3月の病害虫発生予想と防除のポイント

3月の病害虫発生予想と防除のポイント
鹿児島県経済連・肥料農薬課
鹿児島県病害虫防除所から発表された病害虫発生予報第 12 号(3 月)を基に,防除のポイントを下
記に取りまとめましたので,防除指導の参考にしてください。
Ⅰ.野菜
作物・病害虫
キュウリ
べ と 病
うどんこ病
褐 斑 病
発生量は平年比較,発生予想の下段(根拠)の(+)は多発要因,
(-)は少発要因を示す
発 生 予 想
防 除 の ポ イ ン ト
やや少
(べ と 病)
2 月の発生:
①多発すると防除は困難になるので,初期防除を徹底する。
べと病:少
②多湿条件で発生しやすいので,ハウス内の通風換気を十
発生ほ場率:低い(-)
分に行う。特に結露が多い場合は強制的に加温機を稼動
発生程度の高いほ場あり
させ,湿度低下を図る。
(+) ③発病葉は早めに除去し,ハウス外に持ち出して処分する。
④肥料切れや草勢の衰えは発生を助長するので,適正な肥
培管理に努める。
⑤既発生圃場では,リドミルゴールド MZ,フェスティバ
ル M,ランマン,ブリザードなどでローテーション防除
し,未発生圃場ではダコニール,ベフドーなどで予防を
行う。
(うどんこ病)
やや少
2 月の発生:やや少
①多発すると防除は困難になるので,初期防除に努める。
発生ほ場率:やや低い(―) ②発生を認めた場合はモレスタン,ジーファイン,トリフ
ミン等治療効果のある薬剤で防除し,その後はアミスタ
ー,ダイマジン,ダコニール,ブリザード,フルピカ,
ベルクート等をローテーション使用して他病害と同時防
除する。
③薬剤は下位葉や葉裏に十分かかるよう丁寧に散布する。
(褐 斑 病)
やや少
褐斑病:やや少
①多発すると防除は困難になるので,初期防除を徹底する。
発生ほ場率:やや少
②多湿条件で発生しやすいので,ハウス内の通風換気を十
発生程度:やや低い(-)
分に行う。特に結露が多い場合は強制的に加温機を稼動
3 月の気象予報
させ,湿度低下を図る。
気 温:高い(+)
③発病葉は早めに除去し,ハウス外に持ち出して処分する。
④窒素肥料の過度な施用は発生を助長するので,適正な肥
培管理に努める。特に茎葉が繁茂する生育中~後期に多
発する傾向があるので注意する。
⑤防除はアミスター,カンタス,ゲッター,セイビアー,
フルピカ,ベルクートなどをローテーション散布する。
(防除薬剤は「24 農薬使用の手引き(野菜編)
」
:P.61~65
参照)
1
野菜(続き)
作物・病害虫
ピーマン
斑 点 病
イチゴ
うどんこ病
発 生 予 想
やや多
(斑 点 病)
2 月の発生:やや多
①多発すると防除は困難になるので,初期防除に務める。
発生ほ場率:やや高い ②多湿条件で発生しやすいので,ハウス内の通風換気を十分
(+)
に行う。
3 月の気象予報
③発病葉はビニール袋等に入れてほ場外へ持ち出して処分
し,菌密度の低下を図る。④成り疲れなどによる草勢低下
により発生しやすいので,適正な肥培管理に努める。
④防除はダコニール 1000,ラリー,カスミンボルドー,アミ
スターオプティ,ドーシャスフロアブルなどをローテーシ
ョン使用し,他病害と同時防除する。
(防除薬剤は「24 農薬使用の手引き(野菜編)
」
:P.155~157
参照)
並
2 月の発生:並
発生ほ場率:並
アザミウマ類
防 除 の ポ イ ン ト
多
2 月の発生:多
発生ほ場率:高い(+)
3 月の気象予報
気 温:高い(+)
(うどんこ病)
①新葉の葉裏に発生しやすいので,早期発見に努め,初期防
除を徹底する。
②発病葉や発病果は伝染源になるので摘葉して処分する。
③窒素肥料の過多や葉が混み合うと多発しやすくなるので,
適切な肥培管理を行う。
④発病を認めたら治療効果のある薬剤を7日おきに散布す
る。
⑤薬剤は葉裏に十分かかるように散布する。防除効果を高め
るためには展着剤を活用する。
⑥防除はストロビー,ダイマジン,パンチョ TF,フルピカ,
モレスタン,カリグリーンなど作用性の異なる薬剤でロー
テーション防除する。薬剤によっては,感受性の低下がみ
られるので,散布後の効果確認に留意する。
(アザミウマ類)
①主な寄生種はヒラズハナアザミウマである。
②ハウスの開口部やサイド等に青色粘着トラップを設置し,
早期発見と初期防除に努める。
③ハウス周辺の雑草は増殖源となるので,除草に努める。
④アザミウマ類は花や新芽の中などに生息するので,薬剤散
布は丁寧に行う。
⑤天敵のチリカブリダニやミツバチ等を放飼しているほ場
での防除は,これらの昆虫に影響の少ない薬剤を選択す
る。
⑥防除は作用性の異なる薬剤でローテーション防除するが,
薬剤によっては,感受性の低下がみられるので,散布後の効
果確認に留意する。
2
野菜(続き)
作物・病害虫
イチゴ
ハダニ類
発 生 予 想
多
2 月の発生:多
発生ほ場率:高い(+)
3 月の気象予報
気 温:高い(+)
施設野菜共通
灰色かび病
並~やや多
(キュウリ,トマ
2 月の発生:
ト,ピーマン,イ
キュウリ:やや多
チゴ,サヤインゲ
トマト,イチゴ,サヤイ
ン)
ンゲン:並
ピーマン:やや少
トマト,イチゴで発生程
度の高いほ場あり(+)
キュウリは発生程度が低
防 除 の ポ イ ン ト
(ハダニ類)
①ハダニ類は発生に気づきにくいので,葉裏をよく観察して
早期発見に努める。
②気温の上昇とともに生息密度が上昇するので,初発に注意
し,初期防除に努める。
③寄生葉や摘葉した葉はほ場外に持ち出し,処分する。
④ハダニ類が増加し,天敵による防除が困難となった場合は
化学農薬による防除を行う。
⑤薬剤散布は,下葉かきを行い,葉裏によくかかるよう行う。
⑥天敵のチリカブリダニやミツバチ等を放飼しているほ場
での防除は,これらの昆虫に影響の少ない薬剤を選択す
る。
⑦防除は作用性の異なる薬剤でローテーション防除するが,
薬剤によっては,感受性の低下がみられるので,散布後の
効果確認に留意する
(防除薬剤は「24 農薬使用の手引き(野菜編)
」
:P.168~174
を参照)
①ハウスの津風換気を十分行い,過失にならないように努め
る。
②果実やへたの部分に付着する花弁は本病の発生源となる
ので,こまめに除去する。
③発病葉や発病果実はビニール袋等に入れてほ場外に持ち
出し,適切に処分する。
④防除はアミスター,カンタス,ゲッター,セイビアー,フ
ルピカなど,作用性の異なる薬剤でローテーション防除す
るが,薬剤によっては,感受性の低下がみられるので,散
布後の効果確認に留意する。
い(-)
3 月の気象予報
気 温:高い(+)
コナジラミ類
並
(キュウリ, メ
2 月の発生:並
ロン,トマト,ミ
キュウリ:並,トマト:
ニトマト,ピーマ
少,ピーマン:やや少,
ン,イチゴ,サヤ
イチゴ:並,サヤインゲ
インゲン)
ン:やや多
イチゴで発生程度の高い
ほ場あり(+)
(コナジラミ類)
①トマト類の黄化葉巻病,ウリ類の退緑黄化病の病原ウイル
スを媒介する。また,サヤインゲンでは莢の白化症,トマ
トでは着色異常果の原因になるので,防除の徹底が必要で
ある。
②ハウスの開口部には必ず防虫網を設置する。
③黄色粘着トラップを設置し,早期発見と初期防除に努め
る。
④ウイルスの発病株は伝染現になるので,疑わしい株も含め
て見つけしだい除去し,ハウス外で埋没あるいはビニール
3
野菜(続き)
作物・病害虫
発 生 予 想
防 除 の ポ イ ン ト
袋等に入れて処分する。
⑤タバココナジラミでは薬剤抵抗性の強いバイオタイプ Q が
ナス,ピーマン,トマト,ミニトマト,キュウリ,イチゴ,
サヤインゲン等で発生している。これにはアファーム,ス
タークル/アルバリン,ベストガード,サンマイト,コロ
マイト,スピノエース,モスピラン等の効果が高いので,
登録を確認して使用する。
防除薬剤は「24 農薬使用の手引き(野菜編)
」
:P.616~69
(キュウリ),P.87~93(メロン)
,P.113~121 (トマト),P.131~137 (ミ
ニトマト),P.156~162 (ピーマン)
,P.168~174(イチゴ)
, P.267~
269(サヤインゲン)参照)
防除に関する今月の留意事項
1.キュウリの植え替え作業時におけるアザミウマ類の防除について
キュウリに寄生するミナミキイロアザミウマは黄化えそ病の病原ウイルスを媒介する。半促成作型
での黄化えそ病の発生を未然に防ぐために,植え替え作業時における本虫の防除を徹底する。
(1)抑制作型は収穫収量まで的確な害虫防除を行う。
(2)収穫終了後は根を引き抜き,株全体を枯死させる。
(3)ハウスの中二重と外張りの間や谷下,暖房機の下などに生えている雑草は,ミナミキイロアザ
ミウマの増殖現になるので,引き抜きや除草剤散布などの除草対策を行う。
(4)雑草対策後はハウスを密閉し,蒸し込みを4日以上行う。
(5)定植時は必ず殺虫剤(粒剤)の植え穴処理を行う。
キャベツ
菌 核 病
やや少
2 月の発生:少
発生ほ場率:低い(-)
3 月の気象予報
気温:高い(+)
エンドウ類
褐紋病・褐斑 やや多
2 月の発生:やや多
病
発生ほ場率:並
3 月の気象予報
気温:高い(+)
(菌核病)
①気温上昇と雨天が続いたときに発生しやすいので,予防散
布に努める。
②病原菌は株元付近から感染することが多いので,薬剤は株
元へ十分かかるように散布する。
③結球始めまでの予防を基本とする。
④防除はスミレックス,カンタス,セイビアー,トップジン
M,ロブラールなどをローテーションで使用する。
(防除薬剤は「24 農薬使用の手引き(野菜編)
」
:P.205~207
参照)
(褐紋病・褐斑病)
①排水不良のほ場では多発しやすいので排水対策に努める。
②未発生ほ場では早期発見に努め,すでに発生しているほ場
では早めに防除を行う。
③防除はアミスター,トップジンMなどで行う。
4
野菜(続き)
作物・病害虫
発 生 予 想
ハモグリバエ やや多
2 月の発生:並
類
発生ほ場率:並
3 月の気象予報
気温:高い(+)
アザミウマ類
多
2 月の発生:多
発生ほ場率:高い(+)
3 月の気象予報
気温:高い(+)
ソラマメ
赤色斑点病
ジャガイモ
疫
病
防 除 の ポ イ ン ト
(ハモグリバエ類)
①寄生種はナモグリバエが主である。
②多発してからの防除は困難なので,初期防除に努める。多
発ほ場では5~7日おきに連続散布し,徹底した防除を行
う。
③防除はアディオン,アファーム,スタークル,パダン,ハ
チハチなどをローテーションで使用する。
(アザミウマ類)
①薬剤のかかりにくい花弁の奥や若莢に寄生するので,薬剤
散布は丁寧に行う。
②防除はモスピラン剤(ラベルで登録内容を確認)などで行
う。
(防除薬剤は「24 農薬使用の手引き(野菜編)
」
:P.248~2250
(サエンドウ),P.255~257(実エンドウ)参照)
(赤色斑点病)
2 月の発生:やや多
①防除薬剤が少ないので圃場の排水対策,肥料切れ防止など
発生ほ場率:やや高い
適切な肥培管理,発病葉の摘除など耕種的な対策に重点を
(+)
おき,発生を抑える。
3 月の気象予報:
②栽培終了後の茎葉は適切に処分する。
気温:高い(+)
③未発生ほ場では早期発見に努め,すでに発生しているほ場
では早めの防除を行う。
④防除はロブラール,グプラビットホルテなどをローテーシ
ョンで使用する。
(防除薬剤は「24 農薬使用の手引き(野菜編)」
:P.261 参照)
(県本土)
:やや多
県本土:並
奄美,熊毛:やや少
県本土
2 月の発生:並
3 月の気象予報:
気温:高い(+)
熊毛
2 月の発生:やや少
3 月の気象予報:
気温:高い(+)
奄美:やや少
3 月の気象予報:
気温:高い(+)
(疫
病)
①降雨が数日続くと発生しやすく,発生すると急激に進展す
るので,防除は予防散布に重点をおき,適期防除に心掛け
る。
②伝染源となる発病株や収穫残渣はほ場外に持ち出して処
分する。
③発生が認められたら直ちに防除を行う。その後は進展状況
に応じて7~10 日後に追加の防除を行う。
④予防にはペンコゼブ(ジマンダイセン),ダコニール,サー
ガ,エムダイファーなど,発病が見られたらフェスティバ
ル含有剤,ホライズン,ランマン,リドミル含有剤などの
ローテーション散布によって,防除を徹底する。
「24 農薬使用の手引き(野菜編)
」
:P.305~307 参照)
降水量:少ない(-)
日照時間:多い(-)
5
Ⅱ.花き(キク)
病 害 虫
白さび病
ハダニ類
Ⅲ.茶 樹
病 害 虫
発生量は平年比較,発生予想の下段(根拠)の(+)は多発要因,
(-)は少発要因を示す
発 生 予 想
防 除 の ポ イ ン ト
(白さび病)
県本土(施設):やや多 ①通風換気に努め,加湿にならないようにする。
県本土
②発病葉は早めに摘み取って施設外に持ち出し,,適正に処
2 月の発生:やや多
分する。
発生ほ場率:やや高い(+) ③防除はジマンダイセン,ストロビー,トリフミン,ベン
レートなどをローテーションで使用する。
(ハダニ類)
県本土(施設):並
2 月の発生:やや少
①出入り口や前作での発生場所近く等で,スポット状に発
発生ほ場率:やや低い(-)
生する場合が多いので,よく観察して発生に注意し,初
3 月の気象予報
期防除に努める。
気温:高い(+)
②圃場内や周辺の雑草,収穫後の残渣等は早めに除去する。
③薬剤は葉裏までよくかかるように散布する。
④防除はコテツ,コロマイト,スターマイト,バロック,
ピラニカ等をローテーションで使用する。
(防除薬剤は「24 農薬使用の手引き(普通作物・花き編)
」
P.119~125(キク)参照)
発生量は平年比較,発生予想の下段(根拠)の(+)は多発要因,
(-)は少発要因を示す
発 生 予 想
カンザワハダ 並
3 月の発生:並
ニ
発生ほ場率:並
寄生葉率:並
3 月の気象予報
気温:高い(+)
防 除 の ポ イ ン ト
(カンザワハダニ)
①平均気温が 10℃を超えると産卵・増殖が盛んとなり,寄
生密度が急増するので発生状況をよく把握する。
②春期防除は,基本的には平均気温が 10℃を超える 3 月
上旬頃までにバロック FL,ダニゲッターFL など残効性
の長い薬剤で防除する。
③春の基幹防除後も発生が多い場合は,一番茶の被害を避
けるため,ダニサラバ FL などで一番茶萌芽前~1葉期
に防除する。
(防除薬剤は「24 農薬使用の手引き(果樹・茶編)P.127
~130,137~138(茶)参照)
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