骨が 「 簡 単 に 言 え ば、 日 本 の C I A の 評 価 を
がっしりした無骨な感じのする押し出し
をCIAの手先だといってののしりあっ 「 そ れ は 間 違 い な い。 ア メ リ カ や イ ギ リ
ダでもあるんでしょうがね」
の強い男で、物事をすっぱりと断定する
た。いや、それにしてもほんとにホッと
スの子どもたちはきっと、ああいう映画
のを得意とする。といって、精密な論理
17
たとしても、映画を見る限りカッコいい
はめちゃめちゃ地味な、日陰の毎日だっ
「 そ れ は ぼ く ら に も あ る で し ょ う。 実 体
を見てスパイに憧れるんだろう」
し、国際基督教大学の客員準教授として 「そうしたら誘ってくれる人があって」
てからコロンビア大学で博士号を取得
いんです。彼はカールトン大学を卒業し 「 う ん う ん、 よ く わ か る。 ほ ん と に 涙 が
際基督教大学(ICU)に知り合いが多
「 た ま た ま で す。 家 が 三 鷹 な も ん で、 国
てなんだろうなって、ずっと考えてたの」
ほうが評価が高いわけでしょう。それっ
出るくらい身につまされる」
わけですからね」
んだが、やっぱりこの国はどこかおかし
「 と こ ろ で、 あ の 後 い ろ い ろ 考 え て み た
んてことはないわよね」
のめりこみすぎて自分がその気になるな
ベネディクト以来、日本研究のメッカな
大学といえば『菊と刀』を書いたルース・
りませんが、ニューヨークのコロンビア
と聞いています。いまはどうなのかわか
リクルートする対象としてドンピタリだ
のは多くないから、貴重な財産になる」
ズムの手法を一から身につけた人という
ジャーナリストでアメリカのジャーナリ
ん だ ろ う と 思 う が な。 と も か く 日 本 の
い い。 ス テ ー タ ス が 高 い 分 だ け 厳 し い
「 女 か ら 見 て も か っ こ い い わ よ。 で も、 来日していますが、この経歴もCIAが 「 い い 話 じ ゃ な い か。 ぜ ひ 行 っ て く る と
い。たとえば今の駐日アメリカ大使のマ
ちゃったみたいね」
んですが、同時にCIAの大事な草刈場 「 ご め ん な さ い。 な ん か 話 が 横 道 に そ れ
にもなっていると聞きます」
イケル・アマコストは明らかにCIAだ
ろう。普通なら密かに身を潜めているも
んだ。ところが、それを隠すどころか八 「えっ、
ほんとなの、いやだわ。あたしね、 「 う ん、 ま あ 経 歴 は と も か く、 や つ が C
「 ミ ス タ ー・ ガ イ ア ツ で す か。 た し か に 「なんで、また」
る。ところが日本では事情が違うんだろ
しないだろう。外交活動がやりにくくな
IAだというのは間違いない。普通なら
彼は怪しいですね。いちおう国務省畑を 「ジャーナリズム論をちゃん と勉強した
う。やつは前任者のマンスフィールドよ
コロンビア大学に留学しようと思ってる
くって。日本ってあたしたちのようなフ
り遥かにのびのびと、裏工作に励んでい
面六臂の活躍だろう。しかもそれを咎め
歩んではいますが、国防次官補になった
リーランスのライターのステータスっ
る。これも篠山さんがいっているCIA
そこまで見えみえの人物を大使には起用
こともある。CIAなら両省を股にかけ
て、すごく低いじゃない。でも向こうで
効果のひとつなんじゃあないだろうか」
の」
ても不思議はないですからね」
はそうじゃない。むしろフリーランスの
る者もいない」
「磯崎はアマコストに詳しいのか」
18
圧を加えるわけですね」
ぐらいわけないんだぞ、という無言の威
の大使じゃないんだぞ、日本を揺さぶる
「 な る ほ ど、 C I A を 看 板 に し て、 た だ
はまだアメリカ大使館海軍武官補佐官の
言われ、ソ連軍の北海道上陸を想定した
浜川が外務政務次官だったとき、マイク 「 中 曽 根 政 権 の と き だ ね。 ソ 連 脅 威 論 が
てCIA長官の傘下にあった男だ。実際、 く取りざたされたことがある」
いがIC(情報コミュニティー)を通じ
軍事演習まで行われた。中曽根の日米運
よ、ソ連極東海軍の大増強がかまびすし
「そして実際、日本の要人と密かに会い、 身分だったが、浜川にいろいろアドバイ
意しないと日本は危ない」
うに見える活動に気をつけろ、これに注
んでしょう。国務省の役人と違わないよ
「篠山さんが言っていたのもそのことな
にかなった政策を導く」
外圧を加えて、結果的にアメリカの国益
とんでもない話だね」
ては裏切り行為。外国では考えられない
情報を提供するなんて、考えようによっ
パーセント枠突破の引き金になった。そ
「 危 な い 危 な い。 ア ド バ イ ス を 受 け る、 衛から、三海峡封鎖、果ては日本列島ハ
スをしている」
れがどうだ、ソ連が崩壊してみると何の
しているはずだしね。外国の諜報部員に 「 結 果 的 に は あ れ が、 日 本 の 防 衛 費 の 一
という以上、さまざまな内部情報を提供
ことはない。極東海軍は張子の虎だった
命共同体論が飛び出して、シーレーン防
「 そ れ と も う ひ と つ。 合 法 活 動 に 過 ぎ な
じゃないか。戦艦や空母はくず鉄どうぜ
「 う む、 確 か な こ と は い え な い が、 た と
「それはどういうことなんですかね」
に注意しないと日本は危ない」
ね。
で、
その人、何か問題でも起こしたの」 リカの諜報機関が、これを知らなかった
入れないかは日本人側の問題ですもの
「 そ お よ ね。 ア ド バ イ ス を 取 り い れ る か
「まあ、違法ではない」
分ける能力がある偵察衛星を持ったアメ
に実戦には使えない。ピンポン球でも見
んで、原潜にしても故障ばかり。まとも
リネズミ論までが打ち出された」
いと見える情報収集に気をつけろ、これ 「それって、合法なのかしら」
えばだ。この国にはCIAの回し者とし
院議員・浜川宅三郎がそうだ。彼の秘書
いる議員が少なくない。埼玉選出の衆議
日本でなにをしていたと思う。ソ連の海
ほうがいいね」
日本中をだまして歩いていた、と考えた
マ イ ク と い う 男、 海 軍 武 官 補 佐 官 時 代、 ずだ。しかし嘘を言っていた。おそらく
怖さでもあるんだよね。だけどね、その 「 そ う か、 マ イ ク は 絶 対 に 知 っ て い た は
と思うかい」
のマイク・マレインは海軍情報部だから
軍戦力の調査と分析さ。思い出してくれ
か思えない人物をわざわざ側近につけて 「それがはっきりしないのが 諜報活動の
ONI、直接CIAだというわけではな
19
物なんだ、というゆがんだ優越感と、C
ね。政治家も役人も、マスコミもやられ 「おれはCIAにマークされ るほどの大
掘チーム」を派遣したが、こんな思いつ
の努力を示すため、アメリカに「輸入発
慌てた通産省は七月、貿易不均衡是正
て日本を名指し。外圧の下準備を整えた。
たわけさ。その結果、アメリカと日本の
IAにパイプを持ってるんだぞ、という
き程度のアイデアに成果が期待できるは
けれどな」
軍事産業が潤った。日本の防衛族とその
無言の威圧感がうれしいんでしょうね」
「もちろんマイク一人じゃないだろうが
周辺に群がる軍事関連産業の関係者はC
圧力に耳を傾けるほかはなくなった。
ずもなく、アメリカ側の要望という名の
ことが自慢になる国はもう、国家の態を
IAを大いなる救世主、最強の同盟者と 「 だ が、 そ れ こ そ が 国 を 滅 ぼ す。 そ ん な
考えたことだろう」
これが八九年の九月四日から始まった
「 日 米 構 造 協 議 」 で あ る。 ア マ コ ス ト は
する外交官活動を大きく踏み越え、他省
協議実現のため、従来の外務省を窓口と
一九八九年五月、駐日アメリカ大使に
庁、与野党、財界など、あらゆる場に外
としたんだろうな」
「 マ ス コ ミ も や ら れ た の か、 残 念 だ ね。 なしていない。篠山さんはそれを言おう
きっとソ連脅威論をぶってまわった
デ ィ ー プ・ ス ロ ー ト が い る ん だ ろ う ね。
そいつらもCIAのエージェントなのか
着任したマイケル・ヘイドン・アマコス
と を C I A で は ヒ ュ ー マ ン・ イ ン テ リ
「 そ う い う 対 人 工 作、 対 人 諜 報 活 動 の こ
開。 日 本 に さ ま ざ ま な 要 求 を 突 き つ け、 基盤になっているという、それだけの理
グ」の世論を背景に、精力的な活動を展
トは、高まるアメリカの「日本バッシン
由で、国労、日教組解体のシナリオに続
もしれない」
ジェント、略してヒュ―ミントと呼んで
ミスター・ガイアツの異名をほしいまま
いて、生協の解体をスケジュールに載せ
交攻勢を仕掛けた。
いる。困ったことにこの国の要人のほと
にした。
なく、却って自慢げにしている。さすが
や政府の要人もそのことを恥じるんでは
る。そしてもっと困ったことに、政治家
と認定。着任後の五月二十五日にはスー
壁(非関税障壁)を半導体など三四項目
商 代 表 部( U S T R ) が 日 本 の 貿 易 障
着任直前の四月二十八日、アメリカ通
ようと狙っていたのである。
店舗法を改正し、大規模店の規制を強め
ゲ ッ ト に な る は ず だ っ た )。 大 規 模 小 売
ていた(成功すれば自治労、農協もター
そんな中、当時、民自党は野党の選挙
ん ど が、 こ の ヒ ュ ― ミ ン ト を う け て い
に恥ずかしいのか、ソ連の極東海軍のこ
パー301条に基づく不公正貿易国とし
ところがアメリカは、日本進出を狙っ
とに関しては頬かむりを決め込んでいる
20
二四日には民自党が多国籍軍に対する
アマコストは海部首相、中山外相と会う
かも、この一〇日の密会は、戦争勃発後
ていたトイザラスというおもちゃ屋一社
構造協議の中で規制の緩和をもぎ取っ
だけで、少なくとも三度目になる。
邸 に 野 党・ 公 正 党 の 石 田 委 員 長 を 招 き、
の た め に 大 規 模 小 売 店 舗 法 に 噛 み 付 き、 よりも先に大沢と接触したのである。し
た。そして、これを「日本の消費者の利
二八日正午、常宿にしている赤坂プリン
90億ドル追加支援の後押しを依頼。合
90億ドル 1
( 兆2000億円 の
) 追加
支援を決めた。
益」と称し、アメリカこそ「日本の健全
スホテルを出た大沢幹事長は首相公邸
意を取り付けている。ことはすべて、ア
アマコストはさらに二月八日、大使公
野党」と言ってはばからなかった。
で、海部首相との昼食会談に臨んだ。
大規模小売店舗法の改正が決まった二
資の増額(一〇年間で430兆円)を決
救援機も二機飛ばす」と言う首相に対し
に経済援助をドンとやる。現地への邦人
湾岸戦争シフトの裏で、大使はしっか
メリカの青写真どおりに進んだのであ
定。財政という内政の基本に、アメリカ
て、大沢は そ「んなことでアメリカは納
得しない。現行法でも自衛隊の中東派遣
ウンドでのコメ開放(関税化)問題に対
日後の六月二七日には海部首相が公共投 「 エ ジ プ ト、 ヨ ル ダ ン、 ト ル コ の 三 カ 国
政府の干渉を許した。
は可能だ。集団的自衛権とは違う 」と主
張。自衛隊派遣に難色を示す首相の翻意
し「貿易立国として責任ある回答を出す
に勃発した湾岸戦争で、決定的な意味を
事長の大沢八郎を密かに呼び寄せ、ブッ
大使館の裏手にある大使公邸に民自党幹
バグダッド空爆= 砂「漠の嵐作戦 」の翌
日)には海部首相が多国籍軍によるイラ
一九九一年一月一七日(多国籍軍による
ア マ コ ス ト 駐 日 ア メ リ カ 大 使 は 一 〇 日、 を 認 め る 国 際 平 和 協 力 法 が 成 立。 翌
一〇月一四日には自衛隊の後方支援
けた私企業の活動に、通産省が「日本市
来日。アメリカ政府、大使館の支援を受
官に率いられたアメリカの中堅企業一四
九一年の四月にはモスバーガー商務長
よう」要請することを忘れてはいない。
りと山本農水相に会い、ウルグアイ・ラ
事面だけのことではない。
青写真どおりに進んだのはこうした軍
る。
持ってくる。イラク軍がクエートに侵攻
を迫った。
こうしたことは、これに続く八月二日
し、九時間後に全土を制圧した事件であ
シュ大統領の「尋常ならざる覚悟」を伝
ク攻撃に「確たる支持」を表明(これが
る。
え た。 そ の 上 で、
「 中 東 に『 日 の 丸 』 が
ペルシャ湾への掃海艇派遣に結ばれる)。 場攻略法」を伝授するという、アメリカ
社のトップが、対日輸出拡大を目指して
立つような貢献」を要請したのである。
21
の記者さえ首をかしげる奇妙な関係が出
エト連邦の消滅が確定した。
が台湾との交流促進のために「海峡両岸
関係協会」を設立。冷戦の終結が東アジ
念パーティーが開かれ、その二次会の席
あとはアメリカとの貿易摩擦をいかに
丸の内のパレスホテルで新雑誌創刊記
「アメリカのハイテク企業はヨーロッパ
で篠山啓志と花井沢秀道とが言い争っ
収めるか。それに集中すればよいものと
現した。
で成功を収めている。日本でも立派に成
た、あの日からほぼ一ヶ月後のことであ
アにも及ぶと思われた。
功を収めるようがんばってほしい。われ
の挨拶に拍手する人々の中には、日本I
というモスバーガー長官の日本法人むけ
はそれぞれに重要で、関心も大きかった
見る激動下にあった。一つ一つの出来事
このパーティー以後も、日本はまれに
これによって一九九〇年九月、金丸・
惑である。
た。朝鮮民主主義人民共和国の核開発疑
された一つの情報がすべてを一変させ
思われた。ところがアメリカからもたら
BMや日本オラクルの社員らも交じって
のだが、それが次々にやってくる。その
田辺と金日成の「共同宣言」調印によっ
われもあらゆるサポートを惜しまない」 る。
いた。
めまぐるしさの中で、磯崎正太郎はその
て開かれた日朝国交正常化交渉は吹き飛
この二か月後の五月二七日には、埼玉
全体像を見通す力を失っていた。
批判されてきた「談合」に対して、公取
カの建設業界の日本参入を阻む壁として
委員会の立ち入り検査を受けた。アメリ
ことが象徴するように、冷戦は確実に終
の四分の一をロシアの援助に振り向けた
メリカが軍事費を40億ドル削減し、そ
湾岸戦争が終わって、ソ連が解体。ア
に、元熊本県知事を中心とする新党構想
そして、それにとって代わるかのよう
れた。
公正両党による新党結成の動きが封じら
び、民自党の武下派(旧田中派)と社文・
土曜会の四九社が、談合疑惑で公正取引
委が重い腰を上げたのである。
わりを告げ、新しい世紀がやってくるか
が浮上(九二年五月)。「東京佐川急便事
一 九 九 一 年 九 月 一 二 日、
「元シン
のように見えた。
9800億円)相当分の食糧援助を西側
経 済 特 別 委 員 長 が、 6 0 億 E C U( 約
書に調印して、統一への期待が高まった。 が分離の動きを見せ(同)、「平成刷新の
日、南北朝鮮がソウルで平和共存の合意
ソヴィエトの消滅が決まったとおなじ
すると、おなじ武下派から大沢グループ
件」の勃発で金丸真が失脚(九二年十月)
ク 」 の 想 定 ど お り、 ソ 連 の シ ラ ー エ フ
に要請。一二月一三日にはロシアが独立
そしてその三日後の一二月一六日、中国
会」などが結成される。
国家共同体への参加を表明して、ソヴィ
22
協議に対応するばかりではなく、日米安
これら、新党結成の動きは、日米構造
い舌鋒を失って、急速にテレビ人間化し
するようになり、以前のような切れ味鋭
を感じていた。
ことに、磯崎はどこか納得できないもの
は大きくブレークしたのであるが、その
化 し た。 コ メ の 自 給 そ の も の が 危 う く
うおの冷夏に見舞われ、コメ不足が深刻
昨年(一九九三年)の八月、日本はみぞ
そのいい例がこのワイドショーである。
ていったことぐらいだろう。
第2章「萌芽」
昼下がりのワイドショーである。料理
CIAの謀略
保条約への対応をも迫られることになっ
たのである。すなわち、ソ連の脅威に代
わ る 北 朝 鮮 の、 そ し て 中 国 の 脅 威 で あ
る。アマコストはこの国際環境のドラス
ティックな変化に対応し、アメリカの国
にこやかに笑顔を振りまく篠山啓志が
もコメは入れん」という、日本の食糧管
際 戦 略 に か な っ た 日 本 を 実 現 す る 力 を、 研 究 家 な ど と 称 す る 女 た ち に ま じ っ て、 なって、その年の暮れには「一粒たりと
新党に期待した。
最近、
めきめき売り出し始めた男である。 日本はタイやアメリカからの、コメの緊
映 っ て い た。 国 際 問 題 の 評 論 家 と し て、 理制度の大堤防に大穴が空いた。
会議の首班指名選挙でついに細川守弘が
甘い切り口で焦点をぼかす彼の独特のお
それは、日本にコメの自由化を求める
そして一九九三年八月六日、衆議院本
内閣総理大臣に指名され、非民自連立政
しゃべりには、評論家としての切れ味に
アメリカなど、食料輸出国にとっても天
ヨークへ出発した堀之内久子の壮行会を
あ え て 言 う な ら、 九 二 年 の 夏 に ニ ュ ー
はなかった。
に対しても、あまり強い関心を抱くこと
篠山個人に対しても、篠山グループ全体
IAは存在していなかった。そしてまた
パーティーから二年と三ヵ月、磯崎は篠
篠山が花井沢と激論を交わした雑誌創刊
くい声で、
わざとしゃべって見せていた。
ほおばったまま、ほごほごと聞き取りに
る。この日も彼は、茶碗を片手に、飯を
テレビに、雑誌に出ずっぱりの昨今であ
み需要が起こっていて、わずかな放出に
る。いま、その日本米にたいする駆け込
に店頭から日本米が姿を消すことにな
そ し て い よ い よ、 こ の 三 月 に は 実 際
言わせぬ力として迫ってきた。
輸入に反対する日本の農家にも、有無を
ミングのよい自然現象であって、コメの
大方には、
却ってそこが受けるのだろう。 の恵みだった。冷夏は、あまりにもタイ
急輸入を余儀なくされたのである。
権が発足することになった。
かけ、いらつく視聴者もなくはない。が
みんなでやったこと。そして九三年の夏
山に会うことはなかった。その間に篠山
この間、磯崎の意識の中にほとんどC
ごろから篠山啓志が盛んにテレビに出演
23
習慣とはまったく合いそうにないこのコ
をえない措置だったとはいえ、日本の食
磯崎自身、うまい物を食うには自分で作
だ」
いけれど、日本食の食材としては問題外
こうした混乱を避けるためには、やむ 「たしかにタイ料理の中のタ イ米はうま
磯 崎 は べ つ に、 米
「 は 一 粒 た り と も 」派
の人間ではない。タイや東南アジア風の
いを感じてしまうのだ。
かつての有名人や知識人の姿とおなじ臭
れ流し、人々を戦場に駆り立てていった
に、大本営発表の似非情報をそのまま垂
ぜ出ない。
メを、無理やり食べさせるために、日本
るに限る、を身上とし、実際によく台所
料理を食べたいと思うときがあり、そん
る人たちが何を言ったかをほとんど覚え
はさながら戒厳令下の報道統制にあるか
に立つ。もちろんそのためには買い物に
な 時、 タ イ 米 は ぜ ひ ほ し い 食 材 で あ る。
群がっては行列ができ、パニックさえ起
のような感を呈した。
も行く。食材を吟味する者にとって、こ
せっかくタイ米をいれるのなら、タイ料
磯崎はマスコミのこうした見えない強制
ディカ種(長粒米)の優れた面を強調し、 れは決定的なことである。タイ米は日本
マスコミはこぞって、タイ米であるイン
米と比較するようなものではなく、別な
理の知識や調味料も同時に入れてもらい
ている。
献立のアイデアを提供した。ジャポニカ
食材なのである。
こっている。
種(短粒米)に比べ粘り気のない欠陥を
たいのである。
本米と少しも違わないじゃな いですか」 だ か ら、「 う そ は い け な い。 人 々 を 目 く
補うための炊き方の工夫、もち米との配 「いやあ、これはおいしいですねえ」「日
合などの情報も提供した。
て、試食会なるものも開いて見せたので
だから、こうしたものいいに磯崎は強い
しねえ」
な や り 方 は 許 せ な い 」 と 思 う の で あ る。
紛れに食菅制度を変更しようなんて姑息
らまし、だまくらかして、そのドサクサ
ある。
不信感を抱いてしまう。なぜ、素直に「お
そしてまた、有名人や知識人を動員し 「 こ れ な ら タ イ マ イ を 食 べ ま す よ、 安 い
「いやあ、これはおいしいですねえ」
「日
「 こ れ な ら タ イ 米 を 食 べ ま す よ。 安 い し
を回しましょうよ」といった意見が、な
に 議 論 し て、
「おすし屋さんには日本米
しょうよ」とはいえないのか。オープン
いない」
怪しいのだ。確かな情報を与えられては
不足なのかどうか、どうもそれからして
本米と少しも違わないじゃないですか」 い し く は な い け れ ど も 我 慢 し て 食 べ ま 「 そ も そ も、 い ま、 ほ ん と う に 日 本 は 米
ねえ」 ・・・・・・
磯崎はこのとき、有名人や知識人と称す
24
に不足し、緊急輸入など許されない事態
と考える。食糧は将来、地球規模で大量
ばピンチだろうが、そういう長期的な事
磯崎は、昨夏のような冷夏が三年も続け
存在である。その彼が、うまくもない米
き、導いてくれた敬すべき先輩のような
増 産、 減 反 政 策 の 見 直 し で あ る べ き だ、 グ ル ー プ に ジ ャ ー ナ リ ズ ム の 本 旨 を 説
態に備えるなら緊急輸入ではなく、米の
を、さもうまそうに食って見せているの
いや、むしろ、駆け出しの磯崎ら取材
るような人物ではなかったはずである。
ナリストで、姑息な大本営発表に協力す
かもしれない。
た先輩をそれなりに祝福すべき立場なの
いはない。むしろ、新しい可能性を開い
見せたとして、それをとやかく言う筋合
だから篠山が、見事な電波芸者を演じて
ろん知らないわけではない。
はない。ショーの大切さを、磯崎ももち
るわけではない。
の篠山を見て悲しいと思う気持ちが消え
になるのは目に見えている。
磯崎には、ひょうきんな演出で、わざ
が、そうだとしても、磯崎がワイドショー
のを感じるのは、彼が姑息な情報操作の
と人目を引くそぶりをして見せても、篠
である。
片棒を担いでいるから、というだけのこ
山が決してタイ米をうまいと思っていな
もっとも、磯崎が篠山に納得できないも
とではない。
その男をリーダーとして評価し、信頼を
識 を 持 っ た 男 で あ っ た こ と。 磯 崎 自 身、
藤を単純化し、短い時間のうちに分かり
はある種、虚像の世界である。内面の葛
われら、文字書きにとって、TV電波
仕事先にはほとんど知られていない私用
が鳴り出した。
ドでうつらうつらしていたとき携帯電話
どしたある日の日曜日、磯崎がまだベッ
たくさんの日本人がジャポニカ種では
寄せていたこと。最近の篠山の言動はこ
やすく晒して見せる。つまりは瞬間芸の
の携帯である。篠崎は自宅近くに仕事場
いことは手にとるようにわかる。それは
の二点を裏切るものだと思えるからであ
ショーである。
を持っていて、原稿の締め切りが近づく
問題は篠山啓志が食糧問題の取材チー
る。
それを得意とする者も、文字書きはある
なくインディカ種を口にしてから半年ほ
篠 山 は 磯 崎 ら 取 材 グ ル ー プ・ シ ン ク の
んなとき、家族との連絡に使われる。執
また、とても悲しい光景でもあった。
リ ー ダ ー で、 週 刊 誌 や 雑 誌 記 事 の ア ン
種のテレから自らを 電
「波芸者 」などと
言ったりする。が、それはそれ。表現形
筆時には仕事場の加入電話を留守電にし
ムのリーダーとして、しっかりとした見
カーをやっていた。彼はいっぱしの反骨
態は違うが報道の手法であることに違い
と泊り込んで執筆に打ち込む。携帯はそ
精神を持ち合わせた古いタイプのジャー
25
た。
ふうにぼんやりと考えながら電話に出
電話かなにかだろう」と、磯崎はそんな
話 が 入 る こ と は ま ず な い の だ。
「間違い
電の転送機能も解除してある。携帯に電
が、この日は日曜で、自宅にいる。留守
話になる。
場を留守電にしたときは、携帯が転送電
てしまうことが多いからだ。また、仕事
の あ の 沈 ん だ 声 は た だ 事 で は な い。「 な
しかし、多少の懸念材料もある。堀田
にはなぜか懐かしく、気分が浮き立つ。
えないか」というだけの電話でも、磯崎
続いてきた。だから、ただ「どこかで会
てきたことから、いくらか疎遠な状態が
がやや異なってきて、互いに忙しくなっ
である。が、ここ数年、仕事のジャンル
判の茶封筒をテーブルに滑らせた。これ
磯崎が対面に座ると、堀田は黙って大
仕種である。
た。いかにも思わせぶりな、秘密めいた
とすぐに背中を丸め、小さく手招きをし
横柄な雰囲気であったが、磯崎を認める
せるように座っていた。その姿はどこか
奥のテーブルに陣取り、背中を壁にもた
すると先方は、やたらとくぐもった声
に か あ っ た の か 」 と 訊 ね て も、 会 っ て またいかにも思わせぶりな仕種だが、こ
「
ちらのほうは彼らのいつものやり方で
から話す と
」 応えるのみなのだ。
そういえば、携帯に電話してきたことも 「 ぐ ち ゃ ぐ ち ゃ い う 前 に ま ず、 資 料 に 目
篠山啓志の取材グループの一員だった堀
ろうな 。
」 つ ぶ れ た 声 で は あ る が、 声 の
主が誰であるかはすぐにわかった。
を要する連絡ならともかく、ただ会うた
帯ではなく、普通の加入電話だった。急
る。そんな時、連絡を取り合ったのは携
年 間 に 限 っ て も 年 に 二、三 回 は 会 っ て い
た。雑誌類のコピーであることは手にと
さま何も聞かずに中の資料を抜き出し
磯崎もそれは心得たものだから、すぐ
引があるわけでもなんでもない。
領よく事を運ぶための知恵で、秘密の取
を通せ」ということを意味している。要
田豊である。彼に携帯電話の番号を教え
めの連絡に、わざわざ使い慣れていない
る前からわかっていたが、出てきた資料
謎である。いくら疎遠とはいえ、この二
たとすれば、携帯を手に入れた直後のは
携帯の番号を探すというのもおかしな話
で こ う い う の だ。 お
「 い、 大 丈 夫 か。 お
まえ一人か。誰かに聞かれてはいないだ
ずで、それはもう二年もまえのことであ
の一枚目から、いきなりあの男のクロー
ズアップ写真のコピーが目に飛び込んで
だ。
が、磯崎のこの疑問はすぐに解けた。
きた。国際問題評論家・篠山啓志である。
く、客はまばらだった。堀田はその一番 「 篠 山 じ ゃ あ な い か。 い っ た い ど う い う
指定された代々木の喫茶店は昼でも薄暗
る。以来、堀田から携帯でのコールを受
けた覚えはない。
か つ て、 磯 崎 と 堀 田 は 毎 日 の よ う に
会っては飲み、飲んでは話した仕事仲間
26
てくれ」
「 ま あ 待 て、 と も か く も う 少 し 中 身 を 見
きなりそんな質問をしてしまった。
らの暗黙の約束事を無視して、磯崎はい
まずは資料に目を通してから、という彼
ことなんだ」
ところが、このコピーを見る限り、篠山
ば、興味が薄れたといっていい。
り、たまに目にしたときの違和感を除け
それだけ薄くなったといっていい。つま
りを旨とする男である。磯崎との接点は
てしまった人間であり、甘口の解説ばか
いわゆる、テレビメディアのほうに行っ
日本は主要先進国の中でも桁外れに低い
安全に寄与する、というものだ。
始めた説で、自給率を高めることが国の
割を切った一九七三年ころから主張され
食糧安保論とは日本の食料自給率が七
立化へと導く危険な発想である」
糧安保論は、両国の絆を弱め、日本を孤
岐路に立つ日米外交、クリントンの対日
『月刊交流』九四年一月号別冊、―特集・
協定)成立と日本の進路
二一日号、―NAFTA(北米自由貿易
『週刊ヴィジョン』一九九三年一二月
字を追う。と、そのとき、とある月刊誌
磯崎はいっそう目を皿のようにして、活
以前とは明らかに論旨が違うのである。
姿勢 思
・ 想信条に基づく、筆鋒鋭い論調
を展開している。それも、見方によって
く る 前 の、 壁 に も た れ た 姿 勢 に 戻 っ て、 は ま た 最 近 の 二、三 カ 月、 確 固 た る 政 治
給率を高めるための真剣な論議が戦わさ
サスとなり、一九八〇年には国会でも自
この主張は一時、党派を超えたコンセン
るといってもいい。だが、違うのである。 ることはそもそも不可能である、という
は以前にも増して、自信に満ち溢れてい
れ、「 食 糧 自 給 力 強 化 の 国 会 決 議 」 ま で
をそのままにしておいて、国の安全を語
部分を輸入に頼っている。この依存状態
食糧自給率しか持たず、コメを除けば小
堀田はそういうと、再び磯崎がやって
政策
の リ ー ド 文 が 目 に と ま っ た。「 ア メ リ カ
採択されたことがある。
食糧の完全自給は国の自衛措置である
麦、大豆などの主要穀物でさえ、その大
『 月 刊 ニ ュ ー エ イ ジ 』 九 四 年 二 月 号、 ―
はほんとうに日本を救うのか」と題する
タバコをくゆらせ始めた。
政治改革から政界再編へ、そのポイント
見出しを確認しながら、磯崎は堀田が入 『月刊未来』の防衛問題に関 する記事で
し て い く。 篠 山 が 最 近 の 出 版 物 で 何 を 「 日 米 の 絆 は、 両 国 の 自 由 貿 易 を 通 じ た
進国が採りうる国際的な責務である、と
模での食糧不足に際して、豊かな工業先
ばかりではなく、将来予想される地球規
相互依存関係に基礎を置くことではじめ
もいわれた。
ある。そのリードにはこうあった。
言っているのか。思えばあまり考えたこ
て堅固になる。わが国の食糧自給論、食
れたマーキング部分を大急ぎで拾い読み
ともなかった。
27
を中心に、しばらくこのテーマと取り組
磯崎も堀田も、かつて、この篠山啓志
穀物を輸入しつづけることは、国際的な
能力があるにもかかわらず金に飽かして
世界が餓えている時代、自国で生産する
ると、この政策とは逆行する食糧安保論
メの減反政策が推し進められることにな
制度の逆ざや)を解消する必要から、コ
暮らしを追い詰める 買
「占め を
」 意味す れ の 進 行 が 生 み だ し た コ メ の だ ぶ つ き
る。 こ の 状 態 を 放 置 し て お け ば、 将 来、 と、それが生み出す国民の税負担(食管
穀物相場を引き上げ、貧しい国の人々の
の勢いは影を潜めていくことになる。
に影を薄くしていく。とりわけ、コメ離
トの自給が到底おぼつかない中で、次第
食糧安保論はその後、100パーセン
の考察をはじめた磯崎正太郎、である。
はなかった。あのとき、外国産米をたべ
異論をさしはさむことが許される雰囲気
い。しかしあの時、あのキャンペーンに
強権を揮って報道統制をした形跡はな
だって、おいしいではないか 」という大
キャンペーンである。もちろん、政府が
て の 報 道 統 制 で あ る。 外
「 国産のおコメ
そして、その行き着くところが国を挙げ
ることは日本人の国民的な責務だったの
して、排除されることになる。
と、食糧安保論もまた、障害になる説と
んだものである。さまざまな雑誌に求め
である。
日本は国際非難の標的になるだろう。
られてさまざまな観点から、自給率を高
ましてや、ガット ウ
・ ルグアイラウンド
がスタートし、農産物を含むすべての生
める必要性を説いたのである。また、こ
の キ ャ ン ペ ー ン を 足 が か り に、
「取材プ
ロ・シンク」のメンバーにもある種の専
産物の自由な国際取引をめざして 例
「外 有名人、知識人なるものがテレビのブラ
な き 関 税 化 の 方 針 が 打 ち 出 さ れ る と、 ウン管の中で臭い芝居をし、かの男が見
」
え見えのうそをつく。巷には不満の声が
と進んでいった堀田豊、農の問題をエコ
食糧の自給から国際エネルギー問題へ
であるウルグアイラウンドを日本の手で
易に関する一般協定を検討するテーブル
日本が貿易立国を目指す限り、国連の貿
ムーズに進んでいく。先の対戦中の報道
で は 不 満 を 口 に し な い か ら、 こ と は ス
人々はそれなりに場をわきまえ、公の場
あ ふ れ、 あ
「 んな芝居にはだまされない
ぞ 」といいながらも、結果的には 、大き
な流れに飲み込まれていく。
門分野が成り立ち、それぞれが自立して
多 恵 子、 日 本 の 戦 後 史 を 研 究 す る た め、 不調に終わらせることはできない。コメ
ロジカルに捉えていくことになった黒沼
の輸入自由化で、何らかの妥協をせざる
統制、戒厳令といえども多くの人にとっ
一
「 粒たりとも 」という日本 の食糧管理
制度が最大の障害物になっていく。
ライターを辞めた佐久間剛。そして、総
を得ないところに追い詰められてしまう
いく契機にもなった。
合商社の問題から、日本型経営システム
28
糧安保論の否定という彼の政治姿勢、思
かった。そうではなく、食糧の自給、食
の報道キャンペーンに乗ったものではな
という、あのときに必要とされた一過性
な芝居は、単に外国産米を食べましょう
それはともかく、篠山啓志のあの不器用
かに揮われる。
か。直接的な強権は見えないところで密
てはこのようなものだったのではないの
再確認する。しかし、それは読み違いで
な
「んだって、そんなばかな 」
磯崎は一瞬、目を疑って、前後の文脈を
る。
たキーワードに目が止まる。釘付けにな
て視線が滑っていく。そして、強調され
堀田がつけたマーカーの黄色い線に沿っ
れた、と、磯崎は確信している。もちろ
ひとつであった。エジプトのこの転換が
エジプト・ムバラク政権のイスラエルに
用しており、中東政策の大転換となった
いて、食糧援助という名の食糧戦略を多
それどころか、アメリカは国際政治にお
磯崎はリードに続き、本文の活字を追う。 これには具体的な裏づけが何もない。
んそこには篠山も含まれていた。
な け れ ば 湾 岸 戦 争 は ア メ リ カ に と っ て、
また、アメリカは国内向けには常にコン
より困難なものであったはずである。
対する穏健政策への転換も、その成果の
て利用することはない 」というコメント
を 強 調 す る よ う に な っ て い る。 し か し、
想性に基づいた行動だったのである。
本文は明らかにこう主張していた。
と す れ ば、 こ れ は 彼 の 変 節 を 意 味 し た。 はなかった。
篠崎たちは彼をリーダーとしてチームを
たアプローチの仕事をするようになって
の専門分野に分かれ、
違った媒体で、
違っ
メンバーはその後、少しずつ、それぞれ
である。
はどんな迷いも異論もなかったはずなの
食糧安保の必要性について、チーム内に
上を目指して仕事をしてきた。その間に
確かにアメリカは、日本のコメ市場を開
いれば安全だ」という主張である。
確保に当たっても、アメリカに依存して
つ ま り、
「 ア メ リ カ を 信 用 し ろ。 食 糧 の
ならない」
直ちにわが国の安全性を脅かすことには
食糧自給率が低いからといって、それが
ほんの数例でもこうしたことを列記して
ある。
しょうゆ業界は大パニックに陥ったので
輸政策さえ実施した。日本の豆腐、味噌、
しては、日本の困惑をよそに、大豆の禁
そしてまた、一九七三年の大干ばつに際
補助金を出しているほどなのである。
維持するため、主要な農産物の生産には
は な い、 と 言 明 し て い る。 し た が っ て、 資だと位置づけて、過剰なまでの生産を
ピュータ技術と並び食糧が重要な戦略物
いるが、このとき手に入れた基本認識に
放するため、近年 食「糧を戦略物資とし
組んで、長い間、日本の食糧の自給率向 「アメリカは食糧を戦略に利 用すること
ついてはその後も揺らぐことなく維持さ
29
メリカは食糧を戦略に利用することはな 「 確 か に わ た し た ち は、 や つ の 単 な る 手
しているのだ。それにもかかわらず「ア
めた。だから、そのすべてを篠山は熟知
量の資料と、反論の余地のない事実を集
磯崎らの取材チームはこの点に関する大
る。
流通商品でないことは明らかなのであ
みれば、食糧は戦略物資であって、一般
大きすぎる。
人の内面の作用として生まれたにしては
ことも珍しくはない。だが、この変節は
意識せずとも、傍からは変節と見られる
がある。それが重なっていけば、本人が
思い違いを修正しなければならないこと
必要とする、危険な側面を持つ機関であ
しすることの難しい、密かなやり取りを
だ。しかも、その外部機関は公然と名指
外部機関の代弁をするようになったの
くつかの想定ができた。篠山は何らかの
こうした材料から考えると、磯崎にもい
定してきたのか。
人の思考回路はあいまいだし、時として、 代々木の、それもこんなに寂れた店を指
かった。「CIA、ということか」と言っ
足 に 過 ぎ な か っ た の か も し れ な い。 が、 るに違いない。すくなくとも堀田はそう
ない」
てみることもできた。しかし、そういっ
い」
といい切っている。
これは驚きであっ
磯崎はいわゆる良心の働きというものを
てしまうことによる、その後の問題の大
結論したのだ。
素朴に信じていた。だから、外部からの
きさを計ることができなかった。
チームには一体感があった。そのすべて
何 ら か の 働 き か け が あ っ て、 変 節 が 起
そしてまた、問題を言い当ててしまうこ
た。
ど残っていたが、磯崎はそれらに目を通
こったとしか考えられないのである。
だから磯崎は、このとき「変節漢、とい
すことも忘れて声を上げた。
そしてまた堀田の奇妙な電話である。こ
とで、堀田から な
「ぜそう思う と
」 問わ
れた時、それを説明する合理的な根拠を
を裏切るなんてことは、個人の内面の作
そ「うだろう 」
堀田も、もうその先に目を通せと促すこ
の久々の再会の秘密めいたセッティング
何も持ち合わせていなかった。だから磯
「これはひどい」
とはなかった。
である。わざわざなぜ携帯に電話してき
崎はむしろ、その根拠を堀田から引き出
うことか」という言い方をする必要もな
変「節漢、ということか 」
ややあってから、沈黙を破ったのは磯崎
た の か。 わ ざ わ ざ な ぜ、 以 前 な ら 恒 例
用だけではとても背負いきれるもんじゃ
である。この間に磯崎はもっと先まで思
で あ っ た 新 宿 や 渋 谷 の 喫 茶 店 で は な く、 す必要があった。
堀田が持参したコピー資料はまだ半分ほ
考をめぐらせていた。
30
常々そう思っている。武骨といってもい
堀田は信用のおけるやつである、磯崎は
に磯崎の予想を越えていた。
待っていた。ところが、次の言葉は完全
かったデータ・ファイルの山の数々を記
され、チームの力量不足で利用し切れな
て生きるものには最大級の評価を惜しま
ても、揺るがぬ思想を持ち、それを貫い
手がどのような思想信条の持ち主であっ
は時として思想信条を超える。たとえ相
なった。
のか。磯崎にはその先の展開が読めなく
いったい、堀田は何をいおうとしている
タを意図的に無視するところがあった」
しかし、
当時からあいつは、俺たちのデー
本を代表するほとんどの総合商社を直接
取材チームは、複数の、というより、日
題がくっきりと捉えられていた。
層的な食糧安保論ではカバーできない問
そこには、地を這う取材ならではの、表
いほど変節を嫌う。この、直線的な思考 「 確 か に あ い つ は 変 節 漢 か も し れ な い。 憶に呼び覚ました。
ない。
た。というよりも、最初はほんの偶然か
その堀田に、今、磯崎は瀬踏みされてい 「 あ の こ ろ、 俺 た ち は 純 粋 無 垢 だ っ た。 取材し、ほとんどおなじ反応を手に入れ
る の か も し れ な い。
「堀田はわたしの態
ら、四菱物産の穀物担当部長がオフレコ
磯崎は逃げを打った。核心を射抜いてし
る よ う な 人 格 で あ っ た あ の 男 の 周 り に、 それをかいつまんで言えばこうである。
その通りである。だから、それを体現す
ライターとしての基本、ジャーナリスト
度 を 計 っ て い る 」 そ れ に 気 づ い た と き、 としての使命に燃えていた」
まう前に、こちらから様子を見よう。そ
磯崎らは集まり、チームを結成した。そ 「日本に はアメリカのような 諜報機関が
で漏らした話である。
の様子見の姿勢が 変「節漢 と
」 いう言葉
く違う。日本は日本の総合商社の安全に
ない。総合商社は国を挙げての利益追求
して、思想信条には頼らない 地「を這う
につながった。
変「節漢か・・・・・・、そうなんだよ 」 取材 を
」 通して真実を明らかにして行く
堀田はこの二つの言葉の間に、やたらと という、目標を掲げた。
ほとんど貢献してくれていない。
オーバーヒートにも近い高速回転を要求
て、国の基本方針を決めているといって
も ち ろ ん、 そ う い わ れ て 忘
「 れ ま し た 」 てくれないのはもちろんだが、私たちが
と言い切れる磯崎ではない。磯崎の頭は 集 め た さ さ や か な 情 報 を 必 死 に 聴 取 し
実に直面させられた。覚えているだろう」 私たちの活動に必要な情報を何も提供し
機関のように言われるが、実体はまった
タ バ コ を 空 ぶ か し し た。 や は り 磯 崎 を 「 そ の 結 果、 わ れ わ れ は 思 い も し な い 事
計っているようである。
で
「 も、 そ ん な 言 葉 で 済 ま す わ け に は い
かない 」
そ の 通 り だ。 磯 崎 も 堀 田 の こ の 言 葉 を
31
ルの関係で、日本の商社が政府と一体化 「そのライバルであるアメリカの業者は、
崎はそんなふうに余裕を持って聞いてい
ふむふむ、さもありなん。そのとき磯
いうことさ、おわかりかな」
現地の軍や諜報機関と密接に連携し、危
た。そんな磯崎を吹き飛ばすような発言。
る苛立ちのようにも感じられた。
した利益追求団体だなどといわれるのは
険が迫るとすばやく撤退した。われわれ
これを爆弾発言というのだろう。
もよいほどのていたらくだ。こんなレベ
笑止千番である」
はといえば、彼らの動向を見て撤退を決
わ
「 れわれ商社マンはベトナムでもカン
ボジアでもそうだったが、世界のあらゆ
流れはアメリカ政府→アメリカ業者→わ
それからのことである。つまり、情報の
なのだ。だから破壊はできない。しかし、
いのはわれわれの経済力であり、技術力
破壊するようなことはない。ソ連がほし
さらに続けると、
る紛争地で仕事をしている。危険と背中
れわれ→日本政府、ということになる」
そうなればアメリカはあらゆる口実を見
める。日本大使館が危険情報を流すのは 「 ソ 連 は た と え 侵 略 し て き て も、 日 本 を
合わせの任務を遂行しているといっても
今にして思えば、この話はなかなか興
味深く、深く追求せずに放置してしまっ
つけて日本を徹底的に破壊する。
いい。
危険だからといって、寄りつかないわけ
そがアメリカにとっての最大の敵なの
よろしいかな、日本の経済力、技術力こ
合商社の肩はもてないという社会的な雰
だ。だからそいつがソ連に流れることを
たことがひどく悔やまれる。やはり、総
ライバルがいるからだ。最大のライバル
囲気のようなものがあったからなのかも
にはいかない。なぜなら、そこには必ず
はほかでもない、アメリカの業者である
しれない。
許さない 」
予想だにしなかった発言に、戸惑いを
いており、ダグラス グ
・ ラマン事件の余
韻もまだ覚めやらぬころだった。相次ぐ
後に続く話である。
この重役が オ
「フレコで・・・ 」とい
うのは実はこの部分ではなく、これから
た。部長の口調の中には、先刻まで覗い
いるような風もうかがえる部長であっ
隠せない磯崎を眺めて、どこか楽しんで
」
当時、ロッキード事件の裁判はなお続
不正で、日本独特の存在であった総合商 「 日 本 の ラ イ バ ル は ア メ リ カ だ が、 ア メ
社は、国の内外からの厳しい批判にさら
われはソ連を恐れてはいない。ほんとう 「 部 長 が お っ し ゃ る 破 壊 と い う の は、 物
リカのライバルもまた日本なのだ。われ
ていた苛立ちが消えている。
されていたのである。この、四菱物産の
に怖いのはソ連ではなく、アメリカだと
理的な破壊をさすのでしょうか。つまり
重役のコメントは、そうした批判に対す
32
れる、ということを前提に、おっしゃら
「それは日本がソ連の支配下に組み込ま
スを作り出す、ということだ」
軍事的な・・・・・・ 」
「 う む、 そ の 通 り。 そ れ が 可 能 な チ ャ ン
そういいたかったのに違いない。だが磯
て、考えてみることも不可能ではない。
メリカによる日本経済叩きの一環とし
はあるものの、取材したすべての商社が
社が最初のターゲットになっている、と、 そしてその結果は、会社によって温度差
部長はおそらく、あの時、日本の総合商
アメリカこそが最大の敵だという認識で
ことになった。
長の話の裏づけを取ってみよう、という
それでも、機会がある限り、穀物担当部
まり、物理的な破壊はできないが、そう
甘い。本気で手を打たなければ日本は負
はいよいよ経済戦争状態に突入した。つ 「 う む、 気 づ い て は い る。 だ が、 認 識 は
ておいてもいいだろう。日本とアメリカ
ける」
アメリカの食糧戦略に関するレポート
戒 感 が 盛 り 込 ま れ て い た。 そ し て ま た、
トには何らかの形でアメリカに対する警
だから、われわれ、取材チームのレポー
ある。
共通する危機感を抱いていた。すなわち、
崎は話を変えてしまった。
れているわけですね 」
「 そ う い う こ と だ。 だ が こ の こ と は 覚 え 「そのことに日本政府は気づ いているの
でない破壊はありうるということだ」
当時はまだ、日本がアメリカに追いつい
は、太平洋戦争直後の占領期にまでさか
ですか」
「日本の経済を物理的な手段に訴えずに
たという認識もなかったころである。だ
たとえば日本人の食生活の大変革を狙っ
叩く、ということなら、ソ連の支配下に
撃的ではあったが、どこか遠い世界のこ
た、ララの小麦粉援助と、学校へのパン
のぼって集められた。
ということですね」
とのようで、現実感を持って迫ってくる
組 み 込 ま れ て い る か ど う か は 関 係 な い、 から、日本が負ける、という言葉も、衝
「 そ の 通 り。 ア メ リ カ は そ の チ ャ ン ス を
だが、これらのデータはついに篠山のレ
食給食の導入。これが結局日本の食糧(小
の時間が必要だった。
ポートで使われることはなかった。しか
ものではなかった。マスコミが日米経済
磯崎はそう聞こうとして、躊躇った。な
磯崎はこの話を取材チームのみんなに伝
狙っている」
ぜ躊躇ったのか、磯崎はもう覚えていな
えた。
誰もが興味を持つ話ではあったが、 し、磯崎自身はこれらのデータを利用し
麦)のアメリカ依存を決定づけた。
いのだが、いま思い返せばあのロッキー
や は り 現 実 感 や 緊 迫 感 に は 欠 け て い た。 たレポートも書いているので、彼には今
「それはもう始まっているのですか」と、 戦争に言及するようになるにはなお数年
ド事件も、ダグラス グ
・ ラマン事件もア
33
意図的に無視された」という印象はな
日の今日まで、堀田のように「データが
が、もしそれが事実だとすれば、篠山の
た。 待 っ て い た 言 葉 だ と い っ て も い い。 エージェントが暗躍している。政府や企
磯崎が予想したとおりの言葉が出てき
業のエージェント、少数集団のエージェ
は C I A に 限 ら ず、 さ ま ざ ま な 組 織 の
かったのである。
ジェント・・・・・・。
「アメリカが好き、だって 」
磯 崎 は そ う 聞 き 返 し た。
「そんな言葉で
が好きだった」
「 そ う だ、 そ れ だ よ。 あ い つ は ア メ リ カ
そう聞いた。
スコミ関係者の中にも存在する。中には
CIAのエージェントと思しき人物はマ
る。
り磯崎が絶対に認めたくない事実でもあ
場は根底からくつがえってしまう。つま
益に沿って記事はゆがむ。
公器たる新聞でさえ、その社の主張や利
しいことなのである。
トであり続けることは、実はきわめて難
報道の使命を貫徹する真のジャーナリス
そ う し た 自 己 利 益 へ の 誘 導 と は 無 縁 な、
ン ト、 相 場 や 美 術 品 の 価 格 を 操 る エ ー
指示に従ってジャーナリストの基礎を築
「日米戦争のことか 」
磯 崎 は 堀 田 の 顔 を 覗 き 込 む よ う に し て、 いてきたといっても過言ではない彼の立
は済まされない」
と言った堀田が、「好き」 米軍機の提供を受け、基地から基地へと
ろ い 変 節 漢 な ど、 エ ー ジ ェ ン ト と し て
「ああ、だめだ。CIAなら、あまっちょ
「変節漢ではだめか」
メリカを非難したことがない」
「 あ あ、 そ う な ん だ。 あ い つ は 一 度 も ア
いうのか、と思ったからだ。
ませてしまうなんて、なんということを
い。
戦 に 動 員 さ れ る 程 度 の 役 割 し か 持 た な 「 取 材 費 の 水 増 し 請 求 な ど、 ケ チ な ま ね
れる。公然派はむしろ死に体で、陽動作
たエージェント本来の仕事は密かに行わ
作し、国の政策に影響を与える。こうし
が、少しずつ、見えないように世論を操
りで、多くは隠れCIAだという。彼ら
もちろん、こうした公然派はほんの一握
は す る な 「」 飲 食 は い い。 だ が、 土 産 は
寿 司 折 以 上 の も の を 受 け 取 る な 」「 ど ん
の男、篠山啓志なのであった。
その彼らを導いたのがほかでもない、あ
想 の ジ ャ ー ナ リ ス ト を 志 し た。 そ し て、
としての使命に燃えていた 」という堀田
も、磯崎も、そうした現実を拒否して理
ライターとしての基本、ジャーナリスト
「あのころ、おれたちは純粋無垢だった。
使ったりしない」
そうした基本的なことは磯崎も知ってい
なに苦しくとも、ペンだけで稼げ。ほか
移動する者さえあると聞く。
「 な に、 C I A だ っ て、 そ れ は ど う い う
る。ジャーナリストと称するものの中に
などという主観以外に何もない言葉で済
ことだ」
34
をえない。そう覚悟した磯崎は、これら
いなら売れないライターであってもやむ
どこかにおもねり、筆先を曲げるぐら
これもまた、かの男の戒めであった。
らない」
ら導かれた、確度Aの情報でなければな
物事を断定するときは、三つのルートか
納まっている」
議会(NIC)の東アジア担当分析官に
はいま、CIAの付属機関・国家情報評
「少なくともわれわれジャー ナリストが 「 お ま え は 知 ら な い か も し れ な い が、 彼
の戒めを完璧に守ってきた。戒めは取材
われわれは、
その「裏」を取るために「地 「そう、そのまさか、さ」
のものに頼るな」
・・・・・・。
や執筆活動、人間づきあいにも及んでお
を這う取材」を必要とするのであった。 「 誉 め 殺 し か。 あ の 本 で、 日 本 は 自 信 を
「まさか」
り、それをクリアーすることは至難なこ
だから、彼らにとって、CIAという言
堀田は、
よれたスーツの裏ポケットから、 「 そ う い う こ と さ。 や ら れ た ん だ よ。 日
くれ」
本はいい気になってバブルに走り、アメ
持った。調子に乗った。アメリカを超え
葉が持つ意味はあまりにも大きい。ほん
別な封筒を取り出し、中の一枚を磯崎に
リカを買おうとまでした。それをアメリ
「 ま あ、 い い。 と も か く こ の 写 真 を 見 て
とうに、あの男がCIAのエージェント
示した。
カ人が誉めると思うかね。そんなことは
とであったにもかかわらず、である。
なのか。そして、それはいったいいつか
なにやら、パーティー会場のようなとこ
ありえない。誉め殺そうとしている、と、
たと思った」
らなのか。
ろで、あの男が欧米人らしき男と、グラ
「 だ け ど な、 そ ん な も の、 俺 も 持 ち あ わ
「・・・・・・」
磯崎は首を振った。見当もつかない。
わかるかな」
山だ。そしてこの、隣にいる男、誰だか
か」
誰よりも早くつかんでいた、ということ
か。われわれはあの時、そのきっかけを
そう見破らなくてはいけなかった 」
「おまえは俺が言った言葉の根拠を聞き スを合わせている姿が映っている。
「 い う ま で も な く、 こ い つ が わ れ ら の 篠 「 そ れ が で き た の は、 わ れ わ れ だ っ た の
たいのだろう」
せちゃあいない。少なくとも、俺たちが
「エズラ ボ
根拠という意味では、のことだがな」
・ ーゲルさ。『ジャパン ア
・ ズ 「 そ の 通 り だ。 俺 た ち は、 な に か を 遣 り
堀田は慎重だった。いや、
原則的だった、
ナンバーワン』を書いた、あの男だよ」 残した」
・
堀田はそういうと、裏ポケットの封筒か
「・・・・・・」
といったほうがいい。
35
「 も ち ろ ん 空 振 り か も 知 れ な い。 だ か ら
て 貴 重 な 情 報 が C I A に 流 れ て し ま い、
である。
らもう一枚の写真を取り出した。
つまり、われわれ日本人にとって、CI
日本の、あるいは自分が関係している企
Aに友人がいるということだけでも秘匿
おまえしか誘えない。そうだろう」
すべき事実なのである。なにかの確証を
「 こ れ は、 あ る 写 真 週 刊 誌 が ス ク ー プ し
ぬ振りができるほど姑息ではいない。世
た連立政権の中心党・進取党特別顧問の 「 わ た し は こ ん な 事 態 に 直 面 し て、 知 ら
こっちが長期政権の民自党を追い落とし
間ズレもしていない。そしてまた、わた
業や団体の損失になるかもしれないから
大沢八郎、そして隣がエズラ ボ
・ ーゲル
た 一 枚 だ。 も う 説 明 の 必 要 は あ る ま い。 確かに堀田の言うとおりだ。
だ」
握り、それを手がかりに取材をするので
磯崎は考える。
「なに、あの進取党がCIAと・・・・・・」 しもたったこれだけの根拠をもとに、こ
ない限り、裏を取ることの困難なテーマ
損 得 を 超 え て、 個 人 的 興 味 や 社 会 的 意
の件で誰かを誘うとしたら堀田ぐらいし
ある。その国にとっては国を守る英雄で
義のあるテーマには喜んで喰らいつく
「 取 り 乱 す な。 こ ん な も の、 ま だ 何 の 根
だが、おまえはこの状況を放っておける
あ っ て も、 工 作 の 対 象 と な る 相 手 国 に
ジャーナリスト精神が殊のほか、旺盛な
であるのは火を見るよりも明らかなこと
か。おけないだろう」
とってはそうはいかない。危険であるば
のだ。そのことを互いによく知り尽くし
か考えつかない」
「・・・・・・」
かりではなく、その姿が見えないだけに
ている。
拠にもならないだろう。あの本の著者と
「 だ か ら 電 話 し た。 篠 山 と C I A、 大 沢
厄介な警戒を要する存在であるのだ。
しかも磯崎たちの場合、彼らの過去のグ
なのだ。
八郎とCIA、このつながりの裏になに
したがって、CIAは高度なテクニック
ループワークが、彼らの思いとは異なっ
CIAとはいうまでもなく、非合法の工
があるのか、それを追ってみる必要があ
を用いて身分を秘匿しなければならない
た 形 で 利 用 さ れ た 可 能 性 を 抱 え て い る。
の記念写真だといわれればそれまでのこ
るだろう。違うか」
し、日本人がそのエージェントであると
そうした利用のされ方は避けられないこ
しかし、われわれにはことの成否や利害
「 つ ま り、 お か し く な っ た 篠 山 の 発 言 の
か友人であるということはそれだけで周
とではあるのだが、その利用者が赤の他
作活動を行うアメリカの秘密諜報機関で
根拠を見つけよう、裏を取ろう、という
囲から警戒されざるを得ない。彼を通し
とだ。
わけか」
36
た場所だけ。互いの自宅や事務所は使わ
注意が必要だ」
人ではなく、グループのリーダーであっ
ない」
「堀田の関心は篠山の動向そのものでは
に臨もうとしている。
たとすれば、それがどのように利用され 「携帯に電話をくれたのもそのためか」
しれないが、いまのところ、デジタル通
堀田は磯崎の予想以上の慎重さで、こと
はごく自然なことだろう。磯崎はこれも
信のほうが安全性は高い」
たのかを把握しておきたい、と考えるの 「 そ の 通 り。 ま、 気 休 め に 過 ぎ な い か も
ジャーナリストの責任のとり方のひとつ
な く、 直 接 C I A に あ る ら し い。 だ が、
「盗聴されにくい、ということか」
がかかっていて、すぐには解読できない。 調べたらいいというのか」
だと思っている。
きから、このテーマからは半ば逃れられ
も ち ろ ん、 俺 た ち が 実 際 に 動 き 出 し て、 さまざまな取材ルートが頭に浮かんでは
わたしたちはいったいそれをどうやって
ない運命にあった。そのことはまた堀田
マークされていたら、安心はできんがな」 消える。多くの障害があって、ルートが
だから磯崎は、堀田に声をかけられたと 「 そ う い う こ と だ。 信 号 に ス ク ラ ン ブ ル
も同様であったろう。
寸断されてしまうのだ。磯崎は一人、途
方にくれていた。
「 空 振 り か も 知 れ な い、 か。 確 か に そ う 「 マ ー ク さ れ て い な い な ら、 回 線 電 話 で
だな。何も出なかったとき、われわれは
そんな磯崎の戸惑いをおもしろそうに窺
念を入れろ、という警告さ。甘い発想で
もいいんじゃないのか」
膨大な時間を空費する。でも、それはい 「 そ う か も し れ な い。 が、 こ れ は 念 に は
い。そんな仕事には慣れっこだ。そうで
は危ないぞ、というメッセージを伝えた 「 知 っ て い る か。 や つ は 進 取 党 の 隠 れ 顧
いながら、堀田が口を開く。
はなく、出したバットにたまたまボール
かった」
問でもあるらしい」
がヒットして、場外ホームランでもかっ
飛ばしてしまったらどうなるんだ。そっ 「 そ う か、 わ か っ た。 今 後 は 念 の た め、 「 な に、 ほ ん と う か。 そ れ じ ゃ あ 図 式 は
ほぼできあがっているんだな。篠山と大
換は通信を使わず、直接会ったときにす 「 か も な。 け れ ど、 事 は そ う 簡 単 に は い
われわれの連絡も携帯でするとしよう」
か な い ん だ。 や つ が 進 取 党 の 顧 問 に 納
ちのほうが危なくはないのか」
ルがホームランになっていることに気が
る。その時の場所を決めておこう。その
まったのは大沢とのつながりが縁だから
沢八郎はグルか」
つかない場合はそれこそ危険極まりな
ひとつがこの喫茶店だ。会うのはこうし
「そりゃあ危ない。まして、
当たったボー 「 違 う。 そ れ で は だ め だ。 細 か な 情 報 交
い。だからバットを振るときには細心の
37
社はシアトルだったよな。でも、取材に
カーグルにも取材をしている。確か、本
リ カ に 飛 ん で い る が、 穀 物 メ ジ ャ ー の
「 そ う か。 あ の 取 材 の と き も 篠 山 は ア メ
カでやつに会っているらしい」
「 そ う。 岩 槻 が ア メ リ カ カ
・ ーグル社の
相談役をやっていたとき、篠山はアメリ
「あの石見市長の岩槻か」
の人脈だ」
ではない。刷新の会の代表 岩
・ 槻鉄人と
候補からの情報が引き出せるし、島根と
ある程度の情報は集まる。選挙なら対立
具体的な手がかり、足場が見つかれば
人なのか、何か出てくるかもしれない」
はわたしが当たってみよう。なぜ岩槻鉄
として、ちょっと心当たりがある。石見
だろう。当面、そちらはきみにまかせる
とCIAの関係には探りを入れているん
はあるわけだな。きみのことだ、進取党
「 そ う か。 こ れ で と り あ え ず の 手 が か り
の隠れ顧問になっていく」
と 日 が 落 ち て い く。 一 面 が 鈍 い 金 色 に
水 を 打 っ た よ う な 湖 面 に、 ゆ っ く り
れ違いに、喫茶店に姿を消した。
校生なのだろう。学生の一団が磯崎とす
していたが、外はまだ明るかった。予備
密談をしていたためか夜のような気が
きみはもう少しここにいてくれ」
「 じ ゃ あ、 わ た し か ら 先 に 引 き 上 げ る。
伸びている。だてに20年もジャーナリ
第3章「不審」
は裏があった」
照 り 返 り、 湖 上 に あ る す べ て の も の を
そんなことはまだ何もいえない。いま言
ス ト を や っ て き た わ け で は な い こ と が、 湖はこの瞬間が最も美しく、神秘的だ。
CIAの謀略
「 ま た ま た、 お ま え は 結 論 が 早 す ぎ る。 いわず石見にも、磯崎のネットワークは
えるのはこれだけだ。篠山はアメリカで
こういうときに証明される。
は石見なんだ」
はこちらも隠密行動だ。連絡にはくれぐ
だ。篠山の生まれは東京だが、親父の郷 「 よ し、 当 面 は そ れ で い こ う。 し ば ら く
松江温泉の宍道湖畔にある鄙びた観光
ら、磯崎はこの景色が病みつきになり、
目 に な る だ ろ う。 初 め て 訪 れ た と き か
磯崎が松江を訪れたのはこれで何度
影 絵 の よ う に 黒 く 浮 き 立 た せ る、 宍 道
岩槻と知り合い、石見市長選で一肌脱い
「それは知らなかった」
でもこの景色に出会えるとは限らない
松 江 は 年 間 を 通 じ て 雨 が 多 く、 い つ
を恒例としている。
食 堂 で、 素 魚 の て ん ぷ ら を い た だ く の
れも注意してくれよな 」
われわれはもうすっかり諜報員気取り
「 そ し て、 岩 槻 が 政 界 刷 新 の 会 を 立 ち 上 「はははっ」
げると、そのブレーンに収まった。刷新
ト魂を少しくすぐる。
の会はその後、
進取党に合流していくが、 だ。危ない、ということがジャーナリス
その過程で篠山は大沢に接近し、進取党
38
を見ながら切り出すしかないのが隠密取
何か口実を見つけて会った上で、様子
制緩和によってアメリカの対中貿易が飛
M(対共産圏輸出統制委員会)の輸出規
方針によって、一気に氷解し、COCO
材というものだ。しかしそれをするには、 躍的に進展するきっかけをつくった。
に近い。
「 お 客 さ ん、 東 京 か ら で す か。 今 日 は つ
北朝鮮の核疑惑についても、核査察の拒
のではあるが、幸いなことに磯崎の場合
いていますよ。この季節、湖がこんなに
石見の国(島根県)はあまりにも遠かっ
否からIAEA脱退、アメリカの報復攻
はまだ一度もはずしたことがない。
美しいのは珍しい」
た。
三ヶ月、何もできることはなかった。通
と 言 っ て は み た も の の、 実 際 に は こ の
いた輪郭に唇を当てると、酒の味が二倍
かにこちら側に回りこんでくる。その輝
てぐい飲みを捧げると、金色の光がかす
この瞬間が惜しいのである。落日に向け
といってサービスしてくれた「アゴのち
店 に 立 ち 寄 っ た と き、
「酒のつまみに」
るとともに、自衛隊やシーレーン防衛を
社文・さきのりの新連立政権が誕生。社
わり、社文党の村山党首を担いだ民自・
て成立した羽田内閣も三ヶ月の短命に終
責任をとって細川首相が辞任。後をうけ
ニックの一ヵ月後には、佐川急便事件の
している」と、
いいかけたがやめにした。 政権の交代は猫の目のようで、コメ・パ
く わ 」 が う れ し く て、
「 以 来、 ひ い き に
合憲であると表明するなど、これまでの
「 石 見 の 線 は わ た し が 当 た り ま し ょ う 」 文党が日米安保条約の受け入れを表明す
にも三倍にも感じられるのである。
党是を180度転換した。
きな変貌を続けていた。
の間にも、日本をとりまく政治状況は大
そうして磯崎が手をこまぬいているそ
ラ社の携帯電話仕様を日本でも採用する
よる制裁をちらつかせながら、モトロー
企業の代表と化し、スーパー301条に
しかし日米関係では、アメリカ政府が一
れた。
胸をなでおろす和解ムードの空白期が訪
必 死 の 工 作 が あ っ た の だ が、 と も あ れ、
ネームはUSFK5027)を阻止する
ア メ リ カ の 北 朝 鮮 攻 撃( 作 戦 の コ ー ド
こととなった。この裏には、韓国による
援と交換に、北朝鮮が査察を受け入れる
見えた米朝交渉は、一転、軽水炉転換支
撃という最悪のシナリオへと向かうかに
食堂の主人である。磯崎は初めてこの
信が危険だとなれば、たとえ周辺取材だ
ましてや、相手の反応がわからない手紙
が、クリントン大統領の人権問題棚上げ
天安門事件依頼くすぶっていた米中関係
車部品、板ガラスなどをめぐる日米新経
強まり、九四年の九月には自動車、自動
と し て も 電 話 取 材 で 済 ま す の は 難 し い。 一 方、 目 を ア ジ ア 情 勢 に 移 し て み れ ば、 よう迫るなど、ごり押し政策がいっそう
で、うまく用件を伝えることなど不可能
39
権にかかわるゆゆしき問題である。信憑
性の高い報道がなされた以上、その中身
たのか
である。
を追及し、事実を明らかにしなければな
」という、冷ややかな受け止め方
たった。
そして一〇月八日、われわれにとって無
済協議 日
( 米包括協議 が
) 開かれるにい
この協議のためワシントンに乗り込んだ
301条の発動を宣言した。
ア メ リ カ 政 府 は 一 〇 月 一 日、 ス ー パ ー
な姿勢の前に会談は決裂。これを受けて
このレポートはさらにこう続いている。
のである。
金援助をしていた」ことをすっぱ抜いた
CIAが日本の民自党に数百万ドルの資
かった。報道では、野党に流れた資金も
は、本気でこの問題を追及する気配はな
て民自党と連立を組んでいる社文党に
べき問題だった。しかし、政権与党とし
勢力だった社文党が真っ先に取り上げる
本来なら五〇~六〇年代に民自党の対抗
河野洋平副総理 外
・ 相、橋本竜太郎通産 視 で き な い 大 き な ニ ュ ー ス が 飛 び 込 ん らない。国際関係上からも日本が主権国
『ニューヨーク タ
相は、相次いでカンター米通商代表と精 で き た。
・ イ ム ズ 』 が 家であることを示すためには「やっぱり
力的な交渉を重ねるが、アメリカの強硬 「 一 九 五 〇 年 代 か ら 六 〇 年 代 に か け て、 な」ではすまないのだ。
受け止め、年明けに発足する予定のWT 「日米間の貿易摩擦が激しくな り始めた
むろん日本も、これを不当な経済制裁と
七〇年代初頭以降、CIAは、共産勢力
場ではなく、なりふりかまわぬバトルの
た紙や木材。事態はもはや冷静な論議の
して指定したのは包括協議の対象外だっ
たものの、アメリカが301条の対象と
らゆる官庁に浸透し、首相側近にも情報
動したCIA職員によれば、CIAはあ
七〇年代末から八〇年代初頭に東京で活
連立与党、既成政党批判の絶好のチャン
す れ ば、 野 に 下 っ た 進 取 党 に と っ て は、
民自党も社文党もおなじ穴のムジナ。と
日 本 に 関 す る 情 報 収 集 に 重 点 を 移 し た。 のせいだ、との噂も流れた。
を 押 さ え る た め の 民 自 党 の 援 助 よ り も、 ある、という。社文党が動かないのはそ
Oに「提訴する」と対抗の意思表示をし
場と化していた。
ス が 訪 れ た と い え る だ ろ う。 ま し て や、
う」
うの国 を
」目指す、と発言する大沢にとっ
ては看過し得ない問題でなければならな
そのため、
筋を通した日本の外交手法に、 提供者がいたとされ、農産物交渉での日
今後予想されるアメリカの報復のエスカ
これは日本人の誰もがある程度予想して
かった。
ことあるごとに主権国家としての ふ
「つ
レートにたいして、底知れぬ恐怖感を抱
いたことである。が、ことはこの国の主
あ か ら さ ま な 批 判 は 少 な か っ た も の の、 本政府の立場を事前につかんでいたとい
く 者 が 多 か っ た。 何
「 か打つ手はなかっ
40
が首班に選ばれるような事態になっても
ないのだ。おざなりな質問や批判を口に
彼らの存在意義はなくなる」
あった」
「つまり竹村には首班に選ばれる芽が
連 中 は ど う で す。 こ こ で 動 か な け れ ば、 いでくれ、と、そういうことだ」
妨害はしないでくれ、引きずり下ろさな
するだけで、真相究明などする気はまっ
「 さ て、 か れ ら だ っ て C I A の 対 日 工 作
「 が、 そ の 芽 を つ ぶ す 力 が C I A に は あ
ところが、この国を挙げての大問題に対 んだろう 」
して、進取党もまた一向に動こうとはし 「 そ れ は そ う で す。 し か し、 新 党 日 本 の
たく窺えなかった。
と無縁であるのかどうだか」
「 な る ほ ど。 で、 竹 村 は 何 を 恐 れ て い た
る。少なくとも竹村はそう信じていた」
さらにこのレポートで、CIA担当窓口
出身ということですか」
と し て 実 名 を 挙 げ ら れ た 後 藤 田 正 春 は、 「 さ き の り は ど う だ ろ う。 彼 ら も 民 自 党
当初、マスコミの取材に対して「あくま
で も 党 の 担 当 と し て 」 と 答 え て い た が、 「 そ れ も あ る。 が、 そ れ だ け で は な い。 んです」
して、ウールジー長官に面会した。会談
磯崎と堀田とは、早速この問題で秘密会 「 そ う。 彼 の ほ う か ら た っ て の お 願 い を
ろう」
た。まあ、彼流の東アジア安定策なんだ
くするため、金丸訪朝団とともにに動い
代表の竹村義正が、なぜかこの五月にア 「 北 朝 鮮 だ よ。 竹 村 は 北 朝 鮮 と ア メ リ カ
議を開いた。
言えば命乞いだったと、俺はにらんでい 「国盗り の切り札にしようと でも考えて
というより事情説明、もっとありていに
いたのかな。ところが、それではCIA
後に前言を翻し、一切の関与を否定して
「進取党は今後、どう出るんだろう」
る」
に睨まれる、首班になるには足かせにな
がこんなにも険悪になるとは予想してい
「おそらく、これ以上動くまい」
「 五 月 と い う こ と は 羽 田 政 権、 さ き ぶ れ
る。 そ う 思 い 直 し た と い う わ け で す か。
メリカのCIA本部を訪ねている」
「 進 取 党 に C I A は 叩 け な い、 と い う わ
はもう連立を降りているとき、というこ
しかし、そのためにわざわざバージニア
いる。この対応にも納得できないものが
けか」
とですね。で、いったい何の命乞いなん
州のラングレーまで行くとなるとこれは
なかった。だから北朝鮮とのパイプを太
そ
「 う な ん だ ろ う。 党 の 中 核 は も と も と
民自党の出身で、おなじ脛に傷を持って
ですか」
「ラングレーを、ですか」
いる。これはおまえの担当だが、刷新の
ただ事ではないですね。日本の首相にな
残った。
会の岩槻だってCIAを叩く側には回ら 「 簡 単 に 言 え ば こ う だ ろ う。 こ の 先、 私
41
「少なくとも竹村はそう考えたというこ
い」
ね。資金援助の追及どころの騒ぎではな
だ、といっているみたいなものですから
るためにはアメリカのお墨付きが必要
ことですか」
説明に馳せ参じなけりゃならん、という
と組んだ大沢に足元をすくわれる。事情
まではうまくない。このままではCIA
解消してみても、CIAに誤解されたま
いの大沢が許さない。かといって連立を
ものであって、裏切るものではない」
たちの仮説=進取党CIA説を裏付ける
はいない。いずれにせよ彼の行動はおれ
政府よりもCIA、この判断は間違って
班候補の多くがアメリカ詣でを当然のよ
に戸惑った。磯崎の理解では、日本の首
磯崎は一瞬、堀田の言葉が理解できず
わけではないんです。誤解があったらど
ア戦略に水を注そうという魂胆があった
手を差し伸べようとか、アメリカのアジ
動したにすぎません。北朝鮮の核開発に
「 私 は 別 に、 東 ア ジ ア の 安 定 を 考 え て 行
あって、大統領のほうが選挙情報を握ら
て 統 制 を 受 け る が、 そ れ は た て ま え で
視を受けないのだ。確かに大統領によっ
含め、議会から完全に独立している。監
人事(長官だけは大統領が任命する)を
た諜報機関であって、その行動は予算や
そうなのだ。CIAは大統領に直属し
とだ」
うに考える、と思っていたからだ。
れてCIAにコントロールされることも
「・・・・・・」
「竹村は何かを知っていたんじゃないか。 うかお許しください、というわけさ」
ない」
ら、竹村がそれに気づいてもおかしくは
「 そ う。 ほ ん の 少 し 前 ま で、 さ き ぶ れ も
「進取党ですか」
ちどころに総攻撃を喰らう恐れがある」
る種の緊張関係を抱えた二重権力状態だ
ウスとCIAとはイコールではない。あ
がCIAと強い協力関係にあったとした 「 い う ま で も な い こ と だ が、 ホ ワ イ ト ハ
進取党と連立を組んでいた。その進取党
といっても差し支えない。そして、竹村
でしょうね」
IA長官も内心、さぞ鼻高々だったこと
いうんだから驚きですね。ウールジーC
バ ー で あ っ た 歴 史 研 究 家 の 佐 久 間 剛 に、
堀 田 は、 元 取 材 プ ロ・ シ ン ク の メ ン
行動をとることもありうる」
によってはアメリカ国民の利益に反する
く、国際資本なのだそうだ。だから場合
に動かしているのはアメリカ国民ではな
と奥が深い。彼によればCIAを実質的
に言わせると、この二重権力状態はもっ
府に行うならまだしも、CIAにすると 「戦後外交裏 面史を研究して いる佐久間
少なくはない。
「進取党と連立を組んだままで首班を狙
の立場からすれば恐ろしいのはアメリカ
だから自分が首班候補にでもなれば、た 「それにしてもその命乞いを アメリカ政
うなら問題はないけれど、これは竹村嫌
42
『ニューヨーク タ
・ イムズ』の件で意見
を求めたという。
べた。
まりは地方分権と環境保護を二枚看板に
存在をアピールしていた。だから、彼が
櫂の音を忍ばせて湖面を滑る。網打ちに
堰の強引な運用開始を覚えている。政府
国民はなお、鮎の俎上を阻む長良川河口
を 湛 え て 揺 ら め い て い る。 何 か の 舟 が、 である。
日が落ちて、夕焼け雲の反射だろうか、 首相として再登場するためには、ふるさ
佐 久 間 は「
『ニューヨーク タ
・ イムズ』
を操る黒幕も、CIAを動かしている国 宍道湖の湖面がわずかなオレンジの残照 とでの環境を守っておく必要があったの
際 資 本 と お な じ 勢 力 で、
『ニューヨーク
出るところなのかもしれない。
の論理は、生態系を無視した旧式なもの
タ
・ イムズ』は重要な場面ではよくCI
Aの代弁者になる」という。
中海の干拓事業が進めば、やがてこの
宍 道 湖 も 死 の 海 に な る と い わ れ て い た。 で、疑問を投げかける新しい研究を前に
そして「今回のすっぱぬきも間違いな
く、CIAと示し合わせた上でのリーク
少なくとも、重要な産品であるシジミは
完全に破綻していた。強引な運用は生態
だろう」というのだそうである。
なれば二度とこの食堂で素魚のてんぷら
も地元の環境保護運動を圧殺して、首相
少なくとも、いかに政界のドンといえど
系に対する暴力と化したのである。
民自党とCIAとの癒着をいま暴くこと
に舌鼓を打つこともなかったろうな」
が、 わ か ら な い の は そ の 狙 い で あ る。 絶 滅 し、 名 産 の 素 魚 も 半 減 す る。「 そ う
で、CIAにはいったいどんな利益があ
れつつあった。
の座を狙うことは許されない状況が生ま
やった。
る と い う の だ ろ う か。 佐 久 間 も 堀 田 も、 磯崎はあらためて箸先のてんぷらに目を
これについての明確な答えは出せなかっ
キがかかったのだ。もちろんその裏には
こうして、中海の干拓は急速にブレー
島根を足場にする民自党のドン、武下昇
地元の環境団体の長年にわたる地道な活
だが、
状況は一変した。政界の混乱は、
「 こ の 報 道 の 背 後 に は、 俺 た ち が ま だ 気
元首相の再登場を期待させる雰囲気を生
たようだ。
づいていないファクターが潜んでいるに
動 が あ っ た。 そ れ が 干 拓 事 業 を 遅 ら せ、
簡単にはひねり潰せない対抗勢力として
ふるさと創生とブラジル サ
・ ミット、つ 「 松 江 に 行 っ て く れ ま せ ん か。 中 海 の 干
首 相 に「 元 」 が つ い て か ら の 武 下 は、 の存在感を作り出していた。
況が生まれたのである。
違いない。
それを明らかにするためにも、 み出した。虎視眈々、折りあらば、の状
地を這う取材が必要だ。篠山とCIAと
進取党、おれたちの着眼点は悪くない」
堀田はそれでも満足そうな笑みを浮か
43
なのか。それとも行き当たりばったりの
持つ島根とのパイプを知った上での依頼
を依頼してきた。なぜ磯崎なのか、彼が
K誌の編集長がじきじきに磯崎に取材
い」
拓断念の見通しと背景を探ってきてほし
く飛び込んでくるという。
漁船を通じて韓国や北朝鮮の情報が数多
のだ。
日本一の水揚げ量を誇る境港にも、 いう土地が持つ特性を、もっと考えてみ
島)と辿れば北朝鮮にも近い要衝の地な
た る。 隠 岐、 竹 島、 ウ ル ル ン 島( 鬱 陵
を争っている竹島(独島)の玄関口に当
半島に近く、隠岐島や韓国との間で領有
これはどうやら、解けたようだ。島根と
え て い た 最 大 の 疑 問 が こ れ だ っ た。 が、
しい都市を狙わなかったのか。磯崎が抱
なったのか。なぜもっと、それにふさわ
まとしたことを考えるには及ばなかっ
察や内閣情報調査室の係官などが収集に
それらの情報はもちろん日本の外事警
となった。時計もすでに六時半を回って
岸の松江市内の明かりを逆さに映すだけ
日はとっぷりと暮れ、宍道湖もただ対
ればよかったのである。
取材力を期待してのことなのか。こまご
た。磯崎にとっては渡りに舟、ただそれ
磯崎は一足先に、約束のホテルに移るこ
当 た っ て い る の だ が、 彼 ら に 混 じ っ て、 いる。約束の七時にはまだ間があったが、
CIAのエージェントらしき者も暗躍し
だけのことである。
おそらく、自費でもやって来ることに
ホテルといっても、レストランや喫茶
とにした。
に関心を持っているとは考えてもみな
店、それにカラオケバーが同居する、一
ている、というのだ。CIAが直接松江
きるのはいろんな意味でありがたい。C
かった磯崎にとって、これは新鮮な驚き
種の雑居ビルといったほうが似合うだろ
なったろう。でも、仕事でくることがで
IAを口に出さなくとも、この地の多く
だった。
実際、こうして磯崎はいま、松江にい
こともあるという。水の分析から港湾に
北朝鮮の港湾の海水採取を依頼していた
マン」を思い出す。
電球がひどく軽薄で、昔流行った「電飾
C I A は 境 港 に は い る 漁 船 に 対 し て、 う。入り口の植え込みを飾る極彩色の豆
のキー パ
・ ーソンに出会うことができる
る。そして、中海干拓中止をめぐる政治
注ぐ河川の上流部に化学兵器工場がある
からだ。
的背景の取材を口実にしながら多くの人
かどうかを調べたのである。
あ る と す る な ら、 な ぜ 彼 は 石 見 市 長 に
もし岩槻鉄人がCIAと結んだ人物で
手短なアポイントだったにもかかわら
話がしやすそうだ、と思う。電話による
姿はまったくない。なるほど、ここなら
ラウンジはだだっ広くて薄暗く、客の
に会い、すでにCIAに関する有力な情
報を手に入れている。
ここは「国引き神話」を持つほど朝鮮
44
ず、松永は旧交を温めるだけの儀礼的な
訪問ではないことをよく理解してくれて
いた。
三「鷹事件 ・」・・・・・。そして 帝「銀 う。目を丸くしながら封筒の資料を引き
事件 」にもCIAが関与している、と力 出す。ラウンジの明かりが薄暗くてよく
説していた。
できすぎた期待ではあるが、 読めない。ようやく磯崎の目が慣れてき
そのとき磯崎の脳裏には ひ
「ょっとして
彼は、CIAの研究者なのかもしれない
干拓の中止問題であることを彼は勝手に
驚きである。これはこれで、貴重な資
て、何の資料かが判読できた。
」との、思いが掠めたほどである。
東京では時間にルーズな男という印象
察知していた。だが、中海問題なら、ア
松永正紘、地元『山陰新報』の記者を
いである。彼が松江に帰ったのは、父の
があったが、
この日、松永は午後七時きっ
ポをとるとき、電話でそう伝えていたは
ていた。磯崎とはそのときからのつきあ
しているが、以前は東京の通信社に勤め
跡を継いで政界に進出するためだった
かりに現れた。
ずだ。隠し事は無用であろう。
料であった。磯崎の表向きの来訪が中海
が、定数削減で島根が民自党王国になっ
て し ま っ て、 果 た せ ず、
『 山 陰 新 報 』 で 「 い や あ、 よ く き て く れ た な。 二 年 ぶ り
前回会ったのも、この松江である。や
なかったため、表面的なデータではなく
た。松永は磯崎が来訪の目的を明確にし
だ が、 こ れ は 磯 崎 の 勝 手 な 判 断 だ っ
「地を這う取材」とはややニュアンスが
はりこのホテルに近い松江城の裏手の店
秘密を要するような情報がほしい、と受
だろ、いや、三年ぶりか」
異なるが、人脈を駆使して、ターゲット
でいっぱいやった。あれからもう三年の
け取った。そして、これが、その情報な
健筆を揮うにいたっている。
を追い詰める、好奇心と突撃精神にあふ
歳月が流れている。
プされていた。
ワークがあますところなくフォローアッ
民 自 党 国 会 議 員 や 県 議、 市 議 の ネ ッ ト
彼と島根県知事、松江市長とのつながり、
り添う地元・土建業者の存在とその行動、
資料には武下元首相の腰巾着のように寄
のであった。
れた生粋のジャーナリストである。彼が
いこうや」
東京にいたら、磯崎は迷わず、彼を仲間 「 さ て、 要 件 は 手 短 に 済 ま せ て、 飲 み に
に引き入れたことだろう。
据えると、茶封筒を投げてよこした。
CIAの対日工作を追う、
というのは、 彼はラウンジのソファーにどっかと腰を
それこそ彼にうってつけのテーマだ。磯
」 い。それなのにこの早手回しはなんだろ
松永には電話では何もしゃべっていな
崎はそのとき、彼がよく戦後日本におけ 「おまえがほしい資料はこれだろう」
」下
「 山事件
るCIAの謀略について語っていたこと
を 思 い 出 し た。 松
「 川事件
45
れない」
」の、 生 臭 「 じ ゃ あ、 そ の、 裏 の 話 と や ら を 聞 こ う
じゃないか」
要するに、中海干拓をめぐる利権構造の
全 貌 で あ る。 ふ
「 るさと創生
い実態である。
な。けれど、石見市長について、俺はそ
れほど詳しくはない。事前に言ってくれ
れば打つ手はあったと思うがな」
「 う む、 そ れ が 正 解 だ ろ う な。 確 か に、
持つべきものは友である。これほどの極 「 松 さ ん は 昔、 C I A に 詳 し か っ た で す 「申し訳ない。電話ではまずいと思った」
秘資料を、
こんなに簡単に渡してくれる。 よね」
岩槻鉄人がCIAのエージェントではな
外 国 企 業 の 重 役 だ か ら な。 そ ん な 噂 が
これも松永がこの使い方について、磯崎 「CIA・・・・・・、ああ、興味は持っ
「 単 刀 直 入 に 言 い ま し ょ う。 わ た し は C
立ってもおかしくはない」
い か、 と い う 噂 は い く つ か あ る。 元 々、
のことなのである。
IAと岩槻鉄人との関係を調べにきたん
を 絶 対 的 に 信 頼 し て く れ て い れ ば こ そ、 ていた」
これがあれば、武下再登板か中海干拓の
評論家の篠山啓志がどう絡んでいるのか 「 彼 に は 初 め か ら、 石 見 の た め に 市 長 と
どちらかは潰せる。
磯崎はそう直感した。 です。もっといえば、その両者の関係に、 「たとえば」
中海の干拓見直しがにわかに現実味を帯
を調べにきた。というのも、ひょっとし
みせたのである。
た。茶封筒に向かって、二礼、三礼して
磯崎は思わぬ拾い物に深く深く感謝し
のだ。
えの面子がかかっているということか」 「つまり、石見でなくてもよかった」
「 つ ま り な に か、 ラ イ タ ー と し て の お ま
れないからなんです」
て、CIAに協力させられていたかもし
たらわたし自身が彼のデータ―マンとし
ということだ」
ナントを借りた。それが石見ではないか、
ショーウィンドウ、実験ブースとしてテ
い。ある種、アメリカ型リベラリズムの
して何かをしようとする意欲が窺えな
びてきた裏には、こうした背景があった
「 さ す が は 松 さ ん だ。 こ れ で わ た し の 表
か」
「 表 向 き の 仕 事 だ っ て、 何 か 裏 が あ る の
ほんとうに助かった」
ことか。昔のことなのに、おまえらしい
「中途半端にしておくのはいやだという
たい」
子はともかくとして、決着はつけておき
手のものだろうから、安全な送り先を教
資料を後で送ろう。郵便物の開封などお
う。 こ れ に ま つ わ る 噂 は い く つ か あ る。
ントとして適当な大きさだっただけだろ
向 き の 仕 事 は 完 璧 で す よ、 あ り が と う。 「 そ う 取 っ て も ら っ て も か ま わ な い。 面 「 そ れ は 間 違 い な い。 石 見 は た だ、 テ ナ
「 そ う。 残 念 な が ら、 ま だ 飲 み に は 出 ら
46
えてくれ」
長は自治省の天下り先になってきた。そ
たのは自治省だ。知事を含め、地方の首
田部井家だ」
た。その背後にいたのが石見の山林地主・
はわかります。田中派叩きの結果、金丸
「ありがたい」
た 関 心 を 抱 い て い る。 彼 が 何 者 な の か、 きたわけだ。この支配に風穴を開けたの
真の腰巾着だった山梨県知事がやられ
れを通して自治省の地方支配が図られて 「自治省 のライバルが田中派 だというの
が民自党の田中派なんだ。列島改造とい
た。その結果、金丸自身も政治力を失っ
「ただ、
おれとしては岩槻にちょっと違っ
どうも読めない」
う土建政治の登場だよ」
というんですね」
を通じて警察力を持っていますからね」
「地方利権の独占ですか。中海もそうだ、 た。田中派も分裂した。自治省は警察庁
「・・・・・・」
「地方分権を、おまえはどう考える」
「 必 要 な こ と じ ゃ あ な い で す か。 積 極 的
どね」
工夫も考えなけりゃならないでしょうけ
校の細川が送り込まれたのがその典型
首長を奪い始めた。熊本県知事に田中学
と結びついて、自治省の牙城である地方
と だ。 む し ろ 彼 ら の 分 権 論 を 後 押 し し、
の敵にするような敵ではない、というこ
まった田中派は、自治省にとってもう目
に進めるべきだ。もちろん弊害を抑える 「 そ う。 田 中 派 は 建 設 省 と か 農 水 省 な ど 「 つ ま り、 民 自 党 と 進 取 党 に 分 か れ て し
「 ま あ そ れ が、 平 均 的 な 受 け 止 め 方 だ ろ
うが得策と読んだ」
チェック役としての権限を手に入れたほ
がってきた」
う。 模 範 解 答 と い っ て も い い。 だ が な、 だ。地方分権はまず、彼らの声として挙
お れ の よ う に 地 方 に い る と な、 こ れ が
「自治省ではまずいということですか」
会か、国会か、それとも自治省か」
「 誰 が チ ェ ッ ク す る と い う ん だ。 地 方 議
「だからチェックは必要です」
らけの分権になる可能性だって大きい」
根県政は完全に武下・田中派の手に落ち
ついに内務官僚の山野が敗退。以後、島
ていた。ところが一九七一年、七五年と、 石見市は田部井家の本拠地。武下丸抱え
は戦後一貫して内務官僚、自治官僚の王
だ。ところが岩槻は田中派大沢グループ
県 を 二 分 す る 知 事 選 が 行 わ れ、 七 五 年、 の市長が立ってもおかしくはない土地柄
国だ。そして、その触手は島根にも伸び
の新党結成の動きに呼応しつつも距離を
に、 岩 槻 が 降 り て き た、 と い う こ と だ。
いうのはそのパワーバランスのど真ん中
「むずかしい。本当にそうですか」
けっこう怖い。地域ボスが利権を独占し 「 ・・・・・・・・・・
」
て、チェックが効かない。そんな弊害だ 「 こ の 地 方 に 則 し て い え ば、 隣 の 鳥 取 県 「 あ く ま で も 仮 説 だ。 が、 お れ の 関 心 と
「 そ う だ。 こ れ ま で、 地 方 を 牛 耳 っ て い
47
おき、一方で着実に、自治省のお先棒を
ントなんですか」
「市職の北村という男です」
な政策立案の中でも、国民カードの導入
民カードシステムだ。彼は新党の具体的
「彼の政策の目玉は自治省受け売りの住
「お先棒を担いでいる、というのは」
ている、ということを意味する」
を替えて、昔の話をしよう。いい店があ
理で頭がいっぱいだ。いいだろう。場所
は矛盾しないんだよ。俺はいま、その整
エージェントとCIAのエージェントと
と い う の も な、 考 え て み る と 自 治 省 の
なる」
陰新報』の石見通信員だ。若いが頼りに
い。それよりもこいつに会うといい。
『山
労も自治省も違わないところが少なくな
の 毒 に。 で も、 俺 は う き う き し て い る。 すると筒抜けになるぞ。地方では自治職
担いでいる。これは田部井がそれを認め 「 な ん だ、 が っ か り し た よ う だ な。 お 気 「 自 治 職 労 か、 大 丈 夫 だ ろ う な。 下 手 を
を叫んでいる。これを自治省と田中派新
る」
政策事務所の住所だ。そこの女性秘書が
「 ち ょ う ど い い。 こ の 書 き 込 み は 岩 槻 の
刺を渡してくれた。
そういうと松永はメモ書きの入った名
党グループの手打ちとみることもでき
る。
田部井のような地方名族にとっても、 「待ってくれ。篠山はどうなんです」
両 者 の 手 打 ち は 歓 迎 す べ き こ と だ ろ う。 「 篠 山 は 今 で こ そ、 あ ち こ ち で ち や ほ や
「 国 民 カ ー ド の 導 入 か。 プ ラ イ バ シ ー に
いうことだ」
たというが、それも選挙用にこしらえた
い。やつの親父が石見空港の誘致に動い
石見には看板も地盤もあったわけではな
さ。おまえも拝んでいくといい」
おれたち地方紙記者のもっぱらの関心事
岩槻と篠山、どっちの女か、というのが
る。下世話な話だが、なかなかの別嬪で、
さ れ て い る が、 ま っ た く の 無 名 だ っ た。 東京の篠山との連絡役だ、といわれてい
問題のある、健康カードというやつです
アドバルーンだろう。だから、俺はむし
つまりは自治省の手の内での地方分権と
ね」
ろ、 東 京 で 何 が あ っ た の か を 知 り た い。
入った。宍道湖と中海とをつなぐ運河の
磯崎たちの車は松江で一番の繁華街に
「 厚 生 省 の シ ス テ ム と は 違 う。 自 治 省 が
か」
盛 ん に 進 め よ う と し て い る シ ス テ ム だ。 何 で や つ は 東 京 で 急 速 に 名 を 上 げ た の
石見はそのシステムの実験場になろうと
ようにくびれた部分、その北側に繁華街
「石見に行っても無駄足ですか」
している」
したメノウ細工の店の前で、彼らはタク
が形成されている。煌煌と明かりを照ら
う」
「 う ー む、 岩 槻 は C I A の エ ー ジ ェ ン ト 「 そ ん な こ と は な い だ ろ う。 で も 誰 に 会
であるというよりも、自治省のエージェ
48
シーを降りた。そうして、そこから一本
察)を抱えていたばかりではなく、地方
民生局長のホイットニーとウィーロビー
礎知識でしょう。当初優勢だったGSは、
少将との対決だったかな」
中国共産党の伸張などにつれてG2に圧
局に大政翼賛会を組織させ、国民を戦争
「 だ か ら G H Q に よ っ て 解 体 さ れ、 警 保
倒 さ れ て い く。 日 本 を 反 共 の 防 波 堤 に、
わき道に逸れると、もうそこは深閑とし
局 が 自 治 体 警 察 に、 地 方 局 が 自 治 庁 に
とか、日本を反共の工場に、といった主
に 駆 り 立 て た。 つ ま り 占 領 軍 に と っ て、 「話が早いな、さすがはおまえだ」
そういって案内された裏町の小料理屋
なった。現在の警察庁と自治省というわ
張が勝ちを占めていく。その過程で、財
た闇の世界だった。
は、いかにも隠れ家というにふさわしい
けですね」
閥解体をすすめたマッカーサーの解任劇
絶大な権力をもった戦犯だったわけだ」 「 い や い や、 こ れ は わ た し た ち 文 屋 の 基
GHQは内務省の解体に熱心だっ
くぐると、女将が磯崎をみとめ、松永に 「当初、
たたずまいを持っていた。松永が暖簾を
た。だから目の敵にされた特高警察官な
が起きるんですね」
「 東 京 と 違 っ て 松 江 は 狭 い か ら な、 こ う
目で合図を送る。松永もそれに目で応え
ど、どこにも行く当てがなかった。それ
した隠れ家も必要なんだ」
る。何かの対話が成立し、二人は誰もい
どころか、いつ、戦犯として引っ立てら 「 さ て、 そ う し た ゆ り 戻 し の 過 程 で、 内
た 内 務 省 は そ の 復 権、 再 建 を 目 指 す が、
務省内に何が起こったか、だ。解体され
ない二階に通された。
GHQには二つの路線があった。GS(民
G2に感謝している」
意 で は な か っ た。 こ れ も 有 名 な 話 だ が、 GHQを恨んではいない。正確にいえば、
だが、こうした事態の出現はGHQの総
「さあ、ここなら何を話しても大丈夫だ。 れるかもしれない恐怖の中にいた。
酔払ってもかまわんぞ」
それはもう、酔うまで飲みたいという
松永の意思表示に他ならなかった。宍道
とG2
(軍 参
湖のこまやかな味わいとは違う、境港で 生局)
・ 謀第二部)の対立だ」 「というと」
水揚げされた豪快な魚介類が続々と登場 「 G S は 日 本 の 民 主 化 を 追 及 し、 旧 軍 の 「 特 高 警 察 の 多 く が、 彼 ら の 諜 報 機 関 に
「知ってのとおり自治省の前身は内務省
いる。
した。松永は、やたらとご機嫌になって
指した。
日本を反共の砦とするために再軍備を目
も、CIAのエージェントとして働くこ
ね。一方、
G2は日米両国の財閥と結び、 活用されたからだ。彼らの一部はその後
解体から、財閥の解体を目指したんです
とになる。
雇われ、ソ連や中国、朝鮮の情報収集に
だ。内務省は警保局に特高(特別高等警
49
余談だが内務省職員の再雇用に駆け回っ
しないんですか」
治省のエージェントとが、どうして矛盾
員はCIAで訓練を受けている」
た職員組合の委員長がほかでもない、あ 「えっ、そんなばかな」
「 ば か な、 じ ゃ あ な い。 現 実 だ。 毎 年 全 「 う む、 ど う 言 え ば い い の か、 ま だ 整 理
はできない。なにしろさっき降って沸い
の後藤田正春さ。
同時にまたG2は、特高の再就職口とし
た発想なんだからな、そう焦らすな」
国の県警から、若手諜報要員が、ラング
て、
法務庁の中に特別審査局を用意した。 レーのCIA本部に送り込まれている」
主義の動きを、アメリカのために調査・
まり公調は創設当初から日本周辺の共産
としても、まともに抗議できないわけで
じゃあ、CIAが日本をスパイしている
も修正にほかならない。内務省は解体さ
がその修正を図ったが、それはあくまで
を作り、スタートさせてしまった。G2
まで抜かれてしまっているわけか。これ 「 こ う い お う。 G S は す で に、 戦 後 日 本
これが現在の公調(公安調査庁)だ。つ 「 な ん と い う こ と だ。 わ れ わ れ は 穴 の 毛 「別に焦らすつもりはないさ」
報告する機関だった」
すね」
れ、もう、戦前のような巨大権力は持て
う。すでに自治省を巨大権力に戻さない
「 ま あ、 占 領 政 策 と い う の は そ う し た も
「 そ う だ っ た ん で す か。 で、 そ れ は 今 で
も続いているんですか」
育てながらも、アメリカをしのぐ力をつ
装置が稼動していた」
なくなっていた。いや、こう言い換えよ
国間の非公式な相互情報交換という形を
けさせないよう、手綱をつけるのを忘れ
のさ。アメリカは日本を反共の砦として
とっているがね。この関係はそれほど露
なかった。自衛隊と警察はその優等生と 「それはなんなんです」
「 続 い て い る。 も ち ろ ん 現 在 で は、 同 盟
骨ではないがCIAと警察庁、CIAと
して育ってきたんだ」
「 大 蔵 省 さ。 予 算 編 成 権 を 手 中 に す る こ
内調(内閣情報調査室)にもある。IC
とで、戦前、
成り立っている」
係に加えて、たくさんの非公式な関係が
の相互引渡し条約とかいう公式の協力関
主に警保局の問題でしょう。地方局はど
そこまではわかりました。でも、それは
から大蔵省に移行した。この権限を大蔵
のグランドデザインを描く実権が内務省
ままだったかもしれませんね。ともあれ、 この地位についたのが大蔵省だ。この国
か。警察だって、いまだに自治体警察の
省が簡単に手放すわけがない」
PO(国際刑事警察機構)とか、刑事犯 「そうでなければ叩かれてい たわけです
「たとえば」
うなんです。CIAのエージェントと自
省の中の省だった内務省に代わり、戦後、
「 た と え ば そ う だ な あ、 警 察 庁 の 諜 報 要
50
い止めてきた確かな力は平和勢力という
みろ。自衛隊の肥大化だって、これを食
で維持されてきたといえる。思い出して
治省の野望を大蔵省が抑える、という形
「 つ ま り、 戦 後 の 省 庁 の 権 力 構 造 は、 自
ます」
講じなければ不可能なことはよくわかり
りたいと思っても、大蔵省が予算措置を
「 た し か に、 自 治 省 が い く ら 内 務 省 に 帰
のかもしれませんね」
メリカのジャパンバッシングは追い風な
省や通産省とは違い、自治省にとってア
だったのかもしれない。とすると、大蔵
うに言われ、叩かれている。この二月の
日本経済の閉鎖性や官僚主義の典型のよ
祉カード、このバックには大蔵省がつい
だ。厚生省が主導する基礎年金番号と福
計画している市民カードは自治省のもの
敵は日本の役人だとまで言ったそうです てみますよ 」
が、あれも主要に大蔵官僚をさした発言 「 ひ と つ 念 を 押 し て お く。 岩 槻 が 導 入 を
日米協議でクリントンは大沢に、共通の
ている。このカードをめぐっても、自治
わ「かった。東京に戻ったらさっそく会っ
までも仲がいい」
に聞くといい。おれの昔の同僚だよ。い
た、ということですか」
2の跳ね上がりに一定の箍をはめてき
「 な る ほ ど、 大 蔵 省 が G S に か わ り、 G
ント枠だった」
の敵を見出したんですね」
「 C I A と 自 治 省 は、 大 蔵 省 と い う 共 通
ないかのようにね」
ているよ。まるで、自分たちは官僚では
自治省はいま盛んに官僚主義批判をやっ
「どっちが優勢なんですか」
そうだ」
を始めるらしい。兵庫県の芦屋と尼崎だ
年の1月からモデル都市を設定して実験
厚生連合と言えばいいかな。厚生省も来
よりも、大蔵省が引いた予算の1パーセ 「 少 な く と も 直 接 痛 み は 感 じ て い な い。 省と大蔵省は主導権を争っている。大蔵・
「 も ち ろ ん そ れ は、 大 蔵 省 が 平 和 勢 力 で
てはいない。政府内でそうした位置に立
中央省庁でなにが起きているか。一口で
とだ。行政改革、省庁再編の嵐の中、今、 石見の実験のおかげで、いまは五分五分。
あるとか、リベラルであるとかを意味し 「 そ う い う 仮 説 も 立 て ら れ る、 と い う こ 「 大 蔵・ 厚 生 連 合 が 先 行 し て い た。 が、
つことが権力の源泉だからこそ、その立
言 え ば 自 治 省 と 大 蔵 省 の つ ぶ し あ い さ。 この勝負はおそらく、自治省・大蔵省戦
目覚めがよかったものだから、早めに
争の行方を占う鍵になる」
だ か ら 岩 槻 鉄 人 の 存 在 は 大 き い わ け だ。
場を大切にしてきたまでだろう」
されるか。もっともこれは他人の受け売
「なるほど、読めた。その大蔵省がいま、 自治省が解体されるか、大蔵省が二分割
CIAにとっても邪魔になっている、と
い う こ と で す か。 確 か に 大 蔵 省 は い ま、 りだ。詳しいことは『共合通信』の春田
51
行くローカルな私鉄である。
駅に、宍道湖沿いに島根半島を出雲まで
鉄の待合室に向かった。松江温泉を始発
チェックアウトを済ませ、磯崎は一畑電
したのであった。あのときから三年、引
に陣取り、開けてくる出雲の風景を堪能
彼はすっかり昔に戻って、運転席の後ろ
なかろうというものだ。
現れた怪しい「文屋」なのであった。
も伝えていない。磯崎は明らかに、突然
介はしてもらったが、こちらの用件は何
それはもっともなことで、人を介して紹
込み線に、あの鋲打ち電車はまだ確かに 「 遠 く か ら わ ざ わ ざ ど う も。 で、 ご 用 件
それというのも、ここを走る電車のすべ
愛着があるのである。
し、この鉄道には磯崎にしかわからない
を使うよりも遥かに時間がかかる。しか
一畑電鉄で、出雲に向かった。この車両
かではないが、磯崎はゆっくり休息して、 たっけ」
あった。いまも現役であるのかどうか定
から視察にきますよ。ほとんどが市町村
磯崎はまだほとんど乗客のいない早朝の 「 あ あ、 市 民 カ ー ド ね。 い ろ ん な と こ ろ
生き長らえてほしいと思う。
の 担 当 者。 そ れ に 比 べ れ ば 小 数 だ け ど、
ゆっくり行くので、松江駅に出てJR
てが東京の西武鉄道の払い下げで、磯崎
も鋲打ち電車の二代後ぐらいの後継車両
組合も来ますよ。市の担当者に案内させ
は何でしたっけね。何かお伺いしてまし
がよく利用していたものなのである。中
で、時代を感じさせるすばらしいもので
い知れる。その彼の前に、三五年の歳月
鉄道研究部に所属していたことからも窺
だ。それは磯崎が高校生になってからも
そこらのものとはわけが違っていたよう
彼の当時の電車好きときたら、そんじょ
いたからなのである。
両まであって、けなげにも現役で働いて
は景色を眺めた、鋲打ちだらけの旧型車
村はすぐに現れた。ニコニコと愛想はい
市役所分室の組合事務所を訪れると、北
村という男に会ってみることにした。
時を回っていた。松永の忠告はあったが、 けっこうだ」
出雲から石見へ、JRとタクシーを乗り 「 い や、 別 に 公 式 見 解 を 聞 き に き た わ け
に陣取る気は起こらない。
ある。が、さすがにもう、運転席の後ろ
まずはシステムをご覧になってからのほ
約束である。磯崎はまず、石見市職の北 「私の意見といっても別に・・・・・・。
継いで市庁舎に着いたときはもう午後一
うがよろしいかと」
だければ、すぐにご案内できますよ」
ましょうか。この申込書に記入していた
「いや、ちょっと例の件で」
には彼が幼いころ、窓辺にしがみついて
を隔てて、なつかしの鋲打ち電車が姿を
いが、
どこかで疑っているところがある。 槻ご自慢の市民カード視察者の一人にカ
何のことはない。けっきょく磯崎も岩
じ ゃ あ な い ん で す。 あ な た の ご 意 見 で
あらわした。磯崎が狂喜したのも無理は
52
る。
治省の株を少しだけ押し上げたことにな
崎はこれでまたまた、岩槻の、そして自
ドの製作現場。だまって説明を受けた磯
経緯、試験利用状況の説明、そして、カー
ウントされてしまった。システム導入の
ら」
しまいでしょう。やっかいなだけですか
け。それからはタンスにしまいこんでお
す。もらった人だって、使うのは最初だ
のいらない、というのが正直なところで
バシーの不安が大きい。私だってこんな
ジェントではないか、と疑って、調べて
はより広いアメリカの諜報機関のエー
磯沼は自分でも岩槻がCIA、もしく
ことはすでに伝わっていた。
かはわからないが、松永から磯崎訪問の
絡が取れた。どんな連絡方法をとったの
なにしろ仕事が減るどころか、二重手間
したシステムではないらしい。それにし
べていますがね、
現場は大変なんですよ。 から、話半分に割り引くとしても、たい
「 い や あ、 い ろ い ろ い い こ と ば か り を 並
ては東京でのマスコミの評判が高いのが
うである。が、いずれも噂の域を出ない、
バーではないかとの説にも出くわしたそ
パ の 秘 密 結 社・ フ リ ー メ ー ソ ン の メ ン
いる、という。そういう中で、ヨーロッ
まあ、北村という男の個人的な意見だ
ばかりでしてね」
リカのシアトルであり、それ以前に接触
篠山と岩槻の出会いは間違いなくアメ
という。
の入れようが見えてくる。
不思議だ。新し物好きということもある
「組合は反対しているんですか 」
「いやあ、もう至上命令みたいなもので、 だろうが、岩槻の、あるいは自治省の力
とても反対は言い出せない。市長生命に
「周りはどうなんです」
です」
け っ き ょ く、 夕
「 飯 で も 」と い う 北 村
の誘いを断り、CIAについては一言も
一九九七年度からだ、という。
ばアメリカを訪れていたらしい。
篠山の父・光之助は地元農協の顔で、家
が あ っ た 様 子 は な い、 と い う。 た だ し、
「 市 長 の ス タ ン ド プ レ ー で し ょ。 大 向 こ
触れずに市役所を退去した。
が、実際の仕切りは宗像という、山陰で
市民全員を対象にした本格稼動は
うをうならせるだけで、みんな、鼻白ん
もちろん、松永から紹介された『山陰新
は見かけない選挙プロがどこかからやっ
賭けて取り組んでいるんだ、というわけ
でますよ」
報』の通信員に会うためである。
「 よ く な い で す ね。 大 し て 便 利 に な る わ
だろう。磯沼というその男とはすぐに連
留守番電話が自動転送になっているの
という。運動員らに聞いても、宗像の正
て き て、 地 元 の 運 動 員 を ま と め て い た、
市長選では篠山が選対本部長を務めた
畜飼料の新しい輸入先の開拓に、しばし
「市民の評判はどうなんです」
けじゃあないんです。そのくせ、プライ
53
ら道を渡る振りをして、じっくりと中を
か、調べればすぐにばれてしまいます」
体はわからず、大沢らが手配した人物で
陽の反射に注意すれば、中は覗ける。
一階の正面はガラス戸になっている。太
見通す。幸いこの事務所は二階建てだが、
なかなかできますね」
はないか、と運動員自身、想像していた 「 な る ほ ど、 た し か に そ の 通 り だ。 君 も
程度だそうである。
篠山と岩槻の力関係は、選挙前までは 「 冗 談 は や め て く だ さ い。 こ ん な こ と は
は東京の篠山に、なにかとお伺いを立て
があるかもしれない。そのときはよろし 「わたしこそ、スパイになったようだな」
援者のような顔をしてね。またくること
る前に政策事務所に寄ってみますよ、後
がその後、関係は徐々に逆転し、最近で 「 あ あ、 こ い つ は 失 礼。 明 日、 東 京 へ 帰
めようというのだ。
できるかどうか。これをその瞬間に見極
どうか、何を口実にすれば訪問が正当化
ふらりと立ち寄っても不自然でないか
ることが増えているようだ、ともいう。
と、そんな風に考えると、磯崎はちょっ
だれにでもわかります」
「そのメッセンジャーになっているのが
く」
完全に岩槻が上だった、という。ところ
政策事務所の池島という女です。東京へ
とおかしな気分になった。
道 路 を 渡 り、 ガ ラ ス 戸 越 し に 中 を 見
のお伺いが増えてきて、最近ではほとん 「そちらの情報もくださいよ」
ど事務所に顔を見せることがなくなった 「わかってます」
る。受付らしきところに大きなポスター
「 松 永 が 言 っ て た 女 か な、 な ん で も す ご
立ち寄ったところで何か取材できる見込 「 よ し、 こ れ に し よ う。 こ れ に 協 力 し た
ない静かな一角にあった。ふらりと立ち
がっている後援者、これでいい。そうい
岩槻政策事務所は市庁舎からそう遠く
い美人だという 」
「ええ、そうなんです」
みはない。こちらの足がつくだけに終わ
えば、石見銀山を支配する大久保石見守
ようです」
「 エ ー ジ ェ ン ト っ て、 そ の 女 じ ゃ な い で
るかもしれないのだ。
が張ってあった。
しょうね」
長安という徳川家康の右腕がいた。これ
寄 る に し て は 人 通 り の 少 な い と こ ろ だ。 『石見ふるさと銀山祭り』
「 そ れ は ス パ イ 映 画 の 観 す ぎ で し ょ う。 「 ま ず い ぞ 」 と、 そ ん な 思 い が ち ら り 磯
もかく、メッセンジャーとしては目立ち
ベッドで秘密を探り出すというのならと
中の様子を窺う。次に、道路の反対側か
物 の 前 を 止 ま ら ず に や り 過 ご し、 ま ず、
崎の脳裏を掠めた。こんな場合、彼は建
だった。事務所の中からなにかを指示す
ドアに手をかけ、開けようとする瞬間
も話題にできるぞ」
すぎますよ。いつ、どこで、誰にあった
54
を返した。見られただろうか、気づかれ
やった磯崎は、電撃に打たれたように踵
る女性の声が響いた。その女にふと目を
対されて、別れたのだという。
たこともあるといっていた。みんなに反
して、彼を追って上京し、一時、同棲し
こういえば、野球を知らない人でもそれ
とつきりで、いつもたいがい空いていた。
ターは一軒しかなかったし、ゲージはひ
去るのが先だったのだ。
よかった。一刻も早く、この場から立ち
ただろうか。そんなことはもうどうでも
ポーションはすばらしく、息を呑むほど
い。ともあれ、やや小柄ではあるがプロ
合ったのか、磯崎は何も聞かされていな
か っ た か。 そ の 彼 女 が な ぜ 篠 山 と 知 り
上京は、まだ二十歳前だったのではな
始める前、野球の練習を家を開ける口実
う。草野球チームのリーダーで、同棲を
バッティングは例の男から習ったとい
るばかりなのだった。
のため彼はもっぱらゲージの外から眺め
はもう、まぐれ当たりの世界になる。そ
磯崎は110キロが精一杯、120キロ
えよう。
がどれほどすごいものか、想像してもら
れ に 気 づ か な か っ た の だ ろ う か。 い や、 かわいい娘だった。
「 そ う だ っ た の か。 池 島 と い う の は、 池
かったが、頭は切れたなあ。編集の仕事
無理もない。もう昔のことだ。佳苗の存 「 お 世 辞 に も 文 章 が う ま い と は い え な
島佳苗のことだったのか。昨日はなぜそ
をあっという間に覚え、我らライター仲
に使っていた。しかも律儀にも、男はほ
それはもう、十五年以上昔のことにな
在が遠くなっているのも当然だ」
間に重宝がられたものだった」
んとうにバッティングセンターへ行った
る。篠山と食糧問題でチームを組むより
も前のことだ。篠山はよく、不思議な若
らしいのだ。それが彼女の天性を目覚め
トラブって家出した新左翼の少女。もっ
サーのように着飾った右翼の少女、男と
グである。小さい体で、鋭いスイングを
のこの才能をいったいどれだけの人が
野球である。というよりも、バッティン 「 で も、 目 覚 め さ せ た と い っ て も、 彼 女
あったなあ」
知っているのだろうか。才能を発揮する
磯崎はあれこれと昔を振り返った。
い女性を連れていた。ラスベガスのダン 「そういえば佳苗には信じが たい特技が
とも彼女は親戚の娘だといっていた。そ
し、120キロのスピードボールをやす
場があったとは思えない。おそらく、グ
させることになった。
してこの、池島佳苗。
やすと打ち返す。
うな気がする。そこで赴任してきた男に
マシーンが置いてあるバッティングセン
当時、新宿で120キロのピッチング
のは一人もいなかったのではないだろう
ラウンドで、彼女のこの才能に触れたも
たしか、出身は北海道。札幌だったよ
恋をした。いわゆる不倫の恋である。そ
55
か」
磯崎はあらためて妙なことを考えてい
のカメラ取材に同行して、沖縄に出かけ
た。モデルを連れて、スキンダイビング
CIA
の謀略
第4章「同志」
をかいちゃったわ。どこかで汗を流して
「 あ あ、 気 持 ち が よ か っ た。 す っ か り 汗
インストラクターになるといって、現地
なかった。石垣島でスキンダイビングの
ところがそれっきり、彼女は戻ってこ
向かった。朝から神戸で大地震があった
合わせると、その足でアメリカ大使館に
と、磯崎と堀田は虎ノ門の喫茶店で待ち
を、 も う 一 度 こ の 目 で 確 認 し て お こ う
「最上階には窓がない」という噂の建物
いかない」
に定住してしまったのだ。そしてほどな
というニュースで持ちきりの、いやな一
の写真をとるために、である。
「ビールでもぐいっとやるか」
く最後の仕事となったレジャー誌が送ら
る自分に気づく。
「いいえ、それよりシャワーがいいわ」
日である。
アメリカ大使館は霞ヶ関ビルの前、日
れてきた。
バッティングセンターに初めて寄っ
グラビアのトップを飾っていたのは連
れて行ったモデルではなく、彼女だった。 本たばこ本社の角を曲がると突き当たり
た、その後であった。磯崎の場合は、こ
れが最初だった。とてもさわやかな、夢
優雅に水中を舞う池島佳苗。天性はバッ
ティング・センスばかりではなかったの
ころは連日のようにデモ隊が押しかけて
に位置する。ベトナム戦争が激しかった
のようなセックスだった。
しかし不思議なことに二回、三回と逢瀬
当時の大使館はバルコニーやポーチの
いた一角で、一九七三年には核マル派の
だが、その彼女が、どうして岩槻政策
ある落ち着いた洋館で、多少とも人のぬ
だ。彼女はとてつもないやつだ、と思う
発であり、そのたびに完結する。なぜそ
事務所などにいるのだろうか。一五年と
くもりが感じられた。が、占拠後、建て
を重ねても、関係が深まるという実感が
うなるのか、磯崎は「もう少し確かめて
いう歳月が流れている。だからその間に
替えた新館は、飾り気のない人を寄せつ
学生たちに占拠されたこともある。
みたかった」という思いを、しばらく引
何が起こってもおかしくはない。とはい
けぬ、寒々としたビルである。
ほかはなかった。
きずっていたような気もする。
うものの、どうにも結び付けようのない
「ほら、あれが噂の十二階だよ」
まったくないのだ。いつもゼロからの出
しかし、その機会は突然失われたので
現実。奇奇怪怪とはこのことである。
堀田が大使館の最上階を指差す。十一
ある。初めて会ったときから一年ほどし
てからだろうか。彼女はあるレジャー誌
56
スペースがある。ここが幻の十二階なの
てその上に、もう一列ガラス窓をはめる
まで数えるのはとても簡単なのだ。そし
なったガラス窓がはまっている。十一階
階 ま で の 各 階 は、 各 階 ご と 一 直 線 に 連
どが埋め込まれているはずだ」
きまい。あの壁の中には電磁シールドな 「CIA本部 に詰めていたと いう わけで
けだ。もちろん、それだけじゃあ安心で
れるのを防ぐには窓をつぶすしかないわ
製のすごいやつがあるらしい。読み取ら
レーザー光を窓に当てて読み取るドイツ
館を出なかった」
い。が、けっきょく長官はアメリカ大使
全部も総力をあげて長官を追跡したらし
の対外情報庁(SVR)や中国の国家安
以前から、何度も目にしたことのある 「 そ う な ん だ。 そ し て、 そ れ が 長 官 来 日
すね」
である。
正確性を期すなら、大使館の最上階は
めてみると、アメリカという国の、のっ 「というと」
の真の理由だった」
ガラスが入っているのは十階までで、窓
ぴきならない緊張感というものがひしひ 「 C I A の 機 構 改 革 だ よ。 長 官 じ き じ き
段違いになっており、
半分は一階少ない。 建物である。が、こうしてあらためて眺
のない十一階がその上に乗っている部分
しと伝わってくる。
る。
壁が、うっすらとピンク色に輝いて見え
例のエズラ・ボーゲルをお供に連れてね」 階に集めたという」
官 は、 細 川、 羽 田、 大 沢 に 会 っ て い る。 知の上で、各地のCIA幹部をこの十二
長官が密かに日本を訪れた。そのとき長
その段違いになっている最上階部分の 「 今 年 の 一 月 二 〇 日、 ウ ー ル ジ ー C I A
中国の諜報員が目を光らせているのを承
だ事でないことはわかるだろう。ロシア、
に指揮をする必要があったのだから、た
が半分ある。
「あの最上階ぜんぶが日本のCIA本部
すね。
一人おいてけぼりを食ったわけだ」 けですか。それで機構改革とは解せませ
になっているという。窓があると中の会 「 な る ほ ど、 竹 村 が 焦 る の も 無 理 な い で 「 危 険 を 冒 し て ま で の 非 常 召 集、 っ て わ
話が外から読み取られてしまう。音波だ
んね」
れだろうな。しかし、長官じきじきの訪 「 そ う だ ろ う。 つ ま り、 機 構 改 革 に 伴 う
けじゃない、電波だって、電磁波だって、 「CIAによる連立政権に対 するてこ入
部屋の中で発生したあらゆる振動は窓ガ
日には別な狙いもあった」
では収まらない、意識改革を要する大規
意識改革だったんだ。形式的な機構改革
ラスに影響する」
「だから窓をはめなかったわけだね」
模な機構改革だったってことさ」
「なんですか、それは」
「 映 画『 ダ イ ハ ー ド 』 に も 出 て く る が、 「 う ん、 当 初 は こ れ が わ か ら ず、 ロ シ ア
57
「 そ れ は 別 に、 今 年 か ら 始 ま っ た こ と で
といっていい」
関から対日経済諜報機関に様変わりした
から駐日のCIA要員は反共軍事諜報機
「 そ う い う こ と だ。 極 言 す れ ば、 あ の 日
ですか」
ヴィエトの周辺からの核拡散の恐れも高
力の巻き返しの可能性もあったし、旧ソ
ない。ロシアの政情も不安定で、保守勢
する、と宣言している。しかし、いくら
A長官が日本の経済情報をターゲットに
のシンクタンク、アスペン研究所が、一
彼が大統領になるに当たって、民主党系
九 三 年 の ク リ ン ト ン 政 権 の 登 場 だ ろ う。
かということだが、やっぱり大きいのは
宣言してみても180度の急転回はでき 「 で、 そ の シ フ ト チ ェ ン ジ が い つ 起 き た
遂行のための訓示を垂れにきたってわけ 「 あ あ、 一 九 九 一 年 に は ウ ー ル ジ ー C I
「 長 官 は C I A 改 革 の 蜜 命 を 帯 び、 そ の
かった。組織を根本的に改めるわけには
通の報告書をまとめている。タイトルは
にはいかない。
た。といっても、キョロキョロするわけ
りをこっそりと窺いたくなる磯崎であっ
いか、尾けられてはいないか、と、あた
い、という雰囲気がありましたからね」
はないんでしょう」
いかなかったわけだ」
て、右左、どちらへ行こうか途惑ってし
は冷戦後の対日戦略レポートだ」
ア メ リ カ 大 使 館 の 正 門 に 突 き 当 た っ 『ライジング・サンを管理する』、つまり
「 た し か に な。 ソ ヴ ィ エ ト の 崩 壊 に よ る
冷戦構造の終焉に伴って、反共の軍事諜
報機関としての役割が大幅にダウンする
だったかな。いや、対日警戒を促す単行
まう。
話に夢中で、打ち合わせていなかっ 「『ライジング・サン』ですか。太平洋戦
人通りはここまでで、この先は右でも左
本が原作だったという記憶もある。日本
とともに、CIAの組織の生き残りをか
従来同盟国だった国々の経済情報の調査
でも歩行者は極めて少ない。そんな場面
争での日本の膨張政策をショッキングな
だったわけですよね。そのなかでも、主
で 怪 し い 二 人 が、 危 な い 話 を し て い る。 に恐怖心を抱かせるにはもってこいのタ
たためだ。いかにも怪しい二人に、衛手
要な標的とされたのが、貿易摩擦でバッ
そう思うと磯崎はなぜか可笑しくて、思
けた転進が始まったわけだ」
シングの対象となっていた日本だといっ
わずにんまりとしてしまう。
出した。実写に交じって、南京虐殺の創
映像で描いたアメリカ映画のタイトル
ていい。たしかに当時は日本を叩くため
が、次の瞬間にはそんな自分に冷や水を
作映像が挟み込まれていたために、日本
「 そ れ が ド イ ツ、 フ ラ ン ス、 日 本 な ど、 が怪訝な目を向ける。
だったらCIAでも何でも使え、そのた
浴びせるように、写真を撮られてはいな
磯崎はむかし観た映画のシーンを思い
イトルですね」
めなら予算をつぎ込んだって惜しくな
58
だ。彼はこの業績によって、クリントン
をまとめたのがジョセフ・ナイという男
緒のかけらもない。この政治版レポート
とすれば、この対日警戒レポートには情
「 そ う、 そ の 単 行 本 が た ぶ ん に 情 緒 的 だ
る。
の一部から反発の声が上がった映画であ
細に再検討したものといってもいい」
レポートはこのローマクラブの懸念を詳
感を表明したという。ナイ=ボーゲルの
ム勢力と西洋キリスト教勢力との文明の
にとどまらない、彼らの青写真にそって
がありますね」
いい、彼らの世界認識には不気味なもの
ローマクラブはその中で、儒教=イスラ 「フリー メーソンといいロー マクラブと
ラブさ。
世界を動かす力を備えているところがあ
れ、アジア傾斜、対中接近に大きな警戒 「 そ う だ な。 未 来 分 析 と か、 予 見 と い う
衝 突 に 警 告 を 発 し、 日 本 の ア メ リ カ 離
る」
があったわけでもなんでもない。
政権下のNIC議長に抜擢された。CI
ない」
A長官に直属する情報機関で、国家情報
文「明の衝突か。『フォーリン・アフェアー 「こうい ってしまうと身も蓋 もないんで
会議というのがその正式名称だ。
そして、 ズ』で 諸
" 文明の衝突 を
" 発表したサミ すが、CIAだって国連だって彼らが世
エル・ハッティントンもハーバード大学 界を動かすためのカードの一枚かもしれ
このレポートの協力者がハーバード大学
の僚友、エズラ・ボーゲルというわけさ」 の教授でしたね。ローマクラブはそれよ
「 そ う と も い え る。 し か し、 佐 久 間 剛 に
か」
ワーや全日空ホテルなど、付近に落ち着
ま ち 六 本 木 通 り に 出 た。 赤 坂 ツ イ ン タ
になる 」
突き当りを右に取ったふたりは、たち
りは日本警戒論を展開していたってこと
へ飛んでしまう。空想とは言い切れない
いると、どうしても話がおかしなところ
スパイとか国際的な陰謀とかを考えて
さ。それを超えたらもうお手上げだ」
リカの国家機関のひとつとしてのCIA
家もな。けれど、おれたちが迫りうるC
りも遥か以前に、日本のアジア化、つま 「 そ う か も し れ な い。 ア メ リ カ と い う 国
るのだそうだ。
ソヴィエト崩壊の三年前、 ける場所はいくらでもあったのだが、こ
言わせればこのレポートには下敷きがあ
うして歩きながら話すのが一番安全なよ
「 そ う す る と、 ナ イ ボ
= ーゲル路線の採
用がCIA、あるいはアメリカのシフト
すでにこの事態を予想して、冷戦後の世
うな気がして、休む気にはならなかった。 のだが、確たる事実もなく、捉えどころ
を失うのである。堀田に「CIAを追っ
IAというのはやっぱりどこまでもアメ
界の問題点をローマクラブが検討してい
といって、もちろん尾けられている気配
チェンジをもたらした、というわけです
る。フリーメーソンとも近い秘密政治ク
59
れだった。
なかったものの磯崎が躊躇ったものがこ
てみよう」といわれたとき、口には出さ
裁に関して、
踏み込んだ協議をしている」 ねえ」
は北朝鮮の核疑惑に対するアメリカの制
話を垂れたことは間違いない。ソウルで
む、これをどう読めばいいんでしょうか
ルジーをエスコートした格好ですか。う
然そうでしょうね」
「 C I A の 内 部 問 題 を 越 え た 何 か、 東 ア
なんだ」
堀田もそれを感じたのか、話はすぐに 「 あ の 時 期、 韓 国 に 立 ち 寄 っ た の な ら 当 「 そ う、 ま さ に そ れ を ど う 読 む か が 問 題
現実的なテーマに戻った。
「 シ フ ト チ ェ ン ジ を し た か ら っ て、 い つ 「裏というのはその話ではない」
ジア全体にかかわる何か、大きなものの
シフトチェンジということですかね」
「 裏 と い う の は あ の 時、 も う 一 チ ー ム、 「 も ち ろ ん 結 論 は 下 せ な い。 が、 こ の 時
よ」
も 使 っ て い な い 機 械 は 錆 び 付 い て い る 「 ま っ た く、 い い か げ ん に し て く だ さ い
し、巨大なマシンは先端までオイルが回
らない」
政権の内部ではアジアにおける軍事経済
深く絡み合っているはずだ。クリントン
との核査察と軽水炉支援の取引合意とも
対中最恵国待遇の無条件延長や、北朝鮮
点でクリントン政権はCIA、というよ
ベンツェン財務長官とジョセフ・ナイN
「 そ れ は も う わ か っ た ろ う。 と こ ろ が 今 「 そ う。 こ い つ は 公 式 訪 問 で、 ロ イ ド・
だってわけですね」
IC議長がタッグを組んでいる。そして
政策のパッケージを『ナイ・イニシアチ
アジア派遣チームがあったということ
回の来日にはもうひとつ、裏がある」
このチームは、バンコクでウールジー=
ブ』と呼んでいるらしい」
「シフトチェンジにしたがって組織をス
「 お や お や、 思 わ せ ぶ り で す ね。 ま だ 何
ボーゲルチームと別れ、北京を訪問して
りナイ=ボーゲル路線に沿って何かを変
か あ る ん で す か、 だ っ た ら そ れ を 先 に
いる。その後、韓国に立ち寄ったといわ 「 ナ イ・ イ ニ シ ア チ ブ で す か。 な に か 日
さ」
言ってくださいよ」
本封じ込めシフトのような気がします
ムースに機能させるための機構改革、意
「 お お、 悪 か っ た。 ウ ー ル ジ ー、 ボ ー ゲ
れるが、これは非公式で、確認は取れて
ね。とすると、アメリカの北朝鮮侵攻作
えようと考えた。おそらくクリントンの
ルのチームは来日する前にバンコクとソ
いない」
識改革、それが一月のウールジーの来日 「 え っ、 ウ ー ル ジ ー、 ボ ー ゲ ル の チ ー ム
ウルに立ち寄っている。ここでもCIA
戦はなんだったんだ、という疑問が生ま
とは別にということですか」
の現地要員を前に、シフトチェンジの訓 「 ナ イ と ボ ー ゲ ル が、 ベ ン ツ ェ ン と ウ ー
60
れます」
「CIAですか」
「そう、その彼をジョセフ・ナイとエズラ・
とホワイトハウスの不一致だとみるべき
フィリピン人民軍対策にマニラに配置換
族、リチャード・アーミテージも加わっ
マコストに請われて参事官に就任。一時、 こにはレーガン、ブッシュ政権下の国防
ボーゲルがワシントンに呼び寄せた。そ
だろう。北朝鮮侵攻作戦はナイ・イニシ
ていたそうだ。いわゆる日米安保重視派
「 単 な る 陽 動 作 戦 で な い と す る な ら、 軍 「 間 違 い な い。 ジ ミ ー・ フ ォ ス タ ー は ア
ア チ ブ 以 前 の 発 想 が 生 ん だ も の だ ろ う。 えされたが、一九九一年、再びアマコス
といってもいい」
軍あるいはCIA守旧派の抵抗の現れだ
訪後、政務担当チーフから経済担当チー
ていい。その彼がこのウールジー長官来
そこでなにが話されたんです」
るんですか。ここからも何か臭いますね。
つまり奴さんはアマコストの懐刀といっ 「共和党の国 防族のトップが 同席 してい
ク リ ン ト ン の ア ジ ア 政 策 転 換 に 対 す る、 ト の 補 佐 官 と し て 日 本 に 復 帰 し て い る。 の重鎮だ」
「 と な る と、 そ の ア ス ペ ン 研 究 所 か ら 出
フに所属換えされている」
ゲルのツーショット写真はこのときのも
る。ところで、例の大沢とエズラ・ボー
「 そ う だ ろ う。 こ い つ は ま も な く 手 に 入
みる必要がありますね」
か。つまり対日敵視でしょう」
徴しているようなもんじゃあないです
が軍事から経済重視に変わったことを象
ということは、アメリカの対アジア政策
担当チーフから経済担当チーフに移った
いうレポートをもっときっちり分析して 「 な ん と 露 骨 な。 大 使 館 の エ ー ス が 政 務
だろう」
ナイ ボ
= ーゲルサイドからの情報に違い
ない。割り引いて読まなければならない
だ。 極 秘 会 談 の 中 身 が 流 れ る と す れ ば、
レポーターもハーバード大学の研究員
その一部がすっぱ抜かれているが、この
「わからん。『フォーサイト』の九月号に
した『ライジング・サンを管理する』と
のらしい。ボーゲルが親しかったのは大
て政治をしているというんでしょうか」
沢よりもむしろ細川だったようなんだ」 「 そ れ だ け じ ゃ あ な い。 さ ら に 大 胆 な こ 「 う う む、 大 沢 め、 い っ た い ど こ を 向 い
とに、CIAはこの七月、大沢をアメリ
が、CIAのトップとにこやかに会談す
「 と す る と、 大 沢 は ア マ コ ス ト の 直 属 と
「 い い や、 そ れ ば か り で は な い。 大 沢 に 「七月といえばもう村山社文 党政権です
る姿を勝手に思い描いて、思わず怒りが
磯崎はマスコミ嫌い、大衆蔑視の大沢
ね。大沢は敗北の責任をとって進取党の
口をついた。
カに呼びつけている」
はアメリカ大使館のエース、
ジミー・フォ
代表幹事を辞した直後だ」
いうわけですか」
スター参事官がついていた」
61
て か ら と い う も の、 尾 行 が 気 に な っ て
田は現れない。アメリカ大使館前を過ぎ
しかし、約束の四時を三〇分待っても春
しいという人物である。
再び虎ノ門の喫茶店に引き返した。ここ
大地震のため、岡山からの電車がすべて
の電話である。早朝、神戸一帯で起きた
いが、今日はキャンセルにしてくれ」と
相 手 は や は り 春 田 だ っ た。「 申 し 訳 な
不審な点は見出せない。
しないという点を除けば、これといって
も、腕時計にしきりに目をやる。どうや
神戸でストップし、帰京できなくなった、 しかも、神戸の被災状況を細かに語る間
て い た か ら で あ る。
『 山 陰 新 報 』 の 松 永 「よし、いいだろう。電話に出てくれ」
で『共合通信』の春田と会う約束になっ
というのである。
ら次の約束を気にしているようなのだ
ことに終始した。
てはいたが、弁解は前回の阪神大震災の
時間に二〇分遅れたことにひどく恐縮し
者然とした姿で現れた。この日も約束の
ダーバッグ。春田はいかにも通信社の記
た 髪、 フ レ ー ム の な い メ ガ ネ に シ ョ ル
こざっぱりしたダークスーツに刈り上げ
である。
しょうがない二人であったが、ほど近い
春田は社命によって須磨から姫路に折り
が、そのことは口にしない。それを察し
磯 崎 と 堀 田 は 六 本 木 か ら 溜 池 を 回 っ て、 男をしばらく観察したが、身動きひとつ
喫茶店で待たされるというのも、何か落
返し、ホテルに宿を取って、そのまま現
お電話でございます」というアナウンス
らすべてのテレビが地震のニュース一色
にみぞうおの大地震であるらしく、朝か
そんなところへ「磯崎さま、
磯崎さま、 地取材にはいっている、という。たしか
の概略をお願いしたい 」と水を向けるに
とどめ、事務的に事が流れるよう、配慮
た わ れ わ れ も、 今
「 日のところはおよそ
から紹介された、行政府の内部事情に詳
ち着かない感じがぬぐえない。
が流れてきた。磯崎がいやな感じで腰を
した。
そうあった。セカンドにもサードにも回
になっている。
情である。キャンセルの電話を入れてく
上 げ よ う と す る と、
「ちょっと待て」と
電話に出る者の様子を窺っている客が
れただけでも感謝しなければならないの
れるショート ス
・ トップ、臨機応変に行
動する遊撃手のことだ。
現地はさぞや大混乱であろう。事情が事 「 春 田 昭 彦、 政 治 部 遊 軍 」 と、 名 刺 に は
いないかどうか、堀田がゆっくりと店内
かもしれない。そして春田は結局、二週
堀田が小声で制した。
を見渡す。怪しい男といえば、新聞を大
たのは一ヶ月後、おなじ虎ノ門でのこと
でも概略、といわれても困りますね。私
現地に張り付いた。そのため彼に会っ 「 い や、 時 間 は 気 に し な い で く だ さ い。
きく広げ、
食い入るように見入っていて、 間、
顔もわからぬやつぐらいだ。堀田はその
62
にはいったいなんの概略なのかわかりま
せんからね」
そうなのである。松永正紘、彼は春田
ですか」
る見返りとして、海外の軍事や麻薬・テ
Aの情報には感謝すべきなんじゃありま
に強力な諜報機関を持たない以上、CI
どを提供してもらっている。日本が海外
「 い や、 そ れ が よ く 見 え な い。 し か し、 ロ、あるいは日本赤軍などの活動情報な
CIAと自治省の間に共通の利益がある
に 大 事 な こ と を な に も 伝 え て い な か っ ような気がするもので ・・・・・
」
た。それでも春田がこうしてやってきて 「 こ れ は ま た 意 外 な 話 で す ね え。 C I A
と自治省ですか。 ・・・・・・・
で、CIAと せんか」
自治省に共通利害があるとして、それが 「 い や そ れ は、 ア メ リ カ と 日 本 の 利 害 が
くれるのだからありがたい。
「 わ れ わ れ は い ま、 こ の め ま ぐ る し く 変
なんなんですか」
一致していることが前提です。そうでな
わる日本の政界の動きにアメリカどう関
ければどんな情報をつかまされるか、わ
そんな中、松永さんにお目にかかったわ
取材を進めています。
す。それに対して松永さんは、操ったの
IAだったのではないか、ということで 「 失 礼 で す が、 あ な た 方 は 日 本 の 構 造 改
関係にありました。再編を操ったのはC
革に反対ですか。日本の官僚支配を放置
与しているのか、その点に興味があって 「われわれの関心はCIAと政界 再編の
けだが、その彼がぜひあなたに会えと言
することに賛成ですか。CIAであれ警
かったものじゃあありません」
う。
いまの行政府の内部対立に詳しいし、 は自治省、ひょっとしたらCIAと組ん
察庁であれ、あるいは自治省であれ、ど
こかがこの国の構造に穴をあける必要が
だ自治省ではないかという。もしそうな
アメリカの関与についてもなにか情報を
もっているかもしれない、
というんです」 らこれは聞き捨てならない情報です」
と自治省の対立はいまどうなっているの
政界再編にどう絡んでいるのか。大蔵省
「 端 的 に い え ば、 政 府 内 の 力 関 係 が こ の
田は小首をかしげて黙っている。
関係がありますよ。
う。CIAと警察庁とは昔から強い協力
治省というよりはCIAと警察庁でしょ
庁と近いのはわかりますが、CIAと自
であれば許せません」
く、アメリカの意を受けて動いているの
警察庁が民意を代表しているならともか
くまでも民意であるべきです。自治省や
長を兼ねています。だから自治省が警察 「 そ う は い き ま せ ん。 穴 を あ け る の は あ
あるんじゃありませんか」
か、それを教えていただきたい」
日本は国内の東側情報をCIAに提供す 「 な る ほ ど、 松 永 さ ん が 言 う 通 り、 あ な
私の説明が要領を得なかったのか、春 「知っての通り自治大臣は国 家公 安委員
「 そ れ と ア メ リ カ と は、 ど う つ な が る ん
63
岡山で松永さんと会っていたのです。私
ね。実は前回のお約束の日の前日、私は
た方は私たちとおなじお考えのようです
では、牧民官が言うところのオオカミ
国民を守る役目を任じていたわけです」
ますけど、内務官僚自身はオオカミから
許認可権限を手に入れる。このトップに
方 事 務 所 を 開 設 し て、 法 律 を 作 っ て は、
の重要ポストを奪い合う。つぎつぎに地
ことなんです。内務省からすれば、戦後
内務省解体後、地方役人に身をやつして
での始まりである。
補助金行政の総元締め、大蔵省が君臨す
とは何か。
するわけにはいかなくなりました。しか
の大蔵省を中心とした支配の構造は、か
復活の機を窺っていた牧民官たちにとっ
たちのテーマはCIAではなく内務省
し、相手は恐ろしく強力ですよ」
わいい羊たちが中央省庁の食い物にされ
る。戦前の内務省詣でに替わる大蔵省詣
「 予 想 は し て い ま す。 と り あ え ず 政 府 内
て い る、 自 治 体 が 食 い 荒 ら さ れ て い る、 て、これらのすべてが我慢ならないこと
だったのですが、どうやらCIAを無視 「オオカミとは利権をあさる 国家権力の
の力関係の中で、自治省がどんな位置に
景に、内務省は復活の足がかりを手に入
なのである。実際、地方のこの不満を背
あるのか、そのことをお話しいただきた
と映る 」
つまり、内務省の地方支配が貫徹して
て整理された話をしてくれた。前半はお
春田はわれわれの要求に対して、きわめ
を取り付けない限り、なにもできなかっ
れる。そのため知事を握る内務省の了解
行政の九割以上が実際には地方で実施さ
財政委員会を統合。地方自治庁を発足さ
内務省の残骸である総理庁自治課と地方
節団が来日すると、日本側の窓口として、
地方財政の健全化を目指してシャウプ使
い」
おまかな歴史だったが、これは松江で松
たからだ。
い た と き は、 各 省 が 内 務 省 に 日 参 し た。 れたのである。
永から聞いた話とよくかみ合っていた。
省だというわけです。牧童といえばいい
するに国民は羊で、それを導くのが内務
前、内務官僚を自称してこう呼んだ。要
牧民官としてのわきまえを身につけてい
なってしまった、というのである。
したため、地方は却って中央の草刈場に
地方自治を実現しようと、内務省を排除
省 や 運 輸 省、 農 水 省 な ど。 そ し て ま た、
り、背後の敵が地方の利権を掠める建設
そして、その際の正面の敵が大蔵省であ
省への脱皮を狙いつづけている。
変身を遂げ、なお、内務省あるいは内政
と こ ろ が 戦 後、 G 2 が 真 の 民 主 主 義、 せたのを足がかりに、自治庁、自治省と
か、牧羊犬といえばいいか。特高警察な
ない他省庁の官僚が知事となり、県や市
「 牧 民 官 と い う 言 葉 を ご 存 知 で す か。 戦
どはそれ自身がオオカミのような気がし
64
これらの経済官庁に巣食った田中派の政
治手法なのである。
「神奈川以外で目立ったところを上げる
治の希薄化だといっておきましょう」
自治省は地方分権を前提とした地方徴税
庁 対 立 の 中 で 最 も 根 の 深 い も の で あ る。
権の確立まで射程に入れながら大蔵省と
と」
「 か つ て は 一 都 一 道 二 府 三 六 県、 そ の 主
しかし、高度成長で財政が潤っている
対決した。
り、 自 治 省 は 財 政 課 長 に 甘 ん じ て い る。
要ポストである知事、副知事、総務部長、 「 山 形 で す。 こ こ は 総 務 部 長 を 大 蔵 が 握
財政課長のほとんどを内務省が握ってい
この状態が続いたんです。でも、いま知
ています。中央による地方荒しの典型で
農水省二、大蔵、通産、運輸各一、となっ
かった。そこに降って沸いたのが臨時行
力 が 群 が る た め、 自 治 省 に 勝 ち 目 は な
ま し た。 解 体 さ れ て か ら も し ば ら く は、 総勢では自治省三、建設省三、厚生省二、 間は、多くの利権が発生し、そこに諸勢
事は一八人で、半分以下です。主要四ポ
政調査会、いわゆる臨調による行政改革
だった。
す」
「この中央シフトがミニ新幹線を実現す
ストをひとつも握っていないのは沖縄県
と神奈川県です」
「 そ う と も い え ま す が、 あ そ こ に は 沖 縄
んだ。それが地方への財源確保。地方交
ともあれ自治省はまず、正面の敵に挑
いといわれていた彼を首相に押し上げた
しょう。風見鶏といわれ、首相の目はな
るなら、土光臨調を始めた中曽根首相で
「CIAとの関係をあえて見つけるとす
開発庁がある。自治省にとっておもしろ
付金の新設と、その増額だった。補助金
のはCIAだ、という噂が強かった」
るパワーになったわけですね」
くないのは神奈川でしょう。神奈川では
中心の財政手当てでは、中央による地方
「やはり沖縄ですか」
自治省の出向ポストは市町村課長ただひ
算出方法を明確にした交付金なら地方の
だし、民自党の総裁選直前に訪米したこ
ガンさんの覚えがめでたかったのは事実
とつ。
ところが建設省ポストは都市部長、 荒 し は 進 む 一 方 に な る。 こ れ に 対 し て、 「 C I A か ど う か は 別 と し て、 彼 は レ ー
河港課長、都市計画課長、国道調整担当
自主財源に当てられるからである。
とが、総裁選での勝利を決定づけたのも
土木部参事、都市総務室専任技官。これ
そして、自治省がこの配分に一枚かむ
ことで、地方に睨みを利かせることがで
が持つ意味はお分かりでしょう」
「田中派ですか」
きる。自治省が交付金の増額を狙い、大 「 そ の 彼 が、 臨 調 で 土 光 さ ん の 参 謀 役 と
確かなようですね」
「 と い う よ り、 あ そ こ は 革 新 知 事 だ っ た
蔵省が押さえ込む、この構図は戦後の省
して、旧内務官僚の瀬島をつけた。そし
ため、田中的政治構造が生んだ内務省政
65
「後藤田さんや秦野さんを厚遇したのも
てもこれは自治省・内務省シフトです」
たわけですか」
た間も、影の総理はずっと変わらなかっ
員に警察官僚を大量に登用した。どうみ 「連立の組換えで、首相がころころ変わっ
て、利権から遠い、として、調査会の委
それまで、聞き役に徹していた堀田が急 「アマコスト・石原ラインですか」
触しなかったとは考えにくい」
です。アメリカがもう一人の実力者に接
メリカが大沢に頼ったのも彼が持つ実権
尻拭いで、党も首相も力がなかった。ア
か」
中曽根首相でしたね」
に言葉をはさんだ。
治省事務次官、警察庁長官が交代で就任
トは旧内務省の持ち回りで、最近では自
といわれる地位を手に入れた。このポス
でしたっけ」
だとして、その時の政務方の副長官は誰
下内閣のとき事務方の官房副長官が石原
どの管理部門が総務庁に吸収され、解体
ば自治省は民生部分が厚生省に、選挙な
のたたき台をつくりました。これによれ
プレーヤーを見落としていたようだ。武 「 昨 年 の 春、 民 自 党 が ひ そ か に 行 政 改 革
「CIA・自治省ラインですね」
「内閣官房副長官は警察庁長官だった後
する官僚の最高ポストになっている。そ
されることになっていたんです」
藤田がこのポストについてから影の総理 「 し ま っ た。 ど う や ら お れ は も う 一 人 の
れまでの影の総理は内政審議室長が握っ 「たしか大沢八郎です」
近は石原だったわけか」
んなものだと思いますね」
て い て、 こ の ポ ス ト に は 大 蔵 省 の ナ ン 「 や っ ぱ り。 と す る と 海 部 内 閣 の 首 相 側 「言われてみ れば自治省の仕事な んてそ
バー2が配属されてきている」
質問で申し訳ないが、いま、誰なんです
トしたというわけですね。で、初歩的な
え ば、 大 沢 の 考 え を 石 原 が 首 相 に プ ッ
と見られています。もっとありていにい
き、首相に国際的な貢献を迫った両雄だ
ていた自治省は烈火のごとく怒りまし
け、内務省復活の足がかりを得ようとし
革で大蔵の財政と金融の分離をとりつ
通産省の誰かだといわれている。行政改
「つまり影の総理も大蔵から内務にシフ 「 そ う で す。 大 沢 と 石 原 は 湾 岸 戦 争 の と 「たたき台を作ったのは橋本のブレーン、
か」
シュした」
た。 民 自 党 の 議 員 一 人 一 人 を 呼 び つ け、
「 こ れ は も う ず っ と 旧 内 務 官 僚 で、 自 治
「だとするとCIAと石原の接触も考え
自治省解体を言うようなやつは選挙で落
省事務次官だった石原信雄です」
「ずっと、というといつからですか」
としてやる、と脅したそうです」
られる」
「 武 下 内 閣 で す か ら、 何 年 前 に な り ま す 「 そ う で す ね。 当 時 は リ ク ル ー ト 事 件 の
66
きた実績もあるわけですしね」
る。内務省は戦前、翼賛選挙を仕切って
ウが過労死したのは全国で組織員が選挙
れに警察ですよ。参議員の村上コータロ
「 地 方 に 張 り 巡 ら さ れ た 自 治 省 人 脈、 そ
力を持ってしまっている」
現実が恐ろしいですね。自治省はそんな
「そういう脅しが通用してしまうという
握るかという戦争なんですね。松永さん
自 党 議 員 の 中 に は 強 く 刻 み 込 ま れ て い 「 つ ま り、 ど っ ち が カ ー ド 制 の 主 導 権 を
違反で挙げられたため、という話は、民
によれば五分五分だとか」
カード制を導入しようと考えた」
金保険の国民年金保険への統合を許さな
うんなら、自治体職員が加入する共済年
省の意を受けて動いたのは金丸と春日一 「・・・・・・」
入に成功した。ところが実施直前になっ
い、と脅しました。そして、年金事務以
幸です。以来、大蔵は厚生省の年金番号 「 も っ と も、 地 震 以 前 か ら 勝 負 が つ い て
て自治省につぶされてしまいます。自治
外には使わない、という念書を採ってい
に 対 し て 自 治 省 は 住 民 票 に 番 号 を 振 り、 省に迫って、年金番号を年金以外にも使
を基礎としたカードに期待します。これ
る」
が勢いを増しています」
と、自治省のツボにはまったような議論
です。というのも、国民総背番号制をめ
のブレーンを大蔵の役人だと考えたよう
けです。もっとも、自治省は当初、橋本
「橋本のブレーンがトラの尾を踏んだわ
きたわけですね」
した」
コンピュータシステムは壊滅的な状態で 「番号制とカ ード制が将来の行政 の基礎
ストをする予定だった芦屋、尼崎両市の
きましたが、厚生省のカード制の実用テ
淡路大震災だったのです。私も取材して
かね」
で、そこまでするのはどうしてなんです
ですね。たかがカードのヘゲモニー争い
いようのない出来事、それが先日の阪神 「 役 所 間 で 念 書 を 交 わ す と は、 す ご い 話
いた、ともいえるんです。自治省は厚生
「自治省がなり振りかまわぬ反撃に出て 「 い や、 自 治 省 の 勝 で す。 神 風 と し か い
ぐって、自治省と大蔵省は見えない戦争
「実用テストができなくなってしまった」 これを握ったところが官庁の中の官庁の
になる、という基本的な読みがあります。
の最中だった」
では限界がある、内務省が必要だ、といっ 「たしかにそ れが省を超えた共通 番号や
地位を確実にする」
と自治省のカードの違いですね」
た声が挙がって、耐火性のカードがあれ
「松永さんが言っていた厚生省のカード 「 そ う で す。 そ の 上、 広 域 防 災 に 国 土 庁
「 そ う で す。 納 税 番 号 が ほ し か っ た 大 蔵
ば も っ と 迅 速 な 身 元 確 認 が で き た の に、 るなんてことは考えられませんね」
共通カードになれば、主管庁が解体され
省は一九八五年にグリーンカード制の導
67
たせる」
「 そ し て も う ひ と つ、 自 治 省 の 宿 願 が 果
まったく知らなかった」
「水面下でそんな戦争があったんですか。 カードシステムはいずれ私たちの完全支
ニーを自治省には渡せない」
配に向かう。それを誰かが阻止しなけれ
トを重んじる。彼らがコントロールする
「なんですか、それは」
ばならないんです」
は将来の日本のあり方に決定的な影響を 「 つ ま り、 プ ラ イ バ シ ー と か 自 由 へ の 関
「 地 方 徴 税 権 で す。 地 方 徴 税 権 の ネ ッ ク 「 み ん な 知 り ま せ ん よ。 で も、 こ の 帰 趨
は具体的な税の徴収で、地方税にしても
それに警察による取り締まりがそれを可
国税庁に拠らない徴税法もあります」
号を持つ道が残っている。だから、自治
「 そ の 通 り。 車 検 制 度 と ナ ン バ ー 登 録、 ことです。大蔵としてはまだ、独自の番
「自動車ですね」
省としては大蔵に独自の番号制を持たせ
「 厚 生 省 の シ ス テ ム に 対 し て は、 と い う
「で、自治省の勝ですか」
してきた。そこで人が目を向けない自治
うちにアメリカと防衛庁、自治省が浮上
れるようになったのか。その疑問を解く
のか、日本のシステムがなぜ急に批判さ
別でした。日本経済がなぜ急に失速した
「 い や、 そ れ も あ る が そ も そ も の 出 発 は
心なんですか」
能にした。このシステムは自治省が警察
ないように動くはずです」
国税庁の権限に依拠しています。
しかし、 与えます」
庁と運輸省を巻き込んで作り上げたもの
聞 け ば、 そ れ が 悪 い こ と と は 思 え な い。 「私たちって、松永さんのことですか」
省をウォッチングすることになったんで
むしろ必要なことだと思いますが」
で す。 そ こ で で す、 人 が 番 号 を 付 さ れ、 「春田さんたちが自治省にこ だわってお
法律や取り締まり方次第では、税を納め
「文字通り、そうであるならいいんです。 彼も無縁ではないんですが、別なグルー
す。が、わたしたちもCIAを見落とし
ずには町も歩けない。そうなれば国税庁
プがあるんです。そのメンバーには近々
られるのはなぜなんですか。田中的利権
は無用になりますね」
で も、 実 際 に は 旧 内 務 省 に よ る 失 地 回
お引き合わせすることになると思いま
カードを持たされたらどうなります」
「 そ う で す よ。 す ぐ に そ ん な こ と は で き
復、戦前回帰になりかねない。大政翼賛
す。今日もこれから、彼らに会うんです。
ていたわけではありませんよ」
ないでしょうが、自治省にはそこまでの
会的な息苦しい取り締まり社会はごめん
それとも、よろしかったら行ってみます
「人が自動車並になるということですか。 政治から訣別し、地方分権を進める、と
展望がある、ということです。それがわ
です。彼らはバランスよりもパーフェク
「 い や、 そ う で は あ り ま せ ん。 む ろ ん、
かっているから大蔵省はカードのヘゲモ
68
取り付けますから」
か。そうであればさっそく電話で同意を
と、すべてはオフレコで記事にはしない
と、今日は留守で許可は取っていないこ
学界のこの傾向はいずれ官界にも及ん
でくる。
心のあらましを話し、堀田にレクチャー
夕 食 を 済 ま せ、 タ ク シ ー に 乗 り 込 ん だ。 また、その上で、会のCIAに対する関
ナ ー キ ズ ム の 許 容 で は な い の か。 会 の
経 済 活 動 に 対 す る 国 家 の 敗 北、 金 融 ア
本 の 元 蓄 積 段 階 へ の 退 行 で は な い の か。
こと、などを手短に伝え、了承を求めた。 しかしそれは実のところ、政治の死、資
行き先は帝都大学経済研究棟。その一室
を依頼した。
磯崎と堀田は春田に案内されるままに
に水島経済政策研究室はあった。
広い。とはいえ、未整理の資料が山済み
うことで、大学の研究室とは思えぬほど
室がほとんど独占的に使用しているとい
たところを会議室用に改造し、水島研究
研究室である。以前は軽食コーナーだっ
政策を提案する水島邦彦帝都大学教授の
日本型マネジメントによる日本型福祉
ミ ッ ク ス 」 を 評 価 し「 日 本 型 経 済 運 営 」 ドデザインを描いたのが自治省ではない
れ始めると、日本の学界でも「レーガノ
ストによる「日本特殊性論」が持ち出さ
で日本叩きが強まり、ファンダメンタリ
い う。 と こ ろ が 七、八 年 前 か ら ア メ リ カ
勉強会で、定まったテーマはなかったと
し、中央省庁に就職した人たちの自由な
溝口によればこの会は水島ゼミを卒業
が防衛庁と警察庁、そして、そのグラン
の拡大、あるいは縮小の防止に努めたの
IAである。また、その威を借りて勢力
因を探るうちに浮き上がってきたのがC
なぜこんなことになったのか。その原
テーマは次第にそこへ絞り込まれていっ
になっているところなど、いかにも昔な
を見直す声が高まった、という。
紹介された。春田よりやや年上、四〇少
である研究室助手の溝口幸一という男に
磯崎たちはまず、この会議のまとめ役
ているという。つまり、福祉型の社会調
彦のようなケインズ経済学にも及び始め
学の凋落を決定づけ、その余波は水島邦
また、ソビエトの崩壊はマルクス経済
ズ経済学も選別が厳しくなって、いまや
トラで、マルクス経済学は全滅。ケイン
の口が決まったという。が、大学のリス
幸い溝口は来年、地方大学での助教授
のか、というのである。
たという。
がらの研究室然としている。
し前だろうか。長身で、ややがっしりし
死活的な状況なのだ、と笑った。
五人。通産、大蔵、厚生各省のほか、J
こ の 日 の 出 席 者 は 春 田 と 溝 口 の ほ か、
整論さえ「古い」と決めつけ、市場原理
う。
絶対の競争論が幅を利かせている、とい
たスポーツマン・タイプの男である。
溝口はまず、この会は秘密会であるこ
と、 通 常 は 水 島 先 生 の 許 可 が 必 要 な こ
69
この事実をつかんだジョンソンも、退
前回の会合での課題報告があったあ
一九四七年の『国家安全法』で、CIA
これを護るためにつくられたのが
だのがニクソンで、その一端が暴露され
れていました。この影の政府と手を組ん
しましたが、その部分は放送から削除さ
とこれへのイギリスの投資を意味しま
と、堀田がCIAについてのレクチャー
は国家安全法で特権を与えられた軍産複
たのがウォーターゲート事件です。この
ETROと国会図書館の職員が参加して
を行った。大沢八郎など、具体的な名前
合体の利益を保証する諜報組織だといっ
ときの世論が、CIAに非合法活動を許
任直前に演説をし、事実を公表しようと
を上げることを避けはしたが、みな熱心
ていい。
さないという箍をはめることになりまし
す。
に耳を傾けていた。
CIAは発足と同時に、同じく軍の通信
いた。
「 C I A の 前 身、 O S S は イ ギ リ ス の 支
大戦が終れば当然解散すべきものだっ
GCHQ(政府通信本部)とともにUK
を傘下に収め、イギリスの通信諜報機関
がすものです。もし、ウォーターゲート
ソ連の解体はCIAの存在基盤を揺る
援 に よ っ て 作 ら れ た 戦 時 諜 報 組 織 で す。 諜報機関だったNSA(国家安全保障局) た。
た。ところが、大戦によって空前の利益
事件がなかったら、CIAは非合法の謀
略を仕組んででも、新たな存在基盤を作
USA同盟を結ぶことになります。UK
とはユナイテッド・キングダム、USA
を上げた軍事産業はその利益の継続を目
指して軍産複合体(ミリタリー・インダ
の創出です。だからこれを合法的にやら
り出したはずです。すなわち、仮想敵国
この軍産複合体は影の政府としてアメ
なければならない。そうでなければ膨大
はいうまでもなくアメリカです。
連 を 仮 想 敵 国 に し た 準 戦 時 体 制 を 維 持。
リカをコントロール。これを利用したア
ストリアル・コンプレクス)を組織。ソ
トルーマン・ドクトリンによって、これ
な予算を獲得できない。
そうしたとき選ばれたのが経済大国・
イゼンハワーもそのパワーに恐怖し、退
任直前『軍産複合体に気をつけろ』とい
を正当化します。
トルーマン・ドクトリンとは『平和よ
も辞さない、というものです。
あらゆる統制を排除するためには戦争を
の手によって暗殺されます。
ディーでしたが、その結果、軍産複合体
メ ス を 入 れ よ う と し た の が J F・ ケ ネ
壊以前からCIAは日本、西ドイツ、フ
日本である必要はない。事実、ソ連の崩
織への転換、という意味でなら必ずしも
りも自由』
、経済の自由な活動を保障し、 う メ ッ セ ー ジ を 残 し ま す。 こ れ に 応 え、 日本です。軍事諜報組織から経済諜報組
ここでいう経済活動とはアメリカの産業
70
やっていた。日本、ドイツの資料はソ連
ラ ン ス の 技 術 関 連 情 報 の 収 集、 活 用 を
と、次のことが言えます。
イムスにすっぱ抜かれた意味を考える
一九九五年一月三日から五日付けの『産
川 宗 之 が 新 聞 の コ ピ ー を 配 り 始 め た。
には及ばぬものの、中国など他の共産圏
ングのよさ、などから見てもすっぱ抜か
これは連邦予算の策定時というタイミ
経新聞』と、一月六日付けの『共同』配
と比べても見劣りしない、という話もあ
れたのではなく、CIAの側から意図的 「なぜたて続 けにCIAなの かわ かりま
るのです。これはおりしも巨大な貿易赤
新たな仮想敵として格好の標的となりう
考え方にとって、日本の経済システムは
ためには戦争をも辞さない、というあの
です。一切の経済統制を排除する、その
す。そうです、トルーマン・ドクトリン
さんはすでにお気づきのことと思いま
トンへの政権交代が象徴するもの、それ
の崩壊とレーガン、ブッシュからクリン
はないということを意味している。ソ連
アメリカがすでに軍産複合体の掌握下に
クする必要があったということ。それは
なレポートをまとめる必要があり、リー
にリークされたものといえる。つまりは
局の活動概要」と題するもので、主にオ
また『共同』の記事は「CIA東京支
装要員のことだ。
や軍人などの公式身分を持たない民間偽
オフィシャル・カバーの略で、大使館員
た男のインタビュー。NOCとはノン・
CIAでさえも、議会対策のためにこん 『 産 経 』 の 記 事 は 元 C I A・ N O C だ っ
議会対策です。
フィシャル・カバーの活動を紹介してい
た」
せんが、気になるのでコピーしてきまし
信記事である。
ります。
字で悩むアメリカの国民感情とも一致し
をもっと正確に読まなければならないこ
では、なぜ日本か。ここにおいでの皆
ました。
る。
る が、『 共 同 』 に よ れ ば「 一 等 書 記 官 の
東京支局は東アジアを活動範囲にしてい
とを意味しています」
一 九 九 一 年、 C I A は『 ジ ャ パ ン
二〇〇〇』という日本レポートをまとめ
第5章「脅威」
肩書きを持つ東京支局長以下、在京大使
CIAの謀略
といっていいでしょう。以後、CIAは
館、 大 阪 総 領 事 館 に 外 交 官 を 装 う 要 員、
ますが、これがCIAの対日宣戦布告だ
これにそった対日諜報活動を行ってい 「 堀 田 さ ん は こ の 記 事 を も う ご ら ん に
要員ら、大手米企業駐在員を装った民間
横田、横須賀、座間などに米軍との連絡
そういってJETRO職員の長谷
る。 す な わ ち、 産 業 ス パ イ で す。 で も、 なっていますよね」
この極秘レポートがロサンジェルス・タ
71
偽装要員の合計約六〇人で構成」されて
ロケット、人工衛星といったハイテク技
メ リ カ は そ う 見 て い な い。 た と え ば
純 粋 な 商 業 情 報 機 関 で す。 し か し、 ア
工科大学に委託してつくらせた研究レ
術の軍事転用の可能性などが上げられて
また「企業としてはセラミックの京セ
ポート『ジャパン2000』ではこんな
いる、という。
六〇人というのは八〇年代のもので、現
ラ、カラーテレビのシャドーマスク技術
ことを言っている。
一九九一年二月、CIAがロチェスター
在(一九九五年)は八〇~一〇〇、ある
を持つ大日本印刷のほか、ロケット、人
「この数字は私のデータと少し違います。 いる。
いはそれ以上ともいわれています」
『 共 同 』 の 記 事 は と も か く、『 産 経 』 の
Aだといわれている。補佐官、副領事と 「
カ大使館の経済担当官はほとんどがCI
「 記 事 を 補 足 し て い く と、 現 在、 ア メ リ
記事を見てください。ここで、私らのこ
とある。
済支配の陰謀を企てている』
集団主義思考が強い日本人が世界的な経
やりたい放題。道徳心や人権意識に欠け、
テムを利用して米国内の経済諜報活動を
菱重工、
石川島播磨が調査対象になった」 産省やジェトロ、さらに商社の情報シス
工衛星技術等を持つ宇宙開発事業団、三 『 日 本 は 全 米 一 五 の 領 事 館、 外 務 省、 通
いった肩書きにもCIAが多い。八〇年
とがやたらに持ち上げられている。元N
堀田豊が自信ありげに答えた。
代の情報だが、六〇人のうち一三人がい
O C 氏 は『 ジ ェ ト ロ 日
( 本 貿 易 振 興 会 ) だからニューヨークのジェトロ事務所を
は真の商業情報機関であり、CIAが弱 日本の産業スパイの巣だと見て、FBI
わゆるNOCだった。この他に単発契約
の民間人がいて、一定の活動を依頼され
い北朝鮮の情報に関し極めて正確だっ
が常時監視を続けている。そしてCIA
ている。これをDCO、ダイバースファ
のスパイ活動もわれわれに対する対抗
ジェントを抱えているが、そのほとんど
そして、そのほかに八〇〇人ほどのエー
彼がそんな仕種をするのか、他の参加者
のコピーを手の甲で叩いて見せた。なぜ
長谷川はそういって、苦々しげに新聞
られているので、こうした防諜活動は基
CIAはアメリカ国内での活動を禁じ
イ ド・ カ バ ー オ フ ィ サ ー と 呼 ん で い る。 た』といっています」
は日本人だそうだ」
には皆目わからず、きょとんとしながら、 本的にFBIが担当する。
上、必要だと主張しているんです」
『共同』の記事はCIAの活動の一端に
彼の次の言葉を待った。
ロを敵視していることをおくびにも出さ
「このインタビューではCIAがジェト
触れており、ターゲットとして高品位テ
レ ビ、 半 導 体、 新 素 材、 通 信、 原 子 力、 「 い う ま で も な く、 わ れ わ れ ジ ェ ト ロ は
72
こんどはCIAの活動も、われわれの活
ず、われわれを持ち上げている。そして
用しているらしいんです」
く虎ノ門のジェトロ・ライブラリーを利
いう。
「天城会議は一企業のメセナーにはとど
ある。知っていますか、天城会議という ( 臨 教 審 ) に 専 門 委 員 を 出 し て い る。 日
まるものではありませんよ。一九八四年、
本 の 教 育 を 考 え る の に な ん で I B M か、
動同様の一般的な情報収集であるかのよ 「 い や あ、 彼 ら の 活 動 に は さ ま ざ ま な 形
こんなの、悪い冗談としか言いようがな
やつ。まあ、さまざまな問題をテーマに
と思うのですが、知識人の心をくすぐる
中曽根首相が設置した臨時教育審議会
い」
し た 知 識 人 会 議 な ん で す が、 企 業 メ セ
う な イ メ ー ジ を 打 ち 出 し て 見 せ て い る。 態があるが実に悠長というか、ゆとりが
「 元 N O C さ ん は、 C I A の 情 報 の 八 ~
ナーの一種ですね。企業のトップや役人、 という日頃の会議の活動が、こういう形
春田の言葉には参加者みんなが驚きの
で生きてきているわけなんです」
九割は国会図書館や政府刊行物センター
に教育者を集めた天城学長会議というの
で 集 め ら れ る 情 報 だ と い っ て い る け ど、 マスコミ関係者などが参加してます。別
本当かしらね」
声を上げた。
あのビルに入っている米国IBM直属の
か。六本木にある日本IBM本社の西館、
のNOCを抱えているんじゃないです
も持っていますよ。
館 で 調 べ た わ け じ ゃ あ な い だ ろ う が ね。 催は日本IBMですが、実態は明らかに
「 嘘 じ ゃ な い だ ろ う。 も ち ろ ん 国 会 図 書
CIAの宣伝活動です。みんなそれとな
コンサルタント会社・IBMアジア・パ
国会図書館司書の杉井美紗だ。
CIAはまず、目をつけたエージェント
くわかってはいるんですが、なにか直接
シフィックですか、あそこなんかもうC
日本IBMが伊豆に持っているすばらし 「 I B M は す ご い で す ね。 あ そ こ は 大 量
にその種の価値の薄い情報を集めさせ
要求されるわけではありませんから、顔
IAとおなじ仕事をしているといっても
それに堀田が答える。
る。そのほうが安全だからね。そうした
合わせに行くんです。実際、休養にもな
い宿泊施設で開かれるんで、もちろん主
結 び つ き を、 時 に は 何 年 に も 渡 っ て 続
ように建っていながら、正面には通用口
いいようなものです。六本木を見下ろす
厚 生 省 統 計 局 の 大 貫 隆 一 だ。 コ ン
しかなくて、正門が裏手の本館に向かっ
るし勉強にもなりますからね」
ピュータに関連した新技術や国際的な情
て開いている。八角形の奇妙なビルです。
け、ごくごくたまに価値ある情報にあり
二割の情報にあるわけさ」
報を逸早くつかむにはいい会議なのだと
つく。問題は非合法的に集められる一~
「 そ れ は そ う な の で し ょ う が、 彼 ら は よ
73
どこかそぶりが変なので、
どちらさんか、 財官、それにマスコミ、知識人たちが群
う ア ポ が 入 っ た。 そ れ で 待 っ て い る と、 定説でしょう。しかも、それを承知で政
金融政策のことで説明を聞きたい、とい 「CIAのピーアール機関だ というのが
つがきましたなあ。アメリカ大使館から
「 そ う い え ば、 ボ ク の と こ ろ に も 妙 な や
んですがね」
発支援、ガイダンスを行っている会社な
平洋地域一八か国の営業、サービス、開
いちおう日本をはじめとするアジア、太
金源はいまだに謎です」
ない大変な接待費を使っていますが、資
ているようですよ。個人ではとても賄え
雄が主催していた集まりで、情報収集に
めに、こんなふうに帰国をお願いするし
ただ日本の場合、適当な取締法がないた
イ に 自 主 的 に お 帰 り 願 っ て い る ん で す。
るオフィスを急襲し、一〇人を越すスパ
活動があまりにも露骨だというんで、あ
ます。
役人も多く参加していて、各省揃っ 「 公 安 調 査 庁 も 一 九 八 八 年 に、 N O C の
熱心な政治家や財界人が沢山参加してい
かない。また、それを公表することもで
クしていました」
以前、後藤田さんはウォルフレンをマー
き な い ん で す 」「 一 〇 人 も の N O C が い
がっているのだから驚きです」
と聞くと、わけのわからん研究所の名前
「そういえないから、苦しい」
フィックだとしか考えられませんね」
た と な れ ば、 そ れ は も う ア ジ ア・ パ シ
再び水越と中川のやりとりになる。
をやってたんでしょう」
を言うんです。名刺は、と聞くと、持ち 「 久 保 田 と い う の は『 椎 の 実 会 』 の 顧 問
合わせていない、と答える。何度かやり
取りしたら、
ようやく名刺を出しまして、
事件でも彼との関係でやられたやつが少
と い う 道 も あ り ま す よ ね。 こ れ は 違 法
て つ き 合 っ て、 利 用 さ れ ず に 利 用 す る、
それがIBMなんです。本当の社員かど 「 彼 は 怪 し げ な や つ で し た。 リ ク ル ー ト 「 そ れ に 日 本 人 側 だ っ て、 そ れ と 知 っ て
なくない。NTTルートはそうじゃない
じゃないでしょうから、マークはむずか
うかはわかりませんがね」
のかな。だけど、事件発覚後、久保田は
しい。石原慎太郎とジミー・フォスター
通産省の水越亨と大蔵省の中川伸一の
やりとりだ。
ぱったりと姿を消した」
の関係がそうでしょう」
「 大 沢 と ジ ミ ー・ フ ォ ス タ ー の 関 係 も そ
うだという人がいますね。しかし、これ
が、
内閣調査室は動いてなさそうですよ。 はもうまったく違う。主張の一部がアメ
「警視庁の公安は多少やってるようです
マークしているんでしょうか」
「 怪 し い 人 物 に 対 し て、 警 察 は ち ゃ ん と
「 そ う い え ば、 あ の『 椎 の 実 会 』 と い う
のはなんなんですか」
幹事役の溝口幸一が口をはさんだ。そ
れに大貫が答える。
「あれは日本IBMの社長だった椎名武
74
手をこうむる日本の企業にどう説明がで
いるんじゃないですか。ジェトロはすご
すが、この機会にぜひ、ボクの通産省に
は例のJETRO男の長谷川だった。
題、湾岸戦争への対米貢献、モトローラ
自宅まで盗聴されている。電話に雑音が
リカ寄りなんじゃない。すべてです。次
通信方式への周波数帯割譲 ・・・・・・・・・
い
まさらなにを、というレベルの話です」
おける印象をまとめておきたい。残れる
きるものやら」
「 あ れ に は 参 り ま し た ね。 羽 田 の あ と、 混じる、音量が突然下がる、なんてこと
人だけでけっこうですので、ちょっとお
期 支 援 戦 闘 機 F S X の 共 同 開 発 修 正 問 「 通 産 省 は ど う な ん で す。 相 当 や ら れ て
自陣営に竹村がいたのに、
彼を棒に振り、 はみんな経験しています」
つきあい願えませんか」
シ ン ト ン に 転 勤 に な っ て 家 を 借 り た ら、
通産省の水越が、なにか思いつめたよ
いですよ。ニューヨーク事務所の職員の 「 み な さ ん、 そ ろ そ ろ 終 了 の 時 間 な ん で
民 自 党 の 海 部 元 首 相 を 新 総 理 に 担 い だ。 「 そ う い う 話 は う ち で も 聞 き ま す よ。 ワ
湾岸戦争で、すっかりお世話になった見
本の国会はここまでアメリカに侵されて
「 ア メ リ カ 一 派 の 旗 揚 げ 興 行 で す か。 日
いったいなんだったんです」
してただ一人、海部に投票した。あれは
民自党の中曽根元首相が党議拘束を無視
も変な話だ。JETROさんはそんな目
て気づかれないでしょうね。それにして 「われわれも 参加させてもらって もいい
しかし、
いまの技術からいえば、盗聴だっ
けです。
いですから、尾行して家を突き止めたわ
んの話を聞くことにしましょう」
うから一端休憩して、あらためて水越さ
の会の趣旨です。お帰りの人もいるだろ
人もいます。アメリカには住民登録はな 「もちろん自 由な参加と自由な討 論がこ
うな顔をして、溝口の同意を求めた。
いる、というのを世界に披露して見せた
に会いながらも、アメリカ企業の日本進 「もちろんです」
返 り、 と で も い う ん で す か ね。 そ の 上、 一週間で電話の変調が始まった、という
ようなもんですよね。なんともお恥ずか
出のお世話をしている」
堀田の質問に、水越と溝口が同時に答
のですか」
しい」
に活発となり、もう、誰がなにを話して
ません。政府のお手伝いならともかく民
ない仕事がある。申し訳ないが帰ります。
が、どうしても帰ってやらなければなら
伝いをする国なんて、聞いたことがあり 「 通 産 の 話、 私 も 大 変 興 味 が あ る ん で す
えた。
いるのかを区別するのがむずかしい状態
間の企業活動なんですからね。進出で痛
溝口が口をはさんでから、会議は一気 「 ま っ た く で す。 外 国 の 商 業 活 動 の お 手
になった。それをまた、軌道に戻したの
75
彦が出て行ったほかは、誰も帰ろうとす
レザーコートの襟を直しながら、春田昭
す。二つの事件は結局、アメリカが考え
うので、ずいぶんと話題になったもので
行政指導 が
><
> あったのを覚えておい
ででしょう。英語の辞書にも載ったとい
前から、CIAは同盟国に対する経済ス
さんがいわれる、ソ連崩壊よりもずっと
から八〇年代の初頭のことですよ。堀田
います。ケーシーCIA長官の時代です
事を盗聴していたことが明らかになって
るものはいない。ほどなく、水越の話が
る日本の強さの秘密、すなわち
またぜひ、話をお聞かせください」
始まった。
査陣の限界に歯噛みし、アメリカの捜査
い憤りを覚えていましたから、日本の捜
まだ学生でした。権力者の不正には激し
キード社の代理人・児玉誉士夫と田中・
じられます。
事実、ロッキード事件でロッ
社 に
> 大打撃を与えることになった。
そこにはアメリカの何らかの意図が感
われています。OPEC(石油輸出国機
行方を突き止めるために始めた、ともい
動は一九七三年、中東のオイルマネーの
一説によれば総合商社に対する監視活
パイをやっていたことになります。
総
< 合商
協 力 に 対 し て 心 か ら 拍 手 し た も の で す。 小 佐 野 の 関 係 を 暴 い た チ ャ ー チ 委 員 会
構)に対する対抗措置だ、というわけで
「 ロ ッ キ ー ド 事 件 が 起 き た と き、 ぼ く は
大学を出て、通産省に入省してまもなく (委員会は児玉を軍国主義的極 右政治勢
す。まあ、理屈はいろいろつけられるも
のですがね」
起 こ っ た ダ グ ラ ス・ グ ラ マ ン 事 件 で も、 力の著名な指導者とよんだ)は児玉が笹
川良一と並ぶ、戦後日本の二大黒幕であ
は少し間を開けた。しかし、その間に口
大商社の不正に許しがたいものを感じて
たことを明らかにした。
をはさもうとするものは誰もない。改装
ここまで一気にしゃべってから、水越
つまりあの事件は児玉と笹川のボス争い
されてはいるものの古い建物なので空調
ると同時にCIAのエージェントであっ
件 は い ず れ も ア メ リ カ が 発 火 点 だ っ た。 なんかじゃなく、CIAとチャーチ委員
の具合がよくないのだろう。少しけぶっ
いました。
会の暗闘とその痛み分け、日本に矛先を
てきたものか、溝口が立って、窓を少し
もちろん不正は不正で、裁かれるべき
アメリカが問題にして、日本の捜査陣が
向けけることで両者が妥協した結果の手
なんですが、いま思えば、あの二つの事
動いた。その結果なにが起きたか、それ
開けた。寒気が隙間風になって会議室を
ちされましたが、CIAは別に、三菱商 「ぼくが アメリカに対して決 定的に見方
舞った。
打ちだったのです。
通産省
><
二つの事件で丸紅と日商岩井が狙い撃
を考えると見えてくるものがあります。
総
< 合商社
当時、日本の強さ、技術力、輸出力の
強さを示すものに
76
この事件で、アメリカは何を手に入れ
化の要求として出てきたし、先ほど話し
れています。NTTに対しては分割民営
は叩く日本企業としてNTT、トヨタ自
密情報を不法入手した容疑で日立製作所
たんでしょうか。産業スパイは許されな
ていたリクルートの関連もそうかも知れ
者、 日 本 で は 許 さ れ な い お と り 捜 査 で
と三菱電機の社員を逮捕した事件です。
い 行 為 な ん だ よ、 と い う メ ッ セ ー ジ で
ません。富士通、NECに対しては知的
を変えたのが一九八二年六月のIBM産
たしかに、IBMに忍び込み情報を盗
しょうか。だとすれば、それは両刃の剣
所有権の問題(IBM富士通著作権紛争)
動車、富士通、NECの四社が名指しさ
み出すという日立と三菱の社員がやった
です。CIAもまたダメージを受ける。
や半導体の市場占有率(シェア)の割譲
あったことも明らかになっています。
行為は犯罪です。重大な犯罪、といって
そうではなく、実際に起きたのは通産
業スパイ事件です。FBIがIBMの機
もいい。しかし、
逃亡の恐れも何もない、
ヨタに対しては、いま大詰めを迎えてい
省の権威失墜でした。それも日立、三菱 ( 日 米 半 導 体 協 定 ) 要 求 が そ う で す。 ト
に後ろ手錠をして、
カメラの前にさらし、 にIBM互換路線をとらせた通産省の行
る日米自動車協定の延長交渉がその一環
犯行を認め、反省しているサラリーマン
政指導のあり方が問われた。業界を指導
叩く、というのとは違いますが、CI
世界に放映する必要がはたしてあるので
保護貿易、不公正競争の典型として非難
A は こ の 間、 京 セ ラ に ず う っ と 興 味 を
だといえるでしょう。
これが重要な外交問題になりうること
されるきっかけを開いた。通産省はその
持っていまして、新素材、とりわけ、セ
し、補助金を注ぎ込む日本のシステムが
を、アメリカ政府も認識していたはずで
得意技において弱みを握られてしまっ
しょうか。
す。ということはあのテレビシーンもま
ラミックの自動車エンジンの開発で日米
視してきたのも事実です。ハイテク技術
た。この立場はその後の構造協議へと引
日本の強いところを叩け、これがアメ
の開発組織の構成、研究開発内容、予算
たアメリカ政府が事前に演出したことだ
知ってのとおり、事件には最初からシナ
リカの経済再生の秘策だったように思い
規模、開発部門の住所、役員の氏名等の
間で溝が開けられないようにずうっと監
リオがあった。IBMから資料を盗み出
ます。
情報を常にフォローしていました。
き継がれていきます。
し、両社に売り込んだ男、わざわざ一部
実は、おなじころ、これを指示したCI
と考えて間違いありません。
に欠損のある資料を渡し、欠損部分を手
Aの秘密レポートがあるのです。そこに
一九八七年四月、いわゆる東芝ココム
に入れたいと思わせた男がFBIの回し
77
東芝機械がCOCOM(対共産圏輸出統
違反事件が勃発します。東芝の子会社・
そして、その基準を守らせるために、ア
ものがあるから、保護や育成といった操
かの操作です。自然に任せてはおけない
決め、
同盟国に押し付けているものです。 説法のようなものですが、政治とは何ら
リカの論理です。
メリカが警視庁を利用し、警視庁がそれ
盟関係か、と、自分で自分を納得させま
そ し て い ま、 通 産 は 何 も し な く な っ た。
制委員会)で規制されている工作機械を
東芝機械に対して共産圏諸国に対して一
したよ。ところがいま、アメリカは何を
通産省はいらない、特許庁と公取委(公
作を加える。ところが、通産の行動はす
年間の輸出禁止処分を課すほかなかった
やっていますか。勝手に米中和解を演出
正取引委員会)だけあればいい、なんて
に応えた。これをいったいどう考えたら
のですが、アメリカの世論はこれに納得
し、基準を緩和して、中国に禁止されて
いう自嘲的な声も聞こえてきます。反対
ソ連に輸出したとして、警視庁が捜索に
せず、親会社の東芝製品の輸入禁止にま
いた電子機器を輸出し始めている。こん
にアメリカは通産省の手法を大胆に取り
べて自由競争の妨げになる。これがアメ
でエスカレート。CIAのターゲットは
なばかなことがありますか。日本政府は
入 っ た 事 件 で す。 結 局 通 産 省 と し て は、 いいんでしょうか。そのときはこれも同
最初から東芝本体にあったのでしょう
一九九三年九月、クリントンは産官合同
す。
入れ、あらゆる保護育成策を講じていま
てもらわなければならない。そうでしょ
が、
このやり方はあまりにも理不尽です。 FBIに通報し、アメリカ政府を逮捕し
CIAは七九年以降の旧東欧圏での東
芝 の 活 動 を 徹 底 し て 調 べ て い た の で す。 う。
の未来車プロジェクト(PNGV)をぶ
そして件のリクルート事件です。分割
いわゆる監視行動です。しかしそこに不
T T に 対 す る 揺 さ ぶ り の ひ と つ と し て、 ( G M、 フ ォ ー ド、 ク ラ イ ス ラ ー) と 六
ち上げました。これは自動車のビッグ3
の省庁(エネルギー省、運輸省、商務省
正はなかった。
そこで子会社を引っ掛け、 を免れ、強力な事業体として存続するN
親会社を巻き込んだ。もっともこんな制
CIAが仕掛けたものと見えなくもな
で燃料効率三倍のクルマを開発しようと
裁をはねつけられなかった通産は自国の
こうしたことを通じて何が起こったの
いうものです。このやり方は今後、高効
など)六つの公立研究所が協力して十年
か。世界に冠たる通産省の存在意義の消
率モーターやバッテリー、超軽量新素材、
い。
滅です。ここで皆さんに話すのは釈迦に
産業を保護育成するどころか、不当な要
求から防衛することもできなかったこと
を意味する。
ココムの規制基準はアメリカが勝手に
78
入れた。いや、もうすでに日本を脅かす
はもう十分に日本を迎え撃つ体力を手に
ものじゃないですか。その結果、自動車
スーパー三〇一条だって、保護主義その
ルなどにも広げて行くという。
高性能コンピュータ、半導体、液晶パネ
がえる。
満を漏らしていた様子がありありとうか
て板に水。普段からも省内で、同様の不
たのだが、ココム事件になるころには立
たり思いを確かめるように話を進めてい
のに変わってきた。考えに考え、ひとわ
誰かが質問した。
んですか。抗戦論ですか」
存在、このままでは日本の主力メーカー 「 と こ ろ で、 日 米 自 動 車 交 渉 は ど う な る
が倒されます。
それなのになお、自動車の対米輸出自主
『NO!といえる日本』ですか」
規制の延長ですか。しかも今度は半導体 「
なに簡単じゃないから水越くんも悩んで
並に数量規制をしろという。自主規制で 「 茶 化 さ な い で よ、 そ ん な 言 い 方。 そ ん
は生ぬるいという。半導体交渉で数量を
いるんじゃないの」
この声は図書館司書嬢の杉井だ。
盛り込んでしまったのがまずもって間違
いだったわけですが、自動車にもこれを
産省はいらない。アメリカ商務省の外局
でしょう。このままではもう、本当に通
対して、どこまで卑屈になれ、というの
本はもう後退しすぎました。アメリカに
要求をのめばまた次の要求が始まる。日
賛意を取りつけるだけでなく、具体的な
る。たとえばヨーロッパ諸国に、単なる
まだやらなければならないことが沢山あ
い。ところが、です。そのためにはまだ
見は一致している。会談決裂をも辞さな
は絶対に阻止するという点で、省内の意
「 そ う な ん で す。 す く な く と も 数 量 規 制
で十分です」
提案をしてもらうための根回しをすると
適用しろという。
水越の口調は次第に熱を帯び、力強いも
か、相も変らぬ対米一辺倒の外務省に新
しい時代認識を植え込むとか、WTOへ
の提訴の準備を終えておくとか。自動車
課(機械情報産業局)を超えて、全省が
一丸になってことに当たらなければなら
ないことは多いんです。けれども省内で
はそのための態勢がまったく取れていな
い。
それどころか、去年の局長辞任の後遺
症が今でも続いていて、省内派閥の対立
が解消されていない。進取党の政権下で
熊谷通産大臣が次期事務次官候補の内藤
(正久)産業政策局長に辞職を求めたあ
の事件です。その報復に村山内閣の橋本
通産相は進取党に近い熊野(英昭)事務
次 官 を 切 り ま し た。 本 人 は 自
"主 辞
"任
だといってますがね。
ま
> たは
反
< 棚橋派 、
>民自党・
省内では進取党・大沢に近いグループを
四
< 人組
梶山に近いグループを 棚
< 橋派 と
>い
うんですが、いまだに怪文書が出回って
79
きています」
ルを検察に垂れこむ、という騒ぎまで起
手陣営の局長の業者との癒着スキャンダ
は、右往左往している始末。ついには相
ので、その取材のため、磯崎は久々に通 「通産、通産、通産 ・・・・
」通産の人物ファ
イルはそう多くはない。すぐ水越亨とい
で結んだ大合唱が企画されているという
ピックで、世界五大陸をインターネット
四年後に行われる長野の冬季オリン
た。
て、磯崎は記憶の人物ファイルを手繰っ
いが、どこかで会った男のような気がし
「 と す る と、 こ う し た 交 渉 の 局 面 を に ら
「いや、ないとは言い切れません」
地下食堂を利用したものである。その地
省庁を訪れた者も、何かにつけて通産の
も品質のよさではずば抜けた評判で、他
通産省は以前から官庁街の食堂の中で
上 げ な け れ ば な ら な い。 地 下 鉄・ 霞 ヶ
ず、世間を騒がせた地下鉄サリン事件を
この間にもいろいろなことがあった。ま
室で会って以来、四カ月が過ぎている。
う名前がヒットした。帝都大学水島研究
「その四人組にCIAの影はないのかな」 産省を訪れた。
んで送り込まれたエージェントとも考え
下食堂も新館建設に伴って一変し、いま
関駅を通過する上下五本の電車内で毒
堀田が尋ねる。
られる」
や 一 級 の レ ス ト ラ ン 街 で あ る。 ク オ リ
5500人以上が重軽傷を負った(三月
「 考 え ら れ ま す が、 そ れ は ち ょ っ と 飛 躍
の内庭が前面ガラス張りで望める通路が
二 〇 日 )。 以 後、 始 ま っ た オ ウ ム 真 理 教
ガ ス・ サ リ ン が 撒 か れ、 6 人 が 死 亡 、
やはり大沢・梶山(静六)の八‐六戦争
あり、レストラン街にいるかぎり、ここ
の捜査の過程で、再び、内務省復活の声
ティーの高さはもちろんだが、明り取り
ではないでしょうか。それに大沢流のア
がお役所の地下であることを忘れてしま
が大きすぎるように思います。ベースは
メリカ型政治論が結びついた結果だと思
が上げられた。
破綻した東京協和・安全の二信組救済に
う。
磯崎はいつものように中華レストラン
いますが」
「 思 い 過 ご し な ら ば い い が。 何 派 で あ る
エ ー ジ ェ ン ト が 必 ず も ぐ り こ ん で い る。
る。その片隅に公衆電話が一台置いてあ
通産には新館と旧館を結ぶ通路があ
された(三月十三日)事件も注目される。
が明るみに出て、蔵相を含む七人が処分
東京協和の前理事長と東京税関長の癒着
都 が 乗 り 出 す こ と へ の 不 満 が 高 ま る 中、
用心するに越したことはないと思います
るのだが、その電話に向かって、背を丸
また、影の総理・石原信雄が民自・社文・
で昼食を済ませた。
よ」
めている男がいた。後姿なので自信はな
かどうかはともかく、通産にはCIAの
「はい、ぼくもそう思います」
80
治省が満を持しての選挙戦であったのだ
推薦を受け、東京都知事選に立候補。自
さきぶれ・自連の与党各党および公正の
あとで彼のところに寄って下さい。ええ 「大蔵四 〇年 体制論」が出現 するに至っ
きの大蔵省の男ですよ。時間があったら
退庁後、中川くんに会うんです。あのと
大 蔵 分 割 論 ど こ ろ か 大 蔵 解 体 論 も 現 れ、
きかった。
縄)制覇作戦」は挫折したのである。
OKYO(東京・大阪・京都・横浜・沖
月九日)
。 自 治 省 が 民 自 党 と 進 め た「 T
入口を持つ時代がかった建物だ。完成し
モダンな建物とは対照的な、アーチ状の
で、通産省新館の向かいにある。明るい
大蔵省は霞ヶ関の中央通りをはさん
体制だ、というものである。これはまた、
遺物。自由主義経済、市場原理に反する
送船団方式 等
> は、戦時中の統制経済下
でつくられたもので、建物同様、戦前の
護
<
と、これが彼の名刺です」
そしていよいよ四月十二日、ワシントン
たのは一九四三年なので、まさに戦時中 「日本型社会 主義」という言葉に よって
た。すなわち大蔵省の得意技である
が、青島幸男にあえなく敗れ去った(四
のアメリカ商務省で、日米包括経済協議
の建造物だというわけだ。
「 お 久 し ぶ り。 い ま は 忙 し い 最 中 じ ゃ な
てから声をかけた。
なので、
やや距離を開けて、
終るのを待っ
電話に聞き耳を立てると思われてもいや
議員辞職を表明した。
る日本』の著者・石原慎太郎が、なぜか
た。 そ し て そ の 二 日 後、
『 N O! と い え
義男主計局次長は東京協和の売春接待
部の不正が発覚したのだ。とりわけ中島
そうした中で、二信組救済をめぐり、幹
海外からの信用をも失った。
況に打つ手を持たず、内需拡大を求める
メージはない。バブル崩壊後の長引く不
悪く、官庁の中の官庁という輝かしいイ
大蔵省も通産省と同様、最近は受けが
大蔵省の入口はどう見ても地上一階だ
ではないだろうか、という疑問である。
叩く と」言った水越の言葉が気にかかる。
これもまたアメリカの日本たたきの一環
し、 で あ る。 ア
「 メリカは強いところを
感できる部分が少なくはなかった。しか
徴収制度もそのひとつで、磯崎にも、共
サラリーマンから納税者意識を奪う源泉
問題化された。
の焦点であった「自動車交渉」が始まっ
いんですか。自動車交渉、日本もけっこ
( ノ ー パ ン し ゃ ぶ し ゃ ぶ ) を う け た 上、 が、公式には地階。したがって、六階建
チ状の正門の左の柱に 大
「 蔵 省 、」 右 の
柱に「国税庁」の看板が掲げられている。
てに見える建物も、五階建てである。アー
う突っ張ってるじゃありませんか」
「いやあ、それがどうも ・・・・
、ちょっと 公務員法に違反する副業を行い、不正蓄
こ こ で は ・・・・
。 庁 内 か ら は 電 話 も で き 財・脱税をしながら、依願退職で済ませ
な い あ り さ ま で。 あ あ、 ち ょ う ど い い。 てしまったことに対する国民の怒りは大
81
かったが、ただ「取材」である旨を言っ
面 会 の 趣 旨 を 告 げ る。 こ れ と い っ て な
左手に入るとすぐ受付があって、ここで
い」などと思ってみる。
が、磯崎は「これが曲者なのかもしれな
うがないのである。
もノーパンしゃぶしゃぶとは結び付けよ
未確認情報もあったのだ。
島佳苗が石原選挙事務所に入ったという
気づいたからだ。岩槻の政策事務所の池
ぶ し た の で、 ま も な く 五 時。
「すぐ退け
霞ヶ関の政府出版物センターで時間をつ
うなりました、あの評論家先生は。たし
こで時間をつぶしましょう。ところでど
になるといってましたから、もう少しこ
「 や あ、 お 元 気 で す か。 水 越 は 七 時 こ ろ
なぜかまだやっていない。
わ せ れ ば 簡 単 に 済 む こ と だ っ た の だ が、
この確認は知り合いの議員秘書に問い合
議員会館に詰めている、という話もある。
その後、彼女は大沢の議員秘書として、
て、主税局・中川伸一に連絡をとっても
るので、食堂で待っていてください」と
か磯崎さんが追及しておられたんでした 「 と こ ろ で 磯 崎 さ ん、 私 も ね え、 あ れ 以
らった。
い う の だ が、 こ ち ら の ほ う は 通 産 と 違
したんです。アメリカは強いところを叩
来考えてみたんですが、こんな結論に達
よね」
ほどなく中川が現れ、おなじセットを
い、ゆったりくつろぐという気にはなれ
ない。
く、というあの水越の説ですよ。あの説
が正しければ、アメリカのターゲットは
注文した。
ことだろうが、いまやそのスペースには 「 い ま、 都 財 政 を 立 て 直 す に は 行 政 の プ
大企業、民自党、通産省、大蔵省という
古い建物なので、天井もさぞや高かった
ロが必要だ、という論調で、盛んに石原
の関係は謎のままです。そういえば、宗
そしてまず、大企業がやられた。次に
がっちりと空調ダクトが埋め込まれてい
今だったらもう少しましな改装をするだ
像という岩槻鉄人の市長選挙とおなじ選
民自党がやられ、通産省がやられた。と
ことになる。これが日本経済を支えた四
ろう。よく見れば空調の鉄板が剥き出し
挙参謀が石原陣営に加勢したという未確
る。
しかもそれ自体がもう古いのである。 信雄の応援をしていましたが、CIAと
のところさえある。
す れ ば、 次 は 大 蔵 省 と い う こ と に な る。
本柱です。
「 ビ ー ル・ セ ッ ト 」 な る も の を 頼 む と、 認情報もあります」
は前回の集まりでは出ていない」ことに 「東京協和の接待汚職ですか」
小さなジョッキに、これまた小さな冷奴 「 そ の う え ・・・・
」 と 話 を 接 ご う と し て、 と い う よ り も、 も う そ の シ ナ リ オ は 始
磯 崎 は 躊 躇 し た。「 そ う い え ば、 こ の 話 まっている。そう思えてならないんです」
と枝豆がついてきた。どこをとってもお
よそ贅沢とは縁のない庁舎構造で、とて
82
「 い や、 あ れ は 明 ら か に 国 内 的 な 問 題 で
そこそやっていたら、そりゃあやられま
省ももっとガラス張りにならないと。こ
け評価をすること自体は必要だと思いま
す が、 そ う い う 直 接 的 な 問 題 で は な く、 すがね」
円高攻勢だとか、
金融自由化、
そしてビッ 「気になるのはそのタイミングなんです。 すよ」
するのは問題でしょう。結局は天下りに
「 だ か ら と い っ て、 護 送 船 団 方 式 を 維 持
いくことになる、ということです」
グ バ ン ・・・・
そうしたものが日本経済を
弱体化させ、大蔵省の存在意義を奪って
当てするのを待つ。そのチャンスを与え
ふつうに行われていた。早く自主的に手
は穴埋めの一時的代替策として日本では
坂の小さなクラブで、和服の似合うママ
行った。中川と水越がシマにしている赤
た し か に 違 法 に は 違 い な い が『 飛 ば し 』 る だ ろ う と た か を く く っ て 指 定 の 店 に
問 題( 九 二 年 三 月 一 日 ) も そ う で し た。
が、手伝いの若い娘と二人で切り盛りし
大和證券のニューヨーク支店の不正申告
つながる」
ていた。
七時ということだったが、多少は遅れ
「それはおっしゃる通りかもしれません。 る。これが日本的風土の中の慣行、武士
す」
の考え方の中には、こうした信用が持つ
つでしょう。しかし、アメリカ的格付け
る。アメリカが嫌う系列だってそのひと
の営業力にはさまざまなファクターがあ
しかし、たとえば企業の、あるいは銀行
的でしょう。大蔵省が大和の不正を隠す
本 の 企 業 は 振 り 回 さ れ よ う と し て い ま 「 む し ろ あ れ は、 最 初 か ら 大 蔵 叩 き が 目
力は含まれない。その格付けに、いま日
と予想して、隠すのを待っていた」
見計らったようにやってくる」
ういうイメージが定着するタイミングを
なく、大蔵省も信用できないぞ、と、そ
と、バッサリくる。大和證券ばかりでは
それに対して、情けをかけるのは違法だ
の情けというやつです。
い知らされる。
艶もないものであることをあらためて思
声が追ってきて、今日の集まりがなんの
ら「よう、きたか」という水越の野太い
合わず若やいだものだったが、すぐ後か
しゃいませ」というママの声は容姿に似
う な す が し い 香 り に 包 ま れ た。「 い ら っ
り、扉を押すと、ひばの樹のにおいのよ
なんの飾り気もない急な階段を上が
「 た し か に 何 か の 意 図 を も っ て、 勝 手 な
入 口 の 左 手 が す ぐ カ ウ ン タ ー バ ー で、
その奥に白木造りの間仕切りで仕切られ
格付けの見直しをされてはたまらないで 「 そ う し た こ と が こ れ か ら も 増 え る ん
すよね。タイミングによってはいじめに
た三つばかりのボックス・シートがある。
じゃないかと心配しているんです」
もなる。でも、グローバルな基準で格付 「 そ う か も し れ ま せ ん ね。 し か し、 大 蔵
83
イがね。しかし、それと両グループの誹
ていた水越とともに、奥のボックスのひ 「 や は り い る よ う で す。 通 産 の 中 に ス パ
トローラの自動車・携帯電話への参入要
わったものです。この隙を攻められ、モ
め、 ア メ リ カ の 報 復 を 恐 れ る 論 調 に 代
しかし、数日するとその熱はすっかり冷
日本のマスコミは最初、熱狂しました。
「今日は驚いたでしょう。ぼくも驚いた。 謗中傷合戦とが重なってしまって、なに
とつを占領した。
を信じていいのやら、まったくわからな
と、身を乗り出して話し始めた。
でも、あんなところから電話していたお
い 状 態 に な っ て い る。 や つ が ス パ イ だ、 求に屈する結果になる。これを演出した
まだ客は誰もおらず、カウンターに座っ
かげで、こうして会うことができたわけ
という噂を流す者もありますからね」
のがカンター通商代表と大沢八郎です。
です。いや、もう通産省は完全におかし
が、ぼくのような一匹狼は純粋な仕事以 「なにか、心当たりでも」
仲 間 で 周 り を 固 め て い る も の は 別 で す 「そういうことです」
の じ ゃ あ な い。 ど ち ら か の 派 に 属 し て、 活動している、というわけですか」
TOの場に持ち込まれる可能性が高かっ
た。しかし、打開の道はなく、問題がW
本当の決裂ではなく、仕切りなおしだっ
察知し、待っていたのだと思います。が、
い。どこで誰に話を聴かれるか知れたも 「つまり、スパイが中傷合戦を隠れ蓑に、 このときもCIAは首相のNOを事前に
外で職場の電話を使うことができないん 「 ま ず は、 い ま 大 詰 め を 迎 え よ う と し て
た。
は完全に日本の味方。日本が勝利し、スー
いる自動車交渉について、順を追ってお
ご存知のように今回の自動車交渉は二
パー301条は二度と抜くことのできな
です」
年前に始まったものです。そして、昨年
WTOの場に持ち込まれればヨーロッパ
「 そ う な ん で す。 た か が 中 川 に 連 絡 し て
の二月、
つまり一九九四年の二月十七日、 い宝刀になります。そのほうがスッキリ
話しましょう。
いただけなんですけどね」
ぼくが前に『すくなくとも数量規制は絶
「それであんなところから電話していた
「 お れ へ の 電 話 が た か が、 か ね。 お ま え
細川 ク
= リ ン ト ン 会 談 で、 輸 出 削 減 量
を具体的な数字で示せという数量規制の
対に阻止する点で、省内の意見は一致し
んですね」
のガス抜きにとって、なくてはならない
要求に対して、細川首相が初めてNOと
たのは、その覚悟ができている、という
してよかったのかもしれません。
電話なんじゃないのかね」
ている。会談決裂をも辞さない』と言っ
決
<裂
言 っ た。 歴 史 的 な
わけです。
「はは、そうかも知れませんね」
」水越は足を組替える
・・・・
が
> 起こった
「ところでね
84
五月の四日にバンクーバーでのカン
まざまな揺さぶりをかけ始めたのです。
に 自
< 主プラン な
> るオプションを策
定すると、アメリカの態度は一変し、さ
するはずです。ところが、日本側が密か
ケを負うことになるので、舞台裏は緊張
はずでした。決裂は双方にとって重いツ
通産相の会談でも、決裂含みで推移する
だから、今度のカンター通商代表と橋本
ことを含んでのことだった。
始まっても、それに対応できる省内事情
かに手打ちの旅です。アメリカの報復が
ブに飛び立ちましたが、これはもう明ら
上がるでしょう。大臣は今日、ジュネー
の。 自
< 主プラン オ
> プションをはさん
だ攻防戦が始まり、やがて日本に白旗が
こうなればもう、ペースはアメリカのも
たのです。
庁内は探りあいの修羅場と化してしまっ
のWTO提訴取り下げがバーターされた
文書が発表され、対日制裁の解除と日本
なった。双方の解釈がずれたまま、合意
対日制裁が発動される直前の歩み寄りと
合意を見せ、NEC(国家経済会議)の
橋本・カンター会談は三日目にようやく
結局、この水越の懸念は的中した。ジュ
です」
反 し て い る。 こ の 点 が 今 後 ど う な る か、
に関する電話ができない、話ができない。 だ、アメリカの解釈はWTOの方針には
ぎりぎり突っ張った、という筋書きだけ (六月二十八日)。
ネーブのアメリカ通商代表部で行われた
タ ー・ 橋 本 会 談 が 物 別 れ に 終 る と す ぐ、 にはないからです。
クリントンが「強硬措置」を示唆し、決
裂 後 の 六 日 に は 国 家 経 済 会 議( N E C ) はしっかりと書いて、妥協です。 自
< 主 クリントン大統領はこの数字を早くも
が、日本への制裁リストを公表。日本の プ ラ ン と
> い う の は 何 ら か の 数 字 で す。 「数値目標」として国の内外にアピール。
規制ではないにしても、何らかの数字の アメリカ中部六州のいわゆる自動車州を
に違いない、漏らしたのは誰だ、スパイ
これはもう、オプションを知られている
反撃を繰り出してきた。
ど、日本の手の内を見透かした、余裕の
米航空交渉での対日制裁をぶつけるな
世界に玉虫色はない。合意文書に書き込
でも、
通用するのは国内でだけでしょう。 して、CIAに真っ先に感謝状を手渡し
と解す。日本、お得意の玉虫色です。
までもアメリカの自主的想定に過ぎない
を数量規制と解し、日本はこれを、あく
書き込みを受け入れる。アメリカはこれ
カンター通商代表は、交渉の勝利に感謝
また、このアメリカの外交的勝利の直後、
固めに走った。
中心に、翌年の大統領選再選にむけた票
WTO提訴(五月十七日)に対しては日
はどいつだ、という探りあいが始まるの
みを認めた日本の言い分は通じない。た
この噂を伝え聞き、さすがの通産省も
た。
も無理はありません。おかげで、この件
85
章「反撃」
『 ニ ュ ー ヨ ー ク・ タ イ ム ズ 』 が「 日 米 自
るものは何も発見されなかった。
かけたのである。しかし、盗聴機に類す
室を中心に盗聴防止のスクリーニングを
はあったが、いちおう局長クラスの執務
油を注いではまずいので、密かな調査で
兵による少女暴行事件に抗議し、日米地
おなじ日、沖縄では九月四日に起きた米
聴事件は収束を見せた。
代 表 に 対 し て、 大
「 変 不 愉 快 だ 」と の 不
快感を表明。それだけで、このCIA盗
機会を捉え、橋本通産相はカンター通商
て、一〇月二一日、四極通商閣僚会議の
この、CIAのとんでもない所業に対し
いる。
ていたことを、NBCテレビが報道して
使のホテルから日本への電話が盗聴され
それに、すっきりしたら、まずかじり
る。
ぼけ状態の頭を引きずっていることもあ
洗面の途中であることもあれば、まだ寝
イドリング時間と重なるからだ。
がない。そのため、起床時間が遅くなり
事を進めるので、定時の出勤というもの
近くに仕事場を借り、自分のペースで仕
を、あまり真剣に見ることがない。自宅
磯崎正太郎は朝のワイドショーなるもの
第
動車・同部品交渉のジュネーブでの最終
位協定の見直しを求める総決起大会が開
つくのはその日の新聞である。これに目
CIAの謀略
局面で、CIA東京支部と、国家安全保
かれ、五万八〇〇〇人が参加して騒然と
を通さぬ限り、一日が始まらない。
トン会談でも、根回し役であった木内特
障局(NSA)の電子盗聴装置を使って
していた。
もっとも、この日(一九九五年一〇月
放っては置けなくなった。両派の対立に
通産省首脳と自動車メーカー担当者など
何 か が 変 わ る、 変 え な け れ ば な ら な い。
二 二 日 ) は 少 し ち が っ た。 昨 晩 の 深 夜
実はこのCIAによる盗聴記事はすで
ところが、一九九五年一〇月十五日の
だった。
自動車メーカー各社でもおなじ結果
との会話を盗聴して、カンター通商代表
そんな思いが人々の心の中に芽生え始め
ニュースで橋本通産相がカンター通商代
表に「不快」を表明した、と簡単に報道
がちで、ワイドショーの時間帯が朝のア
に報告していた」ことを報じた。
たとき、再び大沢が登場した。
に『 ロ サ ン ゼ ル ス・ タ イ ム ズ 』 が 七 月
すなわち、アメリカの代弁であった。
なにしろCIAが通産省を盗聴してい
るかもしれないと思ったからだ。
定には手をつけず、運用で解決すべきだ」 されたのだが、その詳報が取り上げられ
二三日付で報道していたのだが、これに 「アメリカ海兵隊はなお必要だ」「地位協
は日本のマスコミも気づかなかった、と
いうお粗末もある。
またしばらくして、前年の細川・クリン
86
6
基地移転でお茶を濁そうというわけか」 「やっぱり内 部から何かをす るの は無理
なようです。磯崎さんのようなひとに動
な い。 磯 崎 は あ く び を か み 殺 し な が ら、 いてもらわないと」
憤りを覚えるのだが、まだ眠気が抜け
明 」だけでは収まらない、具体的な要求
がなにかきっとあったはずだと思うのは
次のニュースを待った。しかしいっこう 「 い や い や、 わ た し に で き る こ と な ん て
た、という重大事件だ。簡単な 不「快表
当然のことだろう。
あることを勘案しても、異様というほか
沖縄が東アジアで戦略的に重要な位置に
縄に集中しているという事実は、いくら
するとそのとき、ハンガーに吊るし、鴨 「ぜひお願いします、助かります。では、
取った。
ぼくのほうで中川には連絡を入れておき
や む な く、 い つ も の よ う に 朝 刊 を 手 に 「そうですか、そいつはありがたい」
ら の 外 電 が 取 り 上 げ ら れ る 様 子 は な い。 れば、と、考えていたのは事実です」
なにもありませんよ。でも、何かしなけ
はありませんね。沖縄県民の怒りはよく
居にかけたままの上着のポケットで、携
ますので、近いうちに打ち合わせでもや
に四極通商閣僚会議に関するイギリスか
理解できます。もっと日本全体が防衛を
帯電話が鳴った。
れたら」
「アメリカ軍基地の七〇パーセントが沖
分担するという意識を持たなければいけ
「堀田だろうか、それとも水越」
「堀田に相談してみます」
ません。
どちらも磯崎から電話しようかと思って
「 そ う で す ね。 ま ず い こ と が 出 て く る こ
話してもご迷惑ではないのですか」
「 不 快 表 明 」 の ニ ュ ー ス を 聞 い た 後、 「 わ か り ま し た。 と こ ろ で 水 越 さ ん に 電
と再発することのないよう、早急に手を
いた相手だ。
と同時に、少女の痛ましい事件が二度
打つ必要がありますが、地位協定の見直
何とも情けない限りで。どうやらあの『大
川を連絡役にしておきましょう。細かい
しともなると実現までに相当な時間がか 「やあ、磯崎さん、水越です。まったく、 とがあるかもしれません。とりあえず中
かると思います。より現実的な対策が必
ことは追ってまた」
携帯を常用していない磯崎は、いつも
変不愉快だ』という表明だけでおしまい
のようですよ。省内にも、これ以上追及
要なのではないでしょうか」
昨日、沖縄の宜野湾市で開かれた、沖
「 本 当 で す か。 予 想 は し て い た が、 そ れ
再度通電するのである。このときも、堀
端電源を切ってしまう。それから慌てて
の習い性で、通話が終るととりあえず一
でもひどいですね」
縄 県 民 総 決 起 大 会 の 映 像 が 流 れ る 前 で、 しようとする声はほとんどない」
篠山啓志がニュース解説をしている。
「 篠 山 め、 結 局 は、 防 衛 分 担 と い う 名 の
87
を下げれば兄貴みたいになれると錯覚し
ほかなくなった」
田に電話するため、慌てて電源を入れな
Aの活動に対する評価は厳しいですから 「だから兄貴を悪くは言わない」
ている」
間に電話がかかってきた。堀田からであ
ね。当然、日本も何らかの報復を考えて 「言えない」
おした。するとタイミングよく、その瞬 「 フ ラ ン ス を 始 め、 ヨ ー ロ ッ パ で は C I
る。
き、政府は何も動こうとしなかった。マ 「日本もCIAの諜報活動に 対する厳し
CIAによる盗聴が明らかになったと
い対応を見せなければ、国際社会で通用
瞬で解読されるようですから」
れば、スクランブルがかけてあっても一
と私のどちらかがマークされているとす
だからといって安心はできない。あなた
「 お い、 聞 い た か い、 あ き れ た も ん だ。 いるんだろう、それを聞きたい、という 「 こ れ か ら 時 間、 あ り ま す か。 携 帯 電 話
スコミにせっつかれるかたちで野坂(官
しなくなるだろう。主権国家とはとても
質問だったんでしょうね」
房長官)
( 浩 賢 ) が し ぶ し ぶ『 外 交 ル ー
いえない」
「 そ の 通 り だ な。 こ れ か ら 例 の と こ ろ で
トで事実関係を照会する』と国会答弁し
ただけだ。そんな照会にアメリカが答え 「 そ れ こ そ、 大 沢 の 言 う『 ふ つ う の 国 』 落ち合うとしよう」
磯崎と堀田は、また代々木にある喫茶
店で落ち合った。フロアが広く、照明が
ですね」
「 一 応 事 実 な ら 捜 査 機 関 が 対 応 す る、 と 「 ほ ん と う に、 な ぜ あ い つ ら が こ う い う
自然光に近いため、奥が暗い店である。
るわけがない」
ときに鳴かず飛ばずなのかが不思議でな
言ってますがね。野党の国会質問も形式
的なら、
政府答弁も形式的。馴れ合いで、 らない。本当なら先頭に立つべきだろう 「これはアメリカの情報専門誌『マザー・
ジ ョ ー ン ズ 』 の 九 五 年 五、六 月 号 だ。 か
に」
怒りの影もなかった」
いつまんで言うとこういうことだ。ほら、
この前の水島研究室での通産省の水越の
「昨日の橋本の抗議もそうだったようだ。 「 彼 ら の 正 体 が は っ き り し た、 と い う こ
春田の話では、通産の担当記者からの又
発言を覚えているだろう。クリントンが
とでしょう。それだけです」
聞きだが、橋本はそもそもこの件で抗議 「 そ う だ な。 あ い つ ら は 結 局、 兄 貴 が ぶ
駄々をこねているにすぎないわけだ。兄
堀田が雑誌を示しながら解説する。
をしているという、あの話さ」
するつもりはなかったそうだ。
ところが、 ら 下 げ て い る 腰 の 拳 銃 を 欲 し が っ て、 産官共同で燃料効率の高い自動車の開発
外国の記者から質問を浴びて、抗議する
貴はどこまでもカッコよく、自分も拳銃
88
「PNGVプロジェクトですね」
感じがしたな」
ますね」
フランスの『ル・モンド』紙によれば、 「 つ ま り、 そ れ を 作 ろ う、 と い う 声 が 出
リー)
の非公開技術を密かに入手し、
ビッ
開発中の燃料電池(電気自動車用バッテ
連してCIAが日本の自動車メーカーが
当という非公式カバーを纏った女スパイ
だめだ。スパイ防止法は確か、一九八五
い側近に狙いを定め、環境団体の広報担 「 ま あ、 そ う い う こ と だ ろ う が、 あ れ は
を入手するため、パラデュール首相の若 「『スパイ防止法』ですね」
CIAはフランス政府の通信分野の情報
年、中曽根内閣時代に民自党の右派宗教
「 そ う、 そ れ だ。 そ の プ ロ ジ ェ ク ト に 関
グ3(米自動車三大メーカー)に、提供
がパーティーの席で側近に言い寄り、何
団体に近いタカ派が議員立法として打ち
るだろう」
した、というんだ」
度かの逢瀬を重ねた後、寝物語に「外交
を監視しようとしたもの。
「完全なスパイ行為ですね」
冷戦構造を前提としているのでCIAに
出したもので、ソ連や中国のスパイ活動
対する監視の必要性についての配慮がな
や経済の情報を提供してくれたら一回
る』と認めているそうだ。このPNGV 「あの女はCIAのスパイだ ぞ」と告げ
IAは日本国内で産業スパイをしてい
た上で「そのまま関係を続けてくれるよ
い。というよりむしろCIAの諜報活動
「 そ う。 し か も こ の 記 事 に よ れ ば、 C I
プロジェクトでも京セラが標的に上げら
う」要請。二重スパイとなった側近がC
を手助けするための法案だ」
5000フランを支払う」と持ちかけた。 の防止を名目に、左翼や市民団体の行動
れている」
IAの活動を報告したために、五人の容
「 結 局、 市 民 団 体 の 反 対 で、 廃 案 に な っ
Aのエドワード・ラトラック顧問が『C
「 さ て、 そ こ ま で い わ れ た 日 本 は な に を
疑が固まった、というのだ。
これを察知したフランスの諜報員が
すべきか、ですね」
追放できる法的権限、アメリカに対して
たらに警察の捜査権限ばかりが肥大化し
段で防止するのかを明確にしないと、や
「 そ う、 そ い つ が 問 題 だ。 こ の 二 月 に フ 「追放するには容疑を特定する捜査能力、 たものですね。やはり、どこがどんな手
ランスが一人のNOCを含む五人のCI
実行できる政治力、この三つが必要にな
磯崎が心配するのは、捜査権限の肥大
A要員をスパイ容疑で追放した。日本で
の一つもありません。フランスのような
化が人権を圧迫する可能性である。政府
てしまう」
「あれは変な事件でしたね」
対抗措置は取れない、ということになり
も、
ああした措置ができればいいのだが」 るでしょうが、どう考えても日本にはそ
「 カ ネ と 色、 い か に も ス パ イ 事 件 と い う
89
限っても、いつのまにかそれを越えてし
の山も姿を消している。しかし、参加者
予定の午後三時を少し回ったころ、前
が国民をスパイする、というのでは、何
橋経済大学助教授となった溝口幸一の司
が多いため、会議室はずっと狭く感じら
に作らないといけないわけですね。まあ、
会で、水島邦彦帝都大学教授が立ち上が
まう」
以心伝心、細かな説明をしなくても問題
しかし、スパイ活動に対する何かの対抗
り、短い挨拶をした。政府の審議会を掛
のためのスパイ防止なのかがわからなく
点が伝わるのだ。堀田は間髪を入れずに
措置が必要なことは明らかです」
け持ちする白髪の好々爺だが、ネクタイ
れる。
「要はそうならないようにするにはどう 「 と に か く ま ず、 水 越 や 中 川、 春 田 が ど
反応した。
う考えているのか、その辺を聞いてみる
な る。 こ の 点 に つ い て は 堀 田 も 同 感 で、 「その自己増殖を阻止する仕 組みを同時
したらいいのかだ」
の趣味のせいか、姿勢がいいためか、実
が、磯崎はこの会議の雰囲気に早くも
際の年よりはかなり若く見える。
ほかはあるまい」
広々とした空き地の真中を舗装した道
「 ひ ょ っ と し た ら、 水 越 さ ん た ち は そ う
した問題意識もないままに、防止法を作
ろうというんじゃないでしょうか」
るほどの道路の両側に、アカシヤの樹が
で、磯崎や堀田が発足させようとするも
セットされた会議であることは明らか
違和感を覚えた。いつもの例会とは別に
とかな」
立ち並び、遠近画法の絵のように一点に
「 あ る い は、 日 本 版 C I A を つ く ろ う、 路が走る。クルマがかろうじてすれ違え
「 そ れ も 危 険 で す ね。 世 界 と 対 峙 で き る
のとはズレていた。
案の定、席上に配られた進行表には「違
向かって収斂していく。
東京にもまだこれだけの土地があっ
政治力がないままに、捜査力や追放権限
を手にしても、報復合戦でめった打ちに
けては自己増殖するものだからな。そう
「 組 織 は 一 度 作 る と、 何 か の 名 目 を 見 つ
が出てきます」
そのストレスを国内の政敵に向ける恐れ
かり片づけができていて、未整理の資料
今日の水島研究室の付属会議室はすっ
究室の入っている、帝大経済研究棟だ。
どっしりと建っている。水島経済政策研
タ イ ト ル が 一 人 歩 き を 始 め て い る。「 そ
う す で に こ の タ イ ト ル で 案 内 が 送 ら れ、
た会議は苦手なのである。と同時に、も
や役人が得意とするこうしたカッチリし
窓 の 小 さ い く す ん だ 色 の 大 き な ビ ル が、 タイトルが打たれていた。磯崎は、学者
会 う の は 目 に 見 え て い る。 そ う な る と、 た の だ、 と 思 う。 そ の 先 に、 柱 が 太 く、 法諜報活動阻止機関研究準備会」という
なると始めに対象を海外の諜報活動に
90
めるのである。
れで大丈夫なのかな」という思いがかす
アメリカ金融当局に報告せず、カリブ海
大蔵省も十一億ドルにのぼる巨額損失を
がいありません」
日本の金融システムに挑戦してくるにち
メ ー ジ を 持 つ 図 書 館 司 書 嬢 が 質 問 す る。
失 を 移 転 し て 隠 蔽 を 図 ろ う と し た。 が、 束ね、化粧はないが、はつらつとしたイ
中川の説明に対して、長い髪を後ろで
分析」とあり、通産の水越亨が報告をす
それが不可能と見るや、頭取が辞任、会
杉井美紗である。
のケイマン諸島にあるトンネル会社に損
べきだったが、大蔵の中川伸一が水越の
長も身を引き、大蔵省はといえば大和銀
もっとも、進行表の最初には「現状の
言葉を途中で引き取って、緊急報告をす
せんでした。結局、日本の金融界の情報
行 に 対 す る 業 務 改 善 命 令 を 出 す こ と で、 「 す み ま せ ん。 い ま の 話、 よ く わ か り ま
み 立 て ら れ た 会 議 で は な さ そ う だ っ た。 体面をとりつくろった(一〇月九日)。
公開、ディスクロージャーが進んでいな
るところを見ると、あまりカッチリと組
しかし、米連邦準備制度理事会(FR
いということなんでしょう。隠蔽体質を
タイトルの一人歩きも磯崎の思い過ごし
B)などのアメリカ銀行監督当局は納得
かもしれない。
大和銀行のアメリカ追放を決定し、 捨てるほうが先だと思いますが」
「 容 赦 な い、 と い う こ と な の で し ょ う。 せず、
戦争なのだから仕方ない。戦争なのだと
営業停止ではなく、追放というのは異例
九〇日以内の業務撤退を命令した。
「 そ れ は そ う で す。 そ れ は そ う な ん で す
いう認識がなかった私たちが甘かったの
な 措 置 で、 大 和 の 信 用 失 墜 の み な ら ず、 I、CIAはもちろん証券取引委員会(S
によるもので、行動はFBIにもCIA
捕された。この金融取引はコンピュータ
ニューヨーク支店で米国債の帳簿外投資
一九九五年九月二六日大和銀行の
る。今回の事件でこのことが明らかにな
カの利益になるよう、効果的にリークす
断売却した日本人行員(井口俊英)が逮 「 C I A は 金 融 情 報 を も 掌 握 し、 ア メ リ
を長年続けて失敗し、穴埋めに証券を無
りました。つまり、事件は今後も繰り返
た。
界全体の信用失墜につながる事件になっ
大蔵省の国際的な信用失墜、日本の金融
くペースではないんです」
ちされている。システムの改善が追いつ
ね。要するに、日本のシステムが狙い撃
りが出ないという世界ではないですから
にしろ、何か出てきますよ。叩いてほこ
といいます。こんな大きな損失ではない
調 査 員 が 一 年 も か け て 調 査 し た も の だ、
E C )、 財 務 省 関 税 局 な ど 四 万 八 千 人 の
が、日本の金融界の不正に対してはFB
です」
にも完全に把握されていた。
す、ということです。アメリカは次々に
ところが、大和銀行も、報告を受けた
91
「ちょっと話がずれてやしませんか」
ても仕方がないわ」
「 で も、 や っ ぱ り 隠 蔽 は だ め よ。 叩 か れ
I、国防総省のスタッフを集めて『国家
心とする第五局が編成され、昨年はFB
この構想の下、CIAにも経済諜報を中
るのです 」
ここでマイクが再び水越に戻った。
とひどくなる、ということを意味してい
にひどい、ということは、これからもっ
ますが、いまは逆風が吹いている。二信
「 中 川 さ ん、 言 わ ん と す る こ と は わ か り
厚生省の男、大貫隆一が立ち上がった。
フォーバー財務省顧問が起用されてい
に国際金融のエキスパート、ロバート・
あ る 国 家 情 報 会 議( N I C ) ス タ ッ フ
する秘密文書を議会に提出しています。
がどんな不当手段を用いているか』と題
事業入札で米国企業と競合する外国企業
せています。また、CIAの関連組織で 「 こ の 一 〇 月、 商 務 長 官 が『 海 外 の 公 共
防 諜 セ ン タ ー( N A C I C )』 を 発 足 さ
組に加えてコスモ信組、兵庫銀行の経営
CIAに詳しいジーャナリストの矢部武
水越が慌てている。以前にも見かけた
破綻。
問題は大和だけじゃないのだから、 る。
けはいっておきます。クリントン政権に
「 そ れ は そ う か も し れ ま せ ん が、 こ れ だ
た者は令状なしで監視・盗聴されるばか
改正され、スパイ活動の容疑がかけられ
また、昨年の九月には対外諜報監視法が
業、もしくは、発注政府に抗議し、アメ
告。国務省が外交ルートを使ってその企
CIAはこれらの不正行為を国務省に報
達する』とあったそうです。
氏によれば、これには『外国企業一〇〇
なってから諜報の主軸は国防から経済に
りではなく、自宅・事務所の家宅捜索ま
リカ企業の受注を有利に導く、というわ
一方、FBIも米国内の防諜活動を担当
移りました。これは政権の性格が変わっ
でできるようになっています。これには
けです。
理解はされませんよ。金融問題に関して
たことによります。クリントンが新設し
人権上、批判が強いんですけどね。
ある意味では、贈収賄を監視する国際警
社が賄賂などの不正手段で海外の公共事
た経済安全保障会議(NEC)は従来の
つまり、私たちが手をこまぬいている間
察なんですが、アメリカ企業は対象外だ
する専門部署を開設したし、来年にはス
国家安全保障会議(NSC)をしのぐ政
にも、アメリカは着々と経済スパイ活動
し、違法性の基準は独断と偏見。アメリ
はここしばらく、石抱きの刑に黙って耐
権の中心組織になりましたが、今度の自
と、経済スパイ活動の防止に力を入れて
カ企業が政府と結んで、食糧援助やOD
パ イ 取 締 法 の 改 正 強 化 を 狙 っ て い ま す。 業を獲得し、その総額は450億ドルに
動車交渉でも、ここが交渉の主体になっ
いるんだということです。いま、こんな
えるしかないんじゃないですかな」
ていました。
92
頭にきます。
に応じたり、社員の防諜意識向上のため
リカ企業からの防諜対策についての相談
主な活動は防諜そのものですが、アメ
告が上がってきます。
事件だけでも月に一〇〇~二〇〇件の報
侵入され、何者かに資料が改ざんされた
課には企業のコンピュータ・システムに
も通産省の機械情報産業局情報処理振興
ともあれCIAの支援で海外の公共事業
の教育やトレーニングをも引き受けてい
防 諜 意 識 の 甘 さ を 示 す 数 字 な ん で す が、
あります。
にありついた総額は数年間で300億ド
ます」
A、先端兵器の輸出などを賄賂代わりに
ルにのぼるといいます。たとえばCIA
それでも省としては『情報収集はアメリ
使っていることには知らん顔なんだから
が不正を暴いたことで、フランスに行き 「 企 業 の ほ う の 評 判 と い い ま す か。 本 当
です。
カばかりでなく、すれすれのところで各
のサービスは今年の始め、NACIC(国
なにしろ対外的に最大の機密事項を抱え
にそういうことを必要としているので
家防諜センター)が実施した全米の主要
る外務省でさえ、窓ガラスを防諜用にし
かけていた総額60億ドルのエジプトの
チームの手に落ちています」
企業1400社に対するアンケートの結
たのは新庁舎になった今年から。昨年ま
国がやっていること。おのおのの企業が
「 そ の 国 家 防 諜 セ ン タ ー に つ い て、 も う
果、要望が強かったために始めたもので
しょうか」
少し詳しくご説明ください」
す。 必 要 と し て い る 企 業 が か な り あ る、 では筒抜けだったわけです。かく言う通
航空プロジェクトが、アメリカのマクド
「 は い。 こ れ は 九 四 年 五 月 に 発 足 し た ス
産省だってお寒い限り。重要な電話はホ
自己防衛していくしかない』というだけ
パイ防止組織で、アメリカ国内で活動す
ということでしょう」
ネル・ダグラス社とボーイング社の共同 「 教 育 ト レ ー ニ ン グ に つ い て 言 え ば、 こ
る外国の情報機関や産業スパイからアメ
などとはいえませんよ」
て、その程度のことではとても防諜対策
テルからではなく公衆電話を使え、なん
してもトヨタにしても、事実調査をした
「盗聴対象として名指しされた京セラに
リ カ 企 業 を 守 る こ と を 目 的 に し て い ま 「日本の企業はどうなんでしょうか」
す。
ス タ ッ フ は F B I、 C I A、 N S A
制は万全、といっています。
ま っ て い る。 相 当 い ろ ん な も の を 読 み
ちにすっかりCAI研究家になってし
中川にしても水越にしても、短期間のう
などのカウンター・エスピオナージ、す
こうした楽天性は政府もおなじで、私ど
(国家安全保障局)
、
DIA(国防情報局) が盗聴された気配はない、とし、社内体
なわち防諜専門家で、事務局はCIAに
93
をヘッドとする情報コミュニティーとい
きます。簡単に言いますと、CIA長官
なんです。次回までには一覧表にしてお
「アメリカの諜報機関は数が多くて複雑
しょうか」
とかDIAというのはどんな組織なんで
「 初 歩 的 な 質 問 で す み ま せ ん が、 N S A
巻く。
漁ったのだろう。その学習意欲には舌を
もCIAを上回るアメリカ最大の諜報機
しており、予算はCIAの数倍、人員で
が発達した現代、NSAの任務は巨大化
コンピュータ、衛星通信など、通信技術
活躍した古い諜報機関で、潜水艦のスク
で、いろいろなものと比較している。磯
会場が一瞬静まり返った。各自が頭の中
ナル)を傍受することを任務としていま 「 C I A の 人 員 は 二 万 人 弱。 予 算 は
リュー音などを含むあらゆる信号(シグ
崎も日本の国家予算と比較して、アメリ
これをシグナル イ
・ ンテリジェント、略 二〇数万人、年間予算は三兆円と推定さ
し て シ ギ ン ト と 呼 ん で い ま す が、 電 話、 れています」
す。
カの諜報シフトと張り合うのが現実的で
るんでしょうか」
算とか人員はどの程度だと予想されてい
その数字の大きさに、誰もが息をのみ、
三 千 億 円。 情 報 コ ミ ュ ニ テ ィ ー 全 体 で
うのがあり、これは主だった一三の諜報
関に成長しています。
はないことを、あらためて確信した。
防総省の管理下にありますが、実際の運 「 一 応、 ア メ リ カ の 対 日 諜 報 戦 略 の 現 状
成はCIA同様、秘密になっていて、国
任務の重大性もあって、予算や人員構
機関から構成されています。CIAもF
BIもNSAもDIAも、すべてがその
構成メンバーです。
CIAは独立機関ですが、FBIは司
がご理解いただけたことと存じます。そ
切ったのは堀田であった。
司会は再び溝口助教授である。口火を
いたいと思います」
のか、何をすべきなのか、これを話し合
営は国防総省と中央情報局(CIA)の
独自の衛星を所有するほか、世界各地
法省、NSAとDIAは国防省に所属し
れの軍事諜報機関がありますが、これら
に二〇〇〇の通信基地を持っており、日
れを踏まえ、次はわれわれに何が可能な
の機関を束ね、国防省としての姿勢を代
本でも三沢や沖縄の『像の檻』と呼ばれ
協議で遂行されます。
表するのがDIA。三軍とは独立し、暗
る短波基地はNSAのものだといわれて
ています。国防省には陸・海・空それぞ
号解読専門に設立されたのがNSAで
「 ま ず、 で き な い こ と、 や る べ き で な い
す。
います 」
NSAの前身は日本軍の暗号解読にも 「 公 表 は さ れ て い な い ん で し ょ う が、 予 ことははっきりしています。われわれに
94
うに、まずはそのような素地がない。身
す。平和ボケ、という言葉が象徴するよ
はCIAのような謀略や工作は不可能で
者は国外退去させるぐらいの実効性ある
不正手段を用いたり、謀略工作を行った
ンスとまでは言いませんが、諜報活動に
て、 分 析 し、 提 供 す る、 そ ん な 機 関 は
その他に総合商社の海外情報なども集め
機 的 に 結 合 さ れ て い る と は い え ま せ ん。
ずいぶん助かるわ」
ま だ な い で し ょ う。 そ れ だ け で も ベ ン
チャー企業なんか
ものにしたいですな」
「 い や、 そ れ も 難 し い と 思 い ま す ね。 法
構えとか意識とかいうものは短期的に形
成するわけにはいきません。
日本における違法な諜報活動の阻止に絞
「ここでの討議をもっぱら防諜すなわち
る。
にして、参加者一同が言葉を失った直後 「 い ま は な い に し て も、 そ れ を 目 指 し て
期待できない以上、予算にも限りがあり
象が見当たりませんし、工作の見返りが
たほうがいいと思うわ。たとえば外国研
なので、
堀田の言葉には説得力があった。 鍛えていかなければならない」
ます」
究、地域研究。防諜活動なんて、それか
たちまち、大きな方向が決まったといえ 「 い い え、 も っ と 基 本 的 な こ と か ら 始 め
アメリカのあまりに巨額な予算規模を前
らだわ」
あるとは思えません」
には相当の人材が必要だし、追放には国
する。最後に、意識などの人的な部分を
を補うものを法制面と組織面で明らかに
るには何が足りないかを炙り出し、それ
を越える目標を何か立て、その何かをす
ているかを把握すること。ついで、それ
てみませんか。まずは、今日本が何をやっ
ていても埒があかない。ひとつ整理をし
さんではないけれど、それが今の日本に 「 い や い や、 こ の よ う に ラ ン ブ ル に 話 し
としての手腕や度量も必要になる。堀田
どうするかを検討し、再び何をする、と
なると思いますけれど」
諜センターですか。あれなんかも参考に
整備はできたとしても、諜報活動の捜査 「 さ っ き 話 し に 出 た N A C I C、 国 家 防
ろう、というのが堀田さんのご意見のよ 「 い や、 そ れ だ け な ら 外 務 省 も ジ ェ ト ロ
いう前提に立ち返って、目標に修正を加
また、工作を要するような積極的な対
うですが、
そう理解してよろしいですか」 もやっている。そんなもの、創るといっ
する、すっきりした意見が出されました。
のか。だったら人をよこせ、カネをよこ 「 い ま、 春 田 さ ん か ら、 議 事 の 進 行 に 対
える」
「ご異議がなければその線で議論を進め
せ、といい出すに違いない」
たら、おれたちの研究では不足だという
たいと思いますが、いかがでしょうか」
これを順に検討していくのもよし、ある
堀田がうなづく。
「 意 義 は あ り ま せ ん。 が、 や っ ぱ り フ ラ 「 い い え、 外 務 省 や ジ ェ ト ロ の 情 報 は 有
95
いはプロジェクトチームに分け、つけ合
警備局設置の目的には、あらゆる情報の
警察庁
『警備局』、いわゆる公安警察です。 局 と 同 様 の 防 衛 情 報 の 総 元 締 め。『 労 働
者をマークするのはここの外事課が担当
ま ず は、 日 本 が 今 何 を や っ て い る か。 収集、というのがあって、CIAの関係
戦構造に基づく共産主義者対策、思想傾
集で、内閣調査室や公安調査庁同様、冷
組合課』はいわゆる組合活動家の情報収
わせるという手もありそうです。
つまりこの国の諜報の現状を共有してお
こうした冷戦構造の産物は公安調査庁
向把握が主な役割です。
しかし警備局の関心はほとんど国内に
同様に『無用論』の風にさらされており
することになっています。
向 け ら れ て い ま す し、 外 事 課 の 関 心 は
まして、行政改革の中で削減が避けられ
くことにしましょう。春田さん、いかが
「 は い、 わ か り ま し た。 で は 私 か ら 日 本
もっぱら在日外国人や共産圏諸国のスパ
でしょう」
の諜報活動の現状について、簡単にまと
ないものと見られています。
として結成された公安調査庁は破防法そ
破壊活動防止法(破防法)の実行部隊
イとの接触です。外事課は通信所を各地
に持ち、通信傍受をしていますが、これ
めておきます。
まず、日本にも各諜報機関を統合する
『 内 閣 合 同 情 報 会 議 』 と い う の が あ り、 もほとんどが共産諸国対応です。
の も の が 使 い に く い 法 律 で も あ る た め、
存在基盤を見出せずにいましたが、オウ
そのためCIAとは蜜月でしたが、最
ます。内閣官房の『内閣情報調査室』
『内
ム真理教の事件で息を吹き返し、オウム
その下に六つの諜報機関が配置されてい
閣安全保障室』
、 外 務 省『 国 際 情 報 局 』
、 衛庁『防衛局』のほうは相変わらずの蜜
への破防法適用に期待をかけておりま
近はやや距離ができているようです。防
法務省『公安調査庁』
、
防衛庁『防衛局』
、 月です。
いの情報を刷り合わせる、といったこと
ただこれは代表者会議に過ぎず、たが
本貿易振興会(JETRO)』、海上保安
幕 僚 会 議 の『 情 報 本 部 』、 通 産 省 の『 日
報類似機関(情報機関)が、防衛庁統合
己の手で、オウムに引導を渡したい警察
ばしば足の引っ張り合いを演じます。自
の縄張りを脅かす存在でもあるため、し
しかし、これらの各機関は互いに自己
す。
はありません。というよりもむしろ、省
庁『 警 備 救 難 部 警 備 第 二 課 』、 労 働 省 労
庁は、オウム事件に対する破防法適用に
内閣合同情報会議に加わっていない諜
庁のセクショナリズムから、情報を隠し
政 局『 労 働 組 合 課 』。 防 衛 庁 統 合 幕 僚 会
おしなべて消極的です。
警察庁『警備局』の六つです。
あう傾向さえあるようです。
議の『情報本部』はアメリカの国防情報
この中で最大のものはいうまでもなく
96
以上のほか、警視庁公安をはじめ、各
かの機関を立ち上げるとき、最大の抵抗
に当たっては各市警察、州警察の反対に
日野の通信基地は共産圏諸国の通信傍
を示すのは警察庁(次いで外務省、諜報
技術の開発、携帯電話の盗聴技術の開発
察庁警備局と一体ではないことが、オウ
受、朝鮮民主主義人民共和国の工作員と
の性格によっては防衛庁)であろうこと、
あったこと。日本でも、新しい形で何ら
ム事件で図らずも表面化しています。捜
本国などの通信傍受、暗号解読、国内無
などを行っている、という。
査をめぐって、警察庁が警視庁長官に抗
県警本部の公安部があります。これが警
議し、異例の長官辞任事件が起きていま
す」
線 携
・ 帯 電 話 傍 受 な ど を お こ な っ て い が語られた。
る。通信傍受によって船舶の侵入なども 「 幸 い、 私 た ち の こ の 集 ま り に 自 治 警
・
察、 外 務、 防 衛 の 関 係 者 は お り ま せ ん。
には別に、通信職員の教育を行なう警察
る、という。
になっている)がシギントを担当してい
施設があるが、機構上、存在しないこと
基地があり、後者(東京都日野市三沢に
警察機構)のアジア送信所と秘密の通信
警察庁にはアジアICPO(国際刑事
ント、つまり通信の傍受態勢である。
した。その中でも注目を集めたのはシギ
し、続けて、その能力、活動などを紹介
見られるもので、アメリカでも、CIA
そして、各機関同士の縄張り争いは必ず
語られた。
あること、など、のっぴきならない話も
得、足抜けできない関係にある可能性も
ち上がるに当たって、アメリカの協力を
かもしれないこと。日野の秘密組織が立
とがある」といっているが、それは事実
取引のほか産業スパイの摘発を試みたこ
黙認の上で、回線電話の盗聴をし、麻薬
また、アメリカが一度「日本もNTTの
通報体制も確立している。
りません。
リスクの判断が必要なのは言うまでもあ
性、 不 透 明 性、 権 力 集 中 の 危 険 性 な ど、
しかし、これにはCIAとの癒着の可能
ゆ だ ね る、 と い う 選 択 肢 も ご ざ い ま す。
あるいはまた、すべてを警察庁警備局に
す。
を生み出すのは困難だろうと予想されま
のセクショナリズムは強い。新しいもの
同情報会議で見られたように、それぞれ
彼らを巻き込む手もありますが、内閣合
妨害に出てきます。
彼らが私たちの動きを察知すれば、必ず
監視していて、各県警、海上保安庁への
大学校附属警察情報通信学校と警察情報
の結成に対して最大の抵抗を示したのは
いま、私は日本の諜報機関はセクショナ
春田は日本の諜報機関の概略を紹介
通信研究センター(旧・警察通信研究セ
FBIであったこと。そのFBIも結成
また、前者がある旧陸軍中野学校跡地
ンター)があり、人材の育成から、暗号
97
と 申 し ま し た。 が、 こ れ を よ い こ と に、 を追及しよう」という参加者全員の合意
こには磯崎が到着するのを待つかのよう
終っていなかったのである。しかし、そ
磯崎の出席が早すぎ、その前の会議が
を自然に作り出した。水越、堀田、春田
にして、春田の姿があった。
そしてまた、春田の熱弁は「新しい形
自由に操っているのがCIAだ、という
の歯車がうまくかみ合い、回り始めた。
リズムが強く、
統括するセンターがない、
見方があります。CIAだけがすべての
情報を提供しては互いを競わせ、巨大な
ループ、人材面から検討するグループに
す る グ ル ー プ、 組 織 面 か ら 検 討 す る グ
を叩いてから、正面に向き直った。残り
春田は一番左のパソコンのキーボード
参加者は、新しい形を法制面から検討 「やあ、来ましたね。ちょうどいい」
情報力に物を言わせてこれらの機関を統
分 か れ、 そ れ ぞ れ が 検 討 を 重 ね た 上 で、 の三台のパソコンが一斉にカリカリと音
諜報機関とコネクションを持ち、適当な
括している。これは日本政府を超えた力
である。
幻の十二階が現れた。あの、窓のない階
大使館の全景写真だろう。まずは最上階・
の、おなじ画像が開き始める。アメリカ
を立て始め、それぞれに速度は違うもの
再会することとした。
『合同通信』の会議室はステージつきの
グループに参加することとなった。
磯崎は法制面、堀田は組織面での検討
です。
つ ま り、 本 来 の 統 括 セ ン タ ー の 登 場 は、
CIAにとっても目の上のたんこぶ。妨
害工作が発動されても不思議ではないの
です。
この集まりを、当面、けして口外しない
トップのパソコンが四台ほど置かれてい
に会議用テーブルが並べられ、ディスク
大会会場に大合唱を流す、というあれで
したよね。インターネットで世界を結び、
ピックでの世界大合唱のことをお書きで
ちょっとした集会場であった。その窓際 「 磯 崎 さ ん、 た し か こ の 間、 長 野 オ リ ン
でいただきたい。今しばらく、われわれ
た。
そこで、お願いなのですが、私たちの
だけで準備する期間が必要です」
機 関 研 究 準 備 会 の こ と を こ う 呼 ぶ )』 の 「ええ、ほんの豆記事ですがね」
すよ」
大きな拍手が沸きあがった。春田へのね
法 制 班 の 初 会 合 で あ る。『 合 同 通 信 』 の 「 あ の と き、 各 地 の タ イ ム ラ グ が ど の 程
この日は『Qの会(違法諜報活動阻止
ぎらいの拍手と、口外しないという約束
春田は組織班であったが、法制班に会場
会 場 が 緊 張 か ら 静 ま り 返 り、 つ い で、
を確認する拍手とが、ないまぜになった
を世話してくれたのである。
「 記 事 で は 細 か く 触 れ て ま せ ん が、 日 本
度出るといっていましたっけ」
ものである。
98
に地球を七回り半するわけですから、原
ムにずれが生じるんです。私には聞き取
到達時間が異なって、同時放出するリズ
の裏側の南米だとすると、光速は一秒間
理的には一五分の一秒あればいいわけで
れませんでしたけれどね」
そういうと、胸ポケットから一枚のメ
あ、見ていてください」
れに到達経路を変更します。そうなると、 声入力ソフト『ボイス タ
・ イプ』なんで
す。読み上げるとそれが文字になる。ま
す。しかし、インターネットの回線は直
況次第。そのときによって異なるわけで
辿って目的地に到達するかはネットの状
なんです。衛星を経由したほうがタイム
アワセニ
るんですけれど、私はタイムラグが心配 「 ア メ リ カ ワ
ら電送写真をすべて衛星通信に切り替え
トウキョクト
モを取り出して、ゆっくりと、一語ずつ、
す。
ラグが大きくなる。とすると、衛星通信
線ではありませんし、実際、どの経路を 「 そ う で す か。 じ つ は 当 社 で も 来 年 度 か
そこで、長野の場合は、相当の寄り道
を途中で傍受して加工し、地上系で送っ
テン
ベイコク
ケッカ
カンケイ
セイフノ
テン
シタ
トシテワ
―アメリカは日本政府の問い合わせに対
セイフ
キョウギ
タイシテ
ニホン
間を開けて読み上げた。
をしても大丈夫なように、四分の一秒の
トイ
タイムラグを設け、最後に到達した音声
もちろんすぐにばれるでしょうがね」
て す り か え る、 と い う こ と が 可 能 で す。
」
・・・・・・
これがパソコンの画面上で、次々と文章
と同時に、それまでストックしておいた
あなたはとんでもないことを考えます
他地域の音声を放出するようにしていま 「 い や あ、 そ れ は 恐 ろ し い。 春 田 さ ん、 になっていく。
す」
して、関係当局と協議した結果、米国政
トできない、と開き直った―
府としては情報活動について何もコメン
ね」
のが。そうだ、これ知ってますか」
「 好 き な ん で す、 こ う い う こ と を 考 え る
「 と い う こ と は、 最 大 0. 2 5 秒 の ズ レ
を見込んでいるというわけですね」
「その通りです」
「 あ り ま す。 会 場 で 歌 う 日 本 の 合 唱 団 に
し て、 マ イ ク ロ ホ ン ら し き も の を 頭 に
プロソフトらしきものを立ち上げた。そ
です」
ますが、まあ、日本は先を越されたわけ
アメリカが日本語入力ソフトを、と思い
春田は再びパソコンに向かうと、ワー 「 ど う で す、 す ご い も の で し ょ う。 な ぜ
とって、遅れてくる自分の声に慣れるの
セットした。
「その場合、違和感はあるんでしょうか」
は大変なようです。それに、ゆれ、の問
題があります。インターネットは気まぐ 「これはIBMが今度出した 日本語の音 「これは 日本では弱いIBM のシェアを
99
「ヤフーやインフォシークといった検索
しょう」
であれば簡単に検索できるのはご存知で
「 そ う、 つ ま り は 盗 聴 で す。 文 字 デ ー タ
「軍事技術ですか」
ね」
初は英語バージョンだったのでしょうが
ないかと考えているんです。もちろん最
「 ボ ク は こ れ を、 軍 事 技 術 の 転 用 じ ゃ あ
確実に上げますね」
える」
せんね。それにしても、すごいことを考
ないのです。声紋が割れている有名人は しいでしょうね 」
別として、盗聴相手にこんな訓練をして 「よくテ レビでやっているよ うなアンテ
の癖などを記憶させておかなければなら
章を読み上げて、ボクの声紋や読むとき
、それでも盗聴には使えません。
・・・・
これだけ認識してもらうには、沢山の文
す。処理速度が一〇倍、認識率が一〇倍
発見できないのではないでしょうか」
「いずれはできるようになる かもしれま 「 そ う、 盗 聴 器 の 真 上 に き た と き に し か
もらうわけにはいきませんからね」
「 通 信 衛 星 に 向 け て 発 信 し て い る か ら、
で、従来のスクリーニングでは発見は難
れ電波であるサイドローブが小さいの
それも、指向性の強い電波なら、横漏
だと思いますよ。
星に向けて発信するようになっているん
地 上 か ら で は 発 見 し に く い わ け で す ね。
ナでは発見できないということですか」
ソ フ ト が そ う で す ね。 世 界 中 の ホ ー ム
ページから一瞬にして必要なキーワード 「 い や あ、 こ の 間、 も う 一 度『 ロ サ ン ゼ
これをテキストデータに変換できたらど
Aだけじゃない。CIAとNSAなんで
直してみたんですが、盗聴したのはCI
と、すぐに陳腐で時代遅れなものになっ
読み込んだ上で、防諜を考えていかない
日に日に向上しています。技術の向上を
をピックアップしてくれる」
ルス タ
それはたしかに手ごわい」
・ イムズ』と『ニューヨーク タ
・
「でも、音声のままではそれができない。 イムズ』の日米自動車交渉の記事を読み 「 と も か く、 こ の 分 野 の テ ク ノ ロ ジ ー は
うですか」
すね。
てしまうということです」
りシギントの世界です。とすると、CI 「本当にそうですね」
NSAといえば通信傍受が専門、つま
「 文 字 デ ー タ と し て ス ト ッ ク し、 必 要 な
ときに検索できる」
「 そ う で し ょ う。 で も、 ま だ だ め な よ う
能 力 を 一 桁 落 と す、 と 聞 き ま す。 だ か
う。この盗聴器は傍受した音声信号を衛
す。内容を聞いていたのはNSAでしょ
の会」法制班のメンバーが次々にやって
磯崎が春田と話しこんでいる間に、「Q
な ん で す。 軍 事 技 術 の 民 生 へ の 転 用 は、 A は お そ ら く 盗 聴 器 を 仕 掛 け た だ け で
ら、実際には一〇倍の能力があるとしま
100
きては二人の話に耳を傾けていた。法制
取締法のコピーをお配りしましたが、ア
ていくわけで、参考にアメリカのスパイ
杉井の提案に対して大貫が支持をし
班は通産省の水越亨を中心に、磯崎正太
日本での参考になるかどうか、自身があ
議題にもならない、ということを意味し
しこれが正しいとすれば、法案は閣議の
た。水越も賛成しているようだ。
郎、厚生省の大貫隆一、国会司書の杉井
メリカのものはさまざまなベースがあっ 「 春 田 さ ん に よ れ ば 自 治 警
・ 察、 外 務、
防衛は反対するかもしれないという。も
総勢一〇人になる。この初会合には二人
りません。
美 紗、 J E T R O の 長 谷 川 宗 之 を 含 め、 た上での法律なので、ベースが何もない
が欠席したが、春田昭彦がオブザーバー
会図書館の司書として、資料面の手伝い
といっても、立法の経験があるものは国
しゃったように、政府内に断絶があるの 「 は い、 法 案 は 普 通、 ど こ か の 省 庁 が 提
わ れ ま し た が、 先 日、 春 田 さ ん が お っ
んが組織面での困難さを脇におく、と言
案しまして、内閣官房がこれを取り上げ、
ます。そうなる前につぶされる。そうい
で参加したことのある杉井だけ。いささ
だとすると、それを無視して法制面の論
事務次官会議にかけます。ここで全会一
また、いま水越くんが、いえ、水越さ
か心もとない素人集団である。
議をしても徒労に終るように思うんで
致になれば閣議にかけられるわけです。
として参加した。
「 最 終 的 に 何 を 目 指 し、 ど ん な も の を つ
す」
で、問題は内閣官房でして、総理大臣、
オブザーバーの春田が立ち上がる。
うことですよね、春田さん」
くるのかが見えていない中で、法制面を
検討する、というのは雲をつかむような 「徒労に終る、というのは」
さを脇において考えることができる、と
結果的にそうなるのはやむを得ません
治 省( あ る い は 旧 内 務 省 系 官 庁 )、 首 相
書官です。その内訳は、官房副長官が自
い、 と い う の で は 空 し い と 思 う ん で す。 のが事務方の官房副長官と三人の首相秘
官房長官はともかく、実権を握っている
いうプラス面を生かして、積極的なご発
が、少なくとも成立を前提に論議したい
秘書官は内政審議室担当が大蔵省、外政
ものですが、ともかく、組織面での困難 「 法 案 は で き て も、 成 立 す る 可 能 性 が な
言をお願いいたします。
んです」
がりすぎると思うんです。成立可能性を
「 賛 成 で す ね。 何 で も あ り、 で は 話 が 広
の一人だけなんです。
警察庁。つまり賛成が見込めるのは大蔵
審議室担当が外務省、安全保障室担当が
まずは口火を、立法作業の経験をお持
「 経 験 な ん て い わ れ て も、 困 り ま す。 普
一つのボーダーラインにしましょうよ」
ちの杉井さんにお願いします」
通はモデルがあって、それに肉付けをし
101
の議論の行方を見なければなりません
い。警察庁を取り込むかどうかは組織班
庁を取り込める法案か、議員立法しかな
そのため、成立を前提に考えれば警察
ズレがうまれた。
か、日本側の意識向上を目指すのか、で、 に沿ってアドバイスしてくれる。それに、
的なものだとしても、対スパイ向けなの
う意見も根強かったからだ。また、宣言
とができる程度の実効力が必要だ」とい
点、参議院はおおらかよ。こちらの考え
まず、内閣官房に筒抜けになるわ。その
閣法制局とつながっている。相談したら、
知り合いもいるの」
が、法制班としてはまず、議員立法とし
「 私 も そ れ が い い と 考 え て い ま す。 そ れ
でしょうか」
し、人材班の論議によっては「日本人向
じゃないの」
制法」と「組織法」が必要になるだろう 「 と 思 う け ど、 職 務 上、 そ れ は ま ず い ん
の実効力が必要になり、その場合には「規
当初、磯崎は、学者や役人が得意とする
また、組織班の論議によっては、相応 「 お お、 そ い つ は い い。 で、 こ の 集 ま り
に、議員立法で成立を狙うためには、あ
けの事業法」も必要になるだろう、とい
カッチリした会議は苦手だと考えてい
て進める方向で話せばいいんじゃあない
まり中身の濃いものや、複雑なものはだ
う話も出された。
に出てくれそうなやつかい」
め。超党派で賛成してもらえる、わかり
と、あながち、そうもいえないと思うよ
た。しかし、今日のこの進行を見ている
「新たな規制、
というより、
緩やかな宣言、 枠を越えない最小限の「規制法」と、「事
うになってきた。なんといっても能率が
その結果、とりあえず、従来の犯罪の
業法」の前文になるような「カウンター
やすいものがいいと思うんです」
といったもの」
堂堂巡りがない。
目当てまでできている。その場合の票読
どうやら、議員立法をつくる際の議員の
そ し て ま た、 極 め て 現 実 的 な の で あ る。
いいのである。ことが着々と前に進んで、
「制限より、宣言ですな」
エ
・ スピオナージ宣言」をつくってみよ
う、ということになった。
法制班の議論はその後、終電間際まで
司書嬢の杉井が、自らの経験をもとに
かにチェックをお願いするといいわ」
続けられた。初会合は顔合わせみたいな 「 規 制 法 を 作 る な ら、 参 議 院 法 制 局 の 誰
ものだと考えていた磯崎は、突っ込んだ
実質的な議論にすっかり面食らってし
みから多数工作までも、やりだしそうな
連中なのだ。おそらくこれは現実的な提
発言した。
議論はまず、
制限か、
宣言か、
でもめた。 「 議 員 立 法 だ か ら、 内 閣 法 制 局 は 元 々 お
案を行政の中で実現してきた水島邦彦と
まった。
呼びではないわ。で、衆議院法制局は内
「 せ っ か く つ く る 以 上、 追 放 を 求 め る こ
102
いう男のキャラクターなのだろう。磯崎
に当たる犯罪行為のうち、特に政令で定
める保佐人会議の承認を受けなければな
の長は総務長官が任命する。センターの
内に防諜活動センターを置く。センター
言」素案とをこしらえた。詰めは先送り、
重ねた段階で、大まかな「規制法」と「宣
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「Qの会」法制班は、二、三回の会合を
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
らない。
センター
構成は防諜活動センター設置法に定め
手続きを歪める工作から、わが国、企業
国内における在留資格を除く行政特権の
が国の政治、経済、防衛上の機密を侵し、 た外国人、および日本人に対する、日本
体の利益のため、不法な手段により、わ
停 止 ま た は 禁 止 を 命 ず る こ と が で き る。
本邦人と規定することによって、外国人
とりわけ議論が百出したのは、外国人、
め、まさに問題山積の様相を呈している。
された問題は条項ごとに複数存在するた
論を要した。しかも、検討課題として残
れだけの文案を詰めるのにも、相当の議
ということで進めた素案ではあるが、こ
命令
る。
本法の実効性を確保するため、総務庁
第四条
めたものをいう。
第7章「脅迫」
正太郎はそう考えた。
CIAの謀略
防諜法案
第一条 目的
第五条
および国民の利益と安全を守ることを目
また、右の活動によって失われた現状の
に対する差別と偏見が強化されることは
本法は、外国政府または外国企業・団
的とする。
回復を命ずることができる。
センターの長は、違法諜報活動を行っ
第二条 対象
その際、在日外国人、とりわけ定住外国
ないのか、をめぐる問題であった。また、
お よ び、 違 法 で あ る こ と を 知 り な が ら、 府 に 現 状 の 回 復 を 求 め る 場 合 は、 セ ン
人をどう扱うのか、という問題であった。
ただし、外交特権の停止および外国政
ターの長の告発に基づき、外務大臣がこ
本 法 は、 違 法 諜 報 活 動 を 行 う 外 国 人、
外国人より対価を受けて違法諜報活動を
れを執行する。
会 議 は こ う し た デ リ ケ ー ト な 問 題 で、
行う本邦人、活動の手段たる設備を対象
センターの長が右の命令を下すに当
を作ってみる、という目的で始めた法案
磯崎が驚いたのは、最小限の「規制法」
しばしば堂堂巡りを続けたのである。
たっては、防諜活動センター設置法が定
補佐
第六条
定義
とする。
第三条
本法でいう違法諜報活動とは、刑事罰
103
化作業であるのに、いざ法文にしようと
二次素案を練る。この作業は第一次素案
までの先送り懸案の解決を探りながら第
毎 晩 遅 く ま で キ ー ボ ー ド を 叩 い て い る。
最近では、ゲーム機よりもパソコンで、
どもの勘のよさには磯崎も脱帽だ。
すると、強く規制の方向が打ち出されて
を固めることに比べたらずっと楽である
たしかに、そんなに強い規制はだれもが
リアーし、この日、軽い祝杯をあげたの
法制班はともかくも第一のハードルをク
コンに養育係を押し付けることができ
このところ多忙な磯崎にとって、パソ
のである。
いったいいつ寝ているのかと思うほどな
しまう、ということであった。
望んでいないことに思いいたる。
である。
誰 か が 気 づ い て 問 題 を 指 摘 す る。 と、 ように思われた。
結局、法律的な言い回しというものは自
の連中は、いささかワーカーホリックに
だろうか。だから、
これを緩和するため、 この日も夜中の十二時を越えていた。「班
会もめっきり減って、いささか後ろめた
ちな磯崎のこと、おかげで英司と話す機
が、仕事場に詰めると食事も別になりが
法制班の集まりを終えて、帰宅すると、 て、もっけの幸いと思うこともあるのだ
例外規定や但し書き、解釈の幅を広げる
近い」と思ったが、自分も確実にその一
さをも感じている。
然に規制強化を求めるものなのではない
ためのとってつけたような字句挿入が多
人であると思うと、どこか耐えがたいも
のがある。そろそろ息子が大事な年齢に 「 す れ 違 い か、 ま ず い な 」 と、 そ う 思 っ
用される。
そしてその結果、法律的な言い回しにな
水を向ければ乗ってくるのはわかってい
た磯崎は、何か息子の部屋を叩く口実を
磯崎は一人息子の英司が五年生になっ
た。が、この問題で家族を巻き込んでは
なってくる、ということも、そうした思
た昨年の四月に、時代の波に遅れないよ
いけない、という直感が磯崎の口を重く
れていない者には読めない、難解な文章
うにとディスクトップのパソコンを買い
していた。
探 し た。「 C I A っ て 知 っ て る か 」 と、
与えた。はじめのころこそ矢継ぎ早の質
磯 崎 は こ の 間、「 Q の 会 」 の こ と に つ
いがきざす大きな原因の一つである。
じ始めていた。
問に辟易していたが、今ではすっかり手
いて、家族はもちろん、ほかの誰にもしゃ
が出来上がる。
このように、多くの問題を将来にはらみ
について、マニュアルの文字も読めない
べ っ た こ と は な い。 が、 そ う し た こ と
「 困 っ た も の だ。 ど う も、 わ た し に 向 い
ながらも、法制班はともかく第一次素案
のにどんなソフトもこなしてしまう。子
磯崎は法制班に入ったことに後悔を感
てる仕事とは思えませんねえ」
を完成した。これを全体会に懸け、それ
104
を、会のみんなが守れるとはとても思え
に嘆くことでもあるまい」
し、同性を愛する人さ。男が男を、女が
渡っているのかもしれない。堀田とふた
て、 謝 罪 を す る の は 初 め て の こ と な ん
菅とかっていう人。お役所が誤りを認め
は男で、異性である母さんを愛している。
女が男を好きになるのが異性愛。父さん
な い。
「 Q の 会 」 の 存 在 は も う 広 く 知 れ 「今日、テレビで大臣が謝待っていたよ。 女 を 好 き に な る の が 同 性 愛。 男 が 女 を、
りだけのときには心配する必要のなかっ
だって。
川田隆平さんてひとが話してた」 だから異性愛者さ。もし父さんが男を愛
し て た り、 母 さ ん が 女 を 愛 し て い れ ば 、
V ウ ィ ル ス に 感 染 し た 青 年 だ。 エ
「 イ ズ 父さんも母さんも同性愛者ということに
による差別 」に果敢に挑戦し、実名を公 なる」
表した上で、政府・厚生省を告発した。 「 や っ ぱ り そ う い う こ と な の か。 で さ、
白血病の治療薬である血液製剤でHI
た、不信と不安とが交錯するのである。
磯崎が口実を見つけるのに苦労してい
るとき、久しぶりに英司のほうからやっ
てきた。
「とうさん、エイズってなに」
そのホームページにはね、アメリカが同
か も し れ な い ん で し ょ う。 そ れ な の に、 性愛者を退治するために、エイズという
磯 崎 は 思 い も せ ぬ 質 問 に 面 食 ら っ た。 「 す ご い よ ね え。 あ の ひ と、 自 分 は 死 ぬ
免疫不全症候群という言葉や、免疫不全
よくあんな活動ができるよね」
書いてあるんだよ。CIAという秘密組
生物兵器を発明し、送り込んだんだ、と
がもたらす病状の説明ならすぐにもでき
る。が、英司が求めているのはそのよう 「ほんとにそうだねえ」
織がエイズの研究をしたんだって。父さ
「 う う ん、 そ い つ は 困 っ た。 そ う い う 心
なくて、みんながエイズって呼ぶ」
「 ぼ く、 最 近、 エ イ ズ な ん だ。 英 司 じ ゃ
ために、政府・厚生省と全力で戦ってい
など、やっていなかっただろう。英司の
崎英司だったら、私はいまCIAの追及
と を 考 え て い た。「 も し、 川 田 隆 平 が 磯
るう、という不思議な現象。そこに人為
スが突如出現し、地球の隅々で猛威を振
たく知られていなかったレトロ・ウイル
HIVウイルスという、それまでまっ
磯崎はそう答えながらも、少し違うこ
無い揶揄が多いから、今じゃあエイズと
ただろう」と、思うのだ。
的なにおいを感じるのは磯崎ばかりでは
な答えではなさそうだった。
いう言い方はしなくなったんだけど」
「 で さ あ、 ぼ く、 変 な ホ ー ム ペ ー ジ、 見
なかった。
ん、CIAって、知ってる」
「HIVというんだってね」
つけたんだ。同性愛者、って何」
ア メ リ カ の 八 〇 年 代 は ブ ラ ッ ク・ パ
「 そ う だ よ。 だ か ら お ま え の あ だ 名 も い
つかは消える運命にあるわけさ。そんな 「 同 性 愛 者、 っ て い う の は 読 ん で 字 の 如
105
いた。アメリカの政治も、ゲイ・パワー
ニア、マイアミなどで大きな力を築いて
ともいわれ、ニューヨーク、カリフォル
ワーにとって代わるゲイ・パワーの時代
い。
対する敵対行為だとしか言いようがな
リコ女性にたいする避妊手術、幻覚剤L
なら、わくわくするな。やっぱりカッコ
取引の支援など。どれをとっても人類に 「 わ か ん な い よ。 で も、 ほ ん と に い る ん
SDの開発と配布、戦後処理に絡む麻薬
いい」
Aをどう思う」
くのがスパイだからな。で、英司はCI
しかも、麻薬に関してはいまなお灰色 「 た ぶ ん 本 物 は か っ こ よ く な い ぞ。 な に
を無視しては成り立たなくなるほどの状
況が生まれたのである。
突如降って沸いたのが「エイズ騒動」で
ス の 麻 薬 シ ン ジ ケ ー ト の 秩 序 を 揺 る が 「そうか。でも、国のために命を賭ける、っ
いるのも、大英帝国時代から続くイギリ
てかっこよくない」
しろ目立たないように、こそこそやるの
あった。この免疫不全症候群はなにもゲ
し、利益を損ねているからだ、との見方
「うわ、おまえもテレビに冒されてるな。
と こ ろ が、 そ の 勢 い を く じ く よ う に、 で、コロンビアの麻薬を異様に敵視して
イに特有の症状ではなく、だれもが同様
もある。
ご い 道 具 を 使 う ん じ ゃ な い か。 そ れ に、
がスパイの仕事だからな」
に罹患する恐れのあることは早くから知
命なんかだれも賭けてないよ。だからす
のか。CIAって、アメリカのスパイ組
られていたことなのであるが、なぜかゲ 「 お ま え、 そ ん な ホ ー ム ペ ー ジ 覗 い て る
イに固有の奇病のように報道されてき
織だろ。
『
た。
』なんかでみるじゃないか」 むずかしいのはなにが『国のため』なの
007
このタイミングと、この扱いを裏読み 「なにいってるんだ。
『 007
』はM16じゃ かわからない、ということさ。たとえば
ないか。あれはイギリスのスパイ組織だ 同性愛者を減らすことがどうして国のた
すれば、そこに謀略の影が浮かんでくる
よ。
『 007
はなんとか』っていうのがあっ
て、それだけはモデルがダレスとかいう
ない」
けない、というほうが国のためかもしれ
めになるんだい。そんなことをしてはい
作り出したものではないか」そういう噂
CIAの昔のえらい人なんだって」
の で あ る。
「エイズウイルスはCIAが
は、巷間に溢れていたのである。
じっさい、CIAの謀略工作には、想 「 な ん だ、 詳 し い ん じ ゃ な い か。 父 さ ん 「 そ う だ ね。 で も、 や っ ぱ り エ イ ズ は い
像を絶するものが少なくない。CIAが
知らない。なにしろ知られないように動 「 う う む、 お ま え の あ だ 名 に は 困 っ た も
のほうがむしろ素人だ、たいしたことは
やだ」
行った被爆の人体実験や、プエル・ト・
106
カ 国 債 を 一 斉 に 投 売 り す る こ と な ん だ。
が ら、 大 蔵 省 が ど う 始 末 を つ け る の か、 そうなれば、世界の経済システムが大混
の だ。 で も、 そ の う ち 消 え て し ま う さ。 い。あいつらは大和銀行の不正を知りな
気にするな。
黙ってみていた。
ルスだが、怖くはない。感染しないよう
だ。CIA傘下のDDI(情報本部)が
あいつらとは、いうまでもなくCIA
すぞ、アメリカの力を甘く見るなといっ
んだ。国債の投売りなんかしたら叩き潰
だから、おまえらの不正はお見通しな
乱に陥る。
それはともかく、HIVは恐ろしいウイ
に自分で注意すれば防ぐことができるか
大和の不正を報告すると、ドイッチCI
やっている。いまは大和だけにとどめて
らだよ。だからあんまり大騒ぎすること
大蔵省が大和を庇うと予測して、てぐ
おくから、かわりに大蔵省がお縄につき
ている。
お医者さんが注意を怠ったために感染し
すねひいて待っていた、といったほうが
なさい、神妙に石抱きの刑を甘受しなさ
A長官が、
大和の巨額損失事件をトップ・
てしまった。ああいうケースは、自分で
真実に近いだろう。うちは奴さんの注文
い、というわけだ」
はないんだ。
は注意しきれないからね」
どおりに動いてしまったわけだ。連邦準
不正は大和だけじゃない。ほかの都銀も
「 お 医 者 さ ん じ ゃ な く て、 大 臣 が 謝 っ た
備制度理事会のグリーンスパン議長は上 「Qの会」全 体会はこの日も水 島研究室
で も、 川 田 君 た ち の 場 合 は 事 情 が 違 う。 シークレットにした。
んだよ」
院公聴会で大蔵省を公式に批判した。
ながら、お医者さんがやることを黙って
らさ。厚生省は危険があるのを知ってい
注意するよう、指導する責任があったか
と、社外取締役の選任を命じた。おまえ
に不正があるとして一〇〇万ドルの罰金
ヨーク証券取引所が野村證券の財務報告
そして、その二日後に、今度はニュー
のだ。
いつもと違う。どこかぴりぴりしている
どおり始まっていた。が、会の雰囲気が
始時間に間に合わなかったが、会は予定
で行われた。篠崎は電車の遅れのため開
「 そ れ は ね、 厚 生 大 臣 に は お 医 者 さ ん に
みていた」
「たしかにきみが言ったとおりだったよ。
リカが一番恐れているのは、不良債権を
だが、本音はまた別にある。今、アメ
の引止めにかかっているらしいのだ。
辞めたい」といい出し、大蔵の中川が彼
訊ねると、どうも厚生省の大貫が「会を
となりのJETROの長谷川に小声で
おれたちはまるで石抱きの刑にあってい
抱えた日本の都銀が、苦し紛れにアメリ
たちは信用できないというわけさ。
る。大和銀行事件のその後を知ってるか
107
住専処理に対する怒りは日本人には珍し
本当に怒っている。大蔵省の過剰接待や
「 C I A ば か り じ ゃ な い だ ろ う。 国 民 も
証拠が出てきて、ついには大臣の謝罪で
学長を殺人容疑で告訴ですよ。省内から
訟に続いて、今度は主治医の帝京大学副
製薬会社を相手取った損害賠償請求訴
いる」
とにかくやめてくれ、というに決まって
る と 知 っ た ら、 同 僚 は ど う 思 い ま す か。
す。でも、ぼくが今こんなことをしてい
いったいいつからこんなことになって 「いや、そんなことはありません。ただ、
く、一過性のものではない」
しまったのか、みんな頭を抱えています。 とにかくいまの厚生省は変なんです。何
「実際、そんな人がいたんですか」
官が辞任することになった。不祥事との
か追い込まれている」
しょう。
関連を否定しているけど、そんなものは
振り返ってみれば水俣だっておかしかっ
「 だ か ら と う と う、 昨 年 の 暮 れ に 事 務 次
だれが見ても明らかで、あれは引責辞任
「 だ か ら っ て、 そ ん な あ い ま い な も の で
従来のやり方は国民の命よりも企業の 『Qの会』をやめることはないだろう」
たし、スモンだっておかしかった。
が、溝口さんが言われるように、国民の
利益のほうを大事にしていた。それじゃ 「 ま あ そ う な ん で す け ど、 し ば ら く 休 ま
です。
怒りは一過性ではない。引責、というこ
あいけないって、気づいている人は気づ
せ て も ら い た い、 と。 も う 少 し 言 え ば、
とにしてしまうと、事務次官だけでは収
省内に溢れている。針の筵に座らされて
れ ぞ れ に 共 犯 な ん で す。 だ か ら、 怖 れ、 責任ですから」
ような考えに染まっていたみんなが、そ
悪いのは副学長ばかりじゃない。同じ
してしまっているんです。これはぼくの
したためかミスばかりで、現場が大混乱
この一月から立ち上げた基礎年金番号制
いるのは、なにも厚生省ばかりではあり
浮き足立っている。この刑事責任はどこ 「 そ れ は そ れ は。 さ ぞ や 自 治 省 が 喜 ん で
いてたんだ。水俣では担当職員に自殺者
ませんよ」
まで及ぶのだろうか、ってね。考えてみ
まらなくなる可能性がある。担当部署の
「ぼくがいってるのは中川さんがいう針
れ ば、 警 察 と 検 察 の 動 き 次 第 な ん で す。 「 ほ ん と に そ う な ん で す。 仕 事 を 楽 に し
度が、ランニングテストなしにスタート
の 筵 と 少 し 違 う ん で す。 相 手 が み え な
ようということから始めた番号制の導入
責任者にも及びかねない、
という不安が、 まで出してしまった。
い。これからどうなっていくのかが読め
だから、いま、警察を刺激したくない。
が裏目に出てしまって。もう、たいへん
いることでしょうね」
ない。省内はみんな疑心暗鬼です。少な
いや、ぼくが、というんじゃないんで
くも薬事局はね。
108
き 止 め る わ け に は い き ま せ ん で し ょ う。 る必要がある。ところが警察庁は明らか
「 ま あ、 休 み た い と い う も の を 無 理 に 引
です」
警察と諜報は異なるもので、組織上分け
機能、機材等は新組織が受け継ぐべきも
は対立するものですし、最終的にはその
カ の 組 織 が 理 想 的 か ど う か は 別 と し て、 している体外的な諜報活動、防諜活動と
だ。そうしたときに厚生省内部の様子は
でも、われわれの活動はこれからが本番
庁の抵抗があっても、別途の組織を作る 「 C I A の 子 分 と し て、 日 本 に お け る ソ
ている、ということですね。だから警察
本でのFBIとCIAを独占しようとし 「補足しますと
に国民の議論を待たず、不透明な形で日
のです」
ぜひ知りたい。そういう情報はこれから
連の影響を監視してきた公安調査庁がい
」 と、 今 度 は 堀 田 が
・・・・
もいただけるとありがたいですなあ。ど
必要がある、と、そういうことですね」
報機関に転進して活路を見出そうとして
続ける。
うでしょう」
ま、存在意義を失って、CIA張りの諜
る。
溝口の整理を引き取って、春田が続け
「 も ち ろ ん、 そ う し た こ と は 適 宜 ご 報 告
いたしますし、ふつうにやれる協力はし
は会のメンバーとしてマークされること
に、
阪神淡路大震災での対応を見る限り、 が、オウム真理教に対する破防法適用に
防衛庁の情報をまとめる必要があるの
ていくつもりでおりますから。問題なの 「 諜 報 に は 少 な く と も 外 務 省、 警 察 庁、 いる。
と、実際、忙しくて時間が足りないこと
警察が防衛庁に情報を提供することは考
全庁の未来を賭けてしまった。この、場
ここを使う手もあるにはあるのです
だけなんです」
「それじゃあ始めますか」
し入れがあったようだった。
正式な議題に入る前に大貫から脱会の申
の上に乗って、諜報活動を指揮する法的
も、たいして役立つものはない。これら
外務、防衛の情報を警察庁がただ集めて
また、アメリカ寄りになりすぎた現在の
しい組織が必要です」
られます。ここを吸収するにしても、新
察庁に足元を見られるのが落ちだと考え
と、その能力はあまり期待できない。警
当たり的で先見性のないところをみる
溝口がそう切り出して、会はスタートし
権限を持った機関が不可欠だ、というこ
「 公 安 調 査 庁 は だ め で す。 市 民 運 動 に 不
ど う や ら、 会 は ま だ 始 ま っ て お ら ず、 えられない。
た。
とです。
信を買いすぎました。いまもまた、組織
ここで杉井が発言を求めた。
「 組 織 班 の 論 議 を ま と め ま す と、 ア メ リ
当然これは、密かに警察庁が進めようと
109
また、内閣官房副長官はどうしても旧
を 持 っ て も ら う 必 要 が あ る、 と 同 時 に、
る外務省には、もっと独自の情報収集力
メリカや総合商社の情報に頼りすぎてい
運動用に、民自党議員に売ろうとしてい
内務省系の省庁を代弁し、その他を大蔵
新組織のメンバーを受け入れ、協力して
る。
ます。こうした組織を吸収しても、新し
担当秘書官が代表することになる。
の生き残りのため、市民運動情報を選挙
い組織は国民の広い支持を得られないと
芽はありませんね。全省庁の事務次官会
安調査庁が新組織に横滑りできるような
シ ャ ル・ カ バ ー)、 い わ ゆ る 民 間 人 を 偽
ほとんどないため、NOC(ノン・オフィ
日本では官民の人材交流、人材移動が
いく態勢が必要だ、とする。
「 そ れ は 本 当 で す か。 や は り 無 能 な ん で
議で多数意見を占めても、秘書官のレベ
装して諜報活動に当てる手段が極めて限
この図式からいって、法務省傘下の公
すね」
ルでつぶされる。もちろんここを通って
定される、という。
思います」
「 市 民 運 動 情 報 を 含 め、 選 挙 情 報 を 売 っ
も官房副長官が潰しにかかることでしょ
堀田が答える。
ているのは警察です。個々の議員に対し
材面からも作りようがなく、防諜だけに
いずれにせよ、本格的な諜報機関は人
う。
というより、そもそも、新しい防諜組
てじゃあないですけどね。公安調査庁の
情報なんて、警察庁の情報に比べたら屁
限った活動にならざるを得ない、という
織が必要かどうか、というところで、こ
戦前の陸軍中野学校のような精鋭を生
のようなもんだ。そんなこともわからな
の 結 論 で す。 組 織 班 が 警 察 と 手 を 組 む、
む素地そのものが失われている今日、精
ことであった。
「 こ れ に つ い て、 法 制 班 か ら も っ と ほ か
という結論を出すなら、法案の政府提案
鋭の存在を前提にした特殊任務を考えて
い連中じゃあ、
新組織でも使えませんね」 の構想はつぶされる、というのが法制班
にないですか」
もありうる。しかし、それがないとなれ
ば、法案は議員立法でいくしかない、と、 も無駄であり、却って危険でもある、と
水越が立ち上がる。
「 閣 議 提 出 の 関 門 と し て、 内 閣 官 房 の 首
これが法制班の結論です」
いうのである。
相秘書官が三人います。外務、大蔵、警
察の三省庁から派遣され、外務担当秘書
の人材も有効だが、やはり核となるのは
人材班からは公安調査庁、内閣調査室
全体会を終え、別れ際に、堀田が磯崎
官は外務省と防衛庁、警察担当秘書官は
当面、警察庁警備部だという。また、ア 「 あ い つ に は 何 か あ る な。 ひ ょ っ と し た
にささやいた。
主に自治省、警察庁の代表として行動す
110
ら、おれたちの計画はもう漏れているの
岸壁のはずれから、若い娘が二人、ムギ
島にバスはなく、船着場には迎えの車が
唯一のリゾートホテル、「はいむるぶし」
並んでいる。近くに集落はないので、全
船は二十人乗りぐらいの白いクルーザー
への客は磯崎を含め、総勢六人。緑の送
ワラ帽子を手で押さえながら、必死で駈
厚生省はこれからも、次々に暗部が暴か
で、足が速い。しぶきを上げて海原を切
迎用ワゴンに乗り込んだ。
かもしれない」
れ る。
「 あ い つ は、 お そ ら く そ の 一 部 を
り裂く感じで、キャビンの片隅以外はど
員が何がしかの車に乗ることになる。島
知っている」
。堀田の不気味な予言であ
こにいても、
このしぶきを浴びてしまう。 「 は い む る ぶ し 」 と は「 は え( 南 )」「 む
「 あ い つ 」 と は、 長 谷 川 の こ と で あ る。 けてくる。暑い風だが爽やかである。
る。
れ(群)」「ぼし(星)」、つまり「南群星」
右 前 方 か ら 緑 の 深 い 島 影 が 迫 っ て く る。 島では南半球の目当て星(極星)が地平
が、もちろん、キャビンで小さくなって
ころに、離島行きの船着場がある。いか
別荘地で名高い竹富島だ。しかし、快速
ホテルはヤマハが鳴り物入りで始めた
で、琉球語で南十字星を意味する。この
にも南の島らしい木の実や貝殻を組み合
クルーザーは竹富島をやり過ごしていっ
リゾート展開の代表的なもので、知名度
いる客は一人もいない。
わせた手作りのアクセサリー・ショップ
そうスピードを増す。シャツはぴったり
石垣港のフェリー桟橋とやや離れたと
やアーサー汁を飲ませる定食屋、釣具店
は高い。が、沖縄本島のような巨大なホ
線上に姿をあらわすのである。
など、
小さな店が建ち並ぶ岸壁の一角だ。 と肌につき、髪の毛からは水が滴る。
場から出てきた船長が、大声で叫ぶので
時間をすごす。時間がくると、切符売り
客は三々五々、近くの土産物屋を覗いて
合所というにはいささか手狭で、船のお
立つと、だれもが濡れすぎた自分を発見
四〇数分の旅程、小浜島の船着場に降り
エンジン音にも負けずに響いてくる。
キャッ、キャッと上げる歓声が、うなる
に広がる海を凌ぐ輝きはない。写真は現
やチラシに溢れている。しかし、目の前
海の青さを強調したさまざまなポスター
スポーツのガイド・カウンターがあって、
一階のラウンジのコーナーに、マリン
濡 れ て い る の は さ っ き の 二 人 の 娘 た ち。 心地のよいホテルだった。
テルとは違い、こざっぱりしていて、居
ある。
する。ハンカチやタオルで顔を拭く姿が
実に圧倒されているのである。
船のへさきに近いところで、だれよりも
「小浜島行き、出るよーう」
そこここに広がる。
釣具店の並びにある切符売り場も、待
「おーい、あんたらも乗るんだろーう」
111
マリンスポーツ・コーナーの中心的なメ
こ の 国 の や り 方 に 対 す る 対 抗 措 置 が、
る土地の強制使用が続くことになる。
者に代わり、知事が代理署名してくれる
ニ ュ ー は や は り ス キ ン・ ダ イ ビ ン グ で、 よう、懐柔策に出た。
九六年六月二一日に臨時県議会で可決し
九 五 年 九 月、 沖 縄 本 島 北 部 の 住 宅 街 で、 約のガイドライン見直しを急ぐアメリカ
はあの池島佳苗のものではなかった。
泳する水中写真に目を凝らしたが、それ
は、九六年四月一五日、沖縄の米軍基地
日本の周辺有事を想定して、日米安保条
代わりに基地縮小を求めた。
えたたせようとしていた。
かって、いっそう反基地の思いを強く燃
投 票 は 九 月 の 八 日。 沖 縄 は こ の 日 に 向
条例案」である。
しかし、第二次世界大戦での沖縄戦の悲
買物帰えりの小学生少女が三人の米兵に
の二〇パーセント縮小を発表。これには
大半のスペースを占めている。磯崎は壁
車で拉致され、乱暴された事件は、返還
沖縄の心臓部にある海兵隊基地・普天間 「沖縄に行ってくれませんか」
に貼られたポスターの一枚、若い女が遊
後もいっこうに縮小されないまま多くの
基地の返還も含まれていた。
惨 さ を 知 る 大 田 知 事 は 代 理 署 名 を 拒 否。 た「在沖縄米軍基地の整理 縮
・ 小と、日
米地位協定見直しの是非を問う県民投票
米軍基地を抱える沖縄に激しい怒りを呼
が、これも見掛け倒しで、アメリカ軍の
位協定の見直しを含む再検討を約束。折
事件の半月後、連立与党と政府は日米地
定の問題に火をつけた。
たことは、日米安保条約と、その地位協
き、犯人の逮捕、身柄拘束ができなかっ
人が特定されても、日米地位協定に基づ
ねての予定通り、基地内に逃げ込み、犯
とりわけ、犯人の米兵たちは犯行後、か
理署名を拒否した大田知事は、国を相手
者が立ち入る事態が生まれた。また、代
契約切れを迎えた楚辺通信所などに地権
そのため、問題はさらにこじれ、実際に
かった。
使った移転・リニューアルにほかならな
天間の返還も単なる日本の国家予算を
地機能も低下させないことが前提で、普
極東一〇万人体制を堅持し、海兵隊の基
圧の中で」とある。
磯崎のそれは「現地レポート・基地の重
の 地 勢 か ら 極 東 の 危 機 管 理 を 考 え る 」。
篠山に与えられた仮タイトルは「沖縄
志である。
つの名前があった。あの評論家、篠山啓
された企画書に目を通すと、巻頭にあい
て沖縄特集を組むのだということで、渡
がる最中のことであった。投票に合わせ
たのは、沖縄が住民投票に向けて燃え上
磯崎が某月刊誌からそんな依頼を受け
び起こした。
から迫っていた基地借用地の契約期限切
の訴訟で敗訴。地権者が再契約を拒否す
この構成を見るだけで、特集の狙いは
れに当たって、延長契約を拒否する地権
112
ね」といったタッチの編集姿勢になって
地は必要。知恵を尽くすが、我慢もして
明 ら か だ っ た。
「 沖 縄 も 大 変 だ け ど、 基
ろめたさを感じていた、といったほうが
ないわけではなかった。いや、十分に後
トアイランドへ赴くことに後ろめたさが
人たちを取材したその足で、南のリゾー
予約を取る客で、ひとしきり賑わってい
センターの受付けカウンターは、明日の
のインストラクターになった。
定宿になっている。池島はこのセンター
キン・ダイブのメッカで、島のいたる所
いる。
だから、何か自分を納得させる口実を
に日本を代表するすばらしいポイントが
た。小浜島からさらに南の二つの島がス
ポートは明らかに添え物だ。しかし、
今、
必要とした。バブル崩壊以後、沖縄の離
あるのだという。
いい。
沖縄を語る以上落とすことのできないレ
島のリゾートは厳しい。彼らの苦境を少
背骨を通すのは篠山の論文で、磯崎のレ
ポートであることも事実である。
しでも緩和することができるのなら、と、
底をガラス張りにした船から覗けるの
ポイントがあって、もぐれない者でも船
また、島の途中にも美しいさんご礁の
結局のところ、篠山の論文に肉付けを与
自分を納得させられない。
えるだけに終る恐れも少なくはない。
が、 そんなことも考えたが、これではとても
そうであっても「こいつは人任せにはで
で、評判なのだ、という。
て、さんご礁の海を見ずに帰る手はない」
池島佳苗だ。彼女には何かある。彼女
が昔、スキン ダ
・ イビングのインストラ
クターをやっていたという小浜島に行け
といわれ、磯崎もさっそく予約を入れる
きないぞ」と、磯崎はそう考えて、この
「 承 知 し ま し た。 行 き ま し ょ う 」 と、 そ
ば、その何かをつかむことができるかも
ことにした。そのガイドに「インストラ
客が減るのを見計らって、彼を捕まえた。
ク タ ー か 」 と 聞 く と「 そ う だ 」 と い う。
カウンターの若いガイドに「ここまでき
う返事をしたとたんに、脳裏をよぎった
しれない。磯崎はそのために「はいむる
依頼に応じることにした。
名前、それが池島佳苗である。
夕 食 後、
「はいむるぶし」建設以前か
小 浜 島 の「 は い む る ぶ し 」 と い え ば、 ぶし」にやってきたのだ。
沖縄本島からはまだ大分先になる。つい
ツ・センターに足を伸ばした。ここも「は
をやってたはずなんだ」
島佳苗って人がここでインストラクター
で と い う に は 大 旅 行 だ が、 季 節 は い い。 らこの島にあった、老舗のマリンスポー 「 ず い ぶ ん 昔 の こ と に な る ん だ け ど、 池
七月中に本島から原稿を送ってしまえ
いむるぶし」にあやかって、リニューア
ルされ、若いダイバーたちのおしゃれな 「池島佳苗ですか、知りませんねえ」
ば、ちょっとした夏休みにもなる。
磯崎は「基地の重圧」に苦しむ沖縄の
113
「ここに写真があるんだけど」
磯崎は、佳苗から送られてきた最後の
レジャー雑誌をなんとか発見して持参し
かった。
心のアルバムで、池島佳苗はすぐに見つ
のアルバムではなく、マリンスポーツ中
の男がCIAの要員であることはそのう
おそらくこれは決定的な証拠だろう。こ
たことを悟られないように工夫した。が、
ち判明するに違いない。磯崎はそう考え
た。
なにかとても懐かしいものに出会った
気分になった。だが、ここにいる佳苗は
た。
「うわー、
こりゃあ古いわ。俺なんかじゃ
黒 の ス ト ラ イ プ を 持 つ お し ゃ れ な 魚 が、
さんご礁は限りなく美しく、青いネオン
請われて撮らせたものだろうか。佳苗の
ピンクの縞柄の岩をつつくと、岩はぱた
磯崎にとって、まったく知らない佳苗で
確かにうちのポイントだよ。あした、こ
写真には客らしい男との二ショット、三
り と 閉 じ、 た だ の い か つ い ゴ ロ タ 石 に
ぜんぜん無理だよ。こいつがそうなのか
こ行くよ」
ショット・シーンが多い。ウエットスー
なった。
のような魚の群れが身を翻した。黄色と
「 あ あ、 そ う だ。 古 い ア ル バ ム な ら い っ
ツが彼女のボディーラインをいやがうえ
い。すっごいいい女じゃんか。この写真、 あるはずだった。
ぱいあるよ。ちゃんと揃ってるかどうか
トの中、ぜんぶそうだよ。持ちきれない
「 お 客 さ ん、 こ っ ち だ。 こ の キ ャ ビ ネ ッ
いま見つけてくるわ」
だ。二ショットが何枚か続き、次のアル
そして、やはりいた。篠山啓志、あの男
い。
ウエストに手を回している男も少なくな
拾ってくかい。うわ、すごい。こんなに
の 一 種 だ。 刺 身 に す る と う ま い ん だ よ。
ビーナスが乗ってる絵で有名なシャコ貝
ア と い っ て ね、 東 京 じ ゃ あ シ ャ ゴ ウ 貝、
は わ か ん な い け ど な。 ち ょ っ と 待 っ て、 にも強調している。引き締まった彼女の 「 お 客 さ ん、 ラ ッ キ ー だ よ。 そ い つ は ギ
から勝手に見てよ。そこのテーブル使っ
でかいのは滅多にいないよ」
た。見覚えのある政治家、作家、そして 「ほら、あれが西表(いりおもて)だ。歩っ
て い い よ。 も う 何 年 も 触 っ て な い か ら、 バムになると、今度は三ショットが現れ
汚れてるかもな」
たときにはね」
外 国 人。 ど う や ら 篠 山 の 招 待 客 ら し い。 て行けそうだろ。行けるんだ。潮が退い
真 っ 白 な サ ン ゴ が 海 底 に 敷 き 詰 め ら れ、
アルバムはマリンスポーツ・センター
水の屈折で海面に浮いて見える。この白
だが、それがだれなのかわからない。
まって、ずっと最近まで、年二、
三冊で、 磯崎は外国人が写ったその写真を抜き取
のリニューアル・オープンの式典から始
り、
何点かの写真を入れ替えて、抜き取っ
四〇冊ほどが揃っていた。センター全体
114
このあたりには素朴な民家が多く、その
表島の東海岸まで続いている。
いじゅうたんが小浜島の西海岸から、西
がなかった。
それは篠山と写っているときでも変わり
ておくべき立場であったのだ。そうした
磯崎のほうから一言あいさつの声をかけ
よ う に 同 じ だ と い う こ と に 気 が つ い た。 に 伝 わ っ て い た は ず な の だ。 と す れ ば、
あ っ て、
「戻ったら電話をよこせ」とい
東 京 に 戻 る と、 編 集 部 か ら の 伝 言 が
ずに、である。もっとも、デスクが「篠
件だけで磯崎を呼び寄せた。要件も告げ
それにしても、デスクは明らかにこの
社交儀礼的なことに、磯崎は何よりも弱
うのである。なんだろう、と電話をする
どこかに泊まっているのだろう。クルー
西表島の緑によく映えている。
と、
「 と に か く 社 に 顔 を 出 せ 」 と い う。 山先生がお呼びだ」と告げていたら、磯
い。
「 あ の こ ろ は「 は い む る ぶ し 」 に 泊 ま っ
崎はどうしただろう。いまよりももっと
ザ ー に 同 乗 し た 二 人 の 娘 が 泳 い で い る。 「お疲れさまでした」
ていた有名人がよくきましてね。最近は
暑い中、しぶしぶ出かけてみたわけだ。
困惑していたかもしれない。いまはもう、
赤や黄色の原色の水着が白と青、それに
減りました。若い人が多くなって、利幅
「 お う、 ず い ぶ ん 焼 け て る な。 さ ぞ や い
も減りましたね」
だ。ギアを刺身にさばいてもらった。池
きているよ。行ってやってくれ」
読ませてもらったよ。力作だな、さすが
珍しい人がキミを待っている。会議室に 「よお、ご無沙汰じゃないか。レポート、
い バ カ ン ス だ っ た ん だ ろ う。 と こ ろ で、 出たとこ勝負。会うほかはない。
島佳苗を覚えていた。
におまえだよ。胸のうえまで込み上げて
センターにあるレストランの料理長
「 人 気 者 だ っ た で す よ。 マ ス コ ッ ト、 と 「だれですか」
前では、米軍の駐留を正当化しようとす
きている怒りというのかな、その実感の
なんと、まったく予想もしなかった事
るおれの論文なんかすっかり形無しだ」
いうんですか。いや、アイドルだ。なん 「篠山啓志だよ、篠山先生かな」
かこう、センター全体が華やいでました
態に立ち至った。なんの心の準備もない
ままに、
いきなり篠山に会うハメになり、 「 あ り が と う ご ざ い ま す。 篠 山 さ ん の 文
よね。マスコミなんかもよく来ていた」
あらためてアルバムを眺める。一枚一
できませんが、私のレポートに関して言
章は読んでいませんのでなんともお答え
が、考えてみればいっしょに特集を組
うならば、これは私の力量というよりも、
磯崎はいささか慌てた。
引っかかる。
どれもこれも、
鮮やかに笑っ
んだ間柄である。当然、磯崎の名も篠山
枚 は 申 し 分 の な い 写 真 な の だ が、 何 か
ているのだが、表情がみなハンで押した
115
をやってるかなんて、みんなお見通しな
はいいところがいっぱいあるだろう」
沖縄がおかれた現状そのものが持つ切迫
んだから。はっはっは」
いですねえ」
いけませんでした。いつか、西表か与那 「 そ う だ と す る と、 ち ょ っ と 気 持 ち が 悪
感といいますか、説得力ではないかと思 「 え え、 残 念 な が ら 今 回 は 時 間 が な く て
うんです」
「うむ、それもある。確かにそれもある」 国に行きたいと思っています」
篠山は腕を組むとしきりに深くうなず 「 西 表 は い い ぞ。 マ ン グ ロ ー ブ の 原 生 林 「 ま あ、 お ま え が な に を や ろ う と そ れ は
を 言 い た い の か が 読 め ず に 訝 っ た。 が、 続いている」
くのである。磯崎は、篠山がこれから何
ないかな」
芽がない。潰されてしまうのがオチじゃ
か ま わ ん さ。 だ が な、 あ れ は だ め だ よ。
が鬱蒼としていて、川沿いにどこまでも
次の瞬間、篠山は一転してリラックスし 「行ったことがおありなんですか」
んです」
「 お お、 も う ず っ と 昔 の こ と だ け ど な。 「 潰 さ れ る。 い っ た い ど こ が 潰 す と い う
与那国には行ったことがない。あそこか
た表情になった。
「 石 垣 島 に 行 っ た ん だ っ て な。 石 垣 の ど
「 野 党 か も し れ な い、 ア メ リ カ 辺 り か ら
プッシュされた外務省かもしれない」
らは台湾が見えるそうだな」
「ええ、そのようです」
こへ行ったんだい」
「白保です」
「 白 保 を 拠 点 に し な が ら、 島 を 一 巡 り し
辺をぐるぐる回っているような、居心地
造。つまりね、今の日本は、アメリカの
いかんよ。構造、じゃないかね。政治構
が、ついぞ小浜島の話は出ずじまい。周 「 い や い や、 そ ん な に 短 絡 的 に な っ て は
ひとしきり、八重山諸島の話が続いた 「アメリカ、ですか。つまりCIA」
てきました」
の悪い奇妙な会話になってしまった。
篠山はとっさに嘘をついた。
「白保はどうだった」
はなっていないということだよ。わかる
行動をチェックできるような政治構造に
「 よ か っ た で す よ。 や は り 自 然 の 宝 庫 と 「ところで ・・・・
」
篠山の表情がまた一変した。
かね」
い う ん で す か。 海 の 恵 み が す ば ら し い。
ギアの刺身とか、ウニなんかもう、その 「 磯 崎 は 最 近、 お も し ろ い こ と を 始 め た
そうじゃないか」
「 そ れ は 承 知 し て い ま す。 だ か ら こ そ、
場でほおばりました。ああいうのがほん
「おもしろいこと、なんですか、それは」 それを変えようとしている。チェックで
きる政治体質、社会体質を持たなければ
との贅沢なんだ、と思いましたね」
「 離 島 に は 行 か な か っ た の か。 あ の 辺 り 「 と ぼ け た っ て だ め だ よ。 お ま え が な に
116
が、 ほ ん と う に 力 の あ る や つ が い な い。
造の中の矛盾を衝かなければだめだ」
ならないと思うんです」
たいんだ。もちろん、おれが考えるよう
おまえが来て、引っ張っていってもらい
きると思っているのかな。そんなことで
に動く必要はない。おまえが考える通り
「 そ れ を あ ん な 直 線 的 な や り 方 で 実 現 で 「 構 造 の 内 部 の ど こ か と 手 を 結 ん で、 と
実現できるぐらいなら、それを構造など 「そう、時にはそれも必要だ」
に 動 け ば い い。『 地 を 這 う 取 材 』 が 合 言
いうんでしょう」
といいはしない。正攻法でやってくるも 「たとえ、それが外国でも」
「 ち ょ っ と 待 っ て く だ さ い。 そ れ は あ ま
葉だ」
「いやですね。わたしにはできません」
の を 叩 き 潰 す 力 を 備 え て い る か ら こ そ、 「そう、それも時には必要だ」
構造というのだよ」
りにもとっぴな話です。とても現実的と
ね」
軍基地もやむをえないというわけです
く べ き じ ゃ あ な い だ ろ う か。 そ の 上 で、 れ か ら す れ ば 別 に と っ ぴ な 話 で は な い。
地に足の着いた生活のレベルに視点を置 「 そ れ は お ま え か ら 見 た 場 合 だ ろ う。 お
を考えるのはもう時代遅れだよ。もっと
もちろんすぐに返事をしろといっている
「 お 説 は わ か り ま す。 だ か ら、 沖 縄 の 米 「 古 い な あ、 古 す ぎ る。 国 を 単 位 に も の
「 そ れ は ち が う。 お れ は 少 な く と も、 米
自在な手段を模索する」
は思えません」
軍基地があのままでいいなんて思ったこ
れでいい」
んじゃあない。考えておいてもらえばそ
思ってもみませんでした」
とは一度もないぞ。おまえのレポートに 「篠山さんにそんなことを言 われるとは
だって、ほんとうに心打たれている。現
実の痛みを絶対に忘れてはいけないんだ 「 そ ん な こ と は な い だ ろ う。 こ れ が お れ 「 そ れ は そ う で し ょ う。 篠 山 さ ん は わ た
「 そ の 通 り だ。 そ の 点 で は お ま え に 脱 帽
したからね」
「 私 た ち の 合 言 葉 は『 地 を 這 う 取 材 』 で
と思っている」
るからだ」
磯崎におれを手伝ってほしいと思ってい
も、立派に地歩を固めている。そんな人
山さんはいまや大沢のブレーンとして
え を 呼 ん で も ら っ た の は ほ か で も な い。 て、使えばいいだけでしょうからね。篠
の本当の姿だ。そして、今日おれがおま
の下で、いったいなにをどうして、自由
しが集めた材料を好きなようにカットし
だよ。おれもたまには初心に返る必要が 「なんですって」
に引っ張ることができるというんです
れ に は い ま 沢 山 の 取 材 ス タ ッ フ が い る。 か」
ある。だがな、それだけでは構造を変え 「 そ ん な に 驚 く な。 知 っ て の と お り、 お
られない。構造の内部に分け入って、構
117
「 大 沢 は 民 族 主 義 者 だ、 い や、 国 粋 主 義
者かな。いずれにせよ、
おれとはちがう。
( M P ) に あ り、 軍 警 察 が 日 本 法 に 基 づ
「 そ う は い っ て も、 構 造 に 分 け 入 り、 構
だ」
ている、などというのは、大きな間違い
県民投票に法的効力はないとして、必死
その結果賛成が八九%を越えた。
米兵も、地位協定に基づき、軍警察によっ
九五年九月に沖縄の少女を襲った三人の
投 票 は 一 九 九 六 年 九 月 八 日 に 実 施 さ れ、 の官憲は出る幕がないのである。
アメリカ軍の整理 縮
・ 小と、日米地位
協定の見直しの賛否を求める沖縄の県民
て身柄を拘束された。日本側に引き渡す
第8章 「待機」
造に取り入ったつもりが、もう足抜けで
でボイコットを呼びかけた民自党などの
よう求めた沖縄県警の申し入れは無視さ
CIAの謀略
いて起訴した場合に限って、身柄を引き
きなくなって、構造の一部に化してしま
抵抗もむなしく、全有権者の過半数にの
れたのである。高まる世論と衆人環視の
取ることができる。起訴せず、軍規に基
う、ということもよくある話です。そう
ぼる人々が、基地の縮小と協定見直しを
おれがやつのブレーンとして地歩を固め
なったらもうなにも変えることはできま
求めて投票したことになる。この勝利に、 中、日本の裁判所に起訴されたが、環視
はない。過去には、そのままアメリカに
がなければどうなったかわかったもので
づき本国送還にでもしてしまえば、日本
せん」
沖縄は沸きかえったのである。
日米安全保障条約に付属する協定である
「 だ か ら、 初 心 忘 れ る べ か ら ず だ。 お ま
えに手伝ってほしい、という話と混同し
はわたしも同感です。しかし、さっきの
「法律をいじるのは似合わないという点
いい。おまえには少しも似合わんぞ」
をいじるのは学者か役人に任せておけば
まえなら別のやり方があるだろう。法律
れはだめだ。骨折り損というやつだ。お
これによれば、日本の官憲は米軍人を直
は思われない条項で溢れている。
的な内容で、独立国を相手にした協定と
がら、占領軍の特権リストにも近い屈辱
まな「特権」を定めた協定である。さな
は、米軍人と軍属の日本におけるさまざ
日米地位協定は、見直しどころか即刻破
こんな無法なルールがまかり通っている
なかったのだ。
声が小さければ、裁判権さえ奪われかね
へ移すよう、求めたのである。日本側の
ない」として、裁判の管轄権をアメリカ
世論が騒がしく「公正な裁判が受けられ
属の地位に関する協定(日米地位協定)」 実際、裁判中も、三人の米兵は、沖縄の
逃亡、という事件もあったのである。
話ですが、あれはなかったことにしてく
接捜査・逮捕できない。捜査権は軍警察
てもらっては困る。だが、やっぱり、あ 「日米安全保障条約に伴う米 軍および軍
ださい」
118
棄 し て も 不 思 議 の な い シ ロ モ ノ で あ る。 暫定使用を認める「駐留軍用地特別措置
と『組織法案』とを、参議院法制局の知
引き渡す、という運用の変更をアメリカ
犯罪に限って、起訴前に身柄を日本側に
にゆだねたまま、殺人や強姦などの凶悪
など基本的な国家主権はすべてアメリカ
つまり、捜査権、逮捕・起訴権、裁判権
て「大政翼賛会になる危惧を感じる」と、 つまり、関係する条文と解釈で摩擦を起
ざるを得なかった。彼はこの国会を指し
民自党の幹事長さえもが日本異変を感じ
あった。これによって、アメリカ軍の特
きている、とのことで、赤い書き込みは
この、
九割が賛成という驚くべき数字に、 見を伺ったところ、法案は比較的よくで
権はさらに拡大した。
彼の熱意の現れ、とも言えるものでした。
ところが、
政府 民
・ 自党は見直しを避け、 法 」 が、 衆 議 院 本 会 議 で 可 決 成 立 し た。 人にチェックしてもらうよう、お願いし
それも九割が賛成という、圧倒的多数で てきました。
運用の変更でお茶を濁したのである。
側と約束したに過ぎないのである。アメ
演説したのである。
こす可能性を含め、考えられる限りでの
て、手厳しくやられるものと覚悟して意
びっしりと赤い書き込みがはいってい
リカさまの恩恵的措置によって、引き渡
こんな交渉をやってのけた政府の役人は
けのことである。
美紗は、会議が始まる前から浮かぬ顔つ
あった。この日のレポーターである杉井
この沖縄切捨て国会の一〇日後のことで
はなく、字句訂正から条文修正まで、指
もちろん、法案がパーフェクトなはず
していただけるようになった、というだ 「Qの会」法制班の集まりがあったのは、 参考意見が付されていて、法案の審議に
国賊というにふさわしい。そして、彼ら
沿って見直す交渉に入っていったのであ 「じゃあさっそく、杉井さんから、その『だ
適当と認めたものを除いて』とある。こ
法 防
( 諜法案 』)の一〇条で『報告義務』
を定めていますが、その但し書きに『不
摘された点はあります。たとえば『規制
も役立ちそうな書き込みなのです。
はもう次のステージ、すなわち日米安保
きで、 だ「めだったわ 「」だめなのよ」と
つぶやいていた。
めだったのよ』の中味を聞いてみること
条約のガイドラインをアメリカの要求に
る。アメリカは日本の後方支援を取りつ
れと『情報公開法』との関係が不透明だ、
報告義務を原則にし、例外を列挙すべき
といわれました。
にしましょう。お願いします」
たという水越の司会で会議が始まった。
この日も大学で司書の杉井と同期だっ
け、アジア太平洋からインド洋に至る領
域での安上がりな軍事展開を望んでいた
からである。
一九九七年四月一一日、沖縄米軍用地の 「前回の約束どおり、わたしは『規制法案』 だといわれました。
119
指摘された点を詰めていく作業は、それ
う」
となんです」
ています。でも、そんなことは問題では
のですか』と。
のですか。だれがどう、証拠を押収する
あろうかと、日米地位協定を読んでみた
がされました。実はぼくもそんなことも
なりに大変だろうな、という印象を持っ 「彼はこういいました。『だれが捜査する 「 い ま、 杉 井 さ ん か ら、 と て も 重 大 な 話
あ り ま せ ん。
『 だ め だ っ た 』 の は、 そ ん
た。地位協定のうち、刑事裁判権に関す
わ た し は 答 え ま し た。『 第 一 義 的 に は、 んですが、確かにこんな条項がありまし
違法を特定する警察官ですし、本法が規
なことじゃあないんです」
「というと ・・・・
」
「 だ め な ん で す。 わ た し た ち の 計 画 そ の
とね。
定する執行官 にもその権限があり ます』 る合意書『五の 47
の a 』 で す。 ゆ っ く
り読みますので、注意して聞いてくださ
ものがだめなんです」
い」
民 間 人 だ っ た ら、 そ れ も 可 能 で す よ ね。
彼 は 笑 っ て こ う い う の で す。『 相 手 が
「彼はこういいました。
『それで、あなた
いわゆるNOCというやつですか。でも 「権限を与え られたすべての急 使その他
「どういうことなんでしょう」
方は何をしようというのですか。ソ連の
日本じゃあほとんどがオフィシャル・カ
バーでしょう。みんな軍人か外交官です。 送達する任務に従事しているすべての軍
機密文書もしくは機密資料を運搬または
水越がメモを読み上げる。
スパイ、中国のスパイ、それともイギリ
スの、フランスのスパイから日本を守ろ
せん。でも、まさかアメリカのスパイか
あまりに平和的ですが、無駄ではありま
になりました。
あたしは頭を金槌で叩かれたような気分
されず、且つ、その所持する文書または
以上に他の目的のためにその身柄を拘束
使命と所属部隊をたしかめるという必要
う と い う の で す か。 そ れ な ら 有 効 で す。 で も、 彼 ら の 捜 査 は で き ま せ ん よ 』 と。 務要員は、その任務の性質により、その
ら日本を守ろうと考えているんじゃあな 『 安 保 条 約 で す か 』 と 聞 く と、 彼 が う な
資料はその所持を奪われ、開披され又は
づきました。
いでしょうね』と。
ぱりうなづきました。
検査されない旨、相互に合意される。
いつはできません』と。つまり、だめな
『沖縄とおなじですか』と聞くと、今度も、 執行員から要求された時は、右の急使そ
『 老 婆 心 な が ら 言 わ せ て い た だ く と、 そ 『 日 米 地 位 協 定 で す か 』 と 聞 く と、 や っ
んです」
深く、深くうなづきました。そういうこ
の他の者は、任務終了後直ちに日本国の
犯罪がおかされ、且つ、日本国の法律
「わかりません。
どういうことなんでしょ
120
国 の 軍 当 局 は 直 ち に 通 知 を 受 け、 且 つ、 なよ」
者が完全に能力を失ったときには、合衆
法律機関に出頭するものとする。かかる
謝罪してすむ問題じゃあないぞ。なめる
も、実際のところなにをやっているかは
の合意書に細かく規定されているわ。で
こ れ じ ゃ あ や つ ら が つ け あ が る わ け だ。 こに配属されるのか、といったことはこ
足らないっていうの」
「えっ、
刑事裁判に関する合意書だけじゃ
よ。もっと先があるんだから」
なってるの。この、外部というのは日本
ガードされ、外部に漏れ出さないように
務員法』の守秘義務などによって厳しく
『公
これらの者の所持する文書又は資料は開 「 長 谷 川 く ん、 ま だ そ ん な に 怒 ら な い で 『MSA秘密保護法』や『刑事特別法』
披され又は検査されることなく直ちに引
渡されるものとする」
「 な ん だ よ そ れ は。 め ち ゃ く ち ゃ じ ゃ な
いか」
ような表情で立ち上がった。
JETROの長谷川が、腹に据えかねた
員を提供しなければならないことになっ
アメリカのスパイ活動に対する必要な要
いうのがあるの。これによれば、日本は
の果てには思いやり予算まで分捕ってい
乗り論を持ち出して日本を非難し、挙句
けておきながら、やつらは安保条約ただ
もう我慢できない。こんなことを押し付
「 そ う よ、 水 越 く ん。 お な じ 地 位 協 定 に のことよ 」
おける基本労務契約に関する合意書、と 「 ガ オ ー ッ、 頭 に き た。 も う 許 せ な い、
「つまりなにかい、
犯罪を犯してくたばっ
ているわ」
一字一句、聞き漏らすまいとしていた
ているアメリカ野郎の所持品検査もでき
長谷川は真っ赤になって怒り狂ってい
たのかよ。ふざけるなよ」
んでみてください」
ないというわけか。
目の前でスパイされ、 「 な ん と い う こ と。 じ ゃ あ、 そ い つ を 読
現行犯でとっ捕まえても、身柄拘束はお
「 沖 縄 だ っ て そ う じ ゃ な い の。 こ れ が 沖
書、いったいだれがこしらえたんだよ」
うことか。ふざけるなよ。こんな合意文
監察技師』
『 細 菌 学 職 』『 製 図 師 』『 地 理
分析員A』
『 同 B 』『 情 報 調 査 員 』『 工 場
B』
『上級作戦分析員』『軍事人類学研究
する義務をおう。『軍事情報分析員A』『同
空管制・通信・調達における優先権、裁
の免除、免税、日本官庁優先使用権、航
カの軍務要員の出入国の自由、関税調査
結局のところ、日米安保条約はアメリ
る。そして、他の参加者はみな青ざめて
縄の人たちの怒りだったのよ」
学職』
『特殊語学顧問』『犯罪調査職』。
判特権など、あらゆる特権を保証してい
ろか、その証拠品さえ押収できないとい 「 日 本 政 府 は、 つ ぎ の 要 員 を 米 軍 に 提 供
「 ま っ た く だ。 強 姦 し た っ て ひ き 逃 げ し
これらの職種がどんな任務を帯び、ど
いる。
た っ て、 ス パ イ を し た っ て お 構 い な し。
121
連中がおかしいのじゃないだろうか。彼
ありませんね。CIAは軍務要員でもな 「 そ の、 現 場 と は 遠 い、 政 治 力 を 持 っ た
ている」
無縁な機関員にも軍務要員と区別がつか
ければ外交官でもない。だから、西ドイ
らが、自らの政治力の源泉としてアメリ
る。そして、CIAなど、軍務要員とは 「結局は日本の警察の体質だと いうしか
ないカバーをわざわざ保証している。
ツ警察は一九五二年の暮れ、CIAの武
アメリカ大使館の職員は外交特権を保
し、 外 交 官 名 簿 に 登 録 す る 必 要 も な い。 それによって米独の関係が冷え込んだか
外交官ナンバーの車を使わなくてもいい
というと、そんなことはありません。時
てしまうんじゃないだろうか。アメリカ
では、警察官もストレスでおかしくなっ
ね。米軍基地をたくさん抱える都道府県
「 で も、 そ れ じ ゃ あ 現 場 は た ま り ま せ ん
カを、CIAを必要としてきた」
これによってCIAの機関員は軍務要員
のアメリカ大統領アイゼンハワーはCI
有 し た ま ま、 外 交 官 身 分 を 秘 匿 で き る。 装部隊のアジトを急襲し、全員を逮捕し
とも大使館員とも区別されずに、泳ぎ回
Aのアレン ダ
・ レス長官を西ドイツに派 人が絡んだ事件はみんな手が出せない」
遣し、アデナウアー首相に対して何とか 「 こ の コ ピ ー を 見 て く だ さ い。 一 九 九 五
ています。
ることができるようになっている。
怒りを収めてもらった。礼を尽くしたわ
ひらひらして見せた。
JETROの長谷川が一枚のコピーを
の記事です」
年一一月四日付けの『週刊ダイアモンド』
「 た し か 春 田 さ ん は 前 に、 日 本 の 対 C I
メリカの横暴に対して一番腹を立ててい
Aカウンター エ
・ スピオナージは警察庁 けです」
警備局外事課が担当している、といって 「 沖 縄 の 場 合 を 考 え て み る と、 実 際、 ア
ましたね。ところが今の杉井さんの話に
じゃあないでしょうか。それなのになぜ
したよ。ぼくのようにすぐ頭に血が上る
が何を言っているのかようやくわかりま
コメントが載っていた。
その記事には元警察庁長官の、こんな
ん」
彼らの中から不満の声があがってこない
よ れ ば、 日 本 の 官 憲 は 手 も 足 も 出 な い。 るのは現場の痛みを知る第一線の警察官 「 皆 さ ん の こ れ ま で の 論 議 で、 こ の 記 事
これはどういうことですか」
仕事が終って、社の会議室を覗いた組
普通の神経の持ち主なら、日米地位協
者にはなかなかこういう文章は読めませ
た。その春田昭彦に、待ってましたとば
定には反対してもおかしくない。それに、
のか、それが不思議です。
かりに長谷川宗之が質問を浴びせたので
実際に協定を変えるだけの政治力を持っ
織 班 の 春 田 が、 そ の ま ま 討 議 に 加 わ っ
ある。
122
諜報機関をつくろうとする動きに対し
現 場 を 押 さ え る こ と も 難 し い。 だ か ら、 ある。
すべきなんだ。それを知る最良の立場に
C
「 I A 関 係 者 を、 か つ て の ソ 連 の K G
B関係者と同列に論ずるのは間違いです
ほんらい、警察庁長官ともなればそうし
ても、なぜ危険なのかを説明すべき立場
対応を取ることは不可能だ。違法行為の
よ。
た事態を改善する立場にあるのだが、そ
合意文書がどれだけわれわれの主権を制
なんだ。日米地位協定や、それをめぐる
だから、主従関係にあるアメリカと日
限し、警察官の活動を歪めているか、そ
れはしたくない。
情報関係者だからといって一人一人尾行
本を、友好国だからといいくるめ、事態
れを語るべきなんだ。
日米はあくまでも 友
" 好国 な
" ので
あって、米政府職員であるCIA職員を
するなんてことはできるものではない。
を改善しようとする勢力にヒステリーと
それを、こんなコメントでごまかそう
しかし、彼らが盗聴、封書開封などの
いう言葉を投げつけて、押さえ込もうと
と す る。 日 本 の 警 察 の こ の 体 質 こ そ が、
しているのだ、と」
明らかな違法行為をしている 現
"場 を
"
押さえた場合は別ですよ。だがその場合
叩かれっぱなしの日本を作った。彼らが、
したちの中にCIAをKGBと同列に論
日本経済を失速させた責任は大きい」
でも、今年二月にフランス政府が駐仏大 「 そ う よ、 そ う だ と 思 う わ。 第 一、 あ た
使館員五人を国外追放したような措置を
水越が、みんなの怒りを引き取った。
じている人なんていますか。だれもいな
とれるかどうか 」
そして、記事はこれを受け、 た「だし、 いでしょう。CIAの諜報活動はKGB 「で、どうします。問題はそれでしょう。
この元警察庁長官は今回の騒動を契機に のそれとはまったくちがう。KGBの活 つまりこれからどうするか」
が 台 頭 し て い る こ と に 対 し て、
『それは
『日本も諜報機関をつくれ』とする意見
トは直接、日本。脅威の質が違うでしょ 「 そ う ね、 そ れ よ ね。 こ の 法 案 を ど う す
だもの。それに対してCIAのターゲッ
動のターゲットは日本ではなくアメリカ
水越の一言で、みんながようやく我に
危険であり、あまりヒステリーを起こさ
うに」
るかよね」
返った。
ないほうがいい』と冷静さを保つよう警
ている厳しい立場を国民の前に明らかに 「あたし、ほんとは規制法には乗り気じゃ
「 こ の 元 警 察 庁 長 官 は、 ほ ん ら い、 い ま 「CIAの規 制ができないんなら 意味は
告している と
」 結んでいる。
「 つ ま り、 ぼ く 流 に 解 釈 す れ ば こ う い う 日本がアメリカとの関係において置かれ ないしなあ」
ことですか。日本ではフランスのような
123
なかったのよ。事業法一本でいいと思っ
るものだと思うんです。
問を感じておられるのか。その点はどう
チごっこはやめたいわ。でも、日米地位
知らないところで権力が育つ。そのイタ
不可避にすると思うんです。われわれで
よい法案の提出は地位協定の見直しをも
ものでないのは明らかです。したがって、
好や同盟といった対等な関係を目指した
戦国の主従関係を基礎としたもので、友
ておかなければならない。タイミングの 「日米安 保条約はどう見ても 戦勝国と敗
なのでしょうか」
協定は許せないわ。これに楔を打ち込む
協定の見直しを提案してもいいじゃない
今日の、あるいは将来の日米関係を反映
だから、そのためにも規制法を準備し
手段がほしい」
ですか」
て い た。 規 制 を 増 や せ ば 利 権 が 生 ま れ、
「 規 制 法 は 明 ら か に、 地 位 協 定 に 抵 触 す
る。条約は国内法に優先するから、日米 「つまり、我らの労作である『規制法案』 したものに変える必要があるのは確かで
に向けて引き続き細部を詰める、という
を 前 提 に 組 み 立 て ら れ て し ま っ て い る。
ただ、すでに日本の防衛体制は日米安保
す。
しかし、地位協定の、しかもその周辺付
ことでいいんでしょうか。
安 保 条 約 を 拘 束 す る こ と は あ り え な い。 と『組織法案』はこのまま維持し、完成
属文書に過ぎない確認書が国内法を無視
したがって条約の破棄には十分な論議と
しかし、一部にあるようにこれを軍事条
むずかしい。
準備が必要です。簡単に結論を出すのは
反対者はなさそうですが、いかがですか
続ける。
」
水越が参加者一同を見回して、さらに
できるとは考えられません。国内法が作
られれば、いずれは確認書の見直しが必
要になる。そして、それが地位協定の見
直しに結ばれていく。わたしは規制法が
地位協定に楔を打ち込む手段になると思 「 法 案 の 扱 い は そ れ で い い と し ま し て、 約から経済、社会を含むグローバルな条
いますね」
て も 確 認 し て お き た い こ と が あ り ま す。 抜本的な見直しが不可欠です」
提出のタイミングを考える場合にどうし
約に変えていこうというなら地位協定の
「 い ず れ に し て も、 時 の 勢 い と い う も の
う。しかも、その勢いは合意書の見直し
つまり、
時の勢い待ち、
ということでしょ
か、それとも日米安保条約そのものに疑
めている地位協定に反対しておられるの
お持ちなのか、それとも、その大枠を決
それらはワンセットだ。占領地扱いはご
な 軍 事 協 力 と 占 領 地 同 然 の 地 位 協 定 で、
いるとは思えません。欲しいのは従属的
が な け れ ば、 議 員 立 法 の 成 立 は 難 し い。 皆さんは法案と抵触する合意書に不満を 「 い や、 ア メ リ カ が そ ん な こ と を 望 ん で
はおろか地位協定の抜本改定を可能にす
124
しかありません。というより、占領地並
して扱っているので、普通の国とは矛盾
一方で 日
「米安保の堅持 」を主張してい
た。しかし、安保条約は日本を隷属国と
確認するというのは意外に困難なものだ
持ち歩いている。が、顔写真から人名を
磯崎は小浜島以来、手に入れた写真を
みたいものだ、と思った。
みの有利な地位協定を失ったら、安保条
してしまうことになる。
めんだ、と考える限り、安保は破棄する
約をアメリカが破棄してくる可能性も大
要がある」
きりしている。自主防衛、すなわち安保
の著者・石原慎太郎の場合はずっとすっ
大沢の秘書をしているという池島佳苗は
いだ。
三の男の正体はどうしてもわからずじま
そ の 点、
「
『 N O 』 と 言 え る ニ ッ ポ ン 」 ということがわかった。写真に写った第
「安保条約に対する距離の取り方は提出
破棄なのだ。少なくとも、それを覚悟せ
きい。われわれはそれを覚悟しておく必
のタイミングと関係するものですが、法
を取るのがもっとも手っ取り早い方法だ
今どうしているのだろうか。彼女に確認
大沢はこの自己矛盾をどんなふうに整
が、それはまた、もっとも危険な方法か
よ、と訴えている。
理しているのだろうか。それがひどく気
案の中味とは直接関係がありません。法
だと思います。
もしれなかった。
制班で論議するより、全体会に諮る案件
ただ、法案を準備しようという以上、こ
になった。そしてまた、大沢の ブ
「 レー
とも考える。しかし、こいつはもう時す
篠 山 啓 志 に ぶ つ け る べ き だ っ た の か、
れと抵触する合意書は破棄するつもりで
ンではない 」という篠山啓志。彼はこの
辺りをどう見ているのだろうか。
結束したほうがいい。地位協定に関して
いる。そういえばアスペン研究所が発表
から、堀田とじっくり話す場面が減って
ひょっとしたら池島と、そのうちの誰か
は な ん だ ろ う。 篠 山 と 大 沢 と 、 そ し て
それにしても、篠山と大沢の微妙なずれ
でに遅し、である。
ないでしょうか」
したジョセフ・ナイの『ライジング・サ
がCIAのエージェントに間違いはない
は、その限りで見直しを求めるべきでは 「 Q の 会 」 が 結 成 さ れ、 班 構 成 に な っ て
少
「 な く と も、 現 状 の ま ま の 地 位 協 定 で
はだめだ、と。そういうことですね。み
ンを管理する』を分析する約束もあのま
らいでいる。
までの図式が、磯崎の中でいま確実に揺
のだが、篠山=大沢=CIAというそれ
ませていよう。磯崎はぜひそれを聞いて
堀田のことだ。もうそれはしっかり済
まだった。
「
なさんはいかがでしょう 」
この論議を聞きながら、磯崎は大沢八
郎のことを考えていた。大沢は日本を
普通の国 に
」 する、といいながら、もう
125
「Qの会」の動きが筒抜けであることは、 に は み ん な が も う と っ く に 忘 れ て い た
のである。議員会館の会議案内の掲示板
つようになったのも、松永が春田を紹介
思えば磯崎や堀田がこの会と接触を持
会 は ま ず、 こ の 日 の 設 定 に 関 し て の、
ためて驚かされる。
堀田と初対面だったことに、磯崎はあら
してくれたからこそである。その松永が
館での会議をセットした杉井美紗、堀田
代表幹事は春田昭彦、幹事には議員会
る名称が掲げられていた。
磯 崎 に 対 す る 篠 山 の 言 動 ば か り で は な 「違法諜報活動阻止機関研究準備会」な
く、 い く つ か の 兆 候 か ら 確 実 な も の に
なってきていた。
大蔵、厚生不祥事はその後もとどまるこ
にも及んだ。そのさい、厚生男は上司か
ことは大貫隆一の所属する厚生省年金局
に、水島系経済学者たちとも一線を引い
格上、役人には幹事をご遠慮願うととも
党を除き、賛同をいただいた。一会派か
立てて欲しい』と申し入れ、考慮中の二
をかけ『今後の連絡を含め、顧問を一人
人が名を連ねている。議員立法という性 「 党 派 に 偏 り が 起 き な い よ う、 全 党 に 声
杉井の説明から始まった。
ら「 Q の 会 」 の 活 動 内 容 を 質 さ れ、
「退
た布陣である。
と を 知 ら ず、 高 齢 者 福 祉 施 設 の 不 正 で、 豊、それに『山陰新報』の松永正紘の三
会 済 み 」 と 返 答。
「その立場を堅持する
ら複数の顧問が出ているのは議員の希望
派の議員立法をめざして歩みを進めたほ
味はありません。活動を公然化し、超党
「こうなったら活動内容を秘密にする意
は広範な層から受け入れられそうだ、と
相当に関心が高く、議員個人のレベルで
説明が行われ、参加していた議員や議員
続いて水越のほうから『防諜法案』の
旨 は 各 会 派 に 趣 旨 説 明 を 行 っ た と こ ろ、 はない」というような趣旨であった。
超党派の国会議員が名を連ねた。会の趣
秘書に対し、法案成立への協力を依頼し
また、この日の会合には、顧問として
うが得策じゃあありませんか」という溝
いう感触を持てたのである。
よう」釘をさされた、という。
口 の 意 見 が 多 数 を 占 め、
『積極待機』と
て第一部を終了。顧問議員の退席後、内
によるもので、当会の偏りを示すもので
いう言葉が会の合言葉のようになってき 「やあ、遠くからお疲れさまでした」
そ し て こ の 日( 一 九 九 七 年 七 月 三 日 ) 出迎え、面識のない会のメンバーに次々
けるのは得策でないと思われたからだ。
暗い議員たちにいきなり懸案事項をぶつ
輪の討論である第二部に移った。事情に
と引き合わせている。磯崎も慌てて堀田
第二部では、堀田が法案成立に向けての
春田が到着した松永を会議室の入口で
の全体会は初めて水島研究室から飛び出
を紹介した。
た。
し、参議院議員会館の会議室で開かれた
126
懸念される問題点、解決すべき課題を整
体回収を止された。戦闘機がいつまでも
の動きができず、米軍も学生の反対で機
り回すなんて、信じられない」
理。これを受けて、最大の問題点である
校舎に刺さっていたんで印象に残ってい
意見ばかりなので、あえて労務契約に関
た。
ここで堀田が立ち上がり、発言を求め
日米安保条約に伴う『地位協定』をどう
るけど、警察の動きが鈍かったのは戦闘 「みなさん裁 判権に関する合 意書 へのご
機が機密の塊だったからなんだろう」
するのか、の論議に入った。
口火を切ったのは中川伸一だった。
する合意書についての意見を言わせても
付けなかったら、軍の急使であるのかC
急使とかいう者に識別できる何かを義務
くなる。
としたら、わが国の官憲はなすすべがな
が軍の関係者とCIAとを混同させよう
どい文面だと思いますね。もしアメリカ
あって、安保条約が国内法に優先すると
請 し て い る ん な ら、 こ れ は 憲 法 違 反 で
合意書が、あるいは地位協定がこれを要
れるとすれば、民主主義は成立しない。
が、国会で国民をだますことが正当化さ
メリカの機密に触れるからなんだろう
でも、日本政府は嘘をつきとおした。ア
実体がまったく不透明です。
当の数にのぼると予想されますが、その
れています。したがって、この要員は相
る要員を必要とする、情報部門で構成さ
ト以上が、この労務契約で上げられてい
現在の在日米軍の任務の七〇パーセン
「 そ の 裁 判 権 に 関 す る 合 意 書 で す か。 ひ 「偵察機のU2機がXXXX Xした事件
IAの隠密であるのかの区別がつかない
しても憲法は越えられないのだから、協
らいます。
だけでなく、他の一般アメリカ人、一般
定は無効だということになる」
のか、それ以外の情報なのか、軍の情報
また、ほんとうに軍事上必要な情報な
外国人、あるいは外国人かもしれない日
本人との区別もつかないはず。そもそも 「つまり、地位協定に唯々諾々と従って、 機関に配属されているのか、CIAが要
つまり、日本人が日本の資金でCIA
求するセクションに配属されているのか
し、 深 く 追 求 せ ず に 庇 っ て き た 裁 判 官、
のために情報収集や情報分析をさせられ
職務を遂行してきたと称する警察官、検
変な事件がいっぱいあったような気がす
政治家、評論家などはすべてが売国奴だ
ても、それを拒否できないどころか、そ
警察活動が成り立たない」
る。
ということです。国家主権を放棄したこ
の立場に置かれていることを表明するこ
を確かめるすべはありません。
ファントム戦闘機が九州大学の校舎に
んな協定を受け入れながら国家権力を振
「 も う 正 確 に は 覚 え て い な い け ど、 昔、 察官、外務省の役人ほか、これを正当化
突っ込んだときも、警察は現場確保以上
127
「 確 か に、 他 の 軍 事 協 力 と 同 列 に は 語 れ
与を否定しながら賠償に応じ、最高裁へ
害賠償を命じ、警察庁も神奈川県警も関
わらず、国と神奈川県に四〇〇万円の損
ない問題があるね。しかも、行動の決定
の上告はしないという、不可解な結末で
とも許されない。こんなことが許されて 「人道に関する罪ですか」
が外国にある、というのが問題だ」
いいのでしょうか。
覆われている、ということです。たとえ
す。
す」
いのか。確認のすべがまったくないので
再度政府機関にもぐりこまれる恐れはな
う。
ひどく気になるんです。そのまま使っ
ど、その身分はどうなっているんでしょ
のか。
スパイとしての訓練を受けた上で、 関 係 者 が 協 力 さ せ ら れ る で し ょ う け れ
までヘッドハンティングされてはいない
ているのかもしれない」
あたし、この事件には最初から裏がある
とも取れる発言をしています。
はない、としていましたが、後に、引責
られています。警察庁は始め引責人事で
職し、県警警備部長が総務庁に転出させ
しかも八七年には神奈川県警本部長が辞
問題はこの諜報要員が秘密のベールに
『 情 報 調 査 員 』『 犯 罪 調 査 職 』 と い う の
ば、政府機関の研究員が、その身分のま 「
「変ですよねえ。
『工場監察技師』
なんて、 「まさか、それはないでしょう」
んじゃないかと思っていました。という
にちがいない。
『 細 菌 学 職 』 な ん て、 生 物 兵 器 の 研 究 者
隠されていることがたくさんある」
と。それに、国際部長宅は東京都町田市
かりに装置が放置されていたというこ
まれていて、
闇は深い。捜査上の都合で、 装置は旧式で、発見してくれといわんば
捜査機関、情報機関も秘密のベールに包
にあるのに、警視庁ではなく神奈川県警
はなんですか。公安調査庁とか警察庁の
産 業 ス パ イ そ の ま ん ま じ ゃ な い の か い。 「 い や、 在 日 米 軍 や C I A 同 様、 日 本 の
師』を大量に動員して、中国のすべての 「 気 に な る と い う の は、 先 日 の( 六 月
在 日 米 軍 は 一 時、
『 地 理 学 職 』 と『 製 図
二 六 日 ) 判 決 で す。 共 産 党 国 際 部 長 宅
の も 盗 聴 そ の も の は プ ロ の 仕 事 で す が、
井戸や湧き水の位置を地図化していたそ
の警察官が実行していること。これって
「 な る ほ ど、 そ い つ は す ご い 推 理 だ ぞ。
電 話 盗 聴 事 件 で、 神 奈 川 県 警 の 現 職
認められた、あの東京高裁判決です。
つまり、神奈川県警の警察官をアメリカ
うじゃないか。細菌戦に際して細菌を投
人が動員されていいのかね。
判決は五人の犯行を立証しながら、盗聴
軍の諜報部、あるいはCIAが直接指揮
おかしいと思うんです」
幸い今じゃ、日本人の代わりにスパイ衛
を指令した黒幕の認定がない。にもかか
入する作戦図だろう。こんなものに日本 (一九八六年当時)警察官五人の 関与が
星がやってくれてるんだろうけどね」
128
いうことだけなんです」
わざ発覚するような手を使ったのか、と
可能なのか、ということと、なぜ、わざ
「 え え。 残 る の は、 組 織 上 そ ん な こ と が
る」
した。こう考えれば多くの矛盾が解決す
木飛行場。とりわけ厚木はCIAの対中
も見落とせません。横須賀海軍基地、厚
在日米軍の中枢が神奈川にあったこと
使館支部は厚木の下に置かれたのです。
厚木に統括本部を移します。アメリカ大
えなかった。でも、それは当時のことで、
を交わしただろう。たぶんそれはやむを
警察だったら当然、米軍と何らかの密約
県での警察活動は不可能だった。自治体
うでなければ横浜や川崎を抱える神奈川
置きますが、その後、六支部体制をとり、 「 そ う か、 緊 密 な 連 携 が あ っ た ん だ。 そ
けれど、戦後、内務省・国家警察を解体
杉井の意外な問題提起に、堀田が強い
して自治体警察を作り出したアメリカに
謀略基地として重要な役割を果たしてい 今は ・・・・・・
」
ました。ここで多くの在日中国人を訓練 「 ま ち が え な い ほ う が い い。 今 も 基 本 は
在日中国人が日本から消えるのです
とってはどうだ。こんなタテマエは通じ
関心を抱いたようだった。
よ。警察の協力なしにできると思います
ない。制度的にみてもそうだが、アメリ
自治体警察だ。トップ人事を警察庁が押
か」
カから見ればいまだに自治体警察のまま
し、スパイとして中国本土に送り出して
しかし考えてみれば、不可能だという確
も ひ ど い の で、 ア メ リ カ が ひ た 隠 し に
だといえる。とすれば、交わした密約は
「 組 織 上 可 能 か ど う か、 と い う こ と に な
証もない。そのぐらい、この国の警察制
し、いまだに資料の公開を拒んでいる事
「 神 奈 川 県 警、 と い う の は お も し ろ い で 「 そ れ だ け じ ゃ あ な い。 人 道 上 あ ま り に
度はわかりにくいということだ」
件がある。朝鮮戦争で北の捕虜になった
さえ、広域事件に対処する、というのが
「神奈川県というのは最初にCIAの工
一 〇 〇 人 足 ら ず の ア メ リ カ 兵 の 救 出 に、 廃棄する必要もない」
ると、
わからないとしか言いようがない。 いたのです。
作訓練所ができたところです。武蔵小杉
一 万 人 を 越 す 在 日 朝 鮮 人 が 送 り 込 ま れ 「 な ん と い う こ と だ。 も し そ れ が 本 当 な
ここに春田が割って入った。
の内部情報が異様に保護されている今の
ら、とんでもないことだ」
警察庁設置のタテマエだ。
駅の近くにあった東川クラブというのが
た。何の援護もなく落下傘降下をさせら
すね」
それで、G2のキャノン機関もここに吸
れ、みんな犬死です。彼らも事前に厚木 「 と い っ て も、 確 認 の す べ は な い。 警 察
で訓練を受けていた」
収されたんです。
CIAは初め、日本郵船ビルに本部を
129
報公開を義務づけるほかはないわけだ」
うと信用できるものではない。一定の情
いうことだ」
に足がつくような盗聴をやったのか、と
IAに指示された警察官が、なぜ、すぐ
政治構造のままでは、警察がなにをいお 「 そ う な る と、 も う ひ と つ の 謎 だ ね。 C
「 つ ま り、 現 職 の 警 察 官 の ま ま で、 軍 の
長谷川が、また吠えた。
そいつを見つけ出してやる」
カ バ ー を か ぶ っ た C I A に 指 揮 さ れ る、 「 絶 対 に あ る ぞ、 何 か の 理 由 が。 何 と か
ということもありえないことじゃあない
わけね」
「 謀 略 工 作 ま で や る の は 異 様 だ け れ ど、
ろう。だから、感覚が麻痺してくる」
頂戴し、わざわざ島根から駆けつけてく
おるところですが、ここで少々お時間を
依頼を受けて動くのは日常茶飯事なんだ 「 み な さ ま、 た い へ ん 論 議 に 熱 が 入 っ て
「この辺りを徹底的に暴かなくちゃいけ
が多いのではないか、と思います。内閣
官房でいうなら、内政審議室タイプとで
も申しましょうか。
しかし、この国には外政審議室タイプ
の思考方法をもっぱらとする者も、安全
保障室タイプの思考を得意とする者もお
るもので、それらの研究を抜きにしては
世の中、動きません。
ということで今日は、みなさんが見落
としておられる内務省系情報機関構想に
ついて、お話しようと思います。この構
想は未完ではありますが、すでに存在し
さんより、内務省系情報機関構想につい
れました本会幹事でもあります松永正紘
たってザル法にもならないわ。警察が情
ての報告をお願いしたいと思います」
ないわね。
そうでなければ、
防諜法を作っ
報をお届けしちゃうわけですもん」
やや間をおいてから、語りだす、このタ
それを受けて、首相官邸の危機管理の甘
備えが何一つできなかったこと。そして
後も連絡体制の悪さから、有事に対する
総書記の死去を事前に察知できず、死去
かけは一九九四年七月、北朝鮮の金日成
待機状態にあるわけです。
ております。すなわち、当会の構想同様、
「戦後の謀略事件と神奈川警察の関連を
春田に紹介されて、松永がゆっくりと
発案者は内閣官房副長官だった石原信
立ち上がった。会議室をぐるりと見渡し、 雄(長野オリンピック組織委員長)。きっ
けたと思われるアメリカ人が相模湖に浮
イミングの取り方に、磯崎は政治家を目
洗う必要もあるのかな。三鷹事件を仕掛
いていた。が、その後の捜査はなぜかな
といえば経済官庁型の思考をお持ちの方
「 こ こ に お い で の み な さ ん は、 ど ち ら か
を感じざるを得なかった。
い。
土地に詳しい人ならご存知だろうが、 指した彼が身につけた風格のようなもの
あそこは中央本線だが、神奈川県ですか
らね」
松永が、古い事件を紹介した。
130
さがマスコミによって強く批判されたこ
と、だといわれます。
が、緊急時には全省が安全保障室の傘下
これによって、内政審議室傘下の三省
機を邦人の救出と、難民の上陸対策、散
官邸、すなわち石原信雄は朝鮮半島の危
機を煽った。こうした危機への出番は自
兵による小地域占領に絞り込み、その危
ま す。 そ し て、 そ の 実 体 は 内 政、 外 政、 気に進む。と同時に、外務・防衛の外政
衛隊よりも警察なのです。もちろん核の
に入り、自治省・警察庁の官邸掌握が一
審議室の力が相対的に低下し、内政審議
つまり、名目は官邸機能の強化であり
安保の三室の壁を取り払い、共通の情報
脅威もありますが、こいつは自衛隊でも
始まりを意味している。
わり、自治省・警察庁による戦後支配の
大蔵省を中心に進んできた戦後体制の終
と、内務省支配のクーデターが外政審議
中曽根時代の後藤田にもできなかったこ
です。
こ れ は あ る 種 の ク ー デ タ ー な ん で す。 対応できるしろものではないので別問題
機 関 を つ く る こ と。 そ の 上 に 旧 内 務 省、 室はずたずたに引き裂かれる。
つまりは自治省と警察庁が君臨する、と
いう支配の構図です。
一九九四年一〇月二一日付けの『産経
新聞』はこれを「日本版『NSC』設置
純な戦前回帰ではない、ということです。 えた。それを可能にしたのが武下内閣か
室、内政審議室の抵抗もなく進むかに見
ら村山内閣まで七代、七年にも及ぶ長期
ここで注意して欲しいのは、これが単
も常設に」と、報じています。NSCと
これによって防衛庁の力はむしろ低下す
にわたって、石原が官僚の最高ポストに
内閣情報会議
は、アメリカの国家安全保障会議のこと
る。軍と内務省との力関係は、戦前と逆
君臨した結果だといっていい。
へ 『危機管理』見直し
ですね。
転しているのです。
郵政、運輸、法務を参加させる。この四
安全保障会議を充実し、テーマに応じて
る。内閣情報調査室を事務局に、定例に
を局長クラスから次官クラスに格上げす
でもやってくる、と叫び続けて、地歩を
の専売特許が半島の危機でした。明日に
保 室 の 下 に 連 絡 情 報 委 員 会 を 設 置 す る。 共和国に代わったからです。彼の在任中
関係局長会議を設置する。緊急時には安
固めていった。
想敵がソヴィエトから朝鮮民主主義人民
それは脅威の質が変わったからです。仮
日本版NSCは『防諜法』の実行組織を
など、とても考えられません。
も、これがCIAを規制するものになる
り ま せ ん。 か り に、 成 立 で き た と し て
の前で、吹き飛ばされていたにちがいあ
この会の『防諜法案』など日本版NSC
な ぜ こ う い う こ と が 可 能 に な っ た の か。 そ し て も し こ の 構 想 が 実 現 し て い た ら、
具体的には内政、外政、安保の三室長
点です。
131
構想が待機状態にある、ということです
傘下に収め、CIAの情報をもありがた 「 つ ま り、 自 治 省 石
・ 原 構 想 と、 わ れ わ
れの『防諜法案』と、二つの相容れない
です。身元確認が手早くできれば危機管
た番号システムの構築と、カードの携帯
構想を打ち出した。住民票をベースにし
そして、待ってましたとばかりに背番号
くことになるのは火を見るように明らか
ね。
く頂戴して、この国の方向を決定してい
です。
理がやりやすい、という論理です。
まえに法制班の会議で、元警察庁長官
法務省主導の破壊活動防止法適用に反対
し か し、 彼 は こ の 構 想 を 隠 密 裏 に 進 め、
さんだったかな。そのコメントで、日本
し、警察庁の捜査権限が飛躍的に高まる
そして、オーム真理教の事件に対しては、
その一方で構想の重要性をマスコミに
にも諜報機関を、の声を『ヒステリーを
内 閣 官 房 長 官 に も 報 告 し な か っ た。 が、 のコメントが紹介されたんです。長谷川
リークして支持を仰いだ。今お話した産
起こさないほうがいい』と批判していた 『組織犯罪対策法』を持ち出してきた。
の足掛かりが築かれようとしているので
個々の場面では確実に内務省・石原構想
経の記事などがそうです。これをマスコ
ミは「大きなミスを犯した」と指摘して のは、そういう背景もあるのですね 」
いますが、どうでしょうか。私はこの時 「 と 思 い ま す よ。 わ た し た ち の 法 案 が 成
す。
ほ ん と う の と こ ろ、 構 想 を 軌 道 に 乗 せ 、
立すれば自治省、というよりも、警察庁
を含む旧内務省・石原構想は抜本的に見
これを花道に引退して、都知事選に打っ
点では孤軍奮闘、ほかに方法はなかった
のだと思っています。
直さざるを得ない」
九五年の知事選に、空手で出馬すること
て 出 た か っ た の で し ょ う。 が、 結 局 は
時の官房長官は権力の肥大化に敏感な社
たのでしょうか」
文党の五十嵐(広三)だったからたまら 「で、
その後、
内務省・石原構想はどうなっ
ない。構想の危険性をかぎつけた五十嵐
が、実績は残ったのです。つまりタイミ
に動かした。構想は白紙といっています
とはいっても、彼は現実に官庁を横断的
させた。これは朝鮮半島有事の演習のよ
援も拒否し、救助よりも身元確認を優先
察です。自衛隊の出動も、外国からの救
災で危機管理を仕切ったのは実質的に警
わたしが関心を持ったのは石見市長の岩
知事選に臨んだ。
現のために、与野党相乗り、必勝態勢で
また、内務官僚の悲願です。彼はその実
自治省官僚が都知事を押さえる。これも
になりました。
ング待ち。息を吹き返すまでの、待機な
うに見えました。
は 激 怒 し、 石 原 の も く ろ み は 頓 挫 し た。 「 眠 っ て い ま す。 し か し、 阪 神 淡 路 大 震
のです」
132
ここには自治省の独善的な体質と、それ
補。石原と激突するわけです。
り、政党の後ろ盾もなく都知事選に立候
らついたようだが、結局はご承知のとお
に押し込もうと全力で動いた。岩槻もぐ
そこで民自党と自治省は彼を大阪府知事
たのです。
県知事で納まる器ではなくなってしまっ
岩槻を大きく育てすぎてしまった。島根
くれればありがたかった。が、自治省は
まって、武下一派の金権政治を押さえて
自治省としては島根県知事あたりで納
けです。
が天下ってくる。岩槻の目算は外れたわ
京都知事の座を狙っていた。そこに石原
で、自治省の後ろ盾をもらいながら、東
岩槻も石見市長は腰掛けにすぎないの
は追い出しにかかっていた。
にとっては目の上のたんこぶ。水面下で
はわきあいあいに見えましたが、武下昇
のような動きをしていましたから、表面
槻鉄人の動きです。彼は自治省の回し者
たか。自治省の思惑にそった地方分権の
自治省にとって、都知事の座は何であっ
うとする双璧なんです。
日本の既存権力を打ち倒し、実権を握ろ
治省官僚の石原は、CIAの力を背景に
を握ろうとしている。進取党の大沢と自
結びつくことによって、国内での主導権
自治・警察という旧内務省勢力はこれと
ようとしている。
織することで、アメリカの覇権を確立し
武器取引といった警察諜報を世界的に組
経済諜報に主軸を移した、といわれます
CIAは一九九〇年以降、軍事諜報から
る、と睨んでいます。
わたしはこの裏にはCIAの支持があ
のがうかがえます。しかし、なぜか実力
の失敗には石原構想の白紙撤回と似たも
ゆえのもろさがうかがえます。この調整
モサド(中央諜報機関)のものだといわ
大西洋軍事同盟)のものかイスラエルの
コンピュータ・ファイルはNATO(北
が、反対はしないでしょう。世界最大の
が望んでいるのかどうかはわかりません
コンピュータによる背番号管理をCIA
ムを導入する、と息巻いています。
ステムに賛成し、岐阜県独自でもシステ
にあった。梶原は知事会長名で、このシ
狙いは何だったかというと、住民票ベー
ました。
自治省官僚の梶原岐阜県知事にすげ換え
から』という理由で勝手に取り上げ、元
例の全国知事会長の座を『素人で不安だ
なりの目算、
裏づけがあるはずなんです。 自治省はまず、都知事が就任するのが恒
以上に威勢がいい。強引な手法にはそれ
れています。どちらもCIAに近い組織
の が 警 察 諜 報 の 重 視 で す。 麻 薬、 テ ロ、 スの番号システムを下から推進すること
が、もうひとつ、見落としてはならない
ですからね。
は青天の霹靂でした。
自治省の構想外だった青島都知事の登場
れれば多くのことが行き詰まる。だから、
指令塔です。逆にいえば、東京に反対さ
133
CIAの謀略
第9章 「展開」
「 こ の レ ポ ー ト は ポ ス ト 冷 戦 後、 日 本 が
進む方向には四つの可能性がある、とい
地元、島根の情報筋では、評論家の篠山
啓志が岩槻政策事務所に送り込んだ池島
ひとつは従来どおり、日米安保を機軸に
う。
まとめたアスペン研究所の『ライジング・
佳苗の動向に注目が集まっています。こ 「 ジ ョ セ フ・ ナ イ や エ ズ ラ・ ボ ー ゲ ル が
この磯崎くんによれば篠山はCIAかも
アメリカとの関係を最優先しながら、東
めは普通の国として日米安保から離脱し
サンを管理する』を、大雑把にまとめる
て、独自の軍事・経済政策を構築する道。
しれない、ということですが、われわれ
三つめはアジアの経済ブロック化を目指
アジアの安定を模索していく道。ふたつ
事 選 で は 岩 槻 で は な く 石 原 を 応 援 し た。 うことになった。いつもの代々木の喫茶
その篠山が送り込んだ池島が、東京都知
店は思いのほか混んでいて、密談を交わ
して、東アジアを糾合する道。四つめは
とこういうことになる」
そしていま、彼女は大沢の秘書に納まっ
すにはふさわしくなかったので、二人は
国連などの国際機関を重視し、その枠の
の間でも、その疑いを強めています。
ている。CIAはおそらく、岩槻よりも
残暑の日差しを街路樹の葉陰と高速道路
磯崎と堀田は久しぶりに二人だけで会
おいしい石原に乗り換えた。われわれは
中で国益を擁護する道。
この四つだ」
の影とで避けながら、千駄ヶ谷に向かっ
プランターで溢れ返り、花の咲き乱れ
ラシゼミの声が届いてきた。
いものじゃあないなあ」
中にもある程度意識されている。目新し
神宮の森からは秋の訪れを告げるヒグ 「 な る ほ ど、 そ の 選 択 肢 は 私 た ち 自 身 の
た。
池島の動きをそう読んでいます。
ローカルな視点で申し訳ないが、そうだ
からこそ見えてくるものもあるんだと
思っています。もうひとつ、言い添えて
おきますと、石原が考えている北の散兵
に よ る 小 地 域 占 領 の モ デ ル が 島 根 で す。 る明るい店があって、パティオ風の席が 「 そ の 通 り だ。 し か し、 こ の レ ポ ー ト は
ま ず 始 め に、 第 一 の 選 択 は 非 現 実 的 だ、
なん卓か道路沿いに並んでいる。
な」などとつぶやきながらも、結局はそ 「従来どおり、安保にすがる、というチョ
難民の大量上陸想定地でもあります。
イスはない、というわけか。これは大胆
として切り捨てている」
われたのも、このことと無縁ではないと
こに落ち着いた。密談は道路の喧騒の中
だね」
わたしは石見市でカードの導入実験が行 「おれたちにはおよそ似つかわし くない
考えております」
へと溶けていってしまうだろう。
134
「 つ ま り、 ブ ロ ッ ク 化 の 芽 は 摘 む、 そ う
国家かのチョイスになる、としている」
る。つまり、単独防衛国家か、集団自衛
実的な選択肢は二か四だ、と短絡してい
化についてはあまり根拠も示さずに、現
「 そ う 思 う。 し か し、 ア ジ ア の ブ ロ ッ ク
「極めてクールなレポートなんですね」
かなうのか、を検討している」
うように誘導するのがアメリカの国益に
んだ。だから、次に、日本がどこへ向か
メリカは避けられない、というわけなな
だろう、としているわけだ。日本の脱ア
に、ナイとボーゲルは、そうはいかない
日米安保の中で眠り込んでいるというの
「 そ う な ん だ。 日 本 人 の 多 く が い ま だ に
も劣らぬ決定的なダメージだよ」
けた侵略国家・日本のイメージに勝ると
は世界大戦のときにアジア諸国に植えつ
日本、頼るに足らず、というメッセージ
信してしまった。
だ、というメッセージをアジア諸国に発
らず、円経済圏の樹立など、夢のまた夢
いますね」
ティールはさぞかし悔しかったろうと思
た め ら い も な く 欠 席 し て 見 せ た。 マ ハ
問 題 を 優 先 し た ク リ ン ト ン は、 な ん の
APECに共和党との対決、という国内
も見出せない。だから九五年、大阪での
とは異なる地域に固有の共通利害がなに
ば、行き着くところは核戦力の保有であ
とは間違いない。もっとありていに言え
方向、これが日本の再軍備を意味するこ
家として、単独の防衛力を持つ、という
衛か集団自衛に向かう。が、一人前の国
ろう。日本はアメリカに対して頭が上が 「 さ て、 そ こ で だ。 日 本 の 進 路 は 単 独 防
「やっぱり日本の敗北だといっていいだ
る。
めるためにつついてみた。
かぶデンファーレの花房を、苛立ちを静
磯崎はテーブルの上に飾られた水盆に浮
けです」
ることはなさそうです。ナイ ボ
= ーゲル・
レポートには先見の明があったというわ
済圏などという構想はもう二度と登場す
で、第三の芽はなくなりましたね。円経
会議)を押し付けた。
て、空疎なAPEC(アジア太平洋経済
EC(東アジア経済協議体)構想を潰し
シアのマハティール首相が提唱するEA
けれど、確かにこの間の日本経済の失速 「 安 全 保 障 理 事 会 の 常 任 理 事 国 入 り、 国
うだけの外交なんだ。
何の駆け引きもできない。顔色をうかが
たんですね。この国はアメリカに対して
AECの構想を半歩でも進めるべきだっ
の前提にあるでしょうね。だからマレー 「 A P E C の 枠 組 み を 飲 む 代 わ り に、 E
主張している」
確保する道へと日本を誘導すべきだ、と、
四の道、国際機関を通じて国益と安全を
あらゆる手段を講じてこれを阻止し、第
する最大の脅威とみなしている。つまり、
レポートはこれをアメリカの国益に対
はさせない、というのがアメリカの国益
APECでは広すぎて、地球規模の利害
135
「 そ う は 思 い ま せ ん ね。 P K O、 P K F
は集団自衛論者なのだろうか」
「 さ て、 問 題 は そ こ だ。 ほ ん と う に 大 沢
だろうか」
これに殊のほか熱心なのが大沢じゃない
に国粋主義ですよ。時代錯誤もいいとこ
国なんてありはしない。
角。いまどき単独で世界に伸していける
サクソン連合だし、フランスはEUの一
や 進 取 党 の 主 張 は そ れ だ ね。 両 党 と も、 「 た ぶ ん そ う な の で し ょ う が、 あ き れ ま
ら見限られたわけだから、路線の違いは
て、フィクサーとしての実権を失ってか
隣の国と手を結ばなければならないとき 「 実 際、 政 権 の 座 か ら 滑 り 落 ち て し ま っ
安 保 条 約 堅 持 を 前 提 に し て い ま す が ね。 すよね。アメリカもイギリスもアングロ
連平和維持軍への参加、この間の民自党
ろだ」
政治家にしたのは俺』だそうですからね」
ミー・フォスターに言わせれば『大沢を
Aのケースオフィサーと目されているジ
みたいなものじゃないか。なにしろCI
皮だね。おだてられて木に登らされた豚
「 な ん と、 そ れ じ ゃ あ ま っ た く い い 面 の
ンスのような国」
への参加は自衛隊の海外派兵のための口
ともかく、単純に利用価値がなくなった、
にとっても危険だと、ナイ ボ
= ーゲルは と取れないわけじゃあないけどな。
考えた。
そしてわれわれとおなじように、 そしてもうひとつ、CIAにとって、大
実で、とりあえずの方便でしょう。国連 「 そ う、 そ い つ は ア ジ ア に と っ て も 世 界
外交に対するビジョンなどなにも持って
いないように見えます。
沢以上に有用な相手が現れた。だからま
すます用済みになった、とも解される」
で、 狙 っ て い る の は 憲 法 九 条 の 改 正、 大沢に疑いを抱いた」
集団自衛権の確立、その後に自衛隊の国 「 な ん と、 大 沢 は C I A に と っ て 好 都 合
「 そ の、 有 用 な 相 手 と い う の が 石 原 信 雄
ですね。石原がリードする民自党も悪く
「もっといえば、国粋主義」
「つまり、単独防衛主義」
て 進 め て い こ う と 決 め た こ と に よ っ て、
ア政策を『ナイ・イニシアチブ』によっ
るまではそうだった。ナイ ボ
= ーゲルに
よって、あるいはクリントン政権がアジ
れる野中・梶山・亀井のうち、梶山・亀
実際、民自・社文の連立を支えたとさ
だ、というわけですね。
も手綱が効いている。大蔵省はガタガタ
ボ
= ーゲル路線を採用す
軍 化、 日 米 安 保 の 離 脱 じ ゃ な い で す か。 な人物ではなかったのか」
手順は違うが、石原慎太郎とおなじ匂い 「 C I A が ナ イ
「大沢が言う
『普通の国』
とは、
誇りを持っ
大事な盟友だった大沢は、アメリカの国
井は警察官僚で石原とも近い。野中にし
ないじゃないか。社文党の首相になって
て世界に伸して行く、アメリカやイギリ
益を脅かす危険人物に変わったわけだ」
を感じますね」
スのような国、ちょっと割り引いてフラ
136
もキーパーソンであったに違いありませ
かった人物です。石原はCIAにとって
の態度を保留し、核兵器保有の道を残し
まだ日本は核不拡散条約(CTBT)へ
というわけですね。たしか、あのときは
のだろう。
イとボーゲルは微妙な違いを嗅ぎ取った
て も 内 務 官 僚 の ド ン・ 後 藤 田 の 息 が か 「その瞬間に、大沢の立場はなくなった、 うだ。それはそれで問題はない。が、ナ
ん。
ていましたからね」
あとだ。これも前に話したことだが、大
「 大 沢 が ほ ん と に 見 限 ら れ た の は、 そ の
保こそ、強力だ、と主張した」
イコール・パートナーになった日米の安
述べた。いわゆる国際貢献論だ。そして、
に、アメリカ同様、国連に貢献する、と
大沢は日本の国家責任を果たすため
で、その、大沢が見限られたのはいつの
「 前 に 話 し た と 思 う が、 一 九 九 四 年 の 一
沢はその年の七月にナイとボーゲルに呼
ことなんです」
月にウールジーCIA長官がボーゲルを
び出され、ワシントンに飛んでいる」
「アメリカから見ても正論のように思え
伴って東アジアを歴訪した」
るが」
アーミテージが同席していた、という会 「 何 を 言 っ て る。 ア メ リ カ は そ れ で は 困
「 あ あ、 覚 え て い る。 た し か、 非 公 式 な 「 日 米 安 保 を 重 視 す る 共 和 党 国 防 族 の
歴訪で、公式には別にベンツェン財務長
談ですね」
だった。中味は軍事重視から経済重視へ
転換を現場に正確に伝えるためのもの
「 そ う。 あ の 旅 は C I A の ア ジ ア 政 策 の
通りだろ』とやった。これで大沢のCI
を同席させて『ほら、見てみろ、言った
大沢を疑っていた。だからアーミテージ
いうわけさ。ナイとボーゲルは初めから
ためにセットされた、口頭試問だったと
「 そ う、 あ の 会 談 こ そ 大 沢 の 本 音 を 探 る
が欲しいのではなく、ジュニア・パート
いと考えている。イコール・パートナー
を通じて、アメリカに貢献してもらいた
て捨てる。だからアメリカは日本に国連
利益が対立すればいつだって即座に切っ
益 追 及 の 道 具 建 て の ひ と つ に 過 ぎ な い。
うなんぞと考えてはいない。国連など国
るのだ。アメリカは別に国連に貢献しよ
官とナイのチームがアジアを訪れてい
の転換にとどまらず、ナイ ボ
= ーゲル路
線の採用を周知させるものでもあったわ
A内での役割は終った。つまり、見限ら
ナーのまま、国際舞台に出てきて欲しい
た。あのことですね」
けだ。
れたわけだ」
つまりは日本の軍事大国化の阻止、日
のだ」
「持論の国連重視をとうとう と語ったよ 「なんと身勝手な」
本の核兵器保有の阻止。これがCIAの 「大沢はなにを話したんですか」
目標のひとつに加わった」
137
「 と い っ て も、 そ れ が ア メ リ カ と い う 国
のだ」
「で、彼女がどうした」
連へのアプローチに関してばかりではな
ない。大沢が決定的に見限られたのは国
さそうだ。それにしても、大沢は厳しい
ジェントになるのは並大抵のことじゃな
が危険人物なんだろうね。CIAのエー
判字文のような、意味不明の文脈がはさ
えた。というより文面から情報が消えた。
ろ情報をくれていたんだが、それが途絶
だ。どうにもならない。それだけじゃあ 「 参 っ た ね。 日 本 人 は や っ ぱ り ほ と ん ど 「 う む、 彼 女 が 変 だ。 こ れ ま で、 い ろ い
く て、 E A E C に 対 す る 評 価 に 関 し て
まっていることはあるが、あとは単なる
以』、つまり『Sea、愛、A』だ」
判字文からわかったのは『海、Love、
時候のあいさつになった。
な」
めたのはそれからだ」
「 そ う だ ろ う。 大 沢 が 急 に ニ コ ニ コ し 始
だったらしい」
「というと」
「おまえがさっき言った意見さ」
「 こ わ も て の 撤 回 か。 虎 の 威 を 失 っ た 狐
だね。
よく見てみたら、狐でもなく狸だっ 「なんで『以』が『A』だ」
「えっ」
「大沢はEAECがアジア経済のブロッ
た」
BC』の『A』」
「以は『いろは』の『い』だ。つまり、『A
ク化を目指すのには反対だが、域内経済
の活性化を目指すならいいのではない
か。 日 本 の 参 加 に 反 対 し な い で 欲 し い、 「 と こ ろ で、 磯 崎 は 堀 之 内 久 子 を 覚 え て 「なんだかちゃちだなあ」
「 ま あ、 そ う い う な。 と も か く 彼 女 は C
IAを怖れている。仮に親書を開封され
いるだろう」
「もちろんだよ。二年前にも会ってるじゃ
ても困らないような注意が施されてい
とやった」
「同感だ」
= ないか。コロンビア大学の修士課程を卒
て、おれが出す手紙でも、注意するよう
「 だ が、 さ っ き も 言 っ た よ う に、 ナ イ
ボーゲル路線にとって、このチョイスは
念を押してきている。だから、いったい
業して一時帰国したときだ」
な い。 C I A が 目 を か け る 男 と し て は、 「ああ、そうだったか」
る」
どうしたんだ、と聞くのもためらってい
完全に失格なんだよ。ナイ ボ
= ーゲル路 「ニューヨークの出版社に勤 めているん
線によれば、イコール・パートナーとか だろ。なんといったっけ」
ウェイの一角にある、という」
たい彼女はどんな情報を送ってよこして
アジアのブロック化とか、そんな大それ 「 ス タ ン ソ ン と か 言 っ て た な。 ブ ロ ー ド 「ううん、そいつは困ったなあ。で、いっ
たことを窺うのはそれだけで危険人物な
138
いたんです」
ついていた。
このシナリオを書いたのはCIAとイス
ラエルのモサドだ、ということで、証拠
久 子 は『 O B グ ル ー プ 』 と 呼 ん で い る。 にあった、という。
『古参グループ』と強力な一体関係
A の バ ッ ク に あ る 軍 産 複 合 体 の こ と を、 で、
「 あ あ、 そ う だ。 お れ が 前 に 話 し た C I
「CIAの動き、ですか」
き」
イスラエルのために彼らが仕掛けた謀
親イスラエル謀略機関の中のいくつか
ニューヨーク ワ
・ シントン情報漬けに
なっていると同時に、広い国際感覚をま
日本だけ。日本はアメリカ情報、それも
手を上げて喜んでいるのはイスラエルと
無縁の、マンハッタンにうごめく無数の 「 あ れ を 劇 的 な 勝 利 だ、 と い っ て、 も ろ
和党お抱えの伝統的なシンクタンクとは
るで持ちあわせていない。彼女は日本を、
ブッシュのブレーンも、これまでの共
つまり、CIAはウォーターゲート事件
略こそ、イラクの壊滅、すなわち湾岸戦
軽佻浮薄で、みっともない国だ、とまで
「 む こ う の 出 版 事 情、 そ れ に C I A の 動
を契機に、内部対立が生まれた、という
争だったという」
がずるずる出てきています」
のだ。
持しようとする『OBグループ』と対立
手グループ』が台頭して、闇の権力を維
与えられた役割を全うしようとする『若
油価格の上昇を望んでいたイラクに、ク
いたアメリカは、停戦後の経済再建に石
イラン・イラク戦争でイラクを支持して
明らかになってきていますね。
発信される情報を見て、アメリカの意向
イスラエル植民地だ、という。そこから
配とシオニストのロビーストが暗躍する
トンは異様なところで、ユダヤ資本の支
言ってるよ。
し た。 こ の 若 手 グ ル ー プ が ウ ォ ー タ ー
ウェート侵攻を許した。
国 内 法 に 基 づ き、 大 統 領 の 指 揮 下 で、 「 湾 岸 戦 争 の C I A 謀 略 説 は、 ず い ぶ ん
ゲート事件の解明に協力した、というの
クウェートがOPEC(石油輸出国機構) だ、世界の潮流だなどと考える日本人が
いるとすれば、それは愚の骨頂だ、とも
アメリカでは多くの人が湾岸戦争の勝
の約束を無視して石油を大増産し、価格
久子によれば、ニューヨークとワシン
だ。
と こ ろ が、 こ の 両 者 の 対 立 の 間 隙 を
しかし、実際にイラクがクウェートを
利でベトナム戦争の後遺症から脱出でき
言っている。
統領に取り入ったのが、CIAに古くか
侵略すると一転して、フセインを国際犯
低迷を招いていたからです。
ら潜んでいた『古参グループ』で、彼ら
罪者に仕立て上げ、イラクを叩き潰した。 たことをよしとしながらも、イスラエル
縫って、レーガン、ブッシュ両共和党大
はイスラエルの『モサド』と強力に結び
139
ら れ て 熱 病 に 冒 さ れ た み た い だ っ た よ。
一年前にはフセインのフの字も知らな
に 振 り 回 さ れ て、 大 き な ツ ケ を 負 っ た、 た。だから今では排除の対象なのさ」
「 な る ほ ど、 そ れ は よ く 整 理 さ れ た 話 で
と考えている。
かった連中が、何十年も前からの宿敵の
多国籍軍の攻撃を正当化するために
すが、それじゃあ九六年九月のイラク再
ニューヨークが流したクェート少女の情
全イスラムを敵に回し、未来永劫、アメ
けてのムード作りさ。対外的には国連の
報、小児病院がひどい状態だと証言した
ように、あることないこと、口角泡を飛
努力が不可欠だ。ところがモサドは、こ
面子ということもある。アメリカはなに
あの少女は在米クウェート人で、証言は
爆撃はなんだったんです」
の努力を怠って、ツケをアメリカに回し
しろ国連とは別個に多国籍軍を組織した
やらせだった。イラクの油田破壊で汚れ
リカがイスラエルを守り切ることなどで
CIAの『古参グループ』はそのために、 が、名目は国連決議の実行だった。だか
た。
ら湾岸戦争終結後も決議の実行という国
た鳥の映像も、別な場所のものだった。
ばしてあげつらっていた。
嘘の情報さえ流し、アメリカ政府に莫大
連の体面を担保しなければならなくなっ
きるわけがない。イスラエル自身の和平 「 あ れ は よ く 言 わ れ る よ う に、 再 選 に 向
な 損 害 を 与 え た。 こ の 事 実 が 今、
『OB
た。
作戦遂行上からもCIAの発言力を削ご
されている。
彼らはクリントンの政策に対する批判を
ループ』
を納得させる行動も必要だった。 も嘘だった。ホワイトハウスが流したこ
と同時に、なお力を持っている『古参グ 『ソ連も支持 している戦争だ』と いうの
日本の政府や評論家が盛んに口にした
グループ』と『若手グループ』から告発
うとするペンタゴン、国防を軍事力から
強めていたからだ」
生き残るためには、
『OBグループ』
『若
とかな。
自己利益を求めてうごめく者も、 ヨークの、そして、アメリカやイギリス
のほうが事態を冷静に見ているというこ
ウス(クリントン)のまえで、CIAが 「 つ ま り、 日 本 人 よ り も ま だ ア メ リ カ 人
ろんモサドが仕組んだことだが、ニュー
がヨーロッパでも起こったようだ。もち
日本ほどではないにしろ、同様のこと
の嘘に、ソ連は正式に抗議している。
経済力にシフトしようとするホワイトハ
手グループ』が手を結び、
CIAから『モ
は間違いない。
る国際ユダヤ資本が効果的に動いたこと
の大マスコミをすべて手の内に入れてい
まあ、冷静といえば冷静だからね」
た。みんなニューヨーク情報一色に染め
「ともかく、
あのときの日本はおかしかっ
サド』の影響力を徹底的に排除するほか
はなかったわけだ。
大沢はこの『古参グループ』に利用され
140
が非常に高い。また、フリーといっても
つの階層を形成していて、相互の流動性
トというのは政治家や財界人などとひと
年前に一時帰国したときに聞いたけど
必ず何らかの利益団体と結びついてい
民一体、大合唱で支持してしまったこと
ニューヨークを舞台に進められた。しか
ロールする手段を手に入れた、というこ 「 ま あ、 こ う い っ た 情 報 コ ン ト ロ ー ル は
しいことにモサドは世界の世論をコント
し、アメリカではちゃんとその後に反省
て、その代弁をしている。日本のような
アメリカでは当時のことを振り返って
とになる」
期がくる。まずかった、やりすぎた、と
報道の中立性という概念にはとらわれな
ね。
「 確 か に、 あ の と き フ セ イ ン は あ っ と い
言いだす人がいる。それなりの資料も明
い。
になる」
う間に悪魔になりましたね」
るみに出される。
そして何よりも驚くべきことは、この階
『世界のフセインのイメージを二ヶ月で
を振り返って、磯崎は頭を掻く。
堀之内久子はそんなアメリカの健全な一
層に限っては強力な縁故、それも血縁に
アメリカのフリーランス・ジャーナリス
「日本のマスコミがユダヤ資本にやられ
面が現れたときに、ニューヨークという
よって結ばれている、ということだった
変えた』と言われている。つまり、恐ろ 「 何 の 疑 い も 持 た ず に ね。 脅 せ ば ど う に
ているという話はあまり聞かないが、あ
舞台に降り立ったわけさ」
媒体にレポートを発表することは困難
フリージャーナリストとしてたくさんの
でもなるブッシュホンでしたからね」
のとき、テレビでは報道管制みたいなこ
ね。 こ の 縁 故 に 支 え ら れ て い な け れ ば、
だ。アメリカが誇る機会の公平という市
あのとき、不思議に思わなかった自分
とが起きている。複数の局で、ディレク 「 そ こ で、 C I A の レ ポ ー ト を 送 っ て よ
ラクの支持はしないでくれ、少なくとも 「 う む、 そ れ だ け じ ゃ な い。 彼 女 は そ の
ターが、
問題発言をしそうな出演者に
『イ
健全な一面にも、不健全さがあることを
こせた」
クウェート侵攻は非難してくれ』と頼み
民社会の原理が、ここでは機能していな
いんだ、と、たしか、そんなことだった」
見逃していない。
彼女の留学の動機を覚えているかい」
込んでいる。
大沢八郎の影、石原信雄の影に怯えたの
が加えられたのか。ともかく結果的には
のか、その謎に迫る。まあ、その話は二
ジャーナリストはなぜステータスが高い
政 界 人 脈、 財 界 人 脈 と も 共 通 し て い る。
だったわけだ。しかもこの縁故は一部の
か、あるいはほんとうに、何らかの圧力 「 た し か、 ア メ リ カ の フ リ ー ラ ン ス・ 「 つ ま り、 縁 故 こ そ が ス テ ー タ ス の 秘 密
卑劣な罠をかけたアメリカを、日本は官
141
縁故を伝って、いつ政治家になるかもわ
ルーターたちの代表的な草刈場で、在学 「心当たりはないんですか」
大学はそうしたヘッドハンターやリク
なのかどうか、判断がつかない」
からないわけだから、ステータスが高い
中からたくさんのピッチを受ける。ピッ 「CIAはいま、余剰人員を抱えていて、
開封を恐れているのかもしれない。国内
安 上 が り な 古 い 手 法 に 戻 っ て い る、 と
まあ、日本でもあることだが、めぼし
郵便には手をつけないだろうが、国際郵
チはCIA内部の隠語だがな。つまり誘
のはあたりまえ、ということだ。
しかも、ニューヨークのジャーナリス
版資本や放送資本と重なっている。さら
い学生を関係する機関のリクルーターに
便は危ない。
いっていた。ここから察するに、郵便の
にはユダヤ系シンクタンクやウォール街
報告する教授も少なくない、という。ま
もうひとついい忘れていたが、アメリカ
いの声がかかる。
の金融アナリストや投資家などとも重
あ、普通の就職活動と、大差はない、と
の不健全さのひとつに『反共法』がある
ト人脈のほとんどがユダヤ系人脈で、出
なっていて、ある種のシンジケートを形
いうことだ。
という。共産党が非合法だということは、
段に隠密性が高く、推薦基準も高ければ、 思想 心
・ 情の自由が奪われていることを
意味する。アメリカが自由の国だという
選考試験も厳しい。が、近年、その人気
もちろんCIAのリクルート活動は格
成している。
そのため、これと結びつくことなくフ
リーで活躍するチャンスはほとんどな
い。雇われ記者として、上役のチェック
の情報機関やシンクタンクと違いがなく
ざまな団体や個人を取り締まる口実に
この法律は解釈をどんどん広げて、さま
のは大嘘だ、というわけだ。
という点では、日本の状況とそう大きな
なるのではないか、とも言っている」
を か い く ぐ る 記 事 を 物 に す る し か な い、 が急速に低下しているので、やがては他
違いはない。
すごいね。さすがは堀之内さんだ。 なっているらしい。これを応用すれば国
ただし、久子が言うにはジャーナリス 「うん、
ティックな発想を持ち、訓練を受けた者
の開封などやりたい放題だ、ということ
内郵便だって危ないのだから、国際郵便
よくみている」
の就職口は相当広い、という。それが諜 「 そ う だ ろ う。 だ か ら 心 配 な ん だ。 な ん
で突然、情報がこなくなったのか。連絡
ね。たしかに心配ですけどねえ」
になる」
報機関やシンクタンクの情報収集や情報
があるだけましなんだが、何かあったに 「 そ れ じ ゃ あ、 た だ 待 つ し か 手 が な い よ
は違いない。ただそれを聞いていいもの
分析、情報加工の仕事なのだ、という。
ニューヨークは、そして、コロンビア
142
ク攻撃を手控える我慢料だそうだ。
ルに仕払われている。イスラエルがイラ
いないが、同額がアメリカからイスラエ
だか知っているかい。カネに色はついて
が払った90億ドル、あれはなんのカネ
「 そ う そ う、 そ れ か ら も う ひ と つ。 日 本
す る と ス ク リ ー ン に ウ ィ ン ド ウ が 開 き、 せん。つまり瞬間的未来は予測可能なの
るわけだ。
の中のコマンド・ボタンを手でタッチす
が踊りながらクリックする。スクリーン
画面だ。その初期画面を、パフォーマー
DOBE」という画像処理ソフトの初期
いくつかの計算式を超えた操縦はできま
て、刻々と変化します。しかしそれでも
なら撃ち込むポイントは操縦法によっ
なら、計算は単純です。けれど操縦兵器
トに砲弾を撃ち込む。向こうも弾道兵器
イスラエルの我慢料を50億ドルに値
を50億ドルに値切ったら、アメリカは
久子によれば、もし日本が90億ドル
は、現に踊っているパフォーマーの単な
ところがウィンドウの中のパフォーマー
マ ー の 姿 が 影 絵 の よ う に 映 し 出 さ れ る。
ウィンドウの中に、踊っているパフォー
す。それでも、大きな誤差を覚悟すれば
ようなものはほとんど予測は不可能で
則にかなった場合にいえること。踊りの
が、それはあくまでも物理的な運動法
です。
切っていただろう、という。つまりこの
る映像ではなく、よくあるように時間を
まったく、思いがけなかったことだが、
我慢料は日本が払い、イスラエルのイス
「 な ん と い う こ と だ。 そ れ じ ゃ あ 世 界 が 「 わ か り ま す か。 こ れ は パ フ ォ ー マ ー の
いま、磯崎は春田とともにニューヨーク
こうした遊びができるんです」
動きを先読みし、映像のほうが一瞬先に
にいる。それも、こともあろうにコロン
遅らせた映像でもない。
日本の貢献を評価しないのはあたりまえ
動いているんです」
ラム攻撃用兵器に化けた」
ですね。事実を知られたらむしろ顰蹙も
リカに追従するだけなんですね」
ているんでしょうね。ほんとうに、アメ
でしょうが、外務省はいったい何をやっ
のだ。海部がアマコストにやられたわけ
事技術にある。たとえば弾道兵器は、相
ピュータ芸術の世界だけど、ベースは軍
「 い い で す か、 磯 崎 さ ん。 こ こ は コ ン
み込めない。
前で起こっていることがすぐにはよく飲
春田の説明を聞いても、磯崎には目の
の仕事が重なってくる。それはもう驚く
か、とくさっていると、別ルートで富山
北海道の仕事が入る。小さい仕事で金沢
北海道へ行かなければ、と思っていると、
ラ ッ キ ー な 偶 然 は 珍 し い こ と で は な い。
ビア大学のキャンパスの中である。
巨大なスクリーンの中に、パソコンの
手の動きを計算して、先読みしたポイン
磯 崎 の 仕 事 人 生 に と っ て、 こ う し た
画 面 が そ っ く り 映 し 出 さ れ て い る。
「A
143
で堀之内が気になりだしてから、一月も
きませんか」と誘われたのは、堀田の話
春田から「磯崎さん、ニューヨークへ行
ばかりなのだ。
が上がってくると次第に影が減ってい
るのであろう、踊りを繰り返し、経験値
しかしそれも、踊りのパターンを認識す
青い影が大きく広がるのがわかる。
急に方向を転換したときなどには、この
が、くちびるを差し出す。そのくちびる
そしてエンディング。スクリーンの彼女
じても続いている。
集がつかない。目のチカツキは目蓋を閉
とが同時にやってきたようで、神経の収
あった。
しないときだった。
く。
に、 現 実 の 彼 女 が く ち び る を 合 わ せ る。
歓声、そして口笛。
快適な酔いごこちと、二日酔いの悪寒
リ ン ピ ッ ク で の 合 唱 と 通 じ る 催 し な の 「 も の す ご い 能 力 で す ね 」 と、 春 田 が 盛
「 お も し ろ い 催 し が あ る ん で す。 長 野 オ
んに誉めている。が、彼の頭の中は、芸
ホールを埋め尽くした若い観客の拍手と
で、きっとお役に立つと思いまして」
術鑑賞というよりも、明らかに軍事技術
インタラクティブ・デジタル・テクノ
ロジーの国際的な集まりだ、
というので、 評価に走っている。
れ、誤差が画像で表示されるようになっ
ら、どれだけ正確かが瞬時にモニターさ
「 こ の 先 読 み は 相 当 に む ず か し い。 だ か
主眼は堀之内久子に会うことにあった。
照射されるフラッシュ、そして、ホール
レーザーとミラーボールの光、四方から
ちりばめられたスパンコール、飛び交う
マーの女の怪しい姿態、コスチュームに
る 複 雑 な 踊 り。 そ れ に 加 え て パ フ ォ ー
場を引き上げた。
モンストレーションを見ることなく、会
に疲れた様子で、観客に踊ってもらうデ
析をしていたに違いない春田も、さすが
かりくたびれきっていた。終始、能力分
こうして、二時間あまりのパフォーマン
ている。このアイデアはおもしろいです
いっぱいに焚きこめられた香。
う。学生は無邪気に遊んでいるだけです
テクノ系のコンピュータ音楽と、実物
ね」
いくら前衛芸術だからといって、このハ
が、あれがまた、つぎの軍事技術を生む」
コ ン ピ ュ ー タ 雑 誌 か ら ペ ー ジ を も ら い、
スクリーンの片隅に、もうひとつ小さな
イテク・パフォーマンスについていくの
スが終わったころには、磯崎はもうすっ
ウィンドウがあって、誤差分を示す青い
は、磯崎にとって相当に厳しい。もう若 「 い や あ、 わ た し は た だ 純 粋 に び っ く り
こ う し て や っ て き た わ け だ。 も ち ろ ん、 と予知画像、誤差画像、三重に展開され
影が踊っている。なるほど、計算が追い
くはないことを思い知るほかはないので
しています。表現というものが、どこま
「 ど う で す。 す ご い シ ョ ー だ っ た で し ょ
つかなかったのだろう。パフォーマーが
144
いうなら、スポーツなんかの自動中継カ
未来兵器にも対応できそうです。民生で
ですか。もっとすごい運動性能を持った
「トマホークのような操縦型兵器の迎撃
か」
用的にはどんなことが考えられるんです
で行くのか、見当もつきません。で、実
夕べはホテルに辿り着くや、ぐったりと
ない。
だ明け方だというのに、眠気がほとんど
ど、冴え渡っているのだ。そのため、ま
吹き抜けているのではないかと思うほ
いうわけではない。穴でもあいて、風が
頭がどこかキリキリするのだが、頭痛と
シアターで主題講演とメイン ア
・ トラク
ションを見てから、フリー・エントリー
ルである。昨日はこの一階にあるミラー・
て、ここだけが黒い石積みの、重厚なホー
ライト・グレーとモス グ
・ リーンで統
一されたキャンパスの建物の中にあっ
央会場があるドッジ ホ
・ ールである。
ティブ・テクノロジー・アジェンダの中
室でズームアップとカメラの切り替えを
ムをはずすことはありません。人は司令
カメラが動くから、自動撮影でもフレー
もう一台でスター選手を追う。先読みで
い。
神経のどこかを狂わせた結果に違いな
けではない。普通ならこんなに早く目覚
というのが定説だ。これに顔を出さない
ら く こ れ も、 夕 べ の パ フ ォ ー マ ン ス が、 が、掘り出し物はフリー企画の方に多い
めるはずはないのである。とすればおそ
手はないのである。アジェンダは五日間
学校からは少し離れた会場だったのだ
企画のパフォーマンスを見物に出た。
メ ラ で す ね。 一 台 に は ボ ー ル を 追 わ せ、 寝込んでしまったが、そう早寝をしたわ
するだけでいい。おなじ技術で、災害救
助ロボットの遠隔操縦、いや、それより
ようなフリー企画が山とある。
に渡っていて、公式の会議のほか、この
コロンビア大学の構内にあるホテル
も ロ ボ コ ッ プ み た い な 集 団 に よ る タ ー ( ゲ ス ト ハ ウ ス ) を 出 て、 散 歩 を 楽 し む
ホテルのラウンジで、春田はまだまだ
てしまいました」
ゲ ッ ト・ チ ェ イ ス の 遠 隔 指 揮 ・・・・
、い
やいや、また軍事技術みたいな話になっ
しむ学生、白み始めた空の下で語らう学
隅で体操をする学生や、ジョギングを楽
央広場にも学生の影はほとんどない。片
六時少し前だろうか。記念図書館前の中
足を止め、一瞬こちらを振り向いた。
く。 こ ん な 時 間 の 散 歩 者 に 驚 い た の か、
てた大きめのリスがするすると渡ってい
を、尻尾を膨らませ、まっすぐに振り立
の向かいには、朝食の美味いレストラン
正門の前を走るブロード・ウェイ通り
校門を出ると、門に続く鉄製の柵の上
話したそうにしていたが、磯崎は失礼し
生もいる。広場を抜けて正門を出る。正
ことにする。
て早々に部屋のベッドにもぐりこんだ。
翌朝、
磯崎は五時過ぎに目を覚ました。 門 手 前 の 右 手 が 今 回 の 国 際 イ ン タ ラ ク
145
なだらかに下っていく坂道を降りてい
まま真っ直ぐに、ハドソン川に向かって
高 速 道 路 が 一 本 貫 い て い る の を 除 け ば、 けられた。ひとりはすらりと背の高い男
に沿って数キロも続く公園だ。公園内を
ド・パークが広がる。その名の通り、川
坂を降りきると、そこにはリバーサイ
にやら時候の挨拶をしているように見う
かにも紳士然とした物腰で、遠目にもな
どちらも服装こそラフではあるが、い
茂みの近くに、それぞれに犬を連れた男
く。
で、もうひとりは東洋人ふうの背格好だ
が空で川面なのか、区別はとてもつけら
外装に手をいれ、生まれ変わった建物も
広々とした静かな公園である。所々にベ
が、 日 本 人 の 規 準 で い え ば 長 身 の 部 類。
があるのだが、まだ早すぎて開いていな
あるが、大学の施設が混じる古い街区で
ンチがあるぐらいで、特別なものはなに
というよりも大柄でがっしりしているの
二人が立ち話をする姿が見えた。
ある。どっしりとしたビルのたたずまい
もない。が、ここでも、ジョッガーやブ
で、遠目では普通の背格好としか見えな
れない。
が、朝靄と調和して、落ち着いた気分を
レードランナーたちが早朝から黙々とト
いのだが、近づくとその大きさに気づか
い。ブロード・ウェイ通りを渡るとその
かもし出している。
レーニングに励んでいる。
半地下への明かり採りが道路に面して
というより、磯崎はまず、そう考える
される。いわゆるガタイがあるのである。
れもが大型犬ばかりなので、散歩に連れ
よ り 先 に 溝 口 の 名 前 を 口 に 出 し て い た。
そして目立つのが犬の散歩。どれもこ
が囲っている。その鉄柵の、それぞれに
ているのはほとんどが男たちだ。これも
掘られている家が多く、転落防止の鉄柵
工夫を凝らした透かし模様がしゃれてい
ただ、あまりにも思いがけなかったので、
そ れ が 声 に な ら な か っ た だ け の こ と だ。
出勤前の健康法の一種なのだろう。
公 園 を 北 に 上 れ ば、 公 園 内 唯 一 の メ
る。インパチェンスなどを植えこんだ吊
り鉢が、黒塗りの鉄柵にアクセントを添
そして坂道の行く手には、欅に似てい
崎は、迷わず南に下る。右手にハドソン
が、そんなものにはまるで興味のない磯
な ん ぞ を し て い な け れ ば な ら な い の か。
が今ニューヨークなどにいて、犬の散歩
教授の溝口幸一である。しかしなぜ、彼
モ リ ア ル、 グ ラ ン ト 将 軍 の 墓 地 が あ る。 溝口、彼はまちがいなく前橋経済大学助
るが、もっと細ぶりの葉を持つ木々が枝
川を見ながら、ぶらりぶらりとどれほど
えたりしている。
を広げ、その木間からハドソン川の水面
犬の、それもグレイハウントという大
まったく思いあたる節はない。
や密度を増す辺り、いくぶん暗い感じの
が わ ず か に 覗 い て い る。 と は い っ て も、 行ったことだろう。まばらな木々が、や
空も水もまだ白く、朝靄の中、どこまで
146
型犬の散歩となれば、研究旅行などとい
消した。
ングサイト・ハイツの街区の中へと姿を
す」
開放にかかっていると言えるのでありま
この日、磯崎はミラー シ
・ アターでの
課題講演をなんとかこなした。アジェン
う一過性の滞在などではないだろう。長
か 挨 拶 が あ っ て も お か し く は な い は ず。 磯崎を認めた。その驚きと戸惑いの表情
ダのメンバーである春田が無理やり突っ
間違いなく、その一瞬の間に、溝口も
を、磯崎も見落としてはいない。それな
期 で あ る な ら、
「Qの会」に対してなに
少なくとも彼は、水島グループのヘッド
ら ば な ぜ、 そ そ く さ と 姿 を 消 し た の か。 込 ん だ 企 画 で、「 イ ン タ ラ ク テ ィ ブ
文部省の通達文書にすぎない「教育指
本」についての報告を行ったのである。
クノロジー 各
= 国の課題」というコー
ナーで、ジャーナリストの立場から「日
テ
・
で、法制班を事実上仕切っていた。
ど あ り え な い。 た と え 二 日 酔 い 状 態 で、 自分を認めていたことに気づいていたは
とはいえ、磯崎が溝口を見間違うことな
ずである。磯崎はあの瞬間、おなじチー
導要領」によって、教育内要までが細か
それが大きな謎となる。
頭に血が巡っていなかったとしても、で
ムの友人として、珍しいところで会えた
く規制されていることに、各国の参加者
朝靄の立ちこめる中、薄暗がりである
ある。それとも、本当のそっくりさんが
喜びを、親しげな表情で表していたに違
おそらく、溝口もまたあのとき、磯崎が
いるとでもいうのだろうか。
は一様に驚きの声を挙げた。それが民間
の知恵やアイディアを受けつけないばか
いないのだ。
訝りながらも足は止まらない。挨拶を
交わすタイミングを計りながら、距離が
背 の 高 い 男 が な に か を 渡 し た よ う だ。 能が最も活かせる分野は教育と医療の分
の参加者はみな一様に、そのことを心配
様性を阻害することになる。アジェンダ
りか、教師の創意工夫を奪い、教育の多
野にあることは明らかであります。しか
した。
「 以 上 の よ う に、 イ ン タ ラ ク テ ィ ブ な 機
用件を済ませたのか、二人は軽く会釈を
し、教育の分野にあっては、国際的には
ずんずん詰まっていく。
交わす。背の高い男がきびすを返すのと
かけようとしたその瞬間、溝口もまたき
「 よ う、 溝 口 」 と 磯 崎 が 手 を 挙 げ、 声 を
の可能性は、
ひとえに教育過程の自由化、 ……さまざまな質問が矢継ぎ早に浴びせ
けるコンピュータ・エデュケーティング
壁が横たわっている。つまり、日本にお
開発はどのように行われているのか」
あ る の か 」「 規 制 の 中 で、 教 育 ソ フ ト の
ほぼ同時に、
溝口がこちらを向き直った。 言語の障壁が、国内的にはシステムの障 「そうし た規制を変えようとす る動きは
びすを返し、植え込みを横切ってモーニ
147
にすぎない。でも、インターネットの発
も公教育の外でささやかに行われている
力までにはなっていない。ソフトの開発
「規制への反撥は微々たるもので変える
られた。
堀之内久子と落ち合ったのはその晩の事
去来していた。
配」磯崎の頭のなかには、そんな言葉が
育 の 英 語 支 配 」「 知 的 資 源 の ア メ リ カ 支
刀 打 ち 不 可 能 な 日 本 が 見 え て く る。「 教
ギーを目の当たりにすればするほど、太
ナーに、なじみ客専用のカウンターバー
べ て 奥 が 深 い。 そ の 行 き 止 ま り の コ ー
に多いガレージ風の店作りで、間口に比
の一軒に二人を招き入れた。このあたり
久子はそのようなファッションショップ
んどない。
で 久 子 が 待 つ チ ャ イ ナ タ ウ ン に 向 か っ 「 あ た し ね、 最 近、 神 経 過 敏 症 な の よ。
達がこうした規制を食い破る力になるの
た。
指定された中華レストランに入ると、 堀田さん、何か言ってたでしょう。心配
がしつらえてあった。
そんな論旨で質疑がつづいた。システ
させちゃったかもしれないな。
で あ る。 篠 崎 は 春 田 と と も に、 地 下 鉄
ム障壁はなくしていくべきだし、いずれ
チャイナドレスのウエートレスに日本語
はまちがいない」
は緩和せざるを得なくなる。だが。言語
あたしが勤めている出版社、スタンソン
関なの。そんなの、このあたりにごろご
で案内された。店の隅の中華屏風で仕切
磯崎が春田を紹介すると、久子はにこや
ろしてるわ。なにしろそういう看板さえ
障壁はそうもいかない。インターネット
定づけたといえるだろう。だが、翻訳ソ
かに微笑みながらも、小声できっぱりと
掲げれば資金は集まる。彼ら親イスラエ
もご多分に漏れずシオニスト系の工作機
フトの開発によって、各国語の延命も約
いった。
られたスペースである。
束された。
ル系政治組織の強さはこの集金力なん
の発達は、世界における英語の優位を決
「言語というこの障壁は残ってもいいの 「 こ こ で は 食 事 だ け に し ま し ょ う。 話 は
れることはなかったが、磯崎は基本的に
この日の報告ではそのことにほとんど触
の ソ ー ホ ー の 一 角 へ 降 り 立 っ た。 ヨ ー
キャブでチャイナタウンとは目と鼻の先
食 事 を 済 ま せ る と、 三 人 は イ エ ロ ー
どうやらテストに合格した。CIAから
ス ト よ。 で、 信 じ ら れ な い こ と だ け ど、
いいの。あたしが雇われたのはたぶんテ
でも、彼らにとって、日本人はどうでも
じゃないかしら。
そう考えていた。
ロッパブランドのファッションショップ
PITCIHを受けちゃったのよ。つま
あとよ。お願いね」
国を挙げての教育ソフト開発、国境を越
が数件あるだけの裏道で、人通りはほと
ではないだろうか」
えての普及意欲……、その旺盛なエネル
148
してたのよ。でも、あれってCIAに筒
も似たようなことをずうっとメール交換
あたし、堀田さんともそうだけど、弟と
る。ぞっとしたわ。
たあたしが洗われてたってことを意味す
上、
身辺調査は済ませてある。
無警戒だっ
しくて。というのも、お誘いしてきた以
即刻お断りしたのはいいんだけど、恐ろ
りお誘いね。
子に話した。
ハドソン川沿いで出くわした光景を、久
たの。
だけど、下手な情報は送らないことにし
て、そう思ったから、もう後の祭りなん
がイギリスにあるNSAの基地が傍受を
夫だから、心配しないように、って、堀 「 も う そ れ は 常 識。 ヨ ー ロ ッ パ で は も う
これって、けっこうマジよ。でも、大丈
している、と暴露したの。以後、ジャー
磯 崎 は 名 前 こ そ 出 さ な か っ た が、 今 朝、 一九八〇年にイギリスのジャーナリスト
田さんには伝えといて」
ナリストの間ではCIAのインターセプ
溝口はしまったと思っているはずだ。
彼は、溝口と顔を合わせてしまっている。
二 〇 年 も 前 か ら 被 害 が 噂 さ れ て い て、
めだって、ほんとなんですか」
「 メ ー ル、 F A X、 国 際 電 話、 み ん な だ
抜けなんでしょう。なんか、メールやF 「 そ れ は も う、 典 型 的 な 接 触 方 法 ね。 そ
てるって聞いたわ。このあたりのお店も
NSAとタイアップして、ぜんぶ盗聴し
てね。
AX、国際電話、みんなだめなんですっ
人がいないかどうかチェックしてるの
ズがいてね、接触現場にあなたのような
場合によってはね、ほかにウォッチャー
が エ ー ジ ェ ン ト か な。 ま ち が い な い わ。 「 メ ー ル は わ か る け ど、 電 話 は ど う す る
の大男がケース・オフィサーで、日系人
トを疑うものはいないわ」
ね、ヨーロッパの本店とのやり取りには
よ」
「 い や、 簡 単 な こ と で す よ。 や は り 音 声
た。
磯崎の質問を引き取ったのは春田だっ
んだろう」
苦労しているようよ。ファッションの先
変換し、怪しい内容を含むものを記録す
やばい。見張られていたかどうか、 入力ソフトだ。これでテキストデータに
端情報には機密性があるんだって。新製 「えっ、
品の型紙が送れない。
る。
確認していなかった」
だからね、あたしの素性はばれてるはず 「 大 丈 夫。 身 内 の 接 触 に そ こ ま で や る こ
保存しなければならず、コンピュータが
ぼくは、変換精度が悪いと無駄なものを
そ う い わ れ て も、 磯 崎 に は 今 ひ と つ
対応できない、と考えたが、それはちが
とはないわよ」
じゃなあい。ちょっと怖いわよね。あた
すっきりしないものが残った。なにしろ
なの。それなのにお誘いがきた、って変
し自身が監視されてるんじゃないか、っ
149
かける手法だよ。これがしっかりしてい
Love、以』がいい。日本語が使えな
たらわたしのインターネットの掲示板に 半するのだから、 7.5
×2分の1秒後に
書き込みを入れてくれ。そうだな、『海、 到達し、これに合わせて弾いた伴奏はさ
言ってるのか、と思いますよね。どんな
衆電話で、なんて、何を寝ぼけたことを
ぶだめですよ。ホテルから掛けずに、公
事に閉幕を迎えた。この間、磯崎は多く
予定どおりのスケジュールをこなし、無
ティブ・テクノロジー・アジェンダ」は
コロンビア大学での「国際インタラク
も、音はそうもいくまい。磯崎は混乱し
たらどうだろう。いや、画像では可能で
による「予期」という技術を考慮に入れ
とも、最初の日の晩に観たコンピュータ
音楽には決定的なダメージである。もっ
う。肝心なのは荒く網をかけた後、篩に
れば精度は問題じゃあない。
い環境だったら『Marine
国際電話も海底ケーブルか通信衛星を経
の講演やパフォーマンスに参加し、勢力
このズレはデリケートな室内楽のような
らに 7.5
×2分の1秒遅れて最初の奏者
の耳に達することになる。
キーワードによって選別され、重要な電
e』です。いいですね」
由する、という、こんな簡単なことがわ
た。
Lov
話はみんな記録される。国際電話はぜん
からない。
それが日本のレベルなんです」 的にコラボレーションを観て回った。興
ているそうだから、日本もきっとやられ
盟があって、これが世界を監視下に置い
いう、アメリカとイギリスの通信傍受同
シュロン』というそうよ。UKUSAと
ても生じざるを得ないタイムラグをいっ
ろ地球の裏側との双方向通信ではどうし
たとえファイバーケーブルを使ったにし
で、あきらかに長野の先取りだった。
によるインターネットを使った合同演奏
と。それはどう考えてもがてんがいかな
磯崎を避けるように姿を消したというこ
チームの重要な柱である溝口が、まるで
まとわれた日々でもあった。同僚であり、
だったが、なにか後味の悪い思いにつき
たに違いないニュ―ヨークでの五日間
もっとも、本来ならもっと充実してい
てるわよ」
たいどうやって克服しているのか、不思
いことである。
味深かったのは五ヶ国のミュージシャン
「 そ れ と 似 た 話、 ぼ く も ど こ か で 聞 い た
議なくらいに完璧なアンサンブルを見せ
「ヨーロッパに対する傍受システムは
『エ
覚えがあるぞ。いや、日本のテレビで見
ていた。
前にも書いたが、地球の裏側で奏でら
裏に甦っては、アジェンダへの集中を削
た戸惑いの表情。それが何度も何度も脳
れ た 音 楽 は、 光 は 1 秒 で 地 球 を
回
7り
きびすを返す寸前に、一瞬、彼が見せ
たんだ。くそ、
覚えてないな。うかつだっ
た」
「何ができるわけでもないけど、
何かあっ
150
帰路の飛行機の中で、磯崎は溝口のこ
の「元」切り下げを誘発する可能性を高
また、タイ「バーツ」の暴落は、中国
省金融検査部の検査官室長と課長補佐を
第一勧銀のモフ担から接待を受けた大蔵
社長を贈収賄で逮捕。また、あさひ銀行、
に天下った井坂武彦理事と野村證券元副
とを春田に告げた。春田にも、これは大
め、そうなれば、アジア経済は回復困難
収賄で逮捕。二八日には銀行局総務課金
国も八〇億ドルの支援融資を決めた。
き な シ ョ ッ ク で あ る よ う だ っ た。
『防諜
な混乱の淵に叩き込まれるのは必至だっ
いでしまう。
法案』の行方に、大きな暗雲がかかるの
融取引管理官が地検特捜部の事情聴取を
の 中 間 報 告 が 出 さ れ( 九 七・九・三 )、 最
この一連の出来事は政府の行政改革案
た。アジア経済の牽引車、日本の景気回
である。
を見たような気がしたのである。
章 「地球」
前に自殺している。
第
復と、内需拡大が強く期待されていたの
CIAの謀略
ところが、日本の混乱はさらに続いて
その年の一〇月には、IMFの救済を
えていることがはっきりしてきたときで
力不足の東アジアに深刻なダメージを与
いたアジア経済の足を引っ張り、まだ体
まった日本経済の不況が、活況を続けて
先の見えない長いトンネルに入ってし
を放棄。北海道拓銀、山一證券合わせて
月二二日、ついには山一證券が自主再建
券の損失補てん事件などが相次ぎ、一一
證券の総会屋への利益供与事件、日興證
商法・証券法違反事件、第一勧銀・野村
に手が入ったのを皮切りに、山一證券の
による接待ゴルフで、大蔵省金融検査部
を意味した。
郵政省を飲み込み、巨大権力になること
に 決 ま っ た が、 実 質 は 自 治 省 が 総 務 庁、
務庁、郵政省とともに総務省になること
である。実際、この再編で、自治省は総
ず、自治省の独壇場になったということ
蔵省はほとんど力を発揮することができ
第一勧銀のモフ担(大蔵省=MOF担当) 間に起きている。つまり、省庁再編に大
一 九 九 七 年 の 暮 れ は、 い つ 終 る の か、 い て、 と ど ま る と こ ろ を 知 ら な か っ た。 終案がまとまった(九八・二・一〇)この
受けていたインドネシアが、IMFの再
二兆九千億円の日銀特別融資が必要に
ある。
建 計 画 さ え 実 施 で き ず に、 計 画 の 組 直
なった。
東京地検特捜部が、大蔵省から道路公団
一方、一月二〇日には民自 社
・ 文・さ
ま た、 年 を 越 え た 九 八 年 の 一 月 に は、 などして、勢力を拡大している。
庁も、運輸省の海上保安庁を手に入れる
また、もうひとつの内務省である警察
し を 求 め ざ る を 得 な く な り、 一 二 月 に
は 苦 境 に 喘 ぐ 韓 国 に 対 し て、 I M F が
二〇〇億ドルを融資。日米を含むG7諸
151
10
きぶれの三党が大蔵省の財政・金融の分
道 特 集 』 だ っ た。 局 に 問 い 合 わ せ る と、 報に敏感であるべきだった」
くみていたのか」
たしかに放送した、という返事でした。 「 オ ー ス ト ラ リ ア だ と い う こ と で、 あ ま
オーストラリアの新聞に『政府がキャン
離で合意している。
勝敗はだれの目にも明らかだった。内
う記事が載ったのがきっかけで、取材し
たんでしょうね」
ある国際組織にまで想像力が及ばなかっ
務 省 の ク ー デ タ ー は 成 功 し た の で あ る。 ベラの日本大使館を盗聴していた』とい 「 そ う、 油 断 し た ん で す よ。 そ の 背 後 に
これら、金融事件の端緒となった情報の
たようです。
的な証言で構成されていました。この元
あれ、盗聴をやっている、ということな
放送は元オーストラリア外交官の衝撃 「 結 局、 ど こ の 国 も 合 法 で あ れ 非 合 法 で
中には、アメリカのコンピュータ金融監
視システムが絡んでいる、
との噂もある。
CIA情報である。
カ、 イ ギ リ ス、 カ ナ ダ と ぐ る に な っ て、 「 ま あ、 そ う な ん で す が、 ぼ く は こ こ で
んでしょうね」
大事なのは非合法である可能性の強い盗
外交官は、われわれは以前から、アメリ
日本叩きの同盟者を、大沢から旧内務省
日本の政府関係通信を傍受している。こ
聴活動が、国家の枠を越えて行われてい
噂が事実であれば、CIAは明らかに
勢力に乗り換えたといえよう。
れは『アングロサクソン・クラブ』といっ
い が、 橋 本 首 相 が 中 国 の 女 性 ス パ イ で
います。
て、古くからある組織なんだ、と話して
です。
る、という事実なんじゃないかと思うん
どこがリークしたのか明らかではな
あ る 政 府 通 訳 と 親 し い、 と い う 事 実 が
でしょう。それも非合法活動すれすれの
事務所はかなり盗聴されている。だから、 れていない、極秘の国家同盟ということ
だって、たぶんこれは国民にも知らさ
議員が衆議院議長に質問書を提出した
そういう覚悟のうえでオーストラリアと
ま た、
『日本の商社のオーストラリア
( 一 一・一 三 )
。 が、 そ の 大 沢 率 い る 進 取
中味だ。民主主義という点から考えたら、
週 刊 誌 で す っ ぱ 抜 か れ、 進 取 党 の 西 村
党も結局六政党に解体した
(一二・三〇)
。 商売したほうがいい、ともいってます。
これはありません。
ブ』は堀之内久子が言っていた『UKU
ぼくはこの『アングロサクソン・クラ
れた。
SA同盟』
とおなじものだと思うんです。 す」
九七年の暮れ、磯崎は春田に呼び出さ
「 思 い 出 し た ん で す よ。 例 の 電 子 諜 報 シ
ぼくらはもっと、このオーストラリア情 「たしかに春田さんの言うとおりですね。
こういう国際組織は民主主義の脅威で
ステム、あれは二年ほど前のTBS『報
152
な白紙委任状を与えているとは考えられ
「 戦 時 を 除 け ば、 国 民 が 国 家 に そ の よ う
いない」
アン・コントロールのシビルがどこにも
在なんですね。民主主義の基礎、シビリ
か、と考えてみると、国民不在、民衆不
あ ん な に へ た く そ な 盗 聴 を や っ た の か。 「 C I A 自 身 が 盗 聴 し た い か ら で す。 い
れ な ら な ぜ、 あ ん な 古 臭 い 道 具 を 使 い、 すか」
かもしれない、ということになって、そ 「なんで そんな警告をCIA がするんで
なった。あのとき、指示したのはCIA
奈川県警の警察官の盗聴事件が問題に
議院の議員会館で集会をやったとき、神
こ の 組 織 を だ れ が コ ン ト ロ ー ル す る の 「 ほ ら、 覚 え て い る で し ょ う。 以 前、 参
警告なんです」
Aの日本政府、あるいは警察庁に対する
ちゃんと合法化しなさいよ、というCI
進めるのはやめなさいよ。必要なものは
元 警 察 庁 長 官 も 言 っ て い ま し た。『 友
や、もちろんCIAも盗聴をしています。
「 違 法 と い う よ り 無 法 で し ょ う ね。 国 際 「で、なんで盗聴の合法化なんですか」
好国の政府職員である以上、CIAを監
すぐ見つかるような盗聴をやったのかが
社会はいまだに無法者の巣窟ということ 「 盗 聴 は 日 本 で も や ら れ て い ま す。 通 信
視することはできないが、親書を開封し
ません。つまり、同盟そのものが違法な
の秘密を侵すことだから基本的には非合
た り、 盗 聴 し て い た ら 話 は 別 だ 』 と ね。
しかし、密かにやる以上限りがあります。
ですか。いやいや、盗聴に限っていうな
法です。しかし、日本の警察はお得意の
つまり、逮捕しなければならなくなる。
謎だった。あれですよ」
らば、国内でも国家の無法はまかり通っ
なし崩し戦法で、盗聴で手に入れた証拠
でもね、合法的な盗聴は、軍事上必要
んです」
ていますよね。
を事後的に、裁判所に有効と認めさせて
日 本、 韓 国、 ア メ リ カ、 イ ギ リ ス
き)の原則といって、欧米ではとても大
これって、デュープロセス(公正手続
よりも、アメリカにフリーパスを与えた
の官憲はチェックできなくなる。という
うなれば表面上合法に見える盗聴を日本
なら安保条約上許されることになる。そ
みんな違法ですよね」
事にされている民主主義のルールに反す
いる。
「合法化された盗聴もありますけどね」
るやりかたなんです。だから、なし崩し、 い日本政府が、国民から追及される恐れ
どこでも労働運動や市民運動に対
・・・・
する盗聴事件が頻発している。これって
「 そ う か、 そ れ だ。 盗 聴 の 合 法 化 が 必 要
仮に、その解釈ができないとしても、自
が少なくなる。
というのは許されない。
だからあの事件は、なし崩しで盗聴を
だったんだ」
「なんですか、それは」
153
と、もっと大規模に、日本を監視するこ
カは、
盗聴が合法化されれば、
もっと堂々
ていくことが可能になる。つまりアメリ
てくれ、
と指示し、
記録をごっそりと奪っ
す。
の必要も、これを名目にしているはずで
を呼びかけています。日本に対する盗聴
に対する連携の必要を説き、情報の交換
G7などの場で、麻薬、テロ、国際犯罪
省・石原構想」はいつ始動されてもおか
まっている。すなわち、待機中の「内務
ては自治省は大きな力を持つことが決
央省庁等改革基本法 」の骨子には、内閣
機能の強化がうたわれ、省庁改革におい
すでに、二月一〇日に決定を見た 中「
をとらないようにするための集まりであ
とができるようになる。
だからきっと、登場する『盗聴法案』も
しくない状況になっていた。この「構想」
登場ですね」
そうではなく、なし崩し的に非合法な
これを名目にするはずです。アメリカに
が実現に向けて動き始めれば、「Qの会」
衛隊や警察の盗聴成果を提供させること
盗聴が拡大していっても、その成果はア
対して日本はペルーの日本大使館占拠事
の「防諜法案」が日の目を見る可能性は
る。
メリカの利益にはならないのです」
件で借りを作っていますからねえ、麻薬
ほとんどなくなってしまうのである。
はできるはずです。あるいはここを調べ 「 そ う い う こ と で す。 ア メ リ カ は す で に
「 そ う か、 そ こ で あ あ い う 盗 聴 を 仕 掛 け
はともかくテロといわれたら反対しにく
実際のウォッチングは五月末の第二回
たんですね。あの事件で一番困ったのは
い事情もある」
定例会から始められた。会場は内幸町の
政府と警察庁ですもんね。ちゃんと盗聴
の合法化をしないと、またどっかで盗聴 「 も う 法 案 は で き て る ん で し ょ う ね。 あ
日本プレスセンター会議室、日比谷図書
館の向かいの建物だ。参加者は顔合わせ
あの事件は、発覚して、警察庁が苦慮す
までの班別構成を解消し、法案提出のタ
一 九 九 八 年 三 月、「 Q の 会 」 は、 こ れ
ね」
を 仕 掛 け る ぞ、 と い う 脅 迫 な の で す ね。 とはタイミング待ち。こいつも待機です
見え見えの盗聴の仕掛けも、それならつ
ることを目的にしていた。日本政府がC
イミングを図るための、隔月定例会に移 「 溝 口 さ ん、 去 年 の 秋、 ニ ュ ー ヨ ー ク に
に 近 か っ た 第 一 回 か ら は ぐ っ と 減 っ て、
IAのために、あるいはNSAのために
行した。つまり、そのときどきの政治社
じつまが合いますよ。
盗聴の合法化を用意することを目的にし
会状況をウォッチングし、現実から遅れ
磯崎が鎌をかける。
いらっしゃいませんでしたか」
ぬ顔で出席していた。
一一人。前回は欠席だった溝口が何食わ
ていた。とすれば、つぎは『盗聴法』の
154
「 え え、 い ま し た が。 と す る と、 あ の と
どんな言葉に対しても、すべての用意
ない日本だといえます」
薄暗かったもので自信もなく、ちょっと
こちらだ。情勢分析をする会議にCIA
るはずがない。が、そうなると困るのは
あ な た で し た か。 い や あ、 そ れ は 失 礼。 何食わぬ顔をして、この集まりに出てく
党のほうがおいしいパートナーになった
アメリカにとって大沢よりも橋本・民自
り も 楽 な ん だ が、 と い っ た そ う で す が、
と歩調を合わせてくれたら、日本の舵取
ができているのだろう。そうでなければ、 「 大 沢 は ア メ リ カ に 対 し て、 も っ と 国 連
急いでいましたものですから、お声を掛
のエージェントが同席している。
きリバーサイド公園でお見かけしたのは
け損なってしまいました」
というんですか。妙な趣味です。ところ 「アメリカが三度目のイラク 攻撃を画策
に入っていましてね、風にあたりに行く
るんです。コロンビア大学の図書館が気
しておるものですから、たまに訪れてい
「 い え、 単 な る 野 暮 用 で し て。 弟 が 暮 ら
していますね。二月三日にクリントンが
惑った。
これでアメリカの狙いどおり、日本の
ビッグバンを迎えることになりました。
替法が施行されて、日本もいよいよ金融
う 伝 え る べ き な の だ ろ う か。 磯 崎 は 戸 (二月一二日)。四月一日から改正外国為
三人だけだ。ほかの七人の参加者にはど
金融システムの標準化が進むことにな
田、それに、帰国後に話を伝えた堀田の 「アメリカの 証券会社メリルリン チが山
わけですね」
で、磯崎さんは何か」
イギリスのブレア首相と武力行使を確
このことを知っているのは磯崎と春
「わたしは大学で開かれていたインタラ
認。
コーエン国防長官が合意を得るため、 る。アメリカにとって、大蔵叩きが成果
「何かご研究でも」
クティブ・アジェンダの取材です。あれ
湾岸諸国を歴訪している。
を収めたことになるわけでしょう」
一 證 券 の 社 員 を 雇 い 入 れ、 日 本 に 進 出
はなかなか意欲的なアジェンダでした
はない。犬を連れてあんなふうに踵を返
暗がりだといっても顔が見えないはず
ね。 と こ ろ が 日 本 で は 橋 本 首 相 が 二 月
二〇日)
。アメリカと国連とのズレです
ラ ク に 入 っ て 平 和 解 決 を 探 っ た( 二 月
らも聞こえます。
りだという声が民自党の国会議員の間か
号制の上程に成功。すっかり内務省気取
帳法改正案、つまり住民票ベースの背番
これに対してアナン国連事務総長がイ 「 一 方、 自 治 省 は 順 風 満 帆。 住 民 基 本 台
すのはあまりにも不自然だ。磯崎は腹の
一三日の時点でもうアメリカを支持して
ね」
中でそう反論してみるが、口に出してみ
いる。アメリカにとって、世話のかから
法案のほうは連立与党・社文党の反対
ても意味はない。
155
バズ・ストーミング、自由討論だが、各
杉井が核心を突いた発言をした。そうな
うんです」
噛み合うのかを検討しておくことだと思
す。
自それぞれの持ち場から、さまざまな問
の だ、 そ の 点 を 詰 め て お く 必 要 が あ る。
特別のチューターがいない、いわゆる
また、安保条約のガイドラインを見直す
題が提起され、論議に切れ目がない。
で、本国会での審議は見送られるそうで
関連法案などに反対して、社文党が連立
磯崎はそう思いながらもためらった。
日)
」
見らしいものをさしはさまない。そして、 まうことになる周辺事態法について立ち
が、溝口は相槌は打つもののほとんど意
入った論議をすれば、われわれの個々の
磯崎は時々溝口の様子を観察するのだ
「 金 大 中 が 大 統 領 に 当 選 し て、 金 大 中 が
熱 心 に メ モ を 取 っ て い る。「 C I A へ の
立 場 が 鮮 明 に な り、「 Q の 会 」 の 抱 え る
を 離 脱 す る こ と に な り ま し た( 五 月 一
北朝鮮に操られているという偽の情報を
ご注進か」と、いやな気分にされるので
日米安保条約の中身を根本から変えてし
でっち上げた元KCIA(韓国中央情報
矛 盾 点 や 弱 点 が、 溝 口 の 前 に 晒 さ れ る。
そうなれば、会の結束を崩す攻撃を許し
ある。
大事な話が出なければいい、と思いな
部)のトップが地検の捜査を受けていま
すね(三月三一日)
」
倒れました。民衆の怒りをキャッチする
あるのであった。
なってしまう。なんとか手を打つ必要が
事態法そのものの論議で手一杯になるに
ただ、この見直しは灰色部分が大きくて、
「検討しておく必要があるのは同感だね。
迷っていると、堀田が話し始めた。
てしまうことにもなりかねない。
た橋本は、面目丸つぶれですが、これっ 「 や は り、 最 重 要 法 案 は ガ イ ド ラ イ ン の
ことなく、直前にのこのこ支援に出かけ
見直しに伴う周辺事態法ではないでしょ
がら、それでは何の会議かということに
て、日本外交の汚点でしょう」
違いない。社文党も閣外協力を解消する
「インドネシアのスハルト政権がついに
「インド、パキスタンの核実験。ロシア、 うか。それに、国連平和維持活動(PK
ラクどころかイスラム勢力の一角が核を
リカにとって衝撃は大きいでしょう。イ
中国の影も窺え、世界はもちろん、アメ
た場合に、わたしたちの問題意識とどう
の見直し論が出されるかどうか。出され
周辺事態法の論議の中で、日米地位協定
それはガイドラインの見直しを後押しす
ま た、 こ ち ら が 見 直 し を 仕 掛 け れ ば、
とくに、
わたしたちにとって大事なのは、 見直し論が登場するとは思えない。
O)協力法案、これですね。
ることにつながり、周辺事態法に反対す
と息巻いているし、現時点で地位協定の
持つことになった。ナイ ボ
= ーゲルが恐
れているのは文明の衝突ですからね」
156
員立法を成立させることはむずかしい」
る議員の理解を得られない。それでは議
いるのは逆説的だが中国と朝鮮です。だ
いま、アジアで存在の重さを主張して
ない。みんな丸裸。これじゃあ本国のデ
す。対価をもらうのも恥ずかしいに違い
やらされる、というのも気の毒なもので
強烈な皮肉。堀田による溝口に対する
からアメリカも、全力でこの両国に対し
CIAだってそうでしょう。関心はみ
激しい先制パンチだった。堀田が一息つ
堀田は戦術論を仕掛けて、内部討論に
んな大陸に向いている。日本はまあ、警
くと、今度は春田が話し始めた。
スクで葉巻でもくゆらせながら邦字新聞
「 総 じ て、 こ の 間 の 動 き は 日 本 の ア メ リ
察あたりに首輪をつけておけば、後は彼
ている。最大限の注意力を持って、最大
カに対する全面屈服の様相を呈していま
らがよろしくやってくれる。番犬が主人 「 確 か に 堀 田 さ ん の 言 う と お り だ。 も う
入るのを避けたようだ。そして、意外な
すな。ここまでアメリカの言いなりにな
日本はCIAの関心外なんです。有能な
に目を通していれば済んでしまう」
る日本は、もう、目の中に入れても痛く
に捕まえた獲物を尾を振り振り、自慢げ
アジア研究者はみんな中国を向いていま
限の配慮をしている。
ない、けなげとでもいう存在なんじゃな
に見せるように、日本の警察は喜んでア
す。日本式経営のミラクルなメッキが剥
ことをしゃべり始めた。
いですか。
メリカの手足になる。
げでアジアもフラフラだ。ちょっと急い
しょう、NSAに預けましょう。CIA
だから監視はコンピュータに任せま
日本に強い有能なケースオフィサーは
経済もすっかりへたっちゃって、おか
で 叩 き す ぎ た か な、 意 外 に も ろ か っ た
は手ごわい外交を巧みに操る中国の分
どんどんCIAをやめて、民間に就職し
がされてからというもの、日本には興味
な、と、今ではアメリカも反省している
析、北朝鮮の諜報に専念しましょう、と
ていくと聞いてます。有能なオフィサー
重さそのものを失ってしまった。PKO
てしまった。日本は国家としての存在の
パッシングへ、あきらかに現実が変わっ
するわけには行かないでしょうが、たい
です。エージェントじゃあ対象国を変更
要員は無能の証明をしているようなもの
いまどき日本で油を売っているCIA
アジア研究のメッカは『菊と刀』を書い
ご 存 知 で す か。 ア メ リ カ の 日 本 研 究、
いんですか。
になるのか戦々恐々としているんじゃな
に雇われたエージェントはいつお払い箱
がなくなったんですよ。
んじゃなかろうか。
いうことでしょう。
だ、ガイドラインだ、って騒いでる場合
したことも起きない日本で、諜報活動を
ジャパン・バッシングからジャパン・
じゃないんです。
157
たルース・ベネディクト以来、
ニューヨー
クのコロンビア大学と相場が決まってい
たんです。
第1世代にはサインディステッカー
関心のほとんどが中国だそうです。
で『政治的工作技術の評価』と題する中
く、アジア研究に強いスタンフォード大
グロサクソンの国際的な監視ネットワー
これはアメリカ、イギリスなど、アン
間報告が提出されました。
学やプリンストン大学もおなじだそうで
クについてのレポートで、電子メールや
この流れはコロンビア大学だけではな
すよ」
ン グ。 第 3 世 代 は ジ ェ ラ ル ド・ カ ー チ
はジェームス・モーレーとか、ハウディ
協力した凄腕がいましたねえ。第2世代
にこのままだと、日本は「防諜法案」も
対する当てこすりとなっていた。たしか
だった。だが、これもあきらかに溝口に
堀之内久子から聞いた話の受け売り
犯人として名指されたアメリカでは調査
日 本 で は 話 題 に も 上 り ま せ ん で し た が、
対 象 が ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 の 盗 聴 な の で、
や、ドナルド・キーンといったGHQに
ス、グレン・フクシマ。フクシマはスタ
必要とされない、機密を持たない、持て
開始のニュースが伝わるとたちまち大騒
電話、ファックスなどの盗聴に悩む欧州
ンフォードやハーバードでも活躍してい
な い 国 に な り そ う な 勢 い で は あ る。 た
ぎになりました。
に、 ア メ リ カ 国 民 は 気 づ い て い ま し た。
何か巨大な盗聴システムがあること
議会が調査を求めたものです。
ますがね。
だ、それでもいくつかの先端技術に対す
るNSAの諜報活動は続けられるに違い
この第3世代がジャパン・バッシング
と重なりますかね。この世代でコロンビ
ない。
それ以前からニュージーランドやオース
ア大学とコネクションを持っている人物
は怪しいですよね。CIAのエージェン
にされている盗聴システムの暗号コード
エシュロンはこの報告書の中で明らか
です。
に違いない、と、そう直感しての大騒ぎ
アメリカ国民をもターゲットにしている
きていたからです。この巨大システムは
トラリア、カナダからそんな噂が流れて
通産省の水越が発言を求めた。
いことがあります」
トか何かになって、日本相手にしゃかり 「皆さんに報告しておかなけ ればならな
きになっている手合いが多いんです。
マイク・モチヅキなんかは第3という
「 ご 存 知 か も し れ ま せ ん が、 こ の 一 月、
磯崎と春田が思わず顔を見合わせた。
か第4世代に近いですね。バブル崩壊以 「エシュロンについて、です」
後の研究者で、もう関心ははっきりと中
国・朝鮮に移っています。
そ し て い ま は 第 5 世 代。 日 本 は 影 薄 く、 欧州議会に科学技術に関する調査の一貫
158
偵察衛星とレーダー基地、その他の電子
リア、
ニュージーランドが加わりました。 あると思われてきました。
USAになるとき、カナダ、オーストラ
で、
『ECHELON』と表記されます。 RUSA同盟を引き継いだもので、UK
おり、警察活動や経済活動とは無関係で
報機関と軍諜報機関によって成り立って
ア メ リ カ と イ ギ リ ス が 第 一 グ ル ー プ、 アメリカのNSAは国防総省に所属して
ネットワークによる地球全域を被うシギ
ント(信号情報)盗聴システムで、無線
おり、本来は軍事諜報機関です。だから、
軍通信所(沖縄)トリイ陸軍通信所(沖
他の三カ国が第二グループとして扱わ
縄)もおなじで、各基地の通信傍受施設
短波はもちろん、メール、電話、携帯電
日本国民にとっては寝耳に水でしょう
には多くのNSAの要員が配属されてい
れ、 軍 事 情 報 の 交 換 を し て き ま し た が、 日米安保条約で保証され、当然のごとく
間情報に置いている点がエシュロンの特
が、防衛庁の諜報機関がどうなっている
ると思われます。
話、ファックス、インターネットなどの
徴 で、 ヨ ー ロ ッ パ が 問 題 に す る こ と に
のかチェックシステムを持たない日本
そ の 数 は 三 沢 だ け で も 一 六 〇 〇 人 以 上、
その後、ドイツ、日本、韓国、ノルウェー、 日本国内でも活動しており、青森県三沢
なった直接の原因です」
は、
こうした秘密協定が結ばれても、黙っ
日本全体で二三〇〇人(軍直属の通信員
あらゆる通信を傍受します。
水越はここで、もってきたパネルを出し
て従うほかはありません。
がこの他に一二〇〇人)にのぼるといわ
の通信基地はNSAが運営する施設で
て 見 せ た。 参 加 各 国 の 構 成 が リ ス ト に
たとえば日本はソ連海軍の西太平洋海域
れ、当然のごとく、日本の思いやり予算
トルコなどが第三グループとして参加し
なったものだ。
での動向についての情報をアメリカから
によって多くの費用がまかなわれていま
その規模の大きさもさることながら、対
のNSAが一手に引き受けます。
しかし、 もらっていましたし、逆に、大韓航空機
「エシュロンはその管理運営をアメリカ
事故の時には日本が傍受した交信記録を
す。しかし、ソ連上空を監視していたは
す。上瀬谷海軍通信所(神奈川)楚辺海
このシステムはあくまでもアメリカとイ
アメリカに提供していますが、これもこ
ずの三沢のレーダーが、七〇年代の半ば
ているようです。
ギリスの軍事諜報同盟であるUKUSA
のUKUSA協定によるものと思われま
頃から日本国内にも向けられたようで
象を軍事に限らず、外国の政府情報や民
に所属するものです。
す。
す。
UKUSAは戦争中、イギリスとアメ
いずれにせよUKASAは各国の政府諜
リカが対独暗号解読のために協力したB
159
メリカのフォートミードにあるNSA本
部 に 集 め ら れ、 分 析 さ れ ま す。 そ し て、
英側の要請だったようです。
成功が、西側の政治経済活動を常時見張
だと解してよろしいのですか」
KUSAの第一、第二グループとおなじ
らであります。そして、こうした監視の 「 す み ま せ ん、 そ の 五 カ 国 と い う の も U
う求めたため、アンザス同盟(太平洋共
リカに対しても寄港の際は核を下ろすよ
の寄港を禁止したことがあります。アメ
らく反核政策をとり、核を搭載した艦船
ンドは一九九〇年代になってから、しば
有意データが注文主に届けられるわけで
NSAは軍の機関は表向きで、実質的に 「はい、アメリカ、イギリス、カナダ、オー
る『エシュロン』の登場を促しました。
ストラリア、ニュージーランドです。つ
同防衛体=オーストラリア・ニュージー
CIAがいわゆるオイルマネーが日本に
はCIAの指揮下にある。だからCIA
まり日本のような第三グループはエシュ
ランド・アメリカの軍事同盟条約)に亀
ご存知かもしれませんがニュージーラ
の要求に沿って、ターゲットが代わるの
ロンに参加できないわけです」
す」
は当然なのです。日本は安保条約によっ
裂が入りました。
どう還流しているのかを監視し始めたか
て、CIAが潜むNSAというトロイの 「 ぼ く は 昔、 テ レ ビ で オ ー ス ト ラ リ ア の
間捕捉します。
を流れるあらゆる情報を世界中で二四時
波、インターネット、海底ケーブルなど
うか」
た。これはエシュロンとは別なのでしょ
ジーランドは含まれておりませんでし
グロサクソン・クラブ』といわれ、ニュー
たった。軍事情報と無縁な情報を傍受す
なすことに追われていたことに思い当
に、毎日アメリカ、イギリスの注文をこ
ド防衛の意気に感じて諜報官になったの
ン担当の諜報官は、祖国ニュージーラン
わけです。締め出された結果、エシュロ
その余波で、UKUSAからもエシュ
工学的文字認識ソフト(OCR)でデジ 「エシュロンはネットワーク のコード名
音声情報は音声認識ソフト、画像情報は
ですので、そのクラブとはUKUSAの
ることへの自責の念も生まれた。
元政府高官の、日本を監視しているとい
タ ル 文 章 に 変 換 し、
『辞書』と呼ばれる
ことでしょう。
彼らの証言を集め、エシュロンの実態
木馬を招き入れることになったのです。
参加五カ国が必要とするデータのキー
ニュージーランドは一九八一年にエシュ
に迫った最初のレポートがニュージーラ
ロン・ネットからも一時、締め出された
ワード、固有名詞や数語からなる表現を
ロン・ネットワークに参加したようです
ンドのジャーナリスト、ニッキー・ヘイ
う証言を見たんですが、そこでは『アン
コンピュータに登録。ネットワークの篩
が、
これは全世界をカバーするという米・
エシュロンは通信衛星やマイクロ波、短
にかかった情報を文書化して、NSAが
160
アメリカが南北アメリカ大陸、イギリス
ン基地が担当しています。
ウェーブはオーストラリアのジェラルド
の ヤ キ マ 基 地 の 担 当 で す が、 マ イ ク ロ
いるインテルサットの傍受はアメリカ
もおそらく事実でしょう。日本が使って
そのオーストラリアの元外交官の証言
たのです。
リスのトップシークレットが破綻し始め
レッド・パワー』です。アメリカ、イギ
ガ ー が 一 九 九 六 年 に 出 版 し た『 シ ー ク
の日本です。騒いでみたところで、具体
による経済的な最大の被害者であろうこ
一人、静かなのは、おそらくエシュロン
の中からも徹底解明の声が出ている。
明るみに出て、政府に近い保守的な議員
なことを、国をまたいで監視したことが
をカナダに依頼したり、自国内では違法
らったり、アメリカの議員が政敵の調査
サッチャーが政敵の情報をアメリカにも
だとの声が高まっています。
イギリスからも真実をあきらかにすべき
機構の管理下に置かれる」
わりも当然、政府の防諜機関である新設
でしょう。防衛庁のUKUSAとのかか
「具体的な対抗手段こそ、この『防諜法案』
わせた行動が必要だろう」
か。もしあるなら、われわれもそれにあ
な国際的な反発が出てくることはないの
トを受け取るのか。その際、もっと大き
ろうか。その欧州議会はいつ、次のレポー
て い る。 そ し て な に よ り も、 ア メ リ カ、 ろう。ヨーロッパとは連携できないのだ
た。
JETRO氏の長谷川の提案であっ
が ヨ ー ロ ッ パ・ ア フ リ カ、 カ ナ ダ が 旧
る。
ニュージーランドが南太平洋となってい
騒いだところで省内対立もクリアーして 「そこまでや ったらNSAは 引き 揚げま
です。
ている、というのがいまの通産省の立場
て見直しを図る」
ついても、NSA要員の活動調査を通じ
ソ 連、 オ ー ス ト ラ リ ア が 東・ 南 ア ジ ア、 的な対抗手段がないために、口を閉ざし 「NSA要員 に対する思いや り予算のに
われわれはこれによって、日本のかなり
EU議会もこれを重視し、アメリカに情
り の 陰 険 な 動 き に じ わ じ わ と 潰 さ れ る。 「 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド で す か、 日 米 安 保 は
りから、がつんと、あるいは自治省あた 「いいじゃあないですか」
すよ」
報公開を求めるとともに、独自調査を再
そんなあきらめムード、澱んだ空気が充
の政治・経済情報が盗まれたとみている。 いない通産省です。外務省、防衛庁あた
会しています。
満しているのが実情なのです」
掛けたんです。そうなってもやむをえな
「 同 盟 国 の 監 視 だ な ん て。 ア メ リ カ が 仕
がたがたですね」
ニュージーランドに次いで、オーストラ
リア、カナダからも内部告発が現れ始め 「 し か し、 そ れ は 日 本 だ け の こ と な の だ
161
い」
「問題になる、と予想できますか」
上げられれば、そういうこともあると思
激しい言葉が行き交い、さながら反米 「具体的なケースに日本のケ ースが取り
集会のようになったころ、磯崎が溝口に
実態を取り上げる可能性が高くなったか
らである。
目に見える被害が挙げられれば、これ
諜法が必要だ」との声も挙がり、法制化
を 防 ご う と い う 世 論 が 巻 き 起 こ る。「 防
「 ヨ ー ロ ッ パ の レ ポ ー ト で、 日 本 の ケ ー
に手間取ることはあっても「Qの会」の
います」
スが取り上げられる可能性はあるんです
プランに向けて確実に事態は進展するだ
ろう。
か」
目をやると、溝口はもういなかった。い
つのまにか退席してしまったのだ。
「なんだ、任務放棄じゃないか」
磯 崎 は 集 会 後、 参 加 者 全 員 に ニ ュ ー
ヨークでの出来事をできるだけ客観的に 「 一 月 の レ ポ ー ト で も、 日 本 の 情 報 が 盗
が、会としてはもっと積極的に、先手
を取って動き、「防諜法案 同
・ 組織法案」
と「防諜事業法案」二本立てのメニュー
ら れ て い る、 と 示 唆 し て い ま す。 だ か
せん。ぼくは報告者のSTOAは日本と
を用意し、法制化がスムーズに進むよう、
描写した。そして、先刻の溝口の言い訳
溝口が姿をくらましたこともあって、危
の共闘を望んでるんじゃあないかと思っ
に つ い て も 感 想 を 交 え ず に 皆 に 伝 え た。 ら、取り上げられてもおかしくはありま
機 感 が や や 遠 の い た た め だ ろ う か。
「ま
あ、
注意しよう」
ということになって、「除
なった。
最善の努力をしておこう、ということに
ています」
名」という物騒な言葉はだれの口からも 「 と い う こ と は、 日 本 の 世 論 に 火 が つ く
ようなものになることもある、というこ 「 も う 二 ヶ 月 も あ り ま せ ん。 今 日 か ら 臨
「どうやらエシュロンの調査グループ
(S
アメリカの対中接近、橋本首相の退陣と
七月二五日、「Qの会」第三回定例会は、
スケジュールを考える段になると二ヶ月
者 は な く、 お お い に 盛 り 上 が っ た。 が、
出てこなかった。
TOA)
は九月の半ば頃に、
一月のレポー
小渕新総裁の誕生に関する短いやり取り
は相当厳しいことがわかって、参加者の
戦体制に入りましょう」
トを整理し、具体的なケースを補充した
があったほかは、長谷川のヨーロッパ情
だれもが冷や水を浴びせられたような気
とですね」
改訂版を欧州議会に提出するようです」
報一色になった。STOAレポートの改
分になった。
堀田の提案には、むろん異議を唱える
JETROの長谷川からのヨーロッパ
訂版が、エシュロンによる日本の被害の
情報だ。
162
U
た だ し、 こ の 掘 り 起 こ し は 急 が な く て
八月集会は「CIAが日本を盗聴
それでも、思い直したように、率先し
KUSA協定を知っていますか」のタイ
ホールで開くこととし、院内集会は衆議
けっこうです。提案議員は水島人脈を使
院 が 九 月 二 日、 参 議 院 が 九 月 三 日 と 決
てスケジュールを立て始めたのは中川
まった。八月中は夏休みなので、議員の
ト ル で 二 一 日、 神 宮 外 苑 の 日 本 青 年 館
ちましょう。
ついで八月の末頃に衆議院、 論に近い水島系経済理論が、なお、強い
「まずは中間の八月二〇ごろに集会を持
逆風下にあることをよく理解していた。
出席が少ないと考えたからだ。
わなくても十分に集まります」
参議院の議員会館で院内集会を持ち、そ
大蔵省の財政再建策を支持して退陣した
だった。
の後に記者会見。九月の一〇日ごろ、再
橋本の後任である小渕は、これまで以上
中川は大蔵省の経済政策や大きな政府
度衆議院で法案の説明会を開き、議員立
に 大 蔵 と の 距 離 を 開 け る と 予 想 さ れ た。 人・学者グループの手際のいい組織作り
日数が少なかったにもかかわらず、役
法の提案議員を固めます。
成功を収めた。一三〇〇席の会場の一階
事 業 を 除 け ば、 緊 縮 財 政 は 避 け ら れ ず、 な準備行動とで、八月二一日の集会は大
と、ジャーナリスト・グループの精力的
の抗議集会を用意し、一方で、UKUS
小さな政府論が幅を利かすことにもな
席をほぼ埋める、九〇〇人ほどの参加者
そしてまた、景気回復を名目とする公共
Aと防衛庁の協力関係の真相究明を衆参
る。
が集まったのである。
また、九月の二〇日ごろにUKUSA
両院に求めていきます。
中川は、そうした流れと「防諜法案」が
おり杉井さんに進めていただき、私、中
ことですね。議員の発掘は、これまでど
の発掘で、後半は法案提出の準備という
ず、阻止に出るかもしれない。そうなれ
にでもなれば、自治省はなりふりかまわ
の背後に大蔵が控えている、ということ
れに一九九五年、日米自動車協議に際し
り、NECとAT&Tが争った事件、そ
インドネシア電話通信網の受注をめぐ
け た と 考 え て い る 事 件 は 一 九 九 〇 年 に、
リ ン ク さ れ る の を 恐 れ た。「 防 諜 法 案 」 「わたしたち がCIAの盗聴で被 害を受
前半は八月集会へのPRと、協力議員
川と、通産の水越の二人が関係議員にア
ば法案成立は困難になる。
保条約に伴う地位協定の見直しも不可能
NECが被害にあった事件というのを
の二つです。
て数値予測の挿入を許してしまった事件
タックします。
人脈掘り起こしは帝都大の木下さんに
になる。そんな風に考えたからである。
溝口さんが脱落したので、水島教授の 「Qの会」の隠れた目的でも ある日米安
やっていただきます。
163
かいつまんでお話すると、インドネシア
杉井が「防諜法案」の紹介をして、終了
が進められている謀略の話をし、最後に
け で、 ア メ リ カ の 都 合 に 沿 っ て 問 題 が
しかし、日本の事情がアメリカに筒抜
ろう。日本は情報操作によって、アメリ
政府がテレコム拡張工事の国際入札をお
磯崎の話は九〇年代、日本経済の根幹
カに屈服させられてしまうことになる。
リークされるとすれば、これは問題であ
の落札内容をNSAが傍受。AT&Tの
を揺さぶるスキャンダルが次々に噴出
となった。
条件のほうが有利だということを発見し
し、失速していった背景には、CIAの 「 実 際、 い ま 挙 げ た 事 件 で は ど れ も、 日
こない、NECが落札した。ところがそ
た。
ど、総合的に勘案してNECに決めたの
証券の損失補てん事件、九五年の大和銀
九一年の野村證券をはじめとする四大
アメリカがある。つまり盗聴です。
いた。ここには日本よりも日本に詳しい
さんの疑惑情報がアメリカから流れ出て
本の捜査陣が動き出すよりも前に、たく
だが、アメリカがこれに抗議。ブッシュ
行ニューヨーク支店の損失隠し事件、同
この盗聴には、堀田さんや松永さんがお
陰がある、という話だった。
大統領自らインドネシア政府に圧力をか
年の大蔵官僚過剰接待事件、九七年の四
話されたエシュロン・システムももちろ
インドネシアとしてはアフターケアな
け、事業の半分をAT&Tに請け負わせ
大証券、対暴力団利益供与事件、同年の
第 一 勧 銀 総 会 屋 不 正 融 資 事 件、 九 八 年、 ん関与しているはずです。しかし、金融
た、というものです。
総事業費4億ドルの取引ですから、半
にUKUSA協定の関連と、UKUSA
この日は堀田がCIAとNSA、それ
よりも先にアメリカで疑惑が生まれ、そ
らない事件ではある。したがって、日本
であり、明るみに出して糾さなければな
これらはみな、あってはならない不正
投資 金
・ 融 情 報 の 管 理 に も 便 利 な の で、
日本の銀行も軒並みこれを入れています
ます。
イト)の情報管理ソフトがあるといわれ
ROMIS)と呼ばれる大型(1ギガバ
情報の盗聴にはもうひとつプロミス(P
が持つ非軍事諜報ネットワーク「エシュ
れを受けて日本の検察が動いたとしても
が、このソフトにはバックドアがついて
大蔵省日銀接待汚職事件。
ロン」の説明を行い、エシュロンによっ
そのことに異議はない。それどころか逆
いて、CIAが盗聴できるようになって
分というのはとても大きなものになりま
て盗聴されたと思われる被害ケースを松
にアメリカに感謝すべきなのかもしれな
いる、というのです。
す」
江の松永が解説した。
い。
次いで磯崎が、被害とは言い切れない
164
CIAは当初、カリブ海のケイマン島な
だというのに反応がよく、有能な秘書を
準備の助っ人として貸してくれたのであ
CIAの謀略
第
章 「緊迫」
よりも悪質だといえますね。
は隠したままで、です。手口はマフィア
図りました。もちろんバックドアのこと
日本の金融会社、政府機関に売り込みを
な の で す が、 後 に 偽 装 会 社 を 仕 立 て て、
八月末までには用意万端、各党有志の参
どを用意した。
者会見用ブリーフ、UKUSAの資料な
を行った。議員に対する法案説明文、記
らい、法案の細部における最終的な詰め
友好的な議員秘書たちにも参加しても
九四年より二四時間体制で提供されてい
をキャッチした。
「みょうこう」の高性能レーダーがこれ
西海域に待機していたイージス護衛艦
が 発 射 さ れ た。 そ の と き 能 登 半 島 の 北
地から3段式テポドン改造型ロケット
分、北朝鮮の舞水端里(ムスタンリ)基
一九九八年八月三一日午後一二時〇七
ともあれ、こうして得た盗聴情報をCI
加 も 決 ま り、 九 月 二 日 を 待 つ ば か り に
た在日米軍の早期警戒情報が横田基地司
る。
Aは都合よく警察・検察にリークするこ
なっていたのである。
どを使ったマフィヤのマネー ロ
・ ンダリ
ングを監視するために自ら導入したよう
とで、日本に対する謀略活動を行ってい
かった出来事が起こった。朝鮮民主主義
の会」のだれ一人として予想もしていな
着弾予定地域は北緯四〇
ほぼ同じ時間であった。「ミサイル発射、
令部から自衛隊中央指揮所に届いたのも
あくまでも推定のつなぎあわせで、確
人民共和国が長距離弾道飛行物体「テポ
一三四 〇
・ 三、 ウ ラ ジ オ ス ト ー ク 南 方、
日本海公海上」というものだった。
と こ ろ が 八 月 三 一 日、 正 午 過 ぎ、「 Q
証に乏しい話なのだが、磯崎の話は参加
ドン」を発射、その一部が日本列島を越
マッハ三のスピードで東へ向かったテポ
るといっていいでしょう。こんなことを
者の喝采を浴びた。人々の怒りの目がア
え、三陸沖の太平洋上に落下したのであ
ド ン は 約 一 分 半 後 に 1 段 目 を 切 り 離 し。
の発掘も順調にいっている。このぶんな
杉井、中川、水越の議員立法提出議員
青森県西方の日本海上空二〇〇キロで二
本海上に落下。四分半後の一二時一一分、
これは発射地点から東へ四〇〇キロの日
許しておいてはなりません」
メリカに向けられ始めているのを感じ取
る。
ら次の衆参議員会館における院内集会も
段目を分離。発射後五分半後には二段目
五
・ 四、 東 経
ることができた。
成功するかに見えた。議員たちは夏休み
165
11
この発表はアメリカの早期警戒情報に
発射の事実を発表した。
報収集を指示。一三時三〇分に防衛庁が
報。同五〇分に第一報が首相に届き、情
全保障危機管理室に弾道ミサイル発射の
分、防衛庁中央指揮所から官邸、内閣安
二段目が落下したと同時刻の一二時一五
キロ離れた太平洋上に落下した。
が青森県上空を通過。八分後に一八〇〇
さが際立つ日本の情報収集能力に対する
たこれに、韓国の発表と比べてもお粗末
たような不快極まりない事件だった。ま
たばかりでなく、寝ている頭をまたがれ
にずれ込んだ。河尻融防衛審議官が六本
に対立があり、公式発表は二三時一五分
表を決意。方法に関して防衛庁と外務省
そうした中、二日の衆議院議員会館集会、
配したのである。
辺は一種、ナショナリズムの昂揚感が支
声が与野党議員から上げられた。国会周
これは日本にとって寝耳に水の発射だっ 「日本も偵察 衛星を持つべきだ」 という
木の防衛庁で記者会見したものである。
三日の参議院議員会館集会はさんざんな
そして、発射翌日の九月一日には早くも、
通過しているにもかかわらず、である。
体など、毎日何千という数で日本上空を
た。推進力がなければ日本に落ちる飛行
う こ と で 欠 席 し、「 Q の 会 」 内 部 に も 北
激しい苛立ちが重なり、同盟国アメリカ
ショックとでも呼べばいいような混乱を
朝鮮に対する制裁を求めて、活動する者
拠った日本海着弾説だったが、一四時を
リカから外務省への情報の中で。そして
生じた。テポドンそのものは射程の長い
が現れたからである。
結果に終った。まずは参加予定の議員た
韓国国防省幹部の記者会見の中で。
弾道ミサイルで、日本を直接ターゲット
JETROの長谷川や、新たに水島人脈
の情報に対する疑いが芽生えた。
この説が額賀防衛庁長官に伝えられたの
にしたものではない。日本の脅威はすで
の議員とりまとめを担当した木下など
過ぎるころから、太平洋着弾説が浮上す
が 一 五 時、 小 渕 首 相 に 伝 え ら れ た の が
に九五年のノドン一号の発射成功によっ
が、テポドン ナ
・ ショナリズムに感染し
ちが軒並み「それどころではない」とい
一五時三〇分。内閣安全保障室担当官に
て現実のものとなっているのである。
これらは永田町、霞ヶ関周辺にテポドン・
伝わったのはやっと二一時になってのこ
だが、
そのような冷静な判断は影を潜め、 た連中である。
る。まずは防衛庁内部から、次いでアメ
とである。この間の十六時、韓国国防省
ロの太平洋上」と表明した。
代表とするヒステリックな声に満ち溢れ
に落ちている」という甘利労相の言葉を
が我々のみを『危険だ』として早々と中
ジア太平洋平和委員会が、日本の政治家
幹部が「着弾地点は三沢沖北東五八〇キ 「もしロケットの推進力がな ければ日本 「 北 朝 鮮 が 開 き 直 っ た そ う だ。 朝 鮮 の ア
二〇時ごろ、日本も「太平洋着弾」の発
166
やってきた長谷川は、それだけを苦々し
二 日、 衆 議 院 第 一 議 員 会 館 の 会 場 に
たものだ、といっている」
傷し、騒いだのは根深い敵視政策から出
かもわからないので、閉会にすることも
むろっている。万一、議員がやってくる
当てもないままに「Qの会」の連中がた
参議院議員会館の会議室で、集会を開く
か、どうも怪しいものだ」
いはずはないんです。
す。アメリカの偵察衛星に区別がつかな
も発射台もまったく違うミサイルなんで
でもね、ノドンとテポドンとは見掛け
着弾地を日本海と計算した。
げに言い残して、すぐにあたふたと出て
ままならないのである。そこには磯崎の
アメリカのシステムにとんでもない欠
行った。その晩、外務省は先の委員会談
というのが本音だろう。今度も反対され
カ の 偵 察 衛 星 情 報 を 日 本 に 買 わ せ た い、
アメリカの国防戦略からいえば、アメリ
で、日本の参入はこれを脅かすからだ。
占こそがアメリカの国防の要のひとつ
てきた。いわゆるハイテク情報支配の独
れど、そのたびにアメリカの反対に遭っ
これまでも何度か浮上したことがあるけ
「 ほ ん と う な の か。 日 本 版 の 偵 察 衛 星 は
決めたみたいだぞ」
小渕でさえもが、早くも偵察衛星導入を
議決議 を
」 採択した。
「 な ん と い う 早 手 回 し だ。 あ の 昼 行 灯 の
から、発射をキャッチしたDPS衛星は
明らかにノドンを想定したものです。だ
ところが最初に届いた早期警戒情報は
メリカの情報に基づいたものでしょう。
うこう』が能登沖に待機していたのもア
ている。海上自衛隊のイージス艦『みょ
るミサイル情報収集機を沖縄から飛ばし
た 船 を 出 し、
『コブラボール』と呼ばれ
ら日本海にミサイル追跡レーダーを備え
を事前に知っていたわけでしょう。だか
ろう。どうもわかりません」
後 は ミ サ イ ル 迎 撃 シ ス テ ム の 共 同 開 発、
これを『みょうこう』にやらせています。
ス艦によるミサイルの飛行分析で、今回、
しかもTMDの基礎になるのはイージ
です。
鮮のミサイルの脅威を煽るのはわかるん
構想には参加させたかった。だから北朝
た。 だ が、 T M D( 戦 域 ミ サ イ ル 防 衛 )
は日本に偵察衛星を持たせたくなかっ
「 だ っ て、 い い で す か。 ア メ リ カ は 発 射 「 そ れ が 考 え ら れ な い ん で す。 ア メ リ カ
春田が首をひねった。
ということになる。
か」
どんなことが考えられるというんです
話に対して 誠
「意のない見解である 」と ほか堀田、春田、水越、杉井などがいた。 陥があったのか、それとも何かの謀略な
して厳重抗議。翌三日には衆議院で 抗 「 し か し、 な ぜ だ ろ う。 な ぜ ア メ リ カ は のか、考えられることは二つに一つです」
「
正確な情報をキャッチできなかったんだ 「 謀 略、 で す か。 も し そ う だ と す る と、
るぞ。小渕はそのことがわかっているの
167
でも、その可能性よりも、今度のよう
心暗鬼を生むことになる」
に偵察衛星の導入に向かう可能性のほう 「相手が特定されない」
本が打ち上げてやるのと大差がなくなる
んだ」
「TMDは莫大な開発費を必要としなが
読みきれなかったんでしょうか」
日本のそうしたナショナリズムの昂揚を
交手腕を持ち合わせてはいないわ」
ばならないの。日本は世界を説得する外
要とし、結果的に世界をカバーしなけれ
一国を監視するのに四基の周回衛星を必
いかない。それに安保の見直し、日本の
アメリカが日本に追い越されるわけには
しょう。いわゆる先端技術の開発の上で、
保 有 で は な く、 偵 察 技 術 な ど の 開 発 で
が大きいように思うんです。アメリカは 「 え え、 そ う よ。 低 空 軌 道 を 回 る か ら、 「 だ か ら、 ア メ リ カ が 恐 れ る の は 衛 星 の
ら、完成する保証はなく、また、完成し
て も 迎 撃 能 力 が 1 0 0 % に は な ら な い。 「 ま あ、 そ の 議 論 は と も か く と し て も、 アメリカからの自立です。つまり独自防
偵 察 衛 星 を 運 用 す る 機 関 が 必 要 だ ろ う。 衛論の昂まりです。アメリカはそれを潰
北朝鮮は九月四日、発射したのはミサ
費用対効果の問題も大きなネックで、日
たんだ。アメリカからの情報の自立とい
イルではなく、人工衛星を搭載した多段
しにくるでしょう。だからわたしは次期
う、しっかりした視点に立たないと、打
式 ロ ケ ッ ト で あ る、 と 発 表。「 衛 星 は 金
その議論なしに導入しても宝の持ち腐れ
ち上げた衛星の情報自体がごっそりアメ
正 日 将 軍 を 称 え る 歌 」 を 送 信 し て い る、
本はアメリカの誘いを引き伸ばしにし続
だが、おそらく偵察衛星導入構想はす
リカのものになる可能性だって残ってい
として、同月八日、人工衛星打ち上げの
支援戦闘機FSXの二の舞になるような
でに待機状態にあったのだろう。予想も
る」
成功を祝った。
になる可能性は大きい。導入派の先生た
しない速さで形になろうとしている」
「 そ う か、 ア メ リ カ は 日 米 安 保 条 約 で 日
アメリカは八日、人工衛星とは確認で
けてきたものだ。だから日本をアメリカ
「わたしたちも偵察衛星については反対
本の機関を利用する権利を持っているわ
きない、と発表。一一日には国防省当局
気がしますね」
じゃないわけでしょう」
けだ。衛星が集めた情報を独自に分析す
が「小型の人工衛星を軌道に乗せようと
ちも、我々の院内集会に参加すべきだっ
「 い え、 わ た し は 反 対 よ。 わ た し た ち の
る能力がなければ、この部分でアメリカ
したが、失敗したとの結論を得た」とし、
が敷いたレールに乗せるため、謀略を仕
主張はカウンター エ
・ スピオナージでエ
スピオナージではなかったわ。衛星によ
に頼るほかはなく、アメリカの衛星を日
組んだ、というのは十分にありうる。
る偵察は、相手が特定されず、世界に疑
168
N A S A は「 衛 星 を 軌 道 に 打 ち 上 げ た 」 こ の 中 で、 今
「 回 の 実 験 を 受 け て、 日 本
TMD構想への参加は、中国に対する脅
威から積極的に参加を決めている台湾に
次ぐもので、アメリカを介してはいるも
とする成功説に立った。
と 米 国 は、 イ ー ジ ス 艦 に よ る ・・・・
戦域
防衛を試みるという賢明な方向に踏み出
結んだことを意味する。
情報を最初に受け取る在韓米軍のデータ
ちなみに、DPS衛星(偵察衛星)の
して欲しい 」と、述べている。つまりこ
れはTMD構想への日本の協力を呼びか
これはあきらかに、日本の独自防衛を偵
察衛星という形で準備してきた者たちの
のの、日本が台湾と軍事技術開発で手を
分析などから、韓国も一七日、発射を人
けている。
磯崎たちはその後、このインタビュー
工衛星打ち上げの失敗だった、と結論し
ている。
防衛庁等で分析中」とし、三〇日には防
「人工衛星であることも含め各種情報を
の日本は一四日、外務事務次官の談話で
メリカの情報とアメリカの情報分析に不
それは謀略説を強く印象付けるものだっ
に、どれほどの意味があるのかはわかり
しかし、CIAは謀略に失敗。日本はア 「日本が 情報収集衛星を独自 に持つこと
た。
ま せ ん が、 こ れ が 日 米 の 対 等 な パ ー ト
利である。
共軍事力として期待する台湾ロビーの勝
の 早 さ、 タ イ ミ ン グ の よ さ に 注 目 し た。 悲願が実ったのにとどまらず、日本を反
衛庁が人工衛星であることに否定的な最
信を抱き、独自の偵察衛星開発へと突き
ナー意識を育てる一歩になるならば、無
振り上げたこぶしを揮う先を失った形
終報告をまとめた。
進んだ。アメリカはこれを懸命に押さえ
日本はアメリカの見解とは明らかに異
そして、
翌三一日、
政府は独自開発の「情
カの情報独占を許す空気ではなかった。
リズムは手に負えないほど強く、アメリ
星も迎撃手段を持ってこそ真に生かされ
トナー意識を強固にします。情報収集衛
同様にTMDの共同研究も両国のパー
駄なこととはいえないでしょう。
報収集衛星」を四基、二〇〇二年度まで
やむなくアメリカはバーター作戦に転
なる、
独自の結論を導き出したのである。 込みにかかったが、テポドン・ナショナ
に打ち上げることを決定した。
ちたいものです 」
篠山啓志が、そんな解説をしていた。
換。
日本の偵察衛星に協力する代わりに、 るものですから、この研究にも関心を持
TMD構想への協力を取り付けた。九月
ところで、一〇月六日付けの『世界週
報』は発射翌日の九月一日に元CIA長
共同技術研究実施で合意したのである。
二〇日、日本はアメリカとTMD構想の
官、 ジ ェ ー ム ズ ウ
・ ールジーのインタ
ビュー記事を載せている。ウールジーは
169
日本がテポドン騒動で大混乱になって
口にし、関係者の発言として「AT&T
れ、 こ の プ ロ ジ ェ ク ト に 絡 ん で『 ブ ッ
視網の問題点」と「経済情報への新電子
九九年三月までに「市民の自由と電子監
求める決議 を
」 採択した。
そ し て、 そ の 具 体 的 な ス テ ッ プ と し て
」と し、 国
「 際規約の制定を
EU議会に対して、世界規模の盗聴ネッ
シュ大統領がスハルト大統領あてに親書
監視技術悪用の危険性」という二つのレ
必要がある
ての報告書(要約改訂版)が提出された。 を 送 っ た 』 と す る ジ ャ カ ル タ の 現 地 報
トワーク、エシュロン・システムについ
道まであった」という話を伝えている
い る 真 っ 最 中 の 一 九 九 八 年 九 月 十 六 日、 の受注への疑惑は入札直後からささやか
そこには予想通り、ヨーロッパ、日本の
台にするという。
ポートをまとめ、国際規約制定のたたき
盗聴被害が具体的に記されていた。日本 (一九九八 九
・ 一
・ 九)。
一方、ヨーロッパの関係では、フランス
に関連する部分では、八月の日本青年館
決めるため、九月の定例会を開催した。
本来なら九月二〇日ごろに「UKUSA
れたケース。
会 の メ ン バ ー の 参 加 者 は、 七 月 例 会 の
の電機メーカー、トムソンCSF社がブ
エアバス社がサウジアラビアと進めてい
一一人を割り込んで、わずか七人になっ
集会で松永が例に挙げたとおり、NEC
シュロンによる盗聴の結果と断じてい
た旅客機売り込み交渉を盗聴され、賄賂
抗議集会」を開催する予定だった「Qの
た。
が 介 在 し て い る、 と し て 商 談 を 潰 さ れ、 て し ま っ た が、 こ の 間 の 国 会 行 動 で 出
ラジルにレーダーを売り込んだ際、この
この一九九〇年に起きた事件は、すでに
会 っ た 若 手 議 員 の 秘 書 な ど が 参 加 し て、
のインドネシアのテルネット入札におけ
日 本 の マ ス コ ミ で も 報 じ ら れ、
『山陰新
契約をアメリカ企業のボーイングとマク
二〇人ほどの集まりになっている。
会」は、完全に目算が外れ、集会は中止
報 』 の 松 永 の 知 る と こ ろ と な っ た。
『文
ダネル・ダグラス社にさらわれたケース
「 予 想 通 り、 ヨ ー ロ ッ パ で は 大 き な 問 題
情報を盗聴。アメリカのライバル企業レ
芸春秋』九三年八月号、浜田和幸「CI
など、大きな被害が報告されている。
「 に な っ て い ま す ね。 ほ ん と う な ら 日 本
るクウェール副大統領による直接介入が
A が 分 析 し た『 沈 黙 の 艦 隊 』
」がそれで
この報告を受け、EU議会では一六日
だってこんなはずではなかったんだけ
された。そして、二九日に今後の行動を
ある。
米国の情報収集網エシュロンにより脅か
ど、なにしろこればっかりは予期しよう
イセオン社に流したため、商談をさらわ
EU議会報告書に驚き、取材した毎日新
される市民を守るため、防衛手段をとる
取り上げられていた。報告書はこれをエ
聞記者に対して、NECは改めて困惑を
170
けともつかないあいさつをし、いつもの 「 欧 州 議 会 の ほ か、 フ ラ ン ス や イ タ リ ア
がなかったもので ・・・・
」
始めに通産の水越が、愚痴ともいいわ
とで欧州議会を突き上げている」
アメリカの責任を追及すべし、というこ
通信システム)の暗号名なんです。
の偵察衛星プロジェクト(次期防衛衛星
「 M は 三 菱 の M で し て、 こ れ は 三 菱 電 機
春田がまた何か仕入れてきたようだ。
ムの乱用を防止する方策を取らなければ
実なら、NSAとGCHQはこのシステ
を求めたそうですよ。同議会はこれが事
のGCHQ(政府通信本部)に事実確認
件に関してアメリカのNSAとイギリス
の議員に提示する潮時だと考える』と
)』の副代表、パトリック・
Foundation
プール氏が、議会共和党メンバーに提出
提 言。 九 五 年 一 一 月 の『 防 衛 計 画 大 綱 』
るそうですね。彼は『この問題を我が国 『防衛問題懇 談会』が偵察衛星の 導入を
するエシュロン報告書の準備を進めてい
が情報体制の確立をうたったのを受け
タ ン ク『 自 由 議 会 財 団( Free Congress のは一九九三年の一〇月のことで、九四
防衛庁が偵察衛星導入の検討を始めた
ようなバズ ス
・ トーミングが始まった。 も独自調査を検討しているようです」
「 欧 州 連 合( E U ) は 九 月 一 九 日 に こ の 「 ア メ リ カ で は、 保 守 系 の 政 治 シ ン ク
ならない、といっているようです」
言っています」
う。乱用の防止、というのはいかにも柔
でしょうね」
れる。アメリカのある種の健全さ、なん
ギ リ ス も、 そ の 事 実 を 認 め な い で し ょ 「 変 な 国 で す よ ね。 必 ず そ う い う 人 が 現
ています。また九七年度には外務省に国
画像部を含む防衛庁情報本部が新設され
て、九七年一月には衛星画像を分析する
九四年八月には首相の私的諮問機関
う報告書になっている。
年一月には『写真偵察衛星の概要』とい
「 当 然 で し ょ う ね。 し か し ア メ リ カ も イ
らかな言い回しで、本当ならイギリスは
際情報収集衛星調査費が初めて予算化さ
に違反していることになる。EUへの参
そ れ を ま じ め に 弾 劾 し よ う と し て い る。
あ、大統領が不倫疑惑でしょう。しかも
し た の は 九 三 年 の 二 月 ご ろ で、『 最 終 的
ところで『Mミッション』がスタート
EUの結束を定めたマーストリヒト条約 「バランスなんじゃないですか。一方じゃ
加資格停止を含む制裁を受けても仕方が
そうでなければバランスを失う国なんで
には防衛庁に独自偵察衛星を保持させる
れています。
ない。
すよ」
実際そう主張する議員もいるようです
こと』を目標にしています。これは防衛
庁の研究開始次期とぴたり一致する。
「 と こ ろ で『 M ミ ッ シ ョ ン 』 と い う の を
よ」
「緑の党なども厳しい立場だそうですね。 知っていますか」
171
うなんです。
を受注することになるロッキード マ
・ー
チン社と防衛関連事業で提携を結んだよ
ね」
から出入り禁止処分を喰らっています
事件ですか。あれで日本電気は公共機関
そしてこの八月、三菱電機はTMD構想 「 あ っ、 防 衛 庁 に 対 す る 不 正 水 増 し 請 求
AやCIAに協力していくことにもなり
ころか、アメリカの下部機関としてNS
することになる。とすると、独自防衛ど
上に乗った内閣情報調査室が管理、運用
ね。そして、三菱=ロッキードにうって
待ちの体制が出来上がっていたわけです
がありますが、どうでしょう」
流したのはCIAではないか、という噂
す。この件でも、東京地検に捜査情報を
受注企業は三菱電機しかなかったので
の主体を警察から軍へと、再び引き戻す
も違う。テポドン・ショックは危機管理
立するものですが、内務省・石原構想と
これはわたしたちの『防諜法案』と対
つまり、すっかり準備万端。タイミング 「 つ ま り、 衛 星 打 ち 上 げ を 決 め た と き、 かねませんね。
つけのテポドン パ
・ ニックがやってき
て、両者の思惑通り衛星もTMDもとい
「 偵 察 衛 星 の 開 発・ 運 用 プ ラ ン は 内 閣 官 「冷戦思考に逆戻り、というわけですか。
うことで決着した、という図式になりま 「ともあれ、できすぎです。何かが臭う」 力になっているのかもしれません」
す」
房と科学技術庁、通産省、郵政省それぞ
となると、この間わがもの顔に振舞って
「 な ん だ、 そ う い う こ と か。 な ん か 見 事
衛星の開発を目指す日本のメーカーには
「 当 初 は ね、 た し か に そ う だ っ た。 偵 察
けではないんでしょう」
でも、偵察衛星は三菱の独壇場というわ
に配慮してのことと思われます。だから
防衛庁をはずしたのはアジア諸国の反発
ます。
二~三〇〇人の要員が必要だとされてい
定的ですが、軍事力の強化が必要なとき
リカは日本が独自防衛に走ることには否
カムバックしてくるかもしれない。アメ
ませんが、大沢や石原慎太郎的な思考が
は な く 内 閣 情 報 調 査 室 が 当 た る よ う で、 ね。
きた警察が打たれる番かもしれません
三菱のほか、東芝、日本電気があったん
衛星の呼称も偵察衛星ではなく、情報収
はいつでも、彼らの主張を利用します。
に や ら れ て い る、 っ て い う 感 じ で す ね。 れに提出しました。画像分析は防衛庁で
です。それがなぜか二年前に東芝が撤退
集衛星になっています」
衛論者もまた、アメリカのこの期待にこ
そしてまた、大沢や石原など、独自防
アメリカに何が起こったのかはわかり
しましてね、そしてなぜかこともあろう
この衛星の情報は防衛庁と外務省、その
にテポドン騒ぎの四日後の九月四日に日 「 形 式 的 に 防 衛 庁 を は ず し た に し て も、
本電気が落ちた」
172
たえます。大沢はもちろんのことですが
辞任に追い込んだ。
Mへの技術支援を停止させ、リッターを
ち、国連(UNSCOM)の査察活動に
石原も、
実は親米派なのかもしれません。 興味を失い、イラクによる査察妨害を口
トンは弾劾証言が始まった直後、イラク
一一月、タイミングを計っていたクリン
その狙いの主眼には「スキャンダル隠
に向けて爆撃機を発進させ、巡航ミサイ
実に、空爆の実施を狙っていた。
原もアメリカが自己利益を追求する際
し」があることを、アメリカの国民も世
NOといおうがいうまいが、大沢や石
の、手ごろな駒にほかならない。わたし
界の人々も気づいていたから、「まさか、 ルの発射ボタンを押そうとした。が、こ
のときはイラクのフセイン大統領が「査
はそのまま引き返した。
も 根 強 か っ た。 不 倫 隠 し の た め の 戦 争、 察の受け入れ」を表明したため、爆撃機
そんなことはできないだろう」という声
たちも、その点を認識すべきです」
テポドンの弾頭は人工衛星だったの
か、 発 射 の 真 の 狙 い は な ん だ っ た の か、 国防総省の内部でも、この武力行使は認
ト・ リ ッ タ ー は ア メ リ カ 人 で あ っ た が、 ところが、それにもかかわらず大統領弾
一二月一四日、国連のアナン事務総長は、
劾訴追のための本会議開催を翌日に控え
められないという声が強く、そこで生ま
ていたころ、アメリカでは「モニカの戦
九八年一月、FBIによってイスラエル
た 一 九 九 八 年 一 二 月 一 六 日、「 砂 漠 の 狐
アメリカのこうしたやり方に対して、記
争」をめぐる問題が深刻化していた。
のスパイであるとの嫌疑をかけられた。
作戦」の火蓋が切って落とされ、アメリ
れた隠語が「モニカの戦争」であった。
この年の一月に発覚した、ホワイトハ
CIAの捜査に対してリッターは「イス
カ・イギリス両軍がイラクの軍事施設を
二 発 目 の 発 射 は あ る の か ・・・・
、日本で
はなおテポドン・ショックから抜けきれ
ウス研修生のモニカ・ルインスキーとク
ラエルとの共同行動はUNSCOMの活
巡航ミサイルなどで攻撃した。
者会見を行い、強い不満を表明した。
リントン大統領のスキャンダルは一一月
動の一環である」と証言。実際、UNS
国連査察団UNSCOMの団長スコッ
一九日に至ってついに、スター独立検察
COMはイスラエルの思惑に乗って動い 「 モ ニ カ の 戦 争 」 に よ っ て、 バ ク ダ ッ ド
ず、北朝鮮の制裁を巡って議論が百出し
官による大統領に対する弾劾証言へと突
ていた。
を動かし、イスラエルによるUNSCO
メリカ・イギリス両国に駐留する大使を
八月、アメリカはオルブライト国務長官 「モニカの戦 争」に抗議してロシ アはア
の中心部で民間人五人が死亡した。
き進んだ。
査察を巡るイタチごっこで、中東にお
ける威信を低下させたアメリカは苛立
173
召還。中国、フランスも両国を非難。イ
スラム諸国会議、アラブ議会連盟も両国
恐れた。
TMDという巨大な支出を、国民負担
シ フ ト で あ る が、 こ の、「 保 保 連 立 」 シ
フトに乗せるべく、新たな法案が骨格を
忠実だがだらしなく、主人の後ろから吠
め て い る マ ネ ー ロ ン ダ リ ン グ の 規 制 や、
この三法案の中には、アメリカが強く求
を、
まるでみかじめ料であるかのように、 見せ始めた。それが組織的犯罪対策関連
空爆の翌日、ベトナム訪問中の小渕首
えたてる、まるで座敷犬のような「支持
盗 聴 を 可 能 に す る 法 案 が 含 ま れ て い た。
を強く非難し、空爆の即時停止、イラク
相は早々と「行動を支持する」との声明
声明」も、独自防衛の道を探り始めたこ
ア メ リ カ に 差 し 出 す こ と を 決 め た の も、 三法案である。
を発表。国連安保理の中で、唯一の「モ
の国の、
自己矛盾から生まれたひきつけ、 新ガイドライン同様、アメリカの国際戦
制裁の解除を決議した。
ニカの戦争」支持国となった。日本はア
略に沿った法整備という側面が強い法案
痙攣なのかもしれなかった。
なのであった。
いう相矛盾した要請が、溶け合わぬまま 「 や っ ぱ り き ま し た ね え。 盗 聴 法 案 で す
そして、この、独自防衛と安保重視と
ラ ブ 諸 国 に と っ て、 危 険 な 適 性 国 家 に
なったのである。
この、小渕首相の、あまりにも節操の
交 じ り 合 い、 大 沢 の 胸 の う ち の よ う に、 よ」
白濁した靄のようになって日本の政界を 「 そ う で す ね。 ま さ か オ ウ ム 真 理 教 事 件
ないアメリカ追従は、中東でアメリカと
国益をことにする日本が取るべき態度で
形になってくるとは思いませんでした」
への破防法の団体適用却下が、こういう
覆い始めた。
一一月八日、大沢批判の急先鋒であっ
はなかった。この地域で、日本がアメリ
カ・イギリスと一体とみなされて、プラ
会見し、大沢を党首とする自在党との連
も慎重な意見が多かった。一般法で押さ
ですよ。破防法の適用には旧内務官僚に
た民自党の野中官房長官が宇都宮で記者 「 い や、 磯 崎 さ ん、 こ れ は 予 想 の 範 囲 内
しかし、テポドンという熱病から覚め
立の可能性を示唆。禁じ手であったはず
スになるものはなにもないのである。
やらぬままの日本は、湾岸戦争という熱
病の再来に、
いともあっさりと感染した。 の「保保連立」政権の模索が始められた。 え込める、と言い放っていた警察官僚も
り切って、衛星という独自防衛の手段を
あるいはまた、アメリカの強い懸念を振
る新ガイドライン法案の成立を目指した
の役割を拡大し、安保の適用域を拡張す
これはあきらかに日米安保における日本
用されると主管は法務省の公安調査庁に
警察官僚からしてみれば、破防法が適
少なくなかったんです。
手にしたことで、反米イメージを極度に
174
まれることになるんです。
察の権限を広げることになる法律はいく
わけです。破防法は欲しくないけど、警
なる。公安調査官の指揮のもとに組み込 「 で す が ね、 や っ ぱ り 縄 張 り は 広 げ た い
押さえ込もうというものです。
で、麻薬やテロ、武器取引やマフィアを
たカネ、この汚れたカネを監視すること
マネー・ロンダリングというのはこの
法務省は出入国管理局を除けば内務省系
の 役 所 で は な い。 そ の 下 に 組 み 込 ま れ、 らでも欲しい。それも、できるだけ他省
不良債権を買い、破産したと見せかけて、
汚 れ た カ ネ を 洗 っ て き れ い に す る こ と。
あるいは、戦後一貫して左翼労働運動
実は別の証券に乗り換えておけば、この
庁とは無関係に活動できる使い勝手のい
の取締りなどでお世話になり、今も国際
配当はきれいなカネです。
普段から無駄飯食いとして軽んじていた
いことなんです。
犯罪などの捜査でお世話になりっぱなし
これを防止するには、こうした便宜を
たとえば総会屋が怪しいカネでA銀行の
CIAに対するFBIの対抗心、FBI
の ア メ リ カ さ ん の 要 求 に こ た え る 法 律、
図った銀行を罰すればいい。汚い金の運
い法律が欲しい。
に対する州警察や市警察の反発はよく知
アメリカさんに恩を売って、省庁の中で
用を禁止すればいい」
公安調査官の指示を仰ぐなどということ
られていますが、日本だって、警察庁に
の権威を支えてもらえる法律が欲しいわ
は、警察のプライドからして考えられな
対する各県警、本庁に対する出先警察署
けです」
「つまり、そういう法案なんですか」
対立がある。公安調査官に対する警察官
士 が 雇 え な い。 組 合 が 団 体 交 渉 で 勝 ち
の反発はそれより遥かに大きいと思いま 「盗聴法はその両方を満足させる法案だ、 「 ま あ そ う で す が、 カ ル ト 教 団 が 集 め た
というわけですね。で、そのマネー ロ
・
ンダリングの防止というのはなんです
取ったカネが、恐喝により手に入れたカ
骨ですから、縄張り意識として一概に切
リカが世界に協力を求めているもので
器取引、国際犯罪の抑止が名目で、アメ
らね。まあこれが警察の職務を支える背 「 盗 聴 法 と い っ し ょ で、 麻 薬、 テ ロ、 武
かねない」
して受け取っていた弁護士も有罪になり
ネだとみなされると、そのカネを報酬と
資金が不正だとなると、そのカネで弁護
警察には自分たちこそ国を守っているん
か」
り捨てられるものとは思いませんけど
す。たとえばマフィアが麻薬を売って儲 「 公 正 な 裁 判 を 受 け る 権 利 や、 弁 護 権 が
すよ。
だという、例の牧民官意識がありますか
ね」
けたカネ、テロ組織に武器を売って集め
失われる恐れがある、というわけですか。
「なるほど、たしかにそうですね」
175
それは危険ですね。でも、なんでそんな
ばスタッフもいない。
監視すべきです。が、アメリカはそれを
ない。まあ、便乗です。
「これは日本の警察権の拡張にほかなら
MISというソフトで徹底監視している
れはアメリカの商務省やCIAがPRO
ません。というのも、ここでの資金の流
側を制裁する、なんてことはありえませ
メリカが一方的にパナマを攻撃、売り手
買う側も厳しく取り締まるでしょう。ア
国連なら、麻薬を売る側ばかりではなく、
認めない。
アメリカが狙っているのはそんなもの
からです。大和銀行ニューヨーク支店の
でも、日本の財閥におなじ真似はでき
じゃあない。アメリカが、CIAが世界
ん。
ものをアメリカが狙うのですか」
の マ ネ ー 警 察 に な ろ う と い う 野 望 で す。 不正も、このシステムによって発覚した
ら、利用させているケイマン島のやり方
同様に、ケイマン島の利用者を罰するな
つまり、アメリカだけが大規模なマネ
をも罰するはずです。ちなみにケイマン
ようです。
ロンを監視し、訴追できる。大和のカネ
島はイギリス領、タックス・ヘイブンを
世界の大規模なマネー・ロンダリングは
は不正だ、と、CIAが通報すれば、日
止めさせるのは簡単なはずなんです」
ケーマン島やバハマなどのカリブ海地域
タックス・ヘイブンといわれる利子や
本の警察は新法の規定によって、大和の
取りすれば、マネー・ロンダリングは成
てきている大銀行と、何度か資金をやり
立し、
空契約を結んで、
世界中から集まっ
です。ここにペーパー・カンパニーを設
るかもしれないのです」
本経済の殺生与奪の権限を握ることにな
一存で決まってしまう。マネー警察は日
つどこを叩くかは、まったくアメリカの
ねえ」
にいるのはその巨大財閥なんでしょうが
手さには恐れ入ります。もちろんバック
わけですね。アメリカ・イギリスの身勝
取引を停止しなければならなくなる。い 「 利 益 が あ る か ら や め ら れ な い、 と い う
で行われています。
配当に税金が科せられない特権的な地域
功です。
も咎められませんし、何をしたのか追跡
大財閥は、ここで何をしようとだれから
よって、そのために作られた。米英の巨
チェックする民衆がいない」
いう図式ですか。汚いですね。ここにも
タ支配を通じてアメリカが君臨する、と
諜 法 案 』 の 待 機 状 態 は や む を え な い が、
る法案が続々と登場してきたわけだ。『防
を監視するどころか、CIAに監視され
えば、もう取り返しがつかない。CIA
これらの地域はアメリカやイギリスに 「 各 国 に 禁 止 の 国 内 法 を 作 ら せ て、 デ ー 「 と に か く、 こ う い う 法 律 が で き て し ま
されません。追跡するシステムもなけれ 「 本 来 な ら、 国 連 が 規 制 を 作 り、 国 連 が
176
のではないだろうか」
これらの法案に反対していく必要がある
しつづけるビルがある。そのビルの最上
の角で、刻々と世界の為替レートを表示
し て、 走 り 出 す。「 ラ イ オ ン キ
・ ング」
の大きな看板が、二階建ての観光バスを
いる後ろをすり抜けて、花束を抱えて舞
舞台装置を積んだトラックが荷卸をして
ブ ロ ー ド ウ ェ イ の 裏 道 を 駆 け て い る。
待つ行列の向こうにそそり立つ。
ンドの隙間から、誰かがのぞいているよ
「 た し か に そ う だ。 来 月( 九 九 年 二 月 ) 階に下りているブラインド。そのブライ
の例会で、提案してみよう」
うな気がする。
ビルの脇に開いた地下鉄一番線の出口
「 こ の ぶ ん だ と、 継 続 審 議 に な っ て い た
住民基本台帳法の改正案も動き出すかも
から、
大勢の人たちが吐き出されてくる。 台裏にたむろうファンの列を突き破る。
スクウェアへ。あそこなら、上から狙わ
しれないぞ」
地上に上がると同時に襟を合わせたよう
れることはないわ」
レ ザ ー の ロ ン グ コ ー ト を 着 込 ん だ 男 が、 「 地 上 は だ め よ。 地 下 鉄 で ワ シ ン ト ン・
な気がする。そのコートの裏に、磯崎は
「 そ う だ な。 そ の 動 き も 監 視 し な く て は
」
・・・・
一九九九年の正月、松永が東京に出て
した。その新年のめでたくあるべき会話 「いつまでもこんなところに いては危な
まり、中央広場の剣を飲み込むパフォー
ン・スクウェアは夕日でオレンジ色に染
どこをどう通ってきたのか。ワシント
いぞ。目抜き通りのど真ん中で、わたし
マーを取り巻いて、大群衆ができている。
ライフルを見たように思う。
が沈んだ。たいへんな年になりそうな予
は360度、すっかり敵に身を晒してい
「なるほど、ここへもぐりこめば安全だ」
きたので磯崎と春田が小さな宴席を用意
感が、三人の酒をすっぱいものにした。
る」
せんか、日本人。アシスタントをしても
ル の 看 板 を 見 上 げ る。 そ の 看 板 が 突 然、 間、突然パフォーマーが「日本人はいま
磯崎がやっと一息ついたのもつかの
か。磯崎正太郎は自分のホームページの
頭の周りをぐるりと回って、磯崎はだれ
らいます」というではないか。観衆がざ
南にあるのっぽビルの、カップヌード
掲示板に、赤く点滅する文字で「海、L
かに手をとられている。
わめき、あっという間に若い二人の女性
堀之内久子に呼び出されたのだろう
ove、以」というメッセージが浮かん
「なにしているの、ばかね。こっちよ」
がステージに引き揚げられる。
ない。手を引かれ、人ごみを縫うように 「 二 人 と も か わ い い ね。 こ れ は 危 険 だ か
堀之内らしいが、顔をみている余裕は
でいるのを発見した。
マンハッタンのタイムズスクウェアー
のど真ん中で人を待つ。ひとつ先の街路
177
ら、
キミたちには立会人をお願いしよう。 その一人はあきらかに、まだ若い、小浜
ストーリーは、テロ防止を名目に上程さ
ド マ
・ ルコーニ。一九九八年一一月二〇
日、全米で封切られた。
他愛ない夢であった。後半はどこかリ
れ た 通 信 傍 受 法 に 反 対 す る 下 院 議 員 が、
島時代の池島佳苗だった。
アリティーに欠け、子ども騙しのような
NSAの行政官(ジョン・ボイド扮する
そこで見ていて。必要なのは男性だ。日
シーンに過ぎなかったが、それでもどこ
レイノルズ)と彼の工作員に暗殺される
本人の男性。少々ごつくてもかまいませ
かに不快感が残る。磯崎はベッドに身を
ところから始まる。この暗殺現場を野鳥
再び観衆が騒ぎ始め、周囲を見回して
ん」
いる。
起こしたまま、何度か首を回した。なぜ
を 取 り 戻 す た め、 N S A は 総 力 を 挙 げ
「そこのひと」
この夢は昨日の例会で、堀田豊が話し
て、それと知らずに所持している弁護士
監察カメラが偶然捕らえた。このビデオ
てくれた映画のせいであることは間違い
か肩が張っている。
パフォーマーが剣で指差す。磯崎はた
ち ま ち 近 く の 観 集 に 羽 交 い 絞 め に さ れ、
ステージに引き出されてしまった。
そのついでに、いま評判の話題作『En
通信傍受法案を阻止するというものだ。
N S A の 情 報 網 か ら 必 死 の 脱 出 を 試 み、
らうことにいたしましょう」
「 で は ま ず 手 始 め に、 あ な た に 飲 ん で も
アクション娯楽大作で、監督は『トップ
ンピュータ社会がいかに危険かを訴えた
この映画はプライヴァシーを無視したコ
監視ネットワークに掛かってしまうので
監視する。彼の一挙手一投足がNSAの
ド、 監 視 カ メ ラ、 偵 察 衛 星 ・・・・
、それ
らのネットワークがディーンを秒単位で
The
State(邦
Of
emy
個人監視能力、行動追跡能力のすさまじ
この中で駆使される、現に進むNSAの
題エネミー オ
・ブ ア
・ メ リ カ )』 を 観 て
きた。そのストーリーを例会で報告した
「あなたはよけいなことをしていますね。 なかった。堀田はその数日前までニュー ( ウ ィ ル ス
・ ミス扮するディーン)を追
ヨークにいて、堀之内久子に会ってきた。 跡。異変に気づいた弁護士・ディーンが
でも、わたしたちから逃げ出すことはで
きませんよ」
パフォーマーがマスクをはずすと、そ
の顔はなんと、小浜島で見つけた記念写
真に池島佳苗、篠山啓志と一緒に写って
磯崎の目の前に、長くて細い西洋剣の
ある。
さ が、 観 客 を 戦 慄 さ せ る。 電 話、 カ ー
切っ先が迫る。ニヤニヤする男の後ろか
ガン』のトニー ス
・ コット、脚本は『続
イ
・ ンポッシブル』のデビッ
いた、
あの正体不明の外国人ではないか。 のである。
ら、 う れ し そ う に 覗 き 込 む 日 本 人 の 女。 ミッション
178
の針が読める、というのも少し行き過ぎ
いまのところまだない。宇宙から腕時計
たしかに個人を追って、衛星が位置を変
いる、という者。
いる、という者。ほとんどが誇張されて
か、という者、現実はもっと先を行って
がある」という。ほとんど現実ではない
る。
でが空想か、ということだったようであ
ノロジーの、どこまでが現実で、どこま
になったのは、この映画に出てくるテク
アメリカで公開されてから大きな議論
頭の中にあるものだけさ」
「 わ れ わ れ に 盗 聴 で き な い も の は、 ま だ
ルズがうそぶく。
追跡システムが登場する。劇中でレイノ
ここには エ「シュロン 」そっくりの盗聴
システムや、エシュロンをも凌ぐ最新の
事件があった。
トル横で炸裂。大統領が即死するという
SAに直結している、
などということは、 離独立派の旗手ドダエフ大統領の一メー
える、とか、コンビニの防犯カメラがN
大統領が直前にかけた衛星通信電話の信
1発が民家の屋根を貫通。潜んでいた分
レーザー誘導ミサイルを発射した。その
シアのスホイ二五戦闘機が襲来。2発の
国グロズヌイ近郊の寒村・ゲキチュにロ
一九九六年四月二一日、チェチェン共和
である。
うものだった。いわゆるカーナビの原理
大方の意見では「これならできる」とい
を知らせる発信機が埋め込まれていた。
けられ、携帯電話には衛星に向け、位置
トの全身に六個のマイクロ盗聴器が仕掛
意見もあった。しかし、映画ではターゲッ
所をつかむことはまだできない、という
だが、レスポンスが早すぎる、瞬時に居
ターゲットの位置を特定することは可能
しかし、コメンテーター全員が一致して
音だけで、打っている文字を判読するも
撃している。ソフトはタイプライターの
たコンピュータ・ソフトとツマ楊枝を目
く必要もなく、資料室に捨て置かれてい
実際、彼は、古くなって秘密にしてお
もしれない」
よりも一〇年も一五年も遅れているのか
際にNSAが使用しているテクノロジー
「 映 画 に 出 て き た よ う な シ ス テ ム は、 実
ている。
デイビスは、そのときの印象をこう語っ
製作総指揮に当たったアンドリュー・
せることだけを許した、という。
拒否。無人の執務室を護衛つきで見学さ
SAに取材したという。NSAはこれを
映画を作るに当たって、撮影チームはN
である。だが、NSAならできる。
は、ほかの方法では不可能だ、というの
すべてが現実になる」ということだった。 である。このようなピンポイントの狙撃
い る の は、
「 技 術 的 に は、 何 年 か す れ ば
の。楊枝はその先にマイクロ・カメラが
アに通報した、というのが専門家の見方
号から、NSAが位置を割り出し、ロシ
堀田は「それらの意見には大きな開き
かも知れない。
179
ベースに乗るほどの観客がいる。盗聴法
もすごい。というよりも、ちゃんと商業
が、こんな映画を作るアメリカという国
いというほかはないね。NSAもすごい
「 と も か く も、 よ く で き た 映 画 で、 す ご
いはずがない。だから阻止しなければな
は な い、 と 言 い 張 る に 違 い な い ん で す。 役回りを買って出た。
民番号だって、導入までは監視ツールで
よね。でも、監視を止めれば危ない。住
「スタートはそうだったかもしれません
法案の行方に係わらず、「Qの会」は「防
すからね。これを監視ツールに利用しな 「 Q の 会 」 を 拘 束 し た り は し な い こ と。
でも、自治省の力の源泉は住民の管理で
諜法案」の議員立法化を目指すこと。こ
それぞれの横の連絡を担当する遊軍的な
む組織的犯罪対策三法案、そして磯崎は
民基本台帳法改正案、杉井は盗聴法を含
仕込まれていた。
は危険だ、というメッセージが、ちゃん
らないんです」
この日(九九年二月二〇日)以降、「Q
ただし、これらの法案に反対することで
と伝達されている」
れらを改めて確認した。
法にはどこかに危なさがあるもの。防諜
「 そ の 映 画 は 日 本 で も 公 開 さ れ る ん で 「 監 視 に 反 対、 と い う の は 賛 成 よ。 防 諜
しょうかね」
を理由に盗聴が、偵察がはびこるかもし
り偵察衛星でしょう。偵察される側に対
「 た し か、 四 月 に は 公 開 さ れ る と 聞 い て
「必見です。ぜひ観たほうがいい」
する配慮が感じられないのよ。CIAの
れない。長谷川さんなんか、もうすっか
「盗聴法を阻止する力になりますかね」
問題も国家間の問題ではなくて、国家監
いますが」
「 そ う し た い と こ ろ で す よ ね。 盗 聴 法 だ
け じ ゃ な い。 総 背 番 号 制 も お な じ で す。 視と経済活動の分離、基本的人権の問題
です。カードの携帯となればもっと恐ろ
の会」は隔月の例会と並行して、各自が
なんだと思うわ」
しい。いつかそれは発信機つきのカード
それぞれの管理法案に反対する取り組み
あれも基本的には個人情報の追跡ツール
になりますよ」
をしていくことになった。
堀田は新ガイドライン法案、春田は住
「厚生省の基礎年金番号にはそういう意
図はありませんでしたよ」
180
第
章 「後退」
ねない。
黙認し、参議院では賛成にまわった。結
五月二四日、法案は可決成立した。
CIAの謀略
持ち出した日米安保の踏絵なんだ。日本
公正党の与党化は「や」党と「よ」党の間、
局、 周 辺 事 態 の 定 義 は 示 さ れ な い ま ま、
一九九九年の三月から始まった第一四五
が極東での平和を日米安保によって確保
「 台 湾 を ど う す る か。 こ れ は ア メ リ カ が
国会は日本の将来を決するかもしれない
重 要 な 対 決 法 案 が 矢 継 ぎ 早 に 提 出 さ れ、 しようとする限り、必ず踏まなければな 「ゆ」党である、として、「ぬるまゆ」に
を鮮明にさせることになる。組織的犯罪
浸かっていた民衆党に野党としての幟色
これを踏む前に考えておかなければな
対策法三法案と住民基本台帳法改正案へ
らない踏絵なんだ。
史上、異例の事態になった。ある人はこ
らないことが三つある。極東の平和の枠
ことごとく成立する、という戦後の憲政
れを、他の国会と明確に区分して「小渕
一四五国会」と銘記せよ、
と訴えていた。 組 み を ど う つ く る か。 い ざ と い う と き、 の党内のあいまいな態度は払拭され、国
家管理の強化に反対する主張が前面に出
も ア メ リ カ は 本 当 に 日 本 の 味 方 な の か。 てきた。
最 初 の 攻 防 は 新 ガ イ ド ラ イ ン 関 連 法 案、 アメリカは本当に台湾を守るのか。将来
とりわけ周辺事態法をめぐる対決として
この三点だ。
事」から「周辺事態」に拡張しようとい
まったくなく、どこまでアメリカに追従
し か し、 国 会 で は こ の よ う な 議 論 は
まわったが、大勢を変えることにはなら
反対に、住基法では野党の数人が賛成に
衆議院を通過。組対法では与党の数人が
六 月 の 一 三、一 五 と、 両 法 案 は 相 次 い で
現れた。日米安保の適用範囲を「日本有
うものだが、周辺とはどこを意味するの
するか、その線引きでもめている」
これが堀田の、国会を見る視点だった。 なかった。そして、都知事選での敗北後、
かが最大の論点になった。
要は、アメリカに従って、中国から台湾
ところが四月の末、線引き論争が突然
衆議院議員となった元石見市長の岩槻鉄
を防衛するのかどうか、
が争点であった。
台 湾 を 明 示 す れ ば、 中 国 の「 国 内 問 題 」 幕を下ろした。民自、自在両党の連立に、 人は野党民衆党で住基法賛成に回った一
立関係に陥る。といって、定義をあいま
に干渉し、中国とはのっぴきならない対
ある。
いる公正党が参加することになったので 「 ま あ、 あ い つ は あ い つ で、 一 貫 し て い
参議員でキャスティングボードを握って
人になった。
いにすれば中東へと伸びるシーレーンま
公正党は衆議院で連立与党の強行採決を
これには春田も苦笑いするしかなかっ
るわけですね」
でもが日米安保の対象になってしまいか
181
12
んでいるが、やや組対法が先行。両方の
地方行政委員会でほぼ並行して審議が進
話を合わせると、両法案は法務委員会と
厳しいものになっていた。杉井と春田の
員会を召集。組織的犯罪対策三法の採決
五三分という異例の時間に参議院法務委
怖れた与党側はその日(九日)の夜八時
組対法強行採決は難しくなった。それを
国旗 国
・ 歌法案の強行採決で九日、国
会は審議ストップが予想され、一〇日の
立は八月九日であった。
のように決定してしまったのである。成
有効性をめぐる論戦に突入した。
院はそのまま組対法三法の委員会採決の
信任案を提出。これが否決されて、参議
段階に入った。一一日、野党側が内閣不
終了の八月一三日まで、国会は秒読みの
になっていたのである。
たことが、こんな風に伝わってくる時代
た。
成立は望めないので、組対法一本に狙い
が強行されようとした。この抜き打ち的 「 住 基 法 も 危 な い。 非 常 事 態 で す。 こ れ
程を大きく制限し、会期内成立は相当に
衆議院での攻防は、参議院での審議日
を絞ってくるのではないか、ということ
な や り 方 に 議 場 は 騒 然。 議 長 の「 採 決 」 から参議院本会議が始まる。深夜国会で
す。いま、杉井さんとともに参議院議員
予想通り、翌一〇日の国会は空転。会期
だった。
ところが、
突然会期延長の声が上がり、 の声も聞こえなければ、賛否を意思表示
そのもみくちゃな様子は、そのままイン
日本の第二の敗戦の日になるんじゃない
磯崎さんも来ませんか。ぼくはこの日が
面会所にいます。本会議を傍聴しますが、
長になることが決まった。しかも、この
ターネットで世界に流され、自宅にいた
かと怖れています」
する議員もいなかった。
ドサクサの中、野党の切り崩しをも狙っ
磯崎や堀田にも届いた。議場からは、刻々
それも五七日間という戦後最大の大幅延
て急遽、国旗・国歌法案が上程されたの
と杉井とその仲間の、状況を伝えるメー
一一日、夜七時過ぎ、春田からの電話
である。
議を尽くすべき問題であるはずであっ
くとも国会にとって、後世に耐えうる審
が、委員会の映像をそのままページに貼
か っ た こ と。 い く つ か の ホ ー ム ペ ー ジ
磯崎もまた、議員面会所で傍聴の手続き
な い わ け に は い か な か っ た。 一 時 間 後、
しかし、春田にそこまでいわれて出掛け
委員会が成立していないこと、採決がな 「第二の敗戦の日」とは穏やかではない。
だった。
た。決定の経緯にいたるまで、後世に伝
り付けて、証拠ビデオつきで問題を解説
をとっていた。
ルが飛び込んだ。
えうる中味を持っていてしかるべきテー
していた。わずか一〇分前に国会で起き
国旗と国歌を決める、というのは少な
マであった。それを、まるで火事場泥棒
182
から、もう一度委員会に差し戻せ、いや
「 え え、 委 員 会 で の 採 決 は 認 め ら れ な い
決をめぐって攻防戦があるんだろう」
決するなんて、じゃあ何のための委員会 「どういうことなんですか」
ことでしょう。そこをパスして本会議採
題点を明らかにしてきたのは委員会での
のはわかっているよ。これから本会議採 「 そ ん な ば か な。 こ れ ま で 背 番 号 制 の 問
「組対法をめぐって大もめにもめている
審議だったんだ、ということになってし 「 出 身 母 体 が 自 治 労 関 係 者 な ん で す よ。
おなじです」
反対じゃないんです。もちろん委員長も
政警察委員会議員の多くは住基法改正に
としていました。参議院民衆党の地方行
審議そのものを否定して、数の論理にす
委員会軽視は、結局のところ、国会の
とったのを忘れていました。自治労は以
年金番号に反対して自治省と共同行動を
いるようなんです」
戻さん、ということでもうひと波乱ある
まう。
「 そ の 見 込 み は 薄 そ う で す。 こ ろ あ い を
べ て を 託 す の と お な じ じ ゃ な い で す か。 前から、納税者番号には住民番号を使え、
ぼくらは、彼らがかつて、厚生省の基礎
でしょう」
見計らって強行採決、というのが与党側
これじゃあ国会の否定、議員の否定だよ
「戻せるのかな」
のストーリーのようです」
ね。そんなことをよく議員が許すよね」 「 で も、 委 員 会 で は 反 対 し て た ん じ ゃ な
と主張してきているんです」
「 住 基 法 は ど う な る ん だ。 も う 委 員 会 の
しいんです。委員会審議をパスして、直
「 ど う も、 ス ト ー リ ー は そ う じ ゃ な い ら
未了廃案だろう」
しても委員会を開かなければならなくな
彼が報告を拒否すれば、代理を立てるに
な法案には反対、というものなんです」
うものです。納税者番号に使えないよう
者番号にも使えるものにすべきだ、とい
委 員 長 を 民 衆 党 が 握 っ て い る ん で し ょ。 というのは、もっと法を整備して、納税
「でも、参議院の地方行政警察委員会は、 「 表 向 き は ね。 で も、 彼 ら の 反 対 の 論 理
いんですか」
接本会議で採決する奥の手がある。国会
る。
開催は無理じゃないか。そうなれば審議 「まったくです」
法五六条です。委員長がそれまでの審議
決をする。委員会を開いている時間がな
未了になるじゃないですか」
国会は空転して委員会は開けない。審議
「 そ う い う こ と で す。 大 蔵 省 が 独 自 番 号
応援団じゃないですか」
でも、組対法で強行採決してしまえば 「 な ん だ っ て。 そ れ じ ゃ あ ま る で 自 治 省
い場合などの緊急措置なんですが、二四
を導入する可能性を、事前に封じ込めよ
状況を報告して、これを受けて本会議採
年ぶりにこれを使うという案が浮上して 「 と こ ろ が、 ぼ く ら は 大 事 な こ と を 見 落
183
る。でき芝居だったわけなんです。委員
も反対側も自治省の意を汲んで動いてい
うとしている。委員会での審議は賛成側
入する。つまり、第一四五国会終了まで、 はさんで、参議院本会議はそのまま、住
実上の移動日で、そのままお盆休みに突
期は一三日までではあるが、一三日は事
はついに可決成立し、遅い昼食の休憩を
午後一時五八分、組織的犯罪対策三法案
会採決を省略したのである。
民基本台帳法改正案の地方行政警察委員
差し戻し審議を二四時間続けることは不
そ し て、 八 月 十 二 日、 午 後 八 時 二 〇 分、
二四時間を切ったのである。
本会議はいつも出来上がったストーリー
可能である。差し戻すべき委員会を開く
民自、自在、公正三党の賛成多数によっ
長が報告を拒否するはずはありません」
を演じて見せる、いわばパフォーマンス
時間がなくなっているのである。さなが
て住基法改正案も可決成立した。
会委員長の審議経過報告に移った。委員
のステージである。そうそう過剰な期待
ら、矢尽き刀折れ、の表現がぴったりく
「そうか、
そうだったのか」
と磯崎は思う。 いかに大演説とはいえ、組対法の委員会
はできない。
組 対 法 三 法 と 改 悪 住 基 法 は 成 立 し た が、
る、そんな終幕だった。
を 止 め ら れ な か っ た わ れ わ れ に と っ て、 国会は男の戦場といわれて久しい。しか
この二つはいずれも、第一四五国会終盤
政治はもう動いてしまったのだ。それ
し、この日の国会は女の戦場と呼ぶにふ
である。
いる。歯切れのよい、筋道だった大弁論
委員会採決の不当性をとうとうと述べて
女性議員が立って、組対法に対する法務
をやっていくほかはない。
道しか残されていないのだ。でも、それ
トップウォッチとにらめっこをしながら
考える。きっと、どこかに冴えた頭でス
め、ややぼんやりした頭でそんなことを
夜を徹してのマラソン国会になったた
かもしれない。
るいはこんなところから生まれてくるの
だけではすまない中味のある論戦が、あ
さわしい景観を呈した。パフォーマンス
あった。
記録が送りつけられてくるという事件が
の電話が何者かによって盗聴され、通話
日と衆議院議員・保坂展人との国会内で
とりわけ、七月七日に発覚したテレビ朝
判がみられるようになったのである。
衆議院を通過してからやっと本格的な批
という経過を辿った。マスコミの扱いも、
に な っ て、 問 題 が 明 ら か に な っ て く る、
止めるよりも困難が多い、動かしなおす
与えられた役回りは時間稼ぎなのだろ
キューを出している国会対策タイムキー
い っ た い だ れ が、 何 の た め に
本会議のステージでは次々に、野党の
う。 も う と っ く に 夜 中 の 十 二 時 を 過 ぎ
パーがいるのだろう。
、こ
・・・・
た。日付は八月一二日になっている。会
184
いう疑惑が高まったからである。
これって、あきらかに日本の暗号技術
の謎解きを含め、盗聴法に対するマスコ
の遅れを示すものでしょう。外務省が絶
ア資料室にいる杉井美紗に、集会の資料 「 待 っ て く だ さ い よ、 も し そ う だ と す る
この院内集会を終えるとその足で、磯崎
と、外務省の暗号通話もぜんぶアメリカ
ミの反応や、世論の風向きも変わってき
反対運動は終了することなく、継続され
を届ける約束をしていたからだ。
対の自信を持っているなんて、嘘なのよ」
たのである。
に筒抜けだということになる」
た。 そ の た め、 法 案 が 通 過 し て も な お、 は国会図書館に立ち寄った。ここのアジ
これはまた、
「三年以内に施行」とされ、 新館二階の喫茶室で杉井を待つ間、磯崎
れに対して、廃止法案を提出するという
民基本台帳法も同様で、民衆党はそれぞ
ジネスマン風の男が二人いるだけだ。
閑散としていて、やや離れたところにビ
視線を感じて顔を上げた。が、喫茶室は
ん て、 い っ た い だ れ が 信 じ る と い う の。
ドイツはやられたけど、日本は無事だな
たって盗聴されていたんだって。
話回線とコンピュータ回線が長年にわ
施行までにしばらくの期間がある改悪住
そ の た め、 磯 崎 も、
「 Q の 会 」 の 例 会 以 「 以 前、 水 越 く ん は、 外 務 省 が 日 本 の 暗
異例の展開を見せている。
号 技 術 に す ご い 自 信 を 持 っ て い る、 と
は集会資料に目を通していたが、誰かの 「 ほ ら、 こ れ は 今 日( 九 九 一
・〇 四
・)
の新聞よ。アメリカのドイツ大使館の電
外に顔を出さなければならない集会など
とすると、問題なのは外務省は心配ない
アメリカの暗号技術は『クリッパー』と
いっていたのよね」
ているものだそうだね。春田さんの調査
呼ばれるもので、NSAが開発。これを
が増えてきた。
民集会が、衆議院第一議員会館の第二会
によれば日野にある警察庁の秘密通信所
半導体チップに組み込んだのはIBM
とする政府関係者の思い込みよ。
議室で開かれた。磯崎も参加してみたの
にも、暗号解読と暗号生成の研究機関が
NTTに依頼してつくってもらっ
この日も盗聴法の施行前廃止を求める市 「ああ、
である。
よ。アメリカは、これを世界の通信暗号
そして『クリッパー』規格の上に独自の
あるといっていたよね」
を見つけたの。五年ほど前のものなんだ
暗号技術を載せれば、強力な、解読困難
警察が導入しようとしている盗聴用のコ
裁判所の許可を受けた「麻薬、銃器、殺
けど、NTTがクリントン政権に暗号技
の標準規格にしようとした。
人、集団密航」以外の通信をも、まるご
術の供与を依頼し、拒否されているのよ。 な暗号が生成される。ただし法律で、ク
ン ピ ュ ー タ の 容 量 が あ ま り に も 大 き く、 「 ち ょ っ と 古 い も の だ け ど、 こ ん な 資 料
と盗聴・記録する気なのではないか、と
185
ん じ ゃ な い か し ら。 ア メ リ カ は 世 界 に、 リカがNTTをはねつけたのは、クリッ
強制ができないから、NTTは断られた 「 す ご い こ と に な っ て い る ん だ ね。 ア メ
外国には現在のところ、この合鍵提出の
政府に対しては裸だということよ。
の。つまり、この強力な暗号もアメリカ
Iに預けなければならない、としている
暗号の解読キーをCIA、NSA、FB
リッパーの米国ユーザーは、載せた独自
いっている」
らエシュロンによる盗聴を止めろ』と
ているんです。もちろんEUは『それな
できない』として、中止するよう、求め
したテロリストやマフィアの通信が捕捉
が暗号技術を高度化すれば、これを入手
が、がっちりと見張られる、と、そうい
など利用できないわたしたち一般人だけ
やすと盗聴なんかされない。高度な暗号
マフィアや組織されたテロリストはやす
アメリカが口にする、もっとも危険な
ですね。
号技術を使えば意味を失う、ということ
の情報を盗聴し、記録しても、高度な暗
これを強制するつもりでいるそうよ」
略に協力しろ、ということだったんです 「 そ の と お り よ。 コ ソ ボ で は 難 民 が 軍 に
パーが欲しければ世界標準にする国際戦
うことですね」
「 お そ ら く N T T は、 合 鍵 提 出 を 承 知 で
解読されない暗号を欲しがっているわ。
はまだないのよ。アメリカのソフト会社
か。
し、ですね。とにかくひたすらアメリカ
が政府の呼びかけに応じていないの。政
依頼したんじゃないだろうか。こうなる
は国民に対してどう説明しようとしたん
に対して裸になる。これが日本の情報戦
府に管理されるのはいやだということ
ところで、クリッパー規格の暗号ソフト
でしょうか」
略だとしか思えない。この間の政府の動
ね」
でも、こうなるともう、日本はなす術な
「 E U 議 会 は 今 年 の 一 月 に、 ヨ ー ロ ッ パ
きはすべてがそうだ」
ともう、屈辱の土下座ですよね。NTT
の企業情報がエシュロンによってアメリ
カ に 筒 抜 け に な っ て い る こ と に 憂 慮 し 「 そ う、 国 旗・ 国 歌 法 制 化 な ん て、 そ う 「さすがはアメリカだ」
制される現実の子どもたちがかわいそう
供 与 す る こ と を 決 め て い る の。 だ か ら、 先をごまかす子どもだまし。一方的に強
パのソフトを使ったほうがよさそうよ」
ればならないの。だから、日本もヨーロッ
出する場合にはやっぱり合鍵を預けなけ
した現実の隠蔽なのよ。民族主義者の目 「 で も ね、 各 社 が 独 自 の 暗 号 ソ フ ト を 輸
クリッパーが世界標準になることなんて
だわ」
て、独自の暗号技術を構築。域内企業に
考えられないわ。
これに対してアメリカは『ヨーロッパ 「 そ れ に し て も、 こ の こ と は い か に 大 量 「なんで日本 ではそういうこ とが 話題に
186
協力が必要だけれど、相談センターなら
よね。人材の面からは警察庁や防衛庁の
「 う ん、 そ れ は 前 か ら キ ミ の 持 論 だ っ た
本はとんでもないことになると思うわ」
必要があると思うの。そうでなければ日
傍聴センター)のような相談所を設ける
も、早急にアメリカのNACIC(国家
のよ。だから、傍聴法案は後回しにして
「ぜんぜん無防備なんじゃないかと思う
立てているんだろうか」
うことを知っていて、それぞれに対策を
ならないんだろう。日本の企業はそうい
だれであるのかわかっていた。大沢八郎 「ということ は篠山啓志のエージ ェント
だが、磯崎にはもう、サングラスの女が
うとする。
いるものの、サングラスのラインは鋭角
チェッカーランプを点灯させて停車し
崎 の 行 く 手 に、 ワ イ ン レ ッ ド の 外 車 が
クラクションが鳴らされ、歩道を歩く磯
困ってしまう。キミはいま大沢八郎の秘
て、
サングラスの女が顔を出す。モノトー 「何から話そうかしら」
た。アウディーだろうか。
書なんだろう」
ンのスーツのようで、シックに決めては 「うん、何から聞こうか。いっぱいあって、
運転席のウィンドーがするすると下がっ
れているけど、追い出せない、といった
をはめた手で、そのサングラスをはずそ 「 秘 書 で は な い わ。 見 張 り 役。 煙 た が ら
で、やや派手目だ。ドライブ用のグラブ
ところかしら」
いた。
ディーはもうタイヤを鳴らして発進して
手 席 に す べ り 込 ん だ。 そ の 瞬 間、 ア ウ
ドレールを飛び越えて、アウディーの助
「まあ、そうね」
というわけだ」
組織的には通産省だけでもできそうです
「おひさしぶりね」
よ ね。 水 越 さ ん と 検 討 し て み た い か ら、 の秘書、池島佳苗である。
杉井さんから伝えておいてよ」
とではないわ」
いつか会えるんじゃないかと思ってはい 「それはあた しの立場から答えら れるこ
「場合によっては民間でもいいじゃない 「 ほ ん と う に。 し か し び っ く り し た な。 「で、篠山はCIAのエージェント」
か、と思うの」
「そうですね。それでもないよりはいい」 たんだけどね」
磯崎は杉井と相談センター構想を進める 「 あ た し も よ。 ま あ、 話 は あ と。 乗 ん な 「じゃあキミがCIAのエージェント」
あないわ。もっと答えやすい質問にして」
磯崎は植え込みの切れ目を探し、ガー 「 じ ゃ あ、 キ ミ は 自 分 の 意 志 で 小 浜 島 に
間はあるんでしょ」
約束を交わして、
国会図書館を後にした。 さいよ。ドライブに付き合うくらいの時 「それもあた しから答える筋のも のじゃ
永田町から赤坂見附に向かう緩やかな下
り坂に差し掛かったとき、後ろから短い
187
行ったのかい」
どこで覚えたんだい、その運転は」
か金沢あたりで行方をくらませた」
肝 心 な の は 走 り 込 み。 あ た し の ホ ー ム
たしはなにも知らない」
あたしなの。でも、あの事件のこと、あ
「 A 級 ラ イ セ ン ス は だ れ で も 取 れ る わ。 「 そ う よ、 あ の 赤 い フ ェ ア レ デ ィ の 女 は
「篠山の命令か」
サーキットは筑波よ」
「いいえ」
「いいえ」
「それも誰かの命令かい」
いない。新潟方面からやってきて都内の
あの事件―実は磯崎もなにも知っては
「じゃあ、だれなんだい」
「 ま あ、 そ ん な よ う な も の ね。 さ あ、 日
あちこちで疾走する赤いフェアレディが
「また答えにくい質問になったわね。
もうすっかり赤らみ始めた西の空に向
目撃された、というもの。とんでもない
非 常 線 を 突 破 し た 車 が、 緊 急 手 配 さ れ、
誰かの命令がなかったら、わたしたちの
かって、ワインレッドのクルマが疾駆す
あ な た の 関 心 は こ う い う こ と、 つ ま り、 が落ちる前に高尾山を越えるわよ」
関係はまだ続いていたかもしれないとい
目撃者の証言は一致していて、若いと
週刊誌やスポーツ紙が後を追った。
事件かもしれない、というので、多くの
「 昔 ね、 こ の 道 を 走 っ た の。 ま だ 全 線 が
別なもののように見えてくる。
う こ と な の。 そ れ な ら 答 え る の は 簡 単。 る。見慣れた中央高速の風景が、まるで
あなたとずっと続いてたとは思えないけ
ど、あの時点ではイエスよ」
びっきりの美女だというのである。週刊
ところが、磯崎はデスクから「あの事
開通してなかったわ。でも、一般道に下
磯崎の忘れていた記憶の中から、なに
件はもう終わりだ。いいから帰ってこい」
「ありがとう。なんか気分がいいな」
池島はちらりと磯崎のシートベルトに
かがふつふつと頭を持ち上げるものが
と、金沢から呼び戻されたのである。社
り て か ら も ス ピ ー ド を 落 と さ な か っ た。 誌やスポーツ紙にとって話題性はそれだ
目をやると、いきなりアクセルを踏み込
あった。昔、週刊誌の記者をしていたと
に戻って事情を聞くと、北のスパイがら
「でも、
あなたの質問は別な件よね。困っ
んだ。アウディーは青山通りから赤坂離
き、 そ ん な 女 を 追 っ た 気 が す る。「 赤 い
みの事件で深追いは危険だ、という。
そして、
どこまでもどこまでも走ったの」 けで十分だった。
宮を回りこむと、アッという間に外苑ラ
フェアレディの女」そんな見出しが目の
たわ」
ンプから首都高速の新宿線に乗ってい
中に飛び込んできた。
徹底的に追ってくれ」というのが常のデ
「 命 の 一 つ や 二 つ 取 ら れ て も い い か ら、
た。
「 や っ ぱ り キ ミ は た だ 者 じ ゃ あ な い な。 「 赤 い フ ェ ア レ デ ィ か い。 た し か、 富 山
188
ある。
スクが、とんでもないことをいったので
ず間違った結論に行き着くの」
立ち屋。あたしをマークしていると、必
濡れ紙をはがすように、交わす会話はど
に、慎重に言葉を選んで話した。そっと
こか艶めいてもいた。が、その中心には
そして、なぜか翌日からこの事件に関す 「じゃあ北のスパイというのも ・・・・
」
る 報 道 は ス ポ ー ツ 紙 を 含 め、 一 切 な く 「 そ う。 み ん な の 目 は 北 は 北 で も 北 朝 鮮 「KGB 」という地雷が埋め 込まれてい
非常線も何のために張られたのか、ほん
もそも存在しなかったことになる。あの
なった。だから、厳密にいえば事件はそ
前海岸を走って、越前岬に沈めたの。
がいかれちゃったので、だましだまし越
たに会ってくれ、会ってくれって、うる
とがいっぱいあったの。篠山がね、あな
くて、敦賀だったんですけどね。クルマ 「 あ た し も ね、 聞 か な け れ ば な ら な い こ
に向いたわ。あたしの任務は金沢じゃな
さかった。でも、あの人、あなたに直接
た。旧ソヴィエトの秘密諜報機関である。
とうのことは闇に閉ざされたのである。
あなた、あたしの故郷、覚えている」
会ってから、少し減ったわね。それでも、
「 あ た し の 特 技 は ね、 物 事 を デ ジ タ ル に
感じ取ることができること。A級ライセ 「札幌だったよね」
ほんとはナホトカなの」
おかげで、今日まで会うチャンスがな
のは嫌だったから、とぼけ通しちゃった。
も気にしているわ。でもね、任務で会う
がやっていることが知りたいって、とて
篠山に聞いたのか、大沢もね、あなた
ンスをとるときはそれが楽しくてしょう 「覚えていてくれてありがとう。でもね、 時々思い出したように言い出すわ。
がない。フェアレディを金沢まで走らせ
あご両親のどちらかはロシア人」
てくれ、といわれたら、夢中でそれを楽 「 そ う い う こ と か。 北 は 北 で も ね。 じ ゃ
しめる。
二つの楽しみをつなぎ合わせてみたり 「父がね」
はしないのよ。だから何も知らなくても 「うん、それはたいへんだったろうなあ。
だし。でもね、この年になれば何も知ら 「 そ う ね、 リ ス ト ラ ね。 で も、 こ れ は 生
ターを出る。もう日はとっぷりと暮れて
アウディーがすべるように河口湖イン
かった。今日はついてたわ」
涯引きずることだから、だれにもいうこ
富士の姿はない。湖面に映る灯を味わう
ということは、もう引退か」
ないままではすまないわよね。知りすぎ
とはできないわ」
すむ。知らないから、安全でもあるわけ
てしまったかもしれない。
かのように、湖畔の道をクルーズする。
二 人 は ひ と つ の こ と に 触 れ な い よ う 「富士宮に抜ける、それとも御殿場」
あなたももうわかったでしょう。勘が 「そうだろうな、それがいい」
いいものね。あたしの仕事はさしずめ目
189
「アウディーには似合わないかもしれな 「わからない」
に乗る。彼女が再びサングラスをかけた。
ロイの木馬を引き入れちゃったんじゃ
「 ね え、 ひ ょ っ と し た ら 日 本 は も う、 ト
行ってくれないか」
な い か し ら。 C I A は も う 必 要 な い の
いけれど、いい道があるんだ。山中湖に 「その温泉、まだあるの」
「 道 志 ね。 あ の 道 は あ た し も 大 好 き。 と 「ねえ、そこに寄っていかない」
よ。アメリカ仕様のコンピュータが、何
「うん、あるはずだよ」
いっても、一度ためしに通ってみただけ 「 そ う し よ う。 子 ど も の こ ろ、 帰 り の バ
れど、これって、あまりにも無防備すぎ
あたしは別に日本のファンじゃないけ
ている。
十万、何百万と、この国の隅々を見張っ
る。いつか泊まってみたいと思った」
て温泉の明かりが恋しかったことがあ
なんだけど。
また来てみたいと思ってた」 スを待つ間、めちゃくちゃに寂しくなっ
道志とは、山中湖から津久井湖に抜け
る国道四一三号のことで、丹沢山塊北麓
の 水 を 集 め て 津 久 井 湖 に 注 ぐ 道 志 川 に 「いつのこと」
ると思わない。これじゃあ日本のCIA
「中学生」
道志は山の中の道である。朝霧は深く、 な。ほんと、そのとおりだよ。おねがい
沿って走る、山の中の道である。
あって、一度、雪かきをさせられたこと
路 面 は ぐ っ し ょ り と 濡 れ そ ぼ っ て い る。 だ、また、飛ばしてくれないか。新宿で
エージェントはみんな失業だわ」
がある。路面に雪が崩れ落ちて進めない
それでも梢の先端のほうは霧の上から頭
「 ぼ く は ね、 子 ど も の こ ろ か ら 知 っ て る 「ヘンな子ね」
んだ。慣れたものらしく、バスには何本
を出し、すがしく晴れ渡った朝であるこ 「いいわね」
「 ト ロ イ の 木 馬、 か。 だ れ か も 言 っ て た
もスコップが積んであった。でも、乗客
とを予感させる。一〇月の道志はもう寒
んだ。相模湖から道志に入るバス路線が 「ああ」
はみんなおばあさんでね」
い。
「 E U の『 エ シ ュ ロ ン 』 レ ポ ー ト は 九 八
夜明けのコーヒーを飲もう」
「子どものあなたがやらされたのね」
バスはそこが終点。またそこから、ぼく
整備され、もう雪が行く手を阻むことも
あの懐かしいバス路線だ。道はすっかり
こには国際通信を傍受する手段と方法が
こ れ、『 通 信 傍 受 能 力 2 0 0 0』 よ。 こ
ど、いちばんまとまっているレポートが
ア ウ デ ィ ー は 青 根 か ら 藤 野 に 向 か う。 年の一月以来、次々に出されているけれ
だけが引き返す」
ないだろう。藤野インターから中央高速
「道志温泉という小さな湯治場があって、
「なんでそんなことをしたの」
190
詳しくかかれているわ。たとえば、海底
ツで使用している暗号を解読する、NS (現在はロー タス傘下)のソフト にも組
た。その信号も暗号でできていて、ノー
のがマイクロソフトやネットスケープ社
ケーブルには専用潜水艦を用い、誘導盗
たのです。
協定を結び、輸出用バージョンに限って
み込まれていた。
インターネットにはアメリカ国内の接続
スウェーデンでは安全と信じ、政府の役
WRFを組み込ませていることがわかっ
聴 記 録 装 置 を 取 り 付 け て 行 っ て い る し、 Aだけが読むことのできる暗号キーだっ
ポイントに『スニッファー』という盗聴
人や議員、一万五千人の税務職員、そし
たんです。つまりアメリカ製のソフトは
NSAがそれぞれのソフトメーカーと
ソフトを組み込んでいます。
て四〇~五〇万の一般市民がノーツで
ところで、このレポートであたしが注
みんな危ないということです。
解読に数週間を要する優れものなので
する。
とです。こんなことは正常な商慣行に反
らです。しかし、輸出用だっておなじこ
ら、違法であるばかりか裏切りになるか
ス タ マ イ ズ さ れ て い る。 N S A で さ え、 国民に対して秘密でこんなことをやった
WRFの装着を輸出用に限ったのは、自
るのかを、まず、送信するように仕組ま
それに何よりも、わたしたちが自前で通
目しているのはロータス ノーツに関す メール交換をやっていた。
・
ノーツの暗号は高度で、個人個人でカ
る 報 告。 ロ ー タ ス 社( I B M の 子 会 社 )
のデータ管理通信ソフトで、ビジネスマ
れている。だからNSAには丸裸だとい
必 需 品 と い っ て も い い ほ ど 優 れ た も の。 す。だけど、どうカスタマイズされてい
ンやデータ処理を仕事にしている人には
うことなんです」
セキュリティーも見事で、ロータスか
実はあたしも使っていたの。
ら配布された暗号キーがセットされたフ
払 っ て い る。 そ の 一 部 が、 ア メ リ カ に、
信料を負担し、プロバイダーに接続料を
されていたわけですね。スウェーデン政
ロッピィ―を挿入しないと、このソフト 「 つ ま り、 ノ ー ツ を 使 っ た メ ー ル は 盗 聴
にはアクセスできないの。
それもNSA、ということはCIAに自
分のコンピュータを覗かれるために使わ
府はノーツを止めたわけですか」
府がこのソフトの機能障害を発見したん 「 そ う な ん で す が、 そ れ だ け で は す ま な
れている。こんなことが許されると思い
ところが一九九七年、スウェーデン政
かった。先に送信される暗号解読キーを
です。スウェーデン政府はこのソフトが
暗号に変換したメールばかりでなく、別 『ワーク フ
・ ァクター還元領域(WRF)』 ますか」
というそうなんですけど、実は同様のも 「 だ れ も 許 さ な い と 思 い ま す よ。 対 抗 で
の信号をも送信していることに気づい
191
はメールソフトに限った話ではないんで
「 念 の た め、 注 意 し て お き ま す が、 こ れ
り換える」
きるまともなソフトがあれば、絶対に乗
の発言が目立ってきた。
までどちらかといえば控えめだった杉井
進行はにわかに彼女のペースになり、今
めることになった。そのためか、会議の
ば開き直っています。
り、国連の経済制裁措置を破って取引を
の イ ン タ ビ ュ ー に 答 え、『 賄 賂 を 使 っ た
官も『ウォールストリート・ジャーナル』
べ、ジェームス・ウールジー元CIA長
やられているんじゃありませんか」
「 そ れ だ け で す か。 通 信 ソ フ ト は み ん な
もそうです」
いわゆる『ブラウザ』と呼ばれるソフト
らず、何の対抗措置をも取ろうとはしな
許しがたいものになっているにもかかわ
政府のサイバースペースに対する対応が
ロンの問題点が明らかになり、アメリカ
強調したい。
というのも、これだけエシュ
USAに加盟し、エシュロンを利用して
ビューに答えて、オーストラリアがUK
は 一 九 九 九 年 五 月、 テ レ ビ の イ ン タ
DSDの長官マーティン・ブレイディー
いっぽう、オーストラリアの諜報機関
する企業を監視するのは当然だ』と、半
すよ。インターネット エ
・ クスプローラ 「 と こ ろ で、 ア メ リ カ よ り さ ら に 問 題 な
やネットスケープ・ナビゲーターなどの、 のが日本です。あたしはこの点をとくに
「 基 本 の O S だ っ て 危 な い。 何 が 組 み 込
いることを公式に認めています。
解明のほか、連帯して対抗組織を作る動
ドイツ、フランスにはEUによる事実
いからです。この態度は黙認というほか
ありません」
まれているのかわかったものじゃない」
「 そ う な ん で す。 こ う な る と、 ア メ リ カ
のソフトはすべて信用できないと考える 「 外 国 の 対 応 に つ い て は 私、 水 越 の ほ う
きがある。つまり世界規模の盗聴組織で、
いるのか。その意味が本当にわかったよ
死で市民の手によるOSを作ろうとして
つですが、なぜヨーロッパの人たちが必
付。
「不正な行為はしていない」との回
カ・イギリスに対し、正式な質問状を送
に当たるEU委員会はこの二月、アメリ
すでにご存知のように、EUの行政府
とで調査を始めています。
国際法に違反するのではないかというこ
イタリア、デンマークはエシュロンが
からご説明いたします。
うな気がします」
答を得ましたが、イギリスのEU担当大
ま た、 U K U S A の メ ン バ ー で あ る
しかありません。LINUXもそのひと
「Qの会」は二〇〇〇年になってから杉
使は書簡で「国家の経済的安定を守るこ
ニュージーランドでは、緑の党などが政
当初はエシュロンの足元にも及ばない規
井美紗が主張していた「相談センター構
とは盗聴活動の正当な理由の一つ」と述
模ですが、注意を要します。
想」の実現に向けて、本格的な議論を進
192
ますので、今後もさまざまな情報が開示
に、エシュロンの利用の事実を認めてい
府を相手取り、訴訟を始め、政府もすで
を求めて合衆国政府を告訴しています。
ボブ・バー下院議員はさらに、法的根拠
た。
す」
らせる暗号システムの紹介もしていま
おなじウェブサイトで、NSAをてこず
水越と杉井は半年ほど前から同棲をし
これはちょっと変わった市民運動の報告 「ありがとう、水越くん」
に な り ま す が、 九 九 年 の 一 〇 月 二 一 日、
されると思われます。
イギリスではこの一月、通信傍受法が
がありました。
だろう、とは「Qの会」全員の一致した
シアチブを握っているのは杉井嬢のほう
ている、という。いいコンビだが、イニ
どが、エシュロンの問題を国際的に問い
この運動はアメリカの市民団体がメール
意見である。
改悪され、これに反対した市民活動家な 『 エ シ ュ ロ ン 妨 害 デ ー』 と い う 取 り 組 み
直そうと活発に動いています。
をやりとりする中で固まった構想で、イ
さて、アメリカですが、九九年四月ボ
この超保守の大物の活動により、クリン
ない」と語っています。
超党派で取り組む道を探らなければなら
いる」として「われわれは、この問題に
利に関して、いくつかの問題点を抱えて
政府の基本的な政策や国民の憲法上の権
シュロンですので、その成果はたかが知
理する能力を持っている、といわれるエ
一日に三〇億本の電話や電子メールを処
いうことです。
録されていそうなキーワードを使おうと
れようというもの。つまり『辞書』に登
とは理解できる。
ところがエシュロンは、 だメールを出し、エシュロンを混乱に陥
州選出 が
) 「私自身、かつてはCIAに
いたが、国民にも秘密が必要だというこ
れていると思いますが、イベントを通し
ンに引っかかりそうな危険な単語を含ん
もの。この日、世界中で一斉にエシュロ
様ではないか、ということ。
とろうともしないのか、こんなことは異
なのに、なぜ、日本政府は何の対応を
いたことさえ明らかになっている。
データを盗み、米ビッグスリーに流して
自動車を設計していた自動車メーカーの
交渉での盗聴。最近では排気ガスゼロの
インドネシアのテルネットや日米自動車
の コ メ 関 税 化 を め ぐ る 駆 け 引 き の ほ か、
上にエシュロンの被害者よ。GATTで
なの。ひょっとしたら日本はフランス以
ンターネットで世界に協力を呼びかけた 「 さ て、 あ た し が 言 い た い の は 次 の こ と
トンはNSAがエシュロンその他の活動
て問題点を世界に広めたのは間違いあり
ブ・バー下院議員 共
( 和党、ジョージア
を行うに当たっての法的根拠を報告する
ません。
そして次に、ソフトに弱い、といわれ
よう求める予算書に署名させられまし
193
SAの統制下にある、ということは絶好
る日本にとって、アメリカのソフトがN
あらゆる通信機器に、ひそかに盗聴機能
と呼ばれ、衛星通信システムなど現代の
る特別の才能があるのではないかと思わ
手の嵐になった。杉井には人をひきつけ
その年(二〇〇〇年)の六月、大沢た
せた。
これと日本の警察、日本の盗聴法の関
ちの自在党が分裂。大沢一派は連立政権
を取りつけているといいます。
係はどうであるのか。日本とUKUSA
を降りた。小渕首相の突然の死去を受け
のビジネスチャンスのはず。なぜ、この
との関係はどうであるのか。この解明を
て登場した森内閣は、IT革命を唯一の
事実をPRし、対抗ソフトを出そうとし
ひょっとしたら日本の企業までがNS
しないまま、二一世紀を迎えようとする
ないのか、ということ。
Aに牛耳られているんじゃないかと疑っ
葉の軽さに、国民の信頼は繋ぎ止めよう
とめたダ
第
章 「再起」
七月、エシュロンのEUレポートをま
名 調 子 に 思 わ ず 会 場 が 拍 手 に 沸 い た。 もなかった。
以上です」
てしまう。それほどに、
異様ではないか、 この国の国民は異様である、ということ。 よすがに日本再生を掲げた。が、その言
ということ。
そして三つ目に、こんな異様な事実を
すると杉井嬢がまた立ち上がった。
た く さ ん あ る と い う こ と で す。 盗 聴 回
CIAの謀略
194
前にしながら、国会はその解明をしよう
T革命』などといっても空しい限りであ
避、暗号生成、事実解明、外国との連携
ともしないこと。これを解明せずに『I 「 つ ま り、 あ た し た ち に は や る こ と が
ること。こんな政治家のありようは異様
としか思えない、ということ。
二〇〇〇年一月、CIAはドイツのカ
ウンター イ
・ ンテリジェンス機関・連邦
憲法擁護庁(BfV)との激しい攻防戦
。傍聴相談センターは、そうした活
・・・・
動のキーになる。
から、ぜひ、相談センターの実現のため
の後、ついにSTASIと呼ばれる旧東
そして最後に、こうした異様さの背後
『通信傍受二〇〇〇』にはこれまではそ
に力を貸していただきたい。いっしょに
拍手はいりません。拍手はいりません
の存在が知られていなかった、米連邦捜
ドイツ情報機関の機関員名簿のうちドイ
し か し、 ド イ ツ の 要 求 は S T A S I
ツ人に関するファイルを引き渡した。
やっていきましょう」
は『国際法執行通信会議』
(ILETS) に盛り上がっていって、前にも増した拍
ためらい勝ちの拍手もあったが、次第
査局 F
( BI が
) 率いる秘密の国際組織
があるといいます。この「秘密の」組織
に警察がいるのではないか、
ということ。
13
ら、STASIも当然ドイツのものとし
ツのすべての政府機関を継承したのだか
ファイルすべての返還(ドイツは東ドイ
ているのである。
供し、
思いやり予算までつけて、まかなっ
ために必要な要員(日米地位協定)を提
は集中的な情報送付によって麻痺し、一
同基地の電話回線、インターネット回線
これに対して、市民団体は一斉に反発。
を監視対象にすると公言し、大幅に機構
それどころか、BfVはCIAの活動
の崩壊後、バートアイドリングはドイツ
する最前線基地であった。しかし、ソ連
地同様、かつてはソ連の国内通信を傍受
カナダのオタワ郊外にあるレイトリム基
にあるエシュロン基地を個人情報保護の
で、カナダ、オーストラリアでも、自国
これをうけ、ニュージーランドに次い
全世界に克明に伝えられたのである。
て、この経緯はインターネットによって
バートアイブリング、三沢、両基地は、 週間にわたって、機能を停止した。そし
を 改 革。 政 府 も ド イ ツ に あ る N S A の
を、三沢は日本を監視している可能性が
諸規定に違反する、として告訴。裁判が
ている)なので、ドイツの対米不信がこ
レーダー通信基地・バートアイブリング
最も高い。
ロッパ最大の基地(イギリスのメンウィ
シュロンの情報収集の一端をになうヨー
ン郊外にあって、衛星通信を傍受し、エ
バートアイブリング基地は、ミュンヘ
団体の要請を受け、EU議会も同基地の
よって包囲された。また、そうした市民
を中心とするヨーロッパの市民団体に
ング基地が緑の党、グリーンピースなど
二〇〇一年六月、このバートアイブリ
予 算 開 示 要 求 を 掲 げ て、 与 野 党 を 結 集。
の党が、エシュロンに対する調査要求と
フ・ネーダーを大統領選に押し立てた緑
アメリカでは消費者運動の旗手ラル
れで治まるはずはなかった。
の閉鎖・返還を要求している。
スヒルを除く)であり、一〇〇〇人のN
役割に対する質問状をドイツおよびアメ
上下両院に調査委員会を設置するための
始まった。閉鎖を求めて、予算の執行停
SA職員が働いているが、ドイツに対す
リカ政府に送達。市民団体はさらに、E
話し合いに入った。
うがやや大きい。日本は巨大なスパイ基
割とそっくりで、規模でいえば三沢のほ
質問状を無視。八月には査察要求を拒否
自らも質問者側に立ったが、アメリカは
ド イ ツ は 質 問 状 を ア メ リ カ に 回 送 し、
ていた事件であるにもかかわらず、多く
ンターネットの世界では注目の的になっ
スコミではほとんど取り上げられず、イ
しかし、こうしたニュースは日本のマ
止を訴える運動も激しさを増した。
る恩恵はなにもない。
U議会による査察を要求した。
地を、アメリカを除けば、日本とは何の
した。
これはちょうど、日本の三沢基地の役
協定をも結んでいないUKUSA諸国の
195
の国民は蚊帳の外にあった。
ス」というのだ。
るのが先決。そのためにも共闘はマイナ
の閉鎖、返還を求めていくことで一致し
設の撤去を求め、容れられなければ基地
「三沢が無風である限り、
アメリカはバー
いた「外国人」による騒動であった。
来事は、まさに寝耳に水、突然降って沸
とともに三沢基地を包囲しようとした出
界の市民団体が三沢に集結。日本の若者
間予算を使い、世界のいくつかの国の国
プの中には中小国の国家予算を上回る年
る投資を忘れていない。そのため、グルー
なく、世界の多くの企業も可能性に対す
オプションを提示するグループも少なく
この国際NGOの中には、地球の未来
地はテポドンに有効とは思えない。日本
情報把握ができなかったことから、同基
三 沢 の 上 空 を 通 過 し た に も か か わ ら ず、
接日本の脅威でもない。九八年の発射時、
う主張に対しては、発射は当面なく、直
テポドン監視上、三沢が必要だ、とい
したがって、二〇〇一年九月三日、世
トアイブリングに居座り続ける」これが
家方針を左右するだけの実力を持ってい
た。
世界の市民団体が三沢に結集した理由で
のイージス艦によっても監視は可能だ
し、 二 〇 〇 二 年 に は 偵 察 衛 星 も 加 わ る。
る。
日本の政財界が排除一本槍で進むのは
ある。 三「沢を揺すれ 「」日本の世論を揺
すれ」というのである。
いる「Qの会」も、この運動への対応を
に、政財界の説得を連日のように続けて
いた。傍聴相談センターの立ち上げ準備
「Qの会」メンバーも早くからつかんで
た。が、これによって日本社会の閉鎖性
指揮をとった後藤田正春の政治力を強め
同様のことは一九六〇年代の末に現れ
の活動家が次々に逮捕された。が、その
にかけて、彼らと、彼らを支援する日本
た。 日 本 だ け が 排 除 一 本 槍 で 突 き 進 み、 三日のイベントを直前にした一日、二日
た世界的な学生運動にも言えたことだっ
ほとんどが起訴に至らぬ微罪又は冤罪
GO活動家が次々と来日した。ところが
八月の末から九月にかけて、欧米のN
以上の三点で反論する、と決定した。
迫られた。
は一気に進み、若者の政治に対するダイ
で、三日のイベント潰しを狙ったものに
危険すぎるのだ。
「呼びかけに応じて共闘すべきよ」とい
ナミズムを奪う結果になったのである。
三 沢 包 囲 の 動 き が あ る こ と は、 当 然
う 杉 井 美 紗 に 対 し て、
「タイミングが悪
共闘の件は却下されたが、彼らの主張
「日本の政財界はNGOを敵視している。 をPRし、また、会としても三沢基地の
と思われる大規模な盗聴である。盗聴の
問題は、逮捕に当たって警察が行った
ほかならなかった。
い 」 と 反 対 し た の は 中 川 伸 一 で あ っ た。
任務に対する説明と、エシュロン関連施
それが間違いだというメッセ―ジを伝え
196
敷いた。省庁再編によっていっそうの権
葉県警の協力を得ながら、強力な布陣を
の逮捕者が出た。青森県警は警視庁、千
また、イベント当日の三日にも、多く
た。
の協力者として、盗聴を受けたのであっ
され、支援者の日本人は蛇頭やマフィア
た。つまり、蛇頭やマフィア同然にみな
名目は「外国人による組織犯罪」であっ
か、との、嘲笑の混ざった疑念も強まっ
ロンに深くコミットしているのではない
クソン・クラブ」入りを目指し、エシュ
を表明した。また、日本が「アングロサ
欧州各国はこの取り締まりに強い不快感
のであった。
権を脅かす危険な体質をも印象づけるも
は、日本警察の前近代性、民主主義や人
察の威力を世界に示したが、同時にそれ
は、沖縄サミットにつぐもので、日本警
する防衛庁や、ICPOがらみでアメリ
てるほうが、軍事情報でアメリカに依存
らせるのを契機に、ここを防諜機関に育
長谷川は「偵察衛星の運用を内調に握
てきた。
介入に嫌気が差し、再び「Qの会」に戻っ
JETROの長谷川宗之も、アメリカの
出現するのを阻止したい」と考えていた
IとCIAを兼ねたような超権力として
諜報)組織を分離吸収して、警察がFB
中枢を預けるよりまし。内調もCIAの
力集中を実現した警察庁の、いわば出陣
「 Q の 会 」 で も、 大 規 模 な 盗 聴 捜 査 に 抗
手垢がついているが、組織が小さいので、
カから自立できない警察庁に国の諜報の
議するとともに、日米間で盗聴によって
体質の変革は可能」と踏んでいたのであ
た。
一 九 九 四 年 一 〇 月、 ス ペ イ ン の マ ド
得られた情報の交換が行われた可能性が
式と位置づけられ、力による弾圧を鼓舞
リ ッ ド で 開 か れ た I M F( 世 銀 ) 設 立
強いとみて、
国会で真相を究明するよう、 る。
一二月、シアトルのWTO(世界貿易機
が現実になり始めた。アメリカが日本の
八 月、
「Qの会」が心配していたこと
む と、「 共 同 開 発 」 を 提 案。 こ れ に 応 じ
購入しろ」と言い出し、日本がこれを拒
星の独自開発はムダ。アメリカの衛星を
してみせたのである。
五〇周年記念総会に登場し、貧富の格差
各党への働きかけを開始した。
関)閣僚会議にも登場。これが暴動に発
偵 察 衛 星 開 発 に 対 し て、「 協 力 」 と い う
JETRO氏によれば、アメリカは「衛
拡 大 に 抗 議 し た 国 際 N G O は、 九 九 年
展し、グローバル・スタンダードを歌い
果をブラックボックスにして日本に提供
ると、基本設計をアメリカが独占し、成
「 衛 星 の 導 入 を 通 し て、 内 閣 情 報 調 査 室
する、というFSX(開発後の正式名称
名の介入を始めたからである。
の拡充を図り、警察庁のシギント(信号
上げようとしたクリントン大統領の思惑
を完全に打ち砕いた。
この二の舞はごめんだとばかりの弾圧
197
開を見せ始めたという。
はF2支援戦闘機)とまったく同様の展
である。
する警戒感をいっそう募らせ始めたから
ない。ここまでして導入の旗を振る連中
あ独自に偵察衛星を持つ意味なんか何も
べてアメリカが横取りする、というもの
も四倍もの費用をかけ、開発の成果はす
日本はアメリカの衛星を購入するより
方法として、アメリカが早期警戒情報を
を韓国にも提供することで合意。提供の
してもアメリカ。日韓は日本の衛星情報
日韓の摩擦解消に乗り出したのはまた
なの。ものすごい予算をかけて、世界の
れば「そもそも何を覗くの、北の発射台
長谷川は興奮気味だが、杉井に言わせ
の気が知れない」
だ。
上空を侵して、たかが発射台。そんなも
の北の政府に聞けばいいじゃない。その
日韓双方に提供しているのとおなじルー
先端技術による日本再生を衛星導入に
託 し て い た 人 た ち は こ れ に 激 し く 反 発。 トを逆流させることで決着した。
程度の関係も築けない日本政府がだらし
米 軍 横 田 基 地、 ハ ワ イ 太 平 洋 軍 司 令 部、 ないのよ」ということになる。
すなわち、日本の衛星運用部から在日
くが、これを「やむなし」として、受け
在韓米軍、韓国国防部の順である。もっ 「開発を通し て先端技術を確保し ようと
しかし、軍事産業と癒着した防衛族の多
入れようとしていた。要は予算が産業に
とも、当初は技術者の養成を含め、衛星
ように、韓国も、日本の衛星配備に反対
備に再考を求めた。これに呼応するかの
撃権を主張するとともに、日本の衛星配
上した。中国が偵察衛星に対する先制攻
ていた。
は軍事産業にとっても格別な意味を持っ
衛予算とは別枠なので、これを取ること
うのである。
くわからないまま見切り発車されてしま
らほんとうに自立できるのかは、まった
くのか、日本の内閣情報室がアメリカか
これでは、この変則運用がいつまで続
に送られることになる。
閣安全保障室とハワイ経由で韓国国防部
関員)が担当し、横田基地から日本の内
情報の解析を在日米軍(横田のNSA機
羽ばたいて飛ぶ一五センチの覗き屋。
中 船 』、 カ メ ラ や セ ン サ ー を 取 り 付 け、
装置。ハチドリ型スパイ機『マイクロ空
まざまなデジタル情報を収集・送信する
マイクロ デ
・ ータ送信機『スマートダ
ス ト 』、 一 ミ リ の 大 き さ で 風 に 乗 り、 さ
たような先見性が欲しいもんです。
ンが任期最後の一般教書演説でぶち上げ
ちゃちな構想ではなくて、去年クリント
い う な ら、 偵 察 衛 星 な ん て 使 い 古 し の
落ちれば文句はないのである。衛星は防
を表明。二〇〇〇年以来強まっている南
そして極めつけは『分子コンピュータ』、
その上、八月の半ばに新たな問題が浮
北和解の動きが、日本の軍事力強化に対 「まったく冗談じゃない。こんなことじゃ
198
んな本気で取り組んでいることなんです
だが、最速の演算速度を持つ。これ、み
ロコンピュータで、涙一粒ほどの大きさ
分子一個を半導体として利用したマイク
業展開は東アジア各国に通貨、クレジッ
もちろん、本家「ファーイースト」の事
を売り出した。
にあやかり、
一斉にシー ロ
・ ード ツ
・ ァー
「南の民と鉢巻の習慣」「鉄砲の伝来(ア
伝説を追う」「日本語に潜む南方語源語」
トして、他の旅行代理店も南の島ブーム 「椰子の 実は どこからきたの か―瓜子姫
にアレンジした「シー・ロード」がヒッ
ユタヤ・ルソン・種子島)」 ・・・・
多くの
特 集 が、「 海 の 道 ブ ー ム 」 を 煽 っ た の で
現地のホテルや銀行、病院、その他のサー
テ ー マ が 交 じ る よ う に な っ て 来 た。「 海
そ し て、 九 月 に は い る と シ リ ア ス な
ト、 保 険 を あ つ か う 代 理 店 を ネ ッ ト し、 ある。
の様相を呈した。
よ 」
というのは春田だった。
渋谷駅前にこの夏オープンしたアメリカ
資本の巨大旅行代理店
「ファーイースト」 ビス機関と提携。独自のカードを発行し
は、海外通貨やクレジットカード、保険、 て 試 験 的 に 個 人 認 証 シ ス テ ム を 導 入 し、 の 交 差 点・ 南 沙 諸 島 」「 フ ィ リ ピ ン 近 海
の海賊問題」「台湾土着の先住民族」「琉
国内と変わらぬサービスを保証している
金融、並行輸入、海外資産運用までを扱
そ し て「 海 の 道 共
・・・・
球大航海時代」
預 貯 金 を「 ワ ー ル ド・ タ ウ ン・ バ ン ク 」 同体」
う総合国際流通業者「ワールド・タウン」 ことに特長がある。
の東アジア支店である。
に預け替えさせ、カードとパソコンを持
そんなある日、あの篠山啓志が街頭液
この「ファーイースト」が始めたこの夏
のキャンペーンが「ぶらり、シー ロ
・ ー たせて、若い人を総合的なライフプラン 晶パネルの中から呼びかけていた。
ド」で、
東アジアの海の道を強調。台湾、 の 中 で イ ン タ ー ネ ッ ト 管 理 し て い こ う、 「 沖 縄 こ そ、 海 の 道 の 主 役 で す。 四 海 の
であるかのような気軽さで紹介して、若
サラワク、カリマンタン)をまるで国内
ロ
・ ード」キャンペーンと歩調を合わせ
るかのように、マスコミや学界でも「東
この「ファーイースト」の「ぶらり、シー
りに海の道共栄圏のようなものが生まれ
を作りましょう。そして、それを足掛か
してはなりません。那覇を自由貿易都市
架け橋になる、という沖縄の願いを無に
い女性たちの人気を集めた。
アジアの海の道」が取り上げられること
フィリピン、
パラウ、
ボルネオ
(ブルネイ、 という遠大な目論見を持っていた。
また、島崎藤村作詞・大中寅二作曲の古
が増えてきて、さながら「海の道ブーム」 ればすばらしいことだと思います」
にして、日本と台湾を結ぶ新たな経済圏
い小学唱歌「椰子の実」をアップテンポ
199
さっさと中国貿易に進出する。中国が舞
橋に切り詰めてしまうのだ。
のになぜ中国をはずして、台湾との架け
う四海の中には中国も含まれている。な
「 前 段 は そ の と お り だ。 で も、 沖 縄 が 願
思う。
ない。沖縄は台湾防衛の要にされ、さら
本に台湾を抱え込ませ、アメリカ自身は 「 だ が、 こ れ で は 沖 縄 の 基 地 も な く な ら
なるほど、それがアメリカの願いか。日
には海の道、つまりはシーレーン防衛の
して過激になった。
返り咲いた。大沢の改憲論は以前にもま
郎は再び、CIAの期待を集める人物に
利用価値は激減してしまったが、大沢八
切ったのである。
日本の軍事貢献を求める方向にかじを
しかし、この「日本認証サービス社」は、
信は高度な暗号で守られる必要がある。
分と認証機関、認証機関と相手の間の通
関に証明してもらうシステムのこと。自
自分に間違いないということを第三者機
分を相手に特定してもらう際、操作者が
認証システムとは、コンピュータ上で自
である。
立、富士通、NECによる共同出資会社
ビス社」の設立、という形になった。日
る 石 原 慎 太 郎 ら の 動 き を 刺 激 し て で も、 う動きは、九七年九月に「日本認証サー
い上がらないよう、日本、沖縄、台湾を
拠点にされてしまう。そして日本は極東
独 自 に 暗 号 技 術 を 開 発 す る の で は な く、
磯崎はこれを聞いて「なるほどな」と
文鎮代わりに利用する腹なのだ」
の文鎮として、身動きもできぬまま沈ん
アメリカの暗号ソフトを利用することと
クリントン政権が終ると、アメリカの対
日 政 策 は 静 か に 変 化 し 始 め た。
「ナイ
署名し、核軍縮への一定の国際的なイニ
は異なり、核不拡散条約(CTBT)に
核武装を恐れたナイ=ボーゲルの時代と
つまり、日本の独自防衛路線、とりわけ
ル路線の転換が始まったのだ。
ところで、通産省や大蔵省、それに国内
のであった。
磯崎はそんな決意のようなものを感じる
ようだ」
志と対決しなければならない運命にある
いかない。わたしはどうしても、篠山啓
始。 解 読 で き な い 暗 号 は「 テ ロ リ ス ト、
ての国際的なプレゼンテーションを開
省、商務省、CIA、FBI一体となっ
替えて、国際標準にしようとし、国防総
方式」を、批判の強い「クリッパー」に
アメリカ政府はこの「キー・リカバリー
手にしているのである。
した。つまり、この解読キーはCIAも
シアチブを取り始めた日本には、一気に
金融機関の間で、電子商取引に必要な個
スパイ、麻薬組織の犯罪捜査に支障をき
・ でいってしまうのだ。
こんなシナリオを認めるわけには絶対に
核大国に突き進む可能性は少ない。そう
人認証システムを日本独自で作ろうとい
イニシアチブ」は終わり、ナイ=ボーゲ
読んだ新政権は、独自防衛路線を主張す
200
れたワッセナー協定の中でこの論理を展
易規制協定である一九九六年七月に結ば
アメリカはCOCOM崩壊後の新国際貿
たす」という、あの論理である。
た も の だ が、 警 察 庁 が 押 し 切 っ た 形 だ。 だった。
れる怖れから、通産、大蔵が躊躇してい
産業・経済・金融情報がアメリカに抜か
してもこれを推奨していく。
らがアメリカの要求であることは明らか
み込み、を目的とした改正である。これ
ニ ッ フ ァ ー( ネ ッ ト 用 盗 聴 装 置 )」 の 組
の暗号でも輸出には通産大臣の許可を必
受け、外国為替管理法でわずか1ビット
に義務付けることに成功。日本もこれを
も応用できるかもしれない、と期待した。 アメリカは一文字に対して一ビットの暗
パーソナルなものになれば、税務事務に
しかし、大蔵省は認証システムが普及し
影、を感じていた。
号でもだめとしていたワッセナー協定
早くも暗礁に乗り上げた。
を前提に考えられた「キー リ
・ カバリー
法 案 」 は 暗 号 の デ ー タ 容 量 を め ぐ っ て、
もっとも、外為法による暗号規制の廃止
要とした。
自治省版住民カードを無用にする、新た
開。暗号の輸出規制を締約国
(33ヶ国) 通産、大蔵は警察庁の後ろにアメリカの
ヨーロッパも一度、これに合意しかけた
ビットに変えてしまった。
を 勝 手 に 破 り、 四 〇 ビ ッ ト に か さ 上 げ。
すべてはアメリカの国内事情(暗号開発
なカードシステムが生み出せるかもしれ
警察庁は法務省とともに申し合わせの
力)に左右されているのだ。が、アメリ
( 九 七 年 O E C D ) が、 昨 年、 ア メ リ カ
協定に参加していないインド、イスラエ
翌月にはもう日本のソフトメーカーに
カに追従するばかりで開発意欲を殺がれ
九七年には五六ビットとし、九八年一二
のは時間の問題で、アメリカが狙う暗号 「 キ ー・ リ カ バ リ ー」 を 義 務 付 け る 法 案
ルなどの高度な暗号も市場に投入される
の準備に入るとともに、早くも昨年施行
てしまっている日本にはこれほど高度な
ないと考えた。大蔵が抵抗を止めたのは
市場の独占は不可能になりつつある。
された通信傍受法の改正が俎上にのぼっ
暗号をつくる技術がない。といって、協
政府の盗聴から域内企業を守るため、協
ところが、二〇〇一年八月、警察庁が主
た。
定に合わせてみても、技術は日進月歩で、
月にはワッセナー協定そのものを五六
導する「情報セキュリティー委員会」に
国際的な重大犯罪に関する捜査データ
定 と は 独 自 の 歩 み を 始 め て い る。 ま た、 そのためであった。
おいて、日本の公共事業関連では原則と
わかったものではないのだ。
アメリカがいつこの数字を引き揚げるか
して キ
「ー・リカバリー方式 」を採用す ( 盗 聴 資 料 ) の I C P O へ の 提 供、 イ ン
ることを申し合わせた。また、民間に対 ターネットの接続点(ノード)への「ス
201
たとえば九七年まで、アメリカの規制は
んでしょうね」
そういう中川に対して、春田が断言す
磯崎英司のメールに、奇妙な暗号文が送
られてきたのは二〇〇二年の一月のこと
四〇ビットだったが「こんな暗号ではだ
めだ」という暗号ソフト会社が五万ドル
だ。英司はすでに高校三年生になってい
たのだが、五六ビットの「RC5」とい
この結果、規制が五六ビットに緩和され
読してしまった。
学院生グループが、わずか三時間半で解
カリフォルニア大学バークレー分校の大
りを募集した。そして、これに応募した
一斉抗議メール行動が行われた。エシュ
二〇〇一年一〇月一〇日、三沢基地への
すよ。一度聴いてみるといい」
クでやった磯崎さんの講演はよかったで
領をどうにかしませんとね。ニューヨー
磯崎が帰宅するのを待ってましたとば
字というやつでね」
けど、いちおう解読してみたんだ。狸文
ね、つまんないお遊びだろうと思うんだ
も ら っ た ん だ。 子 ど も 騙 し の 暗 号 文 で
うとしているんですからね。教育指導要 「 と お さ ん、 今 日、 お れ、 変 な メ ー ル を
多様性の時代に、画一的な小国民を作ろ
かりに、英司が飛んできた。最近の英司
る。
の賞金をかけ、インターネットで暗号破 「 教 育 で す よ、 教 育。 ひ ら め き が 必 要 な
う 暗 号 ソ フ ト も、 世 界 中 の 大 学 連 合 に
ロンに反対する世界中の人たちが、抗議
た。
よって二〇九日目に解読された。問題は
い。取り残された日本に、こんな法律は
カを追って法改正するわけにもいかな
するのか知れないし、そのたびにアメリ
つまり、またいつアメリカが規制を緩和
ある。
ピュータではそのスピードに雲泥の差が
九七年当時のコンピュータと現在のコン
コ ン ピ ュ ー タ の 演 算 ス ピ ー ド で、 こ の
ロン反対」
のメッセージを残していった。 「わからない、ってどういうことだ」
デ ー タ の 一 部 を 奪 う と 同 時 に、「 エ シ ュ
と、
三沢のコンピュータシステムに侵入。 ことはどうでもいいんだけどね、どうし
ロ ン に 対 す る 協 力 の 証 拠 を 押 さ え よ う 「 ず っ と 昔 の こ と じ ゃ あ な い か。 そ ん な
また、
抗議の別働隊が、三沢基地のエシュ
巻き込むこととなった。
のメール攻撃を仕掛けたのである。大容
したことがあるのを、英司は覚えている
をクラッシュさせ、周辺の関連施設をも 「 狸 文 字 か、 懐 か し い な。 そ ん な 遊 び を
量のメールは基地が使っているISDN
か」
は以前よりも遥かに 親
" づきあい が
"い
い。母親ともうまくいっているようだ。
そもそも必要ないものであったのだ。
が、この事実は公表されなかった。
「 こ れ だ よ、 こ れ。 こ の 解 読 文 章 に 間 違
ても意味のわからないところがある」
「なんでこんなに遅れをとってしまった
202
いはないと思うんだけど、この中にある
た、解読文章を父に見せた。
久 子。
「 you
」 は 久 子 の 弟 か。 磯 崎 は 愕
― わ れ、 知 り た り。 故 に、 危 う し。 海、 然とした。
普 通 の 文 字 で、 そ う あ っ た。「 海 の 愛 を
赤 い「 海、 L o v e、 以 」 の 下 に は、
『海ラブ ・・・・
』というのがわからない」
英司は漢字かなまじり文に打ち直し
らぶ、い、に、消さる。避けるには、広 「 ち ょ っ と 待 っ て く れ、 思 い 当 た る こ と
も っ て 」 と い う、 こ の 言 い 回 し は「 海、
」とあった。
「 you-hori
」 と刻まれていたのである。
[email protected]
と は だ れ だ。
「 you
」 は 名 前 か。 と す る 「 深 き 海 の L o v e を 以 て、 卑 弥 呼 は 国
と「
」は堀、堀川、堀之内。堀之内 を慈しみたまふ。卑弥呼は王を愛しみた
hori
まふ」
めるにしかず。添付を、
あまたに送れり。 がある。いま、父さんのホームページを
え る。 つ ま り、「 海、 L o v e、 以 」 に
Love、以」の本来の意味のように見
磯崎のホームページには、自分の発表
深い意味はない、別に暗号なんかじゃな
開いてみるからな」
「わからないのはこの『海、らぶ、い、に』 した記事に書ききれなかったサイド情報
い、 と 見 せ か け て い る。 そ う す る こ と
開かずも、構いなし。願わくば、秘匿せ
の部分なんだ。
『テンプ』も迷ったけど、 や、出版した本の改訂情報などが載って
で、このメッセージの受信者である磯崎
よ。時、自ずと、来たれり―
いる。読者へのサービスにもなれば、自
自身に追跡の手が及ぶことを避けたのだ
ンクしていて注文もできる。そんなサイ
「 行 き 届 い た 気 配 り、 そ れ に、 こ う い う
ろう。
このメールにはまだ開いていないけど添
付ファイルがついている。だから
『添付』 分の覚えにもなる。もちろん出版社とリ
と読んでみた」
トなのである。
頓知のほうが下手な暗号よりも優れてい
「なんだって、
『海、Love、以』だっ
そして、読者の意見や質問を受け付け
る、
書き込み用の掲示板が用意してある。 るのかもしれないな」
て。ほんとだ。確かに
『海、
Love、
以』
だ。メールの差出人はだれなんだ」
磯崎はすぐさまこの掲示板を開いた。
磯崎は考える。卑弥呼は邪馬台国の女
「ちょっと待って、いま見てくる」
らく将軍である弟ではないか。当時の日
王である。とすると、王とは何か。おそ
そ れ は 以 前、 夢 に 見 た の と そ っ く り
本は姉弟政治であった、ということをど
英司は自分の部屋に駆け込むと、すぐに 「海、Love、以」
引き返してきた。
だった。掲示板の最上段に、点滅こそし
こかで読んだ覚えがある。
「これだよ、これ」
英 司 が 渡 し て く れ た メ モ に は「 you- ていないが、大きく赤い文字がくっきり
203
タが読み取られる。ハードディスクを初 「六四〇キロバイト」
期 化 し て、 必 要 な ソ フ ト を 入 れ 直 さ な 「それなら大丈夫だ。フロッピーにコピー
だから堀之内久子はこういっている。
「 神( 海 ) に 誓 っ て、 わ た し は 日 本 を 捨
きゃ」
操作する。難しい作業があっという間に
何 が 出 て く る の か、 緊 張 の 一 瞬 だ っ
からね」
英司は鮮やかな手際でコンピュータを 「 そ う か、 そ い つ な ら 壊 れ て も 構 わ な い
して、この古いパソコンで開いてみよう」
てる気はない。弟が心配だ。よろしく頼
む」
磯崎は英司にことの概略を話すと、使
終了して、二人は車に乗り込んだ。
らった。
ンターネットのプロバイダーを探しても
に、カードなしでテスト加入ができるイ
堀田にも、別な形の緊急情報が久子から
さ っ そ く そ の 電 話 で 堀 田 と 連 絡 を 取 る。
ていて、送れないのである。
このメール・アドレスはすでに閉鎖され
るようだ。まずはどんどんスクロールし
うっと続く。何か大変なことが書いてあ
開 い た。 英 文 の テ キ ス ト デ ー タ が ず
せる。
リカリいう音がいっそう緊張感をつのら
しかし、
心配していたことが起こった。 た。古いパソコンなので速度が遅い。カ
どこからも足のつかない匿名の存在とし
入っているという。堀田はいま、明日に
わなくなった古いノート パ
・ ソコンを納
戸の奥から引っ張り出した。そして英司
て、コンピュータを操りたかったからで
てみる。文書のコピーが何枚か続く。そ
でもニューヨークへ飛ぶための手はずを
ある。
のであった。
「 CONFIDENTIAL
」のスタンプが押され
ている、いずれも極秘文書といわれるも
文 書 だ っ た。 あ る も の に は「 TOP
」 の 印 字 が、 ま た あ る も の に は
SECRET
文書はあきらかにCIAの内部
枚。
し て ア メ リ カ の 偵 察 衛 星 の 写 真 が 一 枚、
それに何のものだかわからない図面が二
家はたしか所沢だという。弟については
「 ま ず は そ の、
『 [email protected]
』 整えているところだという。
に メ ー ル を 送 っ て み よ う。 ま ち が え て 堀田によれば久子の弟の名前は洋介、実
送った、売りたし買いたしのメッセージ
で い い。
『 フ ァ イ ナ ル フ ァ ン タ ジ ー Ⅸ 』 磯崎が当たってみることになった。
「危険じゃないか。危ないよ」
るぞ」
高く買います、でもいいから送ってみて 「 よ し、 英 司、 添 付 フ ァ イ ル を 開 い て み
よ。いや、待て。公衆電話を使おう。さ
あ、クルマに乗って」
ず大きさを調べよう」
「 ち ょ っ と 待 っ て。 そ れ な ら ぜ ん ぶ 掃 除 「 フ ロ ッ ピ ィ ― に 収 ま れ ば 大 丈 夫 だ。 ま
しなければだめさ。以前、入力したデー
204
を進めるに当たって必要とされる資料や
と、それを受けての大まかな戦略、戦略
アメリカは日本のこの開発状況を完全に
い。
ガソリンならスタンドは現在のままでい
反 発。 再 び 独 自 開 発 路 線 に 戻 っ て い る、
が、情報解析までアメリカに頼ることに
独自開発を一度は断念した日本ではある
たのは偵察衛星の開発状況である。
ノ ー ル や ガ ソ リ ン の ほ う が 扱 い や す い。 「 ミ リ タ リ ー」 の ト ッ プ に 記 載 さ れ て い
注 意 事 項 に よ っ て 成 り 立 っ て い る。 と
把握していた。そして、アメリカのGM
データは東アジア各国に関する分析
いっても半分以上が日本に関するもの
芝 や N E C の こ れ ま で の 成 果 を 集 中 し、
記載されていたのは「燃料電池」に関す
「 ジ ャ パ ン・ テ ク ノ ロ ジ ー」 の ト ッ プ に
ヒュ―ミント、すなわち各国要人へのア
そ し て、 そ の 中 心 に な る の が C I A の
ての周到な戦略が練られている。
送る際、他国の傍受を避ける手段などが
えているという。つまり、情報を地上に
のになっているが、その運用に問題を抱
衛星の地上撮影機能そのものは優れたも
という。通産省の音頭で、三菱電機に東
で、他の国に関する部分は、ついでに紛 ( ジ ェ ネ ラ ル モ
・ ーターズ)が進めてい
る方式を国際標準にするよう、国を挙げ
る日本の自動車メーカーの開発状況レ
プローチであった。そして、アプローチ
見つからない。
れ込んだもののように見える。
ポートであった。
の道具立てとして、NSAがつかんだ極
こうしたことから日本が再び共同開発に
燃料電池とは水素を燃料として電気を
秘情報が利用される。
発生させ、モーターで走る無公害の近未
戻る可能性が高く、アジアの軍事バラン
は あ っ た が、 レ ポ ー ト に 目 を 通 す う ち、 ス か ら い っ て も そ れ が 望 ま し い。 ま た、
来車で、
技術的にはほぼ完成をみている。 技術のことについては詳しくない磯崎で
問題は水素で、直接水素を利用するもの
戦慄が走った。
そのためには地上実験などで、開発が遅
と、メタノールやガソリンなどを改質し
無公害、という面で見るなら水素を直
れているものである。
際標準になるのか、激しい争いが予想さ
Aが駆使するとすれば、それは恐ろしい
キャッチしている。こうした情報をCI
ら、 自 動 車 電 話 で 話 し て い た 会 話 ま で
妃が死の直前、パパラッチに追われなが
そして、開発を遅らせるためには、姿勢
の道に舞い戻るほかはない、というのだ。
れば、日本は再びアメリカとの共同開発
つまり、独自開発を遅らせることができ
な道である、とする。
れたり、行き詰まることがいちばん確実
接搭載するほうがいいが、安全性や、補
ことになる」
て水素をとりだすものがあり、どれが国 「 こ れ は や ら れ る。 N S A は ダ イ ア ナ 元
給スタンドの確保という面からはメタ
205
し、気づかれないような工作をする方法
用しているアメリカ製のソフトに侵入
制御やエネルギーの配分調整に日本が利
迫りくる次の覇者の見えない足音に怯え
アメリカの敵は短期的には日本、長期的
その年の二月、アメリカから新任の大
い。 最 大 の 敵 は 衰 え て い く 自 身 の 力 だ。 を置いた。
には中国といわれているが、そうではな
使が着任した。ジェフリー・オブライエ
べてはそこから始まる」
がある、とも示唆している。
る自身の姿だ。恐怖、それがなりふり構
ン。間違いなく池島佳苗の隣で白い歯を
後には、締めくくりとしてこんなことが
から下りなければならない。だが、その
下りなければならない。どこかでこの船
いはこれからだ。とりあえず明日は、C
操られる日本
ばならない)
た(本編は全面的に書きかえられなけれ
アメリカの野望はこれからが本番であっ
はまだ、あの写真を持ち歩いていた。
見せていた、あの写真の男である。磯崎
磯崎は急に親密になった英司の肩に手
「 こ れ だ、 こ れ が ト ロ イ の 木 馬 だ。 日 本
わぬ行動になっている」
うとする大船に乗って、栄華を享受して
かつてイギリスがそうだった。その沈も
磯崎は考える。
は も う、 こ い つ を 大 量 に 引 き 入 れ て し
まった」
磯崎は思わず立ち上がって、声を上げ
ていた。
来、世界にとってさして重要な国ではな
て沈んでいった。アルゼンチンはそれ以
「カルチャー」
の項には、
あの
「シー ロ
・ ー いたアルゼンチンは、少しでも長く浮い
ド・ キ ャ ン ペ ー ン 」 の こ と が 出 て い た。 ていたいというイギリスに振り落とされ
歌のヒットまで含めて、やはりあれはC
IAの工作の一環だったのだ。
書かれていた。
ためにはまだやっておかなければならな
くなった。
「ここで報告したような戦略を実行して
いことが山ほどある。
そして、このジャパン・レポートの最
いけば、われわれは二〇一〇年には日本
して重要な国ではなくなる」
IAのコンピュータに入り込んでみせ
を無視できる。日本は世界にとって、さ 「 わ た し た ち の、 そ し て『 Q の 会 』 の 戦
「 ア メ リ カ は 本 気 だ、 本 気 で 戦 争 を し て
いる。どことだ、
日本とか。いやちがう。 た、日本の若い頭脳を救出に行こう。す
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