本日はありがとうございました。 時間超過してしまいお許しください。また、リアルタイムにご質問の回答ができずに重ねてお詫び いたします。 ご質問の内容は、10 項目です。 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. ドッグフードについて 同じフードのままでいいか?あきないか? メーカーをかえて違うフードを与えたほうがいいか 食事量の最適化とは? 食餌+間食(おやつ等)はどの程度までOKか? 体重管理のため、ドッグフードの量は? 豆腐、キャベツ、ブロッコリーの茎 を与えているがどうか。 プラセボ、ノーセボについて詳しく。 去勢手術・避妊手術について 去勢手術の時期は? 避妊手術はしたほうがいいのか? 犬は寒がりか? 犬用の洋服は効果があるか。 11 歳の犬を飼っているが、もう一頭飼うと長生きをすると聞くが本当か? 動物愛護施設から 0 歳児の犬を譲り受け、6 か月は室内飼育し、その後外での飼育を考えて いるが、外に飼育するときのストレスはあるのか? 関節と目のサプリメントは使った方がいいのか? 市販のものと動物病院のものと違いがあるか? 健康診断はどのくらいの間隔ですればいいのか? 口臭と体臭がするが仕方ないのか? カーペットなど舐めた後臭いがつく。 取れる方法がないか? 10.出会った瞬間から!! これが大事!! 一つずつ、お答えしたいと思います。 をもう少し詳しく教えてください。 1.ドッグフードについて 同じフードのままでいいか?あきないか? メーカーをかえて違うフードを与えたほうがいいか 基本的には、信用できるドッグフードであれば、同一メーカー・同一銘柄を続けること を推奨します。 理由は、“完全栄養食”であり、メーカーの給餌データの裏付けがあるからです。 信頼のおけるメーカーなら、同じ銘柄のフードを食べていて異常が出た場合、調査をして くれます。 同じフードを食べていれば、ウンチの量・色・臭い・形・柔らかさや尿の色・臭い・量は ほぼ一定になります。すなわち、それらの変化により病気や体調変化の早期発見が可能です。 また、一般的に獣医師が推奨するのは、主原料が単一蛋白・単一炭水化物のものです。 蛋白源は、魚、獣肉、鳥系、炭水化物は、米、イモ類、コーン、小麦、大麦などです。 これは、アレルギーが起こりにくいことと、出た時にフードを変えることが可能だからです。 しかし、どんなフードもリニューアルやアップデイトをします。 また、病気になれば処方食を食べることになります。(一時的にでも) ですので、コロコロ短期間でフード変更するよりは、ある期間・長期間同じメーカー・銘柄 のフードを与えることをお勧めいたします。 食事量を最適化したい。 食餌+間食(おやつ等)はどの程度までOKか? 体重管理のため、ドッグフードの量は? ドッグフードの袋に書いてある給餌量を確認してください。 月齢・年齢を確認し、今の体重ではなくその個体の適正体重(犬種の体重ではなく)の給 餌量の±10%の範囲で、普通は調整します。安国先生がおっしゃっていた通り、犬種、 運動量や生活スタイルで微調整をしてください。こまめに体重を測りベストな量を見つけて あげてください。 食べたくて仕方のない子はたくさん食べられるフードを、あまり食べない子は少量で充分 栄養量が取れるフードを選んでください。獣医師に相談するといいと思います。 場合によっては、病気でなくても処方食・準処方食をアドバイスくださると思います。 おやつは基本的にはいりません。フードを間食に使うのがベストです。 しかし、飼い主さんの気持ちとしては、おやつはあげたいものです。これも、安国先生が おっしゃっていたように、フードの 10%以下をめどにしてください。(カロリーで) その分、フードの量を減らしてください。 メーカーによっては、フードとおやつの原材料を同じものを使用しているところもあります。 しつけ、トレーニングにおいて、特別なご褒美として、おやつを使ってください。 ご褒美はあくまで、特別なもの。ご褒美が日常になってしまうとご褒美の価値は下がります。 なので、ただあげたいから、無条件であげるということはお勧めできません。 好物があることはいいことです。しかし、好物が日常になってしまうと、いざというとき、 また本当に食べてほしい時に食べてくれないということになりますのでご注意ください。 豆腐、キャベツ、ブロッコリーの茎 を与えているがどうか。 基本的には、人の食べるものを上げるのはお勧めしません。ごみ箱をあさったり、いたずら を誘発する可能性もあります。多くはありませんが、難治性の皮膚病の原因が、野菜による 食餌アレルギーであったこともあります。 豆腐は、ほんとうの製法で作られた豆腐ならいいですが、簡易製法・大量生産の商品は注 意が必要です。 キャベツは、フランスでは犬には与えてはいけない食事の一つです。急性の毒性はありま せんが、慢性毒性として、甲状腺機能低下症を引き起こす可能性が示唆されています。 ブロッコリーの茎も、ブロッコリー自体は野菜では栄養の宝庫といわれますが、残念ながら ゆでても焼いても、犬の腸で消化吸収することはありません。残渣が残れば、アレルギーを 誘発する可能性もあるわけです。フリーズドライにして、微細粉砕により、消化吸収ができ るように加工しているものもあるので、そういうものは利用可能です。 注意すべきことは、市販される数多くのドッグフードの中で消化吸収率・利用率などの試 験をしていないもののほうが多いということです。手作り食も同様です。 原材料に野菜等が記載されていても、粉砕され添加されているだけであれば、犬は利用で きません。もちろん、乾燥野菜などのおやつも同じです。 飼い主さんがあげなければ、犬は、それを知ることはほとんどないはずです。 また、 「犬とっていいもの、バランスがいいものを考えている」といわれる方が多いですが、 それは、頭の中の自分の予想であって裏付けがあるものではありません。 犬のためでなく、飼い主さん自身の満足のためであることが多いことを知っていただきたく 思います。 2.プラセボ、ノーセボについて詳しく 講義では、はしょってしまい申し訳ありません。 プラセボは疑似薬効果といわれています。 暗示効果の一つです。 つまり効果のないものであっても、思い込むことにより効果が発揮されるというものです。 ご存知かもしれませんが、その昔、つわりでひどく悩む妊婦さんにビタミン剤や乳酸菌製 剤を、「つわりに効く安全な新薬」といって渡すと、7 割以上の妊婦さんがつわりが軽減 したという話が有名です。今、そんなことをしたら大問題ですが… 現在では、効果のないサプリメントや、ただの水や、なんらかの加工をした水を、○○の 効果があると説明するとその効果が得られ、「喜びの声」として広告に使われたりします。 作用の無いものでも、プラスに働く効果のことを言います。 悪いことではありませんが、それをお金儲けに利用する人もいます。 全くの効果がない薬であっても、2割の人にも効果が出るといわれています。 現在の人の承認薬はからなず、プラセボとの対照試験(有意差検証)がされています。 「犬では、そんなことはないだろう」と思われるかもしれません。昔はそう思われていま した。しかし、現在では、犬の承認薬においてもプラセボ対照試験をしています。 「気は心じゃ」です。飼い主さんの思いが愛犬に現れるわけです。「以心伝心」 犬用のサプリメントにおいても、プラセボ対照試験を行っているものも増えています。 また、ホリステック医療や行動療法で使われるフラワーメレディ、アロマテラピーなどは、 再現試験において、プラセボ効果と有意差が認められていません。 しかし、何であれ、効果があり治ればいいわけです。「信じる者は救われる。」 ところが、科学者である我々獣医師がこれらを飼い主さんに推奨することには疑問に思い ます。いかがでしょうか? ノーセボは、全く反対の現象です。 つまり、思い込みが悪い方に出てしまうということです。 疑似薬に出るはずのない副作用を説明すると、実際に副反応を経験するわけです。 また、講義では、胃腸の整腸剤を処方しても「薬は胃を荒らす」と信じておられる飼い主 さんの中には「薬を飲むと吐く」と出るはずの無い副反応のご相談を受けたりします。 飼い主さんが強く想像する副反応が出てしまうことがしばしばあります。 3.去勢手術・避妊手術について 去勢手術の時期は? 避妊手術はしたほうがいいのか? 去勢(精巣(睾丸)摘出)と避妊(卵巣子宮もしくは卵巣の摘出)はしてあげてください。 時期は、日本の場合獣医師によって異なりますが、次のことを参考にしてください。 世界においての獣医学的には、現在は、生後 5 か月以内の早期手術が推奨されています。 日本で一般的なのは、発情前の 6 か月前後をお勧めされる先生が多いと思います。 しかし、まだまだ、生後 6 か月以降でないとだめ、8 か月、1 歳以上、1 歳 2 か月ぐらい もしくは発情後、大人になってからと説明される先生もおられます。 では、去勢と避妊手術をする意味はなんでしょう。 行政や一昔前の目的は繁殖防止です。 現在では、問題行動予防、繁殖防止、疾病予防、マナーの向上 が目的になっています。 発情前、すなわち生後 6 か月以内の精巣(睾丸)および卵巣子宮摘出手術は、繁殖防止目的 よりも、疾病予防と問題行動予防が主目的である場合が多いと思います。 去勢(精巣(睾丸)摘出)は、今はまだきちんとした統計データーは出ていませんが、前 立腺疾患(肥大・膿瘍・腫瘍など)や肛門周囲疾患(周囲瘻・腫瘍・アポクリン腺癌など) の予防効果が確認されています。また、精巣(睾丸)を摘出するので、睾丸に関する疾患は 起こりません。 また、性ホルモン疾患のリスクも下がります。すなわち、安国先生の講義にあった、本能 による行動(飼い主さんにとっては問題行動になる)が減少するのです。 避妊(卵巣・卵巣子宮全摘出)は、きちんとした統計・科学的データーが多くあります。 一番は、乳腺腫瘍が発情前であれば、ほぼ 100%予防できるというものです。犬の腫瘍の 中でもっとも多いのが乳腺腫瘍といわれています。また、乳腺腫瘍の 50%は悪性であり、 そのうちのさらに 50%が、発見時にすでに進行性のもだということです。なので、この 乳腺腫瘍が予防できるということはとても重要なことになります。 もちろん、卵巣と子宮がなくなるわけですから、卵巣と子宮に関する疾患は起こりません。 雄と同様、性ホルモン疾患のリスクも下がります。雌においても、守るための攻撃性がある ため卵巣子宮全摘出手術は攻撃性のリスクも下げることになります。女性ホルモンの分泌 が下がるために攻撃性が増すという説明を受けることがありますが、発情前であれば関係 ありません。(理由は後述) 近年、特に日本はイヌの小型化が進み、早熟の傾向があります。6 か月以降であれば、発情 している個体もあります。ですので、5 か月未満の手術が推奨されています。 よく、「おかま・おなべ・ニューハーフになった」とおっしゃる方がおられますが、少し 違います。つまり、“男の子のまま・女の子のまま”ですので、ホルモンバランスが崩れ ることはほとんどなく安定した状態のままです。更年期障害の多くが、性ホルモンのアン バランスにより引き起こされます。その防止と、今は、10 歳以上生きる子がほとんどです。 10 歳以上になり、生殖器関係の疾患やホルモン疾患になったときには、精巣(睾丸)摘出・ 卵巣子宮全摘出が治療となります。 昔は、発情でうるさいや出血して困る、妊娠してしまったから…と、去勢・避妊手術をし ていました。性ホルモンがたくさん出ているときに摘出してしまうため、性ホルモンのバラ ンスが崩れてしまいます。そのことにより、肥満などの問題が起こってしまいます。 ですので、発情中の手術は避けたほうがいいということになります。 若くて健康で問題がない時と、年を取り病気になり問題を抱えた状態で手術するのとどち らがよいと考えらえるかは飼い主さんしだいです。また、同じ手術ですが、リスクやその 後の予防効果などは、雲泥の差であることもお考えください。 最後に、避妊・去勢手術は性格や記憶をかえる手術ではありませんので、生後 6 か月以内の 手術であれば、おとなしくさせたり、扱いやすくなることはありません。 4.犬は寒がりか? 犬用の洋服は効果があるか。 犬が最も快適と思う温度は、10~15℃です。人では少し寒いぐらいがちょうどいいのです。 それは、短毛種でも同じです。犬は寒い地方、やや高地が本来のすみかです。 つまり寒がりではありません。災害救助犬は、真冬の海に飛び込んだり、雪山遭難などでも 活躍しています。 あのアンダーヘヤーのないヨークシャテリアも、イギリスのヨークシャ地方の寒いところで 繁殖された犬種です。よく間違えられるのが、チワワ。原産がブラジルなので「寒さに弱い」 といわれることが多いですが、ブラジルでも高地地方で繁殖された犬なので、寒さに弱くあ りません。むしろ、暑さに弱いのです。 犬は汗をかけません。つまり、体温を逃がすのが下手で、体温を保持するのが得意なのです。 「赤ちゃんには厚着をさせるな」と聞いたことがあると思います。 これは、赤ちゃん(新生児)はまだ汗腺が発達していないため、厚着をさせると暑くても 自分の体温調整ができないために体調不良を起こすためです。犬に服を着せない理由とほ ぼ同じです。 (しかし、乳幼児から 3 歳までの子供は汗っかきとなるのですが、冷暖房で 汗をかかないため汗腺が未発達となり体温調整が苦手な子どもが増えているそうです。) 犬は自分の毛皮を着て、体温保持に優れた体なのです。ですので、寒がりではありません。 寒がりにさせているのは人の習慣によるものです。(過保護が起こす問題です。) 犬の正常体温は、38~39 度です。少し動けばすぐに体温は 40 度になります。 つまり、洋服は百害あって一利なしです。害以外の何物でもありません。 人が喜ぶため、また、ショップやアパレル業界にお金儲けをさせているわけです。 犬の洋服は犬のためではなく、人(飼い主と売り手)のためのものです。 犬に服を着せて散歩をするということは、マラソンランナーにダウンを着せて走らせるの と変わりません。 ただ、動物の皮膚の専門医の先生が、犬のアトピー性皮膚炎の治療に、一部服を奨励して いますが、これは特別な生地で作られたものです。また、災害救助犬においては、人を 助けるために装備として服であったり、犬の体を守るためのスーツを着用させることが あります。 最後に、ヨークシャテリアのヨークシャ地方では、雨が多く寒い地方だそうです。石の家 で暖炉ですので、室内と室外の温度があり、さらに、湿度が高く雨が多いので、服ではなく、 コートを着せる場合があります。これは、レインコートに近いものになります。 5. 11 歳の犬を飼っているが、もう一頭飼うと長生きをすると聞くが本当か? ほんとうでもあり、間違いでもあります。(笑 人でも若い人や赤ちゃんがいるほうが、若々しくなります。刺激を受けるからです。 長生きするかどうかは不明ですが、刺激になり、少し若返って見えるようになることはあ ります。 気を付けなければならないのは、犬にも相性があるということです。ですので、ただ若 い犬・子犬を増やせばいいということではありません。犬種、性格もみる必要があります。 基本的には、1 頭より 2 頭飼育のほうが、飼い主にとっても犬にとってもいいのですが、 犬に割く時間、経済、飼育場所・空間をちゃんと確保できるか?も検討してください。 11 歳であれば、介護問題、いろいろな健康問題が今後出てきます。そこに、子犬は 2 年間は時間を割いていただかなければなりません。 6.動物愛護施設から 0 歳児の犬を譲り受け、6 か月は室内飼育し、その後外での飼育を考えて いるが、外に飼育するときのストレスはあるのか? 犬は、群れの動物です。可能かなかぎり室内で飼われることをお勧めします。外の環境が どのようなものかわかりませんが、外だからダメということではありません。 しかし、群れの中にいたものを突然一人にされてしまうわけですから、犬にとっては理解で きないのではないでしょうか? 昔の日本家屋であれば、縁側や軒下、土間が犬の居場所であり、床下やふすま、扉一枚で人・ 飼い主との距離は近かったのですが、近年では、縁側や軒下、土間が無くなり、気密住宅化 したため、人(飼い主)と犬の距離が離れてしまいます。 また、屋内で共に生活することで、犬から受ける恩恵も多くなりますし、犬の健康状態や行 動などの把握もしやすくなります。早期発見早期治療には欠かせません。野外で飼育するこ とで飼い主さんにとっての問題行動が起こる可能性も高くなります。 どうしても、外で飼わなければならないのであれば、今から少しずつ慣らすことが必要です。 室内で飼育するにしても、留守番などでひとり‐一匹‐にしなければならなくなりますので、 同じようにトレーニングしていきます。室内であっても室外であっても、人がいるときにも サークル内で過ごす時間を作り、飼い主への強い依存性を持たせないように(分離不安の防 止)していく必要があります。一匹で過ごす時間を少しずつ長くしていく必要があります。 また、番犬にしたいのか、そうでないかによっても、トレーニング方法は異なります。 どうしても、野外飼育は、家族と触れ合う時間・同じ空間にいる時間が少なくなるので、可 能な限り室内飼育されることをご検討くださいますようお願いします。 7. 関節と目のサプリメントは使った方がいいのか? 市販のものと動物病院のものと違いがあるか?を教えてください。 まず、目から。 アスタキサンチン(富士フイルムのアスタリフトという化粧品でおなじみだと思います)や ルテイン(ブルーベリーやビルベリーだとお分かりだと思います。)などは、現時点では唯 一網膜萎縮症の進行を抑える可能性のある成分です。ですので、ダックス、プードルなど網 膜萎縮症の素因を持つ犬種には有効なサプリメントであり、医薬品ではありませんが、治療 に使用することがあります。 人のサプリメントでも同様、注意が必要なのは、その成分の信頼性と含有量と吸収利用率 です。残念ながら、これらのサプリメントでプラセボ効果の確認をとることが難しく、信 頼できるメーカー銘柄を選択するのが無難です。サプリメントは星の数ほど出ているため、 一般市販されているものよりは、動物病院で販売しているものの方が安心、安全である可 能性は高いと思います。しかし、動物病院でも何を基準にサプリメントを選択、採用して いるかは気を付けてください。 関節については、各医薬品メーカーからもたくさんのサプリメントが出ています。成分も グルコサミン、コンドロイチン硫酸、非変性コラーゲン、ミドリイガイ、MSM、抗酸化成 分、ヨシキリサメ、サメ軟骨成分、必須脂肪酸、キチン、キトサン、キャッツクロー、デビ ルズクローなどなど、たくさんあります。グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲン成分 は、少なくとも低分子化されているものでないと吸収されません。 関節用サプリは、プラセボ対照や体内吸収分布率など、医薬品とほぼ同等の基準の製品も あります。犬用の市販品で、これらと同等の商品を現段階で私は知りません。 動物の医療保険に加入されている場合、症状があるのであれば、アデクァンやカルトロフ ェンという注射用医薬品があります。目的は同じです。 現在、動物病院で注目されているのが、モエギイガイ成分のサプリメントがあります。 8. 健康診断はどのくらいの間隔ですればいいのか? 皆さんはどのくらいで健康診断されていますでしょうか?愛犬は言葉をしゃべりません。 また、症状もかなり進行しないと飼い主さんにはわからないこともあります。そして、 講義でもお話ししたとおり、犬種は400 種類以上あり飼育環境も違うので、愛犬の正 常を知ることはとても大切で重要なことだと思います。 かかりつけの動物病院の考え方もあるかとは思いますが、一つの指標をお話しします。 生後から 2 歳までが、人でいうと約 24 年に当たります。その後は、1 年に人でいうと 4 歳 に相当すると考えられています。(大型犬は 7 歳とも)つまり、1 年に一回の検査は人なら 4 年ごと、半年なら 2 年ごとになります。 7 歳ぐらいまでは年一回(フィラリアの検査の時に)、それ以上(更年期以降)であれば、 年 2 回を推奨している動物病院が多いのではないかと思います。症状はなくても検査値に異 常がある場合は、3 か月に一回の検査をお勧めします。 健康診断の内容は、血液血球検査(CBC)と血液生化学検査、尿一般検査。画像検査(胸 部腹部レントゲンと超音波検査)を組み合わせてされるといいと思います。 9.口臭と体臭がするが仕方ないのか? カーペットなど舐めた後臭いがつく。取る方法がないか? 本来、犬に口臭はほとんどありません。体臭も、捕食動物ですから臭すぎると獲物に気づか れてしまいます。 もし口臭が気になるとしたら、一番の可能性は歯石と歯肉炎、もしくは口内炎です。口腔内 衛生、口腔内環境が悪いと口臭がします。歯石除去や歯肉炎・口内炎治療、口腔内環境の改 善をすれば口臭はほとんどなくなります。 カーペットを舐めたぐらいで臭くなるのであれば、かなり重症と思われます。 国際的獣医学的には、歯石、口腔内衛生のリスクのほうが麻酔のリスクよりも高いと考えら れています。歯石除去などは麻酔下で行います。 それ以外にも、内部寄生虫(特に回虫症)や糖尿病や肝炎でも、独特な口臭がします。 一度動物病院に行ってご相談されることをお勧めいたします。 体臭は、皮膚の脂漏や皮膚炎である可能性が高いです。先天的に脂漏(皮膚の脂分が多い) である犬種(シーズー、ヨークシャテリア、ビーグルなど)もいます。 よくあることとして、温水(35 度以上)でのシャンプーのしすぎ(通常は 1 か月に一回) や熱風での乾燥、食餌によるものです。犬の皮膚は、人の約 1/3の厚さで、pHは弱アルカ リです。 ですので、人用のシャンプーや犬用であっても弱酸性シャンプーは、犬の皮膚には強すぎ、 頻繁なシャンプーは、皮膚の細菌叢や皮膚バリアを狂わす原因になります。体臭がするので、 さらにシャンプーをするという悪循環に陥ることがあるので、動物病院で皮膚の状態を診察 してもらい、最適なシャンプーと方法をご相談してみてください。 10.出会った瞬間から!! これが大事!! をもう少し詳しく教えてください。 新しく犬を迎えたら、会った瞬間から、躾、トレーニングは始まっています。 出会った瞬間から、犬は相手を見ます。相手の態度や反応を見て、自分との関係や付き合 い方を自然に決めていきます。また、色々なチャレンジをしてきます。 特に子犬は、親や兄弟、仲間と遊ぶことでいろいろなことを学んでいきます。(社会化) そこで、自分の群れでの役割や関係を確認していきます。なので、新しい家族に向かえた時、 すでに犬との関係は始まり、初めの 1 週間で子犬との関係性は深いものになります。子犬は、 常に母犬や兄弟や群れの仲間からいろいろなことを学ぶのですから、家に来て一週間、自由 にしていたらどうなるでしょう。家に来た瞬間から、もう、躾・トレーニング・社会化は始 まっています。人間社会や家でのルールを犬に教えてあげなければ、犬は諭しても理解でき ません。していいことをご褒美を使って教え、犬にしてほしいことを、犬が自らするように 誘導してあげてください。安国先生が講義・実習でおっしゃっていたこと、「言葉はわから ないから、まず形から」を徹底してください。あなたがもしスワヒリ語でいろいろなことを 語りかけられ教えられたとして理解できるまでどのくらいかかるでしょうか? 言葉でほめ ても、怒っても犬には何のことかわかりません。 犬は、何歳からでもトレーニング・躾はできます。しかし、子犬で真っ白な状態のほうが楽 なことはわかっていただけると思います。 11.自分に合う動物病院の見つけ方 もう、皆さんは、かかりつけの動物病院をお持ちだと思います。まだの方は、ぜひ、かかり つけの動物病院を持ってください。 どんな動物病院かいいか。それは、人によって異なります。 口コミや本を参考にするのも一つですが、重要なことは 犬に対して・病気に対して・そし て何より経済・金銭感覚・価値観が近いということ。人の結婚と似ていると思います。 価値観が異なると長いお付き合いができなくなります。 いざというときに、トラブルになりかねません。 大きくて設備が充実しスタッフが大勢いる動物病院と、一切広告を出さず既存の飼い主さん やご紹介だけの患者さんだけを診療している動物病院と、どちらをかかりつけにしたいと思 われますか? また、今回私がお話した内容に対して違和感をおぼえられた方がおられるかしれません。 予防であったり、食餌であったり、躾であったり・・・それは、当たり前のことです。 どこがいい、こうでないといけないというより、ご自身が共感・納得できる動物病院を選ぶ ことが大切なのです。 今回、私がお話しさせていただいたことは”“現在考えられるもっとも科学的、理論的かつ 説明がつく(根拠がある)もの”です。しかし、人間は理屈や理論はわかっていても、感情 には勝てません。 ですので、たとえば、「しつけなんてする必要はない」「好きなものを与えればいい」「手作 り食で愛情をかけて」「自然が一番」「何かあったら」などなど、そう思われるのであれば、 自分と同じ考え方の動物病院を選ぶのが一番です。 かかりつけの動物病院 の選択基準として次を参考にしてください。 ・入院設備は?ホテル・一時あずかりをしているか? ・夜間看護があるか?重症看護・付添看護はしてもらえる?ICU設備があるか? スタッフが多数いて、入院設備があっても夜間は無人の動物病院は少なくありません。 ・トリミング・薬浴しているか? しつけ教室は?(動物病院内?外からの講師?) ・時間外や休診日の対応は? ・推奨ワクチンのメーカーや種類、ワクチンプログラム ・フィラリア予防薬はジェネリック?ブランド? 駆虫複合タイプかフィラリア予防のみ? ・ノミ・ダニ予防の薬は? お腹や外部寄生虫の定期駆虫は? ・価格について 予防費や診察料やホテル代を安価に設定し、入院や検査や手術・治療は高額に設定し ている病院が増えています。予防費や診察料は標準~高めでも、検査・手術・治療費 や入院費は抑えられている病院もあります。 (昔は犬の保険制度があまりなかったため この傾向が強かった。) なので、普段から治療費や入院費なども気にして、初診料や予防費だけで判断するの は避けてください。 ・院内設備は? 診察台、顕微鏡、血液血球計算機、血液生化学測定器、血液ガス測定器、血液凝固測 定器、レントゲン(デジタル or アナログ)、超音波診断装置、内視鏡、腹腔鏡、眼底 検査、眼圧計、スリッド、心電計、生体モニター、人工呼吸器、ガス麻酔器、自動点 装置、酸素室、酸素発生装置、ソフトレーザー治療器、レーザーメス、電気メス、電 気凝固、シールド機、超音波スケーラー、歯科器機、CT,MRI、炭酸泉、オゾン気泡水 など では、院内設備は整っている方がいいのでしょうか? どこまで、かかりつけの動物病院に、飼い主さんが求めるかだと思います。 ご自分のかかりつけの病院にはCTやMRIはありますか? 医療機器があるから、いい病院、技術があるとは限りません。また、機器の年数や機 器のグレードもまちまちだと思います。 むなしながらの診察台だけの動物病院だけ も、考え方によってはありです。 (下線の設備は当院にあるものです。参考になさってください。) ・食事指導の内容 ・サプリメントを奨励しているか ・漢方や中医療を取り入れているか ・リハビリテーション指導は? ・広告の規模は? ・診察する獣医師や動物看護師は、毎回同じ人がいいか、毎回違う人でもいいか ・診療時間は自分のライフスタイルとあっているか? ・予防重視、治療重視、専門色が強い、オールラウンダー、昔ながらの“町医者”か? 100の動物病院があれば、100の価格と100の動物に関する考え方があります。 自分の目と耳で確かめて、信頼できる先生を探してください。 最新の治療と、最良の治療と、適切な治療は 必ずしも一致しないことをも知っておいてく ださい。治療はすべて、飼い主さんも参加するものと思ってください。 ですので、治療の良しあしもさることながら、考え方やコストを十分に相談できる状態にしてお くことがかかりつけの動物病院 を持つうえでじゅうようなことだと考えます。 生後〇ヶ月では~を注意して育てよう。〇○才になったらこういうことをしよう 別紙表を参考にしてください。 好発病気についての予防法 どの犬種も、食餌性アレルギーや犬アトピー性皮膚炎や膿皮症の好発犬種です。 食餌性アレルギーの予防は、 色々なものを与えない(特に市販のおやつ、ジャーキー、乳製品、野菜など) 動物病院の処方食と同等レベルの、単一蛋白、単一炭水化物が主原料のフードを選ぶ (たとえば、米&魚肉、ポテト&獣肉(牛以外)、コーン&鶏肉など 子犬の時から、食餌の原料の制限を行う(特に、フレンチブルドック、ウェスティ、シバ) 犬アトピー性皮膚炎・膿皮症の予防は、 動物病院が推奨する低刺激・低アレルゲンシャンプーで、25~30 度までの水~微温水で定 期的にシャンプーし、皮膚のチェックをする。 良質の必須脂肪酸(ω3、ω6、リノレインαなど)をバランスよく与える。 耳のたれた犬種や柴、シュナウザー、フレンチブルは外耳炎が好発します。 定期的な耳の観察、洗浄で、早期発見、耳健康管理をして下さい。 股関節形成不全は、大型犬だけでなく小型犬も好発しています。 予防は、とにかく交配させないこと。定期的レントゲン検査を受けて、内科維持療法か手術 を。去勢・避妊手術の時などに、股関節のレントゲンを撮ることをお勧めします。 高カルシウムの食餌やサプリメントを避ける。(食事の Ca 含有量は1%以内のものを) 小型犬は、後頭孔形成不全・環軸不安定症も多いのですが、鎮静下のレントゲン検査が必要で す。後頭孔形成不全は予防・治療法がありません。慢性的なてんかん発作が起きることがあ ります。環軸不安定症(環軸靭帯形成不全)は、頸椎圧迫による疼痛、麻痺、筋肉の緊張な どがあります。頸椎コルセットにより軽減することが可能です。治療は外科手術になります。 網膜萎縮症、ドライアイ、涙膜不安定症も、多い病気ですが、見過ごされています。網膜萎縮 症は遺伝子疾患で予防法はありません。アスタキサンチンやルテイン、VA/VE、など、抗酸 化作用のあるサプリメントで進行をおさえられる可能性が言われています。ドライアイや涙 膜不安定症は、軽度な場合はヒアルロン酸の目薬で軽減、管理できます。重度の場合は、特 殊な目薬が必要になります。 僧房弁閉鎖不全症(僧房弁粘液種を含む)も多い疾患です。中高年からが発症することが多く、 早期発見早期介入することにより、進行や症状を軽減させることができます。なるべく早く 気付いてあげる、検査で見つけてあげることが大切です。 Q&A 1. ドッグフードについて 同じフードのままでいいか?あきないか? メーカーをかけて違うフードを与えたほうがいいか 信用できるドッグフードであれば、同一メーカー・同一銘柄を続けること を推奨します。 食事量の最適化とは? 食餌+間食(おやつ等)はどの程度までOKか? 体重管理のため、ドッグフードの量は? ドッグフードの袋に書いてある給餌量を確認してください。 おやつは基本的にはいりません。フードを間食と使うのがベストです。 量はカロリー換算でフードの 10%以下をめどにしてください。その分、フードの量を減ら してください。 ご褒美・間食はあくまで、特別なもの。 間食・ご褒美が日常にならないようにしてください。ただあげたいから、無条件であげる ということはお勧めできません 豆腐、キャベツ、ブロッコリーの茎 を与えているがどうか。 人の食べるものをあげるのはお勧めしません。 難治性の皮膚病の原因が、野菜による食餌アレルギーであったことがあります。 豆腐は、従来製法で作られた豆腐なら許容できますが、簡易製法・大量生産の商品はお勧 めしません。キャベツは、フランスでは犬には与えてはいけない食事の一つです。急性の 毒性はありませんが、慢性毒性として甲状腺機能低下症を引き起こす可能性が示唆されて います。ブロッコリー自体は野菜の中では栄養の宝庫といわれますが、ゆでても焼いても、 犬が消化吸収されることはありません。ウンチを確認してみてください。 飼い主さんが与えなければ、犬はそれを知り、食べることはほとんどないはずです。 また、 「犬とっていいもの、バランスがいいものを考えている」といわれる方が多いですが、 人の頭の中での勝手な思い込みであり、きちんとした裏付けがない場合がほとんどです。 おやつは、犬のためでなく飼い主さん満足を満たすものにすぎません。 2. プラセボ、ノーセボについて詳しく。 プラセボは疑似薬効果といわれています。 暗示効果の一つです。 効果のない薬も、思い込むことにより効果が発揮されるというものです ノーセボは、全く反対の現象です。 思い込みが悪い方に出てしまうということです。 疑似薬に出るはずのない副作用を説明すると、実際に副反応が出てしまうというものです。 3. 去勢手術・避妊手術について 去勢手術の時期は? 避妊手術はしたほうがいいのか? 去勢(精巣・睾丸摘出)と避妊(卵巣子宮全摘出)はすべきです。 時期は、獣医師によって異なる場合があります。以下のことを参考にしてください。 世界基準の獣医学的には、現在は、生後 5 か月以内の早期手術が推奨されています。 日本で一般的なのは、発情前の 6 か月前後をお勧めされる場合が多いと思います。 しかし、生後 6 か月以降でないとだめ、生後 8 か月以降、1 歳以上、1 歳 2 か月ぐらい、 発情後、大人になってからと説明される先生もおられます。 去勢・避妊手術をする意味はなんでしょう。行政や一昔前の目的は繁殖防止です。 現在では、問題行動予防、繁殖防止、疾病予防、マナーの向上 が目的になっています。 発情前、すなわち生後 6 か月以内の睾丸および卵巣子宮摘出手術は、繁殖防止もありま すが、疾病予防と問題行動予防を主目的として行います。 4. 犬は寒がりか? 犬用の洋服は効果があるか。 犬が最も快適と思う温度は、10~15℃です。人では少し寒いぐらいがちょうどいいのです。 短毛種でも同じです。犬は寒い地方、やや高地が本来のすみかです。 つまり寒がりではありません。むしろ、暑さに弱いのです。犬に皮膚は汗をかきません。 洋服は犬にとって、100 害あって一利なしです。マラソンランナーにダウンジャケットを着 せるようなものだと思ってください。 ただし、レインコートや災害救助やボランティア活動や病気のために、機能的なジャケット を着せることはあります。 5. 11 歳の犬を飼っているが、もう一頭飼うと長生きをすると聞くが本当か? 正しくもあり、間違いでもあります。人でも若い人や赤ちゃんといると、若々しくなります。 刺激を受けるからです。だからといって、長生きするかどうかは不明ですが、刺激になり、 少し若返って見えるようになることはあります。気を付けなければならないのは、犬にも相 性があるということです。ですので、ただ若い犬・子犬を増やせばいいということではあり ません。犬種、性格もみる必要があります。 1 頭より 2 頭飼育のほうが、飼い主にとっても犬にとってもほとんどの場合いいのですが、 犬に割く時間、経済、飼育場所・空間をちゃんと確保できるかを検討してください。 11 歳であれば、介護問題、いろいろな健康問題が今後出てきます。そこに、子犬は 2 年間は時間を割いていただかなければなりません。 6. 動物愛護施設から 0 歳児の犬を譲り受け、6 か月は室内飼育し、その後外での飼育を考え ているが、外に飼育するときのストレスはあるのか? 犬は、群れの動物です。可能かなかぎり室内で飼われることをお勧めします。 外の環境がどのようなものかわかりませんが、外だからダメということではありません。 しかし、群れの中にいたものを突然外に放り出されて一匹にされてしまうわけですから、犬 は理解できないのではないでしょうか? 飼い主さんにとっての問題行動が起こる可能性は 高くなります。 屋内で共に生活することで、犬から受ける恩恵も多くなりますし、犬の健康状態や行動など の把握もしやすくなります。早期発見早期治療には欠かせません。 どうしても、外で飼わなければならないのであれば、今から少しずつ慣らすことが必要です。 室内飼育でも、留守番などで一匹に慣らさなくてはなりません。同じようにトレーニングし ていきます。室内でも室外でも、人がいるときにもサークル内で過ごす時間を作り、飼い主 への強い依存性を持たせないように(分離不安の防止)トレーニングしていきます。 7. 関節と目のサプリメントは使った方がいいのか? 市販のものと動物病院のものと違いがあるか? ダックス、プードルなど網膜萎縮症の素因を持つ犬種には有効なサプリメントであり、医 薬品ではありませんが、治療に使用することがあります。 人のサプリメント同様、注意するのはその成分の信頼性と含有量と吸収利用率です。 信頼できるメーカー銘柄を選択するのが無難です。一般市販されているものよりは、動物 病院で販売しているものの方が安心、安全である可能性は高いと思います。 関節については、各医薬品メーカーからもたくさんのサプリメントが出ています。成分も 多岐にわたります。グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲン成分は、低分子化されて いるものでないと吸収利用されません。関節用サプリは、プラセボ対照や体内吸収分布率 など、医薬品とほぼ同等の基準の製品もあります。犬用の市販品で、これらと同等の商品 を現段階で私は知りません。動物の医療保険に加入されている場合、症状があるのであれ ば、アデクアンやカルトロフェンという注射用医薬品があります。目的は同じです。 現在、動物病院で注目されているのが、モエギイガイ成分のサプリメントです。 8. 健康診断はどのくらいの間隔ですればいいのか? かかりつけの動物病院の考え方もあるかとは思いますが、一つの指標をお話しします。 生後から 2 歳までが人でいうと約 24 年に当たります。その後は 1 年に人でいうと 4 歳 に相当すると考えられています。(大型犬は 7 歳とも)つまり、1 年に一回の検査は人な ら 4 年ごと、半年なら 2 年ごとになります。 7 歳ぐらいまでは年一回(フィラリアの検査の時に)、7 歳以上(更年期以降)であれば、 年 2 回を推奨している動物病院が多いと思います。 症状はなくても検査値に異常がある場合は、3 か月に一回の検査をお勧めします。 健康診断の内容は、血液血球検査(CBC)と血液生化学検査、尿一般検査。画像検査(胸 部腹部レントゲンと超音波検査)を組み合わせてされるといいと思います。 9. 口臭と体臭がするが仕方ないのか? カーペットなど舐めた後臭いがつく。 取れる方法がないか? 正常な犬では口臭はほとんどありません。体臭もそれほど強いものではありません。 口臭の原因は、歯石と歯肉炎もしくは口内炎の可能性が高いです。口腔内の環境が悪いと 口臭がします。歯石除去や歯肉炎・口内炎治療、口腔内環境の改善をすれば口臭はほとん どなくなります。カーペットを舐めにおいが移るようならかなり重症と思われます。 国際的獣医学的には、歯石、口腔内衛生のリスクのほうが麻酔のリスクよりも高いと考え られています。歯石除去などは麻酔下で行います。 それ以外にも、内部寄生虫(特に回虫症)や糖尿病や肝炎でも、独特な口臭がします。 一度動物病院に行ってご相談されることをお勧めいたします。 体臭は、皮膚の脂漏や皮膚炎である可能性が高いです。先天的に脂漏(皮膚の脂分が 多い)である犬種(シーズー、ヨーキー、ビーグルなど)もいます。 よくあることとして、温水(35 度以上)でのシャンプーのしすぎ(通常は 1 か月に一 回)や熱風での乾燥、食餌によるものです。犬の皮膚は、人の約 1/3の厚さで、pHは弱ア ルカリです。 ですので、人用のシャンプーや犬用であっても弱酸性シャンプーは、犬の皮膚には強 すぎ、頻繁なシャンプーは、皮膚の細菌叢や皮膚バリアを狂わす原因になります。体臭がす るので、さらにシャンプーをするという悪循環に陥ることがあるので、動物病院で皮膚の状 態を診察してもらい、最適なシャンプーと方法をご相談してみてください。 10.出会った瞬間から!! これが大事!! をもう少し詳しく教えてください。 新しく犬を迎えたら、会った瞬間から、躾、トレーニングは始まっています。 出会った瞬間から、犬は相手を見ます。特に子犬は、親や兄弟、仲間と遊ぶことでいろい ろなことを学んでいきます。(社会化)そこで、自分の群れの中での役割や関係を確認して いきます。なので、新しい家族に向かえたその時から犬との関係は始まります。子犬は、常 に母犬や兄弟や群れの仲間からいろいろなことを学ぶのですから、家に来て一週間、自由に していたらどうなるでしょう。 なので、家に来た瞬間から、もう、躾・トレーニング・社会化は始まっています。人間社 会や家でのルールを犬に教えてあげなければ、犬は諭しても理解できません。犬にしてほし いことを、犬が自らするように誘導してあげてください。あなたがもしスワヒリ語で、いろ いろなことを語りかけられ教えられたとして理解できるまでどのくらいかかるでしょうか? 言葉でほめても、怒っても犬には何のことかわかりません。 犬は何歳からでもトレーニング・躾はできます。しかし、子犬で真っ白な状態のほうが楽 なことはわかっていただけると思います。 11. 自分に合う動物病院の見つけ方 どんな動物病院かいいか。それは、人によって異なります。 口コミや本を参考にするのも一つですが、重要なことは 犬に対して・病気に対して・そし て何より経済・金銭感覚・価値観が近いということ。人の結婚と似ていると思います。 価値観が異なると長いお付き合いができなくなるかもしれません。 また、今回私がお話した内容に対して違和感をおぼえられた方がおられるかしれません。 予防であったり、食餌であったり、躾であったり・・・それは、当たり前のことです。 どこがいい、こうでないといけないというより、ご自身が共感・納得できる動物病院を選ぶ ことが大切なのです。 かかりつけの動物病院 の選択基準として次を参考にしてください。 ・入院設備は?ホテル・一時あずかりをしているか? ・夜間看護があるか?重症看護・付添看護はしてもらえる?ICU設備があるか? ・トリミング・薬浴しているか? しつけ教室は?(動物病院内?外からの講師?) ・時間外や休診日の対応は? ・推奨ワクチンのメーカーや種類、ワクチンプログラム ・フィラリア予防薬はジェネリック?ブランド? 駆虫複合タイプかフィラリア予防のみ? ・ノミ・ダニ予防の薬は? お腹や外部寄生虫の定期駆虫は? ・価格について 予防費や診察料やホテル代を安価に設定し、入院や検査や手術・治療は高額に設定して いる病院が増えています。予防費や診察料は標準~高めでも、検査・手術・治療費や入 院費は抑えられている病院もあります。 (昔は犬の保険制度があまりなかったためこの傾 向が強かった。)初診料や予防費だけで判断しない方がいいと思います。 ・院内設備は? 院内設備は整っている方がいいのでしょうか? どこまで、かかりつけの動物病院に、飼い主さんが求めるかだと思います。 ご自分のかかりつけの病院にはCTや MRI はありますか? 医療機器があるから、いい病院、技術があるとは限りません。機器の年式、年数や機器 のグレードもまちまちだと思います。 ・食事指導やリハビリテーション指導、サプリメントや漢方や中医療を取り入れているか ・広告の規模は? ・診察する獣医師や動物看護師は、毎回同じ人がいいか、毎回違う人でもいいか ・診療時間は自分のライフスタイルとあっているか? ・予防重視、治療重視、専門色が強い、オールラウンダー、昔ながらの“町医者”か? 百の動物病院があれば、百の価格と百の動物に関する考え方があります。 自分の目と耳で確かめて、信頼できる先生を探してください。 最新の治療と、最良の治療と、適切な治療は 必ずしも一致しないことをも知っておいてく ださい。治療はすべて、飼い主さんも参加するものと思ってください。 治療の良しあしもさることながら、考え方やコストを十分に相談できる状態にしておくこと がかかりつけの動物病院 を持つうえで重要なことです。 12.生後〇ヶ月では~を注意して育てよう。〇○才になったらこういうことをしよう。 別紙表を参考にしてください。 13.好発病気についての予防法 ・どの犬種も、食餌性アレルギーや犬アトピー性皮膚炎や膿皮症の好発犬種です。 食餌性アレルギーの予防は、色々なものを与えない(市販のおやつ、ジャーキー、乳製品、野 菜など)動物病院の処方食と同等レベルの、単一蛋白、単一炭水化物が主原料のフードを選ぶ。 たとえば、米&魚肉、ポテト&獣肉(牛以外)、コーン&鶏肉など 子犬の時から、食餌の原料の制限を行う(特に、フレンチブルドック、ウェスティ、シバ) ・犬アトピー性皮膚炎・膿皮症の予防は、 動物病院が推奨する低刺激・低アレルゲンシャンプーで、25~30 度までの水~微温水で定期 的にシャンプーし、皮膚のチェックをする。良質の必須脂肪酸を与える。 ・耳のたれた犬種や柴、シュナウザー、フレンチブルは外耳炎が好発します。 定期的な耳の観察、洗浄で、早期発見、耳健康管理をして下さい。 ・股関節形成不全は、大型犬だけでなく小型犬も好発しています。 予防は、むやみに交配させないこと。定期的レントゲン検査を受け、内科維持療法か手術を。 去勢・避妊手術の時などに、股関節のレントゲンを撮ることをお勧めします。 高カルシウムの食餌やサプリメントを避ける。(食事の Ca 含有量は1%以内のものを) ・小型犬は、後頭孔形成不全・環軸不安定症も多い。 鎮静下のレントゲン検査が必要で、後頭孔形成不全は予防・治療法がありません。慢性的なて んかん発作が起きることがあります。環軸不安定症(環軸靭帯形成不全)は、頸椎圧迫による 疼痛、麻痺、筋肉の緊張などがあります。頸椎コルセットにより軽減することが可能です。治 療は外科手術になります。 ・網膜萎縮症、ドライアイ、涙膜不安定症 網膜萎縮症は遺伝子疾患で予防法はありません。アスタキサンチンやルテイン、VA/VE、など、 抗酸化作用のあるサプリメントで進行をおさえられる可能性が言われています。ドライアイや 涙膜不安定症は、軽度な場合はヒアルロン酸の目薬で軽減、管理できます。重度の場合は、特 殊な目薬が必要になります。 ・僧房弁閉鎖不全症(僧房弁粘液種を含む) 中高年からが発症することが多く、早期発見早期介入することにより、進行や症状を軽減させ ることができます。
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