政治と地球温暖化問題 第1章 はじめに 第2章 研究の展開

政治と地球温暖化問題
所属:法律・政治系
2年3組15番
第1章
金澤晃汰
はじめに
第1節
主題設定の理由
地球温暖化問題は、世界規模の深刻な問題であり、個人や民間の力だけでは、なかなか
解決に繋がらない。そこで、政治的な視点から、この問題の解決に向けた取り組みを調べ、
考えてみたいと思った。
第2節
研究の内容と方法
地球温暖化問題の現状と、基本的な考え方 、さらには、現在世界で行われている取り組
みを調べた上で、解決に向けた方針を自ら考察した。
研究にあったては、本、インターネットを利用した。
第2章
研究の展開
第1節
1
地球温暖化のメカニズムと影響
地球温暖化のメカニズム
二酸化炭素を初めとする温室効果ガスの大気濃度の上昇により、宇宙へ逃げる熱が減り、
地面へ再放射される熱の量が過度に増えるために、気温が上昇する。この温室効果の影響
で、地球の平均気温は現在約14℃である。
図1
ハワイのマウナロア観測所における
図2
世界の年平均気温の偏差の変化
大気中二酸化炭素濃度変化
(いずれのグラフも「異常気象と人類の選択
1
江守正多」より)
2
地球温暖化の影響
地球温暖化により、生態系や気象などに、さまざ
まな影響が起こる。下に主な例を挙げる。
・生態系の移動がついて行けず、多くの種
が被害を受ける
・地上の氷が溶けて海に流れ出し、また、海水
自体が温められて膨張することによって、海
面が上昇する
・異常気象が多発し、水資源や食料生産への被
害をもたらす
・人間の健康への直接的な被害
図3
毎年9月における北極海の
海氷面積の変化
(「異常気象と人類の選択
第2節
1
江守正多」より)
地球温暖化問題の論じられ方
対策積極派と対策慎重派
地球温暖化の政策論争は、とにかく対策をどんどんやるべきだという「積極論」と 、コ
ストを気にしながら、ほどほどにやるべきだという「慎重論」の対立構造になりがちであ
る。
<積極派の主張>
<慎重派の主張>
温暖化の影響は将来の人類のみならず、
積極派が言っているような大規模な対策
今生きている我々にも莫大な損失を与
には膨大な経済的コストがかかる上に、
えるものである一方、大規模な対策は実
コスト以外にもさまざまな問題があるの
現可能であり、対策の経済的コストはそ
で現実的ではない一方、温暖化の影響に
れほど大きくないどころか、対策を推進
はよいことだってあるし、悪い影響もそ
することで新たなビジネスチャンスも
れほど深刻なものであるかは疑わしい。
うまれる。
この二つの主張は、一方が他方を明確に否定していて、両陣営が対峙すると、お互いに、
自分の主張の裏付けをより多く掲示したり、相手の主張の裏付けを批判的に検討したりと
いった議論が行われる。しかし、こうなってくると話は難しい各論に入っていき、傍らで
見ている素人には、議論を評価することが次第に困難になっていく。
2
環境と開発
発展途上国にとって優先されるのは、地球温暖化問題よりも、経済成長、あるいは飲料
水の確保など生命の維持に関わるような問題である。すると、発展途上国では自国を豊か
にしようとして、過度の森林伐採や焼畑を起こし、森林減少や砂漠化を招くようになり、
その結果、かえって貧困の増大がもたらされる。この負のスパイラルを断ち切るために、
「持続可能な開発」という考え方がある。それは、環境保全と長期経済成長を、相互に対
2
立するものではなく、むしろ相互補完的な依存関係にあるものと考えるのである。
3
誰が対応策を判断するのか?
ここまで、積極派と慎重派の対立構造、環境と開発について述べてきたが、いったい誰
の判断、方針によって舵が取られていくのか。
現実的には、やはり最終的な判断をするのは、国家体制の中の政治家である。しかし、
民主主義を掲げる国家であるならば、政治家だけに判断を委ねるわけにはいかない。そこ
で新たに、
「官僚や学者などの専門家」と「市民」の、どちらの判断が尊重されるべきなの
かという問題が生じる。具体的に言うと、地球温暖化問題は放置すれば悪影響のリスクが
増大する。かといって急激に対策すると別のリスクが生じる。どのリスクをどれくらい受
け入れるかを判断しなければならない。この判断は誰がどうやって行うべきかという問題
である。
ちなみに、今の日本では、
「積極派=市民支持」、
「慎重派=専門家支持」の傾向が強いよ
うである。
素人の意見なんて聞いていたら、感情的で 非
論理的な意見ばかり出てきて判断がめちゃ
くちゃになる。
エリートなんかに判断を任せたら、自分の利権や
専門家
メンツを優先するから市民が犠牲にされる。
図4
第3節
1
市民
専門家と市民の双方の主張のイメージ
世界規模での取り組み
京都議定書
1997年、京都にて「COP13」が開かれ、初めて国や地域ごとの温室効果ガス排
出量削減目標を盛り込んだ「京都議定書」が採択された。それは、1990年を基準とし、
2008年から2012年の5年間に、先進国全体として温室効果ガス排出量を、少なく
とも5%削減するというものであった。以下にこの議定書の主な特徴を挙げる。
・先進国を対象とした(つまり、中国やインドは含まれなかった)が、2000年 ア
メリカは、経済発展への影響を理由に、国際的合意の枠組みから離脱。
・
「京都メカニズム」という、削減目標を達成できなかった国が、達成できた国から排
出権を買うことができる仕組みの存在。
→A国において、温室効果ガス排出量が増えたとしても、B国から排出権を買う
ことで、A国は目標の「達成」が可能となる。
果たして結果はどうであったのだろうか。日本の温室効果ガス排出量は、1990 年比
で7.4%の増加であったが、森林による吸収分と、海外から買った 排出権で、結果とし
3
て8.2%減で、京都議定書の削減目標を「達成」したことになった。単に温室効果ガス
排出量だけを見ると、オーストラリア、オランダ、カナダなどは大幅増加 であるが、イギ
リス、ドイツを初めとするEU諸国(しかもEUは、1990年から2011年の間に国
内総生産を伸ばしている)、ロシアなどは減少傾向にある。この議定書の成果として、先進
国全体の温室効果ガス排出量は削減目標を達成した。
2
COP15
「COP15」というのは、2009年12月にデンマークのコペンハーゲンで開催さ
れた15回目の締結国会議(COP)である。目的は、2013年以降の、温室効果ガス
排出量削減に関する枠組みである「ポスト京都」の構築であった。この会議の最大のポイ
ントは、中国やインドなど、京都議定書では発展途上国として、温室効果ガス排出量削減
義務を負わない国々を、いかにして枠組みに組み込むか ということであった。会議は、先
進国と発展途上国(発展途上国の言い分は、今まで多くの温室効果ガスを排出してきたの
は現在の先進国であり、先進国だけで温室効果ガスを削減すべきだ) との意見が激しく対
立し、最終日にようやく「コペンハーゲン合意(協定)」なるものをまとめた。しかし、内
容は、
「世界全体の長期目標として、産業革命前からの気温上昇を2℃以内に抑える」とか、
「先進国による新興国への支援」などというように、実効性に乏しいものであり、当初期
待されていた、法的拘束力をもった削減義務の枠組みは 、取り入れられなかった。
この反省を生かし、2012年11月、12月にカタールのドーハで開催された 「CO
P18」では、京都議定書の第二約束期間(2013年~2020年)の削減目標を定め
たが、日本を含む複数の国が不参加で、世界各国の足並みは依然としてそろっていない。
第3章
第1節
おわりに
まとめ
第2章で、地球温暖化問題の現状と論じられた、世界の取り組みについて調べてきた。
以下にその内容をまとめる。
・地球温暖化問題は、対策積極派と慎重派、環境と開発、専門家と市民など、明確な対
立構造が生じ、双方の同意を得て議論を前進させることが難しい。
・京都議定書では、先進国の温室効果ガス排出量削減目標を定めたものであって、現在
世界の温室効果ガス排出量の大部分を占める中国、インドが対象国となっていない。
その結果、先進国全体としては目標を達成したが、地球の温室効果ガス排出量は増加
している。また、京都メカニズムによって、温室効果ガス排出権を他国から買うこと
ができる。
・COP15では、先進国と発展途上国の意見が激しく対立し、最終的にコペンハーゲ
ン合意(協定)という実効性の乏しい取り決めに行き着いた。
・COP18では、京都議定書の第二約束期間が定められたが、日本などの不参加もあ
り、世界各国の足並みは依然としてそろっていない。
4
第2節
考察
地球温暖化という世界全体の問題であるのに、各国のさまざまな事情が巻き付いている
がために、地球温暖化問題解決に向けた各国 の足並みがそろわないのであろう。例えば、
アメリカが京都議定書を批准しなかったのは、自国の経済的理由だし、発展途上国が、温
室効果ガス排出量削減目標を義務づけられるのを拒むのは、先進国が以前から多くの温室
効果ガスを排出してきたという歴史的理由である。
しかし
EUが経済成長と温室効果ガス排出量削減の両立をはかることができた今、もはや、 そ
の経済的理由は、国際社会の場では通用しないのではないだろうか 。先進国の温室効果ガ
ス排出量が減少し、発展途上国の温室効果ガス排出量が大幅に増加している今、もはや、
その歴史的理由は、単なる責任転嫁ではないだろうか。
だから
政治と地球温暖化問題は切り離して考えるべきだ。オリンピックが政治の垣根を越えた
スポーツの祭典であるならば、地球温暖化問題も、政治の垣根を越えて取り組まれるべき
世界全体の問題だ。
第3節
感想
私は、環境問題は、一番優先して取り組まれるべき問題であると思うが、最近は数年前
に比べて、環境問題に対する世間の関心が薄い気がする。だからこそ今回、環境問題につ
いてもう一度自分なりに調べ、考えてみたいと思ってこの論文を創った。
研究を進めている過程で、「環境政治入門」(松下和夫)という本の中で次のような印象
に残った言葉があった。
「軍事的な対立がゼロサム・ゲーム(いっぽうが勝てば他方が負け
る)であるのに対し、環境協力はプラスサム・ゲーム(双方にとって利益がある)とする
ことができるのである。」世界的に環境協力ができるようにまでに、多少の努力や犠牲がい
るかもしれないが、それを超えられたら、本当にプラスサム・ゲームが待っていると思う。
*参考文献
・松下和夫著「環境政治入門」平凡社新書、2000年5月23日
・江守正多著「異常気象と人類の選択」角川 SSC 新書、2013年9月25日
・池上彰、手嶋龍一著「武器なき“環境”戦争」角川 SSC 新書、2010年9月29日
・長野県地球温暖化防止活動推進センター
・気候ネットワーク
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・株式会社ユニバース
・環境省
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