時間差分スキーム(4)

時間差分スキーム (4)
振動方程式への応用
1
時間差分スキーム (4)
アダムス-バッシュフォース (Adams-Bashforth) スキームの安定性と
位相
ここでは 2 次のアダムス-バッシュフォーススキームについて振動方程式に当ては
めた場合の安定性と位相比について述べる. 2 次のアダムスバッシュフォースス
キームは
(
)
3 n 1 n−1
n+1
n
U
= U + ∆t
f − f
2
2
と表せる. 今, f = iωU とすると,
(
U
n+1
)
3 n 1 n−1
= U + ∆t
f − f
2
2
)
(
3 n 1 n−1
n
U − U
.
= U + iω∆t
2
2
n
(1)
このとき増幅係数 λ を用いて U n+1 と U n を U n−1 で表したら,
U n = λU n−1 ,
U n+1 = λU n = λ2 U n−1 .
これらを (1) 式に代入すると
(
2
λU
n−1
)
3 n−1 1 n−1
= λU
+ iω∆t
λU
− U
2
2
)
(
1
3
= 1 + (iω∆t) λU n−1 − (iω∆t)U n−1
2
2
n−1
となる. ここで p ≡ ω∆t とすると
(
)
3
1
2
λ − 1 + i p λ + i p = 0.
2
2
2011 0929-ogihara.tex
(2)
2011/10/06(荻原 弘尭)
時間差分スキーム (4)
振動方程式への応用
2
(2) 式からアダムス-バッシュフォーススキームもリープフロッグスキームと同様に
2 つの λ をもつ. (2) 式を λ について解くと,
[
]
√
1
3
9 2
λ1 =
1 + i p + 1 − p + ip ,
2
2
4
[
]
(3)
√
3
1
9 2
1 + i p − 1 − p + ip .
λ2 =
2
2
4
p → 0 のとき, λ1 → 1, λ2 → 0 である. したがって, λ1 に対応するモードを物理
モード, λ2 に対応するモードを計算モードと解釈できる. p が十分小さいとき, 計
算モードは減衰する. これはアダムス-バッシュフォーススキームの利点である. そ
こで, |p| < 1 のときの λ1 と λ2 の振る舞いを (3) 式を用いて調べる. (3) 式 の根号
の部分をテイラー展開し, 地道に計算すると,
1
1
3
λ1 = 1 + ip − p2 + i p3 + p4 + · · · ,
2
4
16
1
1 2
1 3
3 4
λ2 = i p + p − i p − p + · · · .
2
2
4
16
実部と虚部に分けて表すと,
(
)
(
)
1 2
3 4
1 3
λ1 = 1 − p + p − · · · + i p + p + · · · ,
2
16
4
)
(
)
(
1
1 2
3 4
1 3
p − p + ··· + i
p − p − ···
λ2 =
2
16
2
4
となるので,
√
λ1 λ∗1
(
) 21
3 4
= 1 + p + ···
,
4
√
|λ2 | = λ2 λ∗2
(
) 12
1 2
.
=
p + ···
4
|λ1 | =
(4)
さらに根号の中を p4 までで打ち切ってテイラー展開すると最終的に,
1
|λ1 | = 1 + p4 + · · · ,
4
1
|λ2 | = p + · · ·
2
(5)
を得る. |λ1 | は 1 よりも大きく |λ2 | は 1 より小さい. つまりアダムス-バッシュフォー
ススキームの物理モードは不安定であり, 計算モードは安定で減衰する. 但し, 増幅
2011 0929-ogihara.tex
2011/10/06(荻原 弘尭)
時間差分スキーム (4)
振動方程式への応用
3
係数は O(1 + p4 ) なので ω∆t を周期にたいして十分小さくとれば |λ1 | はあまり問
題はない. 今, |p| < 1 より周期を T とすれば
|p| < 1,
|ω∆t| < 1,
∆t < 1,
T である. 物理モードの増幅率は λ1 ∼ 1 + p4 とすると n 回目までの増幅率は,
λn1 ≈ (1 + p4 )n
= 1 + np4 + O(p8 )
となる. 今 n 回目までの計算が一周期分とすると,
∆t
1
=
T
n
となるので,
T 4
λn1 ≈ 1 +
p + O(p8 )
∆t
1 4
≈1+
p
ω∆t
= 1 + p3
である. つまり, O(p) ∼ 0.1 と仮定するとだいたい 100 ぐらいの増幅率になる.
また, 4 段階数のアダムス-バッシュフォーススキームなら物理モードは安定である
ことも知られている. 参考に 4 段階数のアダムスーバッシュフォーススキームの安
定性の図を図 1 に示す1 ) .
位相比
θ
を求める.
p
(
θ = p arctan
λim
λre
なので |p| << 1 のときの物理モードの位相比
(1
)
θ1
は,
p
3 4
p3 + 16
p + ···
1 2
1 − 2p + · · ·
(
)
1 3
p
≈ arctan
4
1
≈ p3 < 1.
4
θ1
= arctan
p
1)
)
4
なぜか上部と下部に回転してしまっている部分が出ている.
2011 0929-ogihara.tex
2011/10/06(荻原 弘尭)
時間差分スキーム (4)
振動方程式への応用
4
dU
= λx での 4 段階数のアダムス- バッシュ
dx
フォースキームの安定性の図. 横軸が実軸, 縦軸が虚軸を表している.
図 1: λ を何らかの複素数としたとき
計算モードの位相比
θ2
は,
p
θ2
= arctan
p
(
1
p
2
1 2
p
2
( )
1
≈ arctan
p
π
≈ > 1.
2
− 41 p3 − · · ·
3 4
− 16
p + ···
)
よって, 物理モードの位相は早く進み, 計算モードの位相は遅く進む.
2011 0929-ogihara.tex
2011/10/06(荻原 弘尭)