英国における日本食品関連市場調査 - 中国経済産業局

調査・報告
英国における日本食品関連市場調査
産業部 国際課
TEL 082-224-5659
中国地域産の加工食品等の海外販路開拓を目的に、日本食への関心が高まっている英
国の日本食品流通・販売関連企業を訪問し、販路開拓、商品開発等に関する現状と今後
の取組を調査し、併せて、英国最大級の食品見本市「The International Food & Drink
Event (IFE 13)」の視察を行い、現地の市場動向について情報収集を行いました。
訪問先 :
英連合王国・ロンドン
日程: 3月19日 広島空港 発 韓国・仁川空港経由 ロンドン・ヒースロー空港 着
20日
IFE2013 視察、日本食材販売店訪問調査
21日
JETRO LONDON 訪問
22日 日本食材販売事業者、ワインショップ 訪問調査
23日 ロンドン・ヒースロー空港 発 (韓国・仁川空港経由)
24日
広島空港 着
■ The International Food and Drinks Event 2013(IFE2013) at ExCel London
・開催場所:ExCel London (DLR 線 Custom House for ExCel 駅直結)
・開催日程:3月17日(日)~20日(水)
・IFE2013 について
-IFE2013 は、2年に一度開催される
英国最大のB to B 食品見本市。
-来場者は、主として小売、卸、レストラン
業界のバイヤー等で、商品のPRだけ
でなく、その場で契約交渉までが行われることが特徴。
-本年の IFE は、世界 50 ヵ国からの出展者が 1130 社、
総来場者数は約 28000 人。
→(参 考) 2011 年実績:出展者数:1137 社、
来場者数:28135 人
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JETRO の支援による日本パビリオン
日本パビリオンの出展者
・日本パビリオン-出品者数:17 社・団体
・出品物:日本酒、焼酎、醤油、蒟蒻製品、麺 等
・出展企業のコメント
-
ブースにやってくるバイヤーの関心事項は、日本酒の味と価格帯である。
-
商品には特徴が必要(日本酒の酸化を防ぐ製法、日本酒の初心者に適した飲みや
すい味、など)。
-
日本酒はプレミアムアルコールとして、低価格競争にならないような売り方をし
ていくことが必要。
□ JAPAN Booth by MAFF
・日本パビリオンの近隣に農林水産省による日本食品PR用ブース(MAFFブース)
が設置されていた。
・MAFFブースでは、日本食PRデモンストレーション、日本酒ソムリエによる日本
酒の解説、日本酒の試飲会等が行われていた。
-
JAPAN Pavilion に出展した5社がMAFFブースの酒バーに日
本酒を提供するなど、 連携が図られていた。
-
日本酒ソムリエによる酒セミナー&日本酒試飲会は、用意された席が満席で立
ち見での参加者が出る状況であった。
農林水産省のジャパンブース
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日本酒ソムリエによる日本酒セミナー
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□ British Retailers Consortium (BRC) Global Standards
・BRC は、英国における有数の業界団体の一つ。小規模、独立系の小売業者から、大規
模なチェーンストア、デパートが加盟しており、加盟企業の売上高は英国の小売業の
80%に相当する。
・BRC は、食品の品質安全の要求事項を明確に定義した国際規格(BRC グローバル ス
タンダード)を考案。BRC グローバル スタンダードは、80以上の認定と認証機関
のネットワークを通じて、世界90ヵ国、17000以上の証明サプライヤーが使用
している、世界有数の安全性と品質認証プログラムである。
→ 日本は、いわゆる新興国とは違って、
英国市場において十分認知されており、
英国の小売業界は、日本企業 イオングループ
の品質管理、物流システムに注目している。
→ 中国地域企業の英国市場参入については、
具体的な要望があれば、様々な形で支援が可能。
BRC Global Standards
によるプレゼンテーション
□ Tazaki foods ltd
(Importers & Wholesalers of Authentic Japanese Foods)
・自社ブランド「YUTAKA」を立ち上げ、様々な日本食材を販売。
・商品の物流は、日本の物流業者を利用している。
-日本酒は山口県産を取り扱っているが、基本的には日本全国から調達を行う。
Tazaki food ltd の出展ブース
□ JETRO LONDON CENTER
・ロンドン市場について
→
ロンドンは人種の多様性、多様な価値観に対する寛容性、世界共通言語の英語、旧
植民地を世界中にもっていたことによる情報発信能力、欧州トレンドのアジア地域へ
の影響力等により、企業の販売戦略次第で、多方面での事業展開の可能性がある。
・ロンドンにおける日本食マーケット
-英国の食品関連産業売上高は約 47 兆円、日本は 100 兆円程度。
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-英国の日本酒は、主として米国において日本の業者が製造したものが多い。
-英国におけるアジア諸国の料理の認知度に関し、好きな外国料理については、中華料
理の比率が下がり、タイ料理と日本料理の比率がアップしている。
-日本食についてロンドン市内で一般消費者向けアンケート調査を実施したところ、80 %が好
きという回答をしている。日本食によく接している英国人は、ロンドン市内でかつ高
額所得層である。英国に浸透している日本食は、寿司が突出している。それ以外は、
天ぷら、味噌汁、照り焼き、緑茶、刺身、ラーメン、焼きそば、カレー、うどん など。
・ロンドンにおける日本酒マーケット動向
-日本酒の飲み方については、「冷やして」、「室温で」という飲み方もある程度浸透
しつつある。
-日本酒の味については、
「Fruity」
、
「Clean」
、
「Sweet」といた特徴の評価が高い。
-日本酒の購入は、地元スーパーや Wine Shop で購入できたらよいとのニーズが高い。
-日本酒のラベルについては、日本の伝統的なデザイン、日本語が使われているもの
という ニーズが高い。
JETRO LONDON CENTER
□ 日本酒ソムリエ
・ロンドンにおける日本酒マーケット動向
-味としては、個性の強いものを好む傾向がある。
→ 一般的には飲み口がよいもの
-ボトルのデザインも重要で、ラベルには日本語と
英語の併記が必要。
→ 特徴のあるものにすると現地の人が覚えやすい。
-販売価格
農林水産省ブースでのセミナー
→ 日本食レストランへの卸値は日本国内販売価格の1.8~2 倍程度
・ロンドンでの市場参入においては、販路開拓のイベントだけでは販売につながらない。
-どこへ売っていくのかを明確にし、それに適した販売活動を行う必要がある。
→ 日本食レストラン、日本食材販売店、ワインショップ など
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■日本食品小売店
□ JAPAN CENTRE (Regent St. : 欧州でも最大級の日本食材店)
・JAPAN Centre は、現在、食品販売が3店舗、ラーメン店が6店舗となっている。4
月上旬、新ラーメン店がオープンする予定。
-スシ、総菜等の Take Away の利用者の 90%が現地の人である。ラーメン店は利益率
が高い。
-従業員は 200 名で、その内4割が日本人。キッチンスタッフは多国籍、フロアスタ
ッフは全てバイリンガル。持ち帰り用スシ専門「UMAI」の従業員が 70~80 名程度
-毎年、春と秋に日本へ行き、商社訪問、展示会視察を行っている。
→ 自社の仕入れにおけるポリシーは、日本で流行っているものをロンドンでも売
りたいである。
・日本酒について、JAPAN Centre では、月に 1000 本程度売れている。品揃えは 100 種
類程度で、販売量は伸びている。
・米については、日本で輸出向けに作っているものなので、仕入れ値が安い。現在は日
本の大手流通業者に回してもらっている。
-新潟産コシヒカリ、秋田こまち等の 5kg、2kg パックを入れている。月に 1.5~2
トンを販売。価格は、米国産と変わらないレベル。
→ 欧州(イタリア、スペイン)産のコシヒカリがあるが、販売業者向けの卸売はない。
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■WINE SHOP
□ HEDONISM WINES(Mayfair)
・ワインの購入に来た顧客について、その容姿、会話の内容等から日本酒に関心の有無
を判断し、日本酒を勧めている。
-顧客のレベルに合わせて、初心者向け、上級者向け、EXCLUSIVE 向けを選ぶ。
-味としては、ドライなもの、フルーティなものといわれる事が多い。
-価格帯としては、£120 程度は普通に売れる。リピーターも多い。(3/22 当日は4
本売れた。)
→ 高級レストラン ZUMA での販売価格は、日本の 4 倍程度になっている。
-商品としては、他の店ではおいていないものを選んでいる。
・日本酒の販売促進のため、試飲会を定期的に開催している。
-試飲会イベントは、ツイッター、Facebook で広報している。Tazaki Foods ltd の
協力も得ている。
→ 新商品の調達のポイントは、味、地方色、他の日本酒との違い、などである。
→ 日本国内の売れ行きが良い商品であれば、直接売り込みにも対応している。
■日本食レストラン
□ NOBU WINES (Mayfair)
・伝統とフュージョンがミックスした高級日本食レストランチェーン。
・ミシュラン 一つ星をもち、世界26ヵ国で店舗を展開。
-日本酒は社長の意思で佐賀県の蔵元と1社限定取引中。
→ レストラン向けに、大吟醸( 50%以上)を特別に生産している。
-米は、CHINA、KOREA 産に価格で勝てるなら受入れが可能。通常入ってくる米国産
は古米が多いので、日本産の方がおいしい。
-韓国はEUとの間でEPAが発効している。日本もEUとEPAを締結し、工業品、
農産品の関税を下げるようにするしかない。
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□ Sainsburys (100 年以上の歴史を持つ大手スーパーマーケット)
□ Harvey Nichols (高級デパート)
□ YO! Sushi(回転寿司:Harvey Nichols 内)
□ Tesco (英国最大手スーパー)
■ 英国・ロンドン市場の日本食の現状と可能性
・市場の現状
-英国の日本食品輸入規模は 44 億円(内、日本酒 2.0 億円)
-英国全域で、日本食料理店は 500 軒
-日本酒の取扱輸入企業は 10 社程度、取扱銘柄は約 130 種類
→ 欧州の文化発信都市ではあるものの、日本酒最大輸入国アメリカの主要都市と
比較すると市場は 10~15 年程度遅れている。
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・市場の可能性
-日本食レストランの新規オープンが相次いでおり、ここ 10 年で加速している。
-健康的な日本食ブームの影響で、日本食材や日本酒への関心が高まっている。
-日本文化イベント、国際見本市等での日本酒紹介等により、日本食、日本酒との接
触場面が増加している。
■ 英国・ロンドン市場への中国地域産日本酒販路開拓について
・中国地域酒造業者の取り組みとして必要と考えられること
-商品の差別化
(味、製法、ボトルデザイン、ラベル表示、価格設定)
-ビジネスプラン(誰に、どのように、売っていくのか)
-販売促進活動
(現地試飲販売、商談会の開催)
・地域中小企業海外展開支援関係機関の取り組み
(中国経済産業局、国税局、農政局、JETRO、SMRJ)
-海外展開関心事業者への情報提供
-モデルプロジェクト実施(バイヤー招へい、商品評価、現地展示試飲会・商談会 等)
→ 今回調査事業によりコネクションを構築した、現地日本酒ソムリエ、現地バイ
ヤー、日本食材ディストリビューターから、商品選定、現地イベント開催等に
関するサポートを得る。
まとめ
3月下旬、広島では次第に暖かさが増してきて、桜の開花も近いと感じられる時期に、
18時間をかけて韓国経由で英国ロンドン ヒースロー空港へ到着すると、気温が5度
以下という真冬のような天候でした。
滞在期間5日間の現地の気温は毎日5度以下で、帰国前日、ロンドン市内は冷たい雨
がみぞれになり、さらには雪になりました。
今回、約20年ぶりに訪問したロンドンの天候は厳しかったですが、市内のたたずま
いはほとんど変わっていないように感じられ、20年前に日本食材を買い求めて歩いた
市内のあちこちをとても懐かしく思い出しました。
当時はわずか数件しかなかった日本食材販売店舗や日本料理レストランですが、今回
の訪問で、想像できないほどの店舗数増加には驚くほかありませんでした。当時、日本
人滞在者や旅行者に一番なじみのあった日本食材販売店が、現在では10店舗展開とい
う欧州最大規模に事業を拡大している現状や、日本食材関係店舗顧客の大半が現地の人
という現場をまのあたりにすると、ロンドンの日本食への関心の高さ、現地の生活への
浸透度を理解することができました。
現地の関心の高さをベースにしたビジネスチャンスを中国地域の企業の皆様に活用
していただくため、今後、地域の支援関係機関の連携により、海外販路開拓の支援に向
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けた取り組みを進めて参りたいと考えております。
以 上
Piccadilly Circus
経済産業省 中国経済産業局 広報誌
旬レポ中国地域 2013 年 6 月号
Copyright 2013 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry.
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