新潟市社会福祉協議会 あり方懇談会報告書

新潟市社会福祉協議会の再構築のために
新潟市社協のあり方懇談会報告書
新潟市社会福祉協議会会長
篠田
昭
様
平成17年5月17日づけでご依頼のありました新潟市社会福祉協議会のあり方に
ついて別紙のように報告書をとりまとめましたのでご報告いたします。
平成17年11月
7日
新潟市社会福祉協議会あり方懇談会
大平
芳昭
河田
珪子
島崎
敬子
高橋
紘士
田中
尚輝
土橋
敏孝
遁所
直樹
堀内
久市
丸田
秋男
柳澤
譲
目
次
新潟市社会福祉協議会の再構築のために
1
Ⅰ
2
政令指定都市新潟市の誕生に伴う、社協の再構築への課題
旧新潟市社協と旧 13 市町村社協の合併に伴う課題
2
(2)
福祉公社の統合に伴う問題点
2
(3)
政令指定都市移行後の課題
2
(4)
介護・福祉改革との関連
3
(5)
市民に支えられる社協へ
3
Ⅱ
(1)
新潟市社協の再構築の方向
~
市民の協働によるささえあいの地域づくりをめざして
~
4
(1)
社協の理念と原則
4
(2)
社協組織の性格
5
(3)
社協組織のあり方
6
【基本的考え】
6
【組織の構造等】
6
【組織運営の方法等】
6
【コミュニティ協議会との関係】
6
【総合的な地域福祉推進の拠点づくり】
7
【行政組織・住民組織と対応した社協組織のイメージ】
7
(4)
(5)
社協組織の機能
【行政区社協の機能】
8
【行政区社協の展開】
9
【本部社協が担うべき機能】
9
サービス事業のあり方
①
介護保険事業および支援費事業
【見直しの方向性】
②
(6)
8
11
11
11
介護保険の地域支援事業と
障害者自立支援法の地域生活支援事業
11
③
受託事業のあり方
12
④
住民参加型・有償福祉サービス事業(まごころヘルプ事業)
12
小地域社協のあり方
13
Ⅲ
社協再構築の手順と方法と留意点
14
(1)
新・新潟市社協創造計画(仮称)策定の提案
14
(2)
社協活動をになう人材の開発
14
(3)
主体性、自主性のある社協づくりのための市の関与のあり方
14
(4)
財源の確保とその方向
15
(5)
市民に支えられる社協構築のために
15
新潟市社会福祉協議会の再構築のために
はじめに
新潟市は 13 市町村の合併を実施し、これをふまえ、政令指定都市移行をめざし、分
権化と市民参加を基調とした新たな都市ビジョンを提示し、新しい行政体制への移行
をめざした準備が進められている。
このような新・新潟市への発展を控え、旧新潟市社会福祉協議会(以下市社協と略
す)および旧 13 市町村の社会福祉協議会〔以下社協と略す〕も合併され、しかも、
旧新潟市の福祉公社も統合化され、巨大な組織としての新潟市社協が誕生した。
この二重の合併によって社協組織は巨大化した。当然、組織の巨大化は組織運営の
面で様々な課題を生み出し、また、分権化と市民参加をめざす市政の方向とも齟齬を
きたすことが確実である。したがって、新潟市社協の組織をどのように再構築するか
が大きな課題として浮上してきているのである。
一方,地域福祉の推進主体としての社協の活動基盤である福祉制度についても、社
会福祉基礎構造改革に伴う社会福祉法(旧社会福祉事業法が名称変更を行った)の改
正により、地域福祉を基調とした社会福祉法へと転換するとともに、昨年度来、介護
保険改革、障害者保健福祉改革が進行し、福祉の制度的枠組みは連続的に大きな変革
期にある。
さらに、国や地方公共団体の行財政も三位一体改革の進行に伴い、大きな環境変化
に直面している。したがって、従来型の行財政運営のままでは維持できないような状
況が現実化してきている。
さらに、行政と事業者、市民の役割分担についても官から民へ、市民参加をふまえ
た市民との協働システムの追求などの動きが全国的に進行している。
このことは行政と社協および社協と市民との関係にも大きな影響を及ぼし、従来型
の社協運営の発想では対応できない事態があらわれつつあることを意味する。市の社
協の関与のあり方、社協と市民との関係、事業者としてのあり方の再検討などの課題
が山積していることを意味しており、新潟市社協においても例外ではない。
以上に述べたような諸動向を的確にとらえ、新たな理念と組織論にもとづいて社協
の再構築をめざすことが求められている。
以下に新潟市社協会長たる新潟市長より委嘱を受けた新潟市社協のあり方懇談会の
審議の結果をふまえて、新潟市社協の今後のあり方について提言する。
1
Ⅰ
政令指定都市新潟市の誕生に伴う、社協の再構築への課題
(1)旧新潟市社協と旧 13 市町村社協の合併に伴う課題
新潟市と旧 13 市町村の合併に伴って、社協も合併し、旧 13 市町村の社協は支部
社協としての位置づけがあたえられて活動を継続している。一方旧新潟市の支部社協
は町内会を基盤とした地域社協の性格を持ち、支部社協の組織のあり方はまちまちで
あるといえる。
現実にそれぞれの支部での活動内容が異なり、また介護保険事業のあつかい、施
設委託の問題などそれぞれの市町村におけるこれまでの取組の違いに由来する差異
が大きい。
しかも、新・新潟市それぞれの地域において業務地域、住宅地、農村部等々の多
様な地域性もあって、福祉基盤の整備状況も一様ではなく、また歴史的な発展の事情
もことなり、自主財源である会費制度のあり方、職員の勤務条件等についても多様で
あり、組織の一体性が確保されているとはいえない。このような多様な地域特性をふ
まえ、新・新潟市社協の目標を設定しつつ社協の組織整備をはかり、地域の住民から
支持される社協のあり方を追求する必要がある。
(2)福祉公社の統合に伴う問題点
市の在宅福祉サービスの実施主体として設置された新潟市福祉公社を社協と合併
したことにより、新潟市社協は、人員、財政、組織について巨大組織として肥大化し
た弊害が随所に現れることが予想される。
また、公社統合により、市行政からの委託による実施と介護保険事業のようなサ
ービス事業者としての側面との境界が曖昧になりひいては、民間事業者のサービス提
供事業者としての発展を阻害する存在になっているといえる。
したがって、補助金・人員・事業(人・物・金)等を再精査し、あるべき社協像
に即して民間への事業の委譲も含めてサービス提供事業のあり方を検討する必要が
ある
(3)政令指定都市移行後の課題
政令指定都市移行に伴い、行政区が設置され、行政単位の再編が行われ、社協も
これに対応した組織体制の再編が求められる。
市社協としても、政令市移行に伴い市社協として担うべき事業が従来の事業に加
2
えられることをふまえる必要がある。
さらに、従来から旧市町村も含め介護保険事業、支援費事業のサービス提供事業
の扱いを今後の介護保険、障害保健福祉サービスの制度改革の動向をふまえて位置づ
けをしなおす必要がある。
さらに、新潟市では政令指定都市移行をふまえて分権化を徹底するために分権型
コミュニティ協議会などの構想を提示し、住民参加を積極的に推進し市民とのパート
ナーシップの構築を進めているが、地域住民の福祉課題を解決する組織としての社協
もこの動向をふまえて地域福祉活動のあり方を再検討する必要がある。
(4)
介護・福祉改革との関連
介護保険法の改正、障害者自立支援法の創設などのなかで介護・福祉の改革が進
行しているが、その基調は高齢者、障害者の自立支援、地域生活の継続、小規模多機
能サービスの制度化にしめされるような地域ケアへの移行と民間事業者の活用、多職
種協働と生活圏単位でのサービス提供体制の整備と NPO などの非営利組織の活動の
拡大、そして地域住民参加の推進などの方向である。また、今回の介護保険改革では
訪問介護の在り方にメスがいれられ、新予防給付が創設され、従来型の家事代行型の
訪問介護サービスのあり方も大きく変化することが予想される。これらの政策動向と
調和する社協事業のあり方を示す必要がある。
(5)
市民に支えられる社協へ
従来から、社協は地域の福祉課題の解決を図るため、地域住民の参加によって課
題を解決する地域福祉の担い手であった。今後、地域住民の活動の活性化とともに、
NPO活動に代表されるような新しい市民活動も多様な形で展開しており、これらと
の連携をはかり、市民からの支持を得て、社協活動を展開することが今後の社協発展
の基盤である。
3
Ⅱ
新潟市社協の再構築の方向~市民の協働によるささえあいの地域づくり
をめざして~
(1)
社協の理念と原則
社協は、昭和 26 年に結成されて以来、地域福祉の増進・推進に関わってきた。とり
わけ、平成 12 年 5 月の社会福祉事業法改正にともなう社会福祉法には、社協が地域
福祉推進の中核的存在として位置づけられた。
社協が結成された当初は、地域の中にある「福祉に欠ける状態」を改善し解決を図
る組織化が問題解決の中心的役割を果たしてきたが、その後豊かな生活を支える対策
や、長寿社会に対応する対策、若者の社会体験の場作りなどを含めたボランティア活
動の推進が課題として取り上げられ、それとともに住民の参加や参画を得て課題解決
を図る福祉教育の推進などが取り組まれてきた。
さらに現在は、少子高齢社会が進展する中で、在宅福祉の推進を中心とした介護保
険事業への参入を含めて、住民の個別の福祉課題の解決を支援する地域福祉の推進
(コミュニティ・ソーシャルワーク)が取り組まれるようになってきた。
このような時代の趨勢の中で、新潟市社協が果たすべき役割や組織としての理念・
原則を明らかにしていく必要がある。
特に、旧新潟市および 13 市町村社協が合併し地域が広域化したことや、それぞれの
地域のこれまでの取り組みを踏まえて、調和ある取り組みがなされなければならない。
特に、社協は公私協働による地域福祉の全体的な発展を推進することが求められて
おり、行政の責務として追求される公共的な性格とは一線を画した地域社会の共同性
に依拠する「新たな公共」を実現するための組織としてその役割が期待されている。
このことを踏まえて、新潟市民に対して地域福祉の実現のために求められる地域住
民の参画と連携を促し、地域福祉の推進を担う決意を住民に対して示すことが必要で
ある。すなわち、少子高齢化が急速に進展し、また生活様式の変貌のなかで地域にお
ける住民相互のつながりの希薄化や支援を必要とする地域住民の孤立化を克服して、
「ささえあいの地域づくり」をめざすことであり、これを実現するため社協が地域福
祉課題に対応できるしくみと態勢づくりを構築し、このような活動を支える理念をす
べての新潟市民に提示しつつ協働を求めることが必要である。
懇談会で提起された社協像を以下にあげてみるが、これらは市民の求めるニ-ズに対
応し、市民とともに歩む社協のイメージを表現したものである。今後市社協はこれら
の社協像を参考に市民へのわかりやすいメッセージを発信してほしい。
4
・市民の福祉ニーズに応え、豊かな福祉コミュニティづくりを目指す社協
・地域の個性が輝き、そこに住まう住民の願いに応える福祉コミュニティづくりを
目指す社協
・市民との協働、市民主体型の社協
・いのちと人権を守り、くらしを支え、自立生活を実現する地域環境づくりを目指
す社協
・高齢者を孤独にしない環境づくりを目指す社協
・地域性を活かし、地域福祉の充実を目指す社協
・ともに生きる、ともに働く…
・市民とともに市民の目線で活動する社協
(2)社協組織の性格
社協は、結成以来全国社協、都道府県・指定都市社協、市区町村社協が連携し、
ひとつの体系をつくりお互いに協力し組織のあり方を明らかにしつつ取り組んでき
た。新潟市社協としてもその組織編成をふまえ、その組織の性格を生かした取り組み
を一層高めていく必要がある。但し、地域の特性に応じた創意工夫による取組は当然
のことである。
新・社協基本要項においては、社協の性格を次のように規定している。①地域に
おける住民組織と公私の社会福祉事業関係者等により構成され、②住民主体の理念に
基づき、地域の福祉課題の解決に取り組み、誰もが安心して暮らすことのできる地域
福祉の実現をめざし、③住民の福祉活動の組織化、社会福祉を目的とする事業の連絡
調整および事業の企画・実施を行う、④市区町村、都道府県・指定都市、全国を結ぶ
公共性と自主性を有する民間組織である。とされている。
このように性格づけられた社協であるが、時代の推移と福祉課題の変貌をふまえ
つつ、自らの役割を自己点検しながら社協の使命を果たすことのできる力量が求めら
れてきているといえる。本懇談会では市社協が市行政の傘下に置かれ、従属した組織
であるというような印象をいつまでも払拭できない状態から脱する良い機会として、
市行政からの適切な支援と連携を保ちつつ、自らの力量を高め、公共性と自主性を有
する民間組織として新潟市民と協働・連携をめざす社協として再構築する絶好の機会
であるという視点で市社協のあり方の検討が行われた。
5
(3)社協組織のあり方
【基本的考え方】
政令指定都市移行後の市社協組織は、分権型政令指定都市を目指す新潟市の都市ビ
ジョンと呼応して、地域に開かれた組織運営の実現を目指し、市民との協働型組織へ
の転換を図る。
このため、従来の自治会の代表を基盤とした理事会・評議員会を見直し、真の意味
で市民が地域の代表として理事会・評議員会に参画できるしくみづくりを進める。
また、福祉ボランティア団体やNPO法人など社会福祉に関する活動を行う者の参
加を欠くことがないものとする。
【組織の構造等】
組織の構造は、地域における市民の支え合い活動等を推進する「小地域社協」と地
域福祉推進の活動や事業の実施主体となる「行政区社協」、全市を圏域とする「本部
社協」の三層構造とする。
地域福祉推進の活動や事業の実施主体となる「行政区社協」は、原則として行政区
ごとに設置し社会福祉法人とする。
なお、行政区の人口規模や地理的特性、社会資源の状況等に応じ、二以上の行政区
の区域を範囲とする「行政区連合型社協」の設置もありうる。
【組織運営の方法等】
組織運営は、従来の行政従属型の組織運営から社協固有職員による主体的・自律的
な組織運営へと転換を図る。
このため、社協固有職員の積極的な登用を図り、市派遣職員や市退職職員の幹部職
員への配置を廃止することを目指す。
地域福祉推進の活動や事業の実施に当たっては、市民の主体的参画による運営方法
を新たに導入するとともに、地域の人的資源の積極的な活用を図る。
また、市民の主体的参画による運営方法を、これからの社協の組織運営の基盤にす
るためには、「組織運営委員制度」等の新しいしくみによって市民が責任をもって社
協運営に参画することのできる方法を検討する必要がある。
【コミュニティ協議会との関係】
コミュニティ協議会は、地域における多様な市民の生活課題や地域課題に対応する
ため、市民自らが問題解決に取り組む新たな住民自治組織のしくみである。
地域における市民の福祉課題は、生活課題や地域課題と密接に関連しており、社協
の活動とコミュニティ協議会の活動を切り離すことは困難である。
6
社協組織とコミュニティ協議会との関係は、
「行政区社協」においては「地域コミ
ュニティ協議会」と、「小地域社協」においては「学校区コミュニティ協議会」との
関係になるが、社協組織はコミュニティ協議会にとって不可欠な構成員として位置づ
けられる。
【総合的な地域福祉推進の拠点づくり】
これからの地域福祉は、多様な市民のニーズに対応するため、子育て支援・生き甲
斐づくりをふくみつつ保健・医療・教育等との総合化の推進が一層求められると思わ
れる。
また、新潟市では、政令指定都市移行に向けて「地域コミュニティづくり」の政策
が積極的に推進されており、地域コミュニティにおける総合的な地域福祉推進の拠点
づくりが大きな課題になると思われる。
市民自治・分権化という基本的方向の下、市民との協働によって自律的な「総合的
な地域福祉推進の拠点づくり」のあり方について検討を進める必要がある。
【行政組織・住民組織と対応した社協組織のイメージ】
7
(4)
社協組織の機能
政令指定都市としての新潟市のもとで市社協はその機能をどのように考えるかを
次に述べる。政令指定都市における社協が持つべき機能は従来の新潟市における姿と
は異なることになる。
特に、政令指定都市の場合は行政区が設置されることとなり、従来の支部社協の
機能と行政区における社協の機能は大きく異なる。多くの政令指定都市では行政区単
位の社協を社会福祉法人として組織することが通例なのでこれを念頭に行政区社協
の機能をまず述べ、そのうえで本部社協について述べることにする。
【行政区社協の機能】
行政区社協が法人化して担うべき機能としては、地域での福祉課題の解決をさま
ざまな社会資源と協働しながら具体的に実施する事業を中心に、次のものが考えられ
る。
・地域福祉推進(組織化・サービスづくり、ニーズキャッチシステム・解決システム、
緊急時ネットワークづくり、福祉教育等)
社協本来の業務として、地域において生じた課題の解決を図るための地域福祉の
組織化業務で、当事者や、社会資源の組織化等である。
・権利擁護事業
本部社協と協働して具体的な権利擁護に関わる支援を実施する。なお、後述する
ように現在の地域福祉権利擁護事業も今後そのあり方を検討する必要がある。
・地域ボランティアの開発調整・連携
地区ごとのボランティア・市民活動センターとして機能し、幅広い市民の活動を
組織し、福祉のサ-ビスに関わってもらうだけでなく、生きがいづくり、自己実現、
生涯学習の機会作り等として実践する。
・地域福祉事業
見守り、地域の茶の間の活動、配食・会食サービス、認知症高齢者デイサービス等
の展開、などが考えられるが、今後介護保険における地域支援事業、障害者自立支援
法にもとづく地域生活支援事業の動向をふまえて再構築する必要がある。自主事業と
して実施するもの、市から委託を受けて実施するものを整理する必要がある。
・支援を必要とする人々への地域生活支援のネットワークづくり
地域において、課題を抱えた人たちをサポートする社会資源や人材・組織のネット
ワークづくり。
8
【行政区社協の展開】
現在構想されている行政区は8区であるが、これらは旧新潟市地域のみ、旧新潟
市と旧市町村の混在、旧市町村単位とそれぞれ性格が異なるものとみられる。これら
の多様性をふまえ、人員配置、拠点の整備などが必要となる。資源の状況によっては
連合行政区社協として出発することもありうる。そして、可能なところから順次法人
化を進めるなど具体的な展開の方策を策定すべきである。
【本部社協が担うべき機能】
行政区社協で担うことができない全市的な機能を本部社協が担う。
・企画・管理・調整
新潟市全域の地域福祉の推進状況の把握と、それらの結果から得られた情報を基に
すべての地域での地域福祉活動を推進し、レベルアップを図るために行政区社協の活
動を支援し、また全市的に実施する必要のある調整機能を担う。また、社協事業の企
画を行政区社協と協力して実施する。また、全市的な立場から人事や会計の管理を行
う。行政区社協の職員人事も各社協に固定するのではなく、適材適所で人事配置を行
うことが肝要である。また、社協活動の要である職員の資質の向上をはかるための各
種の人材育成を図ることは本部社協の重要な機能である。
・情報機能
情報収集・発信機能の強化を図り、加工・配信を行う。特に市内の様々な社会資
源を活用し、また、メディアを活用した市民への情報提供機能を充実するとともに、
インターネットの活用をふくめ IT 社会にふさわしい情報機能を充実整備すべきであ
る。
・研修
市内にある社会福祉関係団体組織・社会福祉事業実施組織・団体・施設等の役職員
研修の体系化と実施、学生・社会人の実習受け入れと養成への対応を図ることが必要
である。
・調査・研究・計画
行政区社協で実施するにはなじまない調査・研究の機能を持ち、総合企画や将来
ビジョン作り等を担うとともに、市民への問題提起機能を発揮する。
・権利擁護にかかわる事業
現在社協が実施している地域福祉権利擁護事業のあり方を再検討するとともに、
成年後見制度の活用を含む権利擁護システムの再構築が求められる。今後、権利擁護
事業について市の責務も大きいことから市との調整を行い、権利擁護のための施策体
9
系を確立しつつ、社協としてになうべき事業を実施する。
また苦情解決のしくみを強化するとともに、今後、第三者評価や人権擁護の取り
組みとして、アドボカシー体制を含めた幅広い権利擁護の取り組みが求められる。
・ボランテアセンター機能
行政区社協のボランティアセンター機能を統括し、全市的に調整をおこなう。なお、
災害緊急時の対応を行うために常時的に災害ボランティアの養成、緊急時への体制作
りなども重要である。
・財源づくり、配分、助成
会費、共同募金の推進、福祉基金の運営、生活福祉資金の貸付等の業務を行う。
・社会福祉施設、事業者の連絡調整及び全市一括的な事業の推進
広域化したことを受けて、市内に存在する各種福祉施設、法人、事業者の連絡調
整を行うとともにその発展を支援する業務、ならびに全市的に行うことが効果的な事
業の推進を行う。
これらのイメージを示したのが次の図である。
10
(5)
サービス事業のあり方
①介護保険事業および支援費事業
新潟市社協では従来福祉公社が実施していた、介護保険事業と支援費事業を合併
市町村の事業もふくめて統合し、一元的に事業を実施している。そのため事業が巨大
化し、経営効率の面からも問題であり、とりわけ市行政からの人的、物的支援により、
競争条件の格差から民間事業者の事業展開を阻害する存在にもなっている。
一方今回の介護保険制度改正による新予防給付の導入、介護報酬の改定の動向をふ
まえると福祉公社が実施してきた介護保険事業の前途は楽観を許さない。とりわけ生
活援助を中心とする軽度者の滞在型の訪問介護事業は新予防給付の導入に伴って大
幅に縮小することが予想され、事業の再構築が必至になることが予想される。これに
ともなって介護保険給付などのサービス事業は柔軟かつ適切に再構築をする体制な
しには事業は立ちゆかなくなると思われる。障害者自立支援法による介護給付にかか
わる介護サービス事業もこれに準ずる状況になると思われる。
また、市の委託事業として実施している、
自立者へのヘルパー派遣事業や生きが
い型デイサービスについてもそのあり方を見直すことが求められている。
このような状況をふまえて公社事業を継承したサービス事業については抜本的に見
直す必要がある。
【見直しの方向性】
従来の全市一体的かつ一元的な事業執行体制を見直し、行政区単位に事業を分割す
る必要がある。
その際、行政区の地域事情を勘案し、民間事業者の参入によって十分サービス量が
確保されることが期待できる地域については、民間事業者にサービス提供を任せ、介
護保険事業等から撤退することを検討する。
地域によっては、民間の事業者が参入することが困難であると考えられる地域につ
いては、区社協が事業実施を継続することもありうる。その際は独立採算を厳守し、
制度的な介護給付事業については介護保険収入(障害者自立支援法にいう介護給付収
入)の範囲で事業運営をはかる。
②介護保険の地域支援事業と障害者自立支援法の地域生活支援事業
介護保険改革および、障害者自立支援法のなかに、あらたに地域支援事業および、
地域生活支援事業という制度が創設された。
これは個別給付になじまない多様な事業を市が保険財源及び市の財源および国・県
の交付金(介護保険の地域支援事業)、あるいは補助金(障害者自立支援法)で実施
11
するもので、この事業のなかには社協が実施することがふさわしいものも少なくない。
これらの事業については市の施策の方向性をふまえ、かつ他の事業者が参入すること
が困難と考えられる事業についてと行政区社協で実施することが考えられる。
なお、介護保険改革では地域支援事業における包括的支援事業として介護予防マネ
ジメント、総合相談、権利擁護事業、継続的包括的ケアマネジメントを実施するため
の地域包括支援センターが創設されることになっている。このセンターは社会福祉士、
保健師、主任ケアマネージャーが配置され生活圏単位で設置されることとなっている。
市の方針との調整が必要であるが、このセンターを受託し、地域ケアのトータルマネ
ジメントを担う機能を実践することも考えられる。
このような地域包括支援センターを受託するとすればなおさら、上記の介護保険事
業からの撤退は必須要件となる。
③受託事業のあり方
現在の新潟市社協は、多くの受託事業を行っているが、これらについてはその事
業の性格を十分勘案し、また、国の制度の動向をふまえて社協で実施することが望ま
しいものかどうかを判断する必要がある。前項の地域支援事業(介護保険)
、地域生
活支援事業(障害者自立支援法)に移行するものもあるので、このあり方をふまえて
検討する必要がある。
また、母子生活支援施設やひまわりクラブ等の活動については、他の社会福祉法人
や NPO 等に委託することを検討する。
④住民参加型・有償福祉サービス事業(まごころヘルプ事業)
この事業は、介護保険制度や支援費制度の給付事業だけでは対応困難な、あるいは
また子育て支援など既存の制度的サービスだけでは対応できないような家族機能の
補完や地域の相互の助け合いの組織化として重要な役割を果たしてきた。また、住民
の自発的な活動参加の具体的な場としても意義ある活動が展開されてきた。この活動
についても今後、地域支援事業、地域生活支援事業との調整のうえ、サービス実施に
ついては小地域社協レベルで地域住民や NPO 等の創意工夫にゆだね、行政区社協では
研修事業などの人材育成や情報提供、また活動拠点の提供などのバックアップの事業
をボランティアセンター機能の一環として展開することを検討する。
12
(6)小地域社協のあり方
なお、小地域社協については、それぞれの地域の条件をふまえ、行政区社協との連
携、今後組織化が進む学校区コミュニティ協議会との関係をふくめて、地域住民の自
発的な参画により創意工夫に富んだ活動が展開できるよう、行政区社協に配置される
コミュニティワーカー機能を備えた職員によって推進が図られることを期待したい。
13
Ⅲ
社協再構築の手順と方法と留意点
(1)新・新潟市社協創造計画(仮称)策定の提案
上記に述べた社協の再構築は多岐にわたる、組織再編、事業見直し、人材の再配置、
経営人材の充当などの作業をともなう。これらを総合化し、進行管理を実施しながら
計画的に取り組むことが求められる。
緊急に実施すべき事項、政令指定都市発足までに実施すべき事項、政令指定都市以
降に取り組まれるべき事項、等を精査し、タイムスケジュールにしたがって組織およ
び事業の再構築をはかるとともに、その作業全体が社協役職員、市行政、そして関連
する事業者や組織さらに、市民にあまねく提示され、共通認識と合意形成をはかるこ
とが重要である。
そのため、本報告を受けて、「新・新潟市社協創造計画」(仮称)をただちに策定す
るべきである。そしてこの策定作業にあたってはその検討過程が市民に広く開示され
る必要があるため社協の当事者、市行政とともに、市民代表、学識経験者などの参画
を得て計画策定が行われることが必要である。
(2)社協活動をになう人材の開発
これからの社協事業の展開にとって、社協の経営に責任を持つ役員および事業を直
接担う職員に人を得ることができるかがポイントとなる。
とりわけ、地域福祉を推進する人材として、本部社協並びに各区社協には専門性を
持つコミュニティワーカーを配置する必要がある。ささえあいの地域づくりにとりく
むことのできる人材の育成と配置は緊急の課題である。
また、社協事業のそれぞれの特質に沿った事業運営が図れるような資質と能力を職
員が身につけることも課題となる。このような視点から思い切った人材登用をはかる
とともにその資質の向上をはかれる態勢を社協の職場に形成することも社協再構築
の必要条件である。
(3)主体性、自主性のある社協づくりのための市の関与のあり方
社協の役割は今後、地域福祉を基調とする福祉の推進をめざすならばますます大き
なものとなる。行政施策の委託の受け皿として社協を位置づけ、職員を派遣し、また
補助金を投入するといった従来のやり方はやめるべきである。
市は社協の民間組織としての自立性を尊重するとともに市民福祉の向上に寄与する
限りで支援を惜しむべきではない。しかし、その支援はその支援の効果の厳正な評価
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のうえ、妥当性、正当性が市民に了解されるものでなければならない。したがって市
の支援についての透明性の確保に今後留意すべきである。
とりわけ委託事業についてはその効果とともに、効率性に留意する必要がある。
そのうえで、地域福祉を基調とし、事業者、市民との協働を基調とする介護・福祉
のあり方の制度改革をふまえた市の関与のあり方が重要となる。
(4)財源の確保とその方向
社協は、自主財源が乏しいために民間としての独自性を発揮することが困難な状況
にあるが、自主財源としては、会費のあり方の見直しや、共同募金配分金の見直しな
どによって自主財源を確保するとともに、研修を初めとする事業の有料化を図るなど、
また、事業の共同開催等を通して、財源の一部を他の組織に受け持ってもらう協働の
場作りが求められている。
また、社会福祉法人の特性を活かし、市民や事業者からの寄付を積極的に受け入れ、
これを地域福祉推進の事業に活用することに取り組むべきである。寄附の文化の醸成
なくしては今後の社協活動の基盤を確実なものにすることはできない。
しかし、連絡調整やネットワークづくり等地域の福祉全体の底上げを図る活動や、
新規のサービスの開発、社会資源の造成に関わる経費等、必要な経費は引き続き市か
ら支援が必要である。このことについては、前項でのべたような点に留意しつつ一定
の枠付けを検討し、それ以外については自前の財源を使う等の協定を結ぶことも考慮
する必要がある。
また、委託については、他の業者と競争により確保する企画力が求められる。
(5)市民に支えられる社協構築のために
市民が社協活動を理解し、さまざまな活動に参画し、また会費等による出捐によっ
て社協活動に参加を活性化することを醸成するためには広報のあり方が重要である。
本部において「社協だより」の発行をしているが、部数等の都合で発行回数が制限さ
れることを考慮して、区社協独自の回数を多くした広報を発行することが望ましい。
特に区社協が法人化することで独立した社協としての顔を持つことは大切なことで
ある。それとともに魅力的なインターネットサイトの構築、また、マスメディアに適
切な情報提供充実することが重要なのはいうまでもない。
また、ささえあいの地域づくりの中核的役割を果たしうる社協の構築には,市民が
自らの課題として福祉問題に参加・参画する機会が充実されることが不可欠である。
そのためには情報を的確に把握し、提供する事が重要である。したがって、社協の職
員が情報の活用能力を持ったコミュニティワーカーとして地域や市民に働きかけ、福
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祉課題を持つ市民が地域で生活を継続できるようなささえあいの地域づくりの核に
なることが期待される。
このようなはたらきは旧市の一部の社協でとりくまれてきたものの、新潟市社協全
体の組織文化としては定着していないと思われる。このようなコミュニティワーカー
がとりくむ「ささえあいの地域づくり」の意義についてあらためて付言しておきたい。
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