2 豊かな心の育成

2 豊かな心の育成
現状と課題
○
資料3は、青少年育成国民運動実践調査研究事業に係る佐伯市実施委員会が、
平成17年に佐伯市内の5年生を対象に実施したアンケート方式による調査結果
の一部です。遊びをとおして自然とふれあう場面(「探検ごっこ」「木登り」「山
遊び・山歩き」「海や川で泳ぐ」「魚釣り」「虫取り」)を想定して、763名
の児童に対し「よくする」「時々する」「あまりしない」「しない」で回答を求
めたものです。これを見ると、どの遊びも「よくする」「時々する」と答えた児
童の割合が少ないことがわかります。最もよく行われている「海や川で泳ぐ」と
いう項目についても、全体の約6割の児童は「あまりしない」「しない」と答え
ています。自然とのふれあい、自然体験の不足は、様々な方面から指摘されてい
ますが、佐伯市においても同様であることがわかります。
〈資料3〉
遊びの中の自然体験
探検ごっこ
よくする
時々する
あまりしない
しない
木登り
山遊び・山歩き
海や川で泳ぐ
魚釣り
虫取り
0%
○
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
人間関係の構築力や調整力は、多様な価値観や生き方が存在する現代社会にお
いて重要な能力の一つです。しかし、今の子どもたちは、学級の中に自己の身の
置き場所を見いだせない、友だちの輪を広げたりできないなど、人間関係を円滑
に保持し、開拓する能力に欠けるとの指摘があります。相互に認め合い、尊重・
協力し合うなど、豊かな人間関係を築くために必要なコミュニケーション能力の
育成が求められています。
○
自己中心的な考えから自分の家族や幼い子どもの命を奪うといった少年犯罪が
しばしばマスコミに取り上げられています。少子化や核家族化に伴い、兄弟姉妹
や高齢者、障がいのある人など、身近な人々とのかかわりの中で体験的に思いや
りの心を学ぶ機会が減ってきていることが、ひとつの要因と考えられます。相手
を思いやる心や生命を大切に思う心を実感できるような学習活動が必要です。
○
読書は、感性を磨き、表現力・創造力を高めるなど、人生をより豊かに送るた
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めには欠くことのできないものですが、児童生徒の読書量は、学年があがるにつ
れて減少傾向にあり、読書離れが進んでいくというのが現状です。本のおもしろ
さ、活字から情報を得ることのすばらしさを味わえるような読書指導の推進が求
められています。
○
優れた文化芸術にふれ、そのすばらしさや美しさ、おもしろさに心動かされる
ことにより、感性は磨かれ、豊かな創造力がはぐくまれていきます。文化芸術は、
人々に深い感動と喜びを与えるばかりでなく、豊かな心の育成という重要な教育
的要素を含んでいるのです。したがって、学校教育において、その機会を設け、
充実させることは、極めて重要な課題だと思われます。
これからの基本方向
(1)
豊かな体験活動を推進します。
(2)
望ましい人間関係を築くコミュニケーション能力を育成します。
(3)
思いやりの心や生命を大切にする教育を推進します。
(4)
感性を豊かにし、表現力や創造力を高める読書活動を充実します。
(5)
文化芸術活動を推進します。
主な取組
(1) 豊かな体験活動の推進
①
体験活動と関連づけた道徳教育の充実
教師と児童生徒及び児童生徒相互の人間関係を深めるとともに、自然体験活
動やボランティア活動など、発達段階に応じた多様な体験活動を取り入れなが
ら道徳の授業の工夫・改善を図ります。さらに、各教科や総合的な学習の時間
など教育活動全体を通じて体験活動と関連付けた道徳教育の充実を図ります。
②
地域人材・地域施設を活用した教育活動の充実
魅力的な教材の開発や地域人材・地域施設の活用により、教育内容・教育活
動の一層の充実に努めます。自分たちの住む地域をより深く知ることにより、
地域や地域に住む人々を愛する豊かな心をはぐくみます。
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(2)
望ましい人間関係を築くコミュニケーション能力の育成
国語科や英語科をはじめ様々な授業の中で、話す力や聞く力の基礎を養い、気
持ちや考えを伝え合う能力を育成します。また、児童生徒が話し合いながら課題
を解決する機会を多く設けるなど、学校の教育活動全体を通じて、コミュニケー
ションの楽しさやすばらしさを実感できるような学習活動を位置付けます。
(3)
思いやりの心や生命を大切にする教育の推進
学習者が体験や行動を通して学ぶ「体験的参加型学習」(*1)の手法を取り入れ
ながら、学習過程において相手を思いやることの大切さや生命の尊さを実感でき
るようにします。例えば、特別活動や総合的な学習の時間などを使って、お年寄
りや障がいのある人、幼児と接する機会を設けたり、飼育や栽培活動を積極的に
展開したりしながら、生命の尊さを実感することができるようにします。
(4)
感性を豊かにし、表現力や創造力を高める読書活動の充実
国語科の授業において、読書指導の充実を図るとともに、全校一斉の朝読書等
の実施を推進します。併せて、地域ボランティアを活用した読み聞かせやPTA
活動の一環としての親子読書の推進など、読書の楽しさを実感させる活動や取組
を行いながら、学校と家庭における読書習慣の確立をめざします。
また、必要な資料や情報を提供するレファレンス機能(*2)を備えた、学習情報
センターとしての学校図書館経営の推進をめざし、図書教諭を含む図書担当者の
研修会への参加を促進します。また、社会科学習や総合的な学習の時間を中心と
した調べ学習や問題解決学習に対応するために、市立図書館や地域の図書館等と
の連携を強化し、学校図書館の機能の一層の充実を図ります。
(5)
文化芸術活動の推進
音楽、図工・美術における教科指導の充実を図るとともに、優れた文化芸術に
ふれ親しむ活動を推進します。また、中学校における文化部活動の活性化促進の
ため、指導者研修会への積極的な参加を促し、指導力の向上をめざします。
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目標指標
指
標
現状値
名
平成18年度
目
平成23年度
標
値
平成28年度
体験活動と関連づけた道徳教育
小学校
80%
100%
100%
に取り組んでいる学校の割合
中学校
64%
100%
100%
地域人材・地域施設を活用してい 小学校
97%
100%
100%
る学校の割合
中学校
86%
100%
100%
幼児やお年寄り、障がい者等との交 小学校
100%
100%
100%
流を行っている学校の割合
中学校
93%
100%
100%
1か月に3冊以上本を読む児童
小学校
92%
100%
100%
生徒の割合
中学校
17%
30%
60%
読書活動(朝読書等)を週1回以上 小学校
94%
100%
100%
実施している学校の割合
中学校
86%
100%
100%
小学校
37%
50%
70%
中学校
11%
15%
15%
ボランティアを活用し読み聞か
せを行っている小学校の割合
文化部活動に参加している中学
校の生徒の割合
参考:運動部活動に参加している生徒の割合
(H18年度、82%)
〈用語解説〉
○体験的参加型学習(*1)
参加者がお互いの気づきや考えを共有しながら学習活動に能動的に参加し、社会的行動力
と意欲を高めようとするもの。参加体験型学習、参加型学習、ワークショップともいう。
○レファレンス機能(*2)
図書館が行う利用者サービスの一つで、必要とする文献や参考図書についての情報を教え
たり検索に協力したりするもの。
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