MRI脂肪抑制画像の方法と種類

第34回 長野県MR研究会Ⅱ
MRI脂肪抑制画像の方法と種類
GE Healthcare
MR Sales & Marketing Dept.
KAZUHIRO, Umehara
Agenda
水と脂肪について
脂肪抑制法の種類について
CHESS, Dixon(IDEAL), STIR, SSRF
Adiabatic Spectral Inversion Recovery
(断熱スペクトル反転回復)
Agenda
水と脂肪について
脂肪抑制法の種類について
CHESS, Dixon(IDEAL), STIR, SSRF
Adiabatic Spectral Inversion Recovery
(断熱スペクトル反転回復)
脂肪( -CH2-)
)の存在
人体では体重の約15~25%を占める。
脂肪画像
診断をする上においてこの“脂肪”が邪魔となったり
時にはその存在が重要なSignを示すことがある。
“脂肪”の特徴を知ることにより良い検査が行なえる
MR画像 = 脂肪画像 + 水画像
Fat Image
+
=
Imaging
Water Image
MRでは水(H2O)に共鳴周波数を合わせて撮像を行っている
水の共鳴周波数=
(MHz)
)×磁場強度(
)
共鳴周波数=42.6(
磁場強度(T)
磁場強度
0.2T
0.35T
0.5T
1.0T
1.5T
3.0T
共鳴
周波数
8.5
15
21.3
42.6
63.9
127.8
(MHz)
MRでの“脂肪”
MRでは水(H2O)に共鳴周波数を合わせて撮像を行っている。
水と脂肪のプロトン(H1)は周波数差3.5ppmを持つ
※ ppmとは「Part Per Million」の略となり、100万分の1を示す
では、3.5ppmとはどれくらいの周波数差であるか
水と脂肪は3.5ppmの周波数差
⇒脂肪は水よりも3.5ppm周波数が低い
水
脂肪
ppm=Parts Per Million 百万分率
3.5ppm周波数が低い=百万分の3.5だけ低い
周波数高い
周波数低い
3.5ppm
磁場強度
0.2T
0.35T
0.5T
1.0T
1.5T
3.0T
共鳴
周波数
8.5
15
21.3
42.6
63.9
127.8
水-脂肪
29.75
52.5
74.55
149.1
223.65
447.3
この周波数の差を利用して脂肪抑制を行う
(MHz)
(Hz)
Agenda
水と脂肪について
脂肪抑制法の種類について
CHESS, Dixon(IDEAL), STIR, SSRF
Adiabatic Spectral Inversion Recovery
(断熱スペクトル反転回復)
脂肪抑制法の種類
Chem SAT, SSRF, Dixon(mDixon, IDEAL, FLEX)
SPIR(SPECAL), STIR
Chem SAT
Chem SAT
SPECIAL
SSRF
STIR
IDEAL
STIR
脂肪抑制法の種類
選択的脂肪抑制法
⇒ 水と脂肪の周波数差を利用した方法
Chem SAT, Fat Sat
SPECIAL, SPIR(SPAIR)
非選択的脂肪抑制法
⇒ 水と脂肪の緩和時間の差を利用した方法
STIR
水選択励起法
⇒ 水と脂肪の位相分散の差を利用した方法
Water Excitation
水/脂肪信号相殺法
⇒ 水と脂肪の位相分散の差を利用した方法
Dixon
IDEAL / FLEX
選択的脂肪抑制法
CHESS (CHEmical Shift Selective)
選択的脂肪抑制方法には2種類あります
ChemSAT (Chemical SATuration )
SPECIAL (SPECtral Ir Recovery At Lipid)
Chem SAT
水の信号
脂肪の信号
脂肪のCenter Frequencyとバンド幅を
もったPre Saturation Plusを用いる。
周波数高い
脂肪信号を
脂肪信号を抑制する
抑制する
← 3.5ppm → 周波数低い
Chem SAT
Pre Saturation Plus
通常使用するパルスシーケンスの前に印加される飽和パルスで
目的の磁化をXY平面状にて縦磁化のない状態にしている。
TR
Pre Saturation Plus
90°
RF
180°
90°
TE
脂肪
脂肪の信号を抑制
・
Gradient Spoiling(横磁化Spoil)
ケミカルシフトを利用して脂肪の周波数帯域の
みに前飽和パルス(プリサチュレーションパルス)
を印加する。
その後、傾斜磁場により横磁化成分の位相分
散を促進させ、脂肪信号を消失させてから本撮
影に入る。
静磁場の均一性(B0)の影響
脂肪
水
良い
f
普通
悪い
静磁場の均一性(B0)の影響
水
CHESSパルス
良い
f
普通
消え残り
悪い
脂肪
実際は、磁場の不均一の影響で脂肪抑制のムラが発生しやすい
磁場の強さの単位(ガウス、テスラ)とは、単位面積あたりの磁力線の数
磁力線
磁場 強い
= 周波数 高い
磁場 弱い
= 周波数 低い
同じ磁力線の数でも密集している場合は磁場が強くなり周波数も高くなる
実際は、磁場の不均一の影響で脂肪抑制のムラが発生しやすい
磁力線はお互いに反発しあう(平行に揃えるのが難しい)
空気は常磁性(磁力が通りやすい)だが、人体は反磁性
理想
磁力線がまっすぐで間隔が一定
実際
磁力線の“粗密”が生じる
実際は、磁場の不均一の影響で脂肪抑制のムラが発生しやすい
“粗”
磁場が弱い
周波数が低い
“密”
磁場が強い
周波数が高い
実際は、磁場の不均一の影響で脂肪抑制のムラが発生しやすい
Chess pulseの
の
周波数帯域は
周波数帯域は
180Hz
理想状態
水の信号
脂肪の信号
脂肪抑制パルス
“粗”
磁場が弱い
周波数が低い
水抑制
水の信号
“密”
磁場が強い
周波数が高い
中心周波数
周波数高い
← 3.5ppm → 周波数低い
脂肪の信号
水の信号
何も抑制されない
脂肪の信号
脂肪抑制パルス
中心周波数
周波数高い
← 3.5ppm → 周波数低い
脂肪抑制パルス
周波数高い
中心周波数
← 3.5ppm →
周波数低い
Chem SAT
特徴
目的部位の信号が抑制されるか否かで、脂肪であるかの判定
が出来る。
デメリット
磁場の不均一に左右されやすい
低磁場装置には不向き(0.5Tの3.5ppmはわずか73Hz)
撮影条件に制限がかかる。 TRの延長もしくは撮影可能枚
数の減少
SPECIAL, SPIR
スペクトラル(周波数選択的)にインバージョンパルスを照射して脂肪抑制を行う方法
SPECIAL法
法では水信号
では水信号には
水信号には全
には全く影響を
影響を与えない
Mz
水
脂肪
t
撮影開始
TI
SPECIAL
メリット/デメリット
○ Chme SATと比較し縦磁化の回復に時間がかかり脂肪の抑制効果
が長い。(TRの短い高速撮影に適している)
○ 撮影時間の延長が少ない。
× 脂肪のnull point付近での撮影のため完全に磁化が消失していな
い(複数の励起パルスの影響を受け、コントラストが低下→要造影)
時間分解能優先の撮影には、非常に適しているが、脂肪の抑制効
果を優先させるのであればChemSATが適している。
非選択的脂肪抑制法
STIR(Short TI(Tau) Inversion Recovery)
最初に反転パルス(IRパルス)でスピンを-Mz方向に180度倒してから、脂肪信号の
縦磁化成分がゼロ点(null point)まで回復するTI時間後にデータ収集を行う方法。
Mz
脂肪
TI
水
0
t(ms)
SPECIAL,SPIR:脂肪のみを周波数選択してIRパルスを使う
⇒【選択的脂肪抑制】
-Mz
STIR:水にも脂肪にもIRパルスを使う
⇒【非選択的脂肪抑制】
STIR(Short TI(Tau) Inversion Recovery)
180°
90°
RF
Mz
脂肪
TI
水
0
t(ms)
TI時間後、脂肪の縦磁化成分はゼロとなり、
ここで励起パルスを打つと脂肪信号は抑制される
水
-Mz
脂肪0
STIR法の特徴
null pointを脂肪に合わせたIR法である。
信号強度がゼロになる時間TIは、
TI(null)=0.693T1
脂肪のT1値は1.5Tでおよそ200msなのでTIの設定は、
0.693 x 200 ≒ 140 msec となる。
脂肪と同程度のT1値を有する組織の信号も抑制される。
→脂肪特異性は低い。信号が抑制されたからといっても
脂肪とは限らない。
全体としてのSNRは低くなる。
CHESS法に比べ磁場の不均一性に強い。
→磁場の均一度が低い装置でも可能な手法
水選択励起法
SSRF(Spectral-Spatial Radio Freqency)
水と脂肪のケミカルシフトを利用して水の信号を選択的に励起する方法
水と“脂肪”の位相分散差
α°
°
;水
;脂肪
励起⇒位相分散
OutOfPhase
InPhase
OutOfPhase
1.5Tの場合
2.3mSec
4.6mSec
6.9mSec
3.0Tの場合
1.1mSec
2.2mSec
3.3mSec
水選択励起法 ( SSRF )
どうやって水の選択励起を行っているのか?
パスカルの三角形
1
1
(a+b)nの係数を
1
並べたもの
1
1
2
3
4
5
6
1
1
3
6
10
15
45° 45°
1
4
10
20
22.5° 45° 22.5°
11.25° 33.75° 33.75° 11.25°
1
5
15
・・・・・・・・・・・・
1
90°
1
1
6
1
( a + b ) 5 = 1 a 5 + 5 a 4 b + 10 a 3b 2 + 10 a 2 b 3 + 5 ab 4 + 1 b 5
二項展開を
を印加する
二項展開を用いたRF
いた pulseを
印加する
( Binominal pulse )
1-1 Pulse(45°Pulseを2回照射)
F
W
45°倒す
out of phaseまで待つ
F
W
横磁化には水成分のみが倒される
45°倒す
1-3-3-1 pulse
①
W
F
11.25° 33.75° 33.75° 11.25° を4回に分けて照射
③
②
Out of phase
1/8
⑥
⑤
④
3/8
Out of phase
⑦
⑥
3/8
Out of phase
F
1/8
横磁化には水成分のみが倒される
W
SSRFの特徴
各スライス毎に周波数を合わせているため、磁場の不均一
に比較的強い。
項数の増加
の延長を伴う
項数の増加で
の増加でTEの延長を
の延長を伴う
組み合わせるシーケンスによっては呼吸停止下での撮影が
困難になる。
TEが少しずつ延長するので撮像部位,目的に応じて
が少しずつ延長するので撮像部位,目的に応じて
分割数を使い分ける必要がある。
分割数を使い分ける必要がある。
ブラックバンドアーチファクトやオフセンターでの
脂肪信号の上昇が起きる。
脂肪信号の上昇が起きる。
位相差法
水と“脂肪”の位相分散差
α°
°
;水
励起⇒位相分散
;脂肪
OutOfPhase
InPhase
OutOfPhase
1.5Tの場合
2.3mSec
4.6mSec
6.9mSec
3.0Tの場合
1.1mSec
2.2mSec
3.3mSec
位相差法
In phase
Out of phase
In phase : W+F
Out of phase : W-F
純粋な水の画像
純粋な脂肪の画像
In phase+Out of phase=2W
In phase-Out of phase=2F
37 /
GE /
June 7, 2004
磁場の
磁場の不均一があるので
不均一があるので完全
があるので完全な
完全な水脂肪分離は
水脂肪分離は不可能
水・脂肪分離技術
IDEAL & Flex
IDEAL:FSE、3D SPGRにて撮像可能
Flex:LAVA・VIBRANTとの組み合わせで使用可能。息止め撮影対応。
Agenda
水と脂肪について
脂肪抑制法の種類について
CHESS, Dixon(IDEAL), STIR, SSRF
Adiabatic Spectral Inversion Recovery
(断熱スペクトル反転回復)
SPECIAL, SPIR
スペクトラル(周波数選択的)にインバージョンパルスを照射して脂肪抑制を行う方法
SPECIAL法
法では水信号
では水信号には
水信号には全
には全く影響を
影響を与えない
Mz
水
脂肪
t
撮影開始
TI
SPAIR, ASPIRの
の場合、
場合、脂肪を
脂肪を反転させる
反転させる送信
させる送信
のパルスがアディアバティックパルス
のパルスがアディアバティックパルスに
がアディアバティックパルスになる。
なる。
アディアバテッィクパルスって何
アディアバテッィクパルスって何?
Adiadatic
熱の損失または
損失または獲得
または獲得なしで
獲得なしで起
なしで起こるさま
こるさま
=断熱的
断熱的
通常のSPECIALに比較して
連続で長い時間をかけてIRパルスを打つ
よりたくさんの脂肪が反転される
SPAIR, ASPIR
Adiabatic pulseの
の特性
通常の励起パルスと比較し振幅だけでなく周波数(または位相)の変調
を伴う複雑なパルス。 ⇒(Frequency and Phase Modulation)
B1フィールド(RF送信磁場)不均一に依存しない。
磁化ベクトルはB1フィールドと同じ方向。
アンプ振幅は通常の励起パルスよりかなり大きくなり、印可時間も長い。
(ゆっくりした周波数変化が必要なため、パルス幅が長い)
上記のため、Flow, 動き, B0不均一, 緩和の影響を受けやすい。
枚数が数枚減ったり、SNRが低くなることがあります。
強いB1と長いパルス幅でSAR大