「地域をプロデュースする仕事」(玉沖仁美 著/英治出版) まちおこし

「地域をプロデュースする仕事」(玉沖仁美 著/英治出版)
まちおこしに関する本は多々ある。しかし、離島や過疎地での事例が多く、埼
玉とのギャップを感じることもある。まちおこしの条件は、地域ごとに異なる。
このため、本で紹介される事例の中から、参考にできる「やり方」を読み解く必
要がある。
本書は、単に成功事例を紹介するだけの本ではない。地域プロジェクトで効果
的に結果を出す「やり方」を解説しているのが特徴である。
筆者は、地域産品や観光事業の開発を手がける株式会社「紡(つむぎ)」の代
表取締役。独立する前は、リクルートの社員として、各地のモノづくり・観光事
業・人材育成事業などのコンサルタントを担当してきた。20余年にわたる地域
プロジェクの現場で培ったノウハウをまとめたのが本書である。
まちおこしを「上手にやる」ためのカギを握るのが、地域プロデューサーとい
う役回りと筆者は説く。地域プロデューサーとは、「地域の皆さんから本当にや
りたいことを引き出して整理、編集し、関係者のコミュニケーションや意思決定
を促し、想いを紡ぎながら目標に向かってプロジェクト全体をコーディネートし
ていくような存在」としている。
外部のコンサルタントである必要はなく、自治体の担当者でも適任とのこと。
では、具体的にどんな役割を担うのか。
一つ目が、チームをつくること。プロジェクトに必要な専門家を探して、チー
ムに参加するよう働きかけることである。
重要なのは最強のチームをつくること。頼みやすそうな人に声をかけるという
安易な妥協は禁物とのこと。例えば、地域産品の開発であれば、料理研究家より
も原価計算もできる本職の料理人やシェフに依頼すべきと指摘する。
二つ目は、地元の人を主役にすること。プロジェクトのゴールを決めるのも地
域の人々自身である。このため、地域プロデニューサーには、関係者の想いを引
き出すスキルが求められるという。本書では、ターゲットのイメージを浮かべや
すいような質問で、関係者の想いを引き出す技法が紹介されている。
最後の三つ目が、事務局機能をつくること。
筆者の経験から、多くの失敗事例に共通しているのは、事務局が機能していな
いことと資金が続かないことの二つであると指摘する。
全員が他人まかせだったり、逆に全員が自分に決定権があると言い張っている
場合、根回しや実務管理する事務局が機能しないと、すぐに空中分解してしまう
と警告する。
このほか、本書では地域プロデューサーに必要な姿勢とスキルについて、実践
的な視点から説明している。また、筆者が関わったプロジェクトも詳しく紹介さ
れており内容が濃い。
まちおこしの手法を学びたい自治体職員にお勧めしたい1冊である。
(ほ)