大学院医学研究科人体病理学/病院病理部

医学フォーラム
<部 門 紹 介>
大学院医学研究科人体病理学/病院病理部
は
じ
め
に
年(昭和 年)に臨床検査科の一部門
として発足した病理検査室は,年(平成 年)に病理部として独立し 年(平成 年)
に病理学教室の一講座部門である計量診断病理
学として生まれ変わりました.途中 年(平
成 年)に現状に即した教室名として人体病理
学と名前は変わりましたが,本学附属病院の外
科病理診断を一手に引き受けるとともに,人体
病理に関する臨床研究を本学臨床各科や各関連
病院と連携しつつ進めています.
近
況
本年 月 日現在,人体病理学
病院病理部
では初代教授兼病院病理部部長である柳澤昭夫
先生の他教職員 名,大学院生 名(うち消化
器外科および内分泌乳腺外科より 名ずつ)
,専
攻医 名(うち消化器内科より 名)
,臨床検査
技師 名(うち嘱託 名)が業務にあたってい
ます.本学附属病院の病理診断業務を一手に引
き受けるとともに,関連病院等への病理医の派
遣を通じ,関西圏の医療に貢献しています.ま
た,病理学教室の他の部門とも協力し院内の病
理解剖を行うと同時に,関連病院の病理解剖に
も対応しています.
教
育
学部学生の講義実習は病理学教室全体で分担
して行っていますが,人体病理学部門は病理診
断実習を主体に 回生から始まるポリクリおよ
びプラカンを担当しています.また,病理解剖
症例の は原則全例行うこととし,開催を全
学メールでお知らせしています.消化器内科,
消化器外科,腎臓高血圧内科,内分泌乳腺外科,
放射線科,整形外科と症例検討会を定期的に開
催すると同時に,関連病院の病理医の集う症例
検討会(京都外科病理検討会)を毎月曜日に開
催しています(図 )
.同検討会はこの年末で 年目を迎えることとなり通算検討症例数も
例を超えています.一方初期研修や後期
研修の場として徐々に病院病理部の存在が認知
されつつあり,一講座部門となってから初期研
修 名,後期研修 名を受け入れています.
研
究
研究については臨床各科と共同で行う癌を対
象とするプロジェクトが多く,消化器では食道
癌・胃癌・大腸癌,膵臓癌や胆道癌,その他の臓
器では前立腺癌,乳癌,骨軟部腫瘍について臨
床病理学的な研究を進めています.癌以外にも
腎炎や移植臓器を対象とする研究も共同で進め
られています.我々の部門では を用いてパラフィン材料から採取した微小検体
からの遺伝子解析からオーソドックスな 染
色の連続切片作成まで様々な手法が選択可能で
すが,基本的にヒトの材料を用い,病理診断と
その後の治療に役立つ研究を目指しています.
業
務
病院病理部発足当時(年)は年間の組織
診は 件(うち術中迅速 件)
,細胞診は
件でしたが,昨年(年)は組織診 件
(うち術中迅速 件)
,細胞診 件に上っ
ています.組織診の伸びに対して術中迅速の伸
びは大きく,また組織診 件当たりのブロック
数が増加し,総標本数の伸びも著しくなってい
ます.医療の質の向上から,免疫組織化学の検
体数も大変増加しています.具体的に凍結標本
と通常標本を合わせた標本作成枚数で比較する
と,万 千枚あまり(
)から 万 千枚
余り(
)と 倍,免疫染色の標本作成枚
数 は 枚(
)か ら 枚(
)で
倍と飛躍的に増加しています.本学病理学
医学フォーラム
図
教室で行われた病理解剖数は 体
(年)
で,
ここ数年 体前後で推移しています.
病院病理部では,病理診断についてはスタッ
フ全員が一般病理医としてすべての臓器を診断
できることを基本としています.その上でそれ
ぞれのスタッフが を有し,より専
門的な診断を行うようにしています.具体的に
は,消化管,胆道膵臓,腎臓,前立腺,移植,
乳腺,骨軟部腫瘍などでそれぞれの臓器を専門
とする病理医が最終診断に関与するようなシス
テムが組まれています.
目 標 と 課 題
優秀な外科病理医(診断病理医)の育成を通
して,国内特に関西圏の医療に貢献することを
第一の目標と考えています.さらに優秀な臨床
医(外科病理医)であると同時に日常の診断業
務の際に生ずる「なぜ?なに?」を追求するこ
とで臨床病理学的な研究を行い,科学的な問題
解決能力を各々が身につけることも必要と考え
ています.臨床各科との を通じて診
断・研究のバランスのとれた病理医を今後も育
てていきたいと思っています.
現在まで複数名の初期・後期研修医を受け入
れてきましたが,講座開設以来の 年間で 名
の病理専門医を育成し送り出したものの,残り
の多くは他の臨床科へ入局あるいは復帰してい
きました.本学は関連病院の数も多く,現状で
は病理医の需要に十分応えられていません.今
後医療の細分化,専門化が更に進み,それぞれ
の臓器に専門的な知識を有する専門病理医が必
要になることは言うまでもありませんが,それ
にもまして,一般病理医の育成は火急の問題と
なっています.病理医不足の問題は本学のみな
らず我が国の医療問題の中でも,特に重大なも
のの一つです.解決に向けて早急な対策が待た
れます.
また,中央診断部門である病院病理部を見る
と,所属する技師の高齢化(最年少で 歳)は
大問題です.病理標本の作製は「技」が必要な
分野であり,今後技術の継承が危惧されていま
す.
文責:講師 小西英一