生体から学ぶべきメカニズム(1) 画像処理システム論 Image Media Systems 明暗順応: 側抑制: 加藤 俊一 Toshi KATO 初期視覚における特徴抽出: 画像・映像の複雑さ 画像・映像内の規則性 カラー画像の場合 色調が大きく変化する場合があった! カラー画像の表色系 モノクロ画像の場合 写真の印象が大きく変化する場合があった! 局所的な明るさ・色調の対比 エッジ検出 構図 全体的な明るさ・色調 ヒストグラムの平坦化の問題点 (カラー画像) 周波数領域 色彩の対比に対する調節機構 ヒストグラムの平坦化の問題点 (モノクロ画像) 空間領域 視野の中の明暗の微小変化を局所的に検出・ 強調するメカニズム 色順応: 生体から学ぶべきメカニズム(2) 明るさの変化に対する調節機構 RGB表色系 (例:Rを変えると、明るさも色調も変わる) Lab表色系 (例:Lを変えても、色調は変わらない) [詳細]レタッチで重要な色空間 RGBに対応する 仮想的な3原色XYZを定めた。 X:三刺激値X(tristimulus X) ほぼ「明るさ」 Y:三刺激値Y(tristimulus Y) ほぼ「緑味」 Z:三刺激値Z(tristimulus Z) ほぼ「青味」 1 [詳細]レタッチで重要な色空間 均等知覚色空間として定められた。 L:明度指数 ほぼ「明るさ」 a:知覚色度 ほぼ「赤・緑の対比」 b:知覚色度 ほぼ「青・黄の対比」 参考: http://image-d.isp.jp/commentary/color_cformula/index.html [実験]階調の平坦化 カラー画像の 平坦化(ヒストグラムの一様化)によって 画像の見え方は、どう変わったか? ヒストグラムは、どう変わったか? R, G, Bそれぞれを 平坦化 →色相が変わる RGB画像 Lab画像 2 [課題]階調の平坦化 Labの Lだけを平坦化 a, bはそのまま ネットから取得したカラー写真や、 自分で撮ったカラー写真 もともと全体に明るい(暗い)写真、 明暗が混在する写真など 様々な写真のヒストグラム平坦化で、 見え方がどう変わるかを観察してみよう。 画像の見え方は、どう変わったか? 補正前・後のヒストグラムも記載 (注)PhotoshopでLab表色系の画像として 処理すること! 生理レベルの感性を利用した画像強調 側抑制と順応機構の統合 明暗対比: 明るさの微妙な差を増幅 側抑制機構の工学的な解釈 + - 視野の中の明部や暗部での微小変化に対する感度が低下。 (明るさに対するS字型の応答特性) 応答を何らかの逆S字型変換で補正し、スケール不変に近付ける神 経回路が必要。 (側抑制機構の必要性) 広いダイナミックレンジの光刺激に対して、良好な応答特性を得る。 V V' V' ⊗ V= - + I src Isrc + σ i = log I src 刺激強度に対する 電位応答 非線形変換 K(I) の性質 V − V0 V1 − V V 逆S字型変換による 電位応答の補正 i = log I src 刺激強度(対数)に対し 線形に近い電位応答 非線形変換 K(I) の数値シミュレーション 非線形変換 K(I) は、逆S字型曲線を描く。 → V = log 明部・暗部のコントラストを強調する輝度の補 正式として利用できる。 I − I0 K(I) = c1 log + c2 I1 − I 非線形変換 K(I) の微分は、輝度に対する スケール不変なエッジ強度を表す。 ⎛ 1 1 ⎞⎟ dK(I) = c1 ⎜ + dI ⎝ I − I0 I1 − I ⎠ 3 (*)1枚の画像中に 強調すべき輝度区間が 複数ある ↓ 明暗順応では 強調しきれない 中間部強調が必要 明部強調が必要 (*)くっきり見せるには エッジ強調も必要 暗部強調が必要 非線形変換 K(I) の局所並列性 画像強調への応用 [demo] 非線形変換 K(I) とコントラスト: 視野の中の明部・暗部での微小変化に対する感度を補正。 注目点の近傍の背景の明るさに適応して、補正式を制御。 様々な明るさの背景の下で、注目点の近傍のコントラストを局所 並列的に強調。 K(I) = c1 log I − I L + α posi × (Imin − I L ) + β posi + c2 IU − I + α nega × (IU − Imax ) + β nega (a) 実験画像(眼底写真) IU, IL: 数値的に想定される最大輝度・最小輝度(定数) Imax, Imin: 局所近傍における最大値、最小値 αposi, αnega, βposi, βnega: 生理学的な定数 (c) 指数変換 (γ=2) [考察] 画像強調への応用 (a) 実験画像 相対的に輝度の小さい(暗い)区間のダイナミックレンジを拡大 → 画像の輝度分布に依存して、指数を試行錯誤的に調節 → 明るい部分のコントラストは失われる。 (d) 輝度に対するスケール不変な非線形変換 K(I) 各局所近傍の輝度分布に適応して、変換式を自動調節 → 暗部・明部ともにコントラストを改善 + シャープさの改善 前提 画像はその輝度分布が画像全体の平均輝度付近に集中する。 人間の眼は、周囲の全体的な明るさに順応させて、明暗のコント ラストを決めている 方針 (c) 指数変換(γ補正) 全体的に暗く、コントラストが弱い。暗部・明部に観察したい構造 がある。 輝度の区間分割による輝度の線形変換の極限の形 → 全体としてのコントラストは強調されるが、不自然な画像。 (d) 側抑制機構による処理結果 側抑制と明暗順応の統合 (b) ヒストグラム平坦化 (b) ヒストグラム平坦化による処理結果 画像の全体的な明るさを画像の平均輝度で代表させ、平均輝度 が表示系のダイナミックレンジの中央に位置するように決める。 効果 輝度分布の中心が感度の良い中間部になると共に、ヒストグラ ムが平坦化され、大域的に強調される。 中間部で線形変換を行うため、局所的なコントラストも向上する。 4 側抑制と明暗順応の統合 Vmid (k(v) − K global _ mean ) + Vmid K max − K global _ mean V (v) = = (a) 実験画像 (b) 指数変換(γ2.2 (c) ヒストグラム平坦化 Vmid (k (v) − K min ) + Vmin K global _ mean − K min Vmid = ( Vmax − Vmin ) 2 (d) 逆S字型変換 [考察]側抑制と明暗順応の統合 側抑制効果(d): 輝度比係数を利用すると、明部・暗部(例:髪、顔面、花、背景、 衣服)共に視認性が向上し、シャープな画像が得られた。 + - L+ M- M+ L- S+LM- - + L- M+ M- L+ SL+M+ 平均輝度を表示系の輝度中心に対応付けると、局所的コントラ ストの良さを保ちながら、全体的なコントラスト感が増大し、自然 な大域的コントラスト強調が実現。 生理レベルの感性を利用した画像強調 側抑制と順応機構の統合 明暗対比 明暗対比: 明るさの微妙な差を増幅 色対比: より彩度(色差)を強調 側抑制+明暗順応(f): 側抑制と順応機構の統合 側抑制+輝度比(e): (f) 輝度比係数+平均輝度 逆S字型変換 生理レベルの感性を利用した画像強調 明部・暗部(例:髪、顔面、花、背景、衣服)共に視認性が向上し たが、大域的なコントラスト感を弱めている。また、近景・遠景共 にシャープに変換するため、奥行き感を弱める結果となっている。 (e) 輝度比係数 逆S字型変換 生理レベルの感性を利用した画像強調 原画像 視覚特性の数理モデル ヒストグラム平坦化 明暗対比: 明るさの微妙な差を増幅 色対比: より彩度(色差)を強調 色対比 R-G Y-B 5 【側抑制のモデル】 文字が見やすくなった! ビルの輪郭が見やすくなった! 【オリジナル画像】 不自然な仕上がり 【オリジナル画像】 【側抑制のモデル】 オリジナル画像にはない青色が出現している 【ヒストグラム平滑化】 [実験]側抑制による画像強調 側抑制の仕組みを利用した 画像強調 http://www2.hm.indsys.chuo-u.ac.jp/toppanVision/html/hmdemo_coljp.html を適用してみる。 モノクロ画像の場合 カラー画像の場合 【ヒストグラム平滑化】 [課題]側抑制による画像強調 1. 自分で撮った写真(モノクロ・カラー)に 側抑制の仕組みを利用した 画像強調 http://www2.hm.indsys.chuo-u.ac.jp/toppanVision/html/hmdemo_coljp.html (モノクロ用・カラー用)を試みて、 画質を評価してみよう。 6 [課題] 全域的な処理を行うレタッチソフト 明部、暗部、明部&暗部、中間部の強調 ヒストグラムの平坦化、 画像の鮮鋭化 など と比較・考察を試みよう。 2. (注1) 輝度(RGBを同時に)のトーンカーブで処理 vs (例)Bのトーンカーブだけで処理する場合 (注2) 平坦化は、PhotoShopの人は、RGBとLabの両方で。 [課題] カラー画像の 「強調」「見やすさ」「印象を強くする」とは どういうことと定義できるか? その定義に従って、 「見やすくない例」「見やすくなった例」を 対比させて説明してみよう。 3. (参考)モノクロのときの定義と矛盾しない? (参考)心理的な「遠近感」との関係は? [補足] 実験に適したソフトの紹介 Adobe Photoshop (有料) 授業で説明する機能の全てをカバー Labでのヒストグラム平坦化も可能 GIMP http://www.geocities.jp/gimproject/gimp2.0.html GIMP2 (ver.2.4.1) ←これを使いましょう! 但し、 Labでのヒストグラム平坦化はできない (RGBそれぞれでの平坦化のみ) 側抑制を真似た画像強調 http://www2.hm.indsys.chuo-u.ac.jp/toppanVision/html/hmdemo_coljp.html [課題](考察に書いて欲しいこと) 理屈を踏まえて どんな特徴の画像か? 「レタッチ」の効果を評価をする上で、 どう都合がいいのか?(悪いのか?) 自分の画像での結果 「そんな性質」の画像だから、 全体としてどんな画像になった。 どこの部分は、どうなった。。。など (注意) 考察とはいえない「例」 講義資料 自分が選んだ画像の性質 何をどうするための処理か? その理屈は? 講義の資料 on Web http://www.indsys.chuo-u.ac.jp/~kato/IPS/ 参考資料 http://www.indsys.chuo-u.ac.jp/~kato/HM/ http://www.hm.indsys.chuo-u.ac.jp/ http://www.jske.org/ 結果の貼り付けだけ ヒストグラムの形を言葉で表すだけ、、、など 7 教科書・参考書 岸野文郎、他:「画像と空間の情報処理」 (岩波、3800円) 淀川英司、他:「視聴覚の認知科学」(電子 情報通信学会、2800円) 池田光男:「目は何を見ているか」(平凡社、 2400円) 8
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