山内 大典:補填材なしの上顎洞底拳上と即時HAインプラント埋入術の20例

バイオインテグレーション学会第 5 回総会・学術大会 ポスター演題申し込み・事前抄録用紙
演題登録期間:平成26年10月16日(木)~12月31日(水)
受付番号/受付日
演題番号
補填材なしの上顎洞底拳上と即時 HA インプラント埋入術の 20 例
Twenty cases of implant placement in conjunction with maxillary sinus floor elevation
without bone substitute.
○山内大典1),西尾和彦1),渡辺孝夫1),高橋常男1)
Daisuke Yamauchi, Kazuhiko, Nishio, Takao Watanabe, Tsuneo Takahashi
神奈川歯科大学 3次元画像解剖学講座1)
Department of 3D Imaging Anatomy, Kanagawa Dental University
【目的】今回我々は,20 症例の上顎臼歯部歯槽骨高度吸収症例に,補填材なしの上顎洞底
挙上,即時インプラント埋入術を行った.治療後 3 年以上経過した現在も全例ともに良好
に経過している本術式の有用性を検討した.
【対象と方法】症例は,男性 5 例,女性 15 例,総数 20 例,全症例全身的に大きな問題は
なかった.インプラントは合計 40 本植立した.年齢は 21 歳から 71 歳で平均 59±20 歳であ
った.手術は 2005 年 11 月から 2010 年 11 月に行った.手術前の上顎臼歯部歯槽骨頂からサ
イナスまでの高さは CT 画像のクロスセクショナル像より 1.1mm から 6.6mm で平均 3.5 ㎜
であった.手術は,全症例静脈内鎮静法を行い,補填材なしで,上顎洞内側壁に沿わせる
ようにインプラントを埋入,カバースクリューを装着し,縫合を行った.使用したインプ
ラン体は全症例 HA コーティングタイプであった.
【結果】全症例完全に 2 回法で行った.二次手術までの免荷期間は平均 6.3±1.2 カ月(最少 4
月,最大 9 カ月)であった.手術直後から上顎洞感染を疑う所見はなかった.二次手術時
に,ペリオテストにてインプラントの動揺を計測した.ペリオテスト値は平均 0.5±1.5(最少
-2,最大 03)と良好であったため,仮歯にて咬合負担を与えて経過観察を行い,その後,最
終補綴物を装着した.咬合荷重を与えてからの観察期間は平均 59±12 カ月(最短 39 カ月,最
長 89 カ月)であった.全症例ともに現在まで良好に経過している.
【考察および結論】上顎臼歯部歯槽骨高度吸収症例にインプラントを埋入する場合,上顎
洞底を行い挙上スペースに補填材を填塞することが一般的な手法となっている.しかし,
一旦感染すると補填材が感染源となり炎症を助長し,遷延化するとリカバリーが困難にな
る.渡辺らは,イヌ前頭洞を使った実験で,上顎洞底を挙上するだけでインプラント周囲
に骨ができること,また HA コーティングタイプのインプラントが特に骨結合面積が多かっ
た等を報告した.今回我々はこの動物実験の結果から,上顎臼歯部歯槽骨高度吸収症例で
あっても,骨結合面積を増やすため,上顎洞内側壁に沿わせるようにインプラントを埋入
する術式,完全な2回法,HA コーティングタイプのインプラント体を用いること,免荷期
間を十分にあけることなどを考慮することによって,本術式は十分臨床応用可能であると
考えられた.