微生物学の基礎 - 福岡市薬剤師会

平成24年度福岡市薬剤師会研修会
!
!
!
!
!
!!
!
!
!
福岡大学薬学部微生物薬品化学教室
鹿志毛 信広
!
!
!
!
!
!
!
!
! !
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!!
OSCE
!
OSCE
!
!
!
!!
!
!
!
!
!
DNA
!
!
RNA
!
EB
B19 B
C
!
!
HIV HTLV
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
10
!
!
11
!
12
13
! !
!
!
!
!
!
!!
!
!
!
!
!!
!
!
!
!
!
!
!!
!!
!
!!
!
β6
!
!
!
ST
10
11
12
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
- 身近な微生物には,発酵食品や医薬品の製造に役立つ有用微生物や感染症の原因あ
るいは腐食や腐敗の原因になる有害微生物がいる .
身近な微生物
!
• 
– 
– 
– 
– 
1 5μm !
10μm !
10μm !
300nm
地球上の微生物
!
– 
– 
– 
1012
地球上での物質循環に I期')・
生態系の分解者
炭 AE の循環
!
• 
窒素の循環
分解者
!
I
109 !
1069mg!
図 1-1
• 
有害微生物
感染症 (伝染病) の原因
となる病原微生物
食中毒の原因
腐食や腐敗の原殴
有用微生物
発酵食品の製造
アミノ酸や抗生物質など
の有用物質の産生
汚染環境の修復
1632 1723
ょ
っ
I . 文章の空欄に適当な語句を入れなさい
(
2.
) ・(
) の役割を担っている .
身近な微生物に は,(
a
I
I
私たちと微生物の関わり
ここに ある問題は本文を読めば解けます
1. 生態系は生産者 ・(
企
) や (
わからないときは. 本文を読み直してみ まし
) ・非生物的環境から構成され,微生物は
) の製造に使われて私たちの生活に役
!
!
• 
184361910!
• 
!
– 
• 
• 
•  1976
•  1882
•  1883
•  1889
•  1897
182261895
→
→
1. 
!
3. 
!
4. 
!
!
2. 
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
1910
1920
1932
1933
1935
1944
1953 DNA
!
!
!
!
!
DNA!
!
61!
62!
2-2 微生物とはどのような生物か
17
'
一 般の細菌
病原細菌
J
¥ てJ T竺?21f ノ I I (
!
!
• 
Archaea
– 
原虫真菌
!
Bacteria
– 
植物
虫 謀類
動物
昆
其正細的
Prokaryote
• 
H
封母
Zl
H
原核生物
)!
!
• 
→
Eukaryote):
• 
図 2-7
!
!
– 
– 
非綱1 胞 性生物
細胞性生物
!
!
生物の分類 (系統樹)
まり,変選しながら現在のような系統進化に基づく系統分類学に 至っ ています. 歴史的には. 3
界説 (動物界. 植物界,原生生物界
j京生生物界,モネラ界=
へ ッケル E .H aeckel. 1866). 4 界説 (動物界,植物界.
細菌界. コ ープランド H .Copeland , 1938),5 界説 (動物界. 植物界.
原生生物界,菌類界,モネラ界= 細菌界: ホイタッカ - R. Whittaker. 1959) などがありました
63
が. 現在では以下に記述するスタ
ニエ R. Stanier やウォ ーズ C. Woese による分類法が主流 にな
20
第2章微生物学総論
っています.
表 2-2
原核生物と真核生物の細胞構造の比較
タキソノミー taxonom原核生物
y : タキソ
.1 ン の 分 類 階 級
①
:ω
1-
- │:
タキソンとは,似たものを集めるという意味です
•  16S!rRNA
真核生物
動物
形状や生化学的性質などの類似した集合
, 2001 - 2007 年 . p. 21 参照) では,綱の上位に門の代わりに
Systemタンパク質合成
atic B acteriology (第 2 版
80S
80S
80S
生物が分類されると階級ごとにラテン語名がつけられま
フイラム P hylu m を設けています. ある (ただしミトコンドリアや葉緑体には
70S 型リボソ ー ムがある )
70S
細胞壁
scientific na m e有といいます .
す. これを学名
細胞壁の主成分
ペプチ ドグリカン
80S
有 無
マンナン
!!fi
有
セルロース
グルカン. キチン
ります. さ らに,生物型 B iovar ,血清
種以下の階級として亜種 Subspecies を設けることもあ
細胞! 良ステロール
主
lE
型 Serovar. ファ ー ジ型 P hagovar
イI
イ
T
などで細分することもあります.
このように同じ種の中にもそ
(エルゴステロール )
(コレステロール)
可
イ
守
イ
* 五主近, ピプリオ属の細菌で染色体が 2家族の中でも,それぞれが個性をもっているのと同じです
つあるものが報侍されている
れぞれ個性をもったものがいます.
ある個性をもった単一の微生物を純培養して得られる子孫集団を 株 (ストレイン strain) と呼び
ます. ただし
(リボソ
ーム) の構造に大きな追いがあります.
これに対して. 原虫や真
株はタキソン
(分類の単位)
ではありません. 例えば,ある種の細菌の中に突然
菌はヒトと同じ真核生物ですので. 両者間の相違点は少ないことになります. これが,世の中に
変異で異なる形質を示すものが現れた場合などは変異株が出現したといいます.
これは (菌) 株
抗細菌薬 (抗生物質など) はたくさん存在するのに対して,抗原虫薬や抗真菌薬が非常に少ない
です
E scherichia coli K 12
!
植物
遺し
伝次
(D に
N A)
述し た 種 の 集 合 を 以 とし,次に類似した属の集合を科 と し さ ら に 目 ,綱, 門
を随 と
類I刻
似
有
有
イ
T
平
I
核 IJ英 !
!
正
-{]
と下から上へピラミ
ッ ド状に積み上げてい って分類体系をつ
り ますイI 種や属などが,タキソ
有
ヲ
イ く
有糸分裂
複数
複数
級数
級数
染色体数
ド
ンです.
下位から上位へ,種 Species ,属 G enus,科 Family , 目 Order. 綱 Class. 門 Division.
細胞小器官
有
有
無
ミトコンドリアなと
有
イ
}
M a nual of
jm.
右
ー
111E
1m:
無
葉緑体
リボソーム
!
• 
E scherichia (属名 )
RNA
•  16S!rRNA
!
RNA
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
16S!rRNA
PCR
1600
せん状の細 m
スピロへータ
マイコプラズマ
リケ ッチア. クラミジア
グラム陰性
(グラム陽性的に近い)
グラム陰性
2-2 微生物とはどのような生物か
Bergey’s!Manual
表 2-4
表 2-1
B ergey's M anual に よ る 真 正 細 菌 の 分 類
ブロテオバクテリア門
微生物 (和名 )
真正細菌
細 菌 (大腸菌)
グラム陰性的
リケ ッチア
ファーミキューテス門
真菌
グラム陽性菌
2-2 微生物とはどのような生物か
マイコプラズマ
Ju*r!J I¥'4!"1
放線幽
抗般的 (結核菌
21
原虫
配 列 に 基 づ く 分 類 法 や 定 量 的 D N A - D N A ハ イブリダイゼー ションなどの方法が威力を発揮して
おり
B ergey's M anual の 最 新 版 ( 第 2 版. 2001 年 よ り 出 版 開 始 ) で は
大 幅 な 改 訂 が な さ れ て い ま すー なお
クラミジア 1"1
欣 線 (N も 細 菌 の 仲 間 で す.
通常
マイコプラズマ
表 2-3 の よ う に グ ラ ム 染 色 性
スピロへ
- '7 1"1
リケッチア
クラミジア
らい l道)
スピロへ ー タ
スピロへータ
類さ れ ま す . 形 態 や 増 殖 機 構 に 特 徴 の あ る マ イ コ プ ラ ズ マ . リケ ッチア . ク ラ ミ ジ ア , ス ピ ロ へ
ー タ. 放線菌は別個に分類されます.
ています. 表 2-3 に あ る 細 菌 は す べ て真 正細菌で. 23 門 の 中 の プ ロ テ オ バ ク テ リ ア (P roteobacte-
!
ピロヘ ー タ (Stirochaetes). パ ク テ ロ イ デ ス (B acteroidetes) といっ た 門 に 属 し て い ま す . そ れ ぞ
なお . プ ロ テ オ バ ク テ リ ア は α.
s. y.
細菌の分類
一般細菌
クラム 1:1 tL l'li
f;.-j-気
性
菌
・
一・緑膿菌
一
ブルセラ レジオネラ
t早菌
通性嫌気性菌 … jJ易内細 lfi 手1. (大腸菌 赤
沖
1)'00 サルモネラ . チフス菌 ペスト菌)
ピブリオ科 (コレラ菌 脇炎ピブリオ ) インフルエンザ菌
嫌気性菌 ーーパクテロイデス. ポルフィロモナス
好気性菌 .....i.
林菌. 髄膜炎凶
球的
カンピロパクター. へリコパクタ ー
らせん l箔 微好気性菌-
1"1,
(荷
クラム:1詰
衿
!Ifi
球的
芽胞形成菌ーーーパシラス属 (炭痘菌. 枯草菌 ). クロストリジウム属 (破傷風蘭. ガス壊痘菌.
ボツリヌス幽).
芽胞を形成しない菌 ー ジフテリア菌
抗酸菌 ー・マ イコパクテリウム属 (結核菌 非定型抗酸菌 らい菌)
ブドウ球菌 レンサ球菌 l揚球菌
カピ係の l有糸状の祁1拘
紺11れ、らせん状の細 m
形態 ・構造 ・増殖様式に特徴のある細菌
放線菌 (アクチノマイセスなど)
スピロへータ
マイコプラズマ
リケ ッチア. クラミジア
表 2-4
グラム陽性
グラム陰性
(グラム陽性的に近い)
グラム陰性
B ergey's M anual に よ る 真 正 細 菌 の 分 類
(略して E. coli)
albicans
カンジダ・アルビカンス
c. aめicans)
Entamoeba histolytica
エンタメーパ ・ヒストリティカ
(略して E. histolytica)
種形容語
Escherichia
coli
Candida
albicans
Entamoeba
histolytica
エシェリキア
カンジダ
エンタメーバ
コリ
ヒストリテイカ│
ウイルスの場合は,ラテン語で表記する 二名法とは異なるので注意が必要です
ウイルスの
種名は最初の単語の第 1 文字のみを大文字としつづく単語も固有名詞以外はすべて小文字に
すべてイタリック体で表記します . 例 えば A 型インフルエンザウイルスは , Influenza A
します
mrus と表記されます
(3) 同定
古細菌は 2 門に分割され
ria). フ ァー ミキュ ー テス (F irmicutes). 放 線 菌 (Actinobacteria). クラミジア (Chlamydiae) . ス
表 2-3
エシェリキア・コリ
属名
E. histolytica のように属名を 一文字で略記する こともあります
この よ う な 従 来 の 細 菌 分 類 は . 16S r R N A の 塩 基 配 列 に 基 づ く 系 統 分 類 に よ っ て 大 き く 様 相 を
れ が ど の 門 に 分 類 さ れ て い る か を 表 2-4 に 示 し て い ま す
稜名
そ の 成果 をふまえた
クラミジア
(,
細 菌 の 基 礎 知識 (1)J 参 照 ) に よ りグ ラ ム 陽 性 的 と グ
変 え つ つ あ り ます . 前 述 の B ergey's M a nual で は, 真 正 細 菌 は 23 門
微生物の名称 (呼び方)
E scherichia coli
(略して
19
自然界から微生物を分離すると. その微生物の形態や生化学的性状や遺伝子レベルでの相同
性などを調べて分類学上でどこに位置するかを決定する作業を行います. 最終的に,全染色体
D N A を使った定量的 D N A- D N A ハイブリダイゼ ー ションで 70 % 以上の相対類似度を示せば,
• 
同一種とみなされます
これを 同定 identification といいます
• 
(4) 保存
– 
– 
同定された微生物 (細菌の場合は. 分類された菌株) を保存 preservatIOn しておきます. 国際
– 
的な微生物株保存機関にA merican Type Culture Collection (A T C C) や National Collection of Type
• 
Cultures (N C T C) があります
 
 
系統進化
 
 
 
進化論的位置づけに基づく分類体系を構築します.
すべての細胞性生物はタン パク質合成装置
 
として働くリボソームをも
ってい ますので, リボソ ーム R N A の塩基配列を比較して系統化する
 
(5)
のが現在の主流になっています. 系統進化 phylogeny は系統樹として示され ます.
包
真核生物と原核生物の細胞構造上の相違点
両者は. 染色体 D N A が核膜に固まれているかいないかという違いの他にも細胞構造に多くの
相違点があります. その相違点を 表 2-2 にまとめています.
細菌の大きさと形態 - 3 つの基本形態
細菌に見られる 3 つの基本形態は. 球形 (球 11I 久 保 j巴 'lVI刻、
. らせん形 (らせん l有 です
それぞれの菌は. これらの基本形態のバリエ ー ション (変形) になります (図 2-11).
球的
a
C
b
•
•
d
11
4.
e
-枠 l翁
f
らせん菌
h
g
‘
ー
,
.
'v机N
MNII
f : 梓菌 ( 短梓菌 。 両 端 が Ih スピリルム
丸い梓歯. 両端が竹 の節 li・スピロへータ
のような梓歯. 紡錘形の I ( ト レ ポ ネ ー マ 属 . ボ レ
梓菌)
I リア属. レ プ ト ス ピ ラ
g 連鎖状梓薗
│ 属)
図 2-11
30
第 2章微生物学総論
国
細菌の構造一基本構造と特別な構造
(1 ) 球菌 coccus
細菌の構造を J走本構造 と特別な情 j立に分けてみてみましょう (図 2-12) 基本構造とは. すべ
ての細菌がもっているものです. 細胞膜に固まれた細胞質があか細胞膜の外側に細胞壁という
堅い殻があります. 細胞質には. 染色体 D N A が露出して浮遊し多数の粒子状のリボソームが
みられます
ミトコンドリアや小胞体などの細胞小器官はありません
特別な構造として,爽膜.
鞭毛,線毛. 芽胞が見られることがありますが. これらはすべての細菌がもっているわけではあ
りません. つぎに. それぞれの構造の成分や機能について詳しくみてみましょう .
[ 細胞外 i
J
- - ペプチド
/ 外!撲
│
ペリ か ム
、
、
グラム│ 場性菌の細胞壁
¥ 内JI英 (細 胞JI莫)
細 胞l換
[ 細胞内}
グラム陰性菌の綱1111包幣
球形をしています. 菌体が細胞分裂後に分離せず 2 例の球菌 (a) が結合したままの双球菌 (b),
4 個の球菌が結合して正方形の形をした四連球菌 (c). 四連球菌が 2 つ重なり立方体の形をした
t ). 数珠状に連な ったレンサ (連
八連球菌. 葡萄 (ブドウ ) の房状にかたまったブドウ球菌 (c
2-3 細菌の基礎知識
(1) ー形態 ・構 造
鎖) 球菌 (e) などがあります. ブドウ球菌は直径約
1 μm の大きさですー
(2) 樗菌 bacillus
31
黄色ブドウ球菌
が短く. 短梓菌 とも呼ばれ ます. 梓菌は球菌ほど多様ではありませんが,連鎖した連鎖 (レン
サ) 状梓菌 (g) などがあります
J
ビブリオ属のコレラ菌防brio cholerae はコンマ (,
) 状あるい
の字状に湾曲していますが,梓菌に分類します. 大腸菌の大きさは ,0 .4 - 0 . 7
X
l. O
- 3 . 0 μm です
リボソーム
Irj' /i;占
!l!f[f立
など)
明
理
主
染色体 D N A
(核様体)
図 2-12
(3) らせん菌 spirillum
GlcNAc :N - アセチルグルコサミン ,MurNAc: N アセチルムラミン感。
フラスミド
細菌の構造 (基本構造と特別な構造)
(1 ) 基本構造の成分と機能
細胞壁 cell w all
大腸菌
・増殖
様状をしてい ます (f) . 典型的なものにパシラス属 (枯草菌など) があり ます. 大腸菌は長取h
は「く
①
細菌の基本形態一球菌・樟菌・らせん菌
L - A1a: L
アラニンー
長く なった菌体がコイル状の形態をしています
(h).D -そ
よって . 2 - 3 回ね
Ala :のねじれの回数に
D アラニン L - L y s : L リシン
D-Glu: Dーグルタミン酸, D A P ジアミノピメリン酸
Gly
グリシン (Glyx5 = Gly - Gly-Gly-Gly-Gly)
じれたヘリコパクターやカンピロパクター. コイル の回転数が多く菌体も 非常に長いスピロヘー
タ (i) などがあります
図 2-13
ペプチドグリカンの構造
スピロへ ー タの長さは , 10 - 2 0 μm ほどもあります
種類と結合様式が少し異なります (図 2-13)
実際 にはこの他に,コリネパクテリウム属のジフテリア菌のように基本的には梓菌なのですが
リゾチ ー ム lysozyme (酵素) でペプチドグリカンの GlcNAc と M u r N A c 聞の戸1 → 4 結合を加
2-3
2-3
細菌の基礎知識
大腸菌
(1)
ー形態 ・構 造 ・増殖
細菌の基礎知識
大腸菌
31
(1)
31
ー形態 ・構 造 ・増殖
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌
!
!
:20
!
5 10
!
!
15000psi
1020
GlcNAc :N - アセチルグルコサミン ,MurNAc: N アセチルムラミン感。 L - A1a: L アラニンー
D-Glu: Dーグルタミン酸, D A P ジアミノピメリン酸 D - Ala : D アラニン L - L y s : L リシン
!
Gly
!
GlcNAc :N - アセチルグルコサミン ,MurNAc: N アセチルムラミン感。
L - A1a: L アラニンー
D-Glu: Dーグルタミン酸, D A P ジアミノピメリン酸 D - Ala : D アラニン L - L y s : L リシン
Gly
グリシン (Glyx5 = Gly - Gly-Gly-Gly-Gly)
図 2-13
!
!
!
ペプチドグリカンの構造!
!
リゾチ ー ム lysozyme (酵素) でペプチドグリカンの GlcNAc と M u r N A c 聞の戸1 → 4 結合を加
水分解すると,得菌でも球形になり (この球形になった細胞をグラム陽性菌ではプ ロト プラス ト,
水分解すると,得菌でも球形になり (この球形になった細胞をグラム陽性菌ではプ ロト プラス ト,
グラム 陰性菌ではスフエ ロプラストと呼びます ), さらに低張液の中では菌体が破裂することか
ら,ペプチドグリカンが細菌の形の決定と内部浸透圧からの菌体の保護に重要な役割を果たして
いる ことが分かり ます. ペプチドグリカンの ことを. ムレイン m u r e m とよぶこともあ ります
細胞壁の主要な成分がペプチドグリカンであることはグラム陽性菌とグラム陰性菌で変わりま
その他の点では細胞壁の構造が両者で大きく異なります
構造上の違いによると考えられています (図 2-14)
ーリン脂質
- リン質
グラム陽性菌の細胞壁
図 2-14
ら,ペプチドグリカンが細菌の形の決定と内部浸透圧からの菌体の保護に重要な役割を果たして
いる ことが分かり ます. ペプチドグリカンの ことを. ムレイン m u r e m とよぶこともあ ります
細胞壁の主要な成分がペプチドグリカンであることはグラム陽性菌とグラム陰性菌で変わりま
せ んが
その他の点では細胞壁の構造が両者で大きく異なります
構造上の違いによると考えられています (図 2-14)
グラム染色性の違いは. この
一
一・
原
O抗
ピ
ド
リ
グラム 陰性菌ではスフエ ロプラストと呼びます ), さらに低張液の中では菌体が破裂することか
l
ノノ
( ( l
1 ¥ '
・A
ン
いJ
/ ノ
1
ゆー
・.
I I
恥ll
IH 関
-- 1 m L
-o 10 wv W
1m
1m
111
O
﹁ L PA b
﹂
門
111
ーリン脂質
グラム陰性菌の細胞壁
グラム陽性菌とグラム陰性菌の細胞壁の構造
グラム陽性菌の細胞壁
図 2-14
IH
--o
!
- リン質
- リン脂質
リ
• 
J
ーリン脂質
一
一・
l
ノノ
( ( l
1 ¥ '
・A
ピ
ド
• 
l l
け
目質
ン己
- l 一
。
引
﹁
Y
グラム陽性菌とグ ラム陰性菌の細胞壁構造
原
O抗
タイコ酸
1
1
│
│
グラム染色性の違いは. この
ポJ
グラム陽性菌とグ ラム陰性菌の細胞壁構造
ポJ
111
ペプチドグリカンの構造
種類と結合様式が少し異なります (図 2-13)
リゾチ ー ム lysozyme (酵素) でペプチドグリカンの GlcNAc と M u r N A c 聞の戸1 → 4 結合を加
タイコ酸
図 2-13
!
種類と結合様式が少し異なります (図 2-13)
せ んが
グリシン (Glyx5 = Gly - Gly-Gly-Gly-Gly)
• 
• 
• 
ン
いJ
/ ノ
1
ゆー
・.
恥 Il Il
﹁
1
1
│
│ Y
﹁ L PA b
1m
﹂
m
1関
1
l け ン 己目質
l
1m
w 引 -l一
0v W
O →
L
111
。
門
J
ーリン脂質
- リン脂質
グラム陰性菌の細胞壁
グラム陽性菌とグラム陰性菌の細胞壁の構造
!
!
!
!
球形になり (この球形になった細胞をグラム陽性菌ではプ ロト プラス ト,
ロプラストと呼びます ), さらに低張液の中では菌体が破裂することか
細菌の形の決定と内部浸透圧からの菌体の保護に重要な役割を果たして
ペプチドグリカンの ことを. ムレイン m u r e m とよぶこともあ ります
ペプチドグリカンであることはグラム陽性菌とグラム陰性菌で変わりま
細胞壁の構造が両者で大きく異なります
えられています (図 2-14)
グラム染色性の違いは. この
グラム陽性菌とグ ラム陰性菌の細胞壁構造
一
一・
ポJ
原
O抗
タイコ酸
111
ピ
ド
リ
ン
いJ
/ ノ
1
ゆー
・.
I I
恥ll
m
m
IH 11 関
-- 1 m L
-o 10 wv W
• 
﹁
1
1
│
│
﹁ L PA b
﹂
Y
門
J
!
!
LPS
•  LPS!
• 
• 
ーリン脂質
A
O
!
!
• 
• 
• 
• 
!
!
• 
!
• 
!
!
- リン脂質
- リン質
→
→
→
• 
• 
• 
l l
け
目質
ン己
- l 一
• 
O
。
引
111
ーリン脂質
ム陽性菌の細胞壁
-14
l
ノノ
( ( l
1 ¥ '
・A
!
!
!
→
!
• 
• 
• 
• 
グラム陰性菌の細胞壁
グラム陽性菌とグラム陰性菌の細胞壁の構造
!
!
• 
• 
!
!
!
!
!
2 !
capsule !
• 
– 
!
DNA!
• 
DNA
• 
DNA!
!
• 
!
• 
• 
• 
pili !
• 
DNA!
!
→
• 
– 
!
• 
!
→
!
!
– 
• 
(
• 
!
→
→
– 
!
!
• 
• 
• 
!
!
!
!
2
2
!
– 
– 
– 
!
– 
!
– 
!
• 
!
– 
→
!
!
!
– 
!
• 
• 
!
• 
(flagella)!
• 
•  Bacillus
•  Clostridium
!
!
!
!
– 
→
• 
!
• 
– 
– 
– 
– 
!
• 
!
– 
– 
!
– 
– 
– 
(
,
→
!
!
!
!
• 
!
• 
!
• 
Fe !
!
!
!
– 
– 
– 
!
!
!
38
第
−
2 章 微 生 物学 総論
!
i壬
ミ=
ニ
!
!
!
– 
封
建
1
一
① 適 応則 遅 期
② 対数噌 品川 期
① 静 止別
哀 退朋
@
制
市
巾
禾
乃
図 2-18
!
80
pH !
!
• 
0.5
NaCl
• 
7.5%NaCl
• 
!
!
!
!
3 3.5%NaCl
!!
!
→
– 
!
• 
!
!
– 
培養時間j
!!
pH7.0 7.4
– 
導期
γ
①
,
!
• 
対
同
塁
0
• 
• 
(
②
!
×24=72
72
→ =4.7×1021!
!
→ !
!
–  pH5.0 8.0
主
宗
!
15 45
37
•  pH!
@
主
20
24
• 
• 
↓!
– 
– 
③
n
• 
• 
!
• 
!
• 
!
細菌の増殖 曲線
グラフ (片対数グラフ ) に描くと直線になります
11)' It WJ stationary phase : 栄養源の枯渇や増殖に伴う有書物質 (老廃物 ) の蓄積. pH の変 化
3.
などにより増殖が停止します.
4. ktill 均J phase of decline : 静止期の後. 細菌はやがて死滅していきます. 図 2-18 のように濁度
−
(点線) で増殖をみていると分かりませんが. 生菌数 (実線) を見ると死滅していることが分か
!
• 
ります. 細菌が死滅しでも. 菌イ本が破壊されて溶菌しない │浪り濁度は変わりません
!
(4) 増殖に及ぼす環境因子
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
取地位. 般
ぷ
;ー などがあります. なお. 細菌剤 n胞は 70
80 % の水分を含み. そ
5%栄養型細菌 (芽胞ではない状態)
!
の生存には水が不可欠です.
は乾燥に弱いのです
①
温度
20%!
!
45 " C の温度範囲で増殖でき.
至適温度が 37 " C 前後の II'illitlW で
、
す.
!
!
0 " C でも噌殖する 低溢 I*I (好冷菌) から温泉の よ
しかしながら ,極地惜のような厳寒の場所で
!
②
!
!
!
p H ( 水素イオン濃度)
細菌は一般的に p H 5 .0
•  Ac/nomyces
• 
!
細菌には. それぞれ増殖可能な温度範囲と増殖に最適な温度
(至適温度) があります. 病原細
!
菌の大部分は, 15
• 
• 
• 
• 
– 
– 
細菌の増殖は ,種々の環境問子によって影響されます.
重要な環境因子として. 温度. pH (水
!
!
ぷイオン濃度)
AcJnomycetes !
• 
!
pH 8.0 で増殖しますが,大部分の病原細菌は 中性から弱アルカ リ
.0
7 .4) でよく増殖します (増殖に最も適した! pH を至適 p H という )• し か し 細
性 (pH
5 7 10%
,
,!Nocardia ,!Streptomyces !
Spirichetes !
– 
– 
– 
– 
• 
• 
• 
!
!
20μm !
!
!
!
STD !
!
!
– 
!
– 
– 
– 
– 
– 
!
• 
!
• 
!
300nm→
細 菌!の 基 礎 知 識 (1) ー形態 ・構造 ・増殖
!
43
!
• 
!
• 
!
– 
!
- 細菌は,グラム染色性の違いでグラム陽性菌とグラム陰性菌に大別できる.
– 
!
・細菌の形態から
,球菌,樟菌,らせん菌に分けられる
.
!
β2
!
2-3
– 
!
• 
!
• 
• 
• 
!
- 細菌の細胞壁の主要な成分は,ペプチドグリカンである
.
!
• 
-グラム染色性の遣いは,細胞壁の構造の違いによる.
グラム陰性菌には外膜がある.
!
•  D N A は核膜に固まれておらす¥
!
・細菌の染色体
原核生物とよばれる.
– 
!!
- 細菌の中には,英膜,線毛,鞭毛,芽胞などの特別な構造をもつものがいる
.
・細菌の増殖は,二分裂増殖である.
・細菌の増殖には温度. p H ( 水素イオン濃度). 塩濃度,酸素などの環境因子が影響
を与える.
- 細菌には,好気性菌,通性嫌気性菌,嫌気性菌などがある.
- マイコプラズマ, リケッチア,クラミジア ,スピロへータ ,放線菌も細菌の仲間で
ある.
42
第 2 章微生物学総論
表 2-5
性状
日
宿主調 111抱
細川抱 11
九⑥+⑥
人
州l +1( +0つ
ら
令
。
‘(
‘
0
④
i
J
J,
H 小体
⑨ ⑥
④│ ⑧
基本小体→網 様 体 網 機 体→ r'
l 1/¥11本→基本小体
fq 殖
綱総体は 二分裂 I
図 2-19
クラミジアの増殖過程
(5) クラミジア Chlamydias (増殖様式に特徴のある細菌)
耐性制胞 1)']',
台
: '1'_I-fiで. 生きた細胞の r
l' でのみ増殖します. 微生物の仁1'で. ウイルス.
リケ ッチ
人て培地での増殖
細胞( 内) 寄生性
細胞J 1!
良の1 r 無
細胞壁の有無
二分裂による増殖
細菌ろ過器の通過性
D N A と R N A の両核酸をもっ
物質代謝を行う
エネルギー産生系のイH 1!Ii
リボソ ームの有無
抗細菌薬に対する感受性
細菌の性質の比較 (付) ウイルス
一般
細菌
マイ コ
プラズマ
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
リケ ッチア
クラミ ジア
ウイ Jレ
ス
十
+
+
+
+
+
+
+
+
十
+