保健師の役割増 尼崎モデルで心血管病減

CON TEN TS
2面
3面
日本成人病
(生活習慣病)
学会
小田原雅人
大会長に聞く
18
3面
食の欧米化、歩かない生活を背景とした生活習慣病への対策で医療
と連携する形で予防医療に取り組む保健師の役割が増大している。野
口緑担当部長率いる兵庫県尼崎市の取り組みは群を抜いた成果を出し
ている。野口氏の情熱に裏打ちされたさまざまな工夫が隠されていた。
(大家俊夫)
「健康日本21」
策定の
河原和夫教授
生活習慣病対策で
提言
日本病態栄養学会年次学術集会 本田佳子大会長に聞く
Special Interview
メタボ撲滅委実行委員
兵庫県尼崎市市民協働局
ヘルスアップ戦略担当部長
野口 緑
保健師の役割増
尼崎モデルで心血管病減
改善の成果全国へ
労働者の町で知られる尼崎市の
いと渡さない。取りに来ると、指導対
さらにカラダにイイコトしてポイント
象者ではない人にもきっちり保健指
をため商品などと交換できる制度も
導をするようにしました」。
2015年に始め、市民の健康への意
欲を高めている。
「市民の健康向上が生きが
い」
と語る野口氏=尼崎市内
(鎌田健志カメラマン撮影)
のぐち・みどり 1 9 8 6 年 尼 崎 市 役 所 入
所。市民協働局課長などを経て2015年、
同部長(ヘルスアップ戦略担当部長)に就
任。日本肥満学会理事。大阪大学大学院
公衆衛生学招聘准教授。著書に『脂肪細
胞のひみつとつきあい方』
(メディカルトリ
ビューン、共著)など。
健 康デ ータは 決してい いものでは
市 独自の 健 診 血 管 チャート図も
なかった。それが、野口氏が中心と
用 意した。健 診デ ータの 内 臓 脂 肪
「住民の方が10人いたら、10通り
なって保 健 指 導すると、がらりと様
値、腹囲、体格指数(BMI)を下欄に
の生活があり、生活習慣がある。そ
してうれしいですね」。全国に名を知
相が変わった。特定健診保健指導が
示し、それが悪化していくと最後は
れに触れさせていただくのは私の生
られた〝カリスマ保健師〟は多忙な管
始まった2008(平成20)年の前の5
人工透析、糖尿病合併症による下肢
きがい。住民が健康状態を学び、改
理職になってもなお、その視線は一
年間と後の5年間で虚血性心疾患の
切断、脳卒中、心筋梗塞に至るとい
善に向けて動いてくれると何にもま
人ひとりの住民に向けられている。
死亡率をみると、人口10万人に対し
う流 れを明 示。
「この図は自分 がど
て尼崎市の男性、女性とも約25%の
の位置にいるかが一目瞭然で分か
大幅減少を示し、全国平均を超えて
り、将来のリスクを知ってもらう上で
いた数 値 が いずれも下 回る結 果と
効果的です」
1月と5月に尼崎市制100周年フォーラム
尼崎市市制100周年にあたる2016年、その記念事業として1月28日
詳しいデータを取るために、通常
(木)、同市内で「ヘルスアップ尼崎戦略事業フォーラム」
と「健康・未来・
の健診にはないメニューも。高リス
経営を考えるフォーラム」が開催。
タニタ食堂の秘話と健康経営などが紹
野 口 氏 は「住 民 の 方 に自分 の 健
ク対象らには、糖負荷試験に頸部エ
介される。先着200人。
康状態を知ってもらうことが一番大
コー、内臓脂肪を測定する検査もパ
切。だから、健診データは取りに来な
ナソニックや花王と提携して導入。
なった。脳梗塞の死亡率も同様の傾
向が見られた。
5月8日
(日)
には同市内で
「100周年未来いまカラダシンポ」
と
「尼崎市減塩
サミット2016」
が予定される。
いずれも問い合わせは☎06・6375・5639へ。
2
Vol.18
大会長に聞く
第50回 日本成人病(生活習慣病)学会
●
●
小田原 雅人 氏
●
減量手術の詳細解説
50回振り返る記念講演・式典
産業医や糖尿病療養指導士の単位も
おだわら・まさと 1980年、東京大学医学
部卒業。筑波大学臨床医学系内科(内分
泌 代 謝 科 )文 部 教 官 講 師 、英 国オックス
フォード大学医学部講師、虎の門病院内
分泌代謝科部長などを経て現職。趣味は
スキーだが、
「 多 忙で何 年もやっていない
のが残念」
とか。
内科・外科問わず幅広い演題
さまざまな生活習慣病を包括的にとらえ、内科・外科問わず幅広い分
について、東京医科大学高齢診療科
ど、これまで数多くの研究成果を挙
野の医師が参加することで知られる日本成人病(生活習慣病)学会。そ
の羽生春夫主任教授が発表。
また、群
げている。小 田 原 氏 は 成 人 病 学 会
の節目となる第50回の学会が2016年1月16・17の両日、東京都千代田
馬大学大学院病態総合外科学の桑
について「1人の患者が複数の生活
区の都市センターホテルで開かれる。他学会ではカバーしきれない領域
野博行教授は、がん克服の現状につ
習慣病にかかったり、それぞれの病
いて、
さらに、脳卒中ガイドラインが昨
態 が 臓 器 連 関 する中、自分 の 専 門
年改訂されたのに合わせ、
ガイドライ
分 野だ けに偏らずに吸 収できるこ
ン委員長で日本脳卒中学会前理事長
と」をメリットとして挙げる。自身の
の小川彰・岩手医科大学長がその概
経験として、糖尿病と関連の深い膵
要を解説する。
臓がんについて、
「外科手術で入院
を含む最新の成果が発表されるが、そのみどころについて、会長の小田
原雅人・東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授に聞いた。
(山本雅人)
がんや認知症もカバー
を交え報告する。
胃バイパス術などの減 量 手 術で
「成人病研究会」
として発足し第1
した人が糖尿病の悪化で呼ばれる
「1つの専門分野の知識だけでは
は、体 重 が 減 少 する以 前 に血 糖 な
回の研究会が開催されたのは1970
ことも多いが、この学会で外科の先
対 応できな い の が 生 活 習 慣 病 。今
どのデータが改善し始めることが分
年。今回、50回の記念式典と歩みを
生から最新の手術について学ぶこ
回は多くの疾患のベースとなる肥満
かっており、食べた物がバイパスによ
振り返る記念講演(17日午後1時〜)
とができている」
という。
と糖尿病に特に力を入れた内容に
り直接、小腸に到達することでGLP―
も行われる。
した」と語る小 田 原 氏 。シンポジウ
1の分泌が増えるからではないかと
ムⅡ「肥満患者の内科・外科的治療」
いわれている。小田原氏は「シンポ
他分野の最新知見を
学会ではこのほか、毎年、日本医
師会認定産業医や糖尿病療養指導
士の資格更新の単位が取得できる
(16日午後2時50分〜)では、肥満
の他の演題と合わせ、内科・外科両
遺 伝 子 の 面 から糖 尿 病 を 研 究
演題が用意されているが、今回はシ
や 糖 尿 病 関 係の学 会でもこれまで
面から理解を深めるいい機会になる
する分 野 の 先 駆 者として知られる
ンポジウムⅢ「職域と糖尿病」
( 17日
本格的に取り上げられることの少な
のではないか」
と語る。
小 田 原 氏。先 天 的な遺 伝 子 異 常に
午後2時35分〜)で、新潟大学大学
かった減量手術について、国内でこ
シンポジウムⅠ「健康寿命を延ば
よって受 容 体 が 働 か ずインスリン
院血液・内分泌・代謝内科の曽根博
の分野をリードする四谷メディカル
すために」
(16日午前9時40分〜)で
抵 抗 性 を きた すタイプ A や 、が ん
仁教授が「職域における運動療法と
キューブ減量・糖尿病外科センター
は、根本的な治療法がない中、糖尿病
にも関 連 するインスリン 様 成 長 因
その指導」で講演するなど、充実した
の笠間和典センター長が最新データ
との密接な関連が指摘される認知症
子(IGF―1)に関する重要な発見な
内容となっている。
インセンティブの重要性
について語る久野教授
=東京国際フォーラム
健康無関心層の市民への自治体アプローチ
久野教授「効果的なインセンティブを」
健 康づくりに無 関 心な市 民に
がなかったことを紹介。
「〝分かっ
対し自治体はどのようにアプロー
ていても運動できない〟のではな
チ す べきか 。この 難 題 にデ ータ
く、意思がなく情報収集もしない
面 から答える講 演 が 、筑 波 大 学
ことで、
〝 知らないからできない〟
大 学 院 の 久 野 譜 也 教 授 により
可能性がある」
と指摘。その層へ
2015年12月15日、東京都内で
の働き掛けとしてインセンティブ
行われた。
が必要であるとの考えを示した。
トがもらえるのではなく、運 動 量
介。一 方で、インセンティブを地
厚 生 労 働 省 主 催 の「 デ ー タ
インセンティブには、自治体主
( 歩 数 )がど れ だ け 増 えた か な
域 限 定 の 商 品 券 にし、街 中 に告
ヘ ル ス・予 防 サ ー ビ ス 見 本 市
催 の 健 康 づくりのプログラム へ
ど、成果や努力に応じたポイント
知ののぼりを立てたことで「自分
2015」のセミナーで報告された
の 参 加 者 にポ イントを 付 与し、
付与の方が効果が高いことを明
の店で買ってもらおうと地元の各
もので、久 野 教 授 はまず、2 0 1 0
相当の商品券を支給するなどの
らかにした。
商店が繰り返し告知し、口コミで
年 に約 1 9 0 0 人 に対し行ったア
方 法 がある。久 野 教 授は複 数の
ただ、そのような施策を行って
広がり参加者が増えた」
と具体例
ンケートで、運動不足の人のうち
市と共同で行っている実証 実験
も、市 民 へ の 広 報 が 浸 透しな け
を挙 げ、経 済 活 性 化と医 療 費 削
約 7 割 が、運 動しようという意 思
などから、参加しただけでポイン
れば参加してもらえない現状も紹
減に貢献することを強調した。
3
Vol.18
第19回 日本病態栄養学会年次学術集会
本田佳子大会長(女子栄養大学教授)に聞く
栄養食事療法ガイドライン作成の一歩に
のため、関連の11学会と日本栄養士
を科学的に追究することで、新たな示
会により日本 栄 養 療 法 協 議 会 が 発
唆が得られるのではないか」
と語る。
足しており、効果的な栄養療法を確
このほか、新たな概念として注目
イドラインはまだ作成されていない。
立し、その標準化による医療の質の
されている時間栄養学について、2日
食事療法を行うための研究領域「病
そのため、学会別のガイドラインの
向上のため議論が重ねられている。
目午前(10日8時〜)にシンポを組み
態栄養学」。その最新の成果を紹介
栄養・食事の章などを比較すると整
今 回の学 術 集 会では、初日午 後(9
込んだ。体内時計とのかかわりで、食
する日本病態栄養学会の第19回年
合性に欠ける部分が生じている。
日2時~)、同協議会のパネルディス
事時間により体の反応が変わるだけ
患 者にとって最 善の栄 養 管 理 や
次学術集会が2016年1月9・10の両
本田氏によると、複数の疾患を合
カッションを行い、学会ごとにどのよ
でなく、食事が体内時計に影響を与
日、横浜市西区のパシフィコ横浜で
併するなど生活習慣病の病態が複雑
うに栄養療法に取り組んでいるかの
えるなど相互の重要な関係が指摘さ
行われる。
「栄養食事療法 そのサ
化する中「どの疾患を優先して栄養食
現状を紹介する。
れる中、第一線の研究者により最新
イエンスとヒューマニティ」をテーマ
事療法を行うべきか。緊急性の高い
とする今回の学術集会のみどころに
疾患を優先する
栄養成分を基礎的に研究する領域
データが紹介される。
の重要性とともに、
「治療の究極の目
特別講演1(9日午前9時〜)では
ついて、大会長の本田佳子・女子栄
のは当然として
的がQOL(生活の質)の保持・向上と
江戸東京博物館の竹内誠館長が江
養大学栄養学部教授に聞いた。
も、すべてが 慢
すれば、
どうおいしく食べるかという
戸時代の人々の生活の知恵につい
生活習慣病が増加する中、その抑
性疾患の場合は
課題に行き着く」
と話す本田氏。そこ
て語り、同2(9日午前10時40分〜)
制や合併症予防のため、栄養食事療
どう考 えたらよ
で2日目午前(10日9時半〜)には「味
では日本医学会の高久史麿会長に
法の重要性はますます高まっている
いかという問題
のサイエンス」
と題したシンポジウム
「医学的に、栄養食事療法がどうあ
が、疾患別に細分化している各学会
もある」
という。
を用意した。
「病態や年齢により味覚
るべきかを大 局 的な観 点 から講 演
を横断するような栄養食事療法のガ
これらの解決
が変わったり、なくなったりするが、味
いただく予定」
という。
本田氏
アカデミア
メタボ健診で医療から予防の時代へ
数値目標掲げ住民に働きかけを
河原和夫・東京医科歯科大学大学院教授が提言
厚生省(現厚生労働省)勤務時代に「健康日本21」
( 第1次)の策定
された。これによって医療重視の時
べき健康施策や予防施策には必ず
にかかわるなど官僚経験を生かした立場から医療政策を研究する東京
代から予防の時代に入った」
と指摘
達 成しなければならない 縛りがな
医科歯科大学大学院の河原和夫教授(政策科学分野)
はわが国の生
する。
く、現状では努力目標にとどまって
活習慣病対策をどのように見ているのだろうか。健康日本21を含め、医
療政策の成果と課題を語ってもらった。
(大家俊夫)
具 体 的には「保 険 者 が 被 保 険 者
いる。しかも市町村によっては達成
の 健 康 状 態を把 握したうえで具 体
目標が設定されていないところもあ
的な保 健 指 導に入ることが 可 能に
り、あいまい」
と課題を指摘する。
予 防 の 重 視 や 健 康 づくり支 援 のた
なった。生活習慣病が重症化する前
河原教授は団塊の世代すべてが
運動ともいわれる「健康日本21」
(1
めの 環 境 整 備 に重 点 が 置 か れた。
の段階、
メタボや予備軍の段階で保
後期高齢者に移行する「2025年問
次、2000年〜2012年度)では一次
同1次の成果として「メタボリックシ
険者が介入する役割が増した」
と解
題」を見 据え、
「わが 国の医 療の課
説する。
題は寝たきりなどの要 介 護 者をい
21世紀における国民健康づくり
ンドロームを認知している国
民の割合の増加」
で、目標値が
「健康日本21」の2次(13年度〜)
かにして減らして健康寿命を延ばす
「2 0 歳 以 上の国 民の8 0 % 以
は 生 活 習 慣 病 の 予 防と重 症 化 予
かにある」としたうえで、
「肥満やた
上」であったのに対し、0 6 年
防、健 康 寿 命 の 延 伸と健 康 格 差 な
ばこが体に悪いことは多くの人に伝
度調査の77%から、09年度に
どの重点項目が設定された。
メタボ
わっているが、それをどうやって推
は92%に達したことに注目す
の該当者・予備軍の数について08
進するかは、自治体がそれぞれの実
る医療関係者は少なくない。
年度の1400万人から15年度には
情に基づ いて明確な数値目標を掲
25%減少させる目標が設定された。
げて住 民 に働きか けることが 必 要
健診(メタボ健診)
・特定保健
一方で、健康寿命の延伸については
だ」
と訴えている。
指 導 がスタートしたことをと
10年の男性70.42年、女性73.62年
らえ、
「あまり語られていない
に対し、22年度の目標は「健康寿命
が、健康保険事業の運営主体
の増加」
とするだけで具体的な数値
である保 険 者 の 機 能 が 強 化
を挙げていない。
河 原 教 授はその間に特 定
河 原 教 授 はこうした数 値 目 標 は
医 療 政 策を推 進 するうえで重 要と
学会で河原教授は多くの医療関係者に声を
かけられる注目の存在=2015年11月、長崎
市での日本公衆衛生学会会場
し、
「国の方 針を受 け、健 康 増 進 施
策の最前線である市町村が実施す
かわ はら・か ずお 1 9 8 6 年 厚 生 省 入 省 。医
療 局 地 域 保 健・健 康 増 進 栄 養 課 長 補 佐 時 代
に「健康日本21」を策定。2000年、東京医科
歯科大教授就任。厚労科研費研究「医療計画
を踏まえ医 療 の 連 携 体 制 構 築 に関 する評 価
に関する研究」は、医療計画の見直しについて
(2 0 1 2 年 3月)のガイドライン等の開 発に引
用された。著書に「社会・環境と健康 (エスカ
ベーシック)」などがある。
4
Vol.18
第一生命保険の「健康経営」
職員の健診受診徹底で医療費削減
メタボリックシンドロームの診断基準策定10年を記念した
100
ケイプラザで行われ、第一生命保険(本社・東京)の友重淳
80
受診率
(%)
セミナーが2015年11月2日、東京都千代田区の大手町サン
二人事部部長兼健康増進室長が、厚生労働省の「健康寿
命をのばそう! アワード」で優良賞を受賞した同社の「健康
経営」について紹介した。
(山本雅人)
友重氏
(18.1%)が国の目標(45%)
積極的に取り組んでほしい
に 遠く及 ば な い 中 、全 国
日本 初 の 生 命 保 険 の 相
旨の宣言を発信。
「トップダ
平均の3倍以上もの実施率
互 会 社である同 社 の 創 業
ウンにより健診受診などを
(58.3%)
となった
(同参照)
。
者・矢 野 恒 太は医 師。健 康
徹 底してもらう戦 略を取っ
それらは職員の健康状態
医療に強い関心を持ち、当
た」
と振り返る。
の変化にもはっきりと表れ
数字に表れる
た。定期健診での有所見率
創業者は医師
時、
日本人の死因1位の結核
対策を目的に、財団法人結
これを受け、定期健診で
費削減にも貢献するなど、国
法人保生会を設立している。
再検査となった職員に受診
民の健康づくりのモデルケー
その〝DNA〟を受け継ぎ、
を強く勧めたところ、2008
スになり得るものといえる。
同社では健康増進を社の柱
年には27.2%だった再検査
友重氏は「50代以降の1
に据え、2013年にその基本
の受診率が年々上昇、14年
人あたり医療費が上がる傾
方針を策定。友重氏によると
には80.6%に達した(グラフ
向にあることから、若年層に
参照)。
健康意識を持ってもらうこと
「社会保障制度を補完する
特に大きな成果を挙げた
が重要」
と語り、
創業月の9月
の健康増進に寄与するとと
のが特定健診・特定保健指
を毎年、
健康増進月間として
もに、自社の職員の健康増
導(第1期=2008〜12年)
全従業員向けのキャンペー
進によって医療費削減も含
の実施率。特定健診では全
ンを行うなどしているという。
めた範を示す」
ことがポイン
国平均を15ポイント近くも
同 社は、経 済 産 業 省・東
トだという。
上回る85%を記録し、国の
京証券取引所の2014年度
目標値
(80%)
も超えたほか、
「健 康 経 営 銘 柄」にも選 定
基本方針に先立ち2011
年、渡邉光一郎社長が全従
特定保健指導では、
全国平均
77.1
78.4
80.6
2011
2012
2013
2014
53.0
27.2
2008
2009
2010
■ 高い特定健診・特定保健指導実施率
100
国の目標
85.0
80.0
80
全国平均
70.1
第一生命
60
58.3
45.0
40
18.1
20
0
特定健診
65.3
60
50
特定保健指導
■ 改善傾向の定期健診有所見率
70
有所見率
(%)
生命保険会社として、国民
74.4
40
0
が年々改善(同参照)、医療
核予防会の前身である財団
69.1
60
20
第1期の実施率
(%)
業 員 に向 け、健 康 づくりに
■ 定期健診の再検査受診を徹底
60.4
2009
65.0
63.5
59.1
59.1
2010
2011
第一生命男性
第一生命女性
62.8
62.0
61.7
57.3
56.8
57.1
2012
2013
2014
※有所見率とは全受診者に対し、判定C
(要受診)
・
D
(要再検・要精検)
・E
(治療中)
の人の占める割合
された。
記念セミナー「肥満・メタ
ボの為の具体的な指導法」
の春日雅人氏(国立国際医
療研究センター総長)、野口
(メタ ボリックシンドロ ー
緑実行委員(兵庫県尼崎市
ム撲滅委員会、産経新聞社
市 民 協 働 局 部 長)が 講 演。
主 催 )では、同 委 員 会 の 松
各 演 者 の 講 演 要 旨 はメタ
パネルディスカッションを行う
(右端から)
友重、野口、島本、春日の各氏。左端は座長の松澤氏=大手町サンケイプラザ
澤佑次委員長(住友病院院
ボリックシンドロームネット
長)、島本和明委員(札幌医
(http://www.metabolic-
科 大 学 長 )、オブザ ーバ ー
syndrome.net/)に掲載。
第38回 日本高血圧学会総会
食品業界の減塩の取り組み報告
日本高血圧学会の第38回総会
減塩の取り組みについて発表。減
分 野 でも減 塩 の
が2015年10月9日〜11日、愛媛
塩の商品は、食塩の一部を塩化カ
動きが出始め、コ
県県民文化会館(松山市)で開か
リウムで置き換え、それにより生じ
ンビ ニ の お で ん
れた。今回は若手研究者による企
るえぐみをポリグルタミン酸でマ
で 3 0 % 減 塩 など
画を増やし、プログラムも、これま
スクする製法をとっているが、
コス
を売りにするもの
での大 会 長 主 導 からプログラム
トがかかり、
「通常の商品の約1.4
が出てきているこ
委員会による案を基に作成するな
倍の価格となるため、なかなか普
とを紹介した。
ど、
より開かれた学会となった。
及しない」
と現状を明かした。
さすが『坊っちゃん』
の舞台・松山での学会。ポスター座長のいでたちに注目
一般演題では、数年前から発表
ナーでは、高 血 圧 は 循 環 器 病 の
初日のシンポジウム2「国民の
そんな中、業界の一部では、商
されている、みその摂取は血圧に
最も大きなリスクとの考えに基づ
血圧低下のためのポピュレーショ
品を減 塩 品だ けにすることで複
影響しないことについて、内容を
き、
「高血圧・循環器病予防療養
ン戦略」では、だしやめんつゆで
数の製造工程を持つことを避け、
補強する最新のデータの報告な
指 導 士」の 資 格を創 設、3月6日
知られるヤマキ(本社・愛媛県伊
コストを 抑えるなどの 工 夫 が 出
どがあった。
に認定試験を東京で開催するこ
予市)の小澤真氏が食品産業の
ているという。また最 近、中 食の
最 終日に行 われたプレスセミ
とが発表された。
5
Vol.18
第36回 日本肥満学会シンポジウム
メタボや肥満症の現状について語り合う
(左から)野口、津下、宮崎の各氏
=名古屋国際会議場
ステロールでは1〜3%の減量でそれ
ぞれ有意に改善する」
ことを紹介。
「や
れそうなところから生活習慣の改善を
始めてもらえるように目標設定するこ
とがポイント」
だと述べた。
ただ、減量
に際しては、
「食事に比べ、
運動での減
量は意外に減らないことを知っておい
てほしい」
とも付け加えた。
わずかな減量でも数値が改善する
理由は、
「中でも内臓脂肪が特に多く
減っているから」
とし、
「そのことでア
ディポサイトカインの分泌が改善し、
検査値の変化に結びついているため
メタボと肥満症の違い再確認
専門家でもあいまいな人が多いメタボリックシンドロームと肥満症と
の違いについて改めて解説し、効果的な保健指導につなげるためのシ
ではないか」
と分析した。
このほか、
「支援開始から1カ月以
内に体重が減り始めた人の成功率
が高いとのデータが出ている」
とも語
り、早期から、数値として減量の実績
ルコール性脂肪性肝炎(NASH)に移
行、
そこから肝硬変になることを説明。
を出すことの大切さも明らかにした。
今後の課題としては「非成功者も
ンポジウム「メタボリックシンドローム、肥満症の病態」が、第36回日本
「悪化にはインスリン抵抗性が大き
まだ結構いることから、宿泊型の保
肥満学会のプログラムとして2015年10月2日、名古屋市で開かれた。
く関与していると思われるが、肥満の
健指導(下の記事参照)などで意欲
最新のデータを盛り込みながらの分かりやすい内容に、参加者はメモを
取りながら真剣に耳を傾けた。
(山本雅人)
る11の健康障害を合併するという点
重点置く疾患に違い 「BMIが25以上でなくても、内臓
人はさまざまながんのリスクがあると
認識してほしい」
と語った。
わずかな減量で改善 を高めていく必要がある」
と話した。
兵庫県尼崎市市民協働局の野口
緑ヘルスアップ戦略担当部長は、
「人
的要因から、
メタボ・肥満の市民のす
で単なる肥満とは区別される」
と肥満
あいち健康の森健康科学総合セ
べてには対応できない」
と課題を提
症の概念を説明。そのうえで、心筋梗
ンターの津下一代センター長は、膨
起。そのうえで、
「 尼崎市は他の同規
脂肪が蓄積したらメタボ」
と切り出し
塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患を
大な量が蓄積されてきている特定健
模の都市に比べ心筋梗塞が多いこと
たのは肥満学会副理事長の宮崎滋氏
ターゲットにし「予防」に重点を置く
診・特定保健指導のデータ解析から
から、そのリスクのある人をターゲッ
(結核予防会理事・総合健診推進セ
のがメタボ、肥満に起因するさまざま
その効果などについて説明した。
「男
トに取り組むことにした」
と話し、デー
ンター長)。肥満でなくても抽出すべ
な生活習慣病や健康障害の「治療」
性を中心に日本の肥満も米国のよう
タを活用して重症化しやすい人に焦
き対象とした理由について、
「日本人
に重点を置いたのが肥満症と、両者
に非常に増えてくるのではないかと
点を当てることの重要性を強調した。
の肥満者は米国の3分の1しかいな
の違いを明確に説明した。
の危機感があった」
ものの「特定健診
こうした取り組 み により、同 市 の
の導入で漸減傾向が出ている」
と特
虚血性心疾患の患者数が2008年
定健診の意義をまず語った。
度 は 1 3 0 人だったのに対し、1 2 年
いが、国民の糖尿病有病率は両国と
肝がんにつながる非アルコール
も約1割でほぼ同じ」
とし、
「それほど
性脂肪性肝疾患(NAFLD)について
太っていなくても日本人は内臓脂肪
は「昔は脂肪肝といってもお酒を飲
特定保健指導の「積極的支援」に
度は86人にまで減少、この86人に
が蓄積しやすい」
と体質の違いがあ
んでいなければ良性だから大丈夫な
該当し、
指導を受けた人の1年後の変
ついても「8割が特定健診を受けて
ることを強調した。
どといわれていたが、現在はまった
化などのデータ解析から、
「わずか3〜
いない人である」と、健診の効果を
く違う」
とし、NAFLDの1〜2割が非ア
5%の体重減で血圧の値が、HDLコレ
数値で示した。
さらに、
「肥満症は、肥満に関連す
国民の健康と経済再生の両立視野
宿泊型保健指導の効果紹介
ティー―の4分野を朝から夜まで
量が全国最下位であることから野
バランスよく配置、スタッフは保健
菜直売店の訪問を盛り込んだ。運
師と管理栄養士が各1人、生活習
動実習では心拍数を計測しなが
肥満学会初日の10月2日には
保健指導機関などが連携して行う
慣病改善指導士が2人の計4人で
らのウオーキング、食事実習では
一般演題で、糖尿病予防を目的と
もの。厚生労働省の試行事業とし
各回対応した。
ごはんの計量を行い、自身の最適
した宿泊型の新保健指導(スマー
て現在、全国23カ所で行われて
データ集 計の対 象となった参
ト・ライフ・ステイ)について、プロ
いるが、栄口氏は同センターで行
加者計144人の内訳は肥満が59
グラム開 発に取り組 むあいち健
われた14回の宿泊型指導につい
人(41%)、非肥満が85人(59%)。
ほぼ100%の参加者が「役に立っ
康の森健康科学総合センターの
てのデータを紹介した。
肥満者は腹囲や肝機能、中性脂肪
た」
と答え、栄口氏によると「生活
それによると、募集した各健保
の値が高かったため、内臓脂肪を
習慣改善にすぐ取り組んでみよう
組合の要望を取り入れ 、1泊2日
減少させるよう、エネルギーバラン
という人が大幅に増えた」
という。
とは、政府が進め
型が11回、2泊3日型は3回実施。
スに着目した指導を行い、非肥満
学会員から費用についての質
る日本 再 興 戦 略
プログラムは①生活習慣・メディ
者は脂肪よりも筋肉に着目し、運
問が出ると、共同演者の津下セン
のアクションプラ
カルチェックや検査説明、グルー
動による血糖改善や食事バランス
ター長は「2万5000円〜3万円程
プワーク②運動の講義・実技③食
に焦点を当てた指導にした。
度だが、効果があるので〝元は取
栄口由香里保健師が報告した。
宿 泊 型の指 導
ンの1つで、ホテ
ルや観光施設、
栄口氏
事の講義・実習④観光・アクティビ
観光は、愛知県民の野菜摂取
な強度や量を把握してもらった。
宿泊しての評判は非常によく、
れる〟
と思う」
と語った。
6
Vol.18
Books
「病気が長引く人、回復がはやい人」
(幻冬舎)
江田証 著
エリートに猫背の人が少ないという新たな知見、病気が長引く人のメカニズム、
そし
て治癒力を高める方法…。カラダを元気にする最新の3冊を紹介する。
( 大家俊夫)
「なぜ、
ビジネスエリートには、猫背の人がいないのか?」
(PHP)
澤田大筰 著
肥満を助 長 するメカニズムも紹介
ば、老化も生活習慣病のリス
風邪をひいても短期間で
クも軽減できると訴える。
治る人と、なかなか治らない
人がいるのを内科医として
見た目 が 若 い 人 の 体を
疑問に持った著者が最新の
調べてみると、血管や血液
科学的根拠に基づいてその
の状態がよく、結果的に心
なぞを解明し、数々の方法
臓 や 脳 、胃 腸 の 働 きもい
を伝授している。
い。見た目が若い人は、
「回
メタボリックシンドローム
復がはやい」
との特徴もあ
の人の体には老化にもつな
る。著 者は病 気の予 防、老
がる終末糖化産物AGEsが
化の防止のためには、
「レジ
タイトル の 通り、確 か に
なるようにでき
(抵抗力)をつけ
たまっているという。
フライ、 リエンス」
第一線で活躍するビジネス
ている。農 耕 文
ステーキ、マヨネーズは控え
エリートに猫背の人はあま
化の中で前傾
て緑茶を飲むことを続けれ (1000円、税別)
り見かけない。柔道整復師
で作業をするこ
の著者は多くの人を施術す
と が 長く続 き、
る中で、
「 な ぜ 日 本 人 に猫
骨格的に骨盤
背 が 多 いのか」という素 朴
が後ろに傾く体
な疑問にぶつかり、それを
形につながっ
大学院などでの科学的な研
た」
と分析する。
自己治癒力を高めることが
究で解明して、
ビジネスと医
さら に 、パ ソコ
大切。
「病気になった人が治
療の分野にまたがるユニー
ン、ス マ ホとい
そうと自覚しないかぎり、
一時
クな一冊に仕立て上げた。 う 現 代 的 な 要
的には良くなっても、
また、
元
風邪は万病のもととされる
ることの重要性を提唱する。
「病気にならず長生きできる気功 DVDブック」
(PHPエディターズ・グループ)
中健次郎 著
病気にならないためには
素 が 重 なって、
の病気の状態に戻ってしまう
が、猫 背も肥 満を含めさま 「日 本 人 ならだ
ことが多々ある」
という。
気功
ざまな疾患の原因になるこ
れしも猫背にな
家・鍼灸師として経験豊富な
とを 明 示しており、生 活 習
る可能性をもっ
著者は毎日の生活に気功を 「腎まわし」や「舟こぎまわ
慣 病 にか か わる医 療 従 事
ている」
という。
者も見逃せない内容となっ
る」
「 背 筋 を 鍛 えて 背 筋 を
猫 背を 放 置 すれ ば、
「内
伸ばす」ことが大切だとし、
し」の動き、さらに肝臓にい
取り入れることを勧める。
とはいえ、毎朝、気功をし
いとされる「 蒼 龍 取 水 」の
動作など約20種をイラスト
臓が圧迫されて〝腹猫背〟に
通勤中やオフィスでの予防
ようと決めるとなかなか続か
「猫背には体を不調にす
なり、血 行 不 良 によって新
のエクササイズも紹介して
ないもの。
著者は
「ムリせず、 付きで解説。付録のDVDを
る要因が詰まっている」|。
陳 代 謝 や ホ ル モン の 分 泌
いる。
気楽に取り入れればいい」
と
併せて見れば、初心者でも
著者の澤田氏はこのような
に悪 影 響を与え、太りやす
澤田氏は巣鴨総合治療
し、
たとえば、
オフィスワーク
わかりやすく、すぐに始めら
仮説を立てて、柔道整復師
い 体 質 になる」という弊 害
院・整骨院グループ総院長
の長い人は1時間か2時間ご
れる。
として施 術 をした 。そ の 結
も紹介する。
として活 躍 するか た わら、
とに、
5分から10分程度の気
気功の注意点もある。そ
ている。
果 、実 感できたの は 、腰 痛
著者が着目したのは、猫
法政大学大学院修士課程
功をする。職場では「ちょっ
れは気功はするけど、食生
やぎっくり腰、肩こりへの影
背 を 意 識 的 に 回 避して い
( M B A )を 修 了し、現 在 は
と」
という人は家に帰って就
活は暴飲暴食というのでは
響のほか、逆流性食道炎の
る人にビジネス界で活躍し
東京医科歯科大学大学院
寝前に気功をするのでもい
なかなか効果が表れないと
ような内臓系の疾患も引き
ている人が目立つという点
修士課程に在学中。施術で
いとアドバイスする。
いうことだ。著者は「野菜中
起こしている可能性がある
だ 。経 営 者 になるとランニ
多くの患者を観察したこと
これ から気 功 を 始 める
ことだった。
ングを始める人が多いこと
を基 礎として、幅 広 い 経 験
人向けに「気功の基本的な
気 功を 続 けな がら意 識 す
も考 察の一つに含まれる。
談やエピソードを盛り込ん
立ち方」や「腹式呼吸」の方
ることが大切と訴えている。
だ。
( 1300円、税別)
法、腎臓を動かすイメージの (1500円、税別)
澤田氏は「日本人の骨格
や筋肉は猫背になりやすく 「腹 式 呼 吸で正しく歩 行 す
あいさつする東農大の
髙野克己学長
東京農大「稲・コメ・ごはん部会」発足記念セミナー
髙野学長「産学官で日本農業支援を」
東京農業大学総合研究所研究
いる」
としたうえで「大学が中心と
会「稲・コメ・ごはん部会」の発足
なって産学官の連携を強化し日本
を記念したセミナーが2015年12
の農業を支援したい」
と語った。
月12日に同大学(東京都世田谷
心の食べ過ぎない生活」を、
セミナーでは、松本裕之氏(三
井物産食糧本部参与)、辻井良政
ポイントは「おいしさの追求だ」
と
ド化に取り組むとともに、販売店
同部会は「米」関係の各界で活
准教授(東京農業大学生物応用
語った。辻井准教授は、ごはんの
や消費者の要望に合った商品を
躍する人をつなぎ、未来につなげ
化学科)、西島豊造氏(スズノブ代
おいしさと酵素との関係について
作ることが重要」
と述べた。
る活動を行う。部会長には東京農
表取締役)の3氏が講演。
区)
で開催された。
「お いしさを 科 学 的 に解 明でき
◇
大総合研究所の佐々木卓治教授
松本氏は環太平洋戦略的経済
れば、稲の品種改良のほかコメの
問い合わせ は東京農業大学総
が就任。東京農大の髙野克己学長
連 携 協 定(T P P)によるコメの影
貯蔵、調理の工夫でさらにおいし
合研究所事務局(〒156-8502 東
は「東アジアの地域は、お米を中
響について、
「業界全体としての
くすることができる」
と説明。消費
京都世田谷区桜丘1-1-1、☎03・
心とした食文化圏であり、おいしさ
国 際 競 争 力 が 求められることか
者の購買行動を分析した西島氏
5477・2565、Eメール kenkyuka@
だけでなく、安全性や健康面でも
ら、差別化を図って付加価値を高
は、売れるコメを育てるためには、
nodai.jp)
その食文化が世界に認められて
める必要がある」とし、差別化の
「 地 元 の 特 性 を 生 かしたブラン
(文と写真 津村育子)
7
Vol.18
グローバル
帝京大大学院公衆衛生学研究科(公衆衛生専門職大学院)
世界標準の公衆衛生教育を目指して
日本初、独立組織として設立 3月には5期目の卒業生輩出
生活習慣病予防から新興感染症対策、保険医療制度
の改革に至る公衆衛生上の課題を解決できる高度の専門
職人材をどのように育成し、社会に送り出したらいいのか。
公衆衛生専門職大学院を日本で初めて独立組織として設
立した帝京大学はどのような教育理念を掲げているのだろ
うか。初代研究科長として創設にかかわった矢野栄二教授
(公衆衛生学研究科)
らに聞いた。
ア・太平洋地域の公衆衛生
最高峰と提携
教育の重点拠点として帝京
帝京大大学院公衆衛生
大 学 に公 衆 衛 生 大 学 院を
学 研 究 科は、世 界でトップ
共同で設立することを発表
クラスの公衆衛生大学院を
し、冲永佳史帝京大学理事
有する米国ハーバード大学
長・学長と矢野教授が渡米
との1993年以来の学術交
して正 式に合 意した。公 衆
流の中で生まれた。矢野教
衛 生 大 学 院 構 想 が 持ち上
授は「2 0 0 9 年に帝 京 大 学
がってからわず か 2 年 半 、
とハーバード大学がシンポ
11年4月に専門職大学院と
ジウムを共同開催した際、
して開講に至った。矢野教
こうした中で「本 研 究 科 は
は海外の学生も多数参加し
両大学の提携の一環として
授は「冲永学長の迅速な決
独立組織の強みを生かし、
て、日本にいながらグローバ
帝 京 大 学 に国 際 的 に通 用
断があったからこそ」
と振り
環 境 変 化 に対 する迅 速 な
ルな環境で学べる」
という。
する公 衆 衛 生 大 学 院を 設
返る。
意 思 決 定と機 動 的 な 組 織
本 研 究 科 には 医 療 職を
育 成 を 目 的とする 博 士 後
立しようという構 想 が 持ち
横断的な指導
運営が可能である点と、講
中 心 に多 様 な 実 務 経 験を
期課程(Doctor of Public
座 の 枠 を 超 えた 部 門 横 断
もつ20代~50代の学生が
Health)
も開講した。
上がった」
と話す。
帝 京 大 大 学 院で 公 衆 衛
生学教育を担う
(左から)
矢野、山岡、井上の各氏
翌 1 0 年 にハ ーバ ード大
公衆衛生専門職大学院
的 な 指 導 が 可 能である点
学んでいる。その中には、月
「社会疫学」や「国際保健
学のドリュー・ファウスト総
は京 都 大 学、九 州 大 学、東
が最大の特徴だ」
と、現・研
曜 から木 曜 は 東 京で 授 業
概論」などの講義を受け持
長が来日講演の中で、アジ
京大学に設置されている。
究科長の山岡和枝教授は
を受けて、木曜の夜に地元
つ井上まり子講師は「高齢
力を込める。
に帰り、金 土日に医 師とし
化 や 保 健 財 政 などわ が 国
また 、カリキュラム にお
て働くハ ードなスケジュー
の保健医療が直面している
いて 最も重 視 するの は 国
ルをこなした人もいたとい
社会システム上の課題は多
際的な基準で必須とされる、
う。あることを犠牲にしなが
い。公 衆 衛 生 のプロフェッ
「疫学」
「生物統計学」
「社
ら努力した先には、国際的
ショナル人材を社会に送り
会行動科学」
「保健行政・医
にも通用する「公衆衛生学
出し、その問題解決の一助
療管理学」
「産業環境保健
修士」
(Master of Public
としたい」と帝 京 大 大 学 院
学」の5分野を科目編成して
Health)の学位が与えられ
で公衆衛生学を学ぶことの
いる点だという。山岡教授は
る。また、14年4月からは保
意義を強調。この3月には5
「ハーバード大学を中心と
険 医 療 システム の 変 革 を
期目の卒業生を社会に送り
した客員教授陣による特別
先導して管理できる能力を
出す。同研究科の役割に今
講 義を設 けてあり、これ に
備えた“Change Agent”の
後も注目が集まりそうだ。
ハーバード大学と交流を深める
冲永学長
(左)
。右は矢野教授
メタボリックシンドローム撲滅委員会
委員長
松澤 佑次 (財)住友病院院長(日本肥満学会元理事長)
委員
門脇 孝
島本 和明
北 徹
齋藤 康
渡邊 昌
中尾 一和
東京大学大学院教授(日本糖尿病学会理事長)
札幌医科大学学長・理事長(日本高血圧学会元理事長)
神戸市立医療センター中央市民病院院長(日本動脈硬化学会元理事長)
千葉市病院事業管理者(千葉大学前学長) 生命科学振興会理事長(国立健康・栄養研究所元理事長)
京都大学大学院特任教授(日本肥満学会前理事長)
[主
催 ] メタボリックシンドローム撲滅委員会、
産経新聞社、
フジテレビジョン、
ニッポン放送、
フジサンケイ ビジネスアイ
[ 特別協賛 ] 第一生命保険株式会社
[協
[賛
賛 ] 第一三共株式会社
助 ] 株式会社カーブスジャパン
メタボリックシンドローム撲滅委員会
18
企画・編集:大家 俊夫、山本 雅人、武藤 和洋、棚瀬 みちえ
編 集 協 力:津村 育子
レイアウト・制作:ハッピージャパン
発行:メタボリックシンドローム撲滅委員会
発行日:2016年 1月 7日
産経新聞社 東京本社
事務局 〒100-8077 東京都千代田区大手町1-7-2
03 - 3275- 8944(産経新聞社) E-Mail.
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