VOL36NO.3/2013 日本心脈管作動物質学会 ISSN 0911-4637 ・ 総 編 集 長 岩 尾 洋(大阪市立大学大学院医学研究科分子病態薬理学) ・ ベ ー シ ッ ク 編 集 長 玉 置 俊 晃(徳島大学大学院病態情報医学講座情報伝達薬理学分野) ・ オ ミ ッ ク ス 編 集 長 田 中 利 男(三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス) ・ ク リ ニ カ ル 編 集 長 伊 藤 正 明(三重大学大学院医学系研究科循環器内科学) 編集委員 (ABC順) 藤田 浩,福田 昇,古川安之,林 晃一,林登志雄,平田恭信,飯野正光,池田宇一, 今泉祐治,伊藤 宏,伊藤正明,伊藤猛雄,岩尾 洋,松原達昭,松崎益徳,三浦総一郎, 宮内 卓,中木敏夫,中村真潮,中尾一和,錦見俊雄,大橋俊夫,岡村富夫,大柳光正, 末松 誠,高橋和広,高橋克仁,田中利男,山崎峰夫,柳沢輝行,吉村道博,由井芳樹 学会案内 第43回日本心脈管作動物質学会 「心脈管作動物質研究の将来展望」 会 期:2014年2月15日㈯∼2月16日㈰ 会 場:神戸国際会議場 (〒650-0046 神戸市中央区港島中町6-9-1) 会 長:平田 健一 (神戸大学大学院医学研究科 内科学講座循環器内科学分野) 実行準備委員会:事務局長 石田 達郎 (神戸大学大学院医学研究科 内科学講座循環器内科学分野) 事 務 局:〒650-0033 神戸市中央区江戸町85-1 ベイ・ウイング神戸ビル10階 ㈱プロアクティブ内 TEL 078-332-2505(平日9:30 ∼ 18:00) FAX 078-332-2506 E-mail:[email protected] 大会ホームページ http://www.pac.ne.jp/jscr43/ 会場アクセス ─1─ ◆プログラム ………………………………………………………………………………………………… 2月15日(土) ●特別講演 「食塩感受性高血圧の分子機序 ∼エピジェネティクス∼」 演者:藤田 敏郎 先生 (東京大学先端科学技術研究センター臨床エピジェネティクス講座 教授) ●シンポジウム1 「動脈硬化の最新知見」 オーガナイザー:佐田 政隆 (徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学) イブニングセミナー,一般演題(ポスター発表)ほか 2月16日(日) ●シンポジウム2 「RAAS研究のニューパラダイム」 オーガナイザー:西山 成 (香川大学医学部 形態・機能医学講座 薬理学) ●シンポジウム3 「臓器連関のメディエーター」 オーガナイザー:伊藤 正明 (三重大学 循環器・腎臓内科学) モーニングセミナー,ランチョンセミナー,口頭発表(YIA)など ─2─ ◆事前参加申し込み ………………………………………………………………………………………………… ●参 加 費 ※発表をする学生および学部学生は無料です. 事前登録 当日登録 一 般 4,000 円 5,000 円 評 議 員 5,000 円 6,000 円 大学院生・研修生 2,000 円 3,000 円 ●申込み方法 事前参加ご希望の方は,下記の大会ホームページから受付いたします. 「事前参加申し込み」ページのエントリ−フォームから,必要事項をご入力いただ き,登録を行ってください.登録完了後,確認メールが自動配信されます. (確認メールが届かない場合は,お手数ですが事務局までご連絡お願いします) 参加費は学会当日に,受付にてお支払いください.尚,大学生は身分確認の為学生 証を提示していただきますので必ず持参ください. 事前登録は12月25日(水)17:00までとなります. 大会ホームページ http://www.pac.ne.jp/jscr43/ ◆演題申し込み 一般演題(ポスター),研究奨励賞(YIA)(口演) ………………………………………………………………………………………………… ●発表資格 学会の演者はすべて本学会員に限ります.未加入の方は日本心脈管作動物質学会 へ入会手続きを行ってください.また,今年度会費未納の方は早々に納入してくだ さい. ●演題申込み方法 メールにて受付いたします.大会ホームページの「演題申し込み」から申込用紙 をダウンロードの上,必要事項をご入力いただき,添付ファイルとしてお送りくだ さい. メール送信の際,件名に「演題申込」とご記入ください.登録完了後,事務局よ り確認メールをお送りいたします。 (申込後1週間経過しても確認メールが届かな い場合は,お手数ですが事務局までご連絡お願いします) ※抄録集はいただいたデータを元に作成いたします. ●演題分類表 1.心臓 2.血管 3.腎臓 4.代謝 5.中枢神経 6.その他 文字数などの作成要綱は,ダウンロードした申込用紙にてご確認ください. ●提出先と受付期間 第43回日本心脈管作動物質学会 準備事務局 E-mail:jscr43@pac.ne.jp 受付期間:10月15日(火)必着 ─3─ 《日本心脈管作動物質学会の入会および各種届出について》 1.年会費:4,000円 2.期 間:加入(会費納入)した年の12月31日まで. 3.機関誌: 「血管」を年4回送付します.本年度は1号が学会抄録号となります. 4.総 会:年1回開催します.学会の演題申込者はすべて本会会員に限ります. 5.入会手続き:本学会入会希望者は,学会HP内の各種届出用紙より,入会申し込み用紙をダウンロー ドし,必要事項を記入した用紙をメールまたはFax(059−232−1765)にて事務局までご送付くだ さい.また,下記郵便口座あてに年会費4,000円をお払い込みください. 6.雑誌送付先などに変更が生じた場合はすみやかに事務局までお知らせください. 《振 込 先》 【ゆうちょ銀行からの振込口座】 郵便振替口座:00900−8−49012 加入者名:日本心脈管作動物質学会 【その他の金融機関からの振込口座】 ゆうちょ銀行 店 番:099〔ゼロキュウキュウ店〕 預金種目:当座 口座番号:0049012 受取人名:ニホンシンミャクカンサドウブッシツガッカイ 《 「お知らせ」の掲載について》 本誌では, 「血管」に関連した学会および学術集会(国内外,規模の大小は問いません. )の案内を, 無料掲載いたします.ご希望の方は,締切日までに原稿を事務局へお送りください.(締切日等は事 務局へご確認ください.) 〒514-8507 三重県津市江戸橋2丁目174番地 三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス分野 日本心脈管作動物質学会事務局 TEL 059−231−5411 FAX 059−232−1765 http://jscr21.medic.mie-u.ac.jp/ [email protected] ─4─ 血管 VOL.36 NO.3 2013 JAPANESE JOURNAL OF CIRCULATION RESEARCH 編集・刊行/日本心脈管作動物質学会 ■学会賞受賞論文 アドレノメデュリン-RAMP2システムは,小胞体ストレス誘導性細胞死を抑制し, 腎保護的に働く 植竹 龍一……………………………………………………………………………… 89 動脈形成に関与する新規BMP9/BMP10依存的血管内皮遺伝子の同定 染川 智,坂部 正英,林 寿来,稲田 賢,佐藤 玄基,上村 史朗, 中川 修,斎藤 能彦………………………………………………………………… 95 ■総 説 受容体直接結合蛋白によるアンジオテンシンAT1受容体情報伝達系抑制 システムの血圧調節および心血管系障害における病態生理学的意義について 田村功一,涌井広道,出島 徹,東 公一,大澤正人,小豆島健護, 畝田一司,小林 竜,大城光二,前田晃延,金岡知彦,鶴見-池谷裕子, 松田みゆき,梅村 敏………………………………………………………………… 103 ■世界の研究室便り ノースカロライナ州・NIEHS/NIHに留学して 堀ノ内 裕也 ………………………………………………………………………… 113 ─5─ Japanese Journal of Circulation Research VOL.36 NO.3 2013 JAPANESE JOURNAL OF CIRCULATION RESEARCH ■ Young Investigator Research Awards Adrenomedullin-RAMP2 system suppresses ER stress-induced cell death and works for kidney protection Ryuichi Uetake ………………………………………………………………………… 89 Identification of A Novel BMP9/BMP10-dependent Endothelial Gene Essential for Arterial Development and Morphogenesis Satoshi Somekawa, Masahide Sakab, Hisaki Hayashi, Ioka, Ken Inada, Genki E. Sato, Shiro Uemura, Osamu Nakagawa and Yoshihiko Saito ………… 95 ■ Review Putative function and cardiovascular significance of angiotensin II receptor-binding molecule ATRAP/Agtrap Kouichi TAMURA, Hiromichi WAKUI, Toru DEJIMA, Koichi AZUMA, Masato OHSAWA, Kengo AZUSHIMA, Kazushi UNEDA, Ryu KOBAYASHI, Koji OHKI, Akinobu MAEDA, Yuko TSURUMI-IKEYA, Miyuki MATSUDA, Satoshi UMEMURA ………………………………………………………………… 103 ■ Research Laboratories over the World Yuya Horinouchi ……………………………………………………………………… 113 ─6─ 血管Vol.36 No.3 2013 クリニカル───────────────────────────── 日 本 心 脈 管 作 動 物 質 学 会 研究奨励賞受賞論文 1 アドレノメデュリン−RAMP2システムは, 小胞体ストレス誘導性細胞死を抑制し,腎保護的に働く 植竹 龍一, 桜井 敬之,神吉 昭子,新藤 優佳,河手 久香,吉沢 隆浩,小山 晃英, 家里 康弘, 楊 磊,鳥山 佑一,山内 啓弘,五十嵐 恭子,田中 愛,新藤 隆行 信州大学大学院医学系研究科 循環病態学講座 機能を調整していると考えられている8. はじめに AM−/− が 致 死 と な る 発 生 段 階 の 血 管 に お い て アドレノメデュリン(adrenomedullin:AM)は,ヒ RAMP各 サ ブ ア イ ソ フ ォ ー ム の 発 現 を 検 討 し た と こ ト褐色細胞種から血管拡張因子として発見された生理活 ろ,RAMP2の発現が亢進していたことから,我々は, 1 性ペプチドである .AMは,血管をはじめ心臓,腎臓, RAMP2の機能に注目した.実際にRAMP2ノックア 肺など全身に広く分布している.血中AM濃度は,高血 ウトマウスを作成してみると,RAMP2−/−はAM−/− 圧,心不全,腎不全などの病態において,その重症度に と類似の表現形により胎生致死となった9.この結果か 応じて上昇することが報告されている.特に,腎疾患に ら,発生におけるAM-RAMP2システムの重要性が明 関しては,血中AM濃度が,慢性腎臓病(CKD)の長期 らかとなった.一方で,AMとRAMP2は成体の各臓器 予後を予測する最も感受性の高いパラメーターとなるこ (肺,心臓,腎臓など)においても発現しているが,こ 2 とが報告されており ,AMは腎臓において重要な病態 れらの病態生理学的意義については不明点が多い. 生理学的意義を有することが示唆されている.遺伝子操 本 研 究 で は,RAMP2 ヘ テ ロ ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス 作マウスを用いた検討では,AMホモノックアウトマウ (RAMP2+/−)と野生型マウスを用いて腎障害モデ ス(AM−/−)は血管形成異常や浮腫により胎生致死 ルを作成し,腎臓におけるAM-RAMP2システムの病 となることから,AMが血管新生作用を有することも明 態生理学的意義を検討した. 3 らかとなった .AMヘテロノックアウトマウス (AM+/−) は成体が得られるが,心血管系にストレスを加えた際に, 心肥大と線維化,腎障害,動脈硬化の亢進を認めた4−6. これに対し,AM過剰発現マウスは臓器障害や動脈硬化 実験方法 1)Streptozotocin(STZ)モデル 7 に抵抗性を示す ことから,AMは,血管や臓器の保護 生後4週齢のマウスに250mg/kgのSTZを単回腹腔 作用を有することも示唆されている. 内投与した後,4週間後と12週間後に安楽死させて腎 一方,AMの受容体システムには巧妙な制御系が存在 臓を採取した. している.AMは,カルシトニン,カルシトニン遺伝子 関連ペプチド(CGRP),インターメディン,アミリン 2)Tunicamycin(TUN)モデル などと共に,スーパーファミリーを形成する.これらの 生後8週齢のマウスに0.5mg/kgのTUNを単回腹腔 一連の因子は,Gタンパク共役型受容体である,CLR 内投与した後,4日後に安楽死させて腎臓を採取した. (calcitonin receptor-like receptor)を受容体として共 用している.CLRには,複数存在する1回膜貫通型タン 3)細胞培養 パク,RAMP(receptor activity-modifying protein)サ 培養ヒト近位尿細管上皮細胞(RPTEC) に,STZ10mM ブアイソフォームのうちいずれか1つが結合し,受容体 あるいはSTZ10mM+AM 10-7Mを投与して,TUNEL 染色により細胞死を,ウェスタンブロット法により小 胞体(ER)ストレス関連因子の評価を行った. *信州大学大学院医学系研究科 循環病態学講座 (〒390−8621 長野県松本市旭3−1−1) ─ 89 ─ アドレノメデュリン−RAMP2システムは,小胞体ストレス誘導性細胞死を抑制し,腎保護的に働く ファジーが亢進している可能性を考えた.そこで,細 4)AM治療実験 TUNを投与する1週間前から,マウスに浸透圧ポ 胞内の異物蓄積により誘導される,小胞体(ER)スト ンプ(Alzet Model 2002)を用いて0.05μg/kg/minの流 レス応答(unfolded protein response;UPR)に着目し, 速でAMの持続投与を開始した.1mg/kgTUNを単回 解析を進めた. 腹腔内投与し,4日後に安楽死させて腎臓を採取した. RPTEC にSTZ投 与 を 行 な う と,ERス ト レ ス セ ン サータンパクの一つであるPERKの活性化(Figure3) や,その下流因子であり,細胞死を誘導する因子である 結果 CHOPの発現亢進(Figure4)がウェスタンブロット法 RAMP2+/−マウスの腎臓におけるRAMP2の発現 で確認された.一方,STZと同時にAMを添加した細胞 は,野生型マウスの約1/2に低下していた.STZ投与 では,PERKの活性化やCHOPの発現が抑制された. モデルにおいて,野生型とRAMP+/−の血糖値に有意 そこで,AMによる尿細管細胞死の抑制効果が,ER 差はなかった.STZ投与12週間後の時点において,糖尿 ストレス-UPR系に特異的な作用であるか確認するた 病性腎症に特徴的な糸球体病変について検討を行ったが, め,次に,ERストレスを直接惹起させる薬剤である 両者のメサンギウム領域の面積などには有意な差は認め Tunicamycin(TUN)を用いた検討を行った.TUNを られなかった. マウスに投与したところ,RAMP2+/−では野生型に 予想外なことに,RAMP2+/−の腎臓では,STZ投 比較して,BUNやクレアチニンの上昇を認めた.更に 与4週間後の時点において,尿細管細胞の空砲変性が RAMP2+/−では,病理所見で尿細管細胞の顕著な空 認められた(Figure1A) .電顕では,刷子縁の破綻を 胞変性(Figure5A)と,腎臓のリアルタイムPCR解析 伴う近位尿細管の障害が確認された(Figure1B).更 でERストレスにより誘導される因子であるBiPやCHOP にTUNEL染色により,尿細管細胞死の亢進が確認され の発現上昇が確認された(Figure5B) . た.こうしたRAMP2+/−での尿細管病変は,インス 最後に,AM-RAMP2システムを活性化することで, リン投与により血糖値を正常化しても認められた.従っ ERストレスにより引き起こされる腎障害を抑制できる てRAMP2+/−における尿細管病変は,高血糖以外の か検討するため,野生型マウスに対して,浸透圧ポンプ 原因が予想された. によるAMの持続投与実験を行った.AMを投与した群 我々は,STZによる尿細管細胞への直接の影響の可能 では,TUN投与により引き起こされる尿細管の空胞化 性を考え,これを検証するため,次にヒト近位尿細管上 が抑制され(Figure6A),TUNEL染色での細胞死の抑 皮細胞(RPTEC)を用いて,STZを直接添加したとき 制が確認された(Figure6B) .リアルタイムPCRによ の影響を検討した.STZはグルコースとニトロソウレア る検討では,BiPやCHOPが抑制されることが確認された. からなる化合物であり,グルコーストランスポーターの A 一つであるGLUT2により細胞内に取り込まれる10.細 Wild 胞内に取り込まれたSTZはDNAをアルキル化すること RAMP2+/- 11 により細胞を障害する .膵β細胞はGLUT2を有する ため,従来STZ投与モデルは,膵β細胞破壊によるI型 糖尿病モデルとして利用されてきた.我々は,尿細管細 胞もGLUT2を有する可能性を考えた.そこでRPTEC 50m においてRT-PCRを行ったところ,GLUT2の発現が確 認された.実際に,RPTECにSTZを添加してTUNEL染 色を行ってみたところ,細胞死の増加が確認された.一 方,STZと同時にAMを添加したところ,細胞死が抑制 B Wild RAMP2+/- された. 次に,尿細管細胞死の原因を検討した.STZ投与後 のRAMP2+/−の尿細管細胞では,オートファゴソー ムのマーカーであるLC3免疫染色陽性粒子の増加を認 め(Figure2A, B) ,電顕においてもオートファゴソー ムの増加が確認された(Figure2C) .この所見から, RAMP2+/−では,細胞内の異物蓄積により,オート ─ 90 ─ 10m Figure1 血管Vol.36 No.3 2013 役割を持つことを報告してきた12, 13.本研究では,AM- 考察 RAMP2システムが,腎臓においてもその恒常性維持 我々はこれまでに,血管内皮細胞特異的RAMP2ノッ において重要な役割を持つことを明らかとした. クアウトマウスや,心筋細胞特異的RAMP2ノックア これまでに,AMは活性酸素種の産生抑制や炎症抑制 ウトマウスを用いた検討から,AM-RAMP2システムが, 作用により,臓器保護的に働くことが報告されている. 血管の恒常性維持や心筋細胞のエネルギー代謝に重要な 本研究では,AM-RAMP2システムの新しい機能とし Figure2 A Vehicle B STZ10mM AM 10-7M STZ10mM +AM 10-7M BiP ATF6 2.0 2.0 1.0 1.0 0 0 15 p-PERK/PERK * 1.5 BiP ATF6 p-PERK PERK p-IRE1 10 1.0 5 0.5 0 0 IRE1 -Tubulin Vehicle STZ 10mM Figure3 ─ 91 ─ p-IRE1/IRE1 * AM 10-7M STZ 10mM+AM 10-7M アドレノメデュリン−RAMP2システムは,小胞体ストレス誘導性細胞死を抑制し,腎保護的に働く て,尿細管のERストレスを抑制することにより,腎保 テムであり,新たな治療標的として注目される. 護的に働く作用を明らかとした.4-phenylbutyric acid (4 -PBA) やTauroursodeoxycholic acid(TUDCA) などのケミカルシャペロンは,ERストレス-UPR系を制 本研究の臨床応用への期待 御することで,臓器保護作用を示す化合物であり,治療 近年,インドキシル硫酸などの尿毒素や慢性的なタ 応用が期待されている.AM-RAMP2システムは,ER ンパク尿は,尿細管細胞においてERストレスを惹起し, ストレス-UPR系を制御し臓器保護的に働く内因性シス 細胞死を誘導することによりCKDの進展に寄与するこ B A Vehicle AM 10-7M p-eIF2/eIF2 STZ10mM STZ10mM +AM 10-7M 4.0 3.0 2.0 1.0 0 15 p-eIF2 10 5 eIF2 ATF4 0 CHOP ATF4 40 CHOP *** Vehicle AM 10-7M 30 -Tubulin 20 STZ 10mM 10 STZ 10mM +AM 10-7M 0 Figure4 A Wild A RAMP2+/- Control TUN 100m 100m B B BiP * 3.0 4.0 Control TUN TUN+AM CHOP 3.0 2.0 2.0 1.0 0 TUN+AM 50m 1.0 Control TUN 0 Control Wild TUN RAMP2+/- Figure5 ─ 92 ─ Figure6 血管Vol.36 No.3 2013 1310−1315 とが報告されている14,15.従って,本研究で明らかとなっ たAM-RAMP2システムを介したERストレス-UPR系 8.McLatchie LM,Fraser NJ,Main MJ,Wise A,Brown J, Thompson N,Solari R,Lee MG,Foord SM.Ramps regulate の制御系は,CKDの新たな治療標的となる可能性があ the transport and ligand specificity of the calcitonin receptor る.しかし,AMのような生理活性ペプチドは血中半減 like receptor.Nature.1998;393:333−339 期が短く,投与経路も限られるため,AMそのものを 9.Ichikawa Shindo Y,Sakurai T,Kamiyoshi A,Kawate H, 慢性疾患の治療に用いるには制約がある.今後,CLR- Iinuma N,Yoshizawa T,Koyama T,Fukuchi J,Iimuro S, RAMP2型受容体の構造解析や,特異的アゴニストの Moriyama N,Kawakami H,Murata T,Kangawa K,Nagai 開発により,血中半減期や投与経路の問題が解決されれ R,Shindo T.The gpcr modulator protein ramp2 is essential for angiogenesis and vascular integrity.J Clin Invest.2008; ば,CKDの新たな治療法開発に繋がることが期待される. 118:29−39 謝辞 10.Schnedl WJ,Ferber S,Johnson JH,Newgard CB.Stz 本稿を執筆する機会を与えて頂いた心脈管作動物質学 expressing cells.Diabetes.1994;43:1326−1333 会に深謝致します. 11.Szkudelski T.The mechanism of alloxan and streptozotocin transport and cytotoxicity.Specific enhancement in glut2 action in b cells of the rat pancreas.Physiological research/ Academia Scientiarum Bohemoslovaca.2001;50:537−546 12.Koyama T,Ochoa Callejero L,Sakurai T,Kamiyoshi A, 引用文献 Ichikawa Shindo Y,Iinuma N,Arai T,Yoshizawa T,Iesato Y,Lei Y,Uetake R,Okimura A,Yamauchi A,Tanaka M, 1.Kitamura K,Kangawa K,Kawamoto M,Ichiki Y,Nakamura S,Matsuo H,Eto T.Adrenomedullin:A novel hypotensive Igarashi K,Toriyama Y,Kawate H,Adams RH,Kawakami peptide isolated from human pheochromocytoma.Biochem H,Mochizuki N,Martinez A,Shindo T.Vascular endothelial Biophys Res Commun.1993;192:553−560 adrenomedullin ramp2 system is essential for vascular integrity and organ homeostasis.Circulation.2013;127:842− 2.Kronenberg F.Emerging risk factors and markers of chronic 853 kidney disease progression.Nat Rev Nephrol.2009;5:677− 13.Yoshizawa T,Sakurai T,Kamiyoshi A,Ichikawa Shindo 689 Y,Kawate H,Iesato Y,Koyama T,Uetake R,Yang L, 3.Shindo T,Kurihara Y,Nishimatsu H, Moriyama N,Kakoki M, Wang Y,Imai Y,Ebihara A,Kuwaki T,Ju KH,Minamino N, Yamauchi A,Tanaka M,Toriyama Y,Igarashi K,Nakada T, Kangawa K,Ishikawa T,Fukuda M,Akimoto Y,Kawakami Kashihara T,Yamada M,Kawakami H,Nakanishi H,Taguchi H,Imai T,Morita H,Yazaki Y,Nagai R,Hirata Y,Kurihara R,Nakanishi T,Akazawa H,Shindo T.Novel regulation of H.Vascular abnormalities and elevated blood pressure in mice cardiac metabolism and homeostasis by the adrenomedullin lacking adrenomedullin gene.Circulation.2001;104:1964− receptor activity modifying protein 2 system.Hypertension. 2013;61:341−351 1971 4.Shimosawa T,Shibagaki Y,Ishibashi K,Kitamura K, 14.Kawakami T,Inagi R,Wada T,Tanaka T,Fujita T,Nangaku Kangawa K,Kato S,Ando K,Fujita T.Adrenomedullin, M.Indoxyl sulfate inhibits proliferation of human proximal an endogenous peptide,counteracts cardiovascular damage. tubular cells via endoplasmic reticulum stress.Am J Physiol Renal Physiol.2010;299:F568−576 Circulation.2002;105:106−111 5.Nishimatsu H,Hirata Y,Shindo T,Kurihara H,Kakoki M, 15.Ohse T,Inagi R,Tanaka T,Ota T,Miyata T,Kojima I, Nagata D,Hayakawa H,Satonaka H,Sata M,Tojo A,Suzuki Ingelfinger JR,Ogawa S,Fujita T,Nangaku M.Albumin E,Kangawa K,Matsuo H,Kitamura T,Nagai R.Role of induces endoplasmic reticulum stress and apoptosis in renal endogenous adrenomedullin in the regulation of vascular tone proximal tubular cells.Kidney Int.2006;70:1447−1455 and ischemic renal injury:Studies on transgenic/knockout mice of adrenomedullin gene.Circ Res.2002;90:657−663 6.Niu P,Shindo T,Iwata H,Iimuro S,Takeda N,Zhang Y,Ebihara A,Suematsu Y,Kangawa K,Hirata Y,Nagai R.Protective effects of endogenous adrenomedullin on cardiac hypertrophy,fibrosis,and renal damage.Circulation.2004; 109:1789−1794 7.Imai Y,Shindo T,Maemura K,Sata M,Saito Y,Kurihara Y, Akishita M,Osuga J,Ishibashi S,Tobe K,Morita H,Oh hashi Y,Suzuki T,Maekawa H,Kangawa K,Minamino N,Yazaki Y,Nagai R,Kurihara H.Resistance to neointimal hyperplasia and fatty streak formation in mice with adrenomedullin overexpression.Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2002;22: ─ 93 ─ アドレノメデュリン−RAMP2システムは,小胞体ストレス誘導性細胞死を抑制し,腎保護的に働く ─ 94 ─ 血管Vol.36 No.3 2013 オミックス───────────────────────────── 日 本 心 脈 管 作 動 物 質 学 会 研究奨励賞受賞論文 2 動脈形成に関与する 新規BMP9/BMP10依存的血管内皮遺伝子の同定 染川 智1)2),坂部 正英3),林 寿来3),稲田 賢3),佐藤 玄基3), 上村 史朗1),中川 修3),斎藤 能彦1)2) 1) 奈良県立医科大学 第一内科,2)奈良県立医科大学 血圧制御学講座,3)奈良県立医科大学 循環器システム医科分野 た,動脈形成にはNotchシグナルやAktシグナルの活性 抄録 化が重要であることが報告されているが,これらのKO 【 背 景 】 骨 形 成 蛋 白Bone morphogenetic protein マウスでは活性型Notch1発現やAktのリン酸化が著名 (BMP)はトランスフォーミング成長因子ベーター に低下していた.最後に血管内皮におけるTMEM100の (TGFβ)スーパーファミリーのリガンドである.その 重要性を確認するために,Cre-loxPシステムを用いて 中でもBMP9とBMP10はALK1受容体に高親和性示す. そのALK1受容体を介したシグナルは血管形成やヒト 血管内皮特異的Tmem100 KOマウスを作製したところ, Tmem100 null KOマウスと同様の血管形成異常で胎生致 血管病の発症に関わるがそれらの下流で機能する分子は 死した. 不明な点が多い. 【結論】TMEM100はBMP9/BMP10−ALK1シグナ 【方法・結果】BMP9/BMP10−ALK1シグナルの下 ルの下流でNotch活性を調節し,動脈形成に中心的に機 流分子の探索のため内皮細胞をBMP9で刺激し誘導さ 能する新規分子と考えられる. れる遺伝子を網羅的に解析した.その中でALK1受容体 を介し発現が100倍も誘導された新規遺伝子TMEM100に 着目した.TMEM100タンパクのアミノ酸配列は脊椎動 Ⅰ.はじめに 物間で保存されていたが,膜貫通領域以外,機能を推定 血管ネットワークの構築は発生期のみならず,成体に できるドメインを持たないタンパクであった.マウス胎 おける血管病(がん,網膜症, 虚血性疾患など)の病態形 仔の胎生(E) 9.5日齢を用いたin situ hybridization(ISH) 成や保護メカニズムとしても重要な役割を持つ(1).胎生 法ではTmem100は動脈内皮細胞に特異的に発現しており, 早期の血管形成では「脈管形成(vasculogenesis)」で原始 ALK1受容体の発現パターンとほぼ同様であった. 血管叢が形成され,その後「血管新生(angiogenesis) 」 Tmem100 KOマウスを作製したところ,血管新生障害 のプロセスが起こり,動静脈の分化や壁細胞の動員が起 のためE11.0日齢前後で胎生致死した.ISH法や免疫染色 こり安定的な成熟血管へ向かう(2).とりわけ,動静脈の の検討で,Tmem100 KOマウスは血管内皮マーカー(VE 分化は胎生期の血管形成に重要である.血管内皮成長因 カドヘリン,PECAM1)の発現は維持されていたが,動 子(VEGF) ,アンジオポエチン,トランスフォーミング 脈マーカー(Ephrinb2,Gja5)の発現が著明に低下 成長因子ベーター(TGFβ)および骨形成蛋白(BMP) していた.また,Tmem100 KOマウスでは動脈周囲への などさまざまなサイトカインや成長因子が血管形成に関 平滑筋の動員も障害されていた.Tmem100 KOマウスで 与することが報告されている(3,4).それらの中で,BMP は動脈分化障害・成熟障害が認められ,それらの異常 9とBMP10は血管内皮にあるALK1受容体複合体介し はAcvrl 1 /Alk 1 KOマウスの表現型と酷似していた.ま たシグナルで動脈形成に関与する(5−7).ALK1受容体 やⅢ型受容体のエンドグリンをコードする遺伝子をノッ *1奈良県立医科大学 第一内科 *2奈良県立医科大学 血圧制御学講座 *3奈良県立医科大学 循環器システム医科学分野 (〒634−8522 奈良県橿原市四条町840) クアウトしたマウスでは動脈の分化障害や血管形成異常 で胎生致死となる(8−11).BMP9/BMP10−ALK1を介 したシグナルは胎生期の血管形成,動脈の本性の獲得に 重要な役割を持つが,それらのシグナルの下流で機能す ─ 95 ─ 動脈形成に関与する新規BMP9/BMP10依存的血管内皮遺伝子の同定 動脈内皮細胞におけるBMP9/BMP10−ALK1シグ されている(12).今回われわれは,Tmem100 KOマウスが Acvrl 1 /Alk 1 KOマウスと同様の表現型で動脈の分化障 ナルの下流分子の検索にために実施したマイクロアレ 害を引き起こし,血管形態異常を呈して胎生致死となる イ法で,われわれはTMEM100という機能が知られてい ことを証明した(13). ない膜タンパクをコートする遺伝子を見出した.最近 TMEM100はBMP9/BMP10−ALK1シグナルの下 の報告で,Acvrl 1 /Alk 1 コンディショナルKOマウスの 流で血管形成に関与する機能分子である可能性を示唆す 肺においてTmem100の発現が低下していることが報告 るものである. る分子に関しては不明な点が多い. ᅗ B 40 10 0 * 2.5 BMP9 50 * * * 5 * 0 1 BMP2 BMP4 100 50 5 * 0 (ng/ml) BMP9 untreated C * * si-Cont si-ALK1 si-ALK3 si-BMPR2 si-ENG si-SMAD4 -actin 100 150 si-Cont si-ALK1 si-ALK3 si-BMPR2 si-ENG si-SMAD4 TMEM100 * TMEM100/18S (fold) 150 * 0.4 2 100 500 20 100 0.625 1.25 2.5 5 10 20 40 TMEM100/18S (fold) A BMP9 10 ng/ml D : : : : : : MTEEPIKEILGAPKAHMAATMEKSPKSEVVITTVPLVSEIQLMAATGGTELS MTEESTKENLGAPKSPTPVTMEKNPKREVVVTTGPLVSEVQLMAATGGAELS MTEEPIKEILGTPKSSKPLTMEKSPTSEVVVTTVPLVSEIQLTAATGGAELS MTTEPIKEILGTPKHADPATAEKSNNNDCVITTIPLVSECQLTAATGGAELS M-EQPIKEVVGAPKGSEPILMEKT-NNDFVIT-VPRVNETQLTAATGGAELS 㻌㻌㻌㻌㻌㻌 MPEEVNKDAMRTPSTSDKATNSERPAATATAVNIPLVNEVQLTAATGGAELS E9.5 a TM1 TM2 CYRCIIPFAVVVFIAGIVVTAVAYSFNSHGSIISIFGLVVLSSGLFLLASSALCWKVRQ CYRCIIPFAVVVFITGIVVTAVAYSFNSHGSIISIFGLVVLSSGLFLLASSALCWKVRQ CYRCIIPFAVVVLIAGIVVTAVAYSFNSHGSIISILGLVLLSSGLFLLASSALCWKVRQ CYRCTVPFGVVILIAGIVVTAVAYSFNSHGSVISVFGLVLLSSGLLLLASSAVCWKIRQ CYRCTIPFGVVILIAGVVVTAVAYSFNSHGSIISVFGLVLLSSGLLLVCSSALCWKIRQ CYRCTIPFGVVVLIAGIVVTVVAYSFNSHGSTISYFGLVLLSAGLLLLASSAICWKVKL 30 * 20 10 0 (-) (+) Pecam1 Flk1/18S (fold) Pecam1/18S (fold) E 20 * 10 0 (-) (+) Pecam1 v ec ec paa 㻌㻌㻌㻌㻌㻌 F 15 * G E9.5 a Tmem100 cv da b Tmem100 WT Human 134 AA Mouse 134 AA Dog 134 AA Chicken 134 AA Frog 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 131 㻌 AA Fish (Medaka) 134 AA oft da 10 5 0 Acvrl1 KO : : : : : : Tmem100/18S (fold) RSKKAKRRESQTALVANQRSLFA RNKKVKRRESQTALVVNQRCLFA RSKKAKRRESQTALVANQRSLFA QNKKAKRRESQTALVANHRTLFG RKKRTKRRESQTALVANQRSLFT ERKKERRRESQTVLVTNQRSIFT c b cv (-) (+) cv da Tmem100/18S (fold) Human Mouse Dog Chicken Frog Fish 1.0 0.5 * 0 Pecam1 図1.Tmem100 はBMP9/BMP10−ALK1シグナルの下流にある,動脈に豊富な遺伝子である (A)臍帯動脈内皮細胞(HUAEC)ではBMP9は濃度依存的にTMEM100 mRNA発現を誘導する.BMP9刺激24時間.ウエスタンブロッ ト解析でもBMP9は濃度依存的にTMEM100の蛋白質発現を増加させる.(B)BMP9によるTMEM100 mRNA発現誘導はACVRL1/ALK1 siRNA(si-ALK1) ,BMPR2 siRNA(si-BMPR2) ,もしくは SMAD4 siRNA(si-SMAD4)により阻害される.しかし,BMPR1A/ ALK3 siRNA(si-ALK3),Endoglin siRNA(s-ENG),およびcontrol siRNA(si-Cont)ではTMEM100発現は抑制されない.(C)さまざ まな種のTMEM100タンパクのアミノ酸配列.囲み部分が膜貫通(TM)推定領域を示す.ヒトTMEM100と比較して保存されている部位を 灰色掛けで示す.(D)E9.5日齢マウスの胎仔ではTmem100 mRNAは咽頭弓動脈(paa)や背側大動脈(da)の動脈内皮細胞や心内膜(ec) で発現している.oft, 流出路,v, 心室.(E)E8.5日齢のマウス胎仔ではTmem100は内皮細胞に豊富に存在している.FACSで内皮分画をソー ティング.(F)E9.5日齢Acvrl 1 /Alk 1 KO マウスの背側大動脈ではTmem100の発現が低下している.(G)E9.5日齢Acvrl 1 /Alk 1 KO マウ スの卵黄嚢ではTmem100の発現が著名に減少している.(文献13より) ─ 96 ─ 血管Vol.36 No.3 2013 によるTMEM100発現誘導は有意に阻害された(図1B). Ⅱ.結果 これらのデータはBMP9/BMP10によるTMEM100の発 1)TMEM100はBMP9/BMP10−ALK1シグナルの下 現誘導はALK1/BMPR2受容体複合体からSmadシグ ナルを介して行われていることを示している. 流にある動脈内皮にある遺伝子である BMP9/BMP10−ALK1 シ グ ナ ル の 下 流 遺 伝 子 の TMEM100は2回膜貫通領域を持つことが推測される 同定のため,われわれは,まずヒト臍帯動脈内皮細胞 タンパクをコードする遺伝子である.そのタンパク構造 (HUAEC)を用いてBMP9で刺激する実験を実施し は魚からヒトまでの脊椎動物間で高い保存性を有して た.その際に誘導される遺伝子をマイクロアレイ法で いるが(図1C),構造から推定できるファミリータン 検討した.SMAD6,SMAD7,ID1,およびID2な パクはなく,その生理学的な意義に関しては不明であ ど,すでにBMP9の標的遺伝子として知られるものに る.胎生(E) 8.5日齢のマウスの胎仔のISH解析において 加えて,BMP9はTMEM100と呼ばれる遺伝子の発現を は,Tmem100 mRNAは動脈内膜や心内膜に豊富に存 強力に誘導することを見出した.実際,定量的PCRや 在していた(図1D) .E8.5日齢の胎仔全体からFACSを ᅗ ウエスタンブロット解析でBMP9/BMP10は濃度依存 用いてPECAM1陽性の内皮細胞としてソートした分画 的にTMEM100を増加させた(図1A) .ACVRL1/ALK1, にTmem100 mRNAは確かに多く発現していた(図1E). BMPR2,およびSMAD4のsiRNAノックダウンでBMP9 HUAECにおいてTMEM100の発現はALK1で調節され B Acvrl1 Het C a paa oft c paa E9.5 oft E9.5 e da va ec da ec isv b paa oft d paa f oft da va da ec ec isv E9.5 E9.5 E10.5 d g E10.5 a c cv e cv g nc nc ua ec da da b cv cv d uv v oft paa f h ua da ec da paa v oft D j uv E9.5 a WT WT a E9.5 Tmem100 Het Tmem100 Het E8.5 Acvrl1 Het A cv d g j en me da v f h i k l Tmem100 KO c e b 㻌 Acvrl1 KO Tmem100 KO b 㻌 Acvrl1 KO da c cv e h * da * k en me v da cv f i l da * * v me en da 図2.Tmem100 KOマウスと Acvrl1 /Alk1 KOマウスは血管新生障害を呈する (AとB)lacZレポーターがノックインされたTmem100ヘテロマウスとAcvrl 1 /Alk 1 ヘテロマウスのLacZ活性はともに動脈に認められる. (C)E9.5日齢のTmem100 KOマウスは心臓の形態異常と拡大を示す.E10.5日齢のTmem100 KOマウス胎仔は大量の心嚢液貯留(矢印)と 著名な発育遅延を認め,卵黄嚢では大きな血管が欠損している.このような表現型はAcvrl 1 /Alk 1 KOマウスでも同様に認められた.(D) Tmem100 KOマウス,Acvrl 1 /Alk 1 KOマウスとも同様の心血管形態異常を認める.E9.5日齢の両KOマウスで背側大動脈の拡張や狭窄や血 管内で血球細胞の塊,そして心筋壁の菲薄化などを認める.卵黄嚢では内胚葉層(en)と中胚葉層(me)が分離している.cv,総主静脈, da, 背側大動脈,isv, 体節間血管,nc, 脊索,oft, 流出路,paa, 咽頭弓動脈,ua, 臍動脈,uv, 臍静脈,v, 心室,va, 卵黄動脈. (文献13より) ─ 97 ─ 動脈形成に関与する新規BMP9/BMP10依存的血管内皮遺伝子の同定 ていたように,Acvrl 1 /Alk 1 KOマウスの動脈内膜では, Tmem100 mRNAの発現は著名に低下していた(図1Fと インしたマウスの発現パターンとほぼ同様であった(図 G). 節などにも認められた.ヘテロ型マウス同士の交配では これらのデータより,TMEM100が発生期において,血 E11.0日齢以後でTmem100 KOマウスを得ることはでき 2AとB).胎生後期には,Tmem100-lacZ発現は肢芽や体 なかった.E10.5日齢のTmem100 KOマウスでは心臓形態, 管の分化や形態形成に寄与していると仮説された. 心嚢液貯留,および著名な発育遅延が認められた(図2 2)Tmem100の欠損はマウス胎生致死をひき起こす C) . Tmem100のエクソン3のコーディング領域をlacZ-neo これらのデータはTmem100 KOマウスは心血管障害に カセットに置き換えたTmem100 KOマウスを作製した. より胎生致死していることを示唆するものと考えられた. 胎生早期におけるLacZ活性は主に発達中の動脈内膜 ᅗ (背側大動脈,咽頭弓動脈など)や心内膜に認められた 3)Tmem100 KOマウスは血管形成異常を起こす (図2AとB).Tmem100-lacZのLacZ活性の発現パター E8.5日齢ではTmem100 KOマウスは明らかな表現型を ンはAcvrl 1 /Alk 1 遺伝子座にlacZレポーターをノック 示さない.しかし, E9.0−9.5日齢のKOマウスは卵黄嚢の A B E9.5 a panel c pane Pecam1 Tmem100 KO g b d Pecam1 f h panell f Pecam1 C Pecam1 Pecam1 da panel d d da f cv E9.5 e a c e WT c WT a b D E8.5 b Gja5 d Efnb2 Cdh5 f Gja5 E Efnb2 Tmem100 KO Efnb2 Tmem100 KO e cv panel d Cdh5 c Gja5 d Efnb2 Gja5 b Pecam1 d a c Flk1 Pecam1 Pecam1 Pecam1 da Sm22 Pecam1 f Cdh5 E9.5 e WT Flk1 Cdh5 f WT a b F E9.5 Tmem100 KO c Pecam1 Tmem100 KO panel el e e WT c Tmem100 KO WT a E9.5 panel c d b Sm22 Pecam1 da Sm22 Sm22 図3.Tmem100 KOマウスでは血管リモデリング障害,動脈分化障害を認める (A)Tmem100 KOマウスはホールマウントPECAM1染色で血管のリモデリング障害を認める.矢印は体節間血管,矢頭はWTマウス卵 黄嚢の高度に分枝した血管を示す.(B)Tmem100 KOマウスはインディアインク注入による微小血管造影で背側大動脈と総主静脈の間に シャント(矢印)を認める.(CとD)E8.5日齢(C)とE9.5日齢(D)のTmem100 KOマウスの背側大動脈(da)において,動脈内膜のマーカー, Efnb 2 とGja 5 /Cx40の発現(矢頭)は減少し,一方で血管内膜の存在を示すCdh5の発現は維持されている. (E)Tmem100 KOマウスの背 側大動脈(da)や卵黄嚢においてもFlk1やPECAM1タンパクの発現も維持されている. (F)Tmem100 KOマウスでは,背側大動脈(da) 周囲のSm22/Tagln mRNA や SM22タンパクの動員(矢頭)が有意に減少している. (文献13より) ─ 98 ─ 血管Vol.36 No.3 2013 血液循環の低下が認められた(図2C) .また,同時期の とが報告されている(8,9) ので, 「TMEM100も動脈化 胎仔にも,背側大動脈の狭窄や拡張など,さまざまな血 管形態異常が認められた(図2D) .また, KOマウスの心 に関与する」という仮説を立てて検討を行った.実際, Tmem100 KOマウスでは,E8.5日齢ですでに背側大動脈 筋層は菲薄化しており,卵黄嚢の内胚葉層と中胚葉層は におけるEfnb2やGja 5 /Cx40の動脈マーカーの遺伝子 分離していた(図2D).PECAM1染色では,Tmem100 発現が低下していた(図3CとD).対して,Tmem100 KOマウスの血管は粗雑な染色パターンを呈しており, KOマウスでは内皮マーカーである,Cdh 5 やKdr/Flk 1 , 血管リモデリングの異常が起こっていた(図3A).ま およびPecam 1 の発現は維持されており(図3C−E) , た,心腔内に注入したIndiaインクより血管の走行を Tmem100が動脈の分化に機能していることを支持す 確認する実験からは,Tmem100 KOマウスにおいて る結果であった.また,正常な動脈ではSm22でマーク 動静脈奇形が確認できた(図3B).これらの表現型は Acvrl1/Alk1 KOマウスでも同様に認められた(図3CとD) . される壁平滑筋前駆体が動脈周囲に動員される(1,2) が, Tmem100 KOマウスでは背側大動脈周囲のSm22/Tagln ᅗ 4)Tmem100 KOマウスは動脈分化障害を認める の発現が著しく減少していた(図3F) .このような動脈 ALK1シグナルは血管内皮の動脈化に関与するこ こることが報告されている(8,9). eNOS Klf2 Akt downstream genes Hes5 Hes1 Hrt3 Jag1 Efnb2 Gja5 Notch1 * Notch downstream genes Notch components A&V 2 Gja4 Dll4 Notch4 Pecam1 0.5 Cdh5 1 Ephb4 mRNA expression relative to WT (Fold) Arterial Developmental signaling Hrt2 Endothelial makers Hrt1 A の分化障害や成熟障害はAcvrl 1 /Alk 1 KOマウスでも起 * * * * * * 0.25 * B * E9.5 Embryo WT KO * C E9.5 Yolk sac WT KO E9.5 Embryo WT KO Full Notch1 E9.5 Yolk sac WT KO Cleaved Ps1 NICD Ps1 NICD -actin pAkt Akt -actin 図4.Tmem100 KOマウスではNotch関連とAkt関連シグナル経路がダウンレギュレーションしている (A)E9.5日齢のTmem100 KOマウスの卵黄嚢では,動脈内膜マーカーやNotch下流遺伝子,およびAkt下流遺伝子の発現が著名に低下して いた.静脈内膜のマーカーであるEphb 4 の発現は上昇している.(B)E9.5日齢のTmem100 KOマウスの胎仔と卵黄嚢では,Notch1の細胞内 ドメイン(NICD)とAktのリン酸化が低下している.一方,Notch1受容体全長や総Aktの発現に変化は認めない.(C)E9.5日齢のTmem100 KOマウスの胎仔と卵黄嚢ではリン酸化Presenilin-1(Ps1)の発現が低下している.(文献13より) ─ 99 ─ 動脈形成に関与する新規BMP9/BMP10依存的血管内皮遺伝子の同定 5)Tmem100 KOマウスでは動脈形成に関連するシグナ 子系などのシグナルのコンポーネントや下流遺伝子の発 現はTmem100 KOマウスでは変化していなかった(13). ルがダウンレギュレーションしている Tmem100欠損による血管形成異常のメカニズムを理解 これらのデータはTMEM100の欠損により惹起される するために,野性型(WT)マウスとTmem100 KOマウス 動脈化障害や血管形成障害は少なくともNotchシグナル の卵黄嚢を用いてマイクロアレイ法で解析を行い,遺伝 やAktシグナルの異常により引き起こされている可能性 子発現を比較した.Tmem100 KOマウスでは,動脈マー を示しているものと考えられた. カーであるEfnb 2 ,Gja 4 /Cx37,およびGja 5 /Cx40の 遺伝子発現が低下しており,その一方で静脈マーカーの Ephb 4 の発現が上昇していた(図4A) .これらのデータ 6)血管内皮特異的なTmem100欠損はマウス胎生期の血 はわれわれのTMEM100が動脈化に必須の分子であると さらに,血管内皮特異的なTmem100欠損マウスの いう概念に一致していた. 表現型を調べるために,Tmem100 floxマウスを作製し Tek(Tie 2 ) -Creマウスと交配をおこなった(13).血管内皮 さらに,マイクロアレイのデータ解析を進めると,Notch 管形成障害を起こす シグナルの下流分子であるHrt 1 /Hey 1 ,Hrt 2 /Hey 2 , Hrt 3 /Heyl,およびHes 5(14,15) の発現がTmem100 KOマ 特異的Tmem100欠損マウスは全身Tmem100 KOマウスと ウスでは有意に低下していることが判明した(図4A). した(13).血管内皮特異的Tmem100欠損マウスではやは Notchシグナルは動脈化に必須の情報伝達系としてよく り,動脈マーカーの発現低下や動脈周囲への平滑筋細胞 知られている(1,2,16).そのため,われわれはTmem100 の動員が障害されており,動脈分化および成熟障害が認 KOマウスでNotchシグナル活性に変化がないかの検討 められた(13). を行った.NotchシグナルはDeltaやJaggedといわれるリ これらの結果は,血管内皮細胞のTMEM100が動脈分 ガンドがNotch受容体を酵素的に切断して,そこで作ら 化や胎生期の血管形成に必須であることを意味する. 同様にE11.0日齢前後で血管形成異常のために胎生致死 れたNotch細胞内ドメイン(NICD)が核内に移行し,核 内でRBP−Jやその他の共役因子とともに様々な標的遺 伝子の転写活性を上げることでシグナルが伝達される(15). ウエスタンブロット解析では,Tmem100 KOマウスの胎 仔や卵黄嚢において,NICDの発現が低下していること が解った(図4B) .免疫組織化学染色では, Tmem100 KO Ⅲ.考察と展望 内皮の分化や血管形成に関与する新規遺伝子の検索で, Tmem100がBMP9/BMP10−ALK1シグナルの下流で マウスの動脈内膜においてNICDの発現が低下していた 機能することを発見した.マウス胎仔の血管発生期には, Tmem100とAcvrl 1 /Alk 1 はともに動脈内皮に存在してお が,その他のNotchにより調整されている体節や神経管 り,これら遺伝子の欠損はお互いよく似た動脈化障害や (13) などの組織ではNICDの発現は変化していなかった . 血管形態形成異常を呈して胎生致死した.われわれの研 さらに,Notchの標的分子である,Hrt2/Hey2の発現 究ではTmem100の発現はAcvrl 1 /Alk 1 KOマウスで有意 (13) もTmem100 KOマウスの動脈で発現が低下していた . に低下しており,これは以前に報告のあるAcvrl 1 /Alk 1 加えて,Tmem100 KOマウスの胎仔や卵黄嚢におい コンディショナルKOマウスの肺でTmem100の発現が低 てAktのリン酸化が低下していることも見出した(図4 下していた事実とも一致する(12). B) .このデータはTmem100 KOマウスにおいてAktシグ BMP9 とBMP10がin vivoに お い てTmem100発 現 の 主 ナルの標的遺伝子であるKlf 2 やeNOS/Nos 3 の発現が減 少していることや(図4A) ,Aktにより調節されている 要な調節因子であるかの検討は今回実施できていない. Bmp10 KOマウスは心臓の発達障害で胎生致死となるが, Presenilin-1(Ps1)の切断が減少している(図4C)こ 血管新生に関しては報告されていない(24).一方,BMP ととも一致している(17−19).Aktシグナルは内皮の生存, 9をコードする遺伝子Gdf 2 のKOマウスに関しては未だ 移動,および恒常性の維持に重要な情報伝達系である. 報告がない.将来的にGdf 2(Bmp9)とBmp10のダブル NotchシグナルやAktシグナルの低下はAcvrl 1 /Alk 1 KO KOマウスを検討することでin vivoにおけるTmem100発現 マウスでも同様に確認できた(13). と血管形成の関連がより詳細に解明される可能性がある 対して,その他の胎生期の血管形成に重要なシグナ と考えられる. ルは明らかな変化を認めなかった(1,2,20−23).ERKや Tmem100 KOマウスや血管内皮特異的Tmem100 KOマ Smad1/5/8のリン酸化はTmem100 KOマウスでWT ウスでは動脈内膜においてNotch関連シグナルが抑制 と比較して変化を認めなかった(13).アンジオポエチン, されていた.われわれは,Acvrl 1 /Alk 1 KOマウスでも ヘッジホッグ,セマフォリン,および線維芽細胞成長因 Notchシグナルがダウンレギレーションされていること ─ 100 ─ 血管Vol.36 No.3 2013 を見出した. の生川雅子氏,吉岡優子氏および坂井田都氏に深く感謝 Notch受容体やそのリガンドはマウスの胎仔において, 申し上げます.また,本研究は文科省科研費,日本学術 静脈ではなく,動脈に豊富にあることが知られている. 振興会科研費,科学研究振興機構A−STEP,武田科学振 Notchシグナルの構成分子であるNotch 1 ,Notch 4 ,Dll 4 , Rbpj,Hrt 1 /Hey 1 ,およびHrt 2 /Hey 2 はそれぞれのKO 興財団,先進医薬研究振興財団,日本心臓財団などの支 援を受けて行われました. マウス解析から,これらNotch関連シグナル分子は血管 内皮の動脈分化への運命決定に重要な機能を持っている ことが報告されている(1,2,16).また,血管内皮のNotch シグナルが障害されると,その血管への平滑筋の動員が 減少し,動脈の成熟化が影響を受けることも知られてい る(25−27).今回の研究では,Tmem100 KOマウスとAcvrl 1 / Alk 1 KOマウスともに,Notchシグナルの活性が低下して 引用文献 1.Potente M,Gerhardt H,Carmeliet P(2011)Basic and therapeutic aspects of angiogenesis.Cell 146:873−887. 2.Eilken HM,Adams RH(2010)Dynamics of endothelial cell behavior in sprouting angiogenesis.Curr Opin Cell Biol 22: 617−625. いることを確認した. Tmem100 KOマウス,およびAcvrl 1 /Alk 1 KOマウス 3.David L,Feige JJ,Bailly S(2009)Emerging role of bone morphogenetic proteins in angiogenesis.Cytokine Growth の胎仔では,Notchシグナルに加えて,Aktキナーゼや Factor Rev 20: 203−212. Ps1プロテアーゼ活性の低下も認められ た.Aktが 4.Pardali E,Goumans MJ,ten Dijke P(2010)Signaling by Ps1によるNotchの切断を調節しているという報告もあ members of the TGF-beta family in vascular morphogenesis (17,28) り ,逆にPs1がAktを活性化するという報告もあ and disease.Trends Cell Biol 20: 556−567. .Tmem100 KOマウスやAcvrl 1 /Alk 1 KOマウスの 5.David L,et al.(2007)Identification of BMP9 and BMP10 血管形成障害は,Akt,Ps1,およびNotch関連シグナル as functional activators of the orphan activin receptor-like (29) る の障害や相互作用の異常が関与しているのかもしれない. kinase1(ALK1)in endothelial cells.Blood 109: 1953−1961. 6.Scharpfenecker M,et al. (2007)BMP-9 signals via ALK Tmem100 KOマウスでは明らかな血管構造異常を認め 1 and inhibits bFGF-induced endothelial cell proliferation and ていないE8.5日齢で,既に動脈マーカーの遺伝子発現低 VEGF-stimulated angiogenesis.J Cell Sci 120,964−972. 下を認めていた.このことは,TMEM100が直接動脈化 7.Suzuki Y,et al.(2010)BMP-9 induces proliferation of への運命決定に寄与している可能性を示すデータと考え multiple types of endothelial cells in vitro and in vivo. J Cell Sci 123,1684−1692. られる. 以前の研究データではTmem100の発現はマウス胎仔の 8.Urness LD,Sorensen LK,Li DY(2000)Arteriovenous malformations in mice lacking activin receptor-like kinase-1. 血管やヒトやマウス成体の肺,前立腺や腎臓などで認め られことが報告されている(12,29,30)が,今までTMEM100 Nat Genet 26: 328−331. 9.Oh SP, et al. (2000)Activin receptor-like kinase 1 modulates transforming growth factor-beta1 signaling in the regulation の細胞機能に関しての報告はされていなかった. ALK 1 受容体複合体を構成する各受容体をコードする 遺伝子やACVRL 1 /ALK 1 ,BMPR 2 ,およびENG,ALK 1 of angiogenesis.Proc Natl Acad Sci USA 97: 2626−2631. 10.Li DY,et al.(1999)Defective angiogenesis in mice lacking endoglin.Science 284: 1534−1537. 受容体シグナルの下流分子SMAD 4 をコードするSMAD 4 11.Jadrich JL,O'Connor MB,Coucouvanis E(2006)The TGF の各遺伝子変異は遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT) beta activated kinase TAK1 regulates vascular development in や肺動脈性肺高血圧症の原因である(32,33).TMEM100が このような病態の形成に関わる新たに原因分子もしくは 調整分子として機能する可能性があるかもしれない.少 なくとも胎生後期や成体では,Tmem100の発現は血管内 vivo.Development 133: 1529−1541. 12.Moon EH,et al. (2010)Generation of mice with a conditional and reporter allele for Tmem100.Genesis 48: 672−678. 13.Somekawa S, et al. (2012)Tmem100, an ALK1 receptorsignalingdependent gene essential for arterial endothelium differentiation 皮細胞に限局しているわけではない.しかしTMEM100 and vascular morphogenesis.Proc Natl Acad Sci U S A.109: の機能を研究することはヒトの心血管病やその他の臓器 で疾患の発症や進展メカニズムの理解に寄与できる可能 12064−12069. 14.Nakagawa O,et al. (2000)Members of the HRT family of basic helix-loop-helix proteins act as transcriptional repressors 性があると考える. downstream of Notch signaling.Proc Natl Acad Sci USA 97: 13655−13660. 15.Kopan R,Ilagan MX(2009)The canonical Notch signaling Ⅳ.謝辞 pathway: Unfolding the activation mechanism.Cell 137: 216− この研究の遂行にあたり,協力いただいた技術補佐員 ─ 101 ─ 233. 動脈形成に関与する新規BMP9/BMP10依存的血管内皮遺伝子の同定 16.Swift MR,Weinstein BM (2009)Arterial-venous specification during development.Circ Res 104: 576−588. 17.Takeshita K,et al. (2007)Critical role of endothelial Notch1 signaling in postnatal angiogenesis.Circ Res 100:70−78. 18.Sako K,et al. (2008)Angiopoietin-1 induces Kruppel-like factor 2 expression through a phosphoinositide 3-kinase/ AKT-dependent activation of myocyte enhancer factor 2. J Biol Chem 284: 5592−5601. 19.SenBanerjee S,et al. (2004)KLF2 is a novel transcriptional regulator of endothelial proinflammatory activation.J Exp Med 199:1305−1315. 20.Srinivasan R, et al. (2009)Erk1 and Erk2 regulate endothelial cell proliferation and migration during mouse embryonic angiogenesis.PLoS One 4: e8283. 21.Lechleider RJ,et al. (2001)Targeted mutagenesis of Smad1 reveals an essential role in chorioallantoic fusion.Dev Biol 240: 157−167. 22.Yang X, et al. (1999)Angiogenesis defects and mesenchymal apoptosis in mice lacking SMAD5.Development 126: 1571− 1580. 23.Chang H,et al. (1999)Smad5 knockout mice die at midgestation due to multiple embryonic and extraembryonic defects.Development 126:1631−1642. 24.Chen H,et al. (2004)BMP10 is essential for maintaining cardiac growth during murine cardiogenesis.Development 131:2219−2231. 25.Morrow D,et al.(2008)Notch and vascular smooth muscle cell phenotype.Circ Res 103:1370−1382. 26.Fischer A,et al.(2004)The Notch target genes Hey1 and Hey2 are required for embryonic vascular development.Genes Dev18:901−911. 27.High FA,et al. ( 2008) Endothelial expression of the Notch ligand Jagged1 is required for vascular smooth muscle development.Proc Natl Acad Sci USA 105:1955−1959. 28.Yamamizu K,et al. (2010)Convergence of Notch and betacatenin signaling induces arterial fate in vascular progenitors. J Cell Biol 189:325−338. 29.Baki L,et al. (2004)PS1 activates PI3K thus inhibiting GSK-3 activity and tau overphosphorylation: effects of FAD mutations.EMBO J 23:2586−2596. 30.van der Heul-Nieuwenhuijsen L, et al. (2006)Gene expression profiling of the human prostate zones.BJU Int 98: 886−897. 31.Georgas K, et al. (2009)Analysis of early nephron patterning reveals a role for distal RV proliferation in fusion to the ureteric tip via a cap mesenchyme-derived connecting segment.Dev Biol 332: 273−286. 32.Govani FS,Shovlin CL(2009)Hereditary haemorrhagic telangiectasia:a clinical and scientific review.Eur J Hum Genet 17: 860−871. 33.Lowery JW,de Caestecker MP(2010)BMP signaling in vascular development and disease.Cytokine Growth Factor Rev 21:287−298. ─ 102 ─ 血管Vol.36 No.3 2013 クリニカル───────────────────────────── 総 説 受容体直接結合蛋白によるアンジオテンシンAT1受容体情報伝達系抑制システムの 血圧調節および心血管系障害における病態生理学的意義について 田村 功一,涌井 広道,出島 徹,東 公一,大澤 正人,小豆島 健護,畝田 一司, 小林 竜,大城 光二,前田 晃延,金岡 知彦,鶴見-池谷 裕子,松田 みゆき,梅村 敏 横浜市立大学医学部循環器・腎臓内科学 体への直接結合性機能制御分子である16,17)(図1). Ⅰ.はじめに レニン−アンジオテンシン系の生理活性物質アンジオ テンシンⅡ(AngⅡ)に対する受容体には主要な受容体 Ⅱ.AT1受容体に結合する新規因子(ATRAP/Agtrap) の単離同定と構造解析 として,1型AngⅡ受容体(AT1受容体)と2型AngⅡ受 容体(AT2受容体)がある.生体組織に広く高レベルで マウス腎から作製されたcDNAライブラリーを用い 発現し,組織における過剰活性化が高血圧関連生活習慣 てAT1受容体C末端の細胞質内ドメインをbaitとして 病の発症・進展に関与しているとされるAT1受容体は yeast two-hybrid systemに よ る 遺 伝 子 ク ロ ー ニ ン グ 7回膜貫通構造をとりG蛋白質共役型受容体に属するが, を行い,AT1受容体に特異的に結合する因子として AT1受容体系活性化による種々の情報伝達系亢進の機 ATRAP/Agtrapが単離同定された16,17,18).ATRAPは, 序,およびAT1受容体自身の活性化機構あるいはAT1 160残基のアミノ酸からなる18kDaの低分子蛋白であり, 受容体のdown-regulationの分子メカニズム,さらには, 特異的にAT1受容体に結合し,AT2受容体,エンドセ AT1受容体とその情報伝達系活性化の分子メカニズム リンETB受容体,あるいはカテコールアミンβ2受容体 については,AT1受容体自身の立体構造の変化,AT1 などには結合しないと考えられた. 受容体自身のリン酸化の関与,AT1受容体細胞質ルー そして,マウスATRAPのアミノ酸配列の解析から,コ プ構造(third loop)やC末端領域の関与, EGF受容体トラ ンピューターによる立体構造予測では,N末端は細胞外 ンス活性化の関与7,8),あるいは細胞膜シグナリングド ドメインであり,N末端側に3つの膜貫通ドメインを持 メインであるカベオラのシグナル伝達分子カベオリンと つとともにC末端側には細胞質内ドメインを持つという そのチロシンリン酸化のAT1受容体のinternalization 珍しい構造上の特徴を有すると予測された17).また,欠 への関与,などが報告されているが,なお不明な点が多 画変異体を用いた検討により,ATRAPの110∼122番目 い1,2,3,4,5,6,7,8,9,10). のアミノ酸残基のC末端細胞質内ドメインとAT1受容 一 方, 近 年,AT1 受 容 体 やAT2 受 容 体 に 直 接 結 体の339∼359番目のアミノ酸残基のC末端細胞質内ドメ 合して,それら受容体の機能を修飾している可能性が インが直接結合すると考えられた. ある複数の新規分子が相次いで単離・同定され,そ れら分子の詳細な機能や病態生理学的意義が注目され ている11,12,13,14,15).特にAT1受容体に直接結合して下流 Ⅲ.ATRAP/Agtrapの組織分布 の情報伝達系を制御する分子については長年にわたって 著者らは,ATRAP蛋白質発現の検出のためにポリク 遺伝子クローニングが多くの研究室において試みられて ローナル抗ATRAP抗体を作製しており, Western blot解 き た が,ATRAP/Agtrap(AT1 receptor-associated 析においてはin vitro transcribed/translated ATRAP蛋 protein)は世界で最初にクローニングされたAT1受容 白質,培養細胞に遺伝子導入されたATRAP蛋白質,およ *横浜市立大学医学部循環器・腎臓内科学 (〒236−0004 横浜市金沢区福浦3−9) いて予想通り約18kDaの単一バンドの検出に成功し,こ び細胞・組織に発現している内在性ATRAP蛋白質につ れらのバンドは抗原ペプチド吸収試験において消失する ─ 103 ─ 受容体直接結合蛋白によるアンジオテンシンAT1受容体情報伝達系抑制システムの血圧調節および心血管系障害における病態生理学的意義について N terminal AT1 receptor Plasma membrane Receptor internalization, CActivation of signaling ( arrestin dependent?) 297 359 C terminal AT1 cytoplasmic tail Gal4-BD pBD-Gal4 Yeast Plasmid + library proteins Gal4-AD Gal4-AD Gal4-AD Gal4-AD Mouse kidney primary cDNA library Identification of a novel interacting protein with the carboxyl terminal domain of AT1 receptor as ATRAP/Agtrap= AT1 receptor-associated protein 図1:新世代のAT1受容体系阻害を目指して−AT1受容体への結合性機能制御分子(ATRAP/Agtrap)の単離・ 同定(文献25から引用). Yeast-two hybrid strategyによりAT1受容体のC末端結合能を持つ新規因子としてATRAP/Agtrapを単離・同定した. GFP-rhoB 0.5 Overlay Surface / total fluorescence ratio HA-ATRAP Baseline 0.4 0.3 0.2 0.1 0 - + Ang II - + HAGFPATRAP rhoB Ang II 0.8 0.6 0.4 0.2 0 Ang II - + 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 Ang II - + Baseline Ang II FLAG-AT1R 0.8 Overlay Surface / total fluorescence ratio HA-ATRAP 0.6 0.4 * 0.2 0 Ang II - + - + HA- FLAGATRAP AT1R 1.0 * 0.8 0.6 0.4 0.2 0 Ang II - + Relative fluorescence ratio of co-localized AT1R / total AT1R D Relative fluorescence ratio of co-localized ATRAP / total ATRAP C 1.0 Relative fluorescence ratio of co-localized rhoB / total rhoB B Relative fluorescence ratio of co-localized ATRAP / total ATRAP A 1.0 * 0.8 0.6 0.4 0.2 0 Ang II - + 図2:VSMCにおけるAngⅡ刺激を受けての細胞質内核周囲エンドゾームでのAT1受容体とATRAP/Agtrapとの共 局在性の亢進(文献22から引用). VSMCs に HA-tagged ATRAP 蛋白(HA-ATRAP)and エンドゾームマーカー GFP-rhoB(A,B)あるいはFLAG-tagged AT1受容体(FLAG-AT1R)(C,D)を発現させ,定常状態(Baseline)あるいは 100 nmol/L AngⅡにて60分刺激後(AngⅡ) に免疫細胞染色を施行した.Values were expressed as the mean±SE.NS,not significant.*P<0.05,vs AngⅡ−. ─ 104 ─ 血管Vol.36 No.3 2013 ことから,ATRAP蛋白質に由来する特異的なバンドで 対して,ATRAPは主に核周囲に存在していたが,心筋 あると考えられた.そして,ATRAPの組織発現分布に 細胞,VSMCをAngⅡで刺激すると細胞表面に存在する ついての検討では,AT1受容体と同様に,腎,心などの AT1受容体が減少するとともに,AT1受容体とATRAP 全身諸臓器に幅広く内在性発現を認めることを明らかに との核周囲のエンドゾームでの共局在性が亢進すること した 19, 20) が明らかにされた21,22,23) (図2) . . し た が っ て,ATRAPは, 受 容 体 のinternalization Ⅳ.ATRAP/AgtrapによるAT1受容体のinternalization 促進作用 に関与する細胞内膜構造物であるエンドゾーム上に主 に存在し,細胞内に移動してきたAT1受容体を持続 的に捕捉し続けることにより結果的にAT1受容体の AT1 受 容 体 の C 末 端 は 以 前 か ら 同 受 容 体 の internalizationを促進すると考えられた.さらに,生体に internalizationや情報伝達系制御への関与が指摘されて おいても,腎臓ATRAP高発現トランスジェニックマウ いたため,まず,ATRAPの細胞における機能を検討する ス(TGM)を用いた検討結果から,腎におけるATRAP ために,内在性にATRAP発現が認められたHEK293腎 高発現が腎組織細胞膜分画でのAT1受容体発現を減少 細胞,心筋細胞,そして血管平滑筋細胞(VSMC)にお させることが明らかにされた24). いて,ATRAPの細胞内局在を検討したところ,ATRAP は主に核周囲の小胞膜上(エンドゾーム,滑面小胞体, ゴルジ体など)に存在していた17,21,22).免疫沈降実験で Ⅴ.血管平滑筋細胞(VSMC)におけるATRAP/Agtrap の機能 は心筋細胞,VSMCにおいてATRAPがAT1受容体に結 合していることが確認された.また,心筋細胞,VSMC マウスやラットでの検討において,大動脈血管壁や での免疫細胞染色実験の結果,非刺激下においてAT1 VSMCにおけるATRAP発現が確認されたために19,22,23), 受容体は主に心筋細胞,VSMCの細胞膜に存在するのに VSMCにおけるATRAPの機能についてさらに検討を進 Ang II Ang II AT1R AT1R Membrane Promotion of receptor internalization and inhibition of receptor recycling ATRAP Activation of signaling pathways Functionally selective inhibition of signaling pathways (p38 MAPK) Promotion of vascular injury and atherosclerosis Endosome Inhibition of vascular injury and atherosclerosis 図3:ATRAPのVSMCに対する細胞機能制御. VSMCにおいてATRAPは定常状態における生理的なAT1受容体機能には明らかな影響を与えずに,同受容体のinternalizationを 恒常的に促進することにより,病的刺激にともなうVSMCでのAT1受容体情報伝達系の過剰活性化のみを選択的に阻害し,血管で の病的刺激による動脈硬化反応に対して抑制的に作用している可能性が考えられる. ─ 105 ─ 受容体直接結合蛋白によるアンジオテンシンAT1受容体情報伝達系抑制システムの血圧調節および心血管系障害における病態生理学的意義について めた.アデノベクターを用いてATRTAPをVSMCに高発 現させると,細胞表面のAT1受容体数の減少とともに, Ⅵ.生体におけるATRAP/Agtrapの発現調節の検討 細胞増殖能指標のBrdU取り込み率,TGF-β遺伝子発現 著者らは,組織ATRAP発現量/AT1受容体発現量の とTGF-β蛋白産生,およびc-fos遺伝子プロモーターの 低下によって,組織局所におけるAT1受容体情報伝達 AngⅡ刺激による活性化が抑制されたが,無刺激での定 系活性が相対的に亢進し,高血圧,高血圧関連生活習慣 常状態におけるこれらの指標はATRAP高発現VSMCと 病あるいは高血圧性臓器障害の発症・進展が惹起される 対照のLacZ高発現VSMCとの間で明らかな差は認められ 可能性を報告している(図4) . なかった22). したがって,ATRAPはVSMCに対して定常状態にお 1)病的刺激による組織でのATRAP/Agtrap発現の 変化 ける生理的なAT1受容体機能には明らかな影響を与え ずに,同受容体のinternalizationを恒常的に促進するこ マウス腎組織においてATRAPは主に尿細管を中心に とにより,病的刺激にともなうVSMCでのAT1受容体情 幅広く分布しており,AngⅡ刺激,あるいは片側尿管結 報伝達系の過剰活性化のみを選択的に阻害し,血管での 紮を行うことで,腎臓でのATRAP発現量は有意に減少 病的刺激による動脈硬化反応に対して抑制的に作用して した24,28).また, マウスやラットへの慢性持続AngⅡ刺激 25) いる可能性が考えられた (図3) .さらに,ATRAPは によって,心肥大反応とともに心臓におけるATRAP発 calcium-modulating cyclophilin ligand(CAML)への結 現量は減少し,カフをもちいたマウス血管傷害モデルで 合を介して細胞増殖・分化や免疫機能, あるいは心肥大や は, 血 管 で のATRAP発 現 量 の 減 少 が 報 告 さ れ て い 動脈硬化などの病態とも関連があるcalcineurin-NFAT る29,30,31).さらに,ヒト腎組織ではATRAPは尿細管を中 26,27) 経路への抑制作用をもつことも報告されている .以 心に広範囲に分布して高発現を呈し,AT1受容体と共 上の細胞レベルでの検討結果により,ATRAPは AT1 局在性を示すが, 一方IgA腎症では腎機能低下(推算糸球 受容体のconstitutiveなinteralizationを促進することに 体濾過率低下)とともに腎尿細管間質におけるATRAP より,細胞での定常的・生理的なAT1受容体系の機能 発現が減少することが明らかになった20). には影響を与えず,病的刺激に伴うAT1受容体情報伝 達系病的な過剰活性化に対して選択的に抑制的に作用し ている可能性が明らかにされた25). 2)病態モデル動物における組織ATRAP発現の変化 およびAT1受容体阻害薬(ARB)によるATRAP/ Agtrap発現維持効果 Organ injury promoting 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト(SHR) に お け る ATRAP Organ injury protective とAT1受容体の発現バランスについて検討したとこ ATRAP AT1R ろ,SHRでは高血圧や心肥大の進行に従い,心臓での ATRAPのAT1受容体に対する相対的発現が低下して いた30).さらに, 非降圧用量のAT1受容体拮抗薬 (ARB) を投与することにより,悪化した両者の発現バランスの 改善とともに心肥大の抑制がみられることを明らかにし た30). また,Dah1食塩感受性ラットでは,高食塩負荷によ Hypertension and target organ damage り腎ATRAP発現の低下とともに,血圧の上昇,腎線維 図4:組織局所でのATRAP発現・活性およびAT1受容 体発現・活性とのバランスの,高血圧や高血圧関 連生活習慣病および臓器障害における意義(文献 れた.さらに,ARB性成熟期前一過性投与および持続性 化・炎症マーカーの増加,p22phox発現量の増加がみら 25から引用). 組織局所でのATRAPの発現量・活性レベルの調節は, 組織局所での生理的なAT1受容体情報伝達系には影響を 与えずに,種々の刺激に伴うAT1受容体情報伝達系の病 的な過剰活性化に対する制御を可能にできる可能性があ るとともに,心血管病や腎障害などの病態を反映する新た なバイオマーカーとして有用である可能性がある. 投与によって,ATRAP発現量は対照群と同等レベルに まで回復し,同時に高食塩負荷による血圧上昇が抑制さ れ,p22phox,TGF-β,MCP-1の増加も抑制された32). すなわち,本態性高血圧,心肥大,食塩感受性高血圧や 腎障害などに対するARBの抑制効果には,組織ATRAP の持続的な発現回復効果が関与している可能性が示唆さ れた. ─ 106 ─ 血管Vol.36 No.3 2013 Ⅶ.血管壁を含む生体におけるATRAP/Agtrapの機能 昇の抑制がみられ,また,AngⅡ負荷開始後のナトリウ ムバランスは,WTマウスと比較して,Renal ATRAP- ATRAPは生体において多くの組織での発現が確認さ TGMでは低値であった(図5). さらに,腎での電解質 れているために,血圧調節や高血圧の発症・進展への関 トランスポーター発現は,WTマウスと比較して,Renal 与に加えて高血圧関連臓器障害への関与も注目されてい ATRAP-TGマウスではAngⅡ負荷によるαENaC発現 る. 増加の抑制が認められた.したがって,腎尿細管における 1)腎尿細管におけるATRAPの病的刺激下での血圧調 響を与えずに,病的刺激下に生じるAT1受容体系の過 ATRAPは,生理的なAT1受容体情報伝達系活性には影 剰活性化を抑制し,腎尿細管電解質トランスポーター/ 節への関与 著者らは腎尿細管におけるATRAPの機能的役割を 尿中ナトリウム排泄系の制御を通じて高血圧の発症を抑 検 討 す る た め, 腎 尿 細 管ATRAP高 発 現TGM(Renal 制している可能性が考えられた33). ATRAP-TGM) を 作 成 し, コ ン ト ロ ー ル の 野 生 型 C57BL/6マウス(WTマウス)およびRenal ATRAP- 2)心筋におけるATRAPの高血圧性心肥大制御への関 TGMにosmotic pumpを 用 い てAngⅡ を 皮 下 持 続 投 与 与 し,負荷前とAngⅡ負荷期間における血圧および脈拍を 著者らは心筋におけるATRAPの機能的役割を検討 radiotelemetry法で測定した.その結果, Renal ATRAP- す る た め, 心 筋 特 異 的ATRAP高 発 現TGM(Cardiac TGMでは,腎遠位尿細管において導入したATRAPの高 ATRAP-TGM) を 作 製 し, コ ン ト ロ ー ル の 野 生 型 発現が認められたが,定常状態では,WTマウスと比較 C57BL/6マウス(WTマウス)およびCardiac ATRAP- してRenal ATRAP-TGMでは,血圧・脈拍に有意差は TGMにAngⅡ を 2 週 間 投 与 し た.WTマ ウ ス お よ び 認められなかった 33) . しかし,AngⅡ負荷開始後には, WTマウスと比較して,Renal ATRAP-TGMでは血圧上 Cardiac ATRAP-TGMの血圧をtelemetryで測定し,心 エコー検査を施行後,心臓を摘出し,心重量/体重比お A B WT Renal ATRAP-TGM **P<0.01, versus WT mice by 2-way repeated measures ANOVA. Cumulative sodium balance (Day 1 to 6) (mmEq) SBP on telemetry (mmHg) *P<0.01, versus WT mice by 2-way repeated measures ANOVA. WT Renal ATRAP-TGM Values are expressed as the mean±SE. 図5:腎尿細管ATRAP高発現TGMでは,ベースラインの血圧に変化はないが,AngⅡ負荷による高血圧が抑制され, Na+再吸収抑制が関与(文献33から引用). (A)テレメトリーでの血圧測定において,腎尿細管ATRAP高発現TGM(Renal ATRAP-TGM)では,コントロールの野生型 C57BL/6マウス(WTマウス)と比較して,ベースラインの血圧には変化が見られないが,持続的AngⅡ(2000ng/kg/min) 刺激による高血圧が有意に抑制された. (B)メタボリックケージを用いた解析において,AngⅡ刺激開始1日目から6日目のNa=再吸収がRenal ATRAP-TGM ではWT マウスに比較して有意に抑制されていた. ─ 107 ─ 受容体直接結合蛋白によるアンジオテンシンAT1受容体情報伝達系抑制システムの血圧調節および心血管系障害における病態生理学的意義について B A C WT - Ang II Cardiac WT ATRAP-TGM + Ang II - + - + Fold activation of LV mRNA expression by Ang II infusion 2.5 ANP BNP HW/BW, mg/g 4.15±0.11 4.79±0.12 * Cardiac ATRAP-TGM Ang II + - Cross sectional area of cardiomyocytes (m2) Heart * 300 HW/BW, mg/g 1.5 * 200 0 - + WT 4.17±0.15 3.97±0.13 *P<0.05, vs vehicle. * 1.0 100 Ang II Heart 2.0 400 - + Cardiac ATRAP-TGM *P<0.01, vs vehicle. 0.5 0 WT TGM WT TGM P<0.05, vs LC. 図6:心筋特異的ATRAP高発現TGMでは,ベースラインでは変化がないが,AngⅡ刺激による高血圧性心肥大が抑 制(文献31から引用). (A)心筋特異的ATRAP高発現TGM(Cardiac ATRAP-TGM)では,コントロールの野生型C57BL/6マウス(WTマウス)と 比較して,ベースラインの心筋組織に変化は見られないが,持続的AngⅡ(200ng/kg/min)刺激による心重量/体重比増加 と高血圧性求心性心肥大が有意に抑制された. (B)心筋特異的ATRAP高発現TGM(Cardiac ATRAP-TGM)では,コントロールの野生型C57BL/6マウス(WTマウス)と 比較して,ベースラインの心筋細胞面積に変化は見られないが,持続的AngⅡ(200ng/kg/min)刺激による心筋細胞肥大が 有意に抑制された. (C)心筋特異的ATRAP高発現TGM(Cardiac ATRAP-TGM)では,コントロールの野生型C57BL/6マウス(WTマウス)と比 較して,持続的AngⅡ(200ng/kg/min)刺激による心肥大関連遺伝子発現量の増加が有意に抑制された. Ang II RAS ATRAP/ Agtrap? 図7:ATRAP/Agtrapによる,従来のRAS阻害薬とは異なる機序によるAT1受容体情報伝達系の選択的遮断戦略 の可能性(文献36から改変引用). ─ 108 ─ 血管Vol.36 No.3 2013 よび左室での心肥大関連遺伝子(BNP,ANP)発現量を 定量的PCR法により評価した.さらに,両群のマウスに Ⅷ.ATRAP/Agtrapの発現・活性制御機構の検討 おいて,心肥大応答に重要とされる左室MAPKの活性を ATRAPはAT1受容体系の活性化を抑制する臓器保 測定した.その結果,野生種マウスへのAngⅡ投与によ 護的な作用が期待され,将来的にはATRAP特異的活性 り,心肥大の進行とともに,左室における内在性AT1受 化薬の開発などが待ち望まれるが,著者らはその前段階 容体発現量は変化しないにも関わらず,内在性ATRAP として,ATRAP遺伝子が内在性に高発現している腎尿 31) 発現量は有意に減少した . 細管細胞の系において,ATRAP遺伝子の発現調節に重 また,Cardiac ATRAP-TGMでは,AngⅡ投与によ 要な複数のプロモーター領域を同定し,細胞・組織の分 る血圧の上昇はWTマウスと同等であったにも関わらず, 化に関連するRunx-3などの転写調節因子の関与を明ら 心筋細胞肥大による求心性心肥大の亢進,心肥大関連遺 かにしている28,35). 伝子発現量の増加,および左室p38 MAPKの活性化が完 全に抑制された(図6).したがって, 高血圧性心肥大の 進行には左室ATRAP発現量の減少が関与している可能 Ⅸ.おわりに 性が示唆された.さらに,心臓におけるATRAP発現量 新 規AT1 受 容 体 結 合 因 子 と し て 単 離 同 定 さ れ た を持続的に増加させることにより,AngⅡによる高血圧 ATRAP/Agtrapは,AT1 受 容 体 の constitutiveな 性心肥大応答が完全に抑制されたことから,ATRAPは internalizationを促進することにより,定常的状態の同受 心肥大治療における新たな分子標的となりうる可能性が 容体情報伝達系活性には影響を与えず,かつ,病的刺激 31) 考えられた . によるAT1受容体系情報伝達系の過剰活性化を選択的 に抑制する作用を有する可能性がある.この点, AT1受 3)血管におけるATRAPの制御への関与 容体の病的過剰活性化のみならず生理的機能維持に関連 血管壁や血管平滑筋にも内在性ATRAP発現が認めら したAT1受容体活性をも阻害してしまうリスクを内包 れるが,Oshitaらによる検討では,彼らが作成した全 している可能性が完全には否定できない従来のレニン− 身性にATRAPを高発現させたTGMではカフによる血 アンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬,ARB,DRI) 管周囲炎症に由来する新生内膜形成が抑制され,ERK, とは異なる可能性がある36) (図7) .したがって, ATRAP STAT1,STAT3などのシグナル活性化抑制を伴って は『AT1受容体情報伝達系の病的刺激による過剰活性 29) いた . 化に対する選択的抑制機序を担う内在性の同受容体結合 著者らは血管におけるATRAPの機能的役割を検討す 分子』として捉えることができるのではないかと考えて るため,大動脈ATRAP高発現TGM(Aortic ATRAP- いる. TGM)を作製し,コントロールの野生型C57BL/6マウ 今後の研究展開により,動脈硬化におけるATRAPの ス(WTマウス)およびAortic ATRAP-TGMにAngⅡ 発現・活性制御と病態生理学的意義がさらに詳細に明ら を2週間投与した.WTマウスおよびAortic ATRAP− かになると考えられる.また,ATRAP発現制御マウス TGMの血圧をtelemetryで測定後,大動脈を摘出し,大 は,動脈硬化の新たな病態モデル動物として今後の動脈 動脈壁厚および大動脈壁での酸化ストレス関連指標を評 硬化の病態生理の解析や新薬開発の研究に有用であると 価した.さらに,両群のマウスにおいて,酸化ストレス 期待される.さらに,本研究の発展が受容体直接結合 応答に重要とされる大動脈壁MAPK familyの活性を測 性機能制御因子ATRAPを創薬標的とした,動脈硬化に 定した.その結果,Aortic ATRAP-TGMでは,AngⅡ 対する新規分子治療薬開発に結びつく可能性も期待され 投与による血圧の上昇はWTマウスと同等であったにも る.一方,高血圧や高血圧関連生活習慣病の病態におい 関わらず,大動脈壁厚の増加,大動脈におけるNADPH て,AT1受容体とATRAPの発現バランスがこれら病変 oxidaseコンポーネント(Nox4,p22phox)やreactive の発症・進展に重要である可能性が示唆されている.し oxygen species(ROS)産生指標(4-HNE)の増加,お かしながら,生体組織におけるATRAPの分子レベルで よび大動脈壁JNK,p38−MAPK活性化が有意に抑制さ の作用機序や発現調節機序,さらには高血圧や高血圧関 34) れた .したがって,血管におけるATRAP発現量を持 連生活習慣病とそれらによる臓器障害における病態生理 続的に増加させることにより,AngⅡによる高血圧性動 学的意義についてはまだまだ不明な点も多く,今後のさ 脈硬化応答が完全ではないが有意に抑制されたことから, らなる研究の展開が望まれる18,25,37,38). ATRAPは動脈硬化治療における新たな分子標的となり うる可能性が考えられた34). ─ 109 ─ 受容体直接結合蛋白によるアンジオテンシンAT1受容体情報伝達系抑制システムの血圧調節および心血管系障害における病態生理学的意義について Rac1 and NAD (P) H oxidase after angiotensin Ⅱ type 1 receptor Ⅹ.謝辞 stimulation in vascular smooth muscle cells:role in redox signaling and vascular hypertrophy. Arterioscler Thromb Vasc 本研究成果は,厚生労働科学研究費補助金(循環器疾 患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業) ,日本学術振 Biol 25:1824−1830. 11.Guo DF,Chenier I,Tardif V,Orlov SN,Inagami T(2003) 興会科学研究費補助金,日本老年医学会,日本腎臓財団, Type 1 angiotensin Ⅱ receptor-associated protein ARAP1 binds 地域医学研究基金などの研究補助金によるものである. and recycles the receptor to the plasma membrane.Biochem Biophys Res Commun 310:1254−1265. 12.Guo DF,Tardif V,Ghelima K,Chan JS,Ingelfinger JR,Chen X,Chenier I(2004)A novel angiotensin Ⅱ type 1 receptor- Ⅺ.文献 associated protein induces cellular hypertrophy in rat vascular smooth muscle and renal proximal tubular cells.J Biol Chem 1.Zou Y,Akazawa H,Qin Y,Sano M,Takano H,Minamino T, 279:21109−21120. 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Mason (Oxidative stress metabolism group,Laboratory of Toxicology and Pharmacology)指導のもと,電子スピ ン共鳴(Electron Spin Resonance,ESR)法を用いた 血管内皮細胞における一酸化窒素(NO)産生ならびに NO合成酵素(eNOS)に及ぼすポリフェノールの作用 の解析や強力なNO産生亢進作用を有するポリフェノー ルのeNOS発現・活性化機構に関する研究をさせていた だきました.ラボでは,主にESR法を用いたフリーラジ カルの測定や新たなフリーラジカル測定法の開発を行っ ております.Dr.Masonは非常に寛大なボスで周りから の信頼も厚く, 2006年にはNIEHSで素晴らしい指導者 写真1:ラボのメンバー (前列左から3番目:Dr.Ronald P. Mason,後列右か ら3番目:著者) に与えられる『NIEHS Scientist of the Year』にも選ば れています.ラボは,staffs,research fellows,visiting fellows,guest researchersやvolunteersを含め15名弱の このたび,独立行政法人日本学術振興会『頭脳循環を 規模(写真1)で,ラボのメンバーがとても親切で,過 加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム』の事業 ごしやすい環境でした.また,オーストラリア,ドイツ, で米国ノースカロライナ州のNIEHS(National Institute ブラジル,インドなど様々な国籍の研究者が在籍してい of Environmental Health Sciences,国立環境衛生科学 たため,各国の文化を知ることができました. 研究所)へ留学の機会を与えて頂きました. さまざまな疾患の惹起・進展には酸化ストレスの亢進 ノースカロライナ州はアメリカ合衆国南東部に位置し が大きな役割を担っています.その酸化ストレスの原因 ますが,1年を通して寒暖の差があまりないため非常 である活性酸素種や活性窒素種は,プロテインの変性や に過ごしやすい場所です.豊かな自然に囲まれており, 脂質の過酸化およびDNAの損傷を引き起こします.そ Great Smoky MountainsやChimney Rockなどの有名な 国立公園や州立公園があります.ライト兄弟が飛行機に よる有人動力飛行に世界で初めて成功した場所としても 有名なところです.また,首都であるWashington D. C. までは車で約4時間です. NIEHSは,1887年に設立されたアメリカ合衆国で最 も 古 い 医 学 研 究 の 拠 点 機 関NIH(National Institutes of Health, ア メ リ カ 国 立 衛 生 研 究 所 ) の27あ る 研 究 所・センターのうちの1つです.NIEHSには,約50の 研究室が存在し,世界規模の環境衛生に関する基礎研 究,臨床研究ならびに世界中の若手研究者の育成が行 われています.その中で,私はフリーラジカル化学分 *徳島大学病院 薬剤部 (〒770−8503 徳島県徳島市蔵本町2丁目50−1) 写真2:学会(国際フリーラジカル会議SFRBM2012) 会場で。 ─ 113 ─ ノースカロライナ州・NIEHS/NIHに留学して 図1:Immuno-spin trapping1 の際,中間体としてプロテイン,脂質やDNAラジカル 最後になりましたが,留学期間中,懇切・丁寧に研 が生成されます.これらラジカル体を検出することは, 究のご指導をしていただきましたPrincipal Investigator, 酸化ストレスが生体分子と相互作用することの関与を直 Dr.Ronald P.Mason並びにOxidative stress metabolism 接証明するために非常に重要です.しかしながら,これ groupのメンバーに心より感謝いたします.本留学の機 までラジカルを測定できる唯一のESR法では細胞内のラ 会を与えていただいた徳島大学大学院ヘルスバイオサイ ジカルを測定することは検出感度が低いために困難でし た.そこで,Dr.Masonのグループでは,プロテインや DNAラジカルなどをスピントラップ剤であるDMPOで 捕捉した際に生成されるnitrone adductに注目し,これ に対する抗体,すなわちanti-DMPO抗体を作成し,細胞 中のラジカルを測定可能にしたimmuno-spin trapping (IST,図1)1 を開発し,報告しております2−4.IST は,キットを用いるために高額な測定機器や煩雑な解析 は不要,ESR法より検出感度が高い(約1,000倍) ,antiDMPO抗体は市販されているために誰でも測定可能な ど多くの利点があります.開発当初は,精製されたプ ロテイン5 やDNA3,4,培養細胞6 を用いたin vitro実験 で利用されていましたが,現在ではin vivo実験7にも応 用されています.ISTは,フリーラジカルを直接測定で きる高感度・迅速・簡便な方法です.留学期間中,IST の技術習得を行い,この技術によって酸化ストレスに よるプロテインラジカルの生成をin vitroで明らかにし, eNOSを含めた蛋白質への活性酸素・フリーラジカルの 写真3:ラボにてDr. Maria B. Kadiiskaと 影響を証明する実験系を構築することができました. ─ 114 ─ 血管Vol.36 No.3 2013 エンス研究部薬理学分野教授 玉置俊晃先生,医薬品機 能生化学分野教授 土屋浩一郎先生,医療教育学分野教 授 赤池雅史先生ならびに関係者の方に厚くお礼申し上 げます.また,1年間という長期留学を快諾していただ くとともに,留守中の業務を支えていただきました徳島 大学病院薬剤部長 水口和生先生ならびに薬剤部諸氏に 深く感謝いたします. Reference 1.Gomez-Mejiba SE,Zhai Z,Akram H,Deterding LJ,Hensley K,Smith N,Towner RA,Tomer KB,Mason RP,Ramirez DC.Free Radic Biol Med.2009.Apr 1;46(7) :853−65. 2.Mason RP.Free Radic Biol Med.2004 May 15;36(10): 1214−23 3.Ramirez DC,Mejiba SE,Mason RP.Nature Methods.2006 Feb;3(2):123−7 4.Ramirez DC, Gomez-Mejiba SE, Mason RP.Nature Protocols. 2007 ;2(3) :512−22 5.Ehrenshaft M,Mason RP.Free Radic Biol Med.2006 Aug 1;41(3):422−30 6.Bonini MG,Siraki AG,Atanassov BS,Mason RP.Free Radic Biol Med.2007 Feb 15;42(4) :530−40 7. Khoo NK, Cantu-Medellin N, Devlin JE, St Croix CM, Watkins SC,Fleming AM,Champion HC,Mason RP,Freeman BA, Kelley EE.Free Radic Biol Med.2012 Jun 1−15;52(11− 12):2312−9. ─ 115 ─ ノースカロライナ州・NIEHS/NIHに留学して ─ 116 ─ 編 集 後 記 本号は,平成25年2月8日に奈良県立医科大学の吉栖正典教授のもとで開催されました第42回 日本心脈管作動物質学会の研究奨励賞受賞論文3編を掲載しております.この企画は2005年の本 誌28巻2号から始められ毎年質の高い総説が掲載されています.ひとつは,1993年に寒川賢治先 生と北村和雄先生により同定されたアドレノメヂュリンの研究をさらに発展させたアドレノメ ヂュリン-RAMP2システムに関する総説です.二つ目は,アンジオテンシンAT1受容体に結合す る新規の因子の役割を明らかにしたものです.最後は,骨形成因子BMP-TGFβ系の中でBMP9/ BMP10-ALK1が動脈形成に作用することを示した総説である.いずれも質の高い優れた仕事で, 本学会の皆様の参考になるものと考えられる.また,「世界の研究室便り」としてノースカロラ イナ州・NIEHS/NIHについての楽しい留学体験が寄せられています.近年,心脈管作動物質の 中には心房性利尿ペプチドのように医療現場で使用されているものあり,この分野のさらなる発 展が期待される. (H.I.) ─ 117 ─ お知らせ 千里ライフサイエンスセミナー E4 がんシリーズ第4回「がんゲノミクス研究と臨床応用」 日 時:平成25年11月8日(金) 10:00 ∼ 17:00 場 所:千里ライフサイエンスセンタービル 5階ライフホール(大阪,豊中市) 主 催:公益財団法人 千里ライフサイエンス振興財団 趣 旨:我が国成人の約半数ががんを発症し,約1/3ががんによって亡くなる時代になりま した. がんの早期発見・有効な治療法の開発は我々の医療福祉にとって極めて重要な テーマと言えます. 近年の次世代シークエンサーを中心としたゲノミクス技術の大幅な進歩は,がん 研究の在り方を大きく変えようとしています.がんのゲノム・エピゲノム・遺伝子 発現プロファイル異常がこれまでにないスピードで明らかにされてきており,そこ で同定された発がん原因分子を標的とした有効な治療法が既に開発されたものもあ ります.また,これらゲノム・エピゲノム異常に基づく高感度診断法,さらにはが ん治療薬選択までもが医療の場に応用されようとしています. 本シンポジウムはこれらゲノミクス技術を利用したがんの研究・診断・治療領 域における最新の成果を第一線でご活躍の先生方にご講演頂ける貴重な機会ですの で,多くの方々のご参集をお願いいたします. コーディネーター: 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 教授 稲澤 譲治 東京大学大学院 医学系研究科 教授 間野 博行 プログラム: 1.腎がんの統合的ゲノム解析 小 川 誠 司(京都大学大学院 医学研究科 腫瘍生物学 教授) 2.治療ターゲット探索の為のがん−間質相互作用のシーケンシング 石 川 俊 平(東京医科歯科大学 難治疾患研究所 ゲノム病理学分野 教授) 3.ゲノム解析による本質的な発がん原因の同定 間 野 博 行(東京大学大学院 医学系研究科 細胞情報学分野 教授) 4.がん関連マイクロRNAの探索 稲 澤 譲 治(東京医科歯科大学 難治疾患研究所 ゲノム応用医学研究部門 教授) 5.次世代シーケンサーによる非侵襲性遺伝子診断 加 藤 菊 也(大阪府立成人病センター 研究所長) 6.分子診断がもたらすがんの個別化医療 土 原 一 哉(国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター 分野長) 参 加 費:無料(ただし,事前申込が必要) 定 員:200名(申込順) 申込方法:氏名,所属,連絡先(〒住所,電話番号,E-mailアドレス)を明記の上,E-mailでお 申し込みください(FAX,郵便も可) . メールの件名は 千里ライフサイエンスセミナーE4として下さい. 後日, 事務局より送信する「参加証」 (e-mail)を印刷していただき, セミナー開催当日, 受付でご提出ください. (入場引換券になります. ) 申 込 先 : (財)千里ライフサイエンス振興財団 セミナーE4係 〒560-0082 大阪府豊中市新千里東町1−4−2 千里ライフサイエンスセンタービル20階 TEL:06−6873−2001 FAX:06−6873−2002 E-mail:[email protected] *詳細はURL:http://www.senri-life.or.jpを ─ 118 ─ 日本心脈管作動物質学会会則 第11条 会長は理事会の推薦により,評議員会の議決 第1章 総 則 を経て選ばれ,総会の承認を得るものとする. 第 1 条 本 会 は 日 本 心 脈 管 作 動 物 質 学 会(Japanese 会長は総会を主宰する. Society for Circulation Research)と称する. 第2条 本会の事務局は,三重県津市江戸橋2−174, 第12条 理事会は会長を補佐して会務を執行し,庶務, 会計その他の業務を分担する.理事長は理事会 三重大学医学部薬理学教室内に置く. の互選により選出され, 本会の運営を統括する. 第13条 会計監事は理事より互選により選出し,会計 第2章 目的および事業 監査を行う. 第3条 本会は心脈管作動物質に関する研究の発展を図 り,会員相互の連絡および関連機関との連絡を 第14条 本会には,評議員をおく.評議員は正会員中 保ち,広く知識の交流を求めることを持って目 より選出し,理事会の推薦を経て評議員会で議 的とする. 決し,総会の承認を得るものとする.理事長が これを委嘱する.評議員は評議員会を組織し, 第4条 本会は前条の目的を達成するために次の事業を 本会に関する重要事項を審議する. 行う. 第15条 編集委員は機関誌“血管”(Japanese Journal 1.学術講演会,学会等の開催 2.会誌および図書の発行 of Circulation Research)を編集し,本会の学 3.研究,調査および教育 術活動に関する連絡を行う.なお,編集に関す る事項は,事務局にて決定する. 4.関係学術団体との連絡および調整 第16条 役員の任期は会長は1年,理事長,理事,会 5.心脈管作動物質に関する国際交流 計監事および編集委員は2年とする.ただし再 6.その他本会の目的達成に必要な事業 任は妨げない. 第17条 役員は次の事項に該当するときはその資格を 第3章 会 員 失う. 第5条 本会会員は本会目的達成に協力するもので次の 通りとする. 1.定期評議員会時に満65歳を過ぎていた場合 1.正会員 2. 3年間連続で,役員会等を正当な理由なく して欠席した場合 2.賛助会員 3.名誉会員 第5章 会 議 第6条 正会員の会費は年額4,000円とする. 第7条 賛助会員は本会の目的に賛同し,かつ事業を維 第18条 理事会は少なくとも年1回理事長が招集し, 議長は理事長がこれに当たる. 持するための会費年額100,000円(一口)以上 第19条 総会および評議員会は毎年1回これを開き, を納める団体または個人とする. 次の議事を行う. 第8条 名誉会員は理事会で推薦し,評議員会の議決を 経て総会で承認する.名誉会員は会費免除とす 1.会務の報告 る. 2.会則の変更 3.その他必要と認める事項 第9条 本会に入会を希望するものは,所定の手続きを 経て,会費を添えて本会事務局に申し込むもの 第20条 臨時の総会,評議員会は理事会の議決があっ た時これを開く. とする.原則として2年間会費を滞納したもの は退会とみなす. 第6章 会 計 第4章 役員および評議員 第21条 本会の事業年度は毎年1月1日より始まり, 12月31日に終わる. 第10条 本会は次の役員を置く. 1.会長 1名 第22条 本会の会計は会費,各種補助金及び寄付金を もって充てる. 2.理事 若干名(うち理事長1名) 3.会計監事 若干名 ─ 119 ─ 日本心脈管作動物質学会賛助会員 旭化成ファーマ株式会社 田辺三菱製薬株式会社 アステラス製薬株式会社 日本新薬株式会社 協和発酵キリン株式会社 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 第一三共株式会社 バイエル薬品株式会社 武田薬品工業株式会社 ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社 《五十音順》 ─ 120 ─ 日本心脈管作動物質学会役員 名誉会員 毛利喜久男 中川雅夫 山田和生 平田結喜緒 男(理事長) 一 伊藤 宏 人 寒川賢治 明 玉置俊晃 伊藤正明 西山 成 岩尾 洋 佐田政隆 古川安之 五十嵐淳介 伊藤猛雄 寒川賢治 光山勝慶 中木敏夫 西村有平 大橋俊夫 佐藤靖史 高倉伸幸 徳留 健 牛首文隆 萩原正敏 飯野正光 岩本隆宏 蒔田直昌 三輪聡一 中田徹男 西尾眞友 岡村富夫 末松 誠 多久和陽 土屋浩一郎 山本隆一 服部良之 檜垣實男 廣岡良隆 石橋敏幸 伊藤貞嘉 倉林正彦 小室一成 三浦総一郎 中尾一和 大蔵隆文 佐々木 享 下門顕太郎 筒井裕之 吉栖正生 藤田 浩 東 幸仁 市来俊弘 石光俊彦 岸 拓弥 小林直彦 前村浩二 室原豊明 野出孝一 大柳光正 斎藤能彦 下川宏明 上田誠二 渡邉裕司 (ABC順) 第43回会長 平田健一 理 事 田 平 筒 下 中 田 井 川 利 健 正 宏 監 事 評 議 員 〈基礎〉 〈臨床〉 平田恭信 吉栖正典 安 服 今 岩 松 宮 中 西 新 菅 玉 筒 柳 赤 福 平 池 伊 岸 河 丸 森 錦 楽 渋 下 矢 福永浩司 平野勝也 石井邦明 泉 康雄 南野直人 望月直樹 西田育弘 野間玄督 曽我部正博 高井真司 田中利男 上田陽一 吉栖正典 長谷部直幸 福本義弘 平田恭信 今西政仁 伊藤正明 北村和雄 上月正博 湊口信也 長田太助 小川久雄 佐田政隆 七里眞義 高橋克仁 吉村道博 藤 部 泉 尾 村 田 山 山 藤 原 置 井 澤 澤 田 田 田 藤 野 山 本 見 木 谷 澤 田 譲 裕 祐 靖 篤 貢 隆 俊 正 輝 健 宇 幸 雅 一 俊 宏 正 達 豊 二 一 治 洋 夫 郎 一 成 行 明 晃 人 行 宏 昇 一 一 宏 夫 和 男 聡 雄 実 人 雄 隆 事 務 局 〒514-8507 三重県津市江戸橋2−174 三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス分野内 TEL 059−231−5411, FAX 059−232−1765 ─ 121 ─ 会長 第1回研究会 横山 育三 第2回研究会 藤原 元始 第3回研究会 岳中 典男 第4回研究会 毛利喜久男 第5回研究会 藤原 元始 第6回研究会 岳中 典男 第7回研究会 山本国太郎 第8回研究会 毛利喜久男 第9回研究会 土屋 雅晴 第10回研究会 横山 育三 第11回研究会 日高 弘義 第12回研究会 三島 好雄 第13回研究会 東 健彦 第14回研究会 恒川 謙吾 第15回研究会 戸田 昇 第16回学会 塩野谷恵彦 第17回学会 野々村禎昭 第18回学会 河合 忠一 第19回学会 平 則夫 第20回学会 杉本 恒明 第21回学会 安孫子 保 第22回学会 外山 淳治 第23回学会 千葉 茂俊 第24回学会 中川 雅夫 第25回学会 室田 誠逸 第26回学会 猿田 享男 第27回学会 矢崎 義雄 第28回学会 田中 利男 第29回学会 竹下 彰 第30回学会 岩尾 洋 第31回学会 平田結喜緒 第32回学会 荻原 俊男 第33回学会 藤田 敏郎 第34回学会 辻本 豪三 第35回学会 松岡 博昭 第36回学会 玉置 俊晃 第37回学会 下川 宏明 第38回学会 川 博己 第39回学会 伊藤 正明 第40回学会 西山 成 第41回学会 伊藤 宏 第42回学会 吉栖 正典 第43回学会 平田 健一 日本心脈管作動物質学会誌 血管 第36巻3号 2013年10月2日発行 発行人 田中利男 三重大学大学院医学系研究科 発行所 日本心脈管作動物質学会事務局 〒514-8507 三重県津市江戸橋2−174 三重大学大学院医学系研究科 薬理ゲノミクス分野内 TEL 059−231−5411 FAX 059−232−1765 http://jscr21.medic.mie-u.ac.jp/ 薬理ゲノミクス分野 印刷所 合資会社 黒川印刷 〒514-0008 三重県津市上浜町2−11 ─ 122 ─ ・ 総 編 集 長 岩 尾 洋(大阪市立大学大学院医学研究科分子病態薬理学) ・ ベ ー シ ッ ク 編 集 長 玉 置 俊 晃(徳島大学大学院病態情報医学講座情報伝達薬理学分野) ・ オ ミ ッ ク ス 編 集 長 田 中 利 男(三重大学大学院医学系研究科薬理ゲノミクス) ・ ク リ ニ カ ル 編 集 長 伊 藤 正 明(三重大学大学院医学系研究科循環器内科学)
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