健康食品 基礎知識

新版
健康食品 の基 礎 知識
新版
健康食品
の
基礎知識
編著
芝 紀代子
著
金森きよ子 久保田 亮 栗原由利子 酒井伸枝 猿 橋裕子 本間 達
編著芝
紀代子
第 1 章 食品とは
消費期限とは,定められた方法により保存した場合において,腐敗,変敗その他の
2
食品の分類
食品添加物の安全性と有効性を確認し厚生労働大臣が指定した指定添加物 447 品目,
品質の結果に伴い安全性に欠くこととなる恐れがないと認められる期限を示す年月日
長年使用されてきた天然添加物(365 品目の既存添加物,天然香料,一般飲食物添加
をいう。弁当や洋生菓子など長くは保存がきかない食品等に表示され,開封していな
物)に分類される。
い状態で,表示されている保存方法に従って保存した時に,食べても安全な期限を示
している。 一方,賞味期限とは,定められた方法により保存した場合において,期待されるす
べての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし,
当該期限を超えた場合であっても,これらの品質が保持されているものであるとする。
(5)健康食品
いわゆる「健康食品」は法律上の定義はなく,広く健康の保持増進に資する食品と
して販売・利用されるものを指すと考えられる。
食品を大別すると,機能性が表示できない一般食品(栄養補助食品,健康補助食品,
ハム・ソーセージやスナック菓子,缶詰など冷蔵や常温で保存がきく食品等に表示さ
サプリメントを含む)と,国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした保健
れ,開封していない状態で,表示されている保存方法に従って保存した時に,おいし
機能食品に分けられる。
く食べられる期限を示している。
3)現行の食品衛生法に規定されている食品の取り扱い
(6)保健機能食品制度
保健機能食品制度とは 2001 年に創設された制度で,一定の条件を満たした食品に
食品衛生法では,これまで「切断」という「形態の変化」はすべて加工食品と区分
ついて「保健機能食品」と称することを認める制度である。保健機能食品は表示する
していたが,食品表示基準においては,調整〔一定の作為は加えるが,加工に至らな
機能等の違いによって特定保健用食品と栄養機能食品に分類されていたが,2015 年 4
いもの,
(例)輸送または保存のための乾燥,冷凍,塩水漬けなど,切断,混合(異
月から新たに機能性表示食品が加わった。
種混合を除く〕や選別〔一定の基準によって仕分け,分類すること,(例)果実のサ
栄養機能食品,特定保健用食品,機能性表示食品をまとめて保健機能食品,特定保
イズ分け〕という過程を経た食品については,一定の作為は加えられているものの,
健用食品と特別用途食品をまとめて特別用途食品という(図 1-4)。このうち,特別
その程度が加工に至らないため「生鮮食品」とするとした。
用途食品は特別の用途表示ができる食品のことを指し,病者用食品,妊産婦・授乳婦
ただし,衛生上の観点から必要とされていた事項に関しては「生鮮食品」,「加工食
用粉乳,乳児用調製粉乳,えん下困難者用食品がある。
品」の区分にかかわらず表示を義務づけるとしている。
4)現行の JAS 法に規定されている食品の取り扱い(異種混合について)
医薬品(医薬部外品を含む)
異種混合とは,複数の種類の農産物,畜産物または水産物を切断し,混ぜ合わせた
特別用
途食品
ものを指す。現行の JAS 法では,異種混合したものは「加工食品」とされている。
しかし,食品表示法では,異種混合のうち焼き肉セットや刺身盛り合わせのように,
特定保健用食品
(個別許可制)
おのおのの生鮮食品を組み合わせたり,盛り合わせただけで,ばらばらに飲食,調理
等されることが想定されるものは「生鮮食品」,ミックスサラダや合挽きのように,
おのおのの生鮮食品が混合されて,1 つの商品としてそのまま飲食,調理などされる
食品
保健機 栄養機能食品
能食品 (規格基準制)
機能性表示食品
(届出制)
ことが想定されるものは「加工食品」と区分するとした。
(4)食品添加物
食品添加物とは食品の製造の過程において,または食品の加工もしくは保存の目的
病者用食品,乳児用調整粉乳, 特別の用途表示ができる
妊産婦・授乳婦用粉乳,
(消費者庁の審査必要)
えん下困難者用食品
一般食品
いわゆる健康食品
その他の一般食品
保健の機能表示ができる
(消費者庁の審査必要)
栄養成分の機能表示ができる
(消費者庁の審査不要)
許可マーク
はない
科学的根拠に基づいた
機能表示ができる
(消費者庁の審査不要)
許可マーク
はない
効果や機能の表示はできない
で,食品に添加,混和,湿潤その他の方法によって使用するもの(食品衛生法第 4 条
第 2 項に規定されるもの)をいう。
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図 1-4 食品と医薬品の大まかな分類
13
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第 1 章 食品とは
1)特定保健用食品(トクホ)
特定保健用食品(トクホ)とは,健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づ
いて認められ,その摂取により,特定の保健の目的が期待できる旨の表示が可能な食
2
表 1-5 特定保健用食品
表示内容
おなかの調子を整える食品
品である。特定保健用食品として販売するためには,食品ごとに食品の有効性や安全
および条件付き特定保健用食品には,許可マークが付される(図 1-4)。
①特定保健用食品の区分
区分としては,②特定保健用食品,③特定保健用食品(規格基準型),④特定保健
用食品(疾病リスク低減表示),⑤条件付き特定保健用食品がある。
食物繊維を含 難消化性デキストリン,ポリデキストロース,グアーガム分
む食品
解物,サイリウム種皮由来の食物繊維,小麦ふすま,低分子
化アルギン酸ナトリウム,ビール酵母由来の食物繊維,寒天
由来の食物繊維,小麦外皮由来の食物繊維,低分子化アルギ
ン酸ナトリウムと水溶性コーンファイバー,難消化性でん粉,
小麦ふすまと難消化性デキストリン,還元タイプ難消化性デ
キストリン,大麦若葉由来の食物繊維
②特定保健用食品
健康増進法第 26 条第 1 項または同法第 29 条第 1 項の承認を受けて,食生活において
特定の保健の目的で摂取をする者に対し,その摂取により当該保健の目的が期待でき
る旨の表示をする食品のことをいう。13 項目の表示内容があり,2015 年 6 月 10 日現
その他の成分 プロピオン酸菌による乳清発酵物,Bacillus Subtilis K-2
を含む食品
株(納豆菌 K-2 株)
在,1,164 品目が許可されている(表 1-5)。
特定保健用食品としての許可実績が十分であるなど科学的根拠が蓄積されている関
与成分について規格基準を定め,消費者委員会の個別審査がなく,事務局において規
格基準を満たしているかの審査を行い許可する食品のことをいう(表 1-6)。規格基
準については,下記ア~ウが設定されている。
ア 関与成分について
複数の成分を ガラクトオリゴ糖とポリデキストロース
含む食品
コレステロールが高めの方の
食品
大豆蛋白質,キトサン,リン脂質結合大豆ペプチド,植物ス
テロールエステル,低分子化アルギン酸ナトリウム,植物ス
テロール,植物スタノールエステル,植物性ステロール,ブ
ロッコリー・キャベツ由来の天然アミノ酸,茶カテキン
コレステロールが高めの方,
おなかの調子を整える食品
低分子化アルギン酸ナトリウム,サイリウム種皮
血圧が高めの方の食品
サーデンペプチド,かつお節オリゴペプチド,ラクトトリペ
プチド,イソロイシルチロシン , 杜仲葉配糖体,わかめペプ
チド,γ - アミノ酪酸,酢酸,海苔オリゴペプチド,ゴマペ
プチド,ローヤルゼリーペプチド,燕龍茶フラボノイド,カ
ゼインドデカペプチド,クロロゲン酸類
ミネラルの吸収を助ける食品
CPP(カゼインホスホペプチド),CCM(クエン酸リンゴ酸
カルシウム),ヘム鉄
ミネラルの吸収を助け,おな
かの調子を整える食品
フラクトオリゴ糖,乳実オリゴ糖
骨の健康が気になる方への食
品(疾病リスク低減)
大豆イソフラボン,フラクトオリゴ糖,MBP(乳塩基性蛋
,ポリグルタミン酸,
白質),ビタミン K2(メナキノン -7)
ビタミン K2(メナキノン -4),カルシウム
虫歯の原因になりにくい食品
と歯を丈夫で健康にする食品
パラチノースと茶ポリフェノール,マルチトールとパラチノー
スと茶ポリフェノール,マルチトールと還元パラチノースとエ
リスリトールと茶ポリフェノール,マルチトール,キシリトー
ルとフクロノリ抽出物(フノラン)とリン酸一水素カルシウム,
キシリトールと還元パラチノースとフクロノリ抽出物(フラノ
ン)とリン酸一水素カルシウム,CPP-ACP(乳蛋白分解物)
,
定められた成分規格に適合していること。なお,一品目中に規格基準に定められ
た成分を複数含んではならないこと。
イ 食品形態および原材料の種類について
食品形態は,表の区分ごとに既に許可されているものとすること。原則として,
関与成分と同種の原材料(他の食物繊維またはオリゴ糖)を配合しないこと。過剰
用量における摂取試験が実施されていること。過剰用量は,原則的に当該食品とし
て摂取する量の原則として 3 倍以上の範囲を指す。
ウ 表示について
表示できる保健の用途および摂取上の注意事項は,表のごとくに表示すること。
なお,必要に応じた注意事項の記載を求める場合がある。容器包装において関与成
分以外の原材料に係る事項を強調して表示するなど,特定保健用食品(規格基準型)
制度の創設の趣旨に照らして,不適切な表示を行うものでないこと。
14
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関与する成分
オリゴ糖類を キシロオリゴ糖,大豆オリゴ糖,フラクトオリゴ糖,イソマ
含む食品
ルトオリゴ糖,乳果オリゴ糖,ラクチュロース,ガラクトオ
リゴ糖,ラフィノース,コーヒー豆マンノオリゴ糖
乳酸菌類を含 ラ クト バ チ ル スGG株,ビ フ ィド バ ク テリウ ム・ロン ガ ム
む食品
BB536,Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus
2038株 とStreptococcus salivarius subsp. thermophilus
1131株,L. カゼイ YIT 9029(シロタ株)
,B. ブレーベ・ヤク
ル ト 株,Bifidobacterium lactis FK120,Bifidobacterium
lactis LKM512,L.アシドフィルスCK92株とL.ヘルベティカ
スCK60 株カゼイ菌(NY1301株)
,ガセリ菌SP株とビフィズ
ス菌SP株,Bifidobacterium lactis BB-12,Bifidobacterium
lactis BB-12,ビフィズス菌Bb-12,LC1乳酸菌
性について審査を受け,消費者庁長官に許可されなければならない。特定保健用食品
③特定保健用食品(規格基準型)
食品の分類
(次頁に続く)
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第 1 章 食品とは
1)特定保健用食品(トクホ)
特定保健用食品(トクホ)とは,健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づ
いて認められ,その摂取により,特定の保健の目的が期待できる旨の表示が可能な食
2
表 1-5 特定保健用食品
表示内容
おなかの調子を整える食品
品である。特定保健用食品として販売するためには,食品ごとに食品の有効性や安全
および条件付き特定保健用食品には,許可マークが付される(図 1-4)。
①特定保健用食品の区分
区分としては,②特定保健用食品,③特定保健用食品(規格基準型),④特定保健
用食品(疾病リスク低減表示),⑤条件付き特定保健用食品がある。
食物繊維を含 難消化性デキストリン,ポリデキストロース,グアーガム分
む食品
解物,サイリウム種皮由来の食物繊維,小麦ふすま,低分子
化アルギン酸ナトリウム,ビール酵母由来の食物繊維,寒天
由来の食物繊維,小麦外皮由来の食物繊維,低分子化アルギ
ン酸ナトリウムと水溶性コーンファイバー,難消化性でん粉,
小麦ふすまと難消化性デキストリン,還元タイプ難消化性デ
キストリン,大麦若葉由来の食物繊維
②特定保健用食品
健康増進法第 26 条第 1 項または同法第 29 条第 1 項の承認を受けて,食生活において
特定の保健の目的で摂取をする者に対し,その摂取により当該保健の目的が期待でき
る旨の表示をする食品のことをいう。13 項目の表示内容があり,2015 年 6 月 10 日現
その他の成分 プロピオン酸菌による乳清発酵物,Bacillus Subtilis K-2
を含む食品
株(納豆菌 K-2 株)
在,1,164 品目が許可されている(表 1-5)。
特定保健用食品としての許可実績が十分であるなど科学的根拠が蓄積されている関
与成分について規格基準を定め,消費者委員会の個別審査がなく,事務局において規
格基準を満たしているかの審査を行い許可する食品のことをいう(表 1-6)。規格基
準については,下記ア~ウが設定されている。
ア 関与成分について
複数の成分を ガラクトオリゴ糖とポリデキストロース
含む食品
コレステロールが高めの方の
食品
大豆蛋白質,キトサン,リン脂質結合大豆ペプチド,植物ス
テロールエステル,低分子化アルギン酸ナトリウム,植物ス
テロール,植物スタノールエステル,植物性ステロール,ブ
ロッコリー・キャベツ由来の天然アミノ酸,茶カテキン
コレステロールが高めの方,
おなかの調子を整える食品
低分子化アルギン酸ナトリウム,サイリウム種皮
血圧が高めの方の食品
サーデンペプチド,かつお節オリゴペプチド,ラクトトリペ
プチド,イソロイシルチロシン , 杜仲葉配糖体,わかめペプ
チド,γ - アミノ酪酸,酢酸,海苔オリゴペプチド,ゴマペ
プチド,ローヤルゼリーペプチド,燕龍茶フラボノイド,カ
ゼインドデカペプチド,クロロゲン酸類
ミネラルの吸収を助ける食品
CPP(カゼインホスホペプチド),CCM(クエン酸リンゴ酸
カルシウム),ヘム鉄
ミネラルの吸収を助け,おな
かの調子を整える食品
フラクトオリゴ糖,乳実オリゴ糖
骨の健康が気になる方への食
品(疾病リスク低減)
大豆イソフラボン,フラクトオリゴ糖,MBP(乳塩基性蛋
,ポリグルタミン酸,
白質),ビタミン K2(メナキノン -7)
ビタミン K2(メナキノン -4),カルシウム
虫歯の原因になりにくい食品
と歯を丈夫で健康にする食品
パラチノースと茶ポリフェノール,マルチトールとパラチノー
スと茶ポリフェノール,マルチトールと還元パラチノースとエ
リスリトールと茶ポリフェノール,マルチトール,キシリトー
ルとフクロノリ抽出物(フノラン)とリン酸一水素カルシウム,
キシリトールと還元パラチノースとフクロノリ抽出物(フラノ
ン)とリン酸一水素カルシウム,CPP-ACP(乳蛋白分解物)
,
定められた成分規格に適合していること。なお,一品目中に規格基準に定められ
た成分を複数含んではならないこと。
イ 食品形態および原材料の種類について
食品形態は,表の区分ごとに既に許可されているものとすること。原則として,
関与成分と同種の原材料(他の食物繊維またはオリゴ糖)を配合しないこと。過剰
用量における摂取試験が実施されていること。過剰用量は,原則的に当該食品とし
て摂取する量の原則として 3 倍以上の範囲を指す。
ウ 表示について
表示できる保健の用途および摂取上の注意事項は,表のごとくに表示すること。
なお,必要に応じた注意事項の記載を求める場合がある。容器包装において関与成
分以外の原材料に係る事項を強調して表示するなど,特定保健用食品(規格基準型)
制度の創設の趣旨に照らして,不適切な表示を行うものでないこと。
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関与する成分
オリゴ糖類を キシロオリゴ糖,大豆オリゴ糖,フラクトオリゴ糖,イソマ
含む食品
ルトオリゴ糖,乳果オリゴ糖,ラクチュロース,ガラクトオ
リゴ糖,ラフィノース,コーヒー豆マンノオリゴ糖
乳酸菌類を含 ラ クト バ チ ル スGG株,ビ フ ィド バ ク テリウ ム・ロン ガ ム
む食品
BB536,Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus
2038株 とStreptococcus salivarius subsp. thermophilus
1131株,L. カゼイ YIT 9029(シロタ株)
,B. ブレーベ・ヤク
ル ト 株,Bifidobacterium lactis FK120,Bifidobacterium
lactis LKM512,L.アシドフィルスCK92株とL.ヘルベティカ
スCK60 株カゼイ菌(NY1301株)
,ガセリ菌SP株とビフィズ
ス菌SP株,Bifidobacterium lactis BB-12,Bifidobacterium
lactis BB-12,ビフィズス菌Bb-12,LC1乳酸菌
性について審査を受け,消費者庁長官に許可されなければならない。特定保健用食品
③特定保健用食品(規格基準型)
食品の分類
(次頁に続く)
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第 1 章 食品とは
2
表示内容
関与する成分
虫歯の原因になりにくい食品
と歯を丈夫で健康にする食品
リン酸化オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)
,キシリトールとマ
ルチトールとリン酸一水素カルシウムとフクロノリ抽出物(フ
ラノン)
,フクロノリ抽出物(フノラン)
,緑茶フッ素,カルシ
ウムと大豆イソフラボンアグリコン
血糖値が気になり始めた方の
食品
難消化性デキストリン,グァバ茶ポリフェノール,小麦アル
ブミン,豆鼓エキス,L- アラビノース
血中中性脂肪や体脂肪が気に
なる方の食品(条件付きトク
ホ)
グ ロ ビ ン 蛋 白 分 解 物,中 鎖 脂 肪 酸,茶 カ テ キ ン,EPA と
DHA,ウーロン茶重合ポリフェノール,コーヒー豆マンノ
オリゴ糖,ベータコングリシニン,難消化性デキストリン,
クロロゲン酸類,りんご由来プロシアニジン,モノグリコシ
ルヘスペリジン,豆鼓エキス
血中中性脂肪と体脂肪が気に
なる方の食品
ウーロン茶重合ポリフェノール
血糖値と血中中性脂肪が気に
なる方の食品
難消化性デキストリン
体脂肪が気になる方,コレス
テロールが高めの方の食品
茶カテキン
表 1-6 特定保健用食品(規格基準型)
第1欄
区分
関与成分
第2欄
難消化性デキストリ
ン( 食 物 繊 維 と し 3〜8g
て)
Ⅰ
ポリデキストロース
(食物繊維)
7〜8g
(食物繊維として)
グアーガム分解物
5〜12g
(食物繊維として)
大豆オリゴ糖
2g〜6g
フラクトオリゴ糖
3g〜8g
乳果オリゴ糖
Ⅱ
(オリゴ糖) ガラクトオリゴ糖
2g〜8g
キシロオリゴ糖
スク低減表示を認める特定保健用食品のことをいう(表 1-7)。
2g〜5g
1g〜3g
イソマルトオリゴ糖 10g
Ⅲ
難消化性デキストリ
*
4g〜6g
(食物繊維) ン
⑤条件付き特定保健用食品
特定保健用食品の審査で要求している有効性の科学的根拠のレベルには届かないも
第3欄
第4欄
1 日摂取目 表示できる保健の用
摂取上の注意事項
安量
途
④特定保健用食品(疾病リスク低減表示)
関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合,疾病リ
食品の分類
○○(関与成分)が
含まれているのでお
なかの調子を整えま
す。
摂り過ぎあるいは体質・体調により
おなかがゆるくなることがあります。
多量摂取により疾病が治癒したり,
より健康が増進するものではありま
せん。他の食品からの摂取量を考え
て適量を摂取してください。
○○(関与成分)が
含まれておりビフィ
ズス菌を増やして腸
内の環境を良好に保
つので,おなかの調
子を整えます。
摂り過ぎあるいは体質・体調により
おなかがゆるくなることがあります。
多量摂取により疾病が治癒したり,
より健康が増進するものではありま
せん。他の食品からの摂取量を考え
て適量を摂取してください。
食物繊維(難消化性
デキストリン)の働
きにより,糖の吸収
をおだやかにするの
で,食後の血糖値が
気になる方に適して
います。
血糖値に異常を指摘された方や,糖
尿病の治療を受けておられる方は,
事前に医師などの専門家にご相談の
うえ,お召し上がりください。
体質・体調によりおなかがゆるくな
ることがあります。
多量摂取により疾病が治癒したり,
より健康が増進するものではありま
せん。
* 1 日 1 回食事とともに摂取する目安量
〔消費者庁:特定保健用食品(http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin86.pdf)
〕
のの,一定の有効性が確認される食品を,限定的な科学的根拠である旨の表示をする
ことを条件として,許可対象と認める食品のことをいう(表 1-8)。
許可表示:「○○を含んでおり,根拠は必ずしも確立されていませんが,△△に適
している可能性がある食品です」。条件付きは作用機序の明確性,有効性確認試験法
基準量の栄養成分を含む食品であれば,特に届出などをしなくても,国が定めた表現
によって機能性を表示できる(表 1-9)。
の 2 つの面から審査基準を緩和したもの。
3)機能性表示食品
2)栄養機能食品
わが国で食品の機能性表示を行うことができるのは,前述の「特定保健用食品(ト
栄養機能食品の表示の対象となる栄養成分は,人間の生命活動に不可決な栄養素で,
クホ)」,「栄養機能食品」の 2 つであり,この 2 つ以外の食品に対して機能性表示を行
かつ科学的根拠が医学的・栄養学的に広く認められ確立されたものと定義されている。
うことはこれまで食品衛生法および健康増進法で禁止されていた。しかし,特定保健
現在の科学的知見においては,ビタミン・ミネラルを指す。
用食品は,メーカー側が許可を取得するまでに費用と時間がかかりすぎるという難点
ビタミン,ミネラルの種類は,ビタミン類 12 種類(ナイアシン,パントテン酸,
ビオチン,ビタミン A,ビタミン B1,ビタミン B 2,ビタミン B 6,ビタミン B 12,ビタ
ミン C,ビタミン D,ビタミン E,葉酸),ミネラル 5 種類(カルシウム,亜鉛,銅,
があり,また,栄養機能食品については,対象成分が限定されているなど,現行制度
についての課題が指摘されていた。
その後,第 2 次安倍内閣による日本再興戦略の一環として,2013 年 1 月,「国の成
マグネシウム,鉄)の計 17 種類である。2015 年からは新たに,「n-3 系脂肪酸」,「ビ
長・発展,国民生活の安定・向上および経済活動活性化への貢献」を目的とした規制
タミン K」,「カリウム」が追加された。すでに科学的根拠が認められており,一定の
改革会議が発足した。そして,2013 年 12 月~2014 年 7 月の全 8 回にわたり,「食品の
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第 1 章 食品とは
2
表示内容
関与する成分
虫歯の原因になりにくい食品
と歯を丈夫で健康にする食品
リン酸化オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)
,キシリトールとマ
ルチトールとリン酸一水素カルシウムとフクロノリ抽出物(フ
ラノン)
,フクロノリ抽出物(フノラン)
,緑茶フッ素,カルシ
ウムと大豆イソフラボンアグリコン
血糖値が気になり始めた方の
食品
難消化性デキストリン,グァバ茶ポリフェノール,小麦アル
ブミン,豆鼓エキス,L- アラビノース
血中中性脂肪や体脂肪が気に
なる方の食品(条件付きトク
ホ)
グ ロ ビ ン 蛋 白 分 解 物,中 鎖 脂 肪 酸,茶 カ テ キ ン,EPA と
DHA,ウーロン茶重合ポリフェノール,コーヒー豆マンノ
オリゴ糖,ベータコングリシニン,難消化性デキストリン,
クロロゲン酸類,りんご由来プロシアニジン,モノグリコシ
ルヘスペリジン,豆鼓エキス
血中中性脂肪と体脂肪が気に
なる方の食品
ウーロン茶重合ポリフェノール
血糖値と血中中性脂肪が気に
なる方の食品
難消化性デキストリン
体脂肪が気になる方,コレス
テロールが高めの方の食品
茶カテキン
表 1-6 特定保健用食品(規格基準型)
第1欄
区分
関与成分
第2欄
難消化性デキストリ
ン( 食 物 繊 維 と し 3〜8g
て)
Ⅰ
ポリデキストロース
(食物繊維)
7〜8g
(食物繊維として)
グアーガム分解物
5〜12g
(食物繊維として)
大豆オリゴ糖
2g〜6g
フラクトオリゴ糖
3g〜8g
乳果オリゴ糖
Ⅱ
(オリゴ糖) ガラクトオリゴ糖
2g〜8g
キシロオリゴ糖
スク低減表示を認める特定保健用食品のことをいう(表 1-7)。
2g〜5g
1g〜3g
イソマルトオリゴ糖 10g
Ⅲ
難消化性デキストリ
*
4g〜6g
(食物繊維) ン
⑤条件付き特定保健用食品
特定保健用食品の審査で要求している有効性の科学的根拠のレベルには届かないも
第3欄
第4欄
1 日摂取目 表示できる保健の用
摂取上の注意事項
安量
途
④特定保健用食品(疾病リスク低減表示)
関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合,疾病リ
食品の分類
○○(関与成分)が
含まれているのでお
なかの調子を整えま
す。
摂り過ぎあるいは体質・体調により
おなかがゆるくなることがあります。
多量摂取により疾病が治癒したり,
より健康が増進するものではありま
せん。他の食品からの摂取量を考え
て適量を摂取してください。
○○(関与成分)が
含まれておりビフィ
ズス菌を増やして腸
内の環境を良好に保
つので,おなかの調
子を整えます。
摂り過ぎあるいは体質・体調により
おなかがゆるくなることがあります。
多量摂取により疾病が治癒したり,
より健康が増進するものではありま
せん。他の食品からの摂取量を考え
て適量を摂取してください。
食物繊維(難消化性
デキストリン)の働
きにより,糖の吸収
をおだやかにするの
で,食後の血糖値が
気になる方に適して
います。
血糖値に異常を指摘された方や,糖
尿病の治療を受けておられる方は,
事前に医師などの専門家にご相談の
うえ,お召し上がりください。
体質・体調によりおなかがゆるくな
ることがあります。
多量摂取により疾病が治癒したり,
より健康が増進するものではありま
せん。
* 1 日 1 回食事とともに摂取する目安量
〔消費者庁:特定保健用食品(http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin86.pdf)
〕
のの,一定の有効性が確認される食品を,限定的な科学的根拠である旨の表示をする
ことを条件として,許可対象と認める食品のことをいう(表 1-8)。
許可表示:「○○を含んでおり,根拠は必ずしも確立されていませんが,△△に適
している可能性がある食品です」。条件付きは作用機序の明確性,有効性確認試験法
基準量の栄養成分を含む食品であれば,特に届出などをしなくても,国が定めた表現
によって機能性を表示できる(表 1-9)。
の 2 つの面から審査基準を緩和したもの。
3)機能性表示食品
2)栄養機能食品
わが国で食品の機能性表示を行うことができるのは,前述の「特定保健用食品(ト
栄養機能食品の表示の対象となる栄養成分は,人間の生命活動に不可決な栄養素で,
クホ)」,「栄養機能食品」の 2 つであり,この 2 つ以外の食品に対して機能性表示を行
かつ科学的根拠が医学的・栄養学的に広く認められ確立されたものと定義されている。
うことはこれまで食品衛生法および健康増進法で禁止されていた。しかし,特定保健
現在の科学的知見においては,ビタミン・ミネラルを指す。
用食品は,メーカー側が許可を取得するまでに費用と時間がかかりすぎるという難点
ビタミン,ミネラルの種類は,ビタミン類 12 種類(ナイアシン,パントテン酸,
ビオチン,ビタミン A,ビタミン B1,ビタミン B 2,ビタミン B 6,ビタミン B 12,ビタ
ミン C,ビタミン D,ビタミン E,葉酸),ミネラル 5 種類(カルシウム,亜鉛,銅,
があり,また,栄養機能食品については,対象成分が限定されているなど,現行制度
についての課題が指摘されていた。
その後,第 2 次安倍内閣による日本再興戦略の一環として,2013 年 1 月,「国の成
マグネシウム,鉄)の計 17 種類である。2015 年からは新たに,「n-3 系脂肪酸」,「ビ
長・発展,国民生活の安定・向上および経済活動活性化への貢献」を目的とした規制
タミン K」,「カリウム」が追加された。すでに科学的根拠が認められており,一定の
改革会議が発足した。そして,2013 年 12 月~2014 年 7 月の全 8 回にわたり,「食品の
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第 4 章 食品と医薬品の相互作用
3
ン K を豊富に含むクロレラ食品,青汁も避ける必要がある。上記以外のビタミン K 含
有食品でも,一時的に大量摂取するとワルファリンの作用を減弱することがある。
実例で学ぶ食品と薬の相互作用
◆ 効果が増加する薬
・角化症・乾癬治療薬であるエトレチナート(チガソン)は,牛乳との併用により,
吸収が増加するとの報告がある。角化症患者 10 例において,エトレチナート
症例 2 ビタミン K 含有食品とワルファリンの併用例
5)
1mg/kg を牛乳 480mL で服用した時,血清中濃度は水で服用した場合の約 260%
に増加した 。
患者:女性。心房細動
6)
使用薬品:最初にヘパリンを用いて抗凝固療法を開始し,その後ワルファリン療法に
変更。電気的除細動は成功し退院したが,プロトロンビン時間の調節が困難となった。
◆ その他の副作用が発現する薬
・胃薬のマーロックス(アルミニウム塩を主剤とする)や下剤・胃薬の酸化マグネ
その後の経過
シウムなどは大量の牛乳との併用でミルク・アルカリ症候群(高カルシウム血症,
問診により,1 日当たり 450g のブロッコリーを摂取していることがわかり,ブロッ
アルカローシス等)が出現することがある(表 4-4)。
コリーの摂取を中止したところ,プロトロンビン時間は延長し,良好な抗凝固療法
を行うことができた。
(2)嗜好品と医薬品
1)コーヒー,紅茶,お茶などに含まれるカフェインと薬
3)牛乳と薬の相互作用
コーヒー,紅茶,お茶などに含まれるカフェインは,さまざまな薬と相互作用を起
牛乳との併用で薬の効果が減弱したり,増加することがある。また,ミルク・アル
こす。
◆ 中枢神経刺激作用が増強する薬
カリ症候群も報告されている。
◆ 効果が減弱する薬
・気管支拡張薬であるテオフィリンはカフェインと化学構造が似ており,代謝が阻
・感染症に用いられる抗菌薬のテトラサイクリン系抗生物質,ニューキノロン系抗
害されたり,相加的に中枢神経刺激作用が増強する可能性がある。併用により,
菌薬では,牛乳中に含まれるカルシウムとキレートを形成して,薬の吸収が悪く
テオフィリン,カフェインの一方あるいは両方の血中濃度が高くなり,キサンチ
なり作用が減弱する(表 4-3)
。薬剤の服用後,2 時間程度牛乳の摂取を避けるこ
ンによる中毒症状が出ることがある。
とが望ましいとされている。
症例 3 カフェイン含有食品とテオフィリンの併用例
患者:58 歳,男性。慢性閉塞性肺疾患(COPD)
表 4-3 牛乳により吸収が減弱する主な薬
薬 効
7)
一般名(商品名)
抗菌薬(テトラサイクリン系抗生物質)
ミノサイクリン(ミノマイシン)
テトラサイクリン(アクロマイシン)
ドキシサイクリン(ビブラマイシン)
抗菌薬(ニューキノロン系抗菌薬)
ノルフロキサシン(バクシダール)
シプロフロキサシン(シプロキサン)
トスフロキサシン(オゼックス)
4 日前から呼吸困難,喀痰などの症状で治療開始
基礎疾患:アルコール性肝障害,COPD,心房細動
使用薬品:アミノフィリン徐放薬(テオフィリン含有)225mg
コンプライアンス:不良
心不全および呼吸器感染症を併発
副作用が疑われる症状:吐き気,簡易刺激,不安症状,多動性,頻脈,期外収縮,
表 4-4 大量の牛乳によりミルク・アルカリ症候群を起こす主な薬
薬 効
消化性潰瘍・胃炎治療薬
制酸薬,緩下薬
一般名(商品名)
乾燥水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム配合
薬(マーロックス)
ジサイクロミン塩酸塩 ・乾燥水酸化アルミニウムゲル・
酸化マグネシウム(コランチル)
酸化マグネシウム(酸化マグネシウム,マグラックス)
腸管蠕動の低下
血中テオフィリン濃度は治療域下(36μmol/L)
血中カフェイン濃度:顕著に高値(171μmol/L)
カフェインの代謝物であるテオブロミンとパラキサンチンの血中濃度→低値
その後の経過
この原因を明らかにするために,カフェインを含まない食事を 3 週間摂った後,テ
オフィリンとカフェインを併用したところ,血中カフェイン濃度は著しく上昇した。
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第 4 章 食品と医薬品の相互作用
3
表 4-5 食品中のカフェインとの併用により中枢神経刺激作用が増強する主な薬
薬 効
気管支拡張薬(テオフィリン薬)
抗うつ薬〔選択的セロトニン再取り込み阻害薬 フルボキサミンマレイン酸塩(ルボックス,デプ
(SSRI)〕
ロメール)
抗菌薬(ニューキノロン系抗菌薬)
表 4-6 アルコールにより効果が増強される主な薬
一般名(商品名)
テオフィリン(テオドール,テオロング,ユニ
フィル)
アミノフィリン(ネオフィリン)
シプロフロキサシン(シプロキサン)
・うつ病に用いるフルボキサミンマレイン酸塩,感染症に用いるニューキノロン系
抗菌薬シプロフロキサシンは,CYP1A2 を阻害しカフェインの分解を抑制するこ
とで,中枢神経刺激作用が増強する恐れがある(表 4-5)。
薬 効
一般名(商品名)
睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系抗不安薬) エチゾラム(デパス)
アルプラゾラム(コンスタン,ソラナックス)
ジアゼパム(セルシン,ホリゾン)
トリアゾラム(ハルシオン)
フルニトラゼパム(サイレース,ロヒプノール)
抗てんかん薬
カルバマゼピン(テグレトール)
抗凝固薬
ワルファリン(ワーファリン,ワルファリン K)
糖尿病治療薬
トルブタミド(ヘキストラスチノン)
表 4-7 アルコールの作用を増強する主な薬
薬 効
一般名(商品名)
抗菌薬(セフェム系抗菌薬)
セフメタゾール(セフメタゾン)
セフミノクス(メイセリン)
セフォペラゾン(セフォペラジン)
◆ 効果が減弱する薬
・気分安定薬の炭酸リチウム(リーマス)の腎クリアランスを促進させて,血中リ
実例で学ぶ食品と薬の相互作用
糖尿病治療薬
クロルプロパミド(アベマイド)
チウム濃度を低下させる。リチウムを服用している患者がカフェイン摂取を中止
抗原虫薬
メトロニダゾール(フラジール)
したために,血中リチウム濃度が上昇して,中毒症状が出現した例も報告されて
H2 受容体拮抗薬
シメチジン(タガメット)
いる。
◆ 効果が増強される薬(図 4-6)
2)お茶と鉄剤(造血薬)
・睡眠薬・抗不安薬のベンゾジアゼピン系抗不安薬では,代謝が阻害されることに
鉄とお茶の中に含まれるタンニンが不溶性の塩を作って,鉄の吸収が阻害されるた
より血中濃度が高くなり,さらにアルコールの中枢抑制作用により作用が増強さ
め,従来はお茶と鉄剤を一緒に飲まないように指導されてきた。添付文書にも,タン
れる。
ニン酸を含有するもの(濃い緑茶,コーヒーなど)と同時に服用することを避けるよ
・糖尿病治療薬のトルブタミド,抗凝固薬のワルファリンでは,代謝が阻害され作用
うにと記載されているものがある。しかし,最近の臨床研究から,鉄剤と緑茶の相互
が増強される。これらの薬は飲酒中,飲酒直後の服用には特に注意が必要である。
作用は治療上大きな影響はないことが明らかになっている
。
8, 9)
◆ アルコールの作用を増強する薬(表 4-7)
・感染症に用いられるセフェム系抗菌薬の中には,アセトアルデヒド脱水素酵素を
3)アルコールと薬
阻害することによりアルコールの分解を阻害し,体内にアセトアルデヒドが蓄積
アルコールは多くの薬において吸収・代謝などの段階で影響し,血中濃度を大きく
し,顔面紅潮,吐き気などのジスルフィラム様作用を起こすものがある。ほかに
変動させるため,薬剤との併用には注意する必要がある。
も,胃腸薬のシメチジン,糖尿病治療薬のスルホニルウレア,抗原虫薬のメトロ
アルコールは主に肝臓の脱水素酵素により代謝されるが,一部はミクロゾームエタ
ニダゾールなどがある。
ノール酸化系によって代謝される。この,ミクロゾームエタノール酸化系は CYP450
が関与し,薬の CYP450 による代謝を阻害する。
◆ アルコールの常飲者(大酒家)で注意が必要な薬(表 4-8)
・抗凝固薬のワルファリンでは,作用・効果が減弱する。糖尿病治療薬のトルブタ
アルコール常用者では,アルコールの長期摂取によりミクロゾームエタノール酸化
ミドではアルコール耐性が低下する。さらに,解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン
系の活性亢進が見られ,CYP450 が増加する。それにより薬の CYP450 による代謝を
では,肝毒性が増強される。
促進する。
また,アルコールの代謝に影響を与える薬がある。さらに,アルコール自体の中枢
4)セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)と薬
抑制作用のため薬の中枢抑制作用が増強されることもある。
セントジョーンズワートは,軽度~中等度のうつ病やうつ状態を改善する作用があ
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第 4 章 食品と医薬品の相互作用
3
表 4-5 食品中のカフェインとの併用により中枢神経刺激作用が増強する主な薬
薬 効
気管支拡張薬(テオフィリン薬)
抗うつ薬〔選択的セロトニン再取り込み阻害薬 フルボキサミンマレイン酸塩(ルボックス,デプ
(SSRI)〕
ロメール)
抗菌薬(ニューキノロン系抗菌薬)
表 4-6 アルコールにより効果が増強される主な薬
一般名(商品名)
テオフィリン(テオドール,テオロング,ユニ
フィル)
アミノフィリン(ネオフィリン)
シプロフロキサシン(シプロキサン)
・うつ病に用いるフルボキサミンマレイン酸塩,感染症に用いるニューキノロン系
抗菌薬シプロフロキサシンは,CYP1A2 を阻害しカフェインの分解を抑制するこ
とで,中枢神経刺激作用が増強する恐れがある(表 4-5)。
薬 効
一般名(商品名)
睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系抗不安薬) エチゾラム(デパス)
アルプラゾラム(コンスタン,ソラナックス)
ジアゼパム(セルシン,ホリゾン)
トリアゾラム(ハルシオン)
フルニトラゼパム(サイレース,ロヒプノール)
抗てんかん薬
カルバマゼピン(テグレトール)
抗凝固薬
ワルファリン(ワーファリン,ワルファリン K)
糖尿病治療薬
トルブタミド(ヘキストラスチノン)
表 4-7 アルコールの作用を増強する主な薬
薬 効
一般名(商品名)
抗菌薬(セフェム系抗菌薬)
セフメタゾール(セフメタゾン)
セフミノクス(メイセリン)
セフォペラゾン(セフォペラジン)
◆ 効果が減弱する薬
・気分安定薬の炭酸リチウム(リーマス)の腎クリアランスを促進させて,血中リ
実例で学ぶ食品と薬の相互作用
糖尿病治療薬
クロルプロパミド(アベマイド)
チウム濃度を低下させる。リチウムを服用している患者がカフェイン摂取を中止
抗原虫薬
メトロニダゾール(フラジール)
したために,血中リチウム濃度が上昇して,中毒症状が出現した例も報告されて
H2 受容体拮抗薬
シメチジン(タガメット)
いる。
◆ 効果が増強される薬(図 4-6)
2)お茶と鉄剤(造血薬)
・睡眠薬・抗不安薬のベンゾジアゼピン系抗不安薬では,代謝が阻害されることに
鉄とお茶の中に含まれるタンニンが不溶性の塩を作って,鉄の吸収が阻害されるた
より血中濃度が高くなり,さらにアルコールの中枢抑制作用により作用が増強さ
め,従来はお茶と鉄剤を一緒に飲まないように指導されてきた。添付文書にも,タン
れる。
ニン酸を含有するもの(濃い緑茶,コーヒーなど)と同時に服用することを避けるよ
・糖尿病治療薬のトルブタミド,抗凝固薬のワルファリンでは,代謝が阻害され作用
うにと記載されているものがある。しかし,最近の臨床研究から,鉄剤と緑茶の相互
が増強される。これらの薬は飲酒中,飲酒直後の服用には特に注意が必要である。
作用は治療上大きな影響はないことが明らかになっている
。
8, 9)
◆ アルコールの作用を増強する薬(表 4-7)
・感染症に用いられるセフェム系抗菌薬の中には,アセトアルデヒド脱水素酵素を
3)アルコールと薬
阻害することによりアルコールの分解を阻害し,体内にアセトアルデヒドが蓄積
アルコールは多くの薬において吸収・代謝などの段階で影響し,血中濃度を大きく
し,顔面紅潮,吐き気などのジスルフィラム様作用を起こすものがある。ほかに
変動させるため,薬剤との併用には注意する必要がある。
も,胃腸薬のシメチジン,糖尿病治療薬のスルホニルウレア,抗原虫薬のメトロ
アルコールは主に肝臓の脱水素酵素により代謝されるが,一部はミクロゾームエタ
ニダゾールなどがある。
ノール酸化系によって代謝される。この,ミクロゾームエタノール酸化系は CYP450
が関与し,薬の CYP450 による代謝を阻害する。
◆ アルコールの常飲者(大酒家)で注意が必要な薬(表 4-8)
・抗凝固薬のワルファリンでは,作用・効果が減弱する。糖尿病治療薬のトルブタ
アルコール常用者では,アルコールの長期摂取によりミクロゾームエタノール酸化
ミドではアルコール耐性が低下する。さらに,解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン
系の活性亢進が見られ,CYP450 が増加する。それにより薬の CYP450 による代謝を
では,肝毒性が増強される。
促進する。
また,アルコールの代謝に影響を与える薬がある。さらに,アルコール自体の中枢
4)セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)と薬
抑制作用のため薬の中枢抑制作用が増強されることもある。
セントジョーンズワートは,軽度~中等度のうつ病やうつ状態を改善する作用があ
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第 4 章 食品と医薬品の相互作用
3
表 4-8 アルコールの常飲者(大酒家)で注意が必要な主な薬
薬 効
一般名(商品名)
ワルファリン(ワーファリン,ワーファリン K)
→作用が減弱
抗てんかん薬
フェニトイン(アレビアチン)→作用が減弱
糖尿病治療薬
トルブタミド(ヘキストラスチノン)→アルコー
ル耐性の低下
解熱鎮痛薬
アセトアミノフェン(カロナール,アルピニー,
アンヒバ)→肝毒性による肝障害の危険
表 4-9 セントジョーンズワートにより作用が減弱する主な薬
薬効
一般名(商品名)
抗 HIV 薬
インジナビル(クリキシバン)
強心薬
ジゴキシン(ジゴシン,メチルジゴキシン)
免疫抑制薬
シクロスポリン(サンディミュン,ネオーラル)
気管支拡張薬
テオフィリン(テオドール,テオロング,ユニ
フィル)
抗凝固薬
ワルファリン(ワーファリン,ワルファリン K)
抗てんかん薬
フェニトイン(アレビアチン,ヒダントール)
月経困難症治療薬(卵胞ホルモン・黄体ホルモン ノルエチステロン・エチニルエストラジオール
配合薬)
(ルナベル)
A
心移植
セントジョーンズワート
(300mg/1 日 3 回)
200
シクロスポリンの血中濃度︵μg /L︶
抗凝固薬
300
実例で学ぶ食品と薬の相互作用
100
急性拒絶反応
0
Apr98
B
300 心移植
Feb99
Mar99
Apr99
May99
セントジョーンズワート
(300mg/1 日 3 回)
200
100
急性拒絶反応
0
July97
Feb99
Mar99
Apr99
May99
時期(月 / 年)
ると考えられ,健康食品として用いられている。セントジョーンズワートに含まれて
症例は心移植を施行された男性患者(A と B)でシクロスポリンやその他の免疫抑制剤が投与さ
いるピペリシン,ピペルフォリンに抗うつ作用があるとされている。
れていた。その後,セントジョーンズワート(300mg 含有,ヒペリシンとして 0.9mg)を 1 日 3 回
セントジョーンズワートは,CYP450 を誘導するため,CYP450 で代謝される多く
の薬と相互作用がある。日本では 2000 年 5 月,厚生省(当時)がセントジョーンズ
ワートと医薬品との相互作用について医薬品等安全性情報で注意喚起を行った。
CYP450,特に CYP3A4 および CYP1A2 が誘導され,抗 HIV 薬であるインジナビル,
摂取したところ,シクロスポリンの血中濃度が治療域(150㎍/L)以下に低下し,急性拒絶反応
が認められた。セントジョーンズワート摂取中止後,シクロスポリンの血中濃度は回復した。
(内田信也 他:食品・サプリメントと医薬品との相互作用.ぶんせき,9:454-460,2007,原著は Ruschitzka
F, et al. : Acute heart transplant rejection due to Saint John’
s wort. Lancet, 355(9203): 548-549, 2000)
図 4-5 セントジョーンズワートとシクロスポリンの相互作用
強心薬のジゴキシン,免疫抑制薬であるシクロスポリン,気管支拡張薬であるテオ
フィリン,抗凝固薬のワルファリン,経口避妊薬の効果が減少する可能性がある(表
ロスポリンの血中濃度の低下が見られ,生検の結果,急性拒絶反応が観察された。両
4-9)
。
症例とも拒絶反応を疑わせる他の要因は見当たらず,セントジョーンズワート含有製
品の摂取を中止したところ,シクロスポリンの血中濃度は回復した(図 4-5)。
症例 4 シクロスポリン(免疫抑制薬)とセントジョーンズワートの併用により
血中濃度が低下した臨床例
10, 11)
症例 5 インジナビル(抗 HIV 薬)とセントジョーンズワートの併用例
12)
1 例は末期虚血性心疾患のため 11 カ月前に心移植した 61 歳男性で,もう 1 例は末期
健康な成人 8 名(29~50 歳,米国)を対象としたオープンラベル試験において,セ
虚血性心疾患のため 20 カ月前に心移植した 63 歳男性の例である。いずれの症例にお
ントジョーンズワート 300 mg × 3 回 / 日を 14 日間摂取させたところ,インジナビル
いても,移植後,シクロスポリン,アザチオプリンなどの免疫抑制薬の投与でコント
(CYP3A4 基質)の血中濃度(AUC,Cmax)を低下させたという報告がある。
ロールされ,シクロスポリン濃度は安定していたが,市販のセントジョーンズワート
含有製品(抽出物 300mg 含有)を 1 日 3 回摂取したところ,摂取開始 3 週間後にシク
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第 4 章 食品と医薬品の相互作用
3
表 4-8 アルコールの常飲者(大酒家)で注意が必要な主な薬
薬 効
一般名(商品名)
ワルファリン(ワーファリン,ワーファリン K)
→作用が減弱
抗てんかん薬
フェニトイン(アレビアチン)→作用が減弱
糖尿病治療薬
トルブタミド(ヘキストラスチノン)→アルコー
ル耐性の低下
解熱鎮痛薬
アセトアミノフェン(カロナール,アルピニー,
アンヒバ)→肝毒性による肝障害の危険
表 4-9 セントジョーンズワートにより作用が減弱する主な薬
薬効
一般名(商品名)
抗 HIV 薬
インジナビル(クリキシバン)
強心薬
ジゴキシン(ジゴシン,メチルジゴキシン)
免疫抑制薬
シクロスポリン(サンディミュン,ネオーラル)
気管支拡張薬
テオフィリン(テオドール,テオロング,ユニ
フィル)
抗凝固薬
ワルファリン(ワーファリン,ワルファリン K)
抗てんかん薬
フェニトイン(アレビアチン,ヒダントール)
月経困難症治療薬(卵胞ホルモン・黄体ホルモン ノルエチステロン・エチニルエストラジオール
配合薬)
(ルナベル)
A
心移植
セントジョーンズワート
(300mg/1 日 3 回)
200
シクロスポリンの血中濃度︵μg /L︶
抗凝固薬
300
実例で学ぶ食品と薬の相互作用
100
急性拒絶反応
0
Apr98
B
300 心移植
Feb99
Mar99
Apr99
May99
セントジョーンズワート
(300mg/1 日 3 回)
200
100
急性拒絶反応
0
July97
Feb99
Mar99
Apr99
May99
時期(月 / 年)
ると考えられ,健康食品として用いられている。セントジョーンズワートに含まれて
症例は心移植を施行された男性患者(A と B)でシクロスポリンやその他の免疫抑制剤が投与さ
いるピペリシン,ピペルフォリンに抗うつ作用があるとされている。
れていた。その後,セントジョーンズワート(300mg 含有,ヒペリシンとして 0.9mg)を 1 日 3 回
セントジョーンズワートは,CYP450 を誘導するため,CYP450 で代謝される多く
の薬と相互作用がある。日本では 2000 年 5 月,厚生省(当時)がセントジョーンズ
ワートと医薬品との相互作用について医薬品等安全性情報で注意喚起を行った。
CYP450,特に CYP3A4 および CYP1A2 が誘導され,抗 HIV 薬であるインジナビル,
摂取したところ,シクロスポリンの血中濃度が治療域(150㎍/L)以下に低下し,急性拒絶反応
が認められた。セントジョーンズワート摂取中止後,シクロスポリンの血中濃度は回復した。
(内田信也 他:食品・サプリメントと医薬品との相互作用.ぶんせき,9:454-460,2007,原著は Ruschitzka
F, et al. : Acute heart transplant rejection due to Saint John’
s wort. Lancet, 355(9203): 548-549, 2000)
図 4-5 セントジョーンズワートとシクロスポリンの相互作用
強心薬のジゴキシン,免疫抑制薬であるシクロスポリン,気管支拡張薬であるテオ
フィリン,抗凝固薬のワルファリン,経口避妊薬の効果が減少する可能性がある(表
ロスポリンの血中濃度の低下が見られ,生検の結果,急性拒絶反応が観察された。両
4-9)
。
症例とも拒絶反応を疑わせる他の要因は見当たらず,セントジョーンズワート含有製
品の摂取を中止したところ,シクロスポリンの血中濃度は回復した(図 4-5)。
症例 4 シクロスポリン(免疫抑制薬)とセントジョーンズワートの併用により
血中濃度が低下した臨床例
10, 11)
症例 5 インジナビル(抗 HIV 薬)とセントジョーンズワートの併用例
12)
1 例は末期虚血性心疾患のため 11 カ月前に心移植した 61 歳男性で,もう 1 例は末期
健康な成人 8 名(29~50 歳,米国)を対象としたオープンラベル試験において,セ
虚血性心疾患のため 20 カ月前に心移植した 63 歳男性の例である。いずれの症例にお
ントジョーンズワート 300 mg × 3 回 / 日を 14 日間摂取させたところ,インジナビル
いても,移植後,シクロスポリン,アザチオプリンなどの免疫抑制薬の投与でコント
(CYP3A4 基質)の血中濃度(AUC,Cmax)を低下させたという報告がある。
ロールされ,シクロスポリン濃度は安定していたが,市販のセントジョーンズワート
含有製品(抽出物 300mg 含有)を 1 日 3 回摂取したところ,摂取開始 3 週間後にシク
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