14.ラムサール条約を巡る動き

14.ラムサール条約を巡る動き
水鳥の多くは国境に関係なく飛び交っており、国際的な取組が必要だ。そこで、特に水鳥
の生息地として国際的に重要な湿地及びそこに生息する動植物の保全を促し、湿地の適正
な利用を進めることを目的として、1971 年 2 月 2 日、イランのラムサ-ル(カスピ海沿岸の町)
で開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」において、採択された条約が『ラム
サール条約』だ。
条約では、天然のものであるか人工のものであるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は
水域を湿地とし、湿地の生態学上、動植物学上等の重要性を認識し、その保全を促進するこ
とを目的としている。主な規定は、以下の通り。
 各締約国は自国の領域内にある国際的に重要な湿地を指定し、指定された湿
地は国際的に重要な湿地の登録簿に掲載される(第 2 条)。
 締約国は、条約湿地の保全及び湿地の適正な利用を促進するため、計画を作
成し、実施すること(第 3 条)。
 締約国は、条約湿地であるかを問わず、領域内の湿地に自然保護区を設けるこ
とにより湿地及び水鳥の保全を促進し、自然保護区の監視を行うこと(第 4 条)。
 湿地の研究、管理及び監視について能力を有する者の訓練を促進すること(第 4
条)。
日本の登録状況は、次頁に続くパデセアレポートに示されているとおりである。
日本は 1980 年 10 月に条約締結国となるが、国内法制度では、環境基本法をはじめ生物多
様性基本法、自然環境保全法、自然公園法、絶滅野生動植物種保存法、自然再生推進法な
ど、様々な法律によって湿地の保全と管理を強化している。ラムサール条約に関わらず、鳥
獣保護区や自然環境保全地域、条例や計画で保全管理を強化している地域等も多々ある。
むしろ、数多くの法令や計画があり、国レベルで見ると分り難くなっており、1995 年に策定さ
れた生物多様性国家戦略で、漸く全体像が見えるようになってきた(現在、2010 年版「第三次
生物多様性国家戦略」の改定が策定されつつある)。
地球温暖化対策は、東日本大地震に端を発するエネル
ギー政策の見直しの表裏一体的取り組みが進められつつ
あり、国民的な合意を得、加速度的に整備されつつある。
これからも自律的、積極的な取組みが広がっていくだろう。
ラムサール条約にしても、生物多様性戦略にしても、現
状では、一層の政策的な誘導が必要なようだ。現在進めら
れている環境基本法の改訂等の中で、何某かの方向性が
出てくることを期待したい。
(平成 24 年 8 月 鈴木明彦)
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新たに 9 箇所の国内湿地がラムサール条約湿地に登録
―ラムサール条約第 11 回締約国会議(COP11)―
ラムサール条約第 11 回締約国会議(COP11)が、ルーマニアのブカレストで 7 月 6 日~13 日に
かけて開催されました。この会議の開催にあわせて新規登録を目指していた日本国内の 9 箇所の
湿地がラムサール条約に基づく「国際的に重要な湿地に係る登録簿」に掲載され、会期中の 7
日に条約事務局から登録認定証が関係自治体に授与されました。
また、この会議では、辻井達一氏(公益財団法人北海道環境財団理事長)が、日本人としては
2 人目の「ラムサール賞」を受賞しました。
1.ラムサール条約の概要
正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」です。1971 年にイ
ランのラムサールにおいて開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」において採択さ
れました。開催地にちなみ「ラムサール条約」と呼ばれています。
この条約は、特に水鳥の生息地等として国際的に重要な湿地及びそこに生息・生育する動植物
の保全を促進することを目的とし、湿地及びその動植物、特に水鳥の保全促進のために各締約国
がとるべき措置などについて規定しています。2012 年 7 月現在、締約国 162 カ国、登録湿地数
2,040 箇所、その合計面積は約 193 百万 ha に及んでいます。
条約の締約国は 3 年ごとに締約国会議を開催し、条約の実施などについて協議してきました。
1993 年の第 5 回締約国会議(COP5)は、日本の釧路で開催されました。
2.日本の登録湿地の状況
日本は、1980 年 10 月に締約国となりました。最初に登録されたのは北海道の釧路湿原でし
たが、その後、宮城県の伊豆沼・内沼、北海道のクッチャロ湖、滋賀県の琵琶湖などが加わり、
37 箇所が条約湿地として登録されました。今回登録された 9 箇所を加えて、日本の湿地登録数
は、2012 年 7 月をもって、46 箇所、面積合計 137,968ha となりました。
日本は、登録湿地の要件として、①国際的に重要な湿地であること ②自然公園法、鳥獣保護
区など国の法律により、将来にわたって自然環境の保全が図られること ③地元自治体などの登
録への賛意があること の条件を満たしている湿地を登録しています。
3.新たに登録された国内湿地
新たに登録された国内湿地は、次の 9 箇所です。
(1) 大沼(北海道):淡水湖、堰止湖群。北海道で最初の国定公園
(2) 渡良瀬遊水地(茨城・栃木・群馬・埼玉):本州最大級のヨシを主体とする湿地
(3) 立山弥陀ヶ原・大日平(富山):寒冷な気候と豪雪、豊富な水、強風の影響を受けた湿地
(4) 中池見湿地(福井):デンジソウやミズトラノオなど多様な水生・湿生植物が確認
(5) 東海丘陵湧水湿地群(愛知):多くの固有種を有し、大陸系の隔離分布種が存在する湿地
(6) 円山川下流域・周辺水田(兵庫):絶滅危惧種のコウノトリが繁殖する湿地など
(7) 宮島(広島)
:砂丘海岸、塩性湿地及び河川、ミヤジマトンボの生息地
(8) 荒尾干潟(熊本):干潟、クロツラヘラサギ、ツクシガモ等の渡来地
(9) 与那覇湾(沖縄):島内最大の干潟、シギ・チドリ類の渡来地
4.ラムサール賞の受賞
「ラムサール賞」は、長年にわたり湿地の保全と持続可能な利用に多大な貢献をされた個人や団
体を讃える賞として 1996 年に創設されました。
今回、受賞された辻井達一氏(公益財団法人北海道環境財団理事長)は、釧路湿原やサロベツ
原野、チリカ湖(インド)等の自然再生等における長年の貢献が評価されたものです。日本人とし
ては、2005 年に中村玲子氏(ラムサールセンター事務局長)が受賞されており、2 人目の受賞
となります。
文責
黒柳 要次
P.D.C.A. ㈱パデセア
e-mail : [email protected]
2008 年までの日本の条約登録湿地
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