White Paper 動画視認性向上技術 “Turbo 240” とその効果について CONTENTS はじめに ....................................................................................................................................................... 2 応答速度 ...................................................................................................................................................... 2 ホールド型とインパルス型の表示装置 ............................................................................................................ 3 120HZ 信号入力 ............................................................................................................................................ 4 EIZO TURBO 240 .......................................................................................................................................... 5 バックライト調光とフリッカー ........................................................................................................................... 7 まとめ ........................................................................................................................................................... 8 Version 1.00 作成: 2013 年 10 月 EIZO 株式会社 企画部 商品技術課 Technical Overview (QNNZ-13X002A) 1/8 はじめに 一般的な液晶モニターでは動画表示の際に残像が見られます。残像は、液晶の応答速度の遅さ、フレーム数 の少なさ、ホールド型の表示デバイスであること、などに起因して発生します。近年の液晶モニターでは 1ms や 2ms といった応答速度の速いものもありますが、残像は解消されていません。 この残像を低減するために、当社では新機能「Turbo 240」を開発いたしました。 応答速度 応答速度とは、液晶モニターのある画素が元の階調から別の階調に変化するまでにかかる、時間量を表します。 Tone 応答速度が遅い場合、使用者はこの変化の過程を残像と感じます。 Signal Slow RT Fast RT 0 5 10 15 20 25 30 Time (ms) 図 1. 応答速度 Frame 1 Frame 2 Input Signal time Image Display (Slow Response Time) time Image Display (Fast Response Time) time 図 2. 表示画像 Technical Overview (QNNZ-13X002A) 2/8 もしある画素が元の階調から次の階調に瞬時に変化できたとすると、使用者は変化の過程を見ることはできま せんが、それでも使用者は残像を感じてしまいます。これは、表示画像が連続的ではないため、人の目がそれを 不自然なものと感じることが原因です。 ホールド型とインパルス型の表示装置 液晶は、次のフレームが入力されるまで元の表示を維持し続ける、ホールド型と呼ばれる表示装置です。理想 的には、動画は無段階の連続した映像として表示されるべきですが、液晶の表示はそうではないため使用者はそ れを残像と感じてしまいます。 一方、CRT のようなインパルス型と呼ばれる表示装置は、映像を一瞬表示した後、次のフレームが入力される まで何も表示しません。使用者は飛び飛びの映像を見ることになりますが、それを連続したスムーズな表示と感じ ます。これは、使用者が飛び飛びの映像の間のフレームを、頭の中で補完して認識するためです。 Natural Image ∞ frame/s time Hold-Type Display (LCD) time Sustains image until next frame Impulse-Type Display (CRT) time No displaying until next frame 図 3. ホールド型とインパルス型の違い(1) time Natural Image (Ideal motion) User perceives this unnatural area as motion blur Hold-Type Display User perceives this skipped image as a continuous image Impulse-Type Display time 図 4. ホールド型とインパルス型の違い(2) Technical Overview (QNNZ-13X002A) 3/8 120Hz 信号入力 PC の表示では、リフレッシュレート 60Hz の信号が一般的に使われています。リフレッシュレート 60Hz とは、モニ ターの表示を毎秒 60 回書き換えることを意味します。もしリフレッシュレートが 120Hz だとすると、表示の書き換え 回数は毎秒 120 回となり、60Hz の信号よりも動きの滑らかな表示が得られます。 0/60 sec 2/60 sec 1/60 sec Input Signal 60 frame/s (60 Hz) time Displaying Images 60 frame/s (60 Hz) time 0/120 sec 1/120 sec 2/120 sec 4/120 sec 3/120 sec Input Signal 120 frame/s (120 Hz) time Displaying Images 120 frame/s (120 Hz) time 図 5. 60Hz 信号と 120Hz 信号の違い(1) time Natural Image (Ideal motion) Hold-Type Display (60 Hz) User perceives it as more natural than a 60 Hz signal Hold-Type Display (120 Hz) time 図 5. 60Hz 信号と 120Hz 信号の違い(2) リフレッシュレート 120Hz の信号は、PC 操作に対する遅延を減らすことができ、素早い動きの映像も滑らかに表 示されるため、FPS (first-person shooter)ゲームなどでよく使用されます。 Technical Overview (QNNZ-13X002A) 4/8 もちろんリフレッシュレートをもっと高くすれば、それだけ人の目にも自然に感じる動画を表示することができます。 しかし高いリフレッシュレートは PC やグラフィックスボード、ソフトウェアにも高い負荷をかけてしまい、加えて既存 の信号ケーブルでは高いリフレッシュレートを伝送するだけの帯域が無いのが現状です。 EIZO Turbo 240 当社の「Turbo 240」機能では、入力信号のフレーム数をモニター内部で 2 倍に増やし、バックライトの明滅と組 み合わせることで、効果的に残像を低減します。このバックライトの明滅により、モニターはインパルス型の表示装 置のように映像を表示します。 0/120 sec 1/120 sec 2/120 sec 4/120 sec 3/120 sec Input Signal 120 frames/s time Doubling Frames 240 frames/s No displaying with backlight blinking time 4/240 sec 8/240 sec 0/240 sec 5/240 sec 9/240 sec 1/240 sec 6/240 sec 2/240 sec 7/240 sec 3/240 sec Backlight Blinking = Turbo 240 “On” time 図 7. Turbo 240 の動作原理 Turbo 240 の処理では、まず 1 つのフレームを 2 回繰り返すことにより、毎秒 120 フレーム(120Hz)の入力信号を 毎秒 240 フレーム(240Hz)に変換します。この時点では、表示映像は一般的な 120Hz のゲーミングモニターと変わ りません。次に、バックライトを表示映像と連動して明滅させることで、フレームとフレームの間に黒画面を挿入しま す。この毎秒 240 回のバックライトの明滅により、モニターはインパルス型の表示装置のように映像を表示します。 Technical Overview (QNNZ-13X002A) 5/8 図 8 は、入力信号に対する画面の反応を表した図です。Turbo 240 を有効にすることで、使用者は液晶の変化 の過程をほとんど見ることができなくなります。 Tone Signal LCD Turbo 240 "On" Time 図 8. Turbo 240 を有効にした際の画面の反応 一般的なゲーミングモニターと Turbo 240 を有効にした当社モニターを比較したものが図 9 です。一般的なゲー ミングモニターはホールド型の表示であり、使用者は残像を感じてしまいますが、Turbo 240 有効の当社モニター はインパルス型に近い表示となるため、使用者は残像を感じにくくなります。 Common Gaming Monitor 120 frames/s time EIZO FORIS w/ Turbo 240 “On” 120 frames/s time No displaying with backlight blinking 図 9. 一般的なゲーミングモニターと Turbo 240 搭載の当社モニターの違い Technical Overview (QNNZ-13X002A) 6/8 Motion Without Turbo 240 With Turbo 240 図 10. Turbo 240 の効果のイメージ バックライト調光とフリッカー Turbo 240 機能を有効にした場合、静止画表示では動画では感じないフリッカー(チラツキ)を感じることがありま す。これは残像を低減するためにバックライトを明滅させていることが原因です。 もしフリッカーが気になる場合は、Turbo 240 を無効にすれば輝度設定の高低を問わずフリッカーフリーの表示 となります。このとき、モニターは DC 調光と高速 PWM 調光を組み合わせて輝度を調整します。 従来の一般的な PWM 調光では、バックライトを約 1/200 秒の周期でオフ・オンすることで、画面の輝度を調整し ていました。この方式で画面の輝度を暗く設定した場合、1/200 秒の中でバックライトが点灯している時間が短くな り、使用者はフリッカーを感じることがありました(図 11)。それに対し高速 PWM では、バックライトをオン・オフする 周期をより短く高速にすることで、フリッカーをほとんど感じさせない表示を実現します。 一方 DC 調光では、バックライトのオフ・オンではなく発光素子に流す電流を変えることで、画面の輝度を調整し 100 100 80 80 60 DC / PWM 40 About 1/200 sec 60 DC PWM 40 20 20 0 Brightness (%) Brightness (%) ます。従って、原理上フリッカーは発生しません。 Time 0 Time 図 11. DC 調光と PWM 調光(輝度 100%、輝度 50%) DC 調光はフリッカー無しに輝度を調整できますが、PWM 調光に比べると輝度を下げにくいというデメリットがあ ります。この弱点を解消するため、当社では DC 調光と高速 PWM 調光を組み合わせ、高輝度~中輝度領域を DC 調光、低輝度領域を DC+高速 PWM 調光で輝度を調整しています。 Technical Overview (QNNZ-13X002A) 7/8 100 About 1/200 sec Brightness (%) 80 60 DC + Hi-PWM PWM 40 20 0 Time 図 12. Turbo 240 オフ(DC+高速 PWM 調光)と従来の PWM 調光(輝度 10%) 図 12 は DC 調光と高速 PWM 調光を組み合わせた際の動きを表したものです。モニターは DC 調光で下げられ るだけ輝度を下げ、そこから従来の PWM 調光の約 100 倍速の高速 PWM 調光でバックライトをオン・オフし、輝度 を調整します。これにより、画面を低輝度に設定しても使用者がフリッカーを感じることはほとんどありません。 まとめ 以上のように、EIZO Turbo 240 機能は液晶モニターの残像を効果的に低減します。Turbo 240 機能により、特に ゲームユーザーは映像をよりクリアに見ることができ、どこに何が表示されているかをより正確に認識できるように なります。 また Turbo 240 は最小限の遅延(毎秒 120 フレームの映像で約 1.5 フレーム分)で処理を終えるため、Turbo 240 搭載モニターは、FPS、レーシング、格闘、その他素早い反応が求められるゲームに理想的なモニターと言えま す。 注)全ての図は実測図ではなく模式図です。 記載されている会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。Copyright Ⓒ 2013 EIZO 株式会社 All rights reserved. Technical Overview (QNNZ-13X002A) 8/8
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