高温・少雨に伴う農作物等の技術対策について 平 成 2 4 年 8 月 9 日 福井県農業総合指導推進会議 <気象概況> 8 月に入ってから気温が高く、降雨が少ない状態が続いている。今後も降雨が無い場合 は、下記の農作物技術対策に留意のうえ、指導の徹底をお願いする。 <対 策> ○熱中症対策 農作業中の熱中症対策として、管理作業は、高温下での長時間作業を避け、涼しい時間 帯に行う。帽子を被り、通気性の良い衣類を着用する。また、無理な作業は避け、水分を こまめに摂り休憩を十分に取るなど健康管理に注意する。 もし体調不良を感じたら、すぐに涼しい場所で安静にし、水分、塩分を補給する。衣類 をゆるめ、脇の下、首筋、股の付け根などに濡れタオル等を当て出来る限り体温を下げる。 Ⅰ 水 稲 ハナエチゼンは、出穂期以降、葉色が薄く高温・少雨が続いており、胴割米の発生が懸 念されるため、本日、 「胴割米発生注意報」を発令した。今後は、水管理や適期収穫を徹底 するとともに、登熟期を迎えているコシヒカリについても、間断通水など十分な水管理を 行う。 1 水管理 (1)乳白米や胴割米の発生を軽減するため、間断通水を収穫 5 日前まで行うこと(早期 落水は登熟不良を招くので、行わない)。 (2)高温多照により田面や稲体からの蒸発散が大きいため、田面が白く乾燥しないよう、 きめこまかい水管理を行う。最低 3 日に 1 回は通水する。常時湛水や表面の土が白く乾 くまで干すことは、根を傷め、活力低下を招くので行わない。 (3)水不足地域や干ばつが予想される地域は、話し合いにより計画的に配水、節水、取 水制限、排水の再利用などを行う。また、漏水がないよう、止水対策をしっかり行う。 (4)干ばつ時に海水遡上による塩類濃度障害が生じる地域では、生育状況に応じて潅水 の可否を判断する。非常時には塩素濃度 1,000ppm 以下で潅水に利用する。 2 適期収穫 (1) 積算気温による刈取適期予測によると、7 月 19 日出穂のハナエチゼンで 8 月 19 日頃から目安である 860℃に達するが、圃場差もあるので、それだけに頼らず、籾水分 が 25%となったのを確認して収穫作業を開始する。 (2)高温が続く場合は、刈り取り適期の幅が短くなるので、計画的な作業により刈り遅 れによる胴割米の発生防止に努める。 Ⅱ 大 豆 1 大豆は畑作物ではあるものの、過乾燥となると落花、落莢の増加による結莢数の減少、 不稔莢の増加、百粒重の低下等を引き起こし、青立ち株の発生、収量低下につながる。 2 畝間灌水開始の目安は、1 週間以上降水がなく圃場の溝の面が白く乾いた時とする。 土壌乾燥で葉が裏返って白い葉裏が見えるようになる前に灌水を始める。排水性の悪い 圃場では、逆効果となるため行わない。 3 灌水の時刻は地温の低い夕方または早朝に行い、7 日間隔を目安とする。日中に長時 間滞水すると水温上昇で生育を阻害するので、短時間にうね間灌水する。 Ⅲ ソ バ 1 播種にあたっては、土壌の乾燥による発芽不良を防ぐため、条播を基本とし、覆土鎮 圧を確実に行う。土壌に水分がある状態で播種する。 2 乾燥した圃場への表面散播は発芽率が低下するため、播種後にレーキやハロー等によ る浅い耕耘で土壌混和することが必要である。 Ⅳ 野 菜 1 施設(ハウス)の高温対策 (1)ハウスのサイド、妻窓、天窓を開放し、換気の促進を図る。 (2)遮光資材を被覆(特に日中の高温時間帯)し、施設内気温、作物気温、地温を下げ る。 2 土壌水分保持対策 (1)土壌 水分の蒸発 抑制と地 温 上 昇 防 止 の た め 、 稲 ワ ラ 等 で マ ル チ を 厚 め に 行 う 。 (2)灌 水 は 、 夜 間 か 早 朝 に 開 始 し、できる だけ短時間 のうちに終 えるように する。 3 病害虫防除 (1)高温乾燥状態で発生しやすいアブラムシ、アザミウマ類、ハダニ類、ヨトウムシ類 等の害虫の早期防除を徹底する。 (2)高温期の農薬散布は、早朝か夕方の涼しくなってから実施する。植物体がしおれた 状態では薬害がでやすいので特に注意する。 4 その他の対策 (1)キャベツやブロッコリー苗などのセル成型苗等根鉢の小さな苗は、やや深く植え付 けて鉢土の乾燥を防ぐ。畦間灌水は、畦の高さの 2/3 程度が、2 時間以内に湿るように 行い、速やかに排水する。畦間灌水した場合は、活着後の除草対策を徹底する。 (2)播種したニンジンは、発芽苗立ちを確認するまでは、早朝または夕方に灌水し圃 場を乾燥させないようにする。 (3)トマトやミディトマトのホルモン処理は夕方温度が下がってから行う。また、トマ トでは 3 段花房以降はジベレリンを加用する。 (4)ネギは、軟腐病を助長するため、基本的に畝間灌水は行わない。なお、灌水チュー ブが使える圃場では、葉が萎れている場合に少量灌水する。また、生育が進まず土寄せ できない場合は、中耕除草を行う。 (5)サトイモの畝間灌水は、根腐れ防止のため長時間水をためないよう注意しながら行 う。 Ⅴ 花 き 1 灌水は地温や気温が低い時間帯に、灌水チューブやスプリンクラー等で行う。畝間灌 水しか対応できない圃場は、地温が十分低下した日の出前か夜間に、かけ流しで短時間 に行う。 2 キク等では、高温・乾燥により破蕾が遅れ、開花遅延するので、寒冷紗等の遮光資材 で気温低下と蕾付近への散水による開花促進を図る。 3 促成作型のスイセンでは定植後に地温の低下を図り、発根と発芽を促すためスプリン クラーや灌水チューブなどによる散水を行うとともにダイオーネット等で遮光し、地気 温の上昇を防止する。 4 ストックなど高温期に定植する花きは、定植 5 日前から定植後 5 日程度、遮光資材を 施設の屋根にかけ、施設内の気温と地温を低下させ、定植後の活着促進を図る。また、 地温上昇防止と土壌水分の保持のため、稲ワラ等でマルチを行う。 5 高温乾燥でハダニ類、アザミウマ類の被害が多くなるので、防除を徹底するとともに、 切り残しの花や付近の雑草も防除するか除去する。 Ⅵ 果 樹 1 灌水および草刈り (1)土壌の乾燥防止に加え、雑草との養水分競合を避けるため、園内の下草刈りを行い、 刈り取った草は、樹冠下にマルチして土壌表面からの蒸散を防ぐ。 (2)晴天日が続く場合の灌水は、土壌条件に適合した内容で行う。 ①粘土や腐植が多く含まれた保水力の高い土壌では、約10日おきに、時間をかけてたっ ぷり灌水する。 ②砂の割合が高い土壌(=砂土・砂壌土)など保水力の低い土壌では、約5日おきに灌 水する。 ①と②の中間の土(植壌土)では、約7日おきに時間をかけてたっぷり灌水する。 (3)幼木は根が発達しておらず、特に乾燥に弱い。枝の伸びている範囲だけで構わない ので、頻繁(2~3日ごと)に灌水する。 (4)なお、収穫時期が近付いている樹種・品種では、収穫直前の灌水は糖度の低下につ ながるので、収穫の7~10日前までに灌水を済ませておく。 2 収穫 果実の鮮度を保持するために、収穫は早朝の涼しい時間帯に行う。また、収穫後の果 実は直射日光を避け、果実コンテナにムシロなどの日よけをかけて保管する。収穫後は、 すみやかに作業舎等へ持ち帰り、なるべく涼しいところで保管・選果を行う。 3 防除 ハダニ類、スリップス類、カメムシ類は高温・乾燥条件で増加しやすい。特に、微小 なハダニ類は急激に増殖しやすいので、葉裏をルーペなどの拡大鏡を用いて、たびたび 発生状況を確認する必要がある。樹種別では、ナシのカメムシの園内侵入に注意する。 いずれにしても、害虫の発生が認められた場合は、発生初期に適切な薬剤防除を実施 する。 4 施設管理 イチジクやブドウなどのハウス栽培では、葉焼けなどの高温障害を生じないように、 ハウス内の換気を十分に行う。 5 白干梅の天日干し 強い日射条件の下で天日干しを行うと、急激に果実表面の日焼けが進み、表面に比べ て果肉内部の色づきが遅れ、白干梅の品質評価が低下することがある。 高温・強日射条件下では、寒冷紗等でセイロ全体を覆い、果実に当たる日射を和らげ るなどして、日数をかけて干すことが重要である。短期間で乾燥が進みすぎる場合は、 寒冷紗に加えて(清潔な)ビニールで被覆を行い、ゆっくりと果肉水分の減少が進むよ うに工夫を加える。 Ⅶ 畜産 1 畜舎管理 ・舎内換気に気をつけ、扇風機や換気扇、通風ダクトの活用により畜舎内に風の流れを 作るとともに、状況に応じ、屋根や畜舎周辺に散水を行う。 ・残飼の腐敗に注意し、除ふん、畜舎の清掃など環境の改善に努める。 ・畜舎通路には物を置かないようにし、畜舎内の風の通りを良くする。 ・寒冷紗などを設置し、西日が差し込まないようにするなど、畜舎の温度を下げる工夫 する。 ・新鮮な水が十分与えられているか、水道や水飲場(ウォーターカップ等)の点検を必 ず実施する。また、飼槽の清掃等に心掛ける。 2 乳牛、肉用牛 ・牛の体温は夜間に上昇するので、夜間送風も必ず実施する。 ・給飼は朝夕の涼しい時期に行い嗜好性の高い良質の飼料給与に努める。特に濃厚飼料 は 3 回以上の多回給餌を行う。 ・給水は冷水を十分に与え、バランスのとれたミネラルの補給やビタミン類の添加を行 う。 ・肉用牛では暑熱によりビタミンAが消耗する場合があるので、異常が見られたら早め に補給することも考慮する。 3 豚、鶏 ・密飼いを避け、散水や噴霧により、畜舎内温の低下や体温上昇の防止を図る。 ・油脂などの栄養価の高い飼料の給与やビタミン類の補給により、体力低下の防止に努 める。 ・分娩や哺乳中の母豚には首筋に水を滴下するドロップクーリングが効果的である。 ・鶏の羽が風によってなびいたり、逆立ったりしない程度に送風を行い、畜舎内温度の 低下や体温上昇の防止を図る。また、鶏舎床面への散水は、床面がしっとり濡れる程 度を目安とする。 ・産卵率の低下や破損卵の増加を防止するため、飼料中のエネルギーを 3,000kcal/kg 程度に上げる。 4 飼料作物 ・牧草類については、降雨まで刈り取りを延期する等、株の枯死防止に努める。
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