ユーレイルパスの旅 - レイルヨーロッパ

♪♪♪ 2002.12.ユーレイルパスの旅 ♪♪♪
TEXT BY 江村 恵
●旅のきっかけ ・・・・
レイルヨーロッパ主催、「レイルエキスパート」の資格を取得し、特典として「ユーレイル・フレキシーパス15
日間 ・1 等」をいただきました。これを機会に、かねてから関心のあった鉄道の旅を実行することに。
というのは以前6年ちょっとプロ添乗員として働いていた事があり、仕事で何度か列車利用の機会もあり
ましたので、ヨーッパの現地事情には明るい方だと思っていたのですが、お客様からの鉄道利用に対する
細かくつっこんだ質問には、返答に窮する事も度々ありました。そこでいただいたパスを活用しヨーロッパ
鉄道移動の旅を実地体験して、今後の仕事に生かせたらと思いました。
●旅の目的 ・・・・
少し前までは FIT=若者のバックパッカーというイメージが定着していましたが、最近は時間と金銭的に余
裕があり、尚かつお仕着せのパック旅行では満足いかなくなった中高年層が FIT を選び、ヨーロッパに個
人手配旅行で出かける傾向が大変増えてきました。そんな中高年カスタマーの場合、ヨーロッパ内での移
動手段は主に鉄道とバスです。特にいちいち窓口に並んでチケットを購入しなくてもよい鉄道パスは、中
高年カスタマーには人気です。そんな経済的には多少の余裕があるが、体力的にはやや不安がある、と
いう中高年カスタマー向けのルート・プランを練り、それが確かに無理なくこなせる内容か、という事を自
分で確かめてみる事にしました。
●旅のプラン作り ・・・・
プラン作りでまず重要なのはルート作成です。今回、まず添乗で訪れた事がない都市を回る事を念頭に、
季節的にちょうどクリスマスだったので、まずドイツから入る事にしました。 個人的に、かねてからずっと
ドレスデンのアルテマイスター絵画館に収蔵されているラファエロ作「聖シストの聖母」を見たかったので、
最初の訪問都市をドレスデンにし、南下して行く事に。
それに合わせ格安航空券を探し、SQの特定便指定という、シンガポールで6〜8時間という恐ろしい待ち
時間があるかわりに TAX 込み¥82.060のかなりお安いものが見つかりました。この航空券を使い、往
路フランクフルトIN、復路パリOUT のオープンジョーで手配。
残念だったのは、15日間のパスをいただいたのでめいっぱい使いたかったのですが、どうしても復路の
帰国便がお正月休み最終日近辺という事でWTが繰り上がらず、11日間の旅になってしまった事。パス
も正味 10 日間しか使えずもったいなかったのですが、後から考えると体力的にちょうどよかったかも?
結局ルートはドレスデンからニュールンベルグへ移動し、クリスマス・
マーケットの雰囲気を堪能した後、ジ
ェノヴァ、マントン、パリと抜ける行程に。途中2回ほど夜行列車にもチャレンジする事にしました。
●旅のポイント ・・・・
旅の計画のポイントとして、最低限これだけは守ろう、という2 点を最初に決めました。
①早朝&夜遅くの移動は避ける事。治安の問題上早朝や夜遅くに駅近辺をウロつく事は避けたかったし、
体力的にもしんどいので、基本的に明るいうちの移動と、到着後はまずホテルにチェック・インし、荷物を
置いてから行動できるようなスケジュールを心がけました。
②事前に駅近くのホテルを予約しておく事。バックパッカーにとってはインフォメーションに寄って現地情報
を仕入れつつ、格安なアコモデーションを探すのも旅の楽しみのひとつですが、私のようなひ弱なトラベラ
ーにとっては、時間的体力的負担が多き過ぎます。ホテルが事前に決まっていれば、駅から直行し荷物
をおき、即身軽になって行動できるので便利です。それにある程度のレベル以上のホテルだと、現地で予
約するより日本の REP などを通したほうが、格安の料金で予約できたりします。ただあくまで予約にしばら
れたくないので、宿泊クーポンは避け、現地払い予約のホテル、それもなるべくキャンセル料が当日とか
前日までかからないホテルを選び、旅の途中で行程を変えても差し支えないようにしました。
この辺りが中高年 FIT トラベラーの旅プラン作りのポイントだと思います。
♪♪♪ 2002.12.ユーレイルパスの旅 ・ 実践編 ♪♪♪
☆1日目(
2002 年 12 月.21 日 土曜日)
SQ995 便、成田発 09:
25 〜 シンガポール着 15:45。乗り継ぎ便のSQ026 までなんと8時間!もあるの
で、かねてから気になっていたチャンギ空港主催の、5H以上トランジット・タイムがあるパッセンジャー用
の無料シンガポール市内観光に参加してみる事に。
ツアーは「シーニック・リバーツアー」と「セントーサ観光」
の2種類あり、私は「
セントーサ」
観光へ参加。
空港から大型バスでイーストドライブを抜け、マリーナ地区を車窓観光しながらセントーサ島へ走ります。
島内をバスに乗ったままグルっと車窓観光した後、島で一番キレイな白砂のシロソビーチで15 分のフリー
タイム。空港に戻るまでぴったり2時間のツアーでした。
もうひとつの「シーニック・リバーツアー」
は車窓から中華街やインド人街を眺めた後、シンガポール川での
ミニ・ボートクルーズ付きというもの。雨天の場合ボートクルーズはなしだそうですが、シンガポールが初
めてという方にはこちらの方がおすすめです。中華街のかわいらしいショップ・ハウスと呼ばれている街並
みは、徒歩よりも大型バスからの高い視線からの方がよく見えます。
空港に戻ってもまだ5時間近くあるので、足ツボマッサージをやったり、有料のインターネットサービスを利
用したり (
06:
00〜23:
00 は 15 分 S$2、23:
00〜06:00 はなぜか無料。日本語の送受信 OK)。
いろいろ空港内全部インスペクションしましたが、出発時間の頃はクタクタに。やっぱり+¥30.000高く
てもLHにすればよかったかも・・・・、とちょっぴり後悔。ちなみにシンガポール経由でヨーロッパに行くと、
遠回りになるので往復で20.000マイルも飛ぶ事になります。マイル・コレクトにはいいですけどね。
【旅のデータ】
●「FREE SINGAPORE TOUR 」
(ブローシャー資料あり)・・・・
受け受けカウンターはターミナル 1 内に1ヵ所、ターミナル2内に2ヶ所。ここでパスポートとシンガポール
入国カード(
機内でもらいそびれてもカウンターに予備あり。滞在先のところは JUST TRANSIT と書けばい
いようです)、乗り継ぎ便の搭乗券を出し、どちらのツアーに参加希望か係員に申し出ると胸に参加シー
ルを貼ってくれます。申し込みはツアー出発 35 分前締め切り。カウンターは 08:
30〜18:20 まで営業。
各ツアー催行時間は、10:
00〜 S、13:
00〜 B、14:
00〜 S、15:
00〜 B、16:00〜 B、17:
00〜 S、18:
00〜B、19:
00〜 B。(S=セントーサ観光、B=シーニック・リバーツアー。2002.12.21 現在)
ツアー出発 35 分前にカウンターに再集合したら、参加者一緒にイミグレで出国手続き。ここにツアーガイ
ドが待っていて、全員のパスポートと出入国カードを集めます(空港帰着時に返してくれる)。待機していた
大型バスに乗り2時間のツアーへ。説明は英語ですが、シンガポーリアンの英語はとても分かりやすいで
す。バスの中でひとり1本のミネラル・ウォーターのサービスもあり。ツアーの途中離団は認められないの
で、どんなにトランジット時間があっても、現地解散は不可。一緒に同じバスで戻るしかありません。
●フリーツアーのバスには手荷物のみ持ち込み可能なので、ピギーバッグなど中型以上のバッグは空港
内の荷物預かり所に預けなければなりません。場所はトイレとかある端っこの方ですが、「LEFT
BAGGEGE」という表示が出ています。カウンター係員に申し出て預け、受け取り証をもらうシステムで、料
金は1個につきS$3.10、または US$2。日本円&カード払いは不可。営業時間08:00〜22:30。
●ターミナル1と2両方に、「AMBASSADOR TRANSIT HOTEL」という空港ホテルが有ります。(資料有り)
各室バス・トイレ付き。基本は6時間利用で、SGL S$56.65、TW/DBL S$63.45、TRP S$84.93、
EXTRA PEESON/BED S$21.53。1H超過毎に+S$13.60 ですが、10〜12H滞在は 12H分の料金にな
るそうです。またトイレ・洗面台付き、シャワー共同というお得な BUGET ROOM はS$39.66。
けっこう人気みたいで、帰路利用しようとしたら満室と言われてしまいました。事前予約可能ですが、保証
のクレジットカード・ナンバー&有効期限、到着&出発便の ETA/ETD が必要です。
連絡先:
TERMINAL-1, TEL.(65)542 5538、FAX.(65)542 5537、[email protected]
連絡先:
TERMINAL-2, TEL.(65)542 8122、FAX.(65)542 6122、[email protected]
横の「TRAN SPA」
では足つぼマッサージ 30 分S$28、肩、背中はそれぞれ 30 分で各S$387.35。
☆2日目(
2002 年 12 月 22 日 日曜日 くもり)
SQ026 便、フランクフルト着06:10。出入国審査を抜けた後、まず両替へ。
早朝で1ヵ所しか空いていないせいか、表示の両替レートで正しいか確認すると、「あれは昨日の一番良
いレートで今は〇〇」と訳の分からない事をいう。しかも手数料3ユーロ。結局 1 ユーロ=¥132.59の
計算に。どうしようか迷ったが、3万円分両替する。(結局滞在中現金はこの3万円しか使わなかった。後
日カード会社からの請求は126円弱〜127 円強のレートだったのでやはり海外での支払いは、基本的にカ
ード払いがお得です)
空港内の案内表示に従って、地下のDB(ドイツ国鉄)インフォメーションへ(
写真有り)。
パスのヴァリデーションは日本で発券時にしてもらっていましたが、まずここで明後日のフランクフルト〜ミ
ラノへの夜行列車の予約をする事に。窓口ではなぜかこちらが席を指定する前に「クシェト?」と聞かれ、
「いえ・・・」と答えると、「シート?」と返された。やっぱり貧乏が染み出ているのでしょうか?
「4人部屋にして」とお願いしたら、「ベッドは上がいい?下がいい?」と聞いてくれた。いい人だ。もちろん
下の段にしてもらう。座席指定料 22 ユーロ。安い!
ついでにマントン〜パリ行き夜行列車の予約もできるか聞いてみる。いろいろ調べて同僚にも聞いてくれ
たが、DBでは出来ないという。ホントかね。それでは第2案ルートのミラノ〜パリ間アルテシア・ナイトの予
約は?と聞いてみると、私がトーマス・クックで調べたミラノ21:55 発という列車はなく、23:
47 発のだったら
あるという。そんなはずないんだけどな。とりあえずパリ行きはイタリアに入ってから予約する事に。
ついでに自分で調べた、フランクフルト〜ドレスデンの発車時間が間違ってないか調べてもらう。これは簡
単に調べて(
多分DBのHP)、その場でプリント・アウトしてくれました。
DB窓口のすぐ前は国鉄の案内コンコースみたいになっていて、モニター画面で出発時間、行き先、出発
ホームがすぐ分かるようになっている。ホームへはもちろんエスカレーターあり。
07:48 空港発の電車でフランクフルト中央駅へ。発車後すぐ軍人みたいな格好をした係員が検札にくる。
でもベレー帽にはDBのワッペン付き。このロゴ、シンプルでかっこいなぁ。セイバーパスなのに日付を記
入するのを忘れていましたが、お兄さんは何も言わず自分のペンで今日の日付を書き込んでくれました。
8時近いというのに辺りはまだ薄暗く、夜明け前の雰囲気。乗客もまばらでちょっと怖いので、人のよさそう
なご夫婦の隣のボックスに座る。ニコニコと愛想良くしていたら、いろいろ話しかけてくれて、「国鉄がもし
かしたらストやるかもしれないってニュースで言ってたよ」と教えてくれた。困るなぁ。「
クリスマス・イヴの日
に夜行列車で移動の予定なんです」というと、「
なんでまたイヴの日に!」とびっくりされてしまった。
15 分でフランクフルト中央駅着。ここはターミナル駅なので、どのホームに到着しても一目で見渡せるの
で安心。中央コンコースへ行くとDBインフォメーションの所にDBラウンジの看板があり、中に入るとインフ
ォメーションの2階がDBラウンジになっていました。エレベーターもあるので、荷物を持っていても楽チン。
ラウンジはそんなに広くはないけれど明るくてキレイで、まるでカフェのようでした。(写真あり)
受付で一応パスを見せましたが、「
OK」と言われただけ。ラウンジのシステムとか、こちらから聞かない限
り特に説明してくれないのは大人社会ヨーロッパではよくある事ですな。1等パスなので奥の1等ラウンジ
ルームが利用出来るのだけど、覗いたらビジネス客っていう感じの人がパソコンをやっていたので、手前
のオープンスタイルの2等ラウンジでゆっくりする事に。オリーブの木の植え込みがあり、おしゃれなテー
ブルと椅子が配置され、隅には子供向けのプレイ・コーナーも。スナック・カウンターもあったので、コーヒ
ーとペストリーを頼んで朝食を取る。4ユーロ。トイレも無料で自由に使え、本当に過ごしやすいラウンジ
でした。06:00〜23:
00 までオープン。
09:21 フランクフルト中央駅発 ICE1557 でドレスデンへ(写真有り)。
ICE はメチャクチャきれい! ドイツの列車は一度だけ、添乗デビュー前の研修旅行でミュンヘン〜ルッツ
エルン間を乗ったことがあるのですが、その時とは比べ物にならない程 ICE は立派でした。正直いって今
回の鉄道旅行に関して、大型バスでホテル TO 目的地の楽チンパッケージツアーに慣れきってしまった
身としては少し不安を抱いていたのですが、そんな気分をしょっぱなから吹き飛ばしてくれるな快適な列
車です。まず車内がキレイ。トイレと荷物置き場のコーナーなんか、木目を生かしたインテリア+シックな
照明でまるでホテルのロビーみたいです。座席もゆったりしていて、4〜5時間ぐらいの距離なら狭い飛行
機より快適な鉄道で移動した方がよっぽどいいのでは?と思った程です。
今回乗った ICE1557 は、1 等は1−2という座席配列ですが、作りがちょっと変っていて、1 車両の半分くら
いは普通の1−2のオープン座席。残り半分は片側は 1 列の通常シートですが、反対側が2席向かい合
わせの4人掛けコンパートメントになっていました。子供連れの家族旅行にはいいですね。
座席の上にはちいさな電工掲示板があり、そこに「DB CONFIRM?(
だったと思います、多分)」と表示され
ているのが予約席のようでした。2等車は2−2の座席配列。
また全席にではないですが、車内あちこちに「ICE1557」の案内リーフレットが置いてあり、これが停車駅、
停車時間、列車内施設案内だけでなく、各停車駅での連絡電車まで記入してある便利モノ。この列車案
内は、その後乗ったドイツ内のすべての ICE&EC に置かれてありました。素晴らしきかなDB!
ちなみにコーヒーの車内販売あり、2ユーロ。ちょっと高いですねぇ。
すっかりくつろいだ気分でドレスデン 13:47 着。本日の宿泊はガイドブックの地図でなるべく駅に近いホテ
ルを探し、SABER でそのホテルの REP を調べ、駅から目算 500m の「IBIS KIONIGSTEIN」をアコー経由で
予約済み。RACK RATE で 56 ユーロ、税・サ込み、朝食なし。
(ちなみに各種ガイドブックを比較検討しましたが、地図が一番正確で、英文ホテル名も入っていて「使え
る」のは、なんだかんだ言ってやっぱり 「地球の歩き方」 でした)
ドレスデンはそんなに大きくない街なのに、なぜか駅前に 4 件もの大型ビジネスホテルがあります。
学会とか会議が多い町なのだろうか? 駅前広場の右前方に「MERUCURE」。その道はさんだ斜向いに、
手前からIBIS 系列の「
BASTEL」、「KONIGSTEIN」、「LILIENSTEIN」
が並んで建っている。
その内「MERUCURE」と「
BASTEL」は改装休業中のようで、予約した「
KONIGSTEIN」が結局駅から一番近
かったのですが、チェック・インしたら何故か隣の「
LILIENSTEIN」
に振られてしまった。
夜、「KIONIGSTEIN」を見たらほとんどの窓が真っ暗だったので、多分予約が少なかったので人件費&光
熱費節約のため、宿泊客をひとつのホテルにまとめてしまったのでしょう。でも系列3件の中では一番駅
から遠くて、しかもドレスデンの駅前広場が大規模な改修工事中のため回り道しなくてはならないので、
明日荷物を持って駅まで戻るのに 10 分以上かかってしまいそう。あぁ〜あ。でも本当のバックパッカーは
1 ユーロでも安い宿を求め、この何倍も荷物背負って歩くのよね。すごいなぁ。
ホテル自体はいかにも IBIS という感じで、手頃な大きさの部屋にコンパクトに必要なものがまとめられて
いて使いやすく、明るくて清潔な感じ。バスタブなし、シャワー・オンリーですが、カーテンのみの仕切りで
なく、シャワースペースがガラス戸で仕切られているので、水漏れを気にすることなく思う存分浴びられる
ので問題なし。シャワーも壁備え付けでなくはずして使えるタイプで二重丸。ドライヤーもありました。石鹸
&シャンプーはミニサイズのものではなく、最近多いエコロジー・スタイルの壁備え付けのボトル型ですが、
洗面所が DOVE、シャワースペースが LUX だったのは IBS のこだわりでしょうか? ちなみにドレスデンの
IBS 系列3件は、すべて同じ料金だそうです。
部屋に荷物を置いたらフロントで地図をもらい、すぐ出発。
小さな街なので、ホテルからクリスマス・
マーケット会場の旧市街中心、アルトマルクト広場までは歩いて
10 分くらい。たくさん屋台が出ていますが、朝ペストリーを食べただけの腹ペコの身には、食べ物の屋台
が目に付く。やっぱりソーセージかな、でも長いフライトで胃がもたれているからお肉類はちょっとヘビーか
も?と悩んでいると、中華の屋台発見! 結局そこでチキンカレー+レモンティーの昼食、4ユーロ。
ヨーロッパ到着の、第一食目が中華とは。でもやっぱりお箸の国の人、例えパサパサ長米種でも、メシ粒
喰ったら元気になりました!はりきってアルテマイスターを目指す。
この絵画館はアルトマルクト広場から徒歩 10 分弱の、ツヴィンガー宮殿の中にあります。宮殿の他の部
分も見たかったけど、時間がないのでまっすぐアルテマイスターへ。明日、月曜は休館日なので、今日を
逃すと見れなくなっちゃうからね。入館料4.10ユーロ。
展示作品はイタリア・ルネッサンス後期のティントレット、ボロネーゼなどのベネツィア派から、ルーベンス
などのフランドル派を中心とした品揃えで、どれも見ごたえがありましたが、やっぱりお目当てはラファエロ
の「聖シストの聖母」。聖母の画家と言われ、数多くの素晴らしいマドンナ像を描いているラファエロの、最
高傑作と呼ばれている絵です。でも何故か絵の全体図ではなく、足元に描かれている2人の頬杖をつい
た、ふてくされたような表情の天使の部分だけがもてはやされ人気になってしまっているんですね。
かくいう私も、初めてイタリアに行った時に町中あちこちでこの天使をあしらった小物が売られているので、
フィレンツェのガイドさんに、「ウフッツイ美術館のどこにこの絵がありましたっけ?」と聞いてしました。
それ以来ヨーロッパ各地でこの天使のモチーフを見る度に、ずっと本物を見てみたいと思っていたので気
合が違います。
実物はかなり精緻に書き込んであり、聖母の踏み出した力強い足元、風をはらむマント、跪く聖人の衣の
質感など、天才ラファエロの画力のすべてをつぎ込んだ、大作でした。まるでキャリアウーマンのようなき
りっとしたマドンナの表情も意外でしたが、一番おやっと思ったのは、すべてがきっちり描き込んであるの
に足元にいる例の天使の羽根だけが、無造作に筆を乗っけただけ、といったタッチだった事。まるで後か
ら付け足して描いたような感じでした。う〜ん、謎だ・・・。
ここでのもうひとつの収穫はフェルメールが2 点もあった事です。現存する彼の作品は36 点と言われてい
ますが、これで 16 点実物を見ことになりました。ちょっとうれしい。アルテマイスター収蔵は「
遣り手婆」と
「窓辺で手紙を読む女」
ですが、特に「
手紙を読む女」がすごかった。作品としては 83×64.5cmという小品
ですが、もうその部屋に入っただけで「フェルメールがそこにある!」って分かる存在感。目が奪われてし
まうというか、ただすごい!としか言いようのない絵ですね、フェルメールは。しかも警備が甘い!私、
30c
mの近さでフェルメールを見たのは初めてですよ。いいんですかい、ドレスデン市長様?
美術館は2時間もいると脳みそがいっぱいいっぱいになってしまいます。フラフラしながら外に出るとあた
りはもう暗くなりかけで、ゼンパーオペラのイルミネーションがキレイ。
本日は「ローエングリーン」を上演らしく、せめてロビーの雰囲気だけでも見たかったのですが、中に入れ
ませんでした。残念。でも外観も重厚で、パリのオペラ・ガルニエに匹敵するぐらい素晴らしい建物です。
そうこうするうちに6時になり、カトリック宮廷教会の鐘の音が響き渡り始めました。ブリュールのテラスと
呼ばれる川沿いの展望スポットに上り、鐘の音を聞きながらエルベ川の夜景を堪能。
でも日が落ちると急激に冷え込むなぁ。シュタールホーフ外壁のマイセン磁器による長さ101mのタイル画
「君主の行列」を横目で見ながら、再びクリスマス・マーケットへ。
夕食は屋台でソーセージをと思っていたのですが、ぶっといソーセージを見ても食欲がわかず、ワッフル
+グリューワイン(ドイツのクリスマス市名物のスパイス入り甘いホット・ワイン)、3ユーロですませる。
水も買いたかったのですが、クリスマス・
マーケットにはそういう普通のお店はなく、結局駅まで戻る事に。
ついでに駅のインフォメーションで、明日のニュールンベルグ行き列車の時間を調べてもらう。出発前に
調べたところ、ドレスデン08:20発しかなかったのですがちょっと早いので、もう少し遅い便にしたかった
のです。でも結局お昼過ぎまでにニュールンベルグに到着するには、その便しかありませんでした。がん
ばって早起きするしかない。駅の売店でミネラル・
ウォーター2本+アイスクリーム購入、4.7ユーロ。
☆3日目(
2002 年 12 月 23 日 月曜日)
07:30にはホテルを出ようと思っていのに、ばたばたして 07:
45 頃になってしまった。焦って駅まで急ぐ
が夕べ小雪が降ったようで、道にうっすら雪が積もっておりカートの荷物が引きづらい。あたりはまだまだ
夜明け前の暗さで、大きく地下が掘られている改装工事中の駅前広場を渡るのはちょっと嫌な感じ。でも
無事に駅到着し、売店で出来たてのチーズとハムのバゲット・サンド、2.5ユーロを買って 08:
20 発の
ICE1652 便に乗る。車内快適なれど、期待していたコーヒーの販売なし。水で流し込む。
ライプツィヒ、09:18着。ここもターミナル駅なので作りが分かりやすい。乗り換え時間が 1H近くあるので、
中央コンコースのDBラウンジへ(写真あり)。
ここは入るとかなり広いスペースがあるが、雰囲気はベンチの並んだただの待合室といった感じ。トイレも
有料で0.1ユーロ・コイン×3個入れなければ開かないシステムでした。
奥の階段の上に大きなバーカウンターがあり、その横に1等ラウンジの受付があったので行って見た。
こっちはいかにもラウンジといった雰囲気で、ゆったりしたソファがあり、新聞等が置いてある。またインタ
ーネット接続モデム付きのライティング・デスクコーナーもありました。ただ照明が暗かったせいか、そこは
かとなくわびしい感じが・・・・。営業時間、06:00〜24:
00。ロッカーは1回、1ユーロ。
ICE1515 にて、ライプツィヒ10:11 発、ニュールンベルグ13:
25 着。ここはターミナル駅ではないので、いっ
たんホームから地下連絡通路に下りる必要がありますが、エスカレーターもエレベーターもあるので荷物
があっても大丈夫。通路から中央コンコースへ出ると駅自体はかなり大きく、地下1階、地上2階で一部シ
ョッピング・アーケドになっていました。ハンバーガーショップや、シーフードのチェーン店「
NORD SEE」等
が入っているフード・コートもあり。また各所にピクトグラムがあるので、初めてでも分かりやすい駅です。
つくづく思うのですが、ヨーロッパの駅はどこも本当に作りが分かりやすい。国同士が地つづきのため、言
葉が理解できない人の利用もたくさんある事を念頭にしているのか、ピクトグラムが多用されており、サイ
ンで大体の意味はわかる。それに駅舎の設計自体が単純なので分かりやすい。土地の狭い日本とは比
較対照になりませんが、少なくとも構内での乗り換えに 10 分以上あるく事なんてめったにないし。私鉄が
少ないからかもしれないけど。日本では駅構内が複雑すぎて、池袋や東京駅での乗り換えは未だに迷っ
てしまいます。生まれた時から関東人の私でさえそうだから、外国人になんて迷路みたいでしょうねぇ。
ここでの宿泊は SABER で探し、ドイツの主要駅そばには必ずある国鉄系チェーン・ホテル「
INTER CITY」
にREP のSRSワールドホテルズ経由で予約済み。RAC RATE 140 ユーロのところ、朝食付き、税・
サ込み、
TRAVEL AGT RATE で 55 ユーロ。(一般客用ウィンター・
レートでも同じ内容で 60 ユーロでした)。
駅の案内板にも「INTER CITY」ホテル方面への矢印が出ており(写真あり)、最寄り出口を出たら前方 100
mのところにもうホテルが見えていた。
お部屋はきれいで清潔、かつ機能的。ミニバーやライティングデスクもあり、衛星TVもあって言う事なし。
バスタブなし、シャワー・オンリーですが、やはりガラス戸で仕切られた専用ブースで、シャワーも壁から取
れはずせるタイプなので使いやすい。しかもホテルカードを持っていると、市内の公共乗り物が無料!さ
すが税金 16%の国だけありますね。日本も消費税 UP するなら、ここまでやってよね、小泉さん!
フロントで地図をもらった後、再び駅へ。明日、列車の出発時間までここのDBラウンジで過ごそうと思って
いたので下見にいったのですが、2FにあるDBラウンジに行くと、明日はクリスマス・イブなので17:30でク
ローズするという! しょうがない、ホテルのロビーにでもいようかな。
マントン〜パリへの夜行列車を予約しなければとインフォメーションへ行くが、あまりの長蛇の列に断念。
明日に回して旧市街観光へ。
ここニュールンベルグはヨーロッパの古い都市には珍しく、旧市街城壁のまん前に国鉄駅がある。だから
とても徒歩観光がしやすい町です。しかも駅から旧市街中心のハウプト広場まで徒歩 15 分という手ごろ
な大きさ。途中のケーニヒ通りには八百屋や花屋の市がたち、カラフルな店先は見ているだけでワクワク
します。早速、好物の干しなつめを、100g 1.5ユーロで購入。円錐形のキャベツとか見慣れない野菜が
いっぱいあって楽しい!ブラブラしながらヨーロッパ最大のクリスマス・
マーケットが立つ事で有名なハウ
プト広場へ行くと、予想以上にたくさんの屋台が並んでいます。例によって食い気優先の私は、真っ先に
名物ニュールンベルグ・ソーセージの屋台へ。日本人に食べやすい人差し指サイズのソーセージで、目
の前でグリルしているやつをパンに挟んでくれます。3本はさんでもらって2ユーロ。セルフサービスで芥
子もたっぷりつけて、いっただきます!(
写真あり)
広場に面してインフォメーションがあったので立ち寄ると、日本語のカラーガイドブック(5.70ユーロ)まで
ありました。絵葉書数枚とご当地ピンズも購入。ついでに明日開館している観光スポットをたずねると、年
末年始の開館時間リストをくれたのですが、やはり明日クリスマスは教会ぐらいしか見るところなし。
見たかったおもちゃ博物館も本日から休館という事で、とりあ えず町の象徴、カイザーブルグへ。
ところが!やはり平面地図だけでは分からない! このカイザーブルグ、ハウプト広場から直線距離だと
多分 300mちょいなのですが、城に至る道がものすごい急斜面の坂道!城砦だけあって、やっぱり町を見
下ろす高い所にあるのね、と感心しながら息を切らせつつ到着。
しかししかし。ガイドブックには閉館 16:00 の 30 分前に最後のガイドツアー出ると書いてあり、インフォメ
ーションでも確認したのに、なぜかチケット売り場到着が 15:22 でも、「もう締め切り」といわれてしまいまし
た。「塔だけならまだ登れるよ」と言われ、チケット購入。試しにホテルカードを提示すると、2ユーロのとこ
ろが1.5ユーロにディスカウント。さすが税金16%。
最後の体力を振り絞って登った塔は見晴らしがよく、駅の先の方までずっと見渡せました。でも疲れた。
繁華街をぶらぶらしながら帰ると、テイクアウト・コーナーのある中華レストラン発見。まだあんまりお腹が
空いていなかったので、炒飯と炒め物をBOX にしてもらう。5ユーロ。
旧市街城壁から駅方面へは地下道でつながっていまして、そこがちょっとしたお店屋さん街になっており、
食べ物のテイクアウト専 門店もいくつかありました。その中にインド料理屋発見。「ヒンドゥー教徒ならクリ
スマスは関係ないはずだから、きっと明日も開いている!」とひそかに目をつけておく。
別の店でミネラル・ウォーター2本とドレッシング付き野菜サラダのパック、計5.50ユーロで購入。ホテル
の部屋で食す。食物繊維たっぷりの健康的な夕食でした。
食事をしながら今後のスケジュールを見直す。当初の予定では明日 12/24 の夜、夜行列車でミラノへ。
翌朝到着後、乗り継いでジェノヴァへ移動し、12/25 はジェノヴァ観光。12/26 にジェノヴァ〜マントンへ移
動し、12/27 マントンから夜行列車 TRAN BLUE でパリへ入るはずだった。しかし12/25 クリスマスはどこ
も休みなので、この日はまるまる移動日に当てる事にした方がよさそう。体力はまだ大丈夫そうなので、
12/25 は朝ミラノに到着後、そのまま、マントンまで移動する事にする。パリへはミラノまで戻り、アルテシ
ア・ナイトを使う事にしよう。明日、ジェノヴァとマントンのホテルに電話して、宿泊日の変更をしなくては。
☆4日目(
2002 年 12 月 24 日 火曜日 くもり一時ぱらぱら雨)
ホテルで INCLU.の朝食。卵料理、ベーコンのホットミールにハム、チーズなどのコールドバフェ、シリアル、
ヨーグルト類にケーキまであるフル・ブレックファーストだったので、ゆったり過ごす。
クリスマス・マーケットは本日午前中で終了との事なので、とりあえず部屋に荷物を置きっぱなしのまま、
市内散策に出かける事に。09:00 過ぎホテル発。
ホテルのロビーの電話は公衆電話でなく、0 発信で手数料がプラスされてしまうというので、駅まで行って
ジェノヴァとマントンのホテルに電話し、宿泊日の変更をしてもらう。クリスマスだから混んでて無理かな、
と思いましたが両方ともあっさりと変更OK でした。ヨーロッパの公衆電話はほとんどがクレジット・カードを
差し込んで使えるので、小銭がなくてもよく、助かる。
駅の予約窓口は相変わらず混んでいるので、またしても夜行列車の予約は後回しにし、旧市街の聖ロー
レンツ教会へ行く。天井からぶら下がった大きな丸いレリーフの「受胎告知」がある事で有名ですが、それ
以外の彫刻とか絵画もたくさんあり、かなり見ごたえがある教会です。教会のスタッフがミサの練習のた
めパイプオルガンを演奏しており、聞きほれてしまいました。隅に絵葉書などを売っている窓口があった
ので、「受胎告知」
のレリーフを後ろから撮った写真のものを購入。後ろからみると、神の御子の受胎を告
げる重大な場面という荘厳さや緊迫感は全くなく、単なる天使とマリアさんの立ち話って感じに見えなかな
かカワイイ。天使の後ろ姿って、なかなか拝めるものじゃありません。
その後ハウプト広場で、昨日は暗くてよく分からなかった「美しの泉」をチェック。泉といっても彫刻で飾ら
れた塔で井戸自体は覆われてしまっているのですが、塔を囲む鉄柵のどこかに金の輪がはめこまれてい
て、それを3回廻しながら願い事をすればかなう、と言われているシロモノです。ちょうどドイツ人の団体が
来てガイドが指差し説明しているのを見て、やっとどこにあるか分かりました。けっこう上の方でしたが無
事手が届き、お願い事。でも人に言ってしまうと叶わなくなってしまうそうなので、願い事は内緒です。
クリスマス・
マーケットに郵便局の出張販売屋台が出ていて、寄付金付き天使の切手が売られていました。
天使好きとしては+0.21ユーロ高くてももちろん購入。
そして広場から、ベルニッツ川の中州にあるトローデル・
マーケットまでお散歩。この辺りからマックス橋に
かけての街並みやたたずまいは、中世のドイツそのままで、とても趣がありました。ニュールンベルグは
本当に雰囲気のいい町。クリスマス・マーケットの時期でなくても訪れてみる価値は絶対ある、魅力的な
都市です。
ケーニッヒ通りの屋台でグリュー・ワインを飲む。どの町でもこのクリスマスの風物詩は、町の風景などが
描かれた特製オリジナル・カップに入れてくれ、購入するときに1ユーロぐらい余分に払い、飲み終わって
返却するとその DEPOSIT 分を返金してくれます。もちろん記念にそのままカップを持ち帰ってもよく、観光
客はみんな大事に持って帰ります。私も持って帰りたかったのですが、今回は荷物の増やせない鉄道旅
なのであきらめ、かわりに屋台のおじさんと記念写真をパチリ。
そろそろお昼の時間ですが、朝食を食べ過ぎてまだお腹が空いていなかったので、向かいの屋台でおや
つ用に焼き栗を1袋、1.8ユーロを購入。この袋がとてもよく出来ていて、細長い筒状の袋をふたつ降りに
してくっつけたような形で、片方に焼き栗が入っていて、もう片方に食べ終わった殻を入れられるようにな
っています。こういう些細な部分まで機能的になっているのがドイツらしいですね。
休館日のDB博物館とオペラ座を外観だけでも眺めてから、ホテルに戻ったのがチェック・アウトの 12:
00
ギリギリ。まだ荷造りもしておらず、ちょっと疲れて休みたかったのもあるので、フロント・
スタッフにレイト・
チェクアウトの追加料金を訪ねてみる。すると「何時まで使いたいの?」と聞かれ、「夜の電車に乗るので、
19:00 まで使えたらうれしいんだけど」と答えたら、しばらく考えてから、「OK。追加代金なしで7時まで居て
いいわよ。今夜はクリスマス・イヴだものね」と言ってくれるではないですか。うわぁー、うれしい!今日は
駅のDBラウンジが 17:30 でクローズだったので、すごく助かる。
部屋で2時間ぐらい休憩すると元気が出てきたので、予定通りバンベルグへ観光に行く事に。
14:33 ニュールンベルグ発 IC1516 乗車、バンベルグ15:
08 着。バンベルグの駅は小さいけれどDBのイ
ンフォメーション・カウンターもあり、ダメモトで地図がないか聞いてみたらちゃんとありました。
さすがにクリスマスなので、道行く人も少なくひっそりとしている。駅から新市庁舎のあるマキシミリアン広
場までは徒歩約 15 分。その先のグリューナー・マーケットというところにクリスマス市が立っていたようで
すが、やはり今日の午前中までだったようで、ほとんどもう片付けられていました。
トイレに行きたくなったので、カフェに飛び込みココアを飲む。7ユーロ。
その先のレグニッツ川にかかった、ウンター・ブリュッケという橋のたもとにある旧市庁舎は、フレスコ画で
壁面を飾られた美しい建物で、橋の右手にリトル・ベニスと呼ばれる古い木組みの家が並んだ街並みが
見えます。この旧市街のあたりの古い町並が、すごくいい感じ。時間がないし、多分祭日でクローズしてい
るので大聖堂や宮殿の方は回りませんでしたが、このレグニッツ川沿いのたたずまいを見るだけでもわざ
わざ訪れるだけの価値はある、かわいらしい小都市でした。(写真あり)
帰りはバンベルグ発 16:
51 の IC1719 に乗車、ニュールンベルグ17:25 着。
ニュールンベルグの駅から駅前地下広場に行くと、昨日目をつけておいたインド料理屋が開いていたの
で、ジャガイモのカレー煮込み+ライスの BOX とミネラル・ウォーターを購入。2.5ユーロ。安い!他の店
は予想通りみな閉まっていた。ホテルに戻り、ありがたく出発ギリギリまで部屋を使わせてもらう。出発前
からひいていた風邪が治らず、咳も出てきたので、暖かい部屋で休めて助かりました。夕食を食べながら
絵葉書を書き、19:
00 チェック・アウト。優しいフロントのお姉さんは今晩 20:
00 までの勤務だという。どこ
の国でも旅行業勤務者は、盆暮れクリスマス関係ないのですよね。本当にダンケシェーンでした。
本日のミラノまでの移動は、夜行電車利用。ニュールンベルグからだと本当はミュンヘン経由でイタリアへ
入った方が直線距離的には近いようなのですが、ミュンヘン発ミラノ行きは 23:
39 発とちょっと遅め。
夜中にあまり駅で待っていたくなかったので、出発時間が 22:
47 と早かったフランクフルト発ミラノ行きを
利用する事にしました。
ニュールンベルグから乗り継ぎのフランクフルトへは 19:32 発の EC22 を利用。ウィーン始発のケルン行き
で、ヨハン・シュトラウス号という立派な名前がついていました。1等車両はすべて3人掛けシートが向かい
合わせになった、6人1部屋のコンパートメント。EC は ICE と比べると、オープン・シートでないせいか座席
も多少狭く、ちょっと暗い感じ。でも国をまたがって運行するせいか、コンパートメント内には荷物を乗せる
棚が2段もありました。(写真あり) 今日はクリスマスのせいかガラガラで、1車 両に私しか乗客がいませ
ん。でも検札はしっかり回って来た。
フランクフルト着 21:29。待ち時間を過ごすためDBラウンジへ直行するが、なんとクリスマスのため本日
は 21:00 でクローズ!一昨日来た時には何も張り紙がしてなかったのに。ちゃんと係員に確認すればよ
かった。でも中央コンコースにガラスで囲まれたノー・
スモーキングの待合室があったので、そこを利用す
る。暖房なしでしたが、吹きっさらしのホームで待つよりずっとマシなのでよかった。怪しい人もいなかった
し。列車内もそうなのですが、個人的な印象として喫煙席よりも禁煙席の方が客質がよいというか、与太
者率が低く安全なような気がする。女性の一人旅には例え本人がスモーカーでも、ノースモーキング車両
の利用をおすすめします。
22:47 フランクフルト発の夜行列車は、トーマス・クックで見ると列車番号が40313/301 とあったのですが、
ホームで自分の指定車両を探しているうちに謎が解けました。何台も連結されている車両のうち3分の2
がウィーン行きで列車番号301、残り3分の1がミラノ行きで列車番号40313 となっていたのでした。カール
スヘーエで分れるらしい。
指定コンパートメントに 行くと、T4(4人人部屋)で予約したのに、どう見ても6人用クシェット。片側の上段
はベッドが倒してあり、毛布や枕が6人分のっている。でも中段のベッドは倒されていないので、6人用の
部屋を4人で使えって事なのかな? 部屋番号は間違ってないし? クビをひねりつつ駅の売店で買った
夜食のバゲット・サンドを食べていると、もうひとり同室の女性が来ました。彼女もT4で予約したという。
車掌さんが来たので聞いてみると、今日は空いているので、このコンパートメントを2人で使っていいよと
言う。問題がすれちがったような・・・・。まあいいか。車両を移動するのも面倒くさいので、そのまま2人で
使う。クリーム色の清潔なシーツと枕、毛布あり。コンパートメントのドアは上部のレバーを倒すとロックが
かかるようになっている。またロック付きドアチェーンもあったので安心。ドアの窓はカーテン付きなので、
外から覗かれる心配はなく、読書灯と常夜灯もありました。
国境を越えて移動するので、車掌さんにパスポートと乗車券(私の場合はユーレイルパスと指定券)を預
ける。EU 統合になったのに、このシステムは変りなし。明朝、スイスとイタリアの国境の町、キアッソを過
ぎたら返しに来てくれるという。3人分の座席=ベッドなので狭いが、揺れが気になる事もなく安眠。
キアッソに到着したらドアが叩かれ、いかにもイタリア国鉄という感じのラテン系2人組がパスポート・コン
トロールに来ました。ねぼけまなこで車掌が持っていると答える。
発車後しばらくして、車掌さんがパスポートを返しに来てくれました。昨日はドイツ語と英語だったのに、今
日はイタリア語でボンジョルノとご挨拶。こちらも負けずと「ボン・ナターレ」と返す。今日はクリスマスだ。列
車名の入った記念カード?をもらいました。
☆5日目(
2002 年 12 月 25 日 水曜日 くもりのち晴れ)
定刻の 07:45 にミラノ中央駅着。今日こそここでの乗り継ぎ時間 30 分間で、パリ行きの夜行列車の予約
をしなくては。しかしここはイタリア。到着ホームエリアの窓口に行くと予約は 1Fと言われ、エスカレーター
なしの階段で 1F窓口へ行くと、「その列車の予約窓口はここじゃない。構内端っこの〇番窓口」とたらい回
しにされる。やっと見つけた窓口に並び、自分の番が来て4 人部屋の予約を頼むと、なんと満席!ダブル
かシングルでもいいからと食い下がりましたがすべて満席で、6人部屋クシェットの、しかも1番上段のベ
ッドしか空きがなかった。ガ〜ン。今まで乗ったすべての列車が空いていたので、大丈夫だろうとたかをく
くっていたよ。しょうがないのでクシェット上段で予約。
15 ユーロ。
予約に時間がかかったので間に合わないかと思いましたが、予定通りの 08:15 分発にセーフ。しかもトー
マス・クックではジェノヴァ行きだったが、ヴァンテミリアまで行く列車だった。ラッキー。
しかしギリギリ乗車だったので朝食を買う時間がなかった。検札係に食堂車はないか訪ねてみると、けん
もほろろに「NO」の一言。お腹が空くと悲しさ倍増だ。イタリア国鉄のローカル急行は1等でもどこか薄汚
れた感じで、シートも色あせているしトイレもバッチイ。(写真有り)
でもジェノヴァから先の海岸線は素晴らしい眺めです。トンネルが多いけれど所どころ海岸の間際を走り、
とてもキレイ。天気も晴れてきて、ドイツの常にどんよりとした暗い空とつながっているのが嘘のような青
空に。ああ、ドレスデンのアルテマイスターでみた、ボロネーゼの青だ。ゲーテの昔から、ドイツの人々が
なぜはるばるアルプスを越えイタリアへやってきたのかが、実感として分かるような気がする。
海岸沿いの街並みは、いかにもリゾート地といったフレンチ・リビエラ側とは雰囲気が違い、もっと庶民的
な感じがします。あちこちにキャンピング・カーがたくさん泊まったキャンプ地が目につくし。前にドイツのガ
イドさんから、「ドイツ人は年をとったらキャンピング・カーを買い、5 年から10 年かけヨーロッパ中を旅行す
るのが理想の引退生活なんですよ」と聞きましたが、コート・ダジュールあたりの高級リゾート地では全く
見かけた事がありませんでした。きっとこういう物価の安いところで3ヶ月とか半年ぐらいづつ過ごすでしょ
うね、と納得。
国境駅のヴァンテミリアに定刻 12:
45 の 10 分遅れで到着。小さな駅で、税関などがある訳でもなさそう。
エスカレーターなしのホーム階段を荷物を抱えながらふうふう降りると、連絡通路に案内モニターあり。
メントン行きは隣のホームからで 13:
12 発。腹ペコなので売店で何でもいから食べものを仕入れたかった
のですが、カート付き荷物を持って再び階段を上り下りするのが面倒なので我慢する事に。階段っていっ
ても 20〜30 段ぐらいなんですけどね。でもドイツではどこの駅に行っても、このぐらいの距離でもエスカレ
ーターあったよな。やっぱここはイタリア。
ヴァンテミリアの駅はどうやらホームによって、イタリア国鉄側とフランス国鉄側に分かれているらしい。
(写真有り) グリーンをアクセント・カラーにしているイタリア国鉄に対し、フランス国鉄の車両は紺碧にエ
ンブレム入りで、ちょっとおしゃれな感じ。車両のデザインにもお国柄はしっかり表れております。
ヴァンテミリアの隣駅、マントン・ガラパン駅は高台にあり、マントンの新しい港の方が見下ろせてとても眺
めがいい。そして2駅目のマントンへは、わずか8分で到着。13:20。
駅前に出るとすぐ目の前に、本日の宿泊ホテル「
LE RERUMINUS」
がありました。
マントンのホテルは SABER でも検索出来ず、「地球の歩き方」
の地図に載っていたこのホテルの名前から
インターネットで住所と電話番号を調べ、クレジット・カード会社のトラベルデスクに頼んで予約しました。
(見つけたサイトからオンライン予約も可能でしたが、カードナンバーをネット上に流すのはちょっと不安な
のと、以前海外のホテルをオンライン予約したら海外からの広告やジャンクメールがいっぱい来るように
なってしまったので、なるべく避けています)
ちなみに日本に予約窓口がないホテルでも、正式名称のスペルと住所、電話番号が分かれば、現地デス
クを持っているクレジット・カード会社のトラベル・サービスデスクならほとんどの場合予約可能です。その
場合、UC、VISA、JCB などほとんどのカード会社では、ゴールドカードでない場合手数料がかかりますが、
UFJ カードだけは一般カードでも、無料で現地デスク経由でホテル、コンサートなどの予約をしてくれます。
だからよく個人手配旅行する方は、UFJ/VISA か UFJ/MASTER のカードを作っておくと便利ですよ。
今回予約した「LE TERMINUS」は、ホテルというよりはペンションでした。フロントなどなく1Fのレストランで
チェック・イン手続きをすませる。いかにもやり手マダムといった女主人が店を仕切っており、簡単な会話
なら英語が通じてほっとする。とてもお腹が空いていたので、部屋に入る前に食事をさせてもらう。
本日の昼定食は、大皿いっぱいのロースト・ターキー、チキン煮込み、内臓かなんかのミンチ、クロケット
の盛り合わせに野菜ソテーと栗のソース煮込みのつけ合わせ。それにミネラル・ウォーターと食後にオレ
ンジと葡萄も食べて、合計15.60ユーロ。大満足。カードで支払おうとしたらマダムに、明日、宿泊料とま
とめて精算といわれた。
お店のスタッフに部屋まで案内してもらうと、店を出た横側の普通のドアの前に連れていかれ、2本の鍵
を渡される。1本は外ドアの鍵、もう1 本は2階入り口のドアと部屋の鍵だった。でも2階には数部屋あった
よ。同じ鍵で両方開くって事は、この鍵で他の部屋も開けられちゃうって事?っていうことはその逆もあ
り?・・・まあ、深く考えるのはよそう。
部屋はちょっと変ったつくりで、ドアを開けるとまず左横にシングルベッドが1台。同じフロアーにものすごく
狭いバスルーム(というよりはコーナー)があり、洗面台とトイレ、ガラス戸で仕切られたシャワーブースが
あります。そして部屋の中央に5段くらいのステップがあり、上のフロアーにもう1台のベッドと小さいライテ
ィング・デスク。それと古い5チャンネルぐらいしか映らないTVと椅子がひとつ。床はレンガみたいな素材
でした。でも建物は古いけど掃除は行き届いているし、シャワーブースは後から改装して付け足されたら
しく、新しかった。シャンプーはさすがにありませんでしたが、小さな固形石鹸あり。
タオルも普通のホテルのような白い規格品でなく、いかにもお家で使っているやつです、といった感じの色
とりどりでサイズもばらばらのものでしたが、きちんと洗濯されパリっと乾いたのが5枚ほど重ねておいて
ありました。これで1泊27.50ユーロ+滞在税0.3ユーロ。税込み、朝食なし。
予約した時はあんまり安いので大丈夫かしら?と思ったのですが、充分です。最低でも3つ星クラス以上
のホテルに宿泊していた元添乗員としては、「
そうか、地球の歩き方を読んでホテルを探す人たちは、こん
な感じのホテルにいつも泊まっているのね」と、妙に感心する。窓を開けると、駅のホームが見下ろせまし
た。(
マントン駅とホテル外観写真あり)
荷物をといた後、とりあえず海の方へ散歩しに行く。
ホテルの駅と反対側のコーナーを曲がるとすぐ、海岸線へ続く広い通りに。ここは真中の遊歩道部分が
細長い公園になっていまして、有名な2月のレモン祭りの時には、ここにレモンで飾られた人形が並ぶそう
です。でも本日はクリスマスの飾り物。しかしなぜかそれらが、イギリスがテーマになっているんですよ。
バッキンガム宮殿の衛兵やシャーロック・ホームズ&ワトソン君の人形があったり、パブや帽子屋などの
書割風の小屋で再現されたイギリスの町並が続いていたり。こちらではビートルズのコピーバンドが「
GET
BACK」をシャウトしていて、向こうではバグパイプのグループが演奏している。クロケットの練習場まであ
るよ。ポスターを見ると、今年のマントンのクリスマスは英国観光協会とのタイアップ企画らしい。南仏で英
国風のクリスマス。変な感じ。でも地元の人は楽しそうでした。
大通りを7〜8分もくだると突き当たりにカジノがあり、その先はもう海。海沿いのプロムナードに並行した
1本内側の道が旧市街のメインストリートらしく、皆その辺りをブラブラしています。私も一緒にぶらぶら。
クリスマスなのでほとんどの店はクローズしていましたが、絵葉書などのみやげ物屋やカフェのいくつか
はオープン。10 分ぐらい歩くと旧港へ抜け、このあたりから旧市街とガラパン地区の新港エリアが見渡せ
ます(写真あり)。あちらは比較的新しいリゾート・
マンションが立ち並んでいるエリアです。お金持ちだった
らぜひ1件購入したいものですな。旧港の海岸側は高い堤防に囲まれており、この堤防の一部、城砦の
ような建物がコクトー美術館(
写真あり)。本日は休館なので、明日見に来る事にしよう。
帰りは海岸沿いを散歩しながら戻る。休日なので、たくさんの人がお散歩しています。天 気も良くのんびり
した雰囲気で、クリスマスというよりは日本のお正月休みのような雰囲気です。
マントンは駅が高台にあり、海に面して町が広がっているところなど、基本的に作りはニースと同じなんで
すが、もっと規模が小さくて、手ごろで庶民的な感じ。海岸沿いのプロムナードも、ニースは道幅が広い上、
海岸まで段差があるせいか、あまり海岸を歩いているという感じがしないのですが、マントンのプロムナー
ドは道幅が狭く海岸までの段差もあまりないので、本当に「海沿いのお散歩」といった雰囲気が味わえま
す。なんだか昔住んでいた鵠沼海岸に、ちょっと雰囲気が似ている?物価もニースより安そうだし、マント
ンは思っていたよりずっといいところでした。
海沿いのレストランがいくつか開いていましたが、どこも本日はクリスマスの特別メニュー。お昼をいっぱ
い食べすぎてお腹もまだ空いていなかったので、大通りの屋台のクレープで軽く済ませることに。クリスマ
スだから贅沢に、一番高いグランマニエルのクレープ、3.5ユーロを頼む。でも砂糖を少なめにというの
を忘れてしまった。案の定、お砂糖をクレープ3周くらいかけられてしまう。フランス人、いつもこんなで、糖
尿病にならないのだろうか?無料でイギリス紅茶をサービスしているコーナーがあったので、飲ませても
らう。おかわりが欲しかったが、ちょっと恥ずかしくて言い出せない、小心者のワタクシでした。
ホテルへ戻ると外ドアが開かない!レストランに行ってヘルプを求めると、「鍵を廻しながらドアノブを持ち
上げないと開かないんだよ」とコツを教えてくれた。そういう所もホテルというよりは民宿っぽい。
☆6日目(
2002 年 12 月 26 日 木曜日)
ホテルを9時くらいに出て、まず駅の反対側にある長距離バスターミナルに行ってみる。
ホテル近くの線路高架下をくぐると、店数は少ないが朝市になっており、八百屋やパン屋、自家製の蜂蜜
など売っている屋台がいくつか出ていました。その先の広場がバスターミナル。インフォメーションの小さ
な建物があり開いていましたが、係員のお兄さんはフランス語しか分からない。四苦八苦しながらジェノヴ
ァ方面へのバスがないか聞いてみましたが、どうやらないらしい。展示ラックにある時刻表をもらい自分で
も調べてみたのですが、やはりニース方面へのものしかありませんでした。今日ミラノへ移動するのに、
出来たらバスでイタリアン・リビエラの海岸線をドライブしながら行けたら、と思ったんだけどな。
でも代わりにいいものめっけ。ニースの空港からマントンまで直行バスが運行されています。朝 09:00〜
最終 21:00 まで、毎 0 時、ちょうど発の1時間置きに運行され、モンテカルロ経由で1時間15 分。15.24
ユーロ。(資料有り) マントンからはエズやサンレモ、ニースなどいろいろな方面へのバスツアーも出てい
るし、鉄道も利用しやすく、ホテル代はニースよりずっと安いので、コート・ダジュール観光のベースにする
にはおすすめです。
せっかくバス乗り場にいるので、コクトー美術館のあるあたりまで市バスを利用してみることにする。
インフォメーションでもらった地図を広げ、場所を指差し「この辺りに行きたいんですが」というと、「〇番の
バスが行く」と教えてくれた。バスの運転手さんからチケット1.2ユーロを購入し、運転席後ろの検札機で
パンチング。この時間から 30 分以内なら、無料で違うバスにも乗れるらしい。ヨーロッパでは有効時間は
まちまちですが、たいてい同方向への乗り継ぎは無料で出来る事が多い。中には地下鉄とバス共通で有
効時間内なら乗り継ぎ可能な都市もある。日本でもぜひ採用して欲しいシステムのひとつです。
鉄道も好きだけど、ローカル・バスはもっと好きな乗り物。高い視点から街並みを眺められるし。バスは昨
日歩いた大通り公園から旧市街へ入り、旧港の手前で海沿いのプロムナードへ。ちょうど市場近くだった
ので、ここで降りることにする。バス自体は隣駅のガラパン行きだったので、これにずっと乗っていればマ
ントンパノラマ観光ができてしまいます。
コクトー美術館のオープンまではまだ時間があったので、どことなくスペイン風の建物の市場をのぞく事に。
八百屋、肉屋、魚屋、チーズ屋、おかし屋さん。オリーブの漬物専門店とか乾物屋さんとか、市場はどこで
見ても同じだけど、どこで見ても楽しい。必ず1件はバーが入っていて、オヤジ達が朝っぱらから飲んでい
るのも一緒。切り売りのピザ屋があったので一切れ購入し、海沿いのベンチで朝食にする。カモメが飛ん
でいる。犬を連れて散歩している人もいる。なんか幸せだ。
10:00 の開館と同時にコクトー美術館入場。3ユーロ。この海沿いの城砦を改造した小さな美術館は、こ
の町を愛したコクトーが市役所の壁画を描いたお礼に、マントン市民がコクトーにプレゼントした建物だと
いう。コクトーも大変気に入っていたそうですが、私もすごく気にいってしまいました。2階建ての小さな建
物ですが、木の床張りで、美術館というよりはアトリエという雰囲気。外観は元城砦なのでいかめしく暗い
感じですが、中は意外と明るく、2階の窓からは地中海が眼下に広がり、ここに住んでしまいたいぐらい。
展示物も数多くはないのですが、見ごたえがあり、シンプルだけど力強いコクトーのタッチを真近かで見る
ことができました。売店で絵葉書購入。コックやネコのイラストとかもあって、
10 枚以上買ってしまった。
旧市街に戻る前に、海沿いのプロムナードに面した「
St. MICHEL」という感じのいい 2 つ星ホテルを発見。
1Fがレストランで横に出入り口があり、中に入ると小さいけどフロントとロビーもありました。感じのいいマ
ダムにブローシャーと料金表をもらえないかと頼むと、「うちには日本人のお得意様も何人もいてね、ナカ
ムラというファミリーは毎夏うちでバカンスを過ごしているのよ」と教えてくれた。お目が高いね、中村さん。
料金は季節によって違いますが、海に面した部屋で 70〜80 ユーロ、税・
サ込み。朝食は別料金で5ユー
ロとの事。夕食も15〜22 ユーロぐらいだそうなので、ニースに比べるとずっと安い。
マントンがとても気にいってしまったので、このホテルでもう1 泊し、パリへはマントン発の夜行列車 「le T
ran Blue(
日本のブルー・トラインのモデルになったというもの)」で行こうかな、と迷うが、やはりアルテシ
ア・ナイトにも乗りたかったので、マダムにはお礼を言って、次回は絶対ここに泊まろうと心に誓う。
けっこう疲れてきましたが、がんばって眺めがよいという高台にあるサン・ミシェル教会へ。教会前広場か
らの眺めはさほどでもありませんでしたが、その近辺の細い坂道の感じがいい雰囲気。そこから港に下り
る途中の小広場が、レモン柄のタイルで飾られていて、港も見渡せるナイス・ポイントでした。
お散歩しながらこういうマイ・フェイバリット・プレースを見つけるのも、旅の楽しみです。
旧市街へ戻り、市役所へ行く。途中、薬局でのど飴購入。風邪が治らず、咳がとまらない。ビタミンを補給
しなければ、と八百屋でオレンジを買う。私は皮が薄くて剥きづらいけど、濃い甘味のあるクレメンタインと
いう種類が好きです。山と盛られた棚の横にビニール袋が下がっているので、自分の買いたい分だけ詰
めレジにもって行くと、重さを量って料金が印刷されたレシートをくれる。それを持ってその先のカウンター
で支払い精算、というシステムでした。5個で1.5ユーロ。早速店前のベンチで1個食す。おいしい。
元気を取り戻し、市役所へ。この中にある「結婚の間 Le Sala de Mariage」の壁画は、コクトーの手による
ものです。しかし入り口には只今入場不可の立て札が。どうやら結婚式の最中らしい。外から様子を伺っ
ていると、表通りに面したドアが開き、ちょうど結婚式を終えた人々が出てきた。ラッキー!人に紛れて入
り口から中を覗く。部屋中すべてコクトーの壁画で埋め尽くされ、特に天井の天馬に跨った天使に圧倒さ
れる。コクトーの天使画は、個人的にはニースの隣町、ヴィユ・フランシュ・シュールメールにあるサン・ピ
エール礼拝堂の壁画が No.1 ですが、ここの天使もいいなぁ。市役所の建物自体も美しく、こんな所で結婚
式を挙げる事が出来るなんて、マントン市民は幸せものですね。新婦はウェディング・ドレスではなく普通
の黒いドレスにコサージュ、新郎は黒のスタンドカラーのデザイン・スーツで、列席者も皆普段着姿なのが
印象的でした。結婚式の予定がない時しか入場できませんが、「結婚の間」
の入場料は1.5ユーロ。
12 時前に部屋に戻り、荷物を持 ってから 1Fのレストランに行くと、マダムが怒って「チェック・アウトは 11
時なのよ」という。ありゃま、てっきり12時だと思い込んでいましたよ。ごめんなさい、お昼ご飯をここで食
べるから、と謝ったら、「今回だけ特別に」と追加料金は取られないで済みました。
体調があまり良くないので軽く済ませるようと、「サラダ・マントニーズ」というものを頼む。ニース風サラダ
の親戚みたいなものかと想像したら、マダムが「トマトサラダよ」、と教えてくれた。
しかし。出てきた量が半端じゃない。楕円形の大皿いっぱいに盛られたサラダは、どう見ても中型トマト 5
〜6個分はあるだろうという量。それに刻んだ玉ねぎ、ピーマン、ブラック・オリーブ、レタス、1缶丸ごとぐ
らいの量のツナがドレッシングと一緒に和えてあり、ゆで卵のスライスまで乗っかっている。「魚のスープ」
も頼もうか迷っていたのですが、頼まなくってよかった。でもおいしかったので、食欲がないといいつつも
全部平らげてしまう。野菜自体が日本の物より味がしっかりしていて、おいしかったです。
精算してビックリ。昨日のランチ+宿泊代金+本日のランチで合計、45.5ユーロ。日本円にしてわずか
6.500円弱。しかもマダムは私が言わなければ、昨日のランチ代をつけ忘れるところでした。うん、マント
ンはいいところだ。
13:06 マントン発に乗り、13:18 ヴァンテミリア着。次のジェノヴァ行きは 14:
05 発。時間があるので駅の外
へ出てみたら、駅前の道の突き当たり、多分 100m先ぐらいに、もう海が見えていた。すごく心が誘われた
けど、荷物を預けて散歩にいくほどの時間もないので、駅のバーで時間をつぶす事に。
イタリアのバーは基本的に、まずレジで希望のメニューを言ってお金を払いレシートをもらいます。そして
カウンターでレシートを出し、再度「カフェ」とか希望の品を言うと、飲み物を出してくれたときにレシートの
端をちょこっと破り、それがもう出したよって印になります。人によってはそのレシートの横に 20〜30 円程
度の小銭を TIP として置いたりします。私は「
スプレムータ・
ダランチャ(オレンジを絞った生ジュース)」、2
ユーロを注文。季節によってはシチリア産の血のように真っ赤なオレンジのジュースが飲めるのですが、
今回は普通のオレンジジュースでした。でも絞りたてはおいしい。
ヴァンテミリアの駅のバーはスタンドですが、奥はテーブル席のレストランになっており、こちらはウェイト
レスに注文するシステム。バーの横にグリル・カウンターがあり、おいしそうな品がいくつも並んでいます。
こんな場所があると知っていたら、昨日のお昼はマントンまで我慢せずに、ここで食べていたのに。バーの
横はミニ・コンビニと言っていいほど商品が並んだ売店になっており、なかなか使えるお店です。
駅構内にインフォメーションがあったので、ジェノヴァやサンレモ方面行きバスはないか聞いてみましたが、
やはりないとの事。まぁ、もう一度同じ海岸線を走るのもいいでしょう。
ヴァンテミリア 14:
05 発のローカル急行乗車、ジェノヴァ・プリンチペ駅16:
45 着。ターミナル駅ではないの
で階段の上り下りがありますが、エスカレーターなしの階段のみ。イタリアだ。
ここではやはり駅前の「
SAVOIA CONTINENTAL」をREP のユーテルで予約済み。しかし駅前広場を見渡
しても、そのホテルが見当らない。左横に「
SAVOIA MAJESTIC」という似たような名前のホテルはあるの
ですが、すごく立派なグランド・タイプのホテルなので別物でしょう。なんて言ったって今日予約した宿は、1
泊 44 ユーロ、税・サ込み、朝食付の安さだったから。しかし駅前から伸びるバルビ通りの方迄探しても、そ
れらしきホテルが見当たりません。おかしいな、ホテル案内には駅隣接って書いてあったのに。
4〜5人の人に聞いてみましたが、「この通りのもっと奥」とか「バスに乗れ」「タクシーに乗れ」と、言うこと
が皆ばらばら。さすがイタリア人。15 分ぐらいウロウロしているうちに辺りが薄暗くなってきてしまいました。
しょうがない、あの「
SAVOIA MAJESTIC」というホテルで聞いてみるか。 しか しフロントに行くと、
「SAVOIA CONTINENTAL?それはうちです」とこともなげに言うではないですか。どうやら経営が変り、ホ
テル名を変更したのに、屋上のサインはそのままにしていたらしい。名前が違うし、宿泊料金からいっても
絶対違うと思ったのに。くたびれた。
部屋のつくりはいかにも伝統あるホテル、といった感じで、今回初めてのバスタブ付!しかも広い!だけ
ど昔ながらの、シャワーが壁固定の動かせないタイプ。部屋の鍵も1回カチっと回すだけの単純なもので、
ヘアピンでも開いてしまいそう。しかもドア・チェーンもなし。古きよき時代を残していると言うか、だから器
の立派さの割に安かったのね。でも久し振りに湯船にゆったりつかれてうれしい。部屋の位置も駅前広場
側だったので、クラシックなプリンチペ駅のライトアップされた姿が一望できました。
休むと寝ちゃいそうだったので、がんばって外に出て駅のインフォメーションへ行く。明日のアルテシア・ナ
イトの、4人部屋以上のクラスで空きが出ていないかとチェックしてもらうためでしたが、6人部屋クシェット
まですべて満席という。「なんでそんなに混んでいるの?クリスマス明けの金曜だから?」と聞くと、「この
列車はいつも混んでいるのよ」。鉄道旅行を計画中の皆さん、例え手数料がかかっても、人気のホテル・
トレインは日本から予約していった方が無難なようですよ。
出たついでに夕食を済ませようとレストランを探すが、プリンチペ駅は町のはずれ側にあるせいか、周囲
にまったく店影なし。バルビ通りの入り口にかろうじて1件だけしょぼいバー兼レストランみたいな店があり
ましたが、夕食は19時からだという。カウンターに並んだパニーニでも買って部屋で食べようかと迷うが、
せっかくイタリアに来たのにそれもわびしい。出直しする事に。
19 時過ぎに再び来店すると、すっごく太った2組の中年夫婦も入るところだった。彼らの横のテーブルで
押しつぶれそうになりながらも、メニューを時間をかけ吟味。パスタかリゾット類を食べたかったのですが、
そうするとメインが入らなくなりそう。こんなしょぼい店とは言え、一応ディナーだし、テーブルクロスもかけ
てレストランの体裁はととのえているので、プリモ一皿という訳にはいかないよね。悩んだ挙句、一皿目に
前菜盛り合わせ、セコンドに子牛の胸肉のソテー・レモンソースと、赤ワインのデキャンタも頼む。
外国のレストランでのオーダーはいつもギャンブル気分ですが、今回は残念ながらはずれ。そんなに大層
なものが出るとは期待していませんでしたが、前菜の盛り合わせはハム、サラミ、チーズのみだった。悲し
い。ワインで流し込むが、半分食べるのがやっと。
隣の夫婦は4人皆違うメニューをオーダーしており、ラビオリみたいな皿はすごい大盛りでしたが、スパゲ
ティ・ジェノベーゼは普通サイズだった。あっちを頼めばよかったかな。でも次に出てきたブルスケッタの皿
を見てビックリ。普通は2cmぐらいの輪切りのフランスパンにトマトとガーリックをなすりつけてオーブンで
焼いたのが、3切れぐらいお皿にのってくるのですが、ここのはとても大きなパンの厚切りに角切にしたト
マトとルッコラが山盛りにされたのが4切れも出てきて、頼んだ推定体重 120Kgの奥さん本人も驚いてい
た。あれ、日本ならOL4人分のランチぐらいの量あるなぁ。
セコンドの子牛胸肉ソテーは好みの味付け。レモンソースがものすっごく酸っぱいんだけど、きつめの塩
味とマッチしていて、疲れた舌にはおいしく感じられました。でもコントルノ(
付け合せ)を頼むのを忘れて、
お皿にはお肉しかのっておらず寂しい。お水と食後のエスプレッソも入れて23 ユーロ。TIPも気持ち足して
25ユーロ払う。今回の旅の中で唯一クレジット・カードが使えないレストランでした。
食事が終わる頃にはわずか5席のテーブルが満卓。飲食業はつくづく立地条件が大事ですな。
☆7日目(
2002 年 12 月 27 日 金曜日 雨のちくもり)
本日は傘が必要なぐらいの雨振り。折りたたみ傘を持ってきていてよかった。
ホテルで INCL.の朝食をとる。品数は少ないが、一応卵料理などもあるアメリカン・バフェです。ここはどう
やらアリタリア航空の指定ホテルになっているようで、制服を着たクルーの姿がちらほら。
部屋に荷物をおいたまま、10 時頃ホテルを出て駅前のバス乗り場にあるチケット売り場へ。1日券2.59
ユーロを購入。ついでにホテルでもらった地図をみせ、市役所に一番近いバス停とバスナンバーを教えて
もらう。地図を眺めながらバスに揺られ、教えてもらった「PIOZZO DELE FONTANE MAROSE」で下車。こ
こから現在は市役所のドーリア・トゥルシ宮殿まで徒歩数分。地図だけでたどり着けてしまうとは、添乗員
時代に培ったテクニックはまだ健在のようで我ながらちょっと感心する。でもここからが大変だった。
市役所内にヴァイオリンの名手・パガニーニが愛用していたヴァイオリンがあるのですが、ストラディバリ
と並ぶ名工、グァルネリ作の「
IL CANON」という銘品で、それをみるのがジェノヴァを訪れた目的でした。
でも市役所の入り口には一切、表示や案内なし。2階にあがってうろうろしてみたが分からないので、通り
かかった人に聞くと「今日は閉まっているみたい」。
でもここはイタリア。何人にも確認してみなければ真実はわからない。入り口に戻り守衛室らしきところで
聞くと、「2Fの部屋で申し込め」。だから 2Fに行っても分からなかったんだよぅ。イタリア語はカタコト会話
ぐらいしかできないので、2Fのどの部屋に行けばいいのかまでは詳しく聞けない、自分の能力のなさがう
らめしい。再び階段をあがり、今度は腕に書類を抱えたいかにも市役所勤務の人という人をみつけた。
「パガニーニのヴァイオリンの部屋はどこですか?」と聞くと、担当部署らしい部屋まで案内してくれて、係
員を呼んでくれました。でも残念ながら本日は「キウーゾ(閉館)」という。残念。
気を取り直して旧市街散策に出るが、雨で寒かったせいか急に具合が悪くなってきた。熱も出てきたよう。
フェラーリ広場まで歩くがもう観光どころじゃなくなってきました。
それでもジェノヴァのもうひとつの駅は見に行こうと、バス停の行く先表示を確認してブニョーレ駅行きに
乗る。ジェノヴァ銀座といった感じの商店が立ち並ぶ9月20日通りを抜けると大きな広場に出て、ブニョー
レ駅到着。こちらもプリンチペ駅に負けず劣らず、クラシックな作りの立派な建物でした。
この駅前からプリンチペ行きのバスが出ているはず。行き先表示を確認し、乗っている人にもプリンチペ
へ行くか聞いてから38 番のバスへ。しかしこはイタリア。9月20日通りからフェラーリ広場までは走ってい
るルートが分かったのですが、横道に入っていくのでプリンチペ駅の反対側の方へ着くのかな、と思ったら、
なんとブニョーレ駅へまた戻ってしまいました。さらに具合が悪くなる。
今度は地元風のおばさんにプリンチペ駅まで行くかしっかり確認して、18 番のバスへ。結局ホテルへ戻っ
たのはチェック・アウトの12時ギリギリでした。でも具合が悪いので、列車の出発時間まで休憩していた
い。フロントにレイト・チェックアウトの追加料金を聞くと、「18:
00 までで30分ユーロ」との事。19時まで使
えませんかと交渉したがダメで、それでも18:
30 までは使わせてもらえる事になった。
お昼をすぎても食欲はありませんでしたが、今日は夜行列車なので夕食を食べ損ねる恐れもある。ランチ
は遅めに取ろうと 14 時すぎまで部屋で休んでから、ホテルのレストランで昼食。スープが飲みたかったの
で、「ミネストローネ・ジェノベーゼ」を頼む。トマト味ではなくバジリをたっぷり使った緑のスープで、マカロニ
や豆類が煮込んであり、けっこうおいしかった。でもメインのミラノ風カツレツは半分で残してしまった。食
後は風邪薬を飲んでひたすら休憩。発熱には水分補給が大切と、昼食時に水を 1 リットルも飲んだせい
か、2時間おきぐらいにトイレにいきたくなった。でも無理せず休んだおかげで、18時に起きた時にはかな
り体力回復し、支度して 18:30 にチェック・アウト。まだ時間があるのでホテルのロビーで15分ぐらい休ん
でから出ましたが、駅前のホテルなので数分で駅についてしまう。寒いホームで待っていたくなかったので、
出発 15 分前まで中央コンコースのベンチにいて、電車が入線した頃を見計らってホームへ行く。日本出
発時にはバッグが2つあったのですが、行く先々で洋服など捨てていっているので、今はバッグひとつ。そ
れでも熱のある身には階段がしんどい。
ジェノヴァ・プリンチペ駅19:
19 発 IC658乗車、ミラノ・チェントラーレ駅20:50着。
乗り継ぎ時間が1時間あるので、アルテシア専用待合いサロンというのを探す。出発ホームと同じ階に、
ユーロスター・イタリア用の待合室、「CLUB EUROSTAR」があり、その隣りに「SALA D’ATTESA」という部
屋が見つかったけど・・・。頭の中では一度だけ乗ったことがある、オリエント急行のパリ・リヨン駅のサロン
をイメージしていたのですが、実際は単なるベンチがいっぱいある待合室でした。入り口にカウンターがあ
り係員がいましたが、チケットの提示を求められる事もなく、誰でもフリーパスで入れてしまいます。
※・・・帰国後エクストラネットの情報を見直したら、ミラノ駅には専用待合室はない事になっていました。す
るとあのに「SALA D’ATTESA」という部屋は、アルテシアとは関係ないただの待合室だった?
出発 20 分前までそこで過ごしてから、ホームに行ったらもうアルテシア・ナイト「スタンダール号」が止まっ
ていた。でも自分のコンパートメントにたどり着くまでが大変でした。手前の方からシングル〜ダブル〜T4
とアッパー・クラスの車両が続き、それを横目に見ながら延々とホームを歩くが予約車両がみつからない。
ホームにいた車掌さんに聞くと、一番先頭の車両だという。しかしなぜかホームの先のほうは細くなってお
り、そこに大勢の人々が移動していくからすごい混雑。おまけにイタリア人は他人の迷惑おかまいなしで
ぎりぎりまでカートで荷物を運び適当に乗り捨てていくから、さらにホームが混雑してもうわやくちゃの大混
乱。そしてクシェト車両は通路が狭く、そこで荷物をもった人々が自分のコンパートメントを探してうろうろ
するものだから、なかなか車中に入れない。小雨まで降ってきたというのに。まるで難民船のような殺気
立った雰囲気です。やっとの思いで自分のコンパートメントにたどり着くと・・・。せ、狭い!学生ツアーの添
乗で、ローマからウィーンまで夜行列車のクシェットを利用した事があるので覚悟はしていましたが、こん
なに狭かったかしら。
私が4人部屋以上のクラスにこだわったのは、3段ベッド×2の6人用クシェットだと、ベッド1台当たりの高
さがないので、上半身をちゃんと起こす事ができないからです。つまり、ひたすら横になっているしかない
わけ。それでも添乗の時は「しょっちゅう出入りするから」とお客さんをさしおいて一番下のベッドを使えま
したが、今日は最上段。どうしよう。お まけに満室という事だったのにコンパートメント内には男性客がひと
りしかおらず、なぜかソフトに話しかけてくる。イタリア語は分かんないって言っているのに、すり寄るのを
止めないとこがラテン男。でも近くで見たら私のシミ、シワ、白髪まではっきり見えたのか、あきらめて廊下
に行ってくれた。よかった。
とりあえず自分のスペースを確保しなければ。窓側にハシゴがあり、その上が荷物1個ぐらい置けるスペ
ースになっている。早い者勝ちでとりあえずそこにバッグを置く。
うんこら上段に上ると3人分の毛布、枕、シーツが。他の人の分を勝手に中段と下段に投げ入れて、自分
の寝床作り。シートがビニールで寒そうなので、下に毛布を敷きシーツをかける事に。シーツは変っていて、
細長い箱型でした。そうこうしているうちに、イタリア人のカップルがやってきた。よかった。彼らは下段、す
り寄り男は反対側上段なので、もしかしたら中段はキャンセルが出たのかな、と思ましたが、次の駅でもう
ふたり乗り込んで来て、やっぱり満室になりました。この狭い空間に大人が6人も詰め込まれていると息
苦しい。ますます難民船っぽくなってきた。ああ、憧れのアルテシア・ナイトだったのに。頭の中にホームか
ら眺めたダブル・キャビンが浮かぶ。あれぐらいだったら本当、快適でしょうね・・・。
しばらくして車掌さんがパスポートとチケットを集めにくる。ちなみに EU 圏内の人々はパスポートでなくID
を預けています。車掌さんのカバンは開けると細かい仕切りがあって、1、2、3・・・と数字がふってあった。
私達のコンパートメントは40番代だったので、「4」のところに預かったものを入れる。なるほど、これなら
返すときも分かりやすいですね。プロの道具はおもしろいです。
しかし上段ベッドで寝るのは命がけ。横幅が狭い上に、天井からベッドをつなげているガードベルトが、膝
下あたりの位置に1本あるだけなんだもん。あとは枕もとのハシゴがベッドより5cmぐらいの高さまである
だけだし。寝相が悪い人だったら、ぜったい落っこちてしまいそう。私も毛布代わりに自分のダウン・コート
をかぶって寝ていたのですが、寝返りを打った拍子に落としてしまいました。拾うのも面倒くさいので、そ
のまま我慢。暖房が効いていたのでよかったけど。
なかなか寝付けず、しかもトイレに行きたくなってしまいました。ハシゴを降りると他の人を起こしてしまい
そうだし。でも4時頃、向かいの中段のおじさんがトイレにいったので、帰ってきたのと入れ違いに私もトイ
レへ。戻るとおじさんは廊下にいて、私が入るのを待ってからドアをロックしてくれました。グラッツィエ。
☆8日目(
2002 年 12 月 28 日 土曜日)
眠れないと言いつつ、いつの間にかとろとろしていたようで、8時過ぎ頃、車掌さんが来て起こされる。
パスポートとチケットを返してもらうが、狭いので起き上がれない。パリ到着まで横になっているしかない。
08:41、パリ・ベルシイ駅着。小さいがターミナル駅なので階段の上り下りをしなくてよいのでうれしい。
駅前に出るとすぐ近くにリヨン駅が見える。タクシー乗り場はすでに行列が出来ていましたが、夜行列車
の到着に合わせタクシーが何台も待っていたので、さほど待たず乗れました。
パリの宿は駅近くにはこだわらず、自分の泊まりたいエリア優先で探したところです。
添乗ではめったに宿泊する事のないサン・ジェルマン・デュプレかマレ地区に泊まってみたかったので、
SABER で検索しところ、マレ地区のメトロ、サン・ポール駅近くに「PONT RIVOLI」というホテルが見つかり、
料金も税・サ込み、朝食なしで1泊56.5ユーロと予算内。REP がなくSABER でのダイレクト予約だったの
でちょっと不安でしたが(
旅行業勤務のくせに)、インターネットで検索しホテルの写真とか設備を確認した
ら悪くない感じだったので、2連泊。
パリはどんなに小さな通りでも名前がついているので、通りの名前と番地さえ分かればたどり着けるのが
いいところ。タクシーの運転手さんも知らないホテルのようでしたが、番地を見ながらちゃんと真ん前に着
けてくれました。メトロ乗り場の目の前という好ロケーション。バーシー駅からメーター+トランクに荷物を
入れたエキストラ料金を入れても7.3ユーロだったので、TIP 込み8ユーロの領収書を書いてもらう。
ホテルは 1Fがカフェになっている小さな古い建物で、まさにイメージするパリ下町のプチ・ホテル。フロント
のおじさんはインド系でしたが感じがよく、まだ9時だというのにチェック・インさせてくれました。
でもすぐ使える部屋は5階で、「うちには階段がないんだよ」。うう。ヨーロッパでは1階は 0 階という数え方
なので、日本式に言ったら6階になる事に・・・。一瞬迷いましたが休憩がしたかったので、その部屋でい
いので使わせてもらう。しかし。階段が。人ひとり通るのがやっとぐらいの狭さでしかも回り階段なので、登
るのが大変!カート付荷物を持って登るのはさらに大変で、あまりのしんどさに3階あたりで荷物を放り出
し、とりあえず先に部屋のドアを開けに行く。各フロアーには4部屋づつあるようで、6階にもドアが4つあ
りました。部屋にショルダー・バッグとコートを置いてから、荷物を取りに戻る。やれやれ、町の中心だから
お散歩に疲れたら部屋に戻り、休んでからまた出かければいいやと思っていましたが、こりゃ気軽に出入
りできませんね。でもお部屋は狭いけどいい感じ。シングルベッドに小さなライティング・デスク。クローゼッ
トはないけどカーテンで仕切られたコーナーにハンガーのかかった短いバーがあり、コートなどはここにか
けられます。バスルームは大変狭いけど新しくて、シャワーブースもちゃんとガラス戸で仕切られている。
壁紙の感じも明るく、建物は古いけど、比較的最近改装済みのようでした。窓からは隣の建物の煙突屋
根が見えて、パリっぽい。ちょっとアメリになった気分です。
疲れていたせいか、ちょっとのつもりで横になったのに、目が覚めたら13時過ぎだった。慌てて出かける。
フロントで「セイフティ・ボックスに預けたいものがあるんですが」と言うと、案内してくれたのが奥のリネン
室の中の金庫。誰でも出入りできてしまいそうな場所なので大丈夫かな、と思いましたが、自分で持ち歩く
よりはマシなので、パスポートと航空券を預けて行く。
明日は日帰りでリヨンまで行く予定なので、TGVの予約をしにまずメトロで2駅目のパリ・リヨン駅へ。
メトロのチケットは 10 枚つづりのカルネ、9.6ユーロをクレジット・カードで購入。
リヨン駅でのもうひとつのお目当ては、レストラン「ル・トランブルー」
で昼食をとることでした。
駅舎の一部を改装したこのレストランはベル・エポック時代の素晴らしい内装で、映画「ニキータ」の舞台
として使われた事でも有名です。添乗員時代、最も乗ることが多かったジュネーブ発パリ行きのTGVはこ
の駅に到着するのですが、その度にガイドさんがこのレストランの事を褒めているので、ぜひ一度こここで
食事をしたいとずっと思っていたのでした。2時をすぎていたせいか予約なしでも座れましたが、それでも
テーブルの3分の2ほどが埋まっています。一目で日本人と分かったのか、渡されたメニューは英語/ド
イツ語併記のもの。外人用はコレなのね。
お昼の定食のようなものはなく、セットメニューは43.5ユーロのコースだけ。食前酒とワイン 1/2 ボトル、
ミネラル・ウォーター、アントレ、メイン、デザートにコーヒー付きとお得な内容だったのですが、ワインを飲
んでしまうと午後の行動がおっくうになってしまいそう。結局ア・ラ・カルトで頼む事にする。
迷った末に、アントレ代わりにグリーンサラダを頼み、メインはタラのレモン・ソースソテーに。お水はバド
ワ(発泡性ミネラル・ウォーター)を。
サラダは深皿につまみ菜と赤ピーマンのスライスをドレッシング和えたものが盛られ、その回りをエンダイ
ブの葉で飾ったフランス料理らしい盛り付け。味付けはお上品というか、おおざっぱな私の舌が悪いので
しょうがちょっと薄味。テーブルにどんと酢・オリーブオイル・塩コショウの4点セットが置かれ、自分で好き
なように味付けして食べるイタリア&スペイン・スタイルのサラダに慣れてしまった身としては、つい「お酢
ください」と言いそうになってしまいました。
メインのタラのソテーは周囲にレモンソースで煮込まれたお豆が添えられ、上にはソースに使ったレモンの
皮がキレイに飾られている。気取りのないブラッスリーの味で、こちらは合格。
メインを軽めにしたおかげでお腹に余裕があったので、デ ザートも頼むことにする。メニューをもう一度もら
い悩んでいると、ウエイターさんがやってきて、「当店おすすめメニュー」コーナーから、フルーツグラタンを
指し、「これは人気なんですよ」と言う。おすすめには素直に従うワタクシ。
カスタード・クリームで和えたフルーツを、多分上だけバーナーで焦がしたようで、表面はパリっとお焦げ
で中は冷たく、なかなかおいしかったです。
ウエイターさんに「おいしい」というと気を良くしたようで、日本語で書かれたお店の案内をくれました。お店
の歴史や天井画の説明がのっていたので、それを読みながらゆっくり店内を見渡す。
なんとまぁ、豪華な事。日本にありがちなニセ・ゴージャスではなく、本物の歴史ある建物なので、ふんだ
んに使われている金飾もちっとも嫌味に見えません。「叶野姉妹とマリー・アントワネット」という単語がな
ぜか頭の中に浮かんでしまいました。向かいのテーブルには3歳くらいの女の子を連れた若夫婦。こんな
小さな頃から本物の美術品を見ているのだもの、審美眼が磨かれるはずだわよね。
ちなみにオルセー美術館の、サラダ・ランチをやっている方のレストランもゴージャスな内装で有名ですが、
こちらの店の方がぜんぜん重厚さでは勝っている。こうして座っていると、まるで自分まで映画の中の登
場人物になったような気がします。もう少しゆっくりしようと紅茶を頼むと、チョコレートとガレットまで付いて
きました。やれやれ、フランス人って本当に甘いもの好き、と思いながらも、焼き菓子には目のない私はつ
いガレットに手を伸ばしてしまう。さすがにチコレートまでは食べなかったですけどね。
お会計、58ユーロはカードで払い、TIP 分6ユーロだけを現金でテーブルに置いてゆく。
お腹も満足したので切符売り場へ。壁際に行き先別ミニ時刻表のラックがあったのでリヨン行きの見ると、
朝 10:00 発というちょうどいい時間帯のTGVがあったので、それを予約することに。窓口はたくさんあるの
ですが、それぞれ柵で仕切られているので、あっちの方が早そうと思っても移動する事が出来ません。辛
抱強く順番を待つしかない。前には3組しか並んでいませんでしたが、こういうのって当たり外れが大きく、
5分くらいで回ってくる事もあれば20 分以上かかってしまう事もざら。今回は10 分弱で順番が来たのでい
い方かも。窓口のお姉さんはさすがに大きな駅なので簡単な英語も分かり、「往復?」と聞かれたのです
が、明日の天気次第でスケジュールを決めようと思っていたので、とりあえず片道だけ予約。パスを持って
いたので、リヨンまでの指定券は片道わずか3ユーロ!ユーレイル・パスってすごい。
次はノルド駅に行って、空港行き郊外電車 RER のホームを下見する事に。
パリへは何度も来ていますが、ノルド駅へ行くのは初めて。言葉のメージから寂れた雰囲気をイメージし
ていましたが、リヨン駅よりも新しくてキレイな感じです。それにメトロ、国鉄、RER が乗り入れているので
広い。空港へは荷物を持って移動なので、空港行きホームへ降りるエレベーターの位置までチェックして
から、オペラ座方面へ。移動にはメトロの方が乗換えを含めても早くて便利なのですが、ノルド駅からオペ
ラ裏側のサン・ラザールまで RER が通っています。RER はユーレイル・パスが使えるので、お勉強の為あ
えて RER を使ってみることに。RER の自動改札横の係員窓口でパスを出してみると、「それでは改札が通
れないので、階段上のチケット売り場で改札用の専用チケットをもらってきて」、といわれる。売り場でパス
を出すと自動改札用の黄色いコントロール・チケットをもらえたのですが、なぜか2枚くれたので、1枚は明
日使う事にする。
ノルド駅からオッシュマン・サンラザール駅まではわずか2駅ですが、RER はメトロと違って本数が少ない
ので、15 分近く待つことに。実は添乗員時代はお客様に、RER はあまり乗らないほうがいいですよ、と案
内していました。本数が少ない事もあるのですが、駅はどこも閑散とした雰囲気で、客層もあまりよくない
からです。地元のガイドさんも、RER は家賃の高い 20 区内に住めない、低所得者層の人がよく使うから、
夕方以降は乗らない方がいいと言っていましたし。偏見は良くないのは充分承知していますが、やはりメ
トロに比べ RER は、ぐっと有色人種の乗客が増えます。ちょっと緊張しながらサン・ラザール駅へ。
ここからはプランタン、ギャラリー・ラファイエットの2大デパートまで歩いてすぐ。今回はスーツケースでな
いので荷物を増やせず、お買い物は最初からあきらめていたのですが、唯一靴だけは買いたいと思って
いたのです。本当はジェノヴァでイタリア製を買う予定だったのですが、体調を崩しそれどころではなかっ
たので、パリで絶対買おうと思っていました。
でも週末のせいか、デパートのあたりは店前の路上までかなりの人手。人ごみの中でのお買い物って、す
ごく体力消耗するんですよね。見ただけで戦意喪失。しかし近くの「アンドレ」という靴屋をのぞいたら、45
ユーロという手頃な値段でシンプルなデザインのものがあったので迷わず購入。ここは以前からよく利用
している店なのですが、市内あちこちに支店もあるチェーン店で、1〜2万円ぐらいの手頃な価格の品揃え
が中心です。しかも靴の横幅がゆったりとしたものが多く、日本人の足にも比較的合う。ヨーロッパの靴は
皆細めなので、EEE サイズの私にはなかなか合う靴がないのです。
軟弱モノはこの時点ですでに疲れてしまったので、デパートへは入らず外観からクリスマス・デコレーショ
ンだけ眺める事に。この2大デパートはデコレーションでも競演しており、特にクリスマスの飾り付けには
一年で一番気合を入れていて、毎年買い物客の目を楽しませてくれます。今年はプランタンの方は大きな
赤いぼんぼりを中心とした赤のイルミネーション。ギャラリー・ラファイエットの方は細かい電飾で建物全体
をルミナリエ風に飾っています(写真あり)。ぱっと見た感じではラファイエットの方が派手でキレイなので
すが、プランタンは道路に面したウィンドウのひとつひとつが動く人形で飾られていて、家族連れの人気を
集めているようです。しかもそれぞれが「ねずみを追いかけている猫」とかストーリー仕立てになっている
ので、まるで遊園地のアトラクションみたい。どのウィンドウの前にも人だかりができ、なかなか動こうとし
ません。お父さんが子供によく見せてあげようと肩車している光景なんか、世界共通ですね。
休憩したくなったので、オペラ座前の三越へ。ここの地下には休憩コーナーがあるのです。しかし以前は
無料だったミネラル・ウォーターのサービスが無くなり、代わりに飲み物の自動販売機が。しかも1本2ユー
ロと高い。地下鉄の自販機では1.5ユーロだったと思うけど。どこもせちがらい世の中ですね。でも椅子
に座って休めるのはありがたい。トイレもキレイで無料だし。ところで三越さんが作った近辺のレストラン・
マップはタクシー乗り場の位置なども乗っていて、とても便利です。また入り口にいつも「OVNI」という日本
語新聞が置いてあり無料でもらえるのですが、これもいろんな情報が載っていて便利ですよ。
少し元気が出て来たので、オペラ・ガルニエへ。オペラ座でバレエを見るのは長年の夢のひとつで、パリへ
来るたびに時間があるとチケット入手にトライしていたのですが、残念ながら今までは見る機会に恵まれ
ませんでした。今回も、上演中の「パキータ」は前売り完売なのが調査済み。(というか、お客様から11月
の半ば頃にチケット手配を頼まれたのですが、完売で入手不可だった)
オペラ・ガルニエはロビー右側に売店があり(ここで有名なオペラ座屋上で飼っている蜜蜂の蜂蜜も売っ
ている)、その奥にチケット売場があるのですが、やはり「
パキータは全日完売」
の張り紙が。しかし入り口
に「当日券は開演45分前から販売」の立て札があったので、一番後ろの席でも見れたらいいな、と発売を
待つことに。1時間以上ありましたが、階段に腰掛け入れ替わり立ち代り訪れる見学者達をぼぉーと眺め
ていると、あっという間に過ぎてしまいます。
しかしフランスもイタリア程ではないですが、やはりラテンなお国柄。発売開始と同時に並んでいた順番を
さりげなく、かつ強引に無視して窓口に殺到し、私はかなり前から待っていたのに列の一番後ろになって
しまいました。でも人生苦もありゃ楽もある。しばらく並んでいると、地元に住んでいるっぽい日本人の女
性が、「チケットがダブってしまったので買いませんか」と声をかけてきました。しかも67ユーロのトップ席
だという。しかしそんなに現金をもっていません。そこではたと、1万円分だけ日本円を持っていることを思
い出す。よくお客様に「お札をくずして」と頼まれた添乗員時代、つねに現地通貨とは別に千円札で1万円
分持つようにしていたのですが、今回もなんとなく持ってきていたのでした。向うも「日本円と現地通貨ま
ぜて支払ってくれても結構ですよ」といってくれたので、相手の言い値レートの1ユーロ=¥127 で計算し、
8千円+3ユーロで購入。本当はインターネットで購入したので券面額+3ユーロの手数料がかかってい
たようですが、その分はおまけしてくれました。
席へ行くと、前から6列目、舞台向かって左から7席目のグッド・シートで、群舞の動きまでよく見えました。
ガルニエの内装も素晴らしい。シャガールの天井画やボックス席の枠組みなど、うっとりとしてしまう。
本日の演目「パキータ」は、素人の私がみてもすぐ理解出来るほど大変分かりやすいストーリーでした。
「ジプシーの娘パキータは、みなしごでしたが村一番の美人です。村祭りに訪れた若い将校は、彼女にひ
と目でフォール・イン・ラブ。それを快く思わない村の不良と、かねてから将校をジャマだと思っていて上官
は、共謀して将校暗殺をたくらむ。しかし計画を漏れ聞いたパキータは、機転をきかせ将校を助け出しま
す。ふたりが逃げ込んだ先は将校が信頼している将軍の屋敷で、舞踏会の真っ最中。皆の前でパキータ
と将校は、上官の悪事を暴き立てます。無事犯人もつかまりパキータにプロポーズする将校。しかし私は
ジプシーの娘、あなたとは釣り合いませんと嘆くパキータ。すると何故かそこに、パキータが子供の頃から
肌身離さず持っているメダルに描かれた人の肖像画が。その人物は将校が尊敬する将軍家のおじい様、
つまりパキータは将軍の娘だったのです。喜んでプロポーズを承諾するパキータ。そして舞台は華やかな
結婚式のシーンへ」という、典型的なハッピー・エンド。舞踏会や結婚式だけでなく、フラメンコ・ダンサーと
闘牛士の踊りあり、子供達の群舞もありの、年末にふさわしい華やかな作品でした。
19:30 開演で、終わったのが9時半すぎ。近くで夕食を済ませて帰ることにする。
オペラ座真横に「LE SANTAL」というベトナム料理があり、以前よくランチのセットメニューを食べに来てい
たのですが、ひとりでも比較的入りやすい雰囲気の店です。フランスは元インドシナを植民地にしていた
ので、おいしいベトナム料理屋があり、特にナムという料理は日本でいう餃子みたいにフランスでもポピュ
ラーになった食べ物で、私の大好物でもあります。ベトナム風揚げ春巻きなのですが、ミントと一緒にレタ
スで巻いて、ニョクマク・ベースの甘酸っぱいタレでいただきます。ベトナム料理専門店でなくとも、中華料
理屋にも(
パリの中華料理屋はベトナム系中国人経営が多いので)必ずあるほどの人気メニューです。
本日は前菜代わりに汁そば、そしてナム。メインはチキン・カレー&ライスに。ホテルの階段が待ち受けて
いるので、ワインは止めてミネラル・ウォーターにしておきました。
やっぱりアジアご飯はお腹が落ち着くと満足し、お会計してもらったのですが、料金は39ユーロなのに、
勝手にサービス料が6ユーロもついている。「高すぎない?」というとサービス料は 15%という。ここはニュ
ーヨークか?しかも端数切り上げているし。ちょっと気分悪し。
オペラ座前からホテルまではタクシーを拾う。地下鉄サン・ポール駅までと言えばいいので、説明が楽。ル
ーブルの中庭を通り抜け、セーヌ川沿いにノートルダムを見ながら走った後、クリスマス・イルミネーション
の残る市役所からリボリ通りへ入る。夜景観光までできてしまいました。TIP 足して7ユーロ。
☆9日目(
2002 年 12 月 29 日 日曜日 小雨のちくもり)
パリは南仏と比べ北緯が高いため、08:
30 すぎてやっと空が明るくなってくる。9時頃ホテル発。
1駅隣のバスティーユ駅までお散歩する。日曜日ですが、パン屋、お惣菜屋、八百屋、チーズ屋さんなど
は朝からオープン。マレ地区は下町なので、このような食料品店が多く、ウィンドウを眺めているだけで楽
しい。クルスマス・ブッシュのケーキやつぐみのゼリー寄せなど、何を見てもおいしそうで、買ってTGVの
中で食べようかと思いましたが、今日はリヨンでおいしいものを食べる予定なので、ぐっと我慢する。ゆっく
り歩いていたらバスティーユの駅に到着したのは 09:30 過ぎ。でもパリ・リヨン駅へはたった1駅です。
TGVはもう入線しており、予約時に特に指定はしなかったのに私の席はデュプレックス車両の2階席でし
た!TGVの車内はとてもキレイなサロン・カーで、今回の旅の中ではドイツの ICE が一番良かったと思っ
ていましたが、それを上回る快適さ。こんなにゆったりした列車なら、パリ〜地中海の長距離乗っても全然
疲れなさそう。車内で駅で買ったパン・
オゥ・ショコラと紅茶の朝食。
パリから20 分も走ると車窓はもうなだらかな丘陵がつづく農業地帯に。それがリヨンまでずっと続き、農業
大国でもあるフランスの一面をみせてくれます。
リヨン・パール・ディユー駅まではノン・
ストップ。こちらはリヨンの新市街側で、大きなビルが目につきます。
その隣駅の終点、リヨン・ペラーシュ駅へは11:
55 着。
まず駅の窓口で帰りのTGVを予約。パリ出発時は小雨でしたが、雨もやんだのでお昼を食べた後ちょっと
お散歩して帰ろうと、15:
47 発に乗る事に。しかしお昼の時間帯のせいか、窓口が2つしか開いておらず、
しかもけっこう並んでます。結局 30 分もかかってしまい、とんだ時間のロスでした。やっぱりパリで往復分
予約しておけばよかったと、反省。
駅の観光インフォメーションは日曜のため閉まっていましたが、フランス観光局発行のリヨンの地図入りガ
イドを持ってきてあります。本日、ランチはベルクール広場近くのポール・ポキューズ経営のブラッセリー
「Le Sud」でとる予定で、地下鉄だと2駅目でしたが、目算1kmぐらいなのでぶらぶら歩く事にする。
駅前のカルレ広場からまっすぐ伸びているヴィクトール・ユゴー大通りを歩くと、5分ちょっとでもうベルクー
ル公園へ。そこからローヌ川への突き当たり角ある「
Le Sud」に行くと、ランチの一番混んでいる時間帯だ
ったので満席です。「1時すぎに来てくれ」と言われたので、先に散歩する事に。
地図で検討してから、反対側、ソーヌ川を渡った丘の上にあるフルヴエール教会まで行く事にする。途中
ブションと呼ばれる居酒屋が集中しているマロニエ通りを覗いてみるが、やはり日曜日はみなクローズし
ているようでした。
リヨンは新市街側にローヌ川、旧市街側にソーヌ川が流れていますが、2つの川の間は徒歩 10 分弱。
ソーヌ川を渡った先にフルヴィエールの丘へ上るフニクレール(斜面電車)
乗り場があります。
ローマ劇場方面行きとフルヴィエール教会行きの2線があり、料金は2.1ユーロ。高くない?これは片道
料金でしょうか、往復料金なのでしょうか?フランス語は分からんです。
とりあえずフルヴィエール教会行きへ乗ると、民家の軒先を走りながらわずか2分ぐらいで到着。駅の目
の前はもう教会です。横の広場が展望テラスになっていて、リヨン市街を一望できるパノラマ・ポイントでし
た。フルヴェール教会内部は壁面から天井まですべてモザイクで飾れており、素晴らしい。ビザンティン・
モザイク好きの私としてはゆっくり鑑賞して行きたいところでしたが、ランチに戻らなければいけないので、
ざっと1周してから再びフニクレールへ。小銭がなかったので、来るときの切符を試しに自動改札に通すと
入れてしまった。やはり往復チケットだったのかな?
フニクレールふもと駅近くのサン・ジャン大司教教会のステンド・グラスも見てみたかったのですが、時間
がないのでまっすぐレストランへ。途中ベルクール広場に面したインフォメーションがオープンしていたの
で、寄って市内地図をもらう。けっこう大きなオフィスで、ガイド・ブックなども売っているのですが、ポール・
ポキューズのエプロンなど、ポキューズ・グッズまで売っているのには笑えた。さすがお膝元。
店に着いたのは1時を15 分ほど過ぎていたのですが、まだ混んでいる。でもどうにかすぐに座れました。
ポール・ポキューズはリヨン内に東西南北と名づけた4件のブラッセリーを経営しているそうですが、ここ
「Lu Sud」は南という名の通り、レモンとオリーブの柄のテーブル・クロスで南仏風のインテリアです。
フランス語のみのメニューを勘を頼りに熟読し、サンデ−・ブランチ25.6ユーロに心惹かれる。
前菜+メイン2種のうちから1品チョイス+チーズ2種のうちから1品チョイス+チョコレート・タルトのデザ
ート付き。お得だ。英語の分かる店員さんに説明してもらうと、前菜はなすのマリネ、メインはラムのグリル
または魚料理だという。メインをラムで注文。
前菜は薄くスライスしたなすをソテー後マリネしたものに、付け合せはラタトィユをスプーンでこんもり盛り
付けしたのがふた山。横になにかのハーブと卵をプリン型に入れ蒸し焼きにしたのが添えられている。そ
してハーブを揚げて砕いたものと岩塩のソースがひと筋。盛り付けだけみてもうっとりでしたが、お、おいし
い。う〜ん、至福。この前菜だけでもリヨンまで来た価値があった!
メインのラムは竹串に一口大のラム、赤ピーマン、玉ねぎを交互に刺しグリルしたもので、外側は軽く焦げ
目がつき中はウェルダンとジューシィーな仕上がり。付け合せはほうれん草と、ガーリックとハーブで風味
をつけた皮付きフライド・ポテト。ボリュームもたっぷりです。チーズはリコッタをチョイス。柔らかい生フロマ
ージュにお砂糖を振りかけて食べるのは大好き。
これでもうお腹も気持ちも充分でしたが、食い意地が張っているので、もう入らないと言いつつもデザート
のチョコレート・タルトもペロリ。かなりビターを効かせてありましたが、それでもめちゃ甘かった・
・
・
。
隣のテーブルのカップルはメインにクスクスを頼んでいたのですが、その食器がかわいかった。この店の
食器はオリジナルの、レモンとオリーブをモチーフにした陶器なのですが、クスクスの皿は浅い土鍋風の
皿に、同じ柄の大きな円錐形の蓋がついているんです。それをテーブルまで運んだ店員がはい、どうぞと
開けてくれるのですが、あれも食べてみたかったなぁ。
ちなみにクスクスとはアフリカの植民地から入ってきた食べ物で、ラムなどの肉と野菜を煮込んだ汁を、稗
だか粟だかの穀物を蒸したものにかけて食べます。日本でいうとカレーのようにポピュラーな庶民的食べ
物ですが、日本のカレーがインドのカレーとは全く違うものであるように、フランスのクスクスもアフリカの
ものよりはずっと洗練された食べ物です。
しかし浅鍋入り、しかも骨付き肉と食べにくいでしょうに、隣のカップルはおしゃべりしながらもかなりの速
さで平らげていきます。その食べ方がすごく上品。食べるスピードは早いのですが、がつがつした感じは
全くなく、物静かに会話しながらもお皿はカラッポに。お肉は見事に骨だけ、ソースもしっかりパンでぬぐっ
て全部食べてある。地味な感じのカップルでしたが、フランスのしっかりした家庭で育った中流の方々とい
うのはこんな感じなのねぇ、と感心してしまいました。
お会計はミネラル・ウォーターと食後の紅茶を足して31.8ユーロ。私は基本的に料金だけカードで払い、
TIPは現金で支払うようにしているのですが(以前どこかのガイドさんに、現金の方が店員には喜ばれると
聞いたので)、今回は現金が手元少なくなってきたので TIP 込みでカードで支払う事に。
ビルの合計金額31.8ユーロの下に、自分で+TIP=35ユーロと書いて店員さんにカードと一緒に渡す
と、「メルシ」といって35ユーロ分カードで切ってくれました。
お店を出たのが15:20頃。駅まで早足で歩き、出発時間 15:
47 の 10 分前には列車に乗り込む事ができ
ました。しかし、やはり焦っていたのでしょうか。ちゃんと掲示板で15:
47 の発車時間と行き先を確認し、列
車のドアにもパリ・リヨン駅と書いてあるのを確認しいたのに、間違った列車に乗ってしまったのです!
ペラーシュ駅出発後、パール・デュー駅を出るまではよかったのですが、その後はパリ・リヨン駅までノン・
ストップのはずなのに、なぜかいくつか駅を飛ばしては停車していく。あわてて時刻表を確認すると、15:
57 リヨン・ペラーシュ駅発のローカル急行があり、どうやらそちらに乗ってしまったようです。
この電車はディジョン経由のパリ・リヨン駅行きで、TGVが二等辺三角形の底辺を2時間ですっとばすの
に対し、こちらはディジョンを頂点とする2 辺を6 時間かけて行く電車なのでした!でも確かにホームの掲
示板には、発車時間が15:
57 ではなく15:47 とあったのにな。列車が来たときに乗ったサロン・カーのよう
なものではなく、普通のオープン・シートなので一瞬おやっと思ったのですが、デュプッレクス車両ではない
TGVだからかしらと軽く流してしまったのがいけなかった・・・。
どこかでもっと早くパリに着く急行に乗り換えられないかと時刻表を調べましたが、なんせTGVとは走って
いるルートが違うので無理。結局、パリ・リヨン駅着 21:40。ぐったり疲れてしまいました。
6 時間あったら飛行機で成田からバンコクまで行けちゃうよ。今日の夕食は生ガキを食べようと思っていま
したが、とてもそんな元気が無なく、駅の売店でサンドイッチを買い、部屋で食べる事にする。
夜遅くはメトロに乗らないようにしているので、パリ・リヨンからはわずか 2 駅でもどうしようか迷ったのです
が、人の流れがかなりメトロ方面に流れ、しかも大きな鞄を持ったツーリスト風の人が多かったので、メトロ
で帰ることに。今回のホテルは駅のすぐ前なので夜道を歩かなくていので安全だし。
フロントでセイフティボックスから貴重品を出してもらってから、重い足を引きづりつつ階段を登る。
TVでクレイジー・ホースの特集をやっていて、オーディションとか振り付けレッスンの模様を紹介していて
おもしろかった。
☆10 日目(
2002 年 12 月 30 日 月曜日 くもり)
ホテル 07:30 出発。朝で空いていたせいか、すぐ前のタクシー乗り場からノルド駅まで7ユーロで行けた。
ユーレイル・パスを使い、RER を利用してシャルル・ド・ゴール駅へ。空港駅までは渋滞知らずでわずか 35
分で到着です。成田と同じくターミナル1 駅と2駅があり、航空会社によって下車駅が変るので要チェック。
駅は空港からちょっと離れており、駅前から出ている無料のシャトルバスで空港へ移動します。
これでめいっぱい使ったユーレイル・パスもお役目終了。計算してみたら、パス以外の現地で使った列車
代は、夜行列車の予約も含め合計わずか 44 ユーロ。お得だし、なによりいちいちチケット売り場に並ばな
くてもすむ便利さは、列車の旅には欠かせないものでした。