? THECUTTINGEDGE いくつのギアがあ れ ば 未 来は 動かせるのか Published by ANGER MACHINING GmbH THECUTTINGEDGE 終わりなき変化への挑戦によって 支えられた成功 一九 八二年の眼 鏡 製 造 から エンジンブロックのダブルワー ク 加 工まで。 時 代 を 超 え、様 々なアプリケ ーションに共 通 す るのは 精 密 さと 機 械 原 理 。 2 トランスファー・コンセプト技術は 従来のマシニングセンターの代わりとなるか ? グローバル競争によるプレッシャーは日本にも影響を与えています。 読者の皆さまへ るのです。ANGER 社のトランスファーセンター技術を導入すること で、従来のマシニングセンターよりも部品 1 点あたりの製造費を低く 近年の我社の発展は、変化から始まったものです。ANGER 社では、 抑えることができます。さらに、加工時のエネルギー費の削減、面積 クラウス・ディルンベルガー Page 4 ZFトランスミッション の製造 インタビュー:ヨアヒム・アイゼンフット ANGER MACHINING の 成功の秘密は 日本にあった パーツという芸術 構成部品を違う角度から見る Page 8 Heinrichshöhe カッセル近郊にある フォルクスワーゲン社工場 Page 10 方向へ舵を取り、ソリューションとなる新しい技術を探求するという伝 します。 将来の経済性は、購入する製造機器の価格ではなく、その機器 の総所有コストと製品 1 ユニットあたりの最低製造費によって左右 歴史を通して技術開発を続けることで、複雑な自動車用精密部品 される場合もあるのです。 向けのソリューションを生み出すことに成功しました。ANGER 社は 1982 年の設立以来、30 年にも及ぶ絶え間ない変化の歴史を築 ANGER 社はヨーロッパとアメリカ合衆国で技術開発のリーダーとし き上げてきたのです。それが、我社が生き残るための唯一の道でし ての地位を獲得しました。今後、日本にも我社のノウハウを提供で た。今日では、連続生産での金属加工に革新的なソリューションを きればと考えています。現在、日本ではまだ複数ワークの同時加工 提供するブランドとして国際的に認められています が定着していないため、 トランスファーセンターの需要は大きくはあり ません。販売、サービス、スタッフの教育などに対する投資に加え、 ディートマー・バーン 機械製造のトップ入りを果たした ANGER 社 トランスファーセンター技術を日本で要求される品質と市場基準に 適応させるのは大きな挑戦です。 創立記念日を目前にし、 これまでの発展の歴史を振り返れることは私 たちにとって大きな喜びです。努力を積み重ねることによって自動車 め、 さらに新しいお客さまを獲得してこられたのだという事実が、喜び 現在、オーストリアにある初期の本社を技術情報センターにするとい なのです。 う戦略を進めています。加工プロジェクトに利用できる莫大な加工 業界のリーダーと共に歩んでこられたことは、我社の誇りです。 プロセス情報やエンジニアリング力を、お客さまはプラットフォームを ANGER 社に信頼を置いてくださるお客さまに、この場を借りて感謝 申し上げます。 機械技術者としての 幸福 大学との提携。研究開発 未来への備え 現場に求められる ツールを これがトランスファー センターだ ANGER HCXトランスファーセンター概要 Page 18 実際の機械製造、調達、自動化、具体的なプログラミングはお Page 20 本誌「 2013」がお客さまに興味深く読んでいただければ幸いです。 ます。2006 年以来、経済危機を迎えた 2009 年にも年間平均成 皆さまのご支援とご意見に感謝いたします。 長率 30% を維持してきました。 2011 年には 50%という高い成長率を達成しています。揺るぎな い利益と資本構成は、ANGER 社の革新的戦略によって支えられ ています。工場設備の力強い拡大と近代化を行うことで、継続的な ANGER MACHINING GmbH 成長を可能にする環境を整えたのです。現在 150 人を超えるまで 総支配人・経営責任者 になった社員は継続的に教育研修を受けており、そのレベルは回 を増すごとに上げられています。 慎重な成長管理と組織やプロセ スの継続的改善により効率性を向上させ、経営チームや社員の革 新力と創造力を高めることができました。 2011 年にはオーストリア政府から技術革新賞を、2012 年には 年収 180 億ユーロを誇るドイツトップのトランスミッションメーカー、 2013 年、最先端の機械加工技術が日本上陸 ANGER 社では、もっと効率的に、もっと柔軟に、もっと環境にやさしく、 もっと早く製品をお届けできるよう努力を重ねてきました。 受賞技術 高品質のトランスミッションとエンジン部品を中心にした ANGER 2012 年 ZF サプライヤー賞受賞 2011 年政府の技術革新賞受賞 Page 22 社の戦略は今後も発展を続けていきます。この高難度分野での我 社の数々の導入成功例は世界中から注目を集め、現在はオートマ チック・トランスミッション用のバルブ制御ユニット、エンジンブロック、 シリンダーヘッド、ベッドプレート、 トランスミッションケースなど、パワー トレイン分野のインテリジェント部品向けに新しいコンセプトの開発 アントン・アンガー 将来への最適化 を進めています。 機械に刻まれ続ける名前 試験台でのエネルギー効率 能性があると考えています。日本は過去数十年間、効率的な製造 Page 24 機械メーカーとの協力によって実現されます。 ANGER社では 2013 年以降を見据えた確固とした基盤ができてい さわしい貢献ができるよう、今後も努力を続けてまいる所存です。 ANGER 社の柔軟な加工コンセプト Page 14 Page 16 介して世界中からご利用いただけるようになります。 客さまのご要望に応じて、別の拠点で開発パートナーや他の工作 最新動向 Page 12 トラウンの拠点を国際的な技術情報センターへ拡大 製造業界を牽引するお客さまのニーズに応え、信頼関係をより深 ZF からグローバルサプライヤー賞をいただきました。この栄誉にふ なぜ ANGER 社にとって日本が それほど重要なのか Page 6 当たりの生産性の向上においても他に負けない産業競争力を発揮 眼鏡用フレームを製造していた初期のモデルから始まり、社の Page 17 新しい技術を生んだアイデア 工業生産の生産性を継続して一歩ずつ前へ進めるために、新しい 統があります。 自らが創り出す機械をどう捉えるか 花が蜂に向かって 飛ぶ時…… 大量生産型の業界で、新しい考え方、新しい技術が求められてい 日本には、ANGERトランスファー・コンセプト技術が成功する可 技術における世界のトップとして活躍してきた国だからです。 ディートマー・バーン/クラウス・ディルンベルガー THECUTTINGEDGE の分の時 間とスペースを省くことができます。1 つ 1 つの花に集 中することができるため、作業が減り、働く時間も減ります。これが、 ANGER 社の HCXトランスファーセンターの基本的なコンセプトです。 このシステムは一般的にトランスファー・コンセプト技術と呼ばれてい ます。生産性向上ツールであるトランスファーラインにマシニングセ ンターの柔軟性を組み合わせ、論理的に展開させたのがトランス ファー・コンセプトです。柔軟性は製造業界でますます重要な要素 になってきています。2つの世界の良いところを組み合わせたコンセプ トだといえます。コンパクトで設置面積も小さく、工具の位置にワーク を移動させることで、無駄のない効率的な加工システムを実現します。 「間違いなく、将来はこの技術が基準になるでしょう」と、 ドイツ、ダル ムシュタット工科大学の著名な教授であり産業技術研究者のエー ベルハルト・アーベレ氏は言います。教授はこのコンセプトを「工具 だけでなくワークも動かす、 まったく革命的な技術」であると述べてい ます。80 年を超える機械製造の歴史において、移動されるのは常 に工具であり、ワークであることはありませんでした。そして今、アーベ レ氏が言うように、 この事実を利用してさらに費用効率の高いコンセ プトを作り出せるということを、機械業界やプロダクションプランナー に知らせる時が来たのです。 ANGER 社はまさにこれを実行したいと考えています。 ANGER 社ではさらに上の柔軟性と効率性を目指し、すでに自動 同じことを 繰り 返しているだけでは、 エイブラハム・リンカーン 新しいものは手に入 らない 車製造業界で数々のお客さまにご愛用いただいている完成された アーキテクチャーを有するHCX を進化させ、HCXchange コンセ プトを完成させました。HCXchange コンセプトには、2╳2 点までの 主軸とユニット交換を可能にする可変機構位置調節機能を採用し た工具交換システムを取り込みました。つまり、基本的なモデルに または 2 組搭載されています。 はダブル主軸が 1 組、 さらに、よく知られているANGER 社の強みを生かすこともできます。 複数の主軸が付いた主軸台を任意に組み合わせ、複数ワーク同 時加工、固定高周波スピンドルによる超高精密加工、タレット、工 具交換ユニットすべてを 1 つの機械室におさめることが可能になる のです。そしてこれらすべてを同時進行させることができます。工具 を固定してワークを移動することで、加工の最中に工具を交換する ことが可能になりました。別の主軸でワークを加工している間に、 もう 1 つの主軸の工具を交換するのです。このようにして、従来の機械 のように減速や加速時に主軸に大きな負荷をかけることなく、運転時 間を大幅に短縮することができます。 HCXchange の「change=変える、変化」とは、単に工具を取り 換えることだけでなく、システム内の位置を変えるという意味も含ま れています。変化とは、より効率的でより経済的な加工技術を生 み出すための一歩なのです。こういった理由から、このモデルは HCXchangeと名づけられました。 花を蜂に向かって飛ばせる 花を蜂に向かって飛ばせることができれば、蜂は飛ばずに済み、そ トランスファーセンター技術 4 THECUTTINGEDGE 世界一流の自動車ブランドの ZF トランスミッションを造る 6 その功績を支えるのが ANGER 社の加工技術とプロセスのノウハウです。 が、今日ではこれだけでは不十分です。そこで ZF が柔軟性 れまで 90∼95%といった数字でしたが、今日では 97∼98% と生産性を重視した新たな解決法を探していたところ、見つ にまで上昇しましたため、ZF はこの数年間で、より積極的な製 かった答えが ANGER 社によって開発されたトランスファーセ 造プランを立てられるようになりました。 ンターでした。アイゼンフット氏は指摘します―「特にバル ANGER 社にとって ZF グループは最も大規模で大切なク ブプレートやバルブハウジングの小領域加工にはそこが一番 ライアントの一つです。そしてこの関係は何十年にもわたって ZF は、4 つのトップブランドの高級モデル向けトランスミッショ イゼンフット氏は現在、8 速トランスミッションの BMW 5シリー 最適化を目指しています」とアイゼンフット氏は語ります。 「トラ また、1 つのモデルデザインのバリエーションの数が年々増え 重要な要素でした。以前 ZF では、マシニングセンター間を 続いてきました。アイゼンフット氏は言います―「一人の生産 ンを製造しているドイツの製造企業です。BMW、アウディ、 ズに乗っています。 1つ前のモデルは 6 速でした。 こういった車 ンスミッション開発においては、継続的に性能を向上させなが てきているため、製造工程で用いられる機械の柔軟性がもう1 連結することで柔軟性をもたせるトランスファーラインに力を入 技術者として―ちなみに私はこの業界に入って 25 年目にな ジャガー、レンジローバー、 フォルクスワーゲン、マセラティをは を持つドライバーにとっては、6 速と8 速の違いはほとんど気づ ら同時に製造方法の最適化も行うことで、製造コストの最適 つの重要な要素となります。現在の 8 速トランスミッションは 2 れていましたが、 このように連結させたマシニングセンターでは りますが―技術者はそれぞれのコンポーネントのコンセプト じめ、他にも多くのモデルに使われています。ヨアヒム・アイゼ かない程度ですが、二酸化炭素排出量と燃費には大きな差 化を実現しています」。 種類の標準タイプに加え、四輪駆動タイプとハイブリッドタイプ そしてそれを実現 生産性が悪く、今日求められるレベルの製造コストを達成でき を考えようとするものです。最適な形は何か、 ンフット氏は、 ドイツ西部のザールブリュッケンにあるZF の工 が出ます。同じ車両クラス、基本的に変わらないエンジン出 も作られています。ZF 工場では 6 速トランスミッションも製造さ ません。ANGER 社のトランスファーセンターはトランスファー するには何が必要か。これは機械のコンセプトにも当てはまりま 場で乗用車向けドライブエンジニアリングのプロダクションプ 力でありながら、現在の BMW 2000 ㏄ は 100 ㎞ あたりの れており、中国にある工場では 5 速トランスミッションが製造さ ラインの論理と柔軟なマシニングセンターの論理を合わせも す。ANGER 社との付き合いはかなり長く、アメリカにいた時代 ランニング責任者として活躍しています。 燃費が少ないのです。ZF のトランスミッション製造技術は世 れています。 ち、高い生産性を維持しながら小領域での高い柔軟性を実 から知っていました。ANGER 社の機械は ZF の製造プロセス 現しました」。 の一部としてすでに 10 年以上活躍しており、私たちが求める 「我社の技術は、エンジンの特性を最大限に引き出すこと 界でもトップクラスとして知られ、一流の自動車の一流のトラン ができます。8 つ、 または 9 つのギアを用いることで、 どんな運転 スミッションを製造・開発していますが、 それでも他のメーカー 状況でもエンジンの特性曲線に近づけることができます。つまり と同じように厳しい市場競争を勝ち抜かなければなりません。 エンジンの燃費が、適切な出力を達成するために必要な最 「だからこそZF では、様々なトランスミッションタイプを開発 低限のレベルに抑えられ、排気量を削減できる範囲内で運 する中で部品の最適な製造も行えるよう、常に製造システムの 転を行うことができるのです。ギアシフトはほとんど体感できない ほど精密に作られており、常に最適なギアにシフトします」。ア 写真: Jürgen Gross 精度:1/1000 mm ANGER 製機械― 柔軟性と高生産性 ここで重要になるのが ANGER 製機械の高効率性と信頼 結果を常に提供してくれています」。 性です。ザールブリュッケンの ZF 工場では、製造機械は三 ここ数年で部品の精度はますます高くなり、製造技術の精度 交代シフトで運転され、工場は土日も含めて毎日 24 時間稼 も飛躍的に進化しました。ZF のバルブプレートやハウジング 働しています。異常を早期に検知するために、製造プロセスに は、ザールブリュッケンの全長が 1 ㎞近くもある工場で製造さ ようになりました。当初はマシニングセンターと数量ベースのト はセンサーが設けられ、機械全体や主軸が正常に動作して れています。直径ゲージがノズルマンドレルを用いて加工中 近年、大量生産における柔軟性を重視する傾向がみられる ランスファーラインを組み合わせて用いる例が増えていました いるかを常にモニターしています。製造機の稼働可能率はそ の径位置や質量の計測、特定を行います。 8 THECUTTINGEDGE 2011 パーツという芸術 ここでご覧 いただいているのは 彫刻作品 です 。現代美術館 で 台 座 の 上に展示されているものと同じように立派 な 彫刻 なのです 。 ウィーン出身 の 写真家、ベルンハート・アンゲラー 氏 もこれと同 じ考えのもとにこの 写真を撮影しました。 「私たちは自分たちの 製造する機械 ANGER 社でも同じです。 に誇りをもっています 」とディートマー・バーン氏 は語ります 。 「そ してその 機械 のもっとすごいところは、私 たちのクライアントが 求めている部品をつくり出 せることなのです 」。 ANGER 社 の 理念については『現場で求められるツールを 』で もお 読 みいただけます 。 このようなアート作品 をあまり見慣 れていない 方 へ: 『左手に はギアボックスハウジング、右手には 8 速オートマチックトランス ミッションの 要となるバルブがございます ……』 「 パーツという芸術」はすべての 部品 にふさわしい 言葉 です 。 見た目だけでなく、本当に特別 な 一品 なのですから。 THECUTTINGEDGE 10 1997 Heinrichshöhe 夕日を 浴 びて 立っているのは 産業界 のヴィルヘルムスヘーエ 城ともいえる建物。ハインリヒ・ノトルホフによって 購入 され たこの 建物 は、一目 で 持 ち 主 がわかります ― フォルクスワー ゲン。 「北端棟」と呼 ばれる建物 に 設置 された 屋上 サインは、 幅 190 m、高さが 5 m もあります 。 カッセル 近郊 の 丘 の 上にあるこの 工場 は、もともとは飛行機 用 のエンジンを 作っていました。1936 年 にヘンシェルのため に建設され、1957 年にフォルクスワーゲンが 買 い 取りました。 ここでは自動車 ではなく部品 が 製造されています 。 カッセルはトランスミッション 製造 の「 メイン 工場」。1 年 に 300 万台 という製造数 から 見 れば、世界最大 のトランスミッ ション 工場とも 言 えるでしょう。工場内 にはアルミニウムやマ グネシウムの 鋳造所も備えられています 。 ANGER 社 の 機械 は 1997 年 からここ(正確にはブラウナタ ル )で 使 われて います 。屋上 の 文字 は 夜 になるとフォルクス ワーゲンの 企業カラーである青色に光ります 。工場 の 50 周年 記念日には、カッセルとのきずなを表現 するために K と S を特 に際立 たせました。 「KS」はドイツのナンバープレート標記 で カッセル 市を表します 。 THECUTTINGEDGE 12 同じです。しかし我社は、将来性があるだけでなく素晴らしい 自動車産業をもち、尊敬に値する国、日本にも注目しています。 日本の産業開発は江戸時代にはじまりました。イギリスや ヨーロッパで起こった産業革命と日本の産業開発は非常によ く似ています。そして日本が世界 2 位の経済大国にまで成長 した戦後の高度経済成長期にもまた、同じような現象が見ら れました。これは、当時の西ドイツや隣国のオーストリアでも同 じです。 ANGER 社はヨーロッパの中心にある、非常にユニークな 技術系企業です。ドイツ南部、 イタリア北部、オーストリアにま たがり、ヨーロッパの「機械加工ベルト」と呼ばれる、機械加 工が盛んなことでよく知られる地域に位置しています。 現代のスタンダード―精密、柔軟、コスト削減 ANGER 社はまだ日本への進出を果たしていません。しかし、 我社の成功の秘密が日本にあるということは私たち全員が認 ANGER 社がエンジンやトランスミッション部品の精度を著し 識しています。この秘密は 25 年以上も昔にさかのぼります。 く向上させる新技術を導入すると、瞬く間に自動車業界のトッ 1967 年 1 月 10 日 ロンドンの港で陸揚げを待つ 初注文のホンダ S800 スポーツカー プメーカーやそのサプライヤーから反響がありました。精度の 日本車の国際的な成功は、約 25 年前に日本の自動車産業 高さは、排気量や燃費に関する今後の厳しい規制に準拠す うな高品質の製造システムです。20 世紀初期に起こったラ なり、出力が増加し、より柔軟な生産が可能になりました。機 イン生産方式の発明以来、最も重大な出来事だったと言え 械の性能は膨大な数のマシニングセンターに匹敵するにも るでしょう。 かかわらず、新技術によって設置面積は小さくなり、コストが 1960 年代以前のヨーロッパやアメリカでは日本車はまった 抑えられます。 く知られていませんでした。特に有名なブランドもなく、1930 フォルクスワーゲン(1997 年∼)や ZF(1999 年∼)の 年代に日本車がカーレースで活躍したと伝えるような記録もな ようなトップメーカーは ANGER 社の重要なパートナーです。 く、ギャッツビーの時代に人々が乗っていたリムジンもまだ作 ANGER 製機械を世界で最も多く使用しているのは、 トラン られていませんでした。デューセンバーグ、ブガッティ、メル スミッション技術で世界のトップに立つ企業 ZF。その ZF は セデス SSK、フォルクスワーゲンのビートルさえ存在していな BMW、アウディ、レンジローバー、ジャガー、マセラティなど かったのです。 の数々のトップ自動車ブランドに部品を提供しています。つま ホンダ S800 のような日本車がヨーロッパ市場に進出し、日 りこれらの高級車には ANGER 社の機械で作られた部品が 産がまだ「ダットサン」と呼ばれていた 1960 年代の中頃、 使われているのです。この他シュトゥットガルトのメルセデスや、 S800 が可愛らしい外観の機敏な車であったにもかかわらず、 デトロイトのクライスラーといった大手メーカーにも愛用いただ ヨーロッパの人々は強気の笑みを浮かべて日本の進出を見 いています。ZF やクライスラーでは、最先端の 8 速・9 速オー ていました。しかしこれは、あまりに驚かされたため大笑いが トマチック・トランスミッションを製造する上で不可欠な存在 できなかっただけなのです。日本車の進出から20 年も経た として ANGER 社の機械が活躍しています。この他にも、高 ないうちに、すべてが変わりました。 精度や柔軟性が求められるトランスミッションやエンジンの部 1980 年代にアウディの会長を務め、後にフォルクスワーゲ 品製造といった、世界中のありとあらゆる場所で使われていま ンの会長となったフェルディナンド・ピエヒ氏は、日本文化を す。昨年はスウェーデンのボルボでエンジン用部品の製造 愛好する親日家としてよく知られています。ピエヒ氏は日本の に ANGER 社の機械が採用されました。 人生哲学を高く賞賛し、自身もこれを学ぶために何度も日本 を訪れています。また、当時の日本の自動車業界で実践され 世界でも有数な自動車市場がある国、日本にも我社の技術 ていた製造品質の高さに深く感銘を受けていたこともよく知ら を導入することができれば、ANGER 社にとって大きな一歩と れています。日本の高品質に影響を受けたピエヒ氏は、自分 なります。世界情勢はめまぐるしく変わっており、市場の大きさ が経営した最初の会社で、 「日本レベルの」製造品質を達 という観点から見れば日本はもはや世界 3 位ではないかもし 成することを最初の主な目標に掲げたのです。 れません。しかし、 これまでの歴史においても、今後の見通し においても、日本が自動車の開発と製造で世界のトップ 2 に 現在では 1960 年代は日本の、 そしてそれに続いてドイツの自 動車業界の製造品質がそれまでにないレベルにまで向上さ れた時代として位置付けられています。この時代から自動車 の世界が変わったのです。 ANGER 社はこの絶好のチャンスを逃しませんでした。当 時 ANGER 社が開発した高速切断機や製造システムの生 産性と柔軟性を実現する革命的な新技術は、ハウジング ケースやバルブボディなどの繊細な部品の生産にぴったり だったのです。 今日世界が、そして世界中の自動車業界が、今後大きな 成長が期待できる中国市場に注目しています。ANGER 社も 入ることは疑う余地もありません。 ANGER MACHINING の 成功の秘密は 日本にあった 1967 が導入した大きな一歩から始まりました。 それまでになかったよ るため重要な要素となります。製造機械の動作も格段に早く (Photo: Central Press / Getty Images) THECUTTINGEDGE 私たちはダルムシュタット工科大学、 ミュンヘン工科大学、シュトゥットガルト大学、 ウィーン工科大学、RISC ソフトウェア、 そしてもちろん「隣人」である製造技術研究所 PROFACTORと提携してきました。 複雑なトピックについて記事を書く際には、書き出しはカジュア ルにするとうまくいきます。科学雑誌『 Science 』でも同じように 機械工学的シミュレーション。 構造モデルの連続的な FEM 最適化。 切削力、振動、機械の コンポーネント姿勢角度の算出。 ウヴェ・ハイゼル工学博士 アンドレア・メスリンガー シュトゥットガルト大学教授 Profactor GmbH 工作機械研究所所長 最高経営責任者 ANGER 社とハイゼル教授率いるシュトゥットガルト大学工作 機械研究所との交流が現在行われています。注目すべきは、 エージェントベースで再構成可能なトランスファーセンターの 製造システム計画を行う「知能型計画システム」プロジェクト ミュンヘン工科大学 です(ウェブサイトから PDF でご覧いただけます)。 工作機械・産業管理研究所 機械試験・研究施設 ダルムシュタット 工科大学、 生産管理・技術・工作機械研究所、 エーベルハルト・アーベレ 教授 の 研修工場。 ウィーン 工科大学:機械と製造工場 に おけるエネルギー 効率 クト「Launch Micro」の一部としての共同研究も行われ、機 械内にあるクランプ装置の微調整に圧電センサーの使用が 試みられました。 これとは別の重要な研究プロジェクトが「 IFT:知能型製造技 術」プログラムの一部として進行しています。このプロジェクト 知能型制御 システム RISC Software www.risc-software.at 考えたのでしょう、 しばらく前に書かれた記事には「科学は、ズ ここはその特に良い例として挙げられます。ANGER 社がすで は、ウィーンのゼネラルモーターズ工場やホームオートメーショ ボンを脱がずにできる一番楽しいことだ」とありました。ドイツ に何年も前から積極的に共同研究を行っている工科大学研 ン企業などの機械メーカーと共同で行っています。主な課題 「原子物理学 の『 ZEIT MAGAZIN 』誌はこれを取り上げ、 究所ですから。ただし、ダルムシュタットだけではありません。 は、出来上がる機械だけでなく製造過程でのエネルギー消 RISC Software GmbH では、エンジニアリング、自動車、航 シュロス・ハーゲンベルク ソフトウェア開発を専門とした や遺伝子工学の話は、パーティーでの会話殺し」としながら 同じように我社と何年にもわたって提携を成功させてきた工作 費量の削減です。このプロジェクトにおけるANGER 社の役 空機の分野で活躍するトップメーカーのために、エンジニア も、 「科学的な思考は本人のやる気と深く関わっており (残念 機械・産業管理研究所が他にもあります。それは…… 割は、特定のユニットや主軸の動作停止、速度低下、および リング(計算工学)のモデリングや分析、製造システムや生 エネルギー消費量の最適化を可能にする部品の採用によっ 産プロセスの制御に用いる特別なソフトウェア・ソリューション 敷地内には RISC Software GmbH などの特殊な産業用 て、 トランスファーセンターのエネルギー需要をどれだけ削減 の開発が行われています。最も重要な提携プロジェクトの一 ソフトウェア会社もある できるかを調査することです。さらに、エネルギー出力のさらな つに、AutoRetrace™という衝突防止用 PLC ソフトウェアモ ながら学校でのつまらない授業が見事にそのやる気を奪ってし ミュンヘン 工科大学 です 。 まっているが)、長い間誰も解けなかったパズルが協力し合っ て解けたときの幸福感は何事にも勝る―この点においてサ イエンス誌は正論を述べている」と認めています。故に機械 「各自の専門分野を超えた共同研究により工作機械を開発、 技術者の我々は、他の誰にも負けず幸福だということを言わず 構築、最適化し、それに適した系統的アプローチを実践する ンによる機械の冷却、 またはこの逆を行うシステムです。成功 力し「Plug & Produce」システム向けの PLC プログラムの にはいられないのです。 ことが研究グループの主な課題です」と大学は説明します。 すれば排熱を事務所の暖房や温水の供給に利用できるよう モジュラーデザインや、ANGER 製機械の PLC コードの自動 ANGER 社との提携では、HCX 機の機械工学的なシミュレー になります。 作成が進められています。最終目標は、運転時間の大幅な ションとその結果による最適化を行っています。これにより目標 とする部品加工の最適化が実現されるのです。 る有効活用案も模索しています。例えば、ホームオートメーショ ジュールの開発があります。RISC やその他のパートナーと協 デジタル 工場 PROFACTOR 削減を実現するバーチャル・スタートアップの開発です。 脳研究の専門家ヴァレンティン・ブライテンベルク氏は、人間 高精度精密掘削加工であろうと重切削加工であろうと、プ ミヒャエル・ツェー ロセス構成の最適化はコンプライアンスの周波数応答に応じ、 この数年間、ANGER 社は製造技術研究所と共同して「デ には性衝動に似た「理解したい衝動」があるという、半分は冗 工学博士 加工エリアのパラメトリックモデルによって保証されます。今 ジタル工場」というコンセプトに取り組んできました。資源消費 談と思われる理論を提唱しました。 そしてある著名な研究者(ち 日までに得られた成果について ANGER 社の技術開発部長、 量を削減しつつ開発プロセスを加速させる、クライアントに合 なみにヒト生物学者です)がつい最近『 ZEIT MAGAZIN 』 エンジニアのローランド・ハース氏は「 HCX アーキテクチャー わせた総合的でデジタルの技術・製造コンセプト開発が、 こ 誌で言っていました―「ここまでは確かに面白かった。だが を世界でトップクラスの高性能量産システムへと改良していく のプロジェクトの目標です。これまでの成果の中でも特筆すべ ドラマチックになるのはこれからだよ」 さらに多くの事実が 上で、提携プロジェクトによって開発されたモデルや知識は きは、プロセスシミュレーションソフトウェア「NX-Cam」の開 判明しました。 非常に価値のある収穫」と、 まとめています。 発です。すでに ANGER 社で CNC 自動プログラム構成シス この言葉にエンジニアリングの魅力が集約されていると言って 「エネルギーコストは すでに工具コストよりも 高くなっている」― ミュンヘン工科大学 エーベルハルト・アーベレ 工作機械・製造技術教授 教授が研究プロジェクトで 発見した驚きの事実は これだけではありません。 テムとして導入に成功しています。また、長期 EU 研究プロジェ もよいでしょう。 ユニークな科学・教育センター リサーチ 研究開発―これこそANGER 社のすべてです。 機械技術者としての幸福 14 HCX 機アーキテクチャーの 「自動車製造 の 盛 んなドイツ 経済界 で は 生産 の 低 コスト 化 が 突出しています 」 ウヴェ・ハイゼル 博士 シュトゥットガルト 大学工学部教授 THECUTTINGEDGE 16 1982 機械に 刻まれ続ける名前 創業者アントン・アンガーの 名を冠 する ANGER 社 は、今 から 30 年前に設立されました。将来どのような 技術開発 が 行 われ ると思 いますか ? という質問に、83 歳になるアンガー 氏 はこう 答えます 。 「 そんなことわからないですよ。今までそんなこと考 えたこ とも 一度 もないのでね 。私 はただ、クライアントがかかえる問 題 を 直接聞 きに 行 き、その 問題 を 解決 する努力 をしてきただ けです 。技術的 な 流行 や 傾向 は 私にとって 重要 ではないんで す 。自分 で 新しい 流 れを 作 ることもできるのです 。すべてを 疑問視してみること― これが 大切 です 。私 は 今までずっと、 現行 のやり方 を 意地 でも 変 えたくないと言う技術者 たちが 働 いているクライアントを相手に仕事をしてきました。そして 最 終的 にはそのうち 何人 かを 説得し、新 たな 道 へと方向転換 さ せることができたというわけです 。」 ちなみに、従来 の 固定されたワークから、移動式 のワークへ 変更 するという革命的 なアプローチの 生 みの 親 はアントン・ア ンガー 氏 なのです 。 三〇年の歴史 ク加工時間の最高 70% を占めているという問題があったためです。ANGER 社はここにチャンスを見出しました。単位原価削減を実現できる可能性が最も 高い分野であると考えたのです。非生産時間の短縮は、アンガーが新たに設 アイデアから、世界で愛される産業・製造技 術へ 現 場に求めら れるツールを 製造分野において、段取りやツール交換などの非生産的な二次作業が、ワー 立した会社の主な開発分野となりました。この頃から、ANGER 社は「トランス ファーセンター」と呼ばれる新しいタイプの機械を市場に送り込みます。 この新技術は 1990 年代に入って他の分野にも導入され、樹脂、マグネシウム、 アルミニウムの部品加工に使用され、特に自動車産業で広く普及しました。こ の分野では、アンガー技術の成功の鍵とされる、高精度、大量生産、ワーク 1 点への加工の多さ、高いコスト圧力の 4 つの要素が特に大きな問題となってい たためです。 競争市場内で最も高い生産性と効率性を実現する製造プロセスソリューションを 製造業界に提供するというアンガーの基本理念は今日でも引き継がれています。 2007 年以降、ANGER MACHINING(アンガー・マシニング)では注文がひっ きりなしに増えています。経済危機を迎えた 2009 年にも、業績成長率 30% を 達成しました。製造技術戦略としてアンガー製品を使うOEM メーカーも増えて います。全製造ラインにトランスファーセンターを備えたアンガーの技術を支持 する大手の自動車メーカーには、 トランスミッション分野にアンガー製品を採用し た ZF グループの他に、ダイムラー、フォルクスワーゲン、クライスラー、マーレな どが挙げられます。さらに、 これまでは大手の工作機械メーカーによる機械のみ が使用されてきた主要部品(オートマチック・トランスミッション向けのバルブ制 御ユニット、エンジンブロック、シリンダーヘッド、 トランスミッションケース、クラン クシャフトなど)の製造にも、アンガー製品が使われるようになりました。 製造業でも時代の変化は避けられません。今日はコスト圧力が非常に高く、長 い間、特定の規範や価値観が深く定着する余地はなくなってきています。トランス ファーセンター技術は、1 ㎡のスペースでさえも価値に差がつく、競争の厳しいド イツ市場へ急速に進出しています。例えば、同時に 4 つのワークを加工できる5 軸式 HCX 機 1 台がオートマチックトランスミッション用の入力軸 70 万点以上を 加工できるとすると、 シュトゥットガルトでの導入を確実にする立地因子となるのです。 または 3ワー 今日、 ヨーロッパの産業界で使用されるアンガー製機械は、2ワーク、 クの同時加工が標準になっています。 1982 年、著名な産業家であったアントン・アンガーは、画 期的な発明で工作機械業界に革命をもたらしました。ワー クを一つの固定軸から次の軸へ移動させるCNC 制御機 械の開発により、それまでにない生産性の機械加工が実 現したのです。これが、 その後に続くサクセスストーリーの始 まりとなりました。 「当時は石器時代のようなものだった。全 近年、 それまで開発の中心となっていた生産性の向上に加え、 トランスファーセン ターを利用するクライアントから寄せられる他の需要にも注目が集まっています。少 なく とも一つの部品ファミリーを製造できることが最低条件になってきているのです。 つまり、全製造ラインを再構成することで新しい部品の製造を可能にする柔軟性 が注目されています。この技術のもう一つの利点は、ライフサイクルコスト (TCO: 総所有コスト)が大幅に低いことです。送り軸、クーラントシステム、可動部品、 自動化、機械台数が少なくて済むことで、コストを低く抑えることができます。 部のワークを何百回も手動で付け替えなければならなかっ た」とアントン・アンガーは話します。 開発から30 年が過ぎた今も、アントン・アンガーによるトランスファーセンター 技術は業界への進出を続けており、ANGER 社はこの分野での世界的リー ダーを目指して躍進し続けています。業界のリーダーとなるには、効率性の高い 当時「インライン・トランスファー・システム」と呼ばれたこの新技術の導入によ プロセスソリューションを開発する創造力、より優れた機械構造の開発を継続 り、アイウェア業界の常識は根底から覆されました。現在、ヨーロッパ、ロシア、日 する革新力、最新のプロセスとプロジェクト管理を通したプロフェショナルな対応 本、アメリカの大手アイウェアメーカーすべてがアンガーの技術を 体制が必要とされます。こういった要素を備えていたからこそ、ANGER 社は設 採用しており、世界的に有名な Ray Ban の 立 30 周年を迎えることができました。 「 Wayfarer」モデルもアイルランドにあ るアンガー製機械で製造されたものです。 ANGER 社は、今日、そして未来の 眼鏡用レンズ製造機の最適化から始 まったこの技術は、すぐに他の分野でも 応用されるようになりました。これは、多くの 現場で求められるツールをお客さまに ご提供いたします。 THECUTTINGEDGE 高品質の製品を大量に製造できるのです。これに比べてマシニングセンターは 柔軟性があり、需要の変動に応じて他の部品製造に切り替えることも簡単にできます。 HCP ベテラン・システムエンジニア 2000 年度からの実績を誇るダイナミックな高生産マシン。 アルミニウム、マグネシウム、鋼鉄の小型・中型部品に対応。 「ミクロン単位の精度を求めて 柔軟に自動化でき、高効率かつ省スペース。 常に技術の限界に挑戦して います」 しかしこれには多くの犠牲が伴います― 運用費や製品の原価が高くなり、 設置面積も大きいのです。トランスファーセンターはこの 2 つの技術の利点を ローランド・ハース工学修士 組み合わせた製造技術です。ANGER HCXトランスファーセンターは これが トランスファー センターだ 18 トランスファーラインは高価で柔軟性もありませんが、だからこそ低コストで ハインツ・ビュルクシュタイン 技術部長「ここ数年で、HCX 生産性においても柔軟性においてもその力を発揮します。 技術が実際の運用環境で非常 に高い効果を発揮するアーキ テクチャーであることが実証さ れています」 高精度、高速― ダウンタイム削減の 強い味方 営業担当 「 HCX は欧米の工業国にとっては 生産性を上げてくれる 強力な武器です」 生産性 HCX:高生産性、高効率、 クリスティアン・ボウチェク プロジェクトエンジニアリング、 HCX 1400 と CX 2000 ANGER 社がターンキー・プロセスソリューションと 出力を最大にする固定主軸を採用し、加工内容によって 共に提供するサービス: X 軸上の移動量を 1400 mm と 2000 mm から選択できる、 • 総合プロセスのエンジニアリングおよび 中型から大型部品向けの生産性の高いマシン ANGER 社の熟練エンジニアたち ANGER 社での勤務年数が長く、デザイン、 加工プロセスの 設計 • 主軸、クランプ機構、自動化など、クライアント仕様に 剛性と柔軟性 の 両方 を 持 ち 合 わせた 大量生産向 け 高生 産性 システムの 市場リーダー 。動作空間 が 広く、複数 の 大型部品 の 加工 ができ、任意 の 自動化 が 可能。アルミニ ウムや 鋼鉄 の 切削。様々 なサイズや 剛性 の 部品設計 を 実現 するモジュール 工法。2008 年 からの 実績 を 保持 す 応じた特別システムコンポーネントの 設計 • • • • ユーザーインターフェース制御( HMI) プロセスエンジニアリングの経験が深い。 数百のプロジェクトを完成に導いた。 プロジェクト管理 PLC および CNC プログラミング ANGER 製機械 の 制御 システムには、遠隔操作によるメ 調達管理 ンテナンス、運転データ分析、グラフィックを用 いた 視覚 品質管理 および測定技術 化 モジュールが 搭載 され、知能型 システムとして 完成 さ る強力 なアーキテクチャー 。 れたアーキテクチャーを実現しています 。 バーチャルエンジニアリング また、複雑 な 加工 プロセスでのオペレーターによるミス テクニカルプロセス・ソリューション 最先端 のソフトウェアツールを用 いたリアルタイムの 3D を防止し、装置 の 組 み 替 えや 工具交換を迅速 かつスムー 加工システム向けの 複雑 なテクニカルプロセス・ソリュー プロセスシミュレーションを 行 います 。加工 の 技術的 な ズに 行ったり不具合 の 原因 を 素早く検出 するために、革 ションは、許容誤差 の 厳守、繰り返し精度を示 す 統計デー 限界を計画段階 で 調査 することができ(衝突防止)、稼働 新的 なソフトウェアモジュールを採用しています 。 タ、システムの 稼働可能率 など、規定 されているすべて 中にクライアント自らが 製造プロセスを変更したり CAM の 品質基準 の 準拠を約束します 。 ソフトウェアにプログラミングできます 。 スネザナ・ガブリロヴィッチ PLC プログラミング担当、工学士 THECUTTINGEDGE 2013 年最新動向― ANGER の柔軟な加工コンセプト モジュラーシステムには、1 チャネル 型 および 2 チャネル 型両方 の MQL( セミドライ)加工を実現 する数々 のテク 柔軟性 ニカルソリューションや 様々 な 搬入システムに加え、プロ 20 グラミングやシミュレーション、衝突 ゼロ運転を簡単にす るソフトウェアアプリケーションが 含まれます 。 量か柔軟性か? ゼロポイント・クランプシステム ― 部品加工を完全自動化する柔軟な取付具 ANGER 社の答えは「両方」 HCXchange にはゼロポイントのクランプシステムが 搭 載 されており、新しい 部品 を 迅速 に 取り付 けることがで ANGER 社 は HCXchange モデルの 開発により、生産性 きます 。標準化 されたマウント 部、迅速 なプロセス 制御 と柔軟性 の 両方 を 共存 させることに 成功しました。トラ 変更、工具 やコンポーネントのわかりやすい 品質設定 な ンスファーコンセプト技術 では通常、ワークをクランプし どが 特徴 です 。 て 2 点同時加工 を 行 い 、CNC 制御 によってワークを 工 このシステムの 最 も 大 きな 利点 は、空気式 セルフクリー 具 から工具 へと移動させます 。 ニングシステム で す 。これにより切削屑 ゼロ で X 軸方 この 新しいタイプの 機械 は、加工業界 でこれまで 一般的 向 および Y 軸方向 へのポジション 切替 が 可能 になりまし に使 われてきた 機械設計 からの 変革 を 象徴しています 。 ました。支点 の 位置 に 取り付 けられ、切り離し時 に 出 て モデル 名 の HCXchange は「これが 時代 を 変 える」とい 来る 4 つのエアーノズルが 切削屑を除去します 。さらに、 う大胆 な 宣言 であり、ANGER 社 の 新しいコンセプトは 汚 れの 付着しないセントラルロッキングシステムも 搭載 今、業界全体 から注目 を 浴 びています 。HCXchange は、 して います 。切り離しと 同時 にピストンが 上 に 伸 び、格 1 台 またはオプションとして 2 台 のダブル 工具交換装置 を 1 台 のトランスファーセンターへ 統合 できる初 めての 納式 ニップルのマウント 孔 をふさぎます 。さらに 閉口部 機械 です 。 ポイント・クランプを実現しています 。クランプ機構には、 ヴェルナー・ブラムハス プロジェクトエンジニアリング部長 「 HCXchange は全く新しい ングを搭載 することもできます 。 HCXchange 1400 と HCXchange 2000 ダブル工具交換装置 1 台または 2 台の統合ができる 柔軟なマシン ANGER MQL 製造ソリューションの主なメリット: • 加工と MQL(最小量潤滑供給)システム(1 チャネル または 2 チャネル )およびアプリケーションモード(内 主なメリット: • 空気式セルフクリーニングシステム、 柔軟性もよい。省スペースで 逸品です」 MQL(セミドライ)加工 マルチ主軸台と 1 チャネルおよび 2 チャネル型を統合 タイプの機械です。生産性が高く、 コストパフォーマンスの高い 工具交換装置を内蔵した トランスファーセンター が 密閉空気 で 充満 することで 、繰り返し精度 の 高 いゼロ 油、水、圧縮空気、または 真空 の 4 つのタイプのカップリ 製品管理・調達部 HCXchange 柔軟性:知能的で適応能力の高いモジュラーシステム HCXchange はモジュラーシステムのため、幅広 い 種類 のコンポーネントや 加工プロセスを 組 み 合 わせることが できます 。自動化、クランプシステム、その 他、工具交換 自動車部品サプライヤーにぴったりの 装置 や 特殊主軸、標準仕様 や 部品特別仕様 のマルチ 主 柔軟な生産システム 軸台、クラウンタレットなど、あらゆる種類 の 加工 ユニッ トを含めた柔軟 なコンセプトです 。 側または外側)を調整 したシステム セントラルロッキングシステムが 汚 れを防止 • 完全自動運転で安定性 の 高 い 加工プロセスを実現 • 特殊なクランプニップル 形状で、重量配分が不安定な 場合もスムーズな 取り扱 い • メディアダクト統合 • 常に高 い 挿入力と、防振スプリング構造による 故障時 の 安全性 • ANGER 製トランスファーセンターでは 1 チャネル / 2 チャネルシステムの 組 み 合わせが可能 • 高速加工、高速送り用 の 加工主軸デザインが可能 • 切削屑除去におけるエアロゾル 流量とシステム圧力 ANGER 社 はクライアントやプロジェクトパートナーとの 話し合 いに基づいて 革新的 な MQL ソリューションと製造 システムを開発し、MQL に最もよく適合 する製造過程を 設計しました。従来 のクーラントに 代 わる技術 が 求 めら れているのは、経済的 な 理由や 環境保護 のためだけでは ありません 。 の 最適化 MQL 加工 未来の加工基準 • 支持力・張力 のチェック • 残留エアロゾルや切削屑 の 除去 • MQL 装置から流量が最適化されたクーラントを工具 の 切削端まで 供給 HCXchange は非常に柔軟性があるため、従来は大手 サ 販売計画 エンジニアリングの 観点 からいえば、ANGER プライヤーしか 採用 できなかった 機械技術 が 、中小企業 社 は MQL システムに 10 年 のプロジェクト 実績 がありま でも使用 できるようになりました。 「大量生産 で 使われて す 。MQL 加工 におけるシステム 条件 の 計画 には、MQL いる ANGER 社 の 中核技術 が 、自動車製造業界 で 求めら ユニット、ロータリーカップリング、主軸、クランプ 装置、 れる超高精度や 性能条件に沿って 開発されていたことに 工具ホルダー 、工具 が 含まれます 。加工プロセスの 調整、 より、ついに生産性と柔軟性 の 両立 を 実現 させることが 材質、運転 データ、潤滑油 の 供給量 などは、切削材 の 設 ハディ・ターム できたのです 。これを 可能 にしたのは、継続的 に行 われ 計、コート材、工具 の 構造設計、エアロゾルチャネルなど 北アメリカ総支配人 てきたソリューション開発とクライアントの 使 いやすさに と同じように重要 なものです 。 • マルチ主軸台加工用ソリューション 「これまで難しかった製造シス 焦点 を 合 わせた 取り組 みです 」とヴェルナー・ブラムハ テムの高生産性と加工切り替 え時間短縮の両立に挑戦して スは確信をもって 話します 。 ANGER HCXchange は、ダブル工具交換装置、クラウンタ この 新しいモデルの 革新的 な 技術 が 審査員に認 められ、 柔軟なパレットを実現するゼロポイント・クランプシステム レット台、マルチ主軸台、特殊寸法のフライス台など、様々な MQL 加工による安定した大量加工 マルチ主軸台と 1 チャネルおよび 2 チャネルシステムを 加工ユニットを組み合わせて 1 つの機械エリアに集約するこ 統合 ANGER 社 は 2011 年にオーストリア政府から技術革新 とができます。あらゆる機能を備え、簡単に再構成ができる 賞を受賞しました。 システムです。 います」 THECUTTINGEDGE 22 2011 / 2012 受賞技術 昨年 ANGER 社 は、毎年 ZF が 選出 するサプライヤー 賞 の「革 新技術」部門 を 受賞しました。世界トップのトランスミッション メーカーであり業界技術 のリーダーである ZF により、クランプ 数と工具交換時間 の 削減 による 加工時間 の 短縮 が 、無駄 のな い 製造システム作りへの 大きな 一歩として 評価されたのです 。 そ の 前年 で ある 2011 年 には、オーストリア 政府 の「技術革 新賞」を 受賞しました。オーストリア 政府 から機械業界 に 授与 される賞 の 中 でおそらく最 も 地位 が 高く、栄誉 のある賞 でしょ う。ANGER 社 は、著名 な 専門家 で 構成 された 審査委員会 に よって 5614 社 の 候補 の 中 から選出されました。 THECUTTINGEDGE 将 来への最 適 化 24 エネルギー削減で性能をアップ― ANGER 社の革新的製造コンセプト 非接触シール形をつかった多軸ヘッドの 連続運転による省エネ のスピンドルにより加工 されるため 工具 の 交換 が 不要に なり、急 な 加速 や 減速 をする必要 もなくなります(「 オー バー サイズ 」は 起 こり得 ませ ん )。機械 の 実稼働時間 を 延 ばせるのとは 反対 に作業 プロセスは 短縮 され、さらに 省 スペースでの 生産 が 可能 で 、部品 のロジスティクスが 簡素化されます 。これがエネルギー 効率向上に徹底的に こだわる ANGER 社 のやり方 です 。ザー ルブリュッケン にある ZF でのバルブプレートを 含 めたバルブハウジン グ 加工 を 例 に 比較してみましょう。ここではマシニング センター 9 台 が 年間 15 万個加工していますが 、ANGER 社 の HCX なら 6 台 で 同じ時間内に 50 万個加工 すること ができます 。 隠れたコスト要因 これらの 画期的 な 製造技術 は、実際 のエネルギー 消費に どの 程度影響 を 与 えるのでしょうか 。分析 データによる と、投入したエネルギーの 実に 75% が 機械 ユニットその ものに 消費 され、残りのわずか 25% が 切削加工 に 使 わ れているという驚くような 数字 がでています 。この 結果 製造業として 将来、賃金 の 高 い 先進国 で 成功 するにはど から言えることは第一に、実稼働時間 が 長く、プロセスが マシニングセンターとのエネルギー需要比較 うするべきか 。これは今 の 製造技術系業界全体 が 関心を 短 かければ 短 いほどエネルギー 効率 は高まるということ。 マシニングセンター/製品:ナックル 材質: AlSi7Mg 持っているテーマです 。さまざまな 要因 からの 影響を受 そして 第二 に、実際どこにコスト 要因 が 隠 れているのか けやすく、今儲 かっているやり方 が 明日 にはもう採算 が 徹底的に分析してみる価値 は大きい 、ということです 。 トランスファーセンター技術 企業: Daimler AG シュトゥットガルト、フル加工 あわなくなることが 当 たり前 の 業界 で 、何 か 具体的・理 文:マキシミリアン・ベルクゴルド 論的に納得 のいく打開策 はないのか 。ANGER 社 が 提供 そ れぞ れのモジュー ルには 相当 な 量 のエネルギーを 節 しているのはこの 答えに匹敵 する技術 です 。 約 できる 可能性 が 潜在しています 。例 えば、カソード 防 食設備 で 使 われる高圧 ポンプは、回転数 の 調整によって 私 たちの 技術 は、斬新 なソフトウェアを 使って 製造 プロ オー バ ーフローを 防 ぐだけで なくポンプ 自体 の エネ ル セス、システムの 柔軟性、正確 なエネルギー 配分といっ ギー 需要 を 50%以上削減 できます 。慣性 モーメントの た 観点 から、構成自在 のシステムに組 み 込まれた 高性能 減少、非接触 シール 形、中央潤滑装置、自動 のスタンバ ユニットの 特性 を 極限 まで 引 き 出し、そして 改善 する 余 イ管理― これらは複雑化している製造工程 のなかで 見 地 を 探し出 すことです 。ANGER 社 の 斬新 な 製造コンセ 落とされがちな 小さなことのようですが 、こういうところ プトはここから始まります 。 にこそ 最適化を行うことで 大きな 改善につながるものが 隠されているのです 。 作業プロセス短縮による省エネ エネルギー出力をエネルギー入力に エネルギー 効率 の 向上を第一に考え、複数 の 対策を組 み 合 わせます 。はじめに、中量 または 大量 の 製造 を 行うラ ANGER 社 のエネルギー 効率研究に終わりはありません。 インにトランスファーセンター 技術を導入します 。トラン 研究プロジェクトの 一環としてウィーン工科大学、機械製 スファーセンターは、設計 にもよりますが 一台 でマシニ 造業者、建築家と共同 で MQL( セミドライ)加工時 の 排 ングセンター 3 ∼ 5 台分 の 作業 を 行 えるため、これだけ 気再循環 に 関 する 研究 を 行っています 。最大 60% の 排 ですでに省 エネが 実現 されます 。駆動 させるスピンドル 気 が 再利用 できることから「 エネルギー 出力再利用によ や 冷却 ポンプは減り、オートメーションシステムも 減らす るエネルギー 削減」と呼 ばれています 。この 結果 をどこ ことができます 。また、精巧 に 設計 されたスピンドル ユ で 活用 するのか 、そして 次 なるアイデアは 何 なのか 、そ ニットは、回転数 やトルクに合 わせた 省 エネを実現し、特 れはまだわかりませんが 、これだけははっきりしています 。 に 速度 に 敏感 な 起動時 でのエネルギー 過剰消費 を 大幅 エネルギー 効率 の 最適化こそが 製造業として 将来、賃金 に 削減 にします 。さらに 多軸 ヘッドではそれぞれが 一本 の 高 い 先進国 で 成功 する鍵 なのです 。
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