「FX特別レポート」(3/11) 湾岸戦争で為替はどう動いたか ㈱マネー&マネー編集長・吉田 恒 イラク攻撃がいよいよ近付く中で、為替も不安定な動きとなっている。 ところで、91 年湾岸戦争の際は、為替はどう動いたのか。それを調べてみたところ、開 戦前後でのドル下落、「有事のドル安」と、戦争終結を前後したドル反発、「戦後のドル高」 という動きとなっていた。 ◆湾岸戦争では「有事のドル安」5% 91 年湾岸戦争は、1 月 17 日に開戦、2 月末で米国を中心とした多国籍軍勝利という結果 でほぼ決着となった。この中で為替の動きは、 「有事のドル安」、「戦後のドル高」といった 展開となった。 「有事のドル安」は、開戦前後の約一ヶ月で 5%のドル下落となった。ドル円相場は、91 年の初めは 1 ドル=135 円だったが、2 月上旬にかけて 127 円まで下落したのである。2 月 上中旬に多国籍軍の勝利がほぼ確定的になるとドルは底入れ、反発に転じるところとなっ たが、逆に言えば勝利の見極めがつくまでの「有事」の期間中ドルは続落したわけだ。 この湾岸戦争の際の「有事ドル安」を今回に当てはめると、ドルは対円でイラク攻撃を 前後し 115 円を割り込む可能性があるという結論になる。118 円程度から 5%のドル下落と すれば、112〜113 円程度までドル安・円高が進むと言うことになってしまうのである。 しかし、湾岸戦争と今回では、日本の通貨当局による円高阻止の介入姿勢が異なってい るようだ。今回の場合は、1、2 月と 2 ヶ月連続で円売り介入に出動しており、その総額は すでに 1 兆 5 千億円〜2 兆円近くに達している模様だ。 湾岸戦争の際の円高阻止姿勢は、実は公式記録はない。財務省は為替介入実績を過去に 遡って公表したが、それは 91 年 4 月以降であり、ちょうど、湾岸戦争のあった 91 年 1〜3 月期の直後からである。ただ当時の報道を見る限り、ドル買い介入はなかった模様。この ようなドル買い介入の有無は、「有事ドル安」の程度差をもたらす可能性も注目される。 ◆「戦後ドル高」は対円で 1 割 ところで、このような湾岸戦争開戦前後の一ヶ月で 5%といった「有事ドル安」は、対円 に限らず、対マルクでもほぼ同様の結果となっていた。1 月 17 日の開戦から、2 月上中旬 にかけての多国籍軍勝利確定まで、ドルは対円、マルクでほぼ同様に展開した。 しかし、2 月上中旬に底入れとなると、その後 2 月末の終戦を前後し、3 月に入るとドル は一段高となった。「戦後のドル高」といった展開となったわけだが、これは対円と対マル クでは少し違った動きとなった。 2 月のドル安値から、3 月に入ってからのドル高値までの上昇率は、対円では 1 割にとど まったのに対し、対マルクでは 2 割近くにも達した。 「戦後のドル高」が対円より対マルク で大幅に進む結果となっていたわけだ。 このような湾岸戦争の動きを見る限り、今回のイラク攻撃でも、「有事ドル安」 、「戦後ド ル高」といった為替の乱高下はある程度頭の片隅に入れておく必要がありそうだ。(Y) 参考;湾岸戦争前後の為替相場の推移(1991/02/11=100%) 120.0% 01/17 空爆開始 ドル/マルク 115.0% 02/24 地上戦開始 ↑ドル高 110.0% 105.0% 02/27 クウェート解 放 100.0% 29-Mar-91 22-Mar-91 8-Mar-91 15-Mar-91 1-Mar-91 22-Feb-91 7-Feb-91 14-Feb-91 31-Jan-91 24-Jan-91 16-Jan-91 9-Jan-91 2-Jan-91 24-Dec-90 17-Dec-90 3-Dec-90 DM 10-Dec-90 95.0% 120.0% 01/17 空爆開始 ドル/円 115.0% ↑ドル高 110.0% 02/24 地上戦開始 105.0% 02/27 クウェート解 放 100.0% 29-Mar-91 22-Mar-91 15-Mar-91 8-Mar-91 1-Mar-91 22-Feb-91 14-Feb-91 7-Feb-91 31-Jan-91 24-Jan-91 16-Jan-91 9-Jan-91 2-Jan-91 24-Dec-90 17-Dec-90 3-Dec-90 円 10-Dec-90 95.0%
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