「オート・アクティブ・テストって便利な機能」 平成20年式の日産・セレナ(車両型式 DBA−C25、エンジン型式MR20DE)で、 A/Cが時々効かないという相談を受けた。 詳しい症状を確認すると、クーリング・ ファン及びブロア・モーターは作動している が冷風が出てこないとこのことだった。 症状からA/Cコンプレッサのマグネッ ト・クラッチが作動していない可能性があるため、オート・アクティブ・テストを実施し てもらうことにした。近年の日産車にはエンジンルーム内にリレーボックス及びヒューズ ボックスが一体化され、且つリレーの制御回路を持つIPDM E/Rが取り付いている。IPDM E/Rにはヘッドランプリレー、リヤデフォッガリレー、ワイパーリレーなどが内蔵されて おり、その中にマグネット・クラッチを作動させるA/Cリレーも入っている。オート・ア クティブ・テストとはイグニション・スイッチ、ドア・スイッチの操作により内蔵されて いる各リレーを強制的に駆動させて作動点検を行えるモードになる。 オート・アクティブ・テストの結果、強制駆動中もマグネット・クラッチが作動する時 と作動しない時があり、作動しない時にマグネット・クラッチ側で電源の確認をすると12V きていたため、IPDM E/R内のA/Cリレーは正常であり、マグネット・クラッチ不良と 判断しA/Cコンプレッサを交換すると正常になったとの報告があった。 今回はA/Cコンプレッサ側の不良だったが、オート・アクティブ・テストでマグネット・ クラッチが作動せず電源がこなかった場合はA/Cリレー不良が考えられるが、その際リレー 単体の交換が出来ないためIPDM E/R一体での交換となるので注意していただきたい。 このオート・アクティブ・テストはCAN通信が搭載されている車両には付いており、ス キャンツールを使用せずとも行えるので、ボデー関係の不具合を点検する際は活用してい ただき、判断ミスのないトラブルシューティングをしていただきたい。 NEWS 2015 10月号 31 〈参考資料〉 IPDM E/R ・IPDM E/R(INTELLIGENT POWER DISTRIBUTION MODULE ENGINE ROOM)は従来エンジンルームに配置され ていた、リレーボックス及びヒューズブ ロックを一体化し、内蔵したリレーの制御 IPDM E/R をIPMD E/R内の制御回路により行なう ものである。 ・IPDM E/R内蔵の制御回路により、BCM及びECCS C/UとのCAN通信により、リレー のON−OFF制御、各種信号の送信(オイルプレッシャースイッチ、ニュートラルスイッチ、 リバーススイッチ)等を行なう。 32 NEWS 2015 10月号 オートアクティブテスト ■ 概要 オートアクティブテストは、IPDM E/Rが下記のシステムに駆動信号を送ることで、作動点検を行えるようにする ものである。 ・リヤウインドーデフォッガー ・フロントワイパー(LO、HI) ・クリアランスランプ/テールランプ/ライセンスプレートランプ ・フロントフォグランプ ・ヘッドランプ(LO、HI) ・A/Cコンプレッサー(マグネットクラッチ) ・クーリングファン ・油圧警告灯 ■ 操作要領 1 .フードを閉じ、ワイパーアームを起こす。(ワイパー作動による、ガラスの傷つき防止) 参考:フードを開けてオートアクティブテストを行う場合は、フロントガラスに水をかけておく。 2 .キースイッチをOFFにする。 3 .キースイッチをONにし、20秒以内に運転席ドアスイッチを10回押し、キースイッチをOFFにする。 ■ 注意 ■ 助手席のドアは閉じておくこと。 4 .10秒以内にキースイッチをONにする。 5 .オートアクティブテストが起動すると、油圧警告灯が点滅を開始する。 6 .下記の一連の作動を 3 回繰り返すと、オートアクティブテストを終了する。 参考:オートアクティブテストを途中で終了する時はキースイッチをOFFにする。 ■ 注意 ■ オートアクティブテストが起動できない場合は、運転席ドアスイッチ系統の点検を行うこと。 ■ オートアクティブテストによる点検 オートアクティブテストが起動すると、図の 1 〜8 の動作を 3 回繰り返す。 作業順序 名称 作動時間・回数 1 リヤウインドーデフォッガー 10秒 2 フロントワイパー LO 5 秒 → HI 5 秒 3 テールランプ、ライセンスプレートランプ、クリアランスランプ 10秒 4 フロントフォグランプ 10秒 5 ヘッドランプ(LO) 10秒 6 ヘッドランプ(HI) ON 2 秒 → OFF 2 秒( 5 回) 7 A/Cコンプレッサー ON 2 秒 → OFF 2 秒( 5 回) 8 クーリングファン A 油圧警告灯 ON 2 秒 → OFF 2 秒 オートアクティブテストが作動している間 点滅している NEWS 2015 10月号 33
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