■専任教員 コラム 『目標を持つこと,計画を立てること,実行すること』 鈴木 實 教授 「○○君メールありがとう。試験の結果は残念でしたね。しかし,試験という ものはそういうものです。特に司法試験は昔からそうだから驚いても落胆しても だめです。また来年をめざして淡々と努力するのみです。特に,○○君の場合は, あと少しの努力と集中で合格できる実力に達していますから,コンスタントに努 鈴木 實 力してください。…「あと一歩」の好成績ですから,処方箋は「あと一押し」と 教授 いうことですね。とは言ってもこれが総合的な気力ともからんでなかなか楽では ☆刑法演習、刑事法総合Ⅰ、法曹倫理 ない一歩です。どうか,淡々とした気持ちで一日一日気を抜かずに計画どおり勉 刑事訴訟実務の基礎、模擬裁判、 強を継続してください。合格はすぐ目の前です。来年の合格を祈っています。 市民生活と犯罪 頑張ってください。」 これは,数年前ある卒業生が私に残念ながらその年の司法試験に不合格であった旨を知らせてくれたメールに対する私の返 事です。この人は既に合格しています。 人には誰でも「自分は不運だ」と感じる日があるものです。しかし,本当に「不運」である場合だけではなく,よく考えれ ば「当然」の結果である場合もあるでしょう。実際には後者の方が多いのではないでしょうか。 でもそれは救いでもあります。本当の「不運」であれば運が向くまで待つしか対策はないでしょうが,「当然」の結果として 事がうまく運ばなかった場合は,よく事態を分析し,着実な計画を立てて,再度実行すれば,目的は必ず達成できるはずだか らです。 また,それとは別に人に不運はつきものですから,不運の日でも自分を支えてくれるものを持ちたいですね。これはそれぞ れ人により異なります。 私は検察官だった時代に犯行動機の分からない殺人事件等で精神鑑定をする事件を何度か経験しました。そして処分の決定 や立証の準備のために鑑定医から責任能力の有無等について事情を聞いたり話したりする機会もありました。そういう関係も あって精神科医の著作に興味を持ったこともありましたが,中でもフランクルの実体験に基づく言葉は私たちを力づけてくれ るでしょう。 さらに,私の場合でいえば,音楽もあります。これも天空の星のごとく多くの作曲家が感動的な作品を残してくれています。 ウイーンのシュテファン教会のパイプオルガンの響きは聞く人の心に染みわたるでしょう。 また,絵画もあります。南フランスのアルルには,ゴッホが精神の病で失意の入院中にその庭を描いたという建物が残され ていました。ルノワールもいいし,彼らに衝撃に近い感動を与えた日本の浮世絵もすばらしい。 このように生きているといろいろ感動があるものです。 そのことともからんで,一定の期間全力で自分の目標に向かって邁進し,背水の陣で努力することは後で振り返ってすばらし い結果を生むことになるでしょう。これも生きている感動のひとつです。 法科大学院の現実は厳しいですね。しかし,目標を失わずに,着実な計画を立てて,実行してください。夢や目標が実現し たときの喜びは,そのための苦労を帳消しにして余りがあるでしょう。 <鈴木實教授 経歴> 早稲田大学第一法学部卒業。東京地検検事、法務総合研究所教官、東京高検検事、同公判部長、同公安部長、最高検検事等を経て現職。 第二東京弁護士会所属。
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