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フランスの木造建築技術/産業界の構成について
FCBA木造建築産業部建築担当課長
パトリック・モリニエ
------------------------------------------------------------------------------------1.フランスの木造建築産業界の構成
フランスの木造建築技術、産業界がどのように構成されているのかを紹介する。フランスでは
木造の工業化が進み、工業化によって付加価値を高めていく方向にある。大工のような職人が消
えゆく中、木の文化にどのように入っていくかが課題である。F-2-2の4ページの図は、左上の製
材所から実際に使用する建築家やエンジニアまで、間に取引を行う商社を含め、木材に付加価値
を与える組織を表している。
2.フランスの建設技術
フランスで「木造建築」というとシャーレという山小屋も、豪華な居住家屋もあった。最近木
造がまた新たに勢いを増してきたことから、集成材を使った高度な技術の建物である美術館や、
中学校などの公共建築、3階建ての住宅、中層の建築物も建てられているが、防火・耐火の制限、
防音、遮音、夏の快適さなどが重要なポイントとなる。
主な木造の構法を6つ紹介する。
① 山間部で戸建住宅に使われるログハウス。
② 工場でプレカットした木材を利用する軸組み構法。個人住宅だけでなく広い空間を作ること
ができるため、中層の建築物にも使われている。
③ コンクリートと木材の組み合わせ構法。柱と床部分をコンクリートにし、外壁部分を木造に
するスタイルがフランスでは増えている(F-2-2の11ページ)。施工が早く、断熱性能が高い、
また、防音、遮音性能がよく、コスト面もよい。
④ クロス・ラミネーティド・ティンバー(CLT)。フランスに、製品として出てきたのが今か
ら5~10年前で、12m×3m ぐらいの大きな壁もできるため、床や壁に使用し、技術も伸びて
いるがフランスには今のところCLT のメーカーがない。また、フランスの南西部には地震が
あり、そのような地域では耐震性を問われる(F-2-2の12ページ)。
⑤ 3D モジュラータイプの工法。設備もセットされており、施工が早いという利点があるが、運
ぶのが大変で市場としてはあまり伸びていない(F-2-2の13ページ)。
⑥ ティンバーフレーム工法。これがフランスで最もよく使われている。構造部材の中に断熱材
が入り、内装は木材かプラスター仕上げ。外装は顧客の要望に合わせ、板張り又は石を使った
外壁等となる。
各工法のシェアは、ログハウスが5%、軸組み構法が12%、CLTが4%、ティンバーフレーム工
法が75%、その他は4%である。
木造建築のトレンドにより新しい建築工法;コンクリート構造に木製カーテンウォールを組み
合わせたものや、古い建築の木材を用いた改修システムの市場などが伸びている。
建築物の改修に木材を利用する事例として、ボルドーの大学でのプロジェクトでは、現在の建
物に、将来、断熱を考慮し、ファサード部分だけ木にする案や、新たに居住空間を上に建て増す
計画がある。しかし、改修のための温熱環境に関する計算モデルが承認されていないため、実験
による検証が求められた。
そこでFCBAの研究所では、古いコンクリートのままの壁と、木材で覆った壁の温度と湿度の
試験を行った。
コンクリートを使用した従来の工法に比べ、木造は競争力をどこで取れるのか、コンクリート
造は木造に比べ設計時間が短く、構成部品や、部材が安価で、工程時間が短い。輸送の時間、現
地での設置の時間は同じぐらいのため、事前の設計、加工にじっくりと時間をかけることによっ
て、実際の現地での施工時間を短縮でき、全体の工程時間は、コンクリート造と木造で同じぐら
いにできる可能性がある。
木造建築がだれの手にも届くようにするため、現在、FCBAとCSTB、建築家や建築会社等業
界の方々と一緒に木造建築のカタログをつくっている。このカタログは、壁、床、屋根のなどの
各部位の技術を全て網羅し、どのような断熱性能、防音性能、耐火性能、機械性能があるか等を
細かく記載している。2012年末に第1版(フランス語)を出版する予定である(F-2-2の22ページ)。