拡がるか? 地熱発電

拡がるか? 地熱発電
平成 23 年 12 月の「エネルギー・環境会議」で示された『政府の規制・制度改革アクションプ
ラン』の中には「地熱発電」も検討項目に挙げられている。
資料によれば、『地熱発電は、出力が安定しており、設備利用率も高いといった特徴を有す
る。地熱資源は、火山国である我が国に豊富に存在するエネルギー資源である一方で、森林
地域や自然公園に集中して存在している。地熱発電を推進するために、これらの地域におけ
る自然公園法等に基づく立地規制の許可要件の明確化とともに、温泉利用等との調整も重
要課題である。』としている。
■重点番号14:自然公園法に基づく立地規制の許可要件の明確化等(地熱発電)
【改革の方向性】
地熱発電施設を当分の間6か所に限定するという通知を廃止し、傾斜掘削による
自然公園の地下開発であれば許可可能である旨通知するとともに、自然公園の区
分や開発段階(地表探査、掘削調査、発電設備設置等)ごとに、許可が可能となる
要件や方法を検討し、明確化する。併せて、具体的な案件を対象に関係者の合意
形成・連携促進のための優良事例の形成を図る。
■重点番号15:温泉法における掘削許可の判断基準の考え方の策定
【改革の方向性】
地熱発電のための掘削が温泉に及ぼす影響について、関係者に意見を聴取の
上、科学的に検討を行い、温泉法における掘削許可の判断基準の考え方を策定す
る。
電力の供給量不足とコストアップは、地熱発電等の再生可能エネルギーを推進していくため
の大きな原動力となる。
しかし、当面の電力不足に関して、即効力を発揮するのは、自家発電の普及と省エネの推
進だ。再生可能エネルギーは、スマートメーターやICT化と蓄電の充実が不可欠であり、これ
らの充実には少なくとも 5 年から 10 年は必要だろう。
期待が大きいだけに、再生可能エネルギー普及のための基盤整備が急がれている。
(平成 24 年 2 月 鈴木明彦)
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地熱発電の現状と将来
―総発電量は低いが、貴重な国産エネルギーとして期待―
“経済産業省は地熱発電の開発を促進するため、傘下の独立行政法人が開発会社に資金支
援することを決めた”との報道がありました。
今年の 7 月から太陽光、風力、地熱など再生可能エネルギーによる電気の全量買取制度
も始まります。
今月は「地熱発電」の現状と課題について紹介します。
1.地熱発電
地熱発電は、地表から地下深部に浸透した雨水などが地熱によって加熱され、高温の熱水
として貯えられた地熱貯留層から、坑井により地上に熱水・蒸気を取り出し、熱水は地下に
戻して蒸気だけを発電タービンの動力に利用する蒸気発電方式です。地熱発電の方式には、
そのほか熱水を有効利用するバイナリー発電があります。バイナリー方式は、アンモニア、
ペンタンなど沸点の低い物質(媒体)を加熱し、その蒸気でタービンを回して発電する方式で
す。従来の蒸気発電方式では利用出来ない低温の地熱流体(蒸気・熱水)による発電を可能
にする方式です。
2.日本の地熱発電の現状
1966(昭和 41)年、日本で始めての地熱発電所の運転が開始されました。現在では東北や
九州を中心として 18 ヶ所に発電設備が立地しています。設備容量は、平成になってから約
31 万 kW の開発が行われ、それまでの 22 万 kW の開発を合わせて合計 53 万 kW となって
います。発電設備の容量は、小さなもので 2,000kW、一番大きいものでも 65,000kW。原
子力発電と比べると小規模設備が多いのが特徴です。このうちバイナリー式は 2,000kW の
大分県八丁原バイナリー発電設備です。また、東北・九州以外の地域では、東京都の八丈島
に東京電力八丈島発電所(3,300kW)があります。
また、年間の発電電力量は約 30 億 kWh(2009 年度)となっています。この発電電力量は
日本国内の総発電電力量の約 0.3%と、非常に小さいシェアにとどまっているのが現状です。
世界の地熱発電設備容量を見ると、アメリカが 250 万 kW でトップ、続いてフィリピン、
イタリア、インドネシア、メキシコ、日本の順となっており、日本は設備容量では世界第 6
位にとどまっています。
3.地熱発電の利点
地熱発電の利点として次が挙げられています。
① 化石燃料による発電に比較して CO2 排出量が相対的に小さく、地球温暖化の防止対
策として効果的なクリーンエネルギーである。
参考:ライフサイクルの CO2 排出量(単位は g・CO2/kWh)
石炭火力 975、石油火力 742、LNG 火力 608、地熱発電 15、水力 11
②
地熱発電は、風力、太陽光などと違って天候に左右されず出力の変動はなく、また、
昼夜を問わず年中稼動することが出来るので設備利用率は約 70%と高い。
参考:風力約 20%、太陽光約 12%
③
④
火山国である日本は地熱エネルギーが豊富にある。地熱は数少ない貴重な国産エネ
ルギー。
発電に使用した高温の蒸気や熱水は、温室や暖房などに再利用することが出来る。
4.地熱発電の課題
地熱発電は、火山帯に位置する日本の国土を最大限活用し得る発電方法として、戦後早
い時期からその可能性が注目され研究開発が進められてきました。日本の地熱発電は第2
次石油危機を契機に増加しましたが、1999(平成 11)年東京都の八丈島地熱発電所が操業し
て以降は、新規立地はありません。
その背景として、①地下深部の調査を要することから、開発のリードタイムが通常 10
年以上と長いことや調査・開発段階で多数の坑井掘削が必要なこと等からコストが高い、②
地熱資源の多くが自然公園法に基づく国立、国定公園内や温泉地域近傍の存在しており、
地元温泉事業者等との調整が必要。また坑井を掘削して地下の熱水を取得する行為を伴う
ので、自然公園法、温泉法などの規制を受ける、等が要因として挙げられています。
そのため、国が先導的に地熱資源の調査を行い開発リスクの低減を図ると共に、調査、
建設、運転の各段階において、コスト低減、環境保全、立地促進など各種開発支援を実施
してきています。
日本における地熱発電のポテンシャルは、温度が 150℃以上の資源量は約 2,347 万 kW
程度(原発 20 基相当)と試算されています。そのうち国立、国定公園の特別保護地域以外の
開発可能な地域の資源量は約 425 万 kW と見られており、現在の設備容量合計 53 万 kW
と比較すると今後の開発可能性は大きく残されているといわれています。
今後、地熱発電の開発及び導入を促進するためには、政策的な支援が不可欠です。この
ため、石油・天然ガスの開発と同じように、開発の準備段階の会社に出資したり、開発資金
を借りる際に債務保証したりできるよう、改正法案が今通常国会で審議される予定です。
経済産業省は先ず資金面からの開発への支援体制を整えることにしています。今年 7 月 1
日からスタートする再生可能エネルギー源による電気の全量買取制度とあわせて地熱発電
導入の促進が期待されます。
文責
黒柳 要次
P.D.C.A. ㈱パデセア
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