頚椎疾患患者の術前オリエンテーショ ンの検討

頚椎疾患患者の術前オリエンテーションの検討
一術後の症例を通してー
5階東病棟
中 山 みゆき
岩
村
志津子 山 本 里 代
○多 場 真 弓
秋
山
佳 代
I はじめに
頚椎は可動域が広く,構築的にも不安定である。手術の際には,脊髄や神経根の
近くを操作しており,術後の安静の如何によっては,症状の悪化や生命の危険を伴
うことにもなる。その為術後,頚部の安静は重要であり,軟部組織が安定する約2
∼3週間という間,頚の両側を砂のうで固定し,仰臥位で過ごさなければならない。
自由に体位を変える事が出来ない状態で長期間過ごす事は,患者にとって非常に苦
痛であり,安静を保持する事は大変な努力を要する。予測し得る術後の問題点に対
し,術前から適切な指導,援助を行わなければならない。今回,当病棟で手術を受
けた患者4例に行ったオリエンテーションの内容と看護婦の指導方法について検討
した。
n 研究目的
頚椎疾患患者の症例を通し,術前オリエンテーションの指導方法について考え,
内容を充実させ,指導要項を作成する。
Ⅲ 研究内容
研究期間:昭和60年9月上旬∼11月下旬
方法及び対象
1)今まで頚椎疾患患者に対し行っていた術前オリエンテーションを文章化し,
〈頚の手術を受けられる方へ〉と題するパンフレットを作成する。(資料1)
2)上期期間中に頚椎手術を受けた患者4例に対し,パンフレットを用いて術前
練習を行う。
3)手術3日前には,各科共通の一般の術前オリエンテーションを行う。
−287−
r・
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ゝ゛
4)症例紹介(資料2)
Ⅳ 結果及び考察
今までの術後の問題点として,①仰臥位安静が守れない(不眠等のため)②排泄
困難③仰臥位による洗面,食事,含漱等の困難④排痰困難⑤筋力低下等があげられ
た。
今回4症例の術後の経過から術前練習の指導上問題となった項目は,臥床,深呼
吸,排痰,含漱,運動等であり,指導内容が不充分と思われた。
〈臥床について〉
術後の安静の必要性は,患者自身感じており,個々の差はあるが臥床練習に対
する受け入れは良く,
A,
B,
C氏は積極的に練習する姿がみられた。しかし,
D氏はこれまで手術の経験があり,術後の経過を軽視して,術前オリエンテーシ
ョンで練習を促しても本人の協力が得られなかった。術後は臥床の苦痛に耐えら
れず側臥位をとる事もあった。また,A氏は術前より練習も積極的に行っていた。
しかし,神経質な面があり,術後は頚部の安静に対する緊張が強く,良眠が得ら
れなかった。術後2日目に無意識に,自力で側臥位をとってしまった。このこと
より,術前練習が充分であっても,術後は性格的条件も大きく関係する事があり,
術前より患者個々の性格を充分理解し,術前オリエンテーションを行う必要があ
る。また,術後熟睡できにくく,ストレスが溜まり側臥位をとる事も多いので,
医師の指示のもとに睡眠剤等の使用により,熟睡させる事も必要である。頚椎の
術後では,家族が付き添う場合もあり,家族による患者への精神面の支えが,患
者の心の開放にもなる事から,家族を交えた術前オリエンテーションを行う事が
望ましい。
〈深呼吸,排痰について〉
B氏は,術前より肺機能が69.1‰cと低値であり,軽い肺気腫を指摘されてい
る。手術前3日前より吸引瓶を利用した呼吸訓練を行ったがご術後呼吸苦及び排
痰困難があり,ネブライザー等を用いなければならなかった。患者からは「喉が
痛い」「胸が押さえられる様で息ができない」という訴えがあった。これは,術
後の体位によるもの及び,術中の麻酔操作による咽頭部への刺激,麻酔による肺
288−
機能への影響が考えられる。また,頚椎3∼5を操作している事より,術後組織
の浮腫による横隔膜神経への影響等が考えられる。この症例以外でも,頚部の手
術では一般的に手術時間が約7時間と長く,一時的な呼吸機能低下をもたらす。
この事より,頚椎疾患患者では,特に術前の呼吸練習が大切であるといえる。
〈食事について〉
術前練習に応じたのは,
B,
C氏であり,2例共に家族を交えての指導を希望
するなど積極的に試みていたが,手指の巧緻障害が強くスプーンや鏡をうまく使
用することができず,じれったさに頭を持ち上げてしまう事が多かった。この事
を考慮し,術後は強いて食事の自己摂取を促す事はせず,本人の意志にまかせ,
希望により臥床期間中は介助を行った。A氏は,手指の障害が軽い事から術後自
己摂取を試みさせたところ,うまく行えた。この事は,術後安静が守れず不安に
陥っていたA氏にとって,精神的効果も大きく,気分転換を図るきっかけとなっ
た。食事に関しては,手指の障害の程度が大きく関係しており,各個人の能力に
応じ食器などを考慮し指導する必要がある。壇た,
B,
C氏の様に,積極的な態
度で術前練習に応じていても,高齢者では鏡を使って細かい動作をするという巧
緻性に乏しく,自分で充分食事をするまでにはいたらず,結果的には介助を要し
た。 j
<含瞰について〉
看護婦は,術前練習において説明を行い声かけをするだけであった。その為に,
術後は口角から水を流し出す事が難しく,吹き出したり,飲み込んだりする例が
多く,結果的に含瞰を嫌がる事となった。この事より,術前のオリエンテーショ
ンが充分ではなかったと思われる。
<運動について〉
術前には4例共あまり関心を示さず,積極的に運動を行おうとはしなかった。
その原因は,術前の安静度が比較的自由であり,術後の運動の必要性を感じてい
ないのではないかと思われた。しかし,術後早期から行う運動は,筋力保持,血
行改善,関節拘縮予防等の目的の他に,術後の拘禁状態からの開放の効果もあり,
術後は患者自ら運動を実施した。
289
V まとめ
頚椎手術を受ける患者のオリエンテーション用紙を作成し,4例の頚椎手術を受
けた患者に使用し,看護婦の指導のあり方を検討した。その結果,看護婦間での統
一したレベルでの指導が必要である事,オリエンテーション用紙の一つ一つの項目
を説明するだけでなく,患者の個別性をふまえた具体的な練習の指導が大切である
事を再認識した。今後,指導内容の充実及び,看護婦間の指導レベルの統一を図る
必要性があると考え,前記の結果から看護婦の指導する要項を作成した。(資料3)
Ⅵ おわりに
今後,指導要項にそって指導を進めていき,術後の長期臥床期間を心身共に安楽
に過ごす事が出来る様に,精神面を含めたオリエンテーション要項を充実していき
たいと思う。
〈参考文献〉
1)津山直一他:総合リハビリテーション,医学書院,
2)中山知雄:解剖学,メヂカルフレンド社,
8, 1980o
1980o
3)浅野達雄:理学療法と作業療法,頚椎手術後の理学療法,
4)金子光編集:成人看護学整形外科編,真興交易医書出版部,
11, 1980o
1985。
5)益子秀子他:術前オリエンテーションの評価,四大学看護学研究会雑誌,29−
39, 1981o
−290−
資料1
〈頚の手術を受けられる方へ〉
頚の手術後は,2∼3週間という長い期間を仰向けで過ごさなければなりません。
治療を理解して頂き,少しでも苦痛を和らげて頂くために以下のパンフレットを参
考に頑張って下さい。
★入院から手術まで
手術前
頚の安静を守るため手術後は枕はせず,頚が動かないように頭の両側に砂袋を置
いて寝ることになります。そのために手術までに次の練習をしておきましょう。
●寝る練習
●排尿・排便の練習
寝たままで排尿できるよう少なくとも2回以上は練習して下さい。
●うがいの練習
うがい盆を頚の横にあて,ゆっくりと流すように吐き出します。
●鏡を使ってテレビを見たり,装具をつけたりします。
●食事の練習
オーバーテーブルに膳をのせ,鏡
を使って食べます。
フォークやスプーン,曲がりスト
ロー等があれば便利です。
−291−
●呼吸練習
●仰向けに膝を曲げて寝る。
●胸とおへその上に手を置く。
●胸の上の手が動かず,お腹の上の
手が動くよう深呼吸する。
(大きく息を吸い込みゆっくり吐き出す)
●痰はお腹に手を当て力を入れて一気に出しましょう。
●煙草はひかえ手術前3日間は絶対禁煙しましょう。
●手術前より手術後の筋力低下を防ぐため,下記の運動を行いましょう。
①ボール握り ②肘の曲げ伸ばし ③足首を動かす
ケノ≒
④膝をベッドに押し付ける ⑤膝の曲げ伸ばし
ふ
ノぐ〉
ソ / ⑥腕の上げ下げ
2
1・j丿万.-.⊇
−292−
”4
●
/
手術後
●手術後,絶対にしてはいけない事
①自分で勝手に横向く事
②大きくうなずく事
③頭を持ち上げる事
●手術後は腸の運動が低下するのでお腹の動きが悪くなります。許可が出るまで飲
んだり食べたりしないで下さい。
●適度な運動は循環を良くし,離床後のめまいやふらつきを防ぐことになります。
手術前に行っていた運動を,手術後1日目から始め,徐々に回数を増やして行い
ましょう。
例:1日目 ①の運動20回,2日目 毎食後,①②の運動各20回
●腰は軽く浮かす程度にして下さい。また,重りを持っての運動は避けましょう。
●抜糸は手術後10日目頃の予定です。
2∼3週間して装具をつけて起き上がることができます。
●装具のつけ方は医師が指導しますので,正しく覚えてしっかり装着しましょう。
●起き上がる時は装具をしっかりつけてから横になり,ベッドから足をたらして,
ベッド柵につかまり,ゆっくり起き上がって下さい。
●装具をつけたままでシャワー浴ができます。
●骨が固定できるまでの約3ヶ月間は,装具の装着が必要です。
※わからない事がありましたら
に
−293
し出て下さい
資料2 患
者 紹 介
氏名
性別
年令
性 格
疾患名
術 式
前方除圧
A 氏 51 才
男
几 帳 面 頚椎症性
固定術
神 経 質 神経根症 (C5-6,
機能障害
経 過
右前腕筋力低下(筋
術後,緊張過度な面が
力3十)と右第1,
あり,良眠得られず2
2指しびれ及び軽い
回無意識に側臥位をと
運動障害かある。
る。幸い症状の悪化は
ADLには支障なし。
みとめなかった。食事
C6-7)
を自己摂取させ,気分
転換に効果あり。
頚植々弓
明るく楽天
的であるが
B 氏 74 才
女
,他人への
依存心が強
しゝ。
切除術
頚椎症性
(C3タ4タ5y
頚髄症 6,7)
軽い肺気腫 頚椎前方
69.1 %c
除圧固定術
(C4-5)
骨移植術
頚椎3以下のレベル
上肢の巧緻動作に障害
全身にしびれがあり
あり,練習中に食事摂
(8/10),右手で箸を
取が上手に行えず,術
用いて食事できるが
後も介助をする。
ぎこちない。左手は
周囲の者とよく話して
細かい作業ができな
おり,術後特にイライ
い。下肢筋力の低下
ラも認めず安静は守れ
がみられ平地歩行で
ていた。
も杖または支持を必
軽い肺気腫があり,術
要とする。
前より病棟で工夫した
肺呼吸練習をしたが,
痰の喀出困難,呼吸苦
がみられた。
明るく順応
C 氏 69 才
男
性がある。
気が小さい
頚椎症性
頚椎前方
頚髄症
除圧固定術
頚椎症性
( C 3-4,4-5
神経根症
,
5-6,6-7)
右上肢筋力の低下及
本人の希望あり家人と
び右肩関節の硬縮あ
共に術前オリエンテー
り。
ションに協力的。
右第4,5指完全伸
右手障害の為,食事介
展不可,食事はスプ
助する。
ーンにて摂取可能。
難聴があり,説明を頻
回に行った。
四肢知覚鈍麻あり。
頚椎前方
話し好き。
D 氏
52 才
女
できること R A
はやろうと 頚椎症性
固定術
(C6,7)
頚椎後方
するが,自 頚髄症 固定術
己中心的な 環軸椎脱臼 (C,-2,
面がある。
C6-7)
骨移植術
たことない”と言い,
∼手尖3/10,左下腿
術前練習を拒否する。
前面∼足尖知覚鈍麻
オリエンテーションも
5/10)
充分聞こうとしなかっ
諸関節の変形,拘縮
た。術後苦痛に耐えら
強直及び下顎,頚椎
れず自分で側臥位をと
左肘関節の脱臼があ
る。しばらく頻回に体
る。
位変換施行する。
手先の細かい作業は
食事は鏡を使ってスプ
できないが,スプー
ーンを用い自分ででき
ンを用いて食事は摂
る。
取可能。
−294−
術前から“手術は大し
(左上腕5/10,右前腕
資料3
〈頚推疾患患者 術前オリエンテーション指導要項〉
項 目
臥 床
指 導 法
患 者 へ の 説 明
手術後は創が安定するまで約2∼3週間仰
バスタオル1枚,頚部用砂のう4個を準備
向けで寝る必要があります。手術後の雰囲
し患者の所に持っていく。枕を除去し四つ
気をっかみ,寝る事に慣れるために頭の両
折りのバスタオルを頭部に敷く。患者を臥
側に,砂のうをおいて寝る練習をしましょ
床させ,両耳を圧迫しない程度に,両側に
う。頚が固定できておれば手足は自由に動
砂のうを2段重ねで置き,頭頂部で固定す
かしても構いません。砂のうの位置は看護
る。 Bed上部の柵にペーシェントミラーを
婦が説明します。周囲が見えるように枕元
取り付け,患者の見やすいように自分で角
に鏡を取り付けますので鏡を通して見る事
度を調節させる。
に慣れましょう。
体 位 変 換
手術後は創のガーゼを換えたり,背中を拭
砂のう固定をした状態で仰臥位をとらす。
く時に1回/日医師と共に横を向きます。
側臥位をとる方向に看護婦は立ち,砂のう
その時は,頚に力を入れないよう,指示に
を肩の高さに調整し,医師が頭部を支え,
従ってゆっくりと向くようにして下さい。
看護婦が屑と腰を支え,ゆっくりと体変す
頚部の安静は最も重要ですので絶対に1人
る。その際必ず,向く側のBed柵を取り付
で横に向いてはいけません。手術後は必ず
け,側臥位をとっている間,患者に柵につ
医師の介助で行います。
かまらせる。'もとに戻る時は,前述と同様
にしっかりと支え,ゆっくりと戻す。類が
前屈したり,後屈したりしないように注意
する。
便器・尿器の使用
(床上排泄)
手術後は2∼3週間という間,仰臥位で過
Bedには,ピニールシーツ・横シーツを敷
ごさなければなりません。ですから,お小
いておく。最初は看護婦が便尿器をあてが
水や,お通じはBedの上で寝ているままで
い,排泄が済んだらナースコールを押すよ
しなければなりません。今までの習慣でト
う指導する。スムーズにゆかない時は気分
イレでないと出ない,また便器をあてて周
を換えて,次の機会を待つよう指導したり
囲から漏れてしまうのではないか‥等の不
する。スムーズに排泄がゆけば,あとはセ
安や,麻酔の影響や創の痛みのためにお腹
ルフトレーニングを繰り返させ自信をつけ
に力が入らない等で,なかなか出にくいも
るようにする。後始末の指導もきちんと行
のです。経験がない方が多いと思いますの
う。手術前であり同室者に対する羞恥心も
で,便器のあて方は看護婦が指導します。
強く,機会を逃す事が多いので積極的に指
寝ているままでのお小水やお通じは難しい
導する。羞恥心に対する配慮を忘れない。
ので,上手に出来るようになるまで,何回
も練習しておいて下さい。
全身麻酔で手術を受けると,口の中が乾燥
し長い時間水も飲めませんから,不潔で,
含 轍
患者を仰臥させ吸いのみで水を含ませる。
“ブクブグとゆすがせガーグルベースを
また傷つきやすい状態となります。ですか
頬にあて,口角より水を全部きれいに流れ
ら麻酔が醒め次第うがいをして,口の中を
出させる。“カラカラ”とゆすがせないこ
きれいにして感染を防ぎ,また気分的にも
と。口の中に水を残さないこと。
さっぱりとさせましよう。うがいは麻酔が
少量でも残ればガーゼで拭き取る。術後創
充分醒めてから,必ず,看護婦が手伝いな
部のない方で行うよう,左右練習しておく
がらします。頭を横に向けることができま
とよい。また同じ方法で歯みがきも行うこ
せんので,仰向けのまま口を少し開けて,
とを話しておく。
口の端からゆっくりと流し出すようにしま
しよう。必ず仰向けでうがいが出来るよう
に練習をしておきましよう。
−295−
¶りヾIご・|’
食 事
仰向けで食事をするのは容易なことではあ
患者に仰臥位をとらせ,オーバーテーブル
りません。食べ物がのどにつかえたり,む
の上に膳を用意し胸元に準備する。こぼれ
せこんだりしないか,あるいは創口が心配
ても構わないように,タオルを胸元にかけ
になる人もいると思います。まず,最初仰
る。枕元の鏡を自分で調節し,スプーンや
向けで水を飲んだり,たぺるということか
フォーク,食べ物の位置を確認させる。巧
ら慣れ,次に鏡を使い,フォーク,スプー
緻障害のある患者には介助を要するが,出
ンなどを利用し自分で食事出来るように練
来るだけ自分で摂取出来るようにもってい
習しましよう。
く。食べにくい魚はほぐしたり,大きな物
は食べやすく切るなどの細かな配慮が大切
となる。
手術後は麻酔を早く醒ますように深呼吸を
深 呼 吸
患者を仰臥させ,前胸部あるいは腹部に患
して下さい。全身麻酔の充分醒めない時期
者自身または看護婦の手を当て,胸部や腹
には,肺がふくらまないので,酸素を充分
部の動きを意識させる。呼気・吸気時にそ
取り込めず,また,ふだんは自然に出てく
れぞれに手に力を加え,より充分に深い呼
る痰も,気管支にたまりやすくなります。
吸が出来るようにする。胸式・腹式の両方
手術後は,意識的に深い息をして肺を充分
を指導し,術後やりやすい方法を実施すれ
にふくらませ,充分酸素を取り込み,痰の
ばよい事を知らせる。老人や肺機能低下の
出を良くする助けをしましよう。
ある患者には,早くからイドセップ等を使
い練習させる。
咳 ・ 喀 痰
深呼吸のところでお話ししたように,痰が
患者を仰臥させ,術創(採骨部)があると
たまることにより,肺炎等になるおそれが
仮定し,その両脇より手で押さえるように
あり,全身麻酔後,肺の動きが鈍くなって
して大きく息を吸って咳をさせる。痰はチ
いる時には,非常に痰がたまりやすくなっ
リ紙で取り,出来る限り嘸下しないように
ています。手術後の創の痛みや疲労のため
言う。また,出にくい痰に対してはネブラ
に,大きな咳をしたり,深い息をする事は
イザー等,方法のあることを加えておく。
なかなか難しいものです。しかし,肺炎防
止のためには,少々の痛みは我慢して痰を
出すことに努めなければなりません。そこ
で寝たまま咳をし,痰を出す練習をやって
おきましょう。
Bed上で長く過ごすと,運動不足によって
各運動の図を見せ,実際に看護婦がやって
身体の機能が衰えてきます。また,何もせ
みせる。患者に自分で行わせ,不充分な点
ずに寝たままでいるとストレスがたまり,
運 動
は再度わかりやすく指導する。
イライラしてきます。それらを防ぐために
*効 果
術前から,リハビリも兼ねて各運動を行い
関節拘縮予防
ましよう。手術前は毎食後約20回を目安と
筋力低下防止
して行い,手術後は1日目より始めましよ
ストレス解消
う。
末梢循環改善
−296−