第8回 ~1階物件は投資に向いているか

第8回
~1階物件は投資に向いているか~
■1階の物件とは
1階物件といっても、全てが言葉通り『1階』にあるものとは限りません。地面から少し下がったところに住居が存在する半地下(地
階)物件(※写真1)や建物1階部分が共用部のため、建物2階部分にあたる住戸を1階としている物件(※写真2)もあります。半地下
(地階)とは、「お部屋の床が地面より下にある階で、床から地面までの高さがその階の天井の高さの3分の1以上のもの」とあり、
一般にはこれを指して地下、あるいは半地下と呼んでいます。
投資の対象として敬遠されがちな1階物件ですが、きちんとメリットを把握し、デメリットの対策を採ることで安定的かつ長期的な
収益を生むことが可能です。
1階物件を選ぶ際の注意点
半地下物件や地下の物件は金融機関からの評価が低いことが多く、融資の利用が困難になります。また、湿気が多いためカビも生えや
すく、通常の1階物件に比べ壁紙の張替えなどの修繕の頻度が多くなり、予期せぬ支出になる場合があります。
植栽や塀によって、外から見られにくくしている物件(下記写真3)は多いですが、かえって人目につきづらくしてしまうケースもあり
ます。
物件を選ぶ際には、きちんと実際に物件を見に行き、半地下になっていないか、通気性はいいかなど入居者が住みやすいと思える1階
物件か見極めることが必要です。
※写真1
半地下(地階)の物件(赤い線で囲っている階層)
4階建だが、半地下住戸があるため外見は3階建になる
※写真2
1
1階が全て共用部の物件
外観2階部分(赤い線で囲ま
れている階層)が1階に当た
る
※写真3
木があることにより外から室
内が見えにくい物件
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■1階物件運用メリット
一般的に1階物件と聞くと防犯面などからマンション投資をするうえで敬遠されている方も多いと思います。
では、1階物件が上層階とどのような違いがあるのかご紹介します。
デメリッ
ト
メリット
・物件価格が低い
⇒マンションの価格は高層になるほど物件価格
が上昇する。1階の物件は上層階の部屋と比
べて物件価格が低いことが多く、オーナーに
とって検討しやすくなる。
・プライバシー・防犯面の不安
⇒外から人目につきやすいためプライバシー性
は上層階より劣る。
また、上層階に比べると侵入が容易なため、
空き巣被害などにあいやすい。
・家賃が上層階より安い
⇒家賃が安いことにより、お部屋探しをしてい
る人の目に留まりやすくなり、借り手も決ま
りやすい。借り手が決まりやすいことにより、
空室期間も短く出来る。
・湿度が高い
⇒他階層の部屋に比べると、1階は湿度が高く
なるケースがある。カビの発生や壁紙への影
響など、補修が必要になる場合がある。
豆知識
空き巣被害などは1階・2階で特に多いとの統計が警察・警備会社から出ているが、各種統計資料にあるデータを参考にする際
は注意が必要。統計上、アパートやマンションはまとめて集合住宅というひとつのカテゴリーにされることが多い。1階と2階
はどの物件でも存在するものであり、他階層に比べ母集団の数が多くなる。結果、他の階層よりも収集されるデータが多いため、
報告される件数も増える。統計データを見る際には数字のマジックに注意しての検討が必要になる。
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■入居者目線のメリット
1階物件には入居者にとってメリットもデメリットも存在します。
不動産投資をする上で、物件選びをする際に入居者の目線に立ち失敗しにくい物件を厳選することが需要です。
不動産投資で一番のリスクとなるのが「空室」です。そのリスクとなる空室を防ぐためにも入居者の目線に立ち、賃貸需要
が高く見込める物件を購入し運用していくことが『失敗しにくい』不動産投資に繋がります。
メリット
・家賃が安い
⇒物件価格と同様、上層階になるほど家賃は高くなる。表1から入居者の希望はまず『家賃』であり、1階の物
件では他の階層よりも家賃が低くなるため、入居者にとって検討しやすくなる。
・エレベーター・階段を利用しなくて済む
⇒エレベーターの待ち時間が無いことや買い物の際に運び入れが容易である。また、引越し時には階段やエレ
ベーターを使っての搬入が無いので、費用を安く抑えられる。
・災害時に逃げやすい
⇒災害時には緊急の避難を要することがあるため、すぐに表へ出られる1階の物件は災害時に有利になる。H2
3.3.11の東北地方太平洋沖震災以降、災害に対する意識が高まったことから(表2)、今後の需要が高ま
ると考えられる。
安全・安心に住まうことへの意識の変化はありましたか?
グラフ1
「一人暮らしの実状と部屋探しに
ついて」インターネットによるア
ンケート調査(2010年)
アットホーム株式会社
1位
賃料
2位
学校・職場から近い
3位
沿線
4位
最寄り駅から近い
10%
意識が非常に高ま っ た
45%
45%
意識がやや高ま っ た
意識はあま り変わら なかっ た
グラフ2 東北地方太平洋沖地震後の住まいの意識調査(2011年4月)
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■入居者目線のデメリット
お部屋探しの際、1階物件を選ばない理由としてどのようなことが挙げられているかご紹介します。1階ならではのデメリット
でもありますので、それらに適した対策が必要です。
デメリット
・プライバシー面の不安
⇒接道状況や植栽などの遮蔽物の状況によってはプライバシー性が低い。ただし過度にプライバシーの保護を
重視した物件はかえって防犯性が低くなってしまうことがある。
・防犯面での不安
⇒1階であることから、上層階に比べ侵入が容易なため、不安を覚える入居者も多い。(下記グラフ3参照)
・日照の問題
⇒周辺環境によって日照が遮られることがある。状況により洗濯物の乾きに支障が出るなどの弊害がある。
グラフ3
空き巣の侵入口(マンション1階)
都市防犯研究センター(2001年)
6%
玄関・出入り口
21%
ベランダ・バルコニー
58%
15%
居室の窓
台所・浴室・トイ レ窓
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■まとめ
敬遠されがちな1階物件ですが、メリット・デメリットをきちんと理解することで、安定的かつ長期的な収益を得ることが可能です。
周辺相場に合った家賃設定と物件選びによって、ご自身の資産を安定的に運用できる仕組みを取り入れることが重要です。
1階物件選びのチェックポイント
□不動産投資に好ましい物件□
■不動産投資に好ましくない物件■
・植栽や塀の見通し
・共用部の防犯設備が整っている
過剰な植栽や高すぎる塀はかえって人目につきづらくし
防犯カメラ・オートロック・宅配ボックスなど
てしまうため、防犯性に欠ける。しかし、全く遮蔽物の無
い物件ではプライバシー性に欠ける。日照を遮ってしまう
防犯面に配慮した共用設備がある。
ケースもあるのできちんと現地を確認すること。
・妥当な家賃設定
周辺相場に合った家賃設定がされているか。適正な家賃
・周辺環境
治安はどうか、近くに交番などはあるか。街灯が少なく
設定であれば入居者を募集しやすくなる。
人通りも無いようなところにある物件は避ける。
共用設備 参考写真
人目につきやすいが、その分外から見えや
すいため防犯性は高い
5
植栽によって人目につきにくいが、かえって
そこを狙われるケースも