平成 25 年 8 月吉日 社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会 理事長 久 保 厚 子 平成26年度の障害福祉関連予算及び障害者総合支援法についての要望 平素より知的障害のある人たちとその家族の福祉についてご尽力を賜り厚く御礼申し上げ ます。私たちは、知的障害のある人を持つ本人と家族の会として、知的障害のある人たちが地 域において、障害の程度にかかわらず、各ライフステージに応じた適切な支援のもと安心で豊 かな暮らしが実現できることを願っています。 今般、新たに障害者総合支援法が成立し、平成26年4月の施行分と施行3年後の見直し(平 成28年4月を目処)に向け、検討が予定されておりますが、その際地域で安心して暮らすこ とのできる支援体制を強化し確立するとして、法の理念、方向性については賛同し、大きな期 待をもっているところです。 近年、知的障害者の地域生活基盤は徐々に整備されています。しかしながら、いわゆる「親 なきあと」のことを考える際には、地域で安心して暮らすことのできる支援体制の確立が不可 欠です。そのため、以下の項目について重点的な対応をお願いいたします。 1 地域での居住の場(グループホーム・ケアホーム等)の設置・促進 ○ 規制緩和によるサービス基盤の整備・促進 グループホーム・ケアホーム(GH・CH)の整備数は順調に伸びていると言えますが、「親 なきあと」を考えると十分な設置数とはいえない状況です。引き続きホーム建設に必要な整備 費の確保、公営住宅の利用促進等、積極的な整備推進を図ってください。 また、現行の建築基準法、消防法が大きな障壁となり、戸建て型のGH・CHが整備しにく いという課題が指摘されています。入居者の安全確保は何よりも重要です。真に必要な安全設 備について十分な議論の上、現在の要件を可能な限り緩和してください。必要な規制でかかる 経費について事業者の重い負担とならないよう改修費等の補助を確保してください。 ○ 高齢化対策と重度障害者支援の質の確保 平成 26 年度実施予定の障害者総合支援法に基づくケアホーム・グループホームの一体化に 際しては、特に重度の障害者(行動障害がある者も含む) 、高齢知的障害者が安心して利用で きるような体制を新たに構築し、夜間、休日対応ができる支援員の配置、報酬単価の適正化な ど必要な措置を講じて支援体制の整備をしてください。 また、行動障害や発達障害などで様々な行動上の困難を抱え生きづらさ感じる人たちの支援 には、障害特性をきちんと踏まえ、彼らに対する支援技術や環境調整など、支援を見立て整え 1 られる人材が必要です。社会とのストレスを軽減し、行動障害の改善を図る視点に立った支援 者を担う専門家を育成する全国標準の研修フレームを、国において構築して下さい。行動に障 害のある人たちに適切な支援を行う人材の育成は、重い障害のある人たちの受け入れ事業所を 拡大することにつながるとともに、虐待防止にも役立ちます。過去の虐待事件は支援の未熟さ に由来するものが多く、支援現場での適切な支援体制の構築に資するものと期待しています。 ○ 障害状況や年齢に関わらず地域で生活できる基盤整備 障害者総合支援法の付帯決議には「障害者の高齢化・重度化や「親亡き後」も見据えつつ、 障害児・者の地域生活支援を更に推進する観点から、ケアホームと統合した後のグループホー ム、小規模入所施設等を含め、地域における居住の支援等の在り方について、早急に検討を行 うこと」と提起されています。全日本育成会としても、障害の軽重や年齢に関わらず、地域で 生活することができる「住まいの場」を整備していただく事を強く希望し期待します。ただし 小規模がつくとはいえ「施設」を名称に使うことで、かつて進められてきた「人里離れた」「平 準な対応」に居住施策が回帰するのでは無いかと危惧を持ちます。いわゆる従来型の入所施設 とは異なる位置づけであることを明確化するためにも、「地域ケア多機能ホーム」などの名称 が適当と考えます。 障害状況や年齢に関わらず地域で生活できる基盤として小規模入所施設(地域ケア多機能ホ ーム)を整備する際には、 □ 定員を 20 名以下にするなど、「まちなか」で地域交流を前提とした規模で整備すること □ ユニットケアや専用居室の確保がなされていること □ 医療ケアを必要とする人や高齢化して介護度が高くなった人などを受け入れるスタッフ 配置とすること □ 短期入所や日中一時支援、居宅介護や相談支援、日中活動サービスなど、施設が地域の拠 点となる機能が併設され、重度者の滞留の場となる事の無いように、地域支援を展開する 前提が用意されること □ 全国で展開するため、大規模社会福祉法人だけでなく、地域で良質な支援を提供している NPO法人や小規模社会福祉法人でも事業実施できる仕組みとすること □ 現行の入所施設総定員枠を増加させる位置付けではなく、あくまでも「地域での住まい」 という位置づけにすること など、総合支援法が掲げる「地域共生」を具現化するようなものとしてください。 2 地域で安心して暮らすことのできるバックアップ機能の充実 ○ 可能な限り身近な場所での支援の強化 地域で暮らす知的障害児者は、多くが家族と同居しています。しかし、核家族化の進行や都 心部への人口流入などにより、知的障害児者を支える家族に緊急事態が生じた際に頼ることの できる親族が近くにいない世帯が増加しています。短期入所機能が不足し、いざというときに 頼りになる支援が無く、家族の負担が大きくなっています。こうした世帯への地域生活が安心 となるようなバックアップ機能を充実させることが求められています。必要なときに身近な環 境で利用できる単独型のショートステイの増床をお願いします。 2 ○ 重度対応が可能なショートステイの整備 医療的ケアの必要な人や強度行動障害のある人(行動援護)などのセーフティーネットとし ての短期入所の整備促進はより重要です。具体的な拡充策を検討してください。また、家族に も知的・精神障害が疑われるケースへの緊急対応、虐待に至る手前の事案に対する家族支援、 軽度の知的障害はあるが療育手帳は所持していない人の生活支援、施設や病院からではなくG H・CHや親元からの自立を目指す知的障害者への独立支援など、現行制度下では個別給付サ ービスの対応になりにくい(ならない)人々へのバックアップも重要です。 これらの課題へ対応するため、 □ 24時間・365 日対応であること □ 連絡を受けてとりあえずの対応ができるスタッフが置かれていること □ 最重度障害の人でも安心して暮らすことのできるスタッフ体制を有していること □ 障害の軽重を問わず、緊急時の一時預かり(日帰り、宿泊の両方)に対応できること(通 常時の放課後デイや日中一時支援、短期入所の提供を含む) □ 在宅やGH・CHの人も一人暮らしに向けた体験を受けられること(障害児を含む) □ 障害者手帳がなくても状況から何らかの障害が疑われれば対応すること □ 知的障害者の地域生活を支える人材(ケアスタッフの養成はもとより、地域住民の啓発も 含む)の育成が行われること といった機能を有する事業が全国的に展開できるよう重点対策として緊急に対応をお願いし ます。 3 地域生活支援事業の着実な推進と強化 地域生活支援事業については、平成 25 年度から必須事業が増加し、「障害者等の自立した 日常生活及び社会生活に関する理解を深めるための研修及び啓発を行う事業」 「障害者や家族、 地域住民等により自発的に行われる障害者等が自立した日常生活及び社会生活を営むことが できるようにするための活動に対する支援を行う事業」「成年後見、保佐及び補助の業務を適 正に行うことができる人材の育成及び活用を図るための研修を行う事業」など、育成会として も必要性を指摘してきた事業が含まれている点を高く評価しています。 しかしながら、地域生活支援事業は国からの統合補助金によって運営されており、個別の事 業に対する補助が得られないことから、市町村が財源の持ち出しを恐れて最低限の事業展開に とどめてしまう傾向が課題であると指摘されています。 つきましては、地域生活支援事業をより推進し、市町村が平成25年度から増加した必須事 業へ着実に対応できるよう、統合補助金を増額するなど必要な財政的措置をお願いします。 4 相談支援体制の整備 ○ 計画的な相談支援専門員の配置 知的障害児者が地域で暮らしていくためには、相談支援体制の拡充が不可欠です。昨年4月 施行の「改正整備法」では、3年間で希望するすべての人にサービス等利用計画を作成する方 向を打ち出すなど、今後の体制拡充に強く期待しております。しかし、整備法施行から1年半 3 が経過しましたが、相談員の不足からサービス等利用計画の作成が進んでいない状況が見受け られます。計画的に相談員が養成できるよう、必要な措置を講じてください。 ○ 家族同居からの自立(地域移行)への支援強化 また、あわせて新設された地域相談(地域移行、地域定着)については、対象者が限定され ていることもあって順調なスタートとは言いがたい状況にあるようです。特に地域移行の対象 が成人の入所・入院に限定されているため、障害児やGH・CHや親元からの自立を目指す知 的障害者への独立(自立)支援が手薄い状況となっています。総合支援法によって地域相談の 対象が拡大されることとなっていますが、上記対象(特に地域定着)への適用拡大をお願いし ます 5.所得保障の拡充と利用者負担の軽減等 ○ 障害基礎年金の増額と家賃補助の増額 現在、地域で暮らす知的障害のある人たちの所得保障が甚だ不十分です。特に、多くを占め る低所得の利用者は日々の生活に不安を抱いています。現行の障害基礎年金を増額してくださ い。また家賃の地域間格差を考慮し、特に都市部におけるグループホーム利用者の家賃増額、 単身生活者に対する家賃助成を創設してください。 ○障害基礎年金取得への支援と若年(18~20歳)就労者への手当の新設 知的障害者(在宅20歳以上)の年金・手当受給者は74.9%(平成17年、厚生労働省 「知的障害児(者)基礎調査」 )となっています。一方、就労している知的障害者の賃金は 11.8万円(一般常用労働者26.4万円、身体障害者25.4万円:平成24年度版障害 者白書)と低額であり、障害基礎年金の受給がなければ、特に都市部においては経済的な自立 がはかれません。知的、発達障害全員が取得できるように手続き等ふくめた積極的な支援策を お願いします。また、高卒で就職し、年金受給年齢の20歳までの2年間は特に都市部におい ては経済的な自立が困難です。家賃助成等、働いて暮らしていける社会手当を創設してくださ い。 ○ 利用者負担軽減措置と負担上限額の合算化 障害児をかかえる若年層の家族にとって、各種福祉サービス利用に係る経済的負担は大きく、 引き続き特段の軽減策を講じてください。現在の利用者負担上限額の設定は、自立支援給付、 自立支援医療などそれぞれで設定され、合計すると大きな負担額となります。それらを合算し た上限設定としてください。 6.権利擁護の推進 本年 6 月の法改正により、成年後見制度の利用に伴い、剥奪されていた被後見人の選挙権を 回復する法整備にご尽力頂き、権利侵害が早急に改善されたことについて、ご理解ご尽力いた だきましたこと、心より感謝申し上げます。引き続き障害がある人たちの権利擁護についての 積極的な取り組みをお願いいたします。 4 ○ 障害者虐待防止法の実効性担保 平成 24 年 10 月から障害者虐待防止法が施行されました。障害者虐待をしない、させない 社会を目指しての普及啓発活動の一端を、当会としても重点的に取り組めるよう都道府県が行 う際の中央研修(平成25年度分)を担わせていただく事となり、感謝申し上げます。この法 律が養護者や支援者への懲罰や監視のためにできたのではなく、養護者についてはむしろ支援 の対象であることを強調した研修となるよう取りはからって参ります。 その上で、せっかくできた法律の実効性を担保し、知的障害児者のように社会的に弱い立場 へ置かれやすい人の虐待を許さない(虐待が起きない)社会を築くため対応のために、市町村 障害者虐待防止センターが確実に機能するよう、センターの運営や緊急一時保護などに必要な 財源を確保してください。障害者虐待防止法においては、使用者(会社・同僚)からの虐待が 独自に規定されています。労働分野と連携して、使用者からの虐待に関する啓発活動を継続的 に行ってください。今回の障害者虐待防止法では、病院や学校などが虐待定義から外れていま す。次回の法改正に向けて、定義の再検討をお願いいたします。 ○ 意思決定支援に対する取組み 改正された障害者基本法や、昨年成立した障害者総合支援法、改正知的障害者福祉法などの 中で、障害者の「意思決定支援」について規定が置かれました。特に意思決定への支援を要す る知的障害者にとっては、非常に重要な一歩が記されたものと評価しています。 ただ、意思決定支援については概念定義も明確ではないことから、まずは基礎的な議論を積 み上げてください。その際には □ 意思決定支援の必要性の共通認識 □ 意思決定支援をめぐる議論を進めるための「共通言語」の研究 □ 意思決定支援を構成する要素の整理 □ 相談支援、成年後見制度との関係性 □ 上記を踏まえた我が国における「意思決定支援」の概念定義 □ 本人を中心とした複数の関係者によるチームでの意思決定支援のシステム化 などについて特に留意してください。 当会では、平成 25 年度障害者総合福祉推進事業の助成を受けて、意思決定支援の在り方に ついて、上記、試行の仕組みを研究し、検討の上で提案いたします。今後、意思決定支援につ いては、施行の具体化に向けた体制を確保する方向で検討してください。 7.就労・雇用施策の更なる推進 本年6月、 「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、官民への「障害を理由 とした差別の禁止」 「合理的配慮」の法的義務化及び精神障害者に対する雇用義務化が実 現することになりました。就労・雇用施策の更なる推進、また、福祉・労働・教育・医療 の連携策の充実・拡大が求められています。 ○ 福祉サイドの支援施策 5 □ 就労移行支援事業への定着支援加算の新設 平成23年の就労移行支援事業所からの一般就労率は20%を超え、事業の成果が顕著 に見られます。それとともに、定着支援の重要性が高まっています。受入れ企業にとっ ての雇用継続に向けた取り組みとともに、送り出した就労移行支援事業所による定着支 援は必須であり、また受入れ企業からも求められているところです。就職したら企業ま かせではなく、就労支援の仕組みとして定着支援加算制度を設けてください。 □ 就労移行支援事業の事業間格差の解消、基準づくりについて 残念ながら就労移行支援事業所全体の36%が一般就労者をだしていないなど成果が みられません。その理由のひとつとして地域によっては就労者を出したあとの利用者の 補充ができないなど推察されますが、就労移行を積極的にすすめる地域での就労支援ネ ットワーク(協議会)の形成、また、就労支援事業のガイドラインの作成など、事業者 のサービスの質の向上、育成に取り組んでください。 □ 就労移行支援事業の再チャレンジについて 離職等により就労チャンスを逃した場合、就労移行支援事業を再度利用したくても、自 治体によっては一生に一度だけ、あるいは過去利用した就労移行訓練の残りの期間しか 利用できないなど制限が設けられています。就労に再度つなげるための継続性の効果と いう観点からも、再チャレンジできるように自治体に指導してください。 □ 障害者就業・生活支援センターの人口に見合う設置個所の拡大 知的、発達、精神障害がある人たちの就労支援は就労支援と生活支援の一体的提供が欠 かせません。現在、全国に327箇所が整備されていますが、特に大都市圏においては 人口(障害者数)に見合う箇所数とはなっていません。人口比を考慮した設置の促進を おねがいします。 ○労働サイドの支援策 (1)職場適応援助者(ジョブコーチ)事業の拡充(職場適応援助者助成金制度の見直し) 今般の法定雇用率2%の引き上げ等により、障害者雇用の拡大が見込まれている中、職 場への適応支援はさらにその必要性が高まっています。また、就職した精神障害者の定 着率の改善、発達障害に対する専門的支援の必要など喫緊の課題となっていることも鑑 みジョブコーチの拡充は急務となっております。 しかし、養成研修を受講しても、ジョブコーチへの希望者、受け皿は少なく、また、支 援報酬が日額制であり、常勤職員として継続して勤務することが困難な状況にあります。 必要とされる人数を確保し、専門性の向上をはかるために助成金制度の見直し、国庫で の財源確保を検討してください。 (2)就職後の障害がある社員への研修への助成 企業においては通常、初任者研修からはじまる社員への研修制度が確立しています。し かし、就職した知的障害、発達障害がある社員への研修はほとんど実施されていないの 6 が実情です。また、企業1社だけではノウハウもなく、障害者の人数も少ないので実施 することは現実的に困難です。職業人として、さらに成長していくことへの支援、雇用 継続、定着支援という観点から、企業支援の一環として数社での合同研修も可とする助 成金制度を新設してください。 (3)公的機関、独立行政法人、自治体等での知的障害者雇用の拡大 チャレンジ雇用の取り組みにより、中央省庁、地方労働局等への有期雇用職員の採用が 進みました。さらに採用枠の拡大、また公的な性格をもつ独立行政法人、地方自治体等 への拡大をお願いします。また、地方自治体での雇用状況についての調査を実施し、公 表してください。 (4)雇用促進住宅の利用条件の緩和 現在、地方によっては新卒者や求職者が、就職先を確保できても、通勤の便がなく就職 を断念することがあります。また、手取り給与が身体障害者の二分の一といった低賃金 であり、特に障害基礎年金の受給年齢に達しない18歳から20歳までの若年層は経済 的に自立できないのが現状です。通勤対策、また安定した雇用継続のために全国にある 雇用促進住宅をヘルパーの利用を含めた単身者用、あるいはグループホームとして活用 できるように利用条件を緩和してください。 (5)雇用助成金制度の見直し 雇用納付金を原資とした雇用助成金制度の基本は身体障害者雇用促進法の時代につく られたものであり、今後は、作業設備等のハードの面への助成とともに、継続雇用、定 着支援などの観点から、知的、発達、精神障害者の障害特性に対応する助成金制度の創 設等が必要です。制度の見直しを検討してください ○ 就労継続の位置づけを明確にし、工賃アップなどの工夫を更に強化してください。 就労継続 A 型と B 型の違いを明確にし、機能に応じた対応を求めます。B 型では工賃アッ プにつながる事業所へのコンサルタントの派遣を強化し継続してください。事業所開設認可が 杓子定規で困っています。規定の人数に満たなくても個別給付されている事を重視し、事業展 開が少人数でもできるよう自治体への指導をお願いします。 ○就労継続A型事業の短時間労働の改善にむけた指導と事業基準を見直してしてください。 就労継続A型事業所によっては利用者の就労時間を1日3~4時間に設定し、本来の事業内 容を逸脱しているところがあります。B型事業所からステップアップのつもりで利用変更され る人が、折角B型作業所で作業能力を磨いたことが、無駄になり、A型を利用することで一般 就労が望めなくなっている人が出てきています。早急に実態を把握し対策を講じてください。 ○ 生活介護の多様なプログラム展開で本人の自己実現と社会参加を促進してください。 生活介護事業所における多様なプログラム展開が広まるよう具体策をお願いします。働くこ とが手仕事などの作業にとどまらず、文化・芸術・スポーツ活動がプログラムとして取り入れ られ、社会交流や自己実現としてたかまるようプログラムの開発や指導インストラクターの要 7 請など行ってください。 ○ 障害者優先調達推進法への対応 本年4月から施行された障害者優先調達法も、育成会としてはかねてから成立を求めていた 法律であり、成立にご尽力いただきましたことを深くお礼申し上げます。しかしながら、この 法律についても実効性の担保が大きな課題です。 特に、国や独立行政法人が「優先的に障害者就労施設等から物品等を調達する」努力義務で あるのに対し、地方公共団体においては、「障害者就労施設等の受注機会の増大を図るための 措置を講ずる」努力義務の規定となっており、やや後退した印象を受けます。実際の市場規模 は国よりも地方公共団体の方が大きいのですから、地方公共団体においても障害者就労施設等 からの物品調達が増大するような運用をお願いいたします。 8.障害児支援と子育て支援等の充実・強化 ○ 障害児支援の強化 障害児支援については、昨年4月から児童福祉法を主たる支援の根拠法として位置付け、支 援主体も市町村となりました。これにより、身近な地域で支援を受けられる体制になったもの の、必要なサービス基盤整備が進んでいない地域が見受けられます。そこで、次の事項につい て重点的な整備を進めてください。 □ 地方版子ども子育て会議における障害児支援の扱い 今年度から、各自治体で「地方版子ども子育て会議」がスタートしていますが、国の子ど も子育て会議において障害児支援の専門家が構成員になっていないなど、子育て支援施策に おける障害児の扱いが極めて不十分です。障害児支援の根拠法を児童福祉法に移管した理念 を踏まえ、地方版子ども子育て会議において障害児支援が議論されるよう、強く働きかけて ください □ 障害福祉計画への数値目標導入 現在、児童福祉法における障害児支援サービスについては障害福祉計画における基盤整備 の数値目標となっておらず、サービス基盤を計画的に整備する妨げとなっています。国の基 本指針を見直すなどして、少なくとも障害児通所サービスについては早急に障害福祉計画へ 数値目標を掲載する扱いとしてください □ 障害児相談 障害児の相談が制度化されましたが、児童期の支援を組み立てることができる相談員が不 足しています。人材養成を強化してください。 また、障害が未確定な時期の保護者に対する相談は、保護者の揺れる心情への寄り添いなど に長い時間を要するため、出来高払いになじみにくい分野です。地域生活支援事業の相談支 援について、障害が未確定な時期の保護者に対する相談に対する特別な補助を創設するなど、 障害未確定期の保護者支援を強化してください。 □ 保育所等訪問支援 昨年創設された保育所等訪問支援は、障害児が地域の幼稚園や保育所、あるいは放課後児 童クラブなどで地域の子どもたちと一緒に育つ可能性を広げる重要なサービスです。早急に 8 全国で事業展開できるような措置を講じてください。なお、保育所等訪問支援は障害児通所 支援の1類型であるにも関わらず、家庭連携加算が設定されていません。保育所等での適切 な訪問支援には家庭における支援との連動が重要です。保育所等訪問支援の訪問先に家庭を 加える運用とするか、家庭連携加算を算定できるようにしてください □ 通所型サービス 改正された障害者基本法では、「療育」という項目を新設し、「可能な限りその身近な場 所において療育その他これに関連する支援を受けられるよう必要な施策を講じなければな らない」と規定しています。また、厚労省の資料によると、児童発達支援センターを市町村 に最低1か所、児童発達支援事業や放課後等デイサービスを概ね中学校区に1か所整備する ことが望ましいとされています。療育支援サービスの市町村移行に伴う都道府県の役割・責 任の明確化をするとともに、重症心身障害児(者) 、行動障害を伴う重度発達障害者の支援 を強化し、医療、教育、福祉、相談機関、親の会の連携、療育の総合的支援の体制の確立を 目指して通所型サービスの整備が進むような支援を講じてください。 9 文化・芸術・スポーツ活動への支援強化 近年、知的障害児者の文化・芸術・スポーツ活動は目覚ましいものがあります。NHK大河 ドラマの題字に採用された金澤翔子氏、パリにおける大規模な展覧会を成功させた「アール・ ブリュット(生の芸術)」など、文化・芸術分野における活躍はマスコミ等でも大きく取り上 げられています。また、スポーツ分野においてはロンドンパラリンピックにおいて知的障害選 手を対象とした競技が復活する等、今後の知的障害者スポーツ振興に期待が寄せられています。 文化・芸術・スポーツの分野は障害の有無に関わらず同じ価値観、同じルールで楽しむこと ができることから、地域共生を具現化するためのツールとして大変有力です。文化・スポーツ 施策と連動した支援の強化をお願いします。また多様なプログラム展開とインストラクター養 成が可能となるような文化・芸術活動の拠点を、障害者スポーツセンターのように全国各地に 展開してください。 10.災害対策 今後発生が予想される大規模震災に向けて、以下の項目に留意したうえで、災害時に、特 に弱者となる知的障害者への万一への備えを具体化するようお願いします。 □ 地震、津波等の災害時、最弱者である障害者の保護システムの構築 □ 知的障害者専用の避難所の設置、一般の避難所の中での専用スペースの設置 □ 帰宅時災害の際に、ターミナル駅など交通機関での障害者保護・支援システムの構築(消 防、警察等との連携等) □ 障害者が避難できる施設の場所を、あらかじめひとり一人の障害者に紹介する仕組みの 構築(個別支援計画での対応) 上記内容について、各市町村の自立支援協議会などで検討が深まるようパンフレットなどを 作成し啓蒙・啓発を行ってください。 9
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