高温に伴う農作物等の技術対策について 平 成 24 年 7 月 30 日 福井県農業総合指導推進会議 ○熱中症対策 農作業中の熱中症対策として、管理作業は、高温下での長時間作業を避け、涼しい時間 帯に行う。帽子を被り、通気性の良い衣類を着用する。また、無理な作業は避け、水分を こまめに摂り休憩を十分に取るなど健康管理に注意する。 もし体調不良を感じたら、すぐに涼しい場所で安静にし、水分、塩分を補給する。衣類 をゆるめ、脇の下、首筋、股の付け根などに濡れタオル等を当て出来る限り体温を下げる。 Ⅰ 水 稲 1 水管理 (1)高温多照により田面や稲体からの蒸発散が大きいため、田面を白く乾燥させないよ う、きめ細かい水管理(2~3日に1回)を行う。常時湛水や表面の土が白く乾くまで 干すことは、根を傷め、活力低下を招くので行わない。 (2)品質向上のため、入水は可能ならば夜間から早朝の間に行い。夜温を下げて昼夜の 温度差を大きくする。 (3)フェーン現象や強風は、稲体から多量の水分を奪い取り、白穂を発生させることが ある。フェーン現象や強風の日は終日深水管理とする。これらが収まったら直ちに落水 する。 (4)乳白米や胴割米の発生を軽減するため、間断通水を収穫5日前まで行う。早期落水 は登熟不良を招くので行わない。 (5)水不足地域や干ばつが予想される地域は、話し合いにより計画的に配水、節水、取 水制限、排水の再利用などを行う。また、漏水がないよう、止水 対策 を しっ か り行 う 。 (6)干ばつ時に海水遡上による塩類濃度障害が生じる地域では、生育状況に応じて潅水 の可否を判断する。非常時には塩素濃度 1,000ppm 以下で灌水に利用する。 2 適期防除 (1)カメムシ類の活動が活発となり、斑点米発生が懸念されるので適期防除(「穂が出そ ろった頃」と「穂が傾いた頃」の2回)に努める。 3 適期収穫 (1)高温年は、穂軸がまだ緑色であっても籾の登熟が進んだり、穂先と穂首付近とで籾 の登熟程度の差が大きくなりやすい。今後は、登熟程度や籾水分を細かく確認し、刈り 遅れによる品質低下を防ぐ。 (2)地力の低い圃場や葉色の淡い圃場では稲体の活力が低下しやすく収穫時期が早くな る。収穫作業の順序を予め検討して刈り遅れを防止する。 -1- Ⅱ 大 豆 1 大豆は畑作物ではあるものの、過乾燥となると落花、落莢の増加による結莢数の減少、 不稔莢の増加、百粒重の低下等を引き起こし、青立ち株の発生、 収量 低 下に つ なが る 。 2 畝間灌水開始の目安は、1 週間以上降水がなく圃場の溝の面が白く乾いた時とする。 土壌乾燥で葉が裏返って白い葉裏が見えるようになる前にかん水を始める。排水性の悪 い圃場では、逆効果となるため行わない。 3 灌水の時刻は地温の低い夕方または早朝に行い、7 日間隔を目安とする。日中に長時 間滞水すると水温上昇で生育を阻害するので、短時間に終えるようにする。 Ⅲ ソ バ 1 播種にあたっては、土壌の乾燥による発芽不良を防ぐため、条播を基本とし、覆土鎮 圧を確実に行う。土壌に水分がある状態で播種する。 2 乾燥した圃場への表面散播は発芽率が低下するため、播種後にレーキやハロー等によ る浅い耕耘で土壌混和することが必要である。 Ⅳ 野 菜 1 施設(ハウス)の高温対策 (1)連棟ハウスでは谷部のビニールを広く開放する。 (2)遮光資材を被覆(特に日中の高温時間帯)し、施設内気温、作物気温、地温を下げ る。 (3)高温期 に施設内 へ播種や 定植する 場合は、地 温・気温 の低下を 図るため 、定植日 の前後5日程 度は黒寒 冷紗等の 遮光資材 を施設の 屋根にか けておく 。また、播 種前や 定植前に予め 十分かん 水して、 播種・定 植時の土 壌水分を 保つとと もに、播種 ・定植 直後に十分にかん水を必ず行う。 2 土壌水分保持対策 (1)土壌水分の蒸発抑制と地温上昇防止の ため、稲ワラ等 でマルチを厚めに 行う 。 (2)かん水は、夜間か早朝に開始し、できるだけ短時間のうちに終える ようにする。 (3)日中 に遮光資 材を被 覆 して植物体からの 蒸散と土面 からの水 分蒸発を極 力抑制す る。 3 病害虫防除 (1)高温乾燥状態で発生しやすいアブラムシ、アザミウマ類、ハダニ類、ヨトウムシ類 等の害虫の早期防除を徹底する。 (2)高温期の農薬散布は、早朝か夕方の涼しくなってから実施する。植物体がしおれた 状態では薬害がでやすいので特に注意する。 4 その他の対策 (1)キャベツやブロッコリー苗などのセル成型苗等根鉢の小さな苗は、やや深く植え付 けて鉢土の乾燥を防ぐ。畦間灌水は、畦の高さの2/3 程度が、2時間以内に湿るよう に行い、速やかに排水する。畦間かん水した場合は、活着後除草対策を徹底する。 (2)播種したニンジンは、発芽苗立ちを確認するまでは、早朝または夕方にかん水し圃 場を乾燥させないようにする。 -2- (3)播種が始まるダイコンでは、早播きを避ける。また、発芽までは土が乾かないよう に灌水を徹底し、土壌水分を確保する。 (4)ミディトマトは、軟化玉防止のため、35℃以上の高温に 10 時間以上遭遇させない ように換気を徹底する。 (5)トマトやミディトマトのホルモン処理は夕方温度が下がってから行う。また、トマ トでは3段花房以降はジベレリンを加用する。 (6)トマト、ピーマンの尻腐れ果の発生を防止するため、土壌水分を確保するとともに、 カルシウム剤の葉面散布を行う。 (7)ネギは、軟腐病を助長するため畝間灌水を行わない。なお、灌水チューブが使える 圃場では、葉が萎れている場合に少量灌水する。また、生育が進まず土寄せできない場 合は、中耕除草を行う。 (8)サトイモの畝間灌水は、根腐れ防止のため長時間水をためないように注意する。 Ⅴ 花 き 1 灌水は地温や気温が低い時間帯に、灌水チューブやスプリンクラー等で行う。畝間灌 水しか対応できない圃場は、地温が十分低下した日の出前か夜間に、かけ流しで短時間 に行う。 2 キク等では、高温・乾燥により破蕾が遅れ、開花遅延するので、寒冷紗等の遮光資材 で気温低下と蕾付近への散水による開花促進を図る。 3 促成作型のスイセンでは定植後に地温の低下を図り、発根と発芽を促すためスプリン クラーや灌水チューブなどによる散水を行うとともにダイオーネット等で遮光し、地気 温の上昇を防止する。 4 ストックなど高温期に定植する花きは、定植5日前から定植後5日程度、遮光資材を 施設の屋根にかけ、施設内の気温と地温を低下させ、定植後の活着促進を図る。また、 地温上昇防止と土壌水分の保持のため、稲ワラ等でマルチを行う。 5 高温乾燥でハダニ類、アザミウマ類の被害が多くなるので、防除を徹底するとともに、 切り残しの花や付近の雑草も防除するか除去する。 Ⅵ 果 樹 1 かん水および草刈り (1)土壌の乾燥防止に加え、雑草との養水分競合を避けるため、園内の下草刈りを行い、 刈り取った草は、樹冠下にマルチして土壌表面からの蒸散を防ぐ。 (2)晴天日が続く場合のかん水は、土壌条件に適合した内容で行う。 ①粘土や腐植が多く含まれた保水力の高い土壌では、約10日おきに、時間をかけてた っぷりかん水する。 ②砂の割合が高い土壌(=砂土・砂壌土)など保水力の低い土壌では、約5日おきにかん 水する。 ①と②の中間の土(植壌土)では、約7日おきに時間をかけてたっぷりかん水する。 (3)幼木は根が発達しておらず、特に乾燥に弱い。枝の伸びている範囲だけで構わない ので、頻繁(2~3日ごと)にかん水する。 -3- (4)なお、収穫時期が近付いている樹種・品種では、収穫直前のかん水は糖度の低下に つながるので、収穫の7~10日前までにかん水を済ませておく。 2 収穫 なし等の果実の鮮度を保持するために、収穫は早朝の涼しい時間帯に行う。また、収 穫後の果実は直射日光を避け、果実コンテナにムシロなどの日よけをかけて保管する。 収穫後は、すみやかに作業舎等へ持ち帰り、なるべく涼しいところで保管・選果を行う。 3 防除 ハダニ類、スリップス類、カメムシ類は高温・乾燥条件で増加しやすい。特に、微小 なハダニ類は急激に増殖しやすいので、葉裏をルーペなどの拡大鏡を用いて、たびたび 発生状況を確認する必要がある。樹種別では、ナシのカメムシの園内侵入に 注 意す る 。 いずれにしても、害虫の発生が認められた場合は、発生初期に適切な薬剤防除を実施 する。 4 施設管理 イチジクやブドウなどのハウス栽培では、葉焼けなどの高温障害を生じないように、 ハウス内の換気を十分に行う。 5 白干梅の天日干し 強い日射条件の下で天日干しを行うと、急激に果実表面の日焼けが進み、表面に比べ て果肉内部の色づきが遅れ、白干梅の品質評価が低下することがある。 高温・強日射条件下では、寒冷紗等でセイロ全体を覆い、果実に当たる日射を和らげ るなどして、日数をかけて干すことが重要である。短期間で乾燥が進みすぎる場合は、 寒冷紗に加えて(清潔な)ビニールで被覆を行い、ゆっくりと果肉水分の減少が進むよ うに工夫を加える。 Ⅶ 畜 産 1 畜舎管理 ・舎内換気に気をつけ、扇風機や換気扇、通風ダクトの活用により畜舎内に風の流れを 作るとともに、状況に応じ、屋根や畜舎周辺に散水を行う。 ・残飼の腐敗に注意し、除ふん、畜舎の清掃など環境の改善に努める。 ・畜舎通路には物を置かないようにし、畜舎内の風の通りを良くする。 ・寒冷紗などを設置し、西日が差し込まないようにするなど、畜舎の温度を下げる工夫 する。 ・新鮮な水が十分与えられているか、水道や水飲場(ウォーターカップ等)の点検を必ず 実施する。また、飼槽の清掃等に心掛ける。 2 乳牛、肉用牛 ・牛の体温は夜間に上昇するので、夜間送風も必ず実施する。 ・給飼は朝夕の涼しい時期に行い嗜好性の高い良質の飼料給与に努める。特に濃厚飼料 は 3 回以上の多回給餌を行う。 ・給水は冷水を十分に与え、バランスのとれたミネラルの補給やビタミン類の添加を行 う。 -4- ・肉用牛では暑熱によりビタミンAが消耗する場合があるので、異常が見られたら早め に補給することも考慮する。 3 豚、鶏 ・密飼いを避け、散水や噴霧により、畜舎内温度の低下や体温上昇の防止を図る。 ・油脂などの栄養価の高い飼料の給与やビタミン類の補給により、体力低下の防止に努 める。 ・分娩や哺乳中の母豚には首筋に水を滴下するドロップクーリングが効果的である。 ・鶏の羽が風によってなびいたり、逆立ったりしない程度に送風を行い、畜舎内温度の 低下や体温上昇の防止を図る。また、鶏舎床面への散水は、床面がしっとり濡れる程 度を目安とする。 ・産卵率の低下や破損卵の増加を防止するため、飼料中のエネルギーを 3,000kcal/kg 程度に上げる。 4 飼料作物 ・トウモロコシは高温で生育が早まるので、熟期を把握するとともに、乳熟期以降の枯 れ上がりの甚だしいものについては、早めに刈り取り、サイレージ調製後の品質低下、 二次発酵の防止に努める。なお、実施が可能なところでは、地温が低下した夜間や早 朝にスプリンクラー潅水等を行う。 ・牧草類については、降雨まで刈り取りを延期する等、株の枯死防止に努める。 -5-
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