日本道徳性心理学研究 Vol.20 2006 母親の育児ストレスと怒り 清水 嘉子 (長野県看護大学) The goal of this paper is to e xamine the anger of mothe rs caring for young child ren aged three to six years old us ing the State Trait Anger E xpression Inventory , as well as childca re stress and pain acceptance , and types of response. The results we re as follows: Childcare st ress value: 68.1 (item average 2.1); anger characteristics: 22.9 (item average 2.3); and anger expression: 54 (item average 2.3). A weak correlation (0 .293; p<0.01) was recognized between anger cha racteristics and anger e xpression. 54.1% of mothers felt that childca re is a rduous ; t hese feelings arose with a frequency of “every day” in 6.2% of cases and “2 -3 times per week” in 22.2% of cases. When these feelings arose, 62.6% of mothers directed their emotions at the child , with a frequency of “every day” in 13% of cases and “2 -3 times per week” in 28.8% of cases. In terms of response to the child, 78.2% of mothers said that they speak harshly. A signif icantly large numbe r of mothers who feel that childca re is arduous (p<0.01) had Row anger characteristics and anger expression, and a significantly large number of mothers who direct those feelings at the child (p<0.01) had high a nger characteristics. Amo ng the nine items describing childca re stress factors, however, a signif icantly la rger number of mothers who dire cted their anger at the children had low scores for “poor physica l health and vigor” in comparison to mothers with high scores. Ⅰはじめに まで Dembroski13) によるタイプ A 行動者に怒 全国の児童相談所において、2001 年に処理 した児童虐待相談は 23,274 件と前年度の 1.3 倍 となり、依然増加の傾向を示している。相談の 内訳では、身体的虐待がもっとも多く、ネグレ りの高い者が多いことが明らかにされている。 筆者による育児ストレスの実態研究4)ではスト レス時の母親の情動で「いらいらや怒り」とし て感じていることが 200 件(30.3%)と他の常 クトが増加傾向にあり、被虐待児の年齢構成で は 0-3 歳未満が 20%、3歳から学齢前児童が 30%で、あわせると全体の半数を占めている。 また実母による我が子に対する虐待が 60%と 道に比較してもっとも多く、特に子どもとの関 係に於いて母親の怒りが高まりを示した。しか し、育児している母親の怒りやすさや怒りの表 し方が母親の育児のつらさや子どもへの対応の 圧倒的に多く、経年的にも増加傾向にある中 で、育児に対する母親の心理的負担について注 目されている1)。このような現状にあって母親 の虐待に至る要因の解明と対策が課題となって 影響については検討していない。 育児ストレスに関連している要因として母親 の育児信念5)や夫の家事育児協力6について検討 している。本研究では、母親の育児のつらさや いる。 大渕ら2)は一定の刺激(他の人々や出来事) に対して攻撃的に反応する傾向を攻撃性と定義 し、怒りと敵意を攻撃性の本質を形成する内的 子どもへの対応を明らかにしながら、母親の怒 りやストレスとの関連分析から、母親の虐待に 至る要因解明の一歩としたい。この結果はより 多面的な母親への支援を検討する上での資料と 要素として位置づけている。攻撃性の本質のひ とつである「怒り」は健康との関連では、これ なろう。 - 33 - 日本道徳性心理学研究 Vol.20 2006 Ⅱ方法 4倫理的配慮 1調査対象 本研究の調査に先立ち、施設長に研究目的、 N市内の7カ所の幼稚園をランダムに選び子 方法、意義、守秘義務、研究の協力および協力拒 どもを預けている母親 500 人に配布し、協力の 否が可能であることを説明し、研究の協力への承 得られた 424 人のうち有効回答者 414 人を対象 諾を得ている。 とした(回収率 82.8%)。対象とした母親は、 施設長より母親へ本調査の説明の依頼文をもっ 両親がそろっているものとし、シングルマザー て行い、調査に協力すると意思表示した者のみ は対象から外した。調査用紙は園を通して配布 に、協力を依頼した。また、調査において特定の個 し、回収した。 人的情報が遺漏しないよう処理する旨(コード化し N市は人口 43 万人の都市で、都市部周辺に近 廃棄する)を調査依頼文に明記し、回答は本人の い園を対象としている。 選択に基づいて記入できるようにした。 2調査用紙 5分析方法 7) 母親の育児ストレス 33 項目尺度 と、鈴木/ 育児ストレス 33 項目は、4段階評定法にて 8)9 ) 春木らによる日本語版 STAXI 尺度 および育 得られた回答を「あてはまる」を4点から「あ 児のつらさ(つらいと感じる自覚と頻度)や母 てはまらない」を1点として合計値を算出し 親の子どもへの対応(つらいと感じたときに子 「育児ストレス」とした。さらに項目平均値お どもに気持ちをぶつける自覚と頻度、子どもへ の気持ちのぶつけ方)に関する質問紙を作成し た。育児ストレス尺度 7) については、内的整 よ び 9因 子 別平 均 値を 算出 し た。 日本 語 版 STAXI は、「特性怒り 10 項目」と「怒り表出 24 項目」に分けられ、4段階評定法にて得ら 合 性 、構 成 概念 の 妥当 性が 検 証さ れて お り (Cronbach's alpha0.91)、33 項目9因子(育 児に伴う不安感、夫の育児サポート、アイデン ティティー喪失に対する脅威、母親の体力体調 れた回答を「あてはまる」を4点から「あては まらない」を1として合計値を算出し「特性怒 り」、「怒り表出」とした。因子別項目平均値 を算出した。 不良、子どもに対するコントロール不可能感、 育児に伴う束縛感、育児に対する社会からの圧 迫感、子どもの発達に対する懸念、育児環境の 不備)によって構成されている。 高群および低群の分類は、「特性怒り」およ び「育児ストレス」は上下位 20%とした。 「怒り表出」の下位尺度(怒りの表出、抑制、 制御)および育児ストレス9因子別では、平均 日本語版 STAXI 尺度(鈴木/春木ら)8)9) に ついても同様に内的整合性、構成概念の妥当性 が 検 証 さ れ て お り ( Cronbach's alpha0.91 ~ 0.84)、44 項目3因子で構成され(状態怒り、 値 以 上と 平 均値 未 満と した 。 統計 的分 析 は windows 版 SPSSversion11.5 統計ソフトによる 相関およびt ,χ2 検定を行った。 特性怒り、怒り表出)ている。本研究では、先 行研究4において怒りの状態について検討して いることから、「特性怒り(パーソナリティー 特性としての怒りやすさの個人差を示す-10 Ⅲ結果 1対象の属性 対象とした母親の年齢は平均 35 歳(最小 26 歳、最大 45 歳)、子ども数は平均 2.2 人(最 項目)」および「怒り表出(怒りを他人や物に 向ける傾向-24 項目)」を用いた。怒り表出 は次の3つの下位尺度に分類されている。「怒 りの表出(怒りを表出しがちか抑制しがちかの 大 5 人、最小 1 人)、核家族が 72.5%であっ た。 2母親の育児ストレスと怒り 育児ストレス(33 項目合計値)は、68.1(項 個人差を示す-9項目)」、「怒りの抑制(怒 りをうちにためる傾向-8項目)」、「怒りの 制御(怒りが外に出るのを押さえようとする傾 向-7項目)」である。 目平均値 2.1)であった。表1に示されるよう に「育児環境の不備」がもっとも高く、「不可 解な事件に巻き込まれるか不安」、「就労して いる母親の社会や行政の配慮が足りない」が項 3調査期間 平成 15 年1月上旬~1月末に調査を行った。 目平均値が3以上であった。ついで「育児に伴 う束縛感」や「アイデンティティー喪失に対す 34 日本道徳性心理学研究 Vol.20 2006 る脅威」が高かった。 との関連では、ストレス因子9項目中「育児に 「特性怒り」は 22.9(項目平均値 2.3)、 対する束縛感」の高い母親は、「怒りの制御」 「怒り表出」は 54.0(項目平均値 2.4)であっ の高い母親が低い母親に比べ有意(p<0.05)に た。「怒り表出」の下位尺度分類による項目平 高く認められ(表4)、「母親の体力体調の不 均では「怒りの表出」は 2.08、「怒りの抑制」 良」の高い母親は、低い母親に比べ怒りを子供 は 2.25、「怒りの制御」は 2.47 で、「怒りの にぶつけることが有意(p<0.05)に高く認めら 制 御 」が も っと も 高く 、つ い で「 怒り の 抑 れた(表5)。 制」、「怒りの表出」はもっとも低かった。 「特性怒り」と「怒り表出」は低い相関 0.293 Ⅳ考察 (p<0.01)が認められた。 1母親の育児ストレスと怒り 2育児のつらさと子どもへの対応 育児ストレス値ではS県下3市(人口計35 育児が「つらいと感じる母親」は 224 人 万人)における調査(平成 12 年実施6))72.7 ( 54.1% ) 、 「 感 じ な い 母 親 」 は 150 人 (2.2)と比較すると 68.1(2.1)と低かった。 (36.2%)、無回答 40 人(9.7%)であった。 S県下3市に比較してN市は都市部であるこ つらさを感じる頻度では「毎日」が 14 人 と、S県下3市では対象である母親の子どもの ( 6.2% ) 、 「 1 週 間 に 2.3 回 」 が 50 人 年齢を0歳から6歳としたのに対し、今回は3 (22.2%)、「1~3か月に1回」が 80 人 (35.6%)、「過去に数回あった程度」は 81 人(36%)であった。 歳から6歳と乳児および1、2歳児が除かれて いたこと、また幼稚園のみの調査のため母親は 仕事をしていてもパート程度の専業主婦であ つらいときに「子どもに気持ちをぶつける」 が 259 人(62.6%)、「ぶつけない」が 65 人 (15.7%)であった。つらい気持ちをぶつける 頻度は「毎日」が 13 人(13%)、「1週間に り、年齢が平均 35 歳と高かったことが反映さ れていると解釈された。S県下3市と比較する と育児ストレス項目平均値では 0.1 低く、合計 値で 4.6 低かった。さらに平均値以上を示して 2.3 回」が 75 人(28.8%)、「1~3か月に1 回」が 101 人(38.8%)、「過去に数回あった 程度」は 71 人(27.3%)であった。 子どもへの対応(気持ちのぶつけ方)では いた項目は、「子育てしながらでは就職がな い」、「社会から取り残された気持ちになる」 のアイデンティティー喪失への脅威や「漠然と した育児不安」、「現実との間のギャップ」、 「きつい口調になる」が 259 人(78.2%)、 「意地悪や嫌がらせをいう」が 28 人(8.5%) を 占 めて お り言 葉 によ るも の を合 わせ る と 86.7%と高かった。数は少ないが「たたくなど 「子どもが思いどおりにならない」などの育児 への苦手意識や、子どものコントロール不可能 感であった。専業主婦が多く平均年齢が高かっ た こ とか ら 「子 育 てし なが ら では 就職 が な の暴力をふるう」が 36 人(10.9%)、「世話 をしない」が7人(2.1%)、その他が1人 (0.3%)であった。 3母親の育児ストレス・怒りと育児のつらさと い」、「社会から取り残された気持ちになる」 のアイデンティティー喪失への脅威や「漠然と した育児不安」、「現実との間のギャップ」が 生じていた。また自我の芽生えによる第一反抗 子どもへの対応 育児のつらさと怒りとの関係では、「育児が つらい」と感じている母親は「特性怒り」や怒 り表出の下位尺度である「怒りの表出」、「怒 期や子どもの活動範囲が広くなる3歳から6歳 までの子どもの子育てであることから「子ども が思いどおりにならない」などの育児への苦手 意識や、子どものコントロール不可能感が高か りの抑制」の高い母親に有意(p<0.01)に高く (表2)、子どもに「つらい気持ちをぶつける 母親」は「特性怒り」が低く、怒り表出の下位 尺度である「怒りの表出」の高い母親に有意 ったと考えられた。特性怒りは鈴木ら8による K県内の病院に通院する循環器疾患を持つ対象 が 一 般人 よ り「 特 性怒 り」 が 高い とさ れ た 18.28-18.96 値に比べ、3 ポイント程高かった。 (p<0.01)に高く認められた(表3)。育児ス トレスと怒り、育児のつらさや子どもへの対応 また「怒り表出」の下位尺度では怒りを表出 するよりも怒りを制御または抑制する母親が多 35 日本道徳性心理学研究 Vol.20 2006 かったことから、母親の怒りを内にためたり、 傾向にあるといえる。また母親が「つらい気持 外に出るのを押さえていることが明らかとなっ ちを子どもにぶつけること」は、パーソナリテ た。この結果が育児期にある母親の特徴として ィーとして怒りにくい傾向にあるにもかかわら いえるのかについては、様々な対象に対する調 ず、怒りを外に表してしまっている。つまり、 査が必要であろう。 子どもにつらい気持ちをぶつけることには、パ 2育児のつらさと子どもへの対応 ーソナリティーとしてよりも、他の要因が関係 今回の結果はS県下3市より低く、育児スト していると考えられた。子どもの性質や子ども レスの項目平均値では「ほとんどあてはまらな との関係性、その他のストレス時の対処状況や い」が多いにもかかわらず「育児がつらい」と 支援者など考えられるがこれらの関係の解明は 受け止める母親が 30%弱認められた。またそ 今後の課題である。 の気持ちを「子どもにぶつける母親」が 60% さらに、育児ストレス因子9項目中で、「母 強おり、その頻度が毎日から1週間に 2.3 回が 親の体力や体調の不良」の母親が「子どもにつ 40%強と比較的高い結果となった。S県下3市 らい気持ちをぶつけること」に関係しており、 では、育児のつらさや子どもへの対応に関する 特に体力や体調不良のストレスが高い母親ほど 同様の調査を行っていないためN市の結果が母 怒りをぶつけていた。健康面で問題のない母親 親の一般的傾向を示しているかについての分析 は子どもにつらい気持ちをぶつけない傾向にあ は難しい。しかし今回の結果から、母親は育児 の場面で、「子どもにつらい気持ちをぶつけて いる」という実態が浮き彫りになったといえ った。このことから子どもに気持ちをぶつける という行為は、母親の健康状態が不良であるこ とが前提としてあると考えられた。母親の体力 る。調査用紙の自由記述欄に、「夫と子どもに 対する怒りは他の人に対するものとは違う」と いう感想を、多くの母親が記述していることか らも裏付けられる。母親にとって夫や子どもは や体調をよりよく保つための周囲の理解と協 力、病気や精神状態に関する把握は重要なこと である。 また、「育児に対する束縛感」のストレスの高 心を許せる存在であるとともに、自分の気持ち をぶつけやすいもっとも身近な存在であること が明らかになった。そして母親の気持ちをぶつ ける身近な存在であるがゆえに陥りやすい母と い母親は怒りを制御する母親に高く認められて おり、怒りを外に出ないようにすることで育児 の束縛へのストレスを高めていることが示唆さ れた。母親の適度な怒りの表出のコントロール 子の問題があるのだと考えられた。 3母親の育児ストレス・怒りと育児のつらさと 子どもへの対応 育児のつらさと怒りとの関係では、「特性怒 がよりストレスを高めないことに関連している と考えられる。 一般的に知られている虐待の要因には、「親 が幼少時に虐待か拒否をされて育ってきた」、 り」および怒り表出の下位尺度である「怒りの 表出」や「怒りの抑制」が高い母親は「育児を つらい」と感じていた。藤井ら10) による神経 症傾向の強いものほど怒りやすい傾向にあるこ 「 生 活上 の スト レ スが あり 危 機に 陥っ て い る」、「困ったときに助けを求められる援助者 がいない」、「親にとって育てにくい児であ る」1) となっている。親にとって育てにくい児 とから、育児をつらいと感じやすいことが考え られ、母親へのこうした受け止めに対する援助 の必要性があると考えられた。 日頃から怒りやすい傾向にある母親が怒りを表 との関係において子どものしつけがエスカレー トして虐待に至るケースが報告されている。ま た、子育て以外のストレスや怒りが、弱者であ る子に向かってしまう日常性における親の異常 したり、うちにためることでストレスを発散ま たは我慢しており、発散や我慢によって母親は 「育児をつらい」と感じることに関連している ことが示唆された。また「特性怒り」が低く、 性をはらんだ心理状態はパーソナリティーとし ての怒りやすさより、怒りを外に表しやすい親 子の関係が母親の体力や体調、生育歴など複雑 な要因が絡み合ってエスカレートしていくので 怒り表出の下位尺度である「怒りの表出」の高 い母親は子どもに「つらい気持ちをぶつける」 はないかと考える。 情動の体験は大脳辺縁系で形成され、その活 36 日本道徳性心理学研究 Vol.20 2006 動水準は原始感覚、すなわち内臓からでるイン パルスによって大きく左右されており、空腹は 参考引用文献 1厚生労働省.平成15 年度厚生労働省白書:活力ある高齢者像 大脳辺縁系を異常に興奮させるとされている と世代間の新たな関係の構築.2003,88-186. 11) 2 大渕憲一・北村俊則・織田信男他.攻撃性の自己評定法:文 視野に入れて、母親の怒りの発生の時間帯や食 献展望季刊精神診断学,5;443-455,1994. 生活、内分泌ホルモン周期に関係した体調との 3 Dembrosk ,T,M .,&Costa,P,A. Coronary-prone 関連分析が課題といえる。 behavior:Components of the Type A pattern and hostility . 。今後は空腹や痛みが怒りを誘発することを Journal of Personality,55;211-235.1987. Ⅴ結論 4 清水嘉子. 育児ストレスの実態研究:ストレス情動反応を中心 1.育児ストレスは 68.1、項目平均値は 2.1 にして.母性衛生,44(4);372-378,2003. とS県下3市に比べストレス値、平均値ともに 5清水嘉子.母親の育児に対する信念と育児ストレスの関係.小 低かった。 児保健研究 ,62(5);558-568,2003. 2.「特性怒り」項目平均値 2.3 および「怒り 6清水嘉子.母親の育児ストレスと夫の家事育児協力の関係.子 表出」項目平均値 2.4、特性怒りは 22.9 と循 どもの虐待とネグレクト.2003,5(2),396-406. 環器疾患を持つ対象者の値に比べ高かった。 7清水嘉子.育児環境の認知に焦点を当てた育児ストレス尺度の 3.母親は怒りが外に出るのを押さえる傾向に 妥当性に関する研究.日本ストレス科学学会誌,16(3);46-5 あり、また怒りを他人や物に向けるよりもうち にためる傾向が認められた。 4.「育児がつらい」と感じる母親は 54.1%、 6,2002. 8鈴木平・春木豊.怒りと循環器系疾患の関連性の検討.健康心 理学研究,7;1-13,1994. その頻度は1週間に 2、3 回が 22.2%であった。 5.つらいときに「子どもに気持ちをぶつけ る」母親は 62.6%を占めその頻度は1週間に 2、3 回が 28.8%であった。子どもへの対応では 9鈴木平.根建金男・春木豊.怒り尺度の標準化.日本健康心理 「きつい口調になる」や「意地悪や嫌がらせを いう」が 86.7%であった。 6.育児がつらいと感じている母親は「特性怒 り」および「怒りの表出」、「怒りの抑制」が 11 仙波純一.第8章脳と情動脳と生体制御.放送大学教育振興 学会11回大会発表,1998. 10 藤井義久.場面ごとの怒りの調査票の開発と精神・身体健康 との関係.行動医学研究,7(2);97-103,2001. 会 1 9 9 8 . 12 G.マンドラー/田中正敏.津田彰監訳.情動とストレス.誠信 書房,1987. 高い母親に有意に高かった。 7.「特性怒り」が低く、「怒りの表出」の高 い母親は育児へのつらい気持ちを子どもにぶつ けることが有意に高かった。 8.「体力体調不良」に対するストレスの高い 母親は低い母親に比べ、子どもにつらい気持ち をぶつける母親が有意に高く、「育児に対する 束縛感」のストレスが高い母親は「怒りの制 御」の高い母親に有意に高かった。 Ⅵおわりに 本研究のためにご尽力頂いたN市の幼稚園教 諭田村正子様、そして調査にご協力いただいた お母様方に感謝致します。 なお本論文は、第19 回ストレス科学学会で発表したものに 加筆したものである。 37 日本道徳性心理学研究 Vol.20 2006 表 2 育児のつらさと特性怒り、怒りの表出、 抑制 育児のつらさ 怒り 特性低群 特性高群 表出低群 表出高群 抑制低群 抑制高群 育児はつらいと感じる 50** 72** 87** 129** 108** 111** 育児はつらいと感じない 47** 24** 81** 65** 98** 47** 怒り特性高 群、低群 **p<0.01 上位下位 20 怒りの表出、抑制高群、低群 % 未満 平均値以上、平均値 表 3 育児のつらさのぶつけと特性怒り、怒りの表出 子どもへの対応 怒り 人 怒り 怒り 特性低群 ** 子どもにつらい気持ちをぶつける 52 子どもにつらい気持ちをぶつけない 78** **p<0.01 群 27 制御低群 150** 39** 23** 100 9** 制御高群 * 108* 88* 縛感 低群 106* 育児ストレス高群、低群 怒りの制御高群、低群 平均値以上、平均値未満 表 5 育児ストレスと子どもへのぶつけの関係 子どもへのぶつけ ** 均値未満 85 人 ぶつけない ぶつける 高群 32 * 162* 低群 32* 95* 育児ストレス高群、低群 *p<0.05 群 ** 下位上位 20% 高群 母親の体力体調不良 群 人 怒り 育児ストレス 表出高 怒りの表出高群、低群 育児に対する束 *p<0.05 表出低 怒り特性低群、高群 表 4 育児ストレスと怒りの制御 育児ストレス 特性高 平均値以上、平均値 未満 - 38 - 平均値以上、平
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