民間出身校長による学校経営の取り組みに関する調査結果

民間出身校長による学校経営の取組に関する調査結果 1
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基本的考え方
a.TQM(総合的品質管理)等の方法は、これまで主として民間企業など学校以外の場で
活用されてきたものである。したがって、TQM等の方法を学校現場で生かすためには、
これをそのまま学校に持ち込むのではなく、学校の実情に合わせてその内容に工夫を加え
る必要がある。
b.この点で着目したのが民間出身校長制度である。
民間出身校長制度は、組織運営に関する経験、能力を有する人材を幅広く確保するとの
観点から導入された。学校教育法施行規則の規定により、平成12年度から、教員免許状
がなく、かつ、教育に関する職に就いた経験がない者であっても校長として任用できるこ
ととなっている。その成果としては、
「新しい学校経営」、
「教職員の意識改革」、
「教員組織
の活性化」などがあげられている(平成15年文部科学省「いわゆる民間人校長任用に係
る調査の結果」より)
。平成19年度においては、全国の公立小・中・高校・特別支援学校
で73人の民間出身校長が任用されている(前職が行政職である者を除く)。
各民間出身校長による学校経営上の工夫を調査することにより、TQMをはじめとする
民間企業等でのマネジメントの方法をどのように学校経営に生かすべきかが明らかになる
と考えられる。
c.そこで、民間出身校長がどのように学校経営上の工夫を行っているか、また、民間出身
校長が教職員との人間関係づくりや教職員の意欲向上にどう取り組んでいるか、教育委員
会はどのような支援を行うべきと考えるかなどについて調査を行った。
あわせて、民間出身校長の力を十分に発揮するためにはどのようなことが必要かなどに
ついても調査を行った。
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本資料は、「学校の改善支援の在り方に関する調査研究報告書」(PHP総合研究所
一部を抜粋し修正を加えたものである。
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平成 20 年)の
2
インタビュー結果及びアンケート結果とその考察
ア.インタビューについて
以下の方については学校を訪問し、直接話をうかがった。うかがった話の概要は下記のと
おりである。
山形県立南陽高等学校
小口英吉校長
平成19年12月26日(水)訪問者:向畦地委員、亀田委員
[概要]
1)
「小集団専門家チーム」について
○ これまでの職員会議のあり方を変えるべきだと考えている。これまでは原案を専門の部署でつめ
てから職員会議に出すのではなく、ゼロから職員会議(出席者は60人近く)に出しているような
状況だった。
○ そこでどこの会社や役所でもやっているように、関係教職員で検討して原案を決めるようにした。
学校には校務分掌等があるので、そこで十分な検討をしたり、必要なときに関係者7~8 人に集まっ
てもらって全員が発言し、内容によっては教頭が判断したり、校長が決定するなどの方法が本来だ
ろうと思う。
○ 現在は、校務分掌やプロジェクトチームできちんと原案をつめて、その上で職員会議に出すよう
にしている。
○ 職員の中には校長が職員会議を軽視していると思う者がいるかもしれないがそうではない。幅広
く意見をいただくのは重要であると考えている。ただ、60人もの職員会議では、十分な意見交換
は物理的にも不可能だ。
○ 職員会議万能主義の風土が根強く、教育委員会もこのことについての問題意識は低いように思わ
れる。県内の公立高校すべてに共通する問題であり、民間人校長が一人来たくらいでは、なかなか
現状を変えるのは難しい。
2)外部評価について
○ 学校の評価については、在任中の5年間でその仕組み作りが十分にできたかどうか自信がない。
○ 学校は、チェックする組織のない社会。制度として、誰もチェックする者がいない。このような
社会は学校だけだろう。役所なら議会や会計検査などがある。会社の場合は、消費者や株主という
最大のチェック機構がある。しかし学校にはほとんどない。学校運営についての県のチェックも限
定的なものだ。
○ 本当は、ある程度強制力を持った「会計検査院」のような、制度としてチェックをする仕組みが
必要。そうでないと、学校が独りよがりのことを、勝手にやってしまう危惧もある。
○ 本当は学校に対する業務監査組織があればいいのだが、これはおそらく法律事項になるので簡単
ではないと思う。今の評価制度は、過渡的な折衷案みたいなもの。
○ 本校では、学校評議員には、マネジメントの意識をもって見てもらいたいので、企業や団体のマ
ネジメント経験者や、マスコミの方に入ってもらっている。また高校生のいのちや心の問題へのア
ドバイスももらいたいので、教育に関心の深い農業関係者にも入ってもらっている。
○ 生徒から意見を聞くのも重要と考え、投書箱を設置しているが、思いの外、反応が少なく残念で
ある。今は、3年生に、3年間在籍して良かったこと、悪かったことを書いてもらおうと思ってい
る。保護者にもお願いしている。
3)教職員の意識改革について
○ (教職員に問題意識をもってもらうには)一番は私のようなよそ者が入って内部から問題提起を
することが大事だろう。民間人校長を全体の2~3割にまで増やしてみるのがいいのではないか。
○ 学校の教師といっても職業人であるから、大人の社会の常識やマナーをちゃんとわからないとい
けない。挨拶や敬語の使い方、入学式や卒業式ではサンダル履きはダメなこととか。ただ、人事異
動で新しい人が来ると、またゼロからになる。一つの学校で改革を進めるだけは限界がある。
○ 「キャリア教育」などについても、教える立場の教師に一般社会の知識、経験、体験がないとダ
メ。教師はもっと世の中のこと、社会を知ることが必要。そのため、教員の企業研修をやったり、
外部から講師として来てもらったりしている。またいろいろな新聞を読むことも必要だろう。世の
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中にはいろんな考えがあるということを知ることが大切。私はこうした問題提起をしている。
○ 学校には取り組むべき新しいことが次々と出てくるが、無駄なことをやめないと、新しいことに
取り組めない。
○ 各セクションの仕事について、今年から「一つのセクションで一つのことをやめよう」とかけ声
をかけている(ワンセクション・ワンスクラップ運動)。もちろん、これまでも仕事を減らしてはき
ている。例えば事務室の業務で考えると、私が赴任したときには給料の約3割が現金支給だったが、
今はほぼゼロになった。今年からやめてもらったのは、
「南陽高校だより」の作成と市内各家庭への
回覧。これまで年に何回か発行し、市内の回覧板にのせてもらっていた。しかし、市外からの生徒
も多いので、HPでの情報発信に切り替えた。
○ 会議の時間も減らしたし、研究会などへの参加者も精選したりしている。また部活動についても、
土日のどちらかを休みにする必要もあると考えてはいる。秋田県は教育委員会の指示で週一回は部
活動が休みになった。
[感想]
○
「校長は、太平洋を船で行くときの船長みたいなもの。情報戦ですよね。情報を読み間違えると
大変」とおっしゃった。このことは職員の中にも浸透してきているようで、ある教員が、
「小口校長
先生から学んだことの一つ」として、
「情報をキャッチして、それをどう受け取って、どう発信して
いくかということ」を挙げられた。確かに、情報に基づいて、先をみて舵取りをしていくことが、
校長、教頭だけでなく、学校運営の核となる教職員にも必要な資質になっている。もちろん、われ
われ指導主事も同じであるのは言わずもがなである。改めて小口校長先生の言葉を肝に銘じたい。
○ インタビュー後、帰路の新幹線の時間に少し余裕があったので、校内を案内していただいた。ちょ
うど補講が終了した時間だったようで、多くの生徒とすれ違ったが、みんなはっきりと「こんにち
は」と挨拶をしてくれた。校舎もきれいに掃除が行き届いており、とてもすがすがしい思いで帰路
につくことができた。
○ 貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。
茨城県立つくば工科高等学校
田賀直樹校長
平成19年11月26日(月)訪問者:山岡委員、亀田委員
[概要]
《目標設定、PDCAサイクル、教職員の意欲喚起について》
○ 平成9年に創立70周年を期に「豊な人間性と科学する心をそだてる」を目標に普通科高校から
工業高校となった。
○ 「生徒が行きたい」「保護者が通わせたい」学校を目指して、顧客の側に立った、特色ある学校、
「生徒が安心して学問・知識や技術を学べ・スポーツ部活動・友人との豊な人間関係をはぐくむ教
育」を目指して学校経営方針を作成し、個々の具体的な取組みを進めてきた。その結果を確認する
為に、PDCAサイクルを回し評価を行って改善向上に取り組んでいる。
○ 教育活動において、教育効果を評価(指標化・数値化)することの難しさがある。
製品を生産する場合には、管理の指標として「品質」が上げられるが、同様に教育の質に関して
の指標となる「育質」
(田賀校長先生の造語)となる管理指標があって良い。製品を作る際の材料・
機械はある水準で均質性を確保できるが、教育では、教師も生徒も人間であり様々な人格・育った
環境・価値観を持っていて、均質ではなく個性や相性が異なっている点で、評価の難しさがあり、
同一の手段で教えても、教育効果はその生徒・教師によって異なってくる。言い換えると、
「好きな
先生の授業はよく勉強してよい成績になる。
」と言われるように、教育手段や指導技術以外に、人間
関係(相性)が存在する。
○ 豊かな人間性を育てる鍵は、教員の人間性や生徒にあわせて力を伸ばせる豊富な経験や受容能力
が必要である。茨城県では本年より「道徳教育」が高校でも全校で展開されているが、生徒と教師
のコミュニケーションの大切さを感じる。
○ 教職員の仕事に対するモチベーションは、対生徒、対同僚との人間関係がうまくいっているのか
どうかにかかっている。生徒に対しては、逃げずにどれだけ真剣に真っ向から生徒に本気で相対す
るかで、生徒も教師の姿勢を感じて変化する。
同様に、校長からの教師に対する期待や熱意を機会有る毎に伝え、民間での手法で活用できるこ
とを試し教師にやる気になってもらう為のコミュニケーションの機会を増やしている。学校と企業
は環境が違うと言われるが、共通することもある。
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○
最近、教員の抱える校務は多岐にわたり、年々増加する傾向にあり、うっかりすると多忙が故に、
生徒に向ける時間が少なくなったり、その場その場の対応に終始してしまいがちだが、広い視野に
立った職務(役割)から学校全体を見るように指導している。
[感想]
○ 本校の田賀校長先生は、教職員の持つそれぞれの多様な人間性が日々の教育活動において重要で
あると考えておられ、教職員が生徒と如何に接しているのか、コミュニケーションの在り方に最も
注目しておられる。その点について十分に検証することなく、単なる現象面での数値によるチェッ
クだけでは、学校の状況把握は不十分であると考えておられる。
○ 田園風景の中にある地方の工科高校として果たすべき使命を担った学校づくり、本校への生徒の
希望を集めること、また生徒指導等の日々即応性が迫られる課題など、次元の違う多様な課題があ
る中で、人材育成に取り組まれている。
「目指せスペシャリスト育成委員会」
、
「将来構想検討委員会」
などを通じた中長期的な人材育成の在り方論議と、本校の「学校経営計画表 自己評価表」結果を
踏まえた短期的な学年毎、教科・領域等における達成状況を把握されて、取組みを進められている。
それらを通して、日々粘り強く生徒の内面に迫って人づくりを行おうとしておられるところに、
人づくりのための地道な温かい取組みを進めるという教育が本来大切にすべきものを改めて見させ
ていただいたように思う。
宇都宮市立簗瀬小学校
小堀道和校長
平成19年11月27日(火)訪問者:山岡委員、亀田委員
[概要]
《目標設定、PDCAサイクル、教職員の意欲喚起について》
○ 学校は人材育成の場であり、いわば「志の教育」である。教育界はその目標を明確に持てている
か。
○ 数値目標には、結果系と要因系がある。結果系のみに走るから妙なことになる。例えば、
「テスト
は80点にする」といったことはとても乱暴である。要因系が大切であり、子どもが努力する姿を
数値にして初めて動き出す。子どもそれぞれが自分で目標を立てることが大切で、
「○○さんは50
点を取ろう」というような子どもに応じた点を取れるように応援する。そして、自分でそうなれる
ような計画を家庭学習も含めて立てさせる。
子ども全員に目標を立ててやることが大切であり(「毎日1時間勉強できたかどうか」など)
、そ
れが数値目標である。
○ PDCAサイクルでは、CからAに移る時、達成していなかったら教員自らに何故なのか考えさ
せる。着任当初はなかなかできなかったが、
「結果系の目標を達成できなくてもいい。その状況をど
うするかが大切である」と教職員に言ってきた。
校長の学校経営目標を具体化して教職員に指示しなければいけない。子どもに「振り返りカード」
「パワーアップカード」等を作らせ、学力、生活行動を毎日の活動から具体的にとらえさせる。
課題設定、目標設定にあたっては、校長と教職員が何回も具体化に向けたやりとりをし、行動規
準表をどのように子どもの指導に生かすかを考えさせる。できるまで何回もやりとりする必要があ
る。
○ 記録に残るものを通して子どもの変化を把握する。その記録は教員の努力の成果とも言える。変
化が形として表れれば教員のモチベーションのアップにつながる。
○ 学校の良し悪しを決める品質とは、
「自ら行動できる目標・目的しっかりの夢人間が何人育ってい
るか」というような具体的に見えるものである。
そのための方策として、本校では4つの重点活動を決めた。多くの重点活動を決めても集中でき
ないため効果は期待できない。人間の能力では4つ程度が適切である。
○ 地域には、PDCAのサイクルをきちんと回して改善している様子を説明しないと学校への共感
度は高まらない。「学校経営に共感してもらっていますか」との問いを定期的に行っている。また、
学校の敷地内にある公民館に出入りしている人に、
「子どもに大人から積極的に挨拶してほしい」と、
どんどん声かけして、学校にも来てもらうようにしている。
地域で学校に関わっている人に「校長への信任度」を問うたところ、全員から「来年も校長とし
てやってほしい」との回答を得ることができた。
○ 校長が数値目標を明確に持てていないことが多いと思うが、何がどのくらいできているかを
チェックしPDCAの改善サイクルを実行できる校長を増やすべき。
それを教育委員会の目標にしてはどうか。校長への支援方策として、教育委員会は現状把握を行
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い、落ち込んでいる学校に指導主事を派遣してやり方を含めた支援をしてほしい。そのためには、
教育委員会が成功事例を参考に勉強する必要がある。
[感想]
○ 学校においては、数値目標が必ずしもうまく入り込まず、PDCAサイクルでのチェック機能が
なじみにくく、有効に働いていない状況がある。
それは、個々の子どもによって発達段階も違えば、それぞれの子どもの個性も違う。また、地域
事情も違う。そのようなところで、価値尺度を絞り込むことの難しさ、一括りにしてしまうことの
信憑性への懸念が壁になり、具体的な目標を立てられないまま放置され、結果として現状維持の学
校経営を繰り返しているように思う。
○ 本校の小堀校長先生は、要因系を大切にされている。個々の子どもの目標と計画を作らせている。
教職員の日々の教育活動における子どもとの関わりについて具体的指示をされている。教職員の指
導の在り方について、それぞれの教職員とのやりとりを通して練り上げをされている。記録に残る
ものを通して子どもの変化を具体的に把握されている。何が教員のモチベーションアップにつなが
るのか考えておられる。学校の品質とは何かを、個々の子どもの達成状況から導こうとされている。
地域への透明性確保が行われている。
それら明確な理念と具体的な指示を通じて、教職員、子ども、保護者、地域からの信頼を高めて
おられる。PDCAサイクルの取組みを、具体性のない定性的なものではなく、個々の子どもにつ
いて、個々の教職員とのきめ細かい積み上げをすることによって、学校の数値目標につなげていく
という丁寧なステップを踏まれている。
これらは、PDCAサイクル、数値目標と学校の取組みを如何にしてつなげていくのかという点
において、示唆に富む大変明快なお話を伺えた。
[参考文献]
小堀道和著『数値目標が学校を変える』(学事出版)
宇都宮市立星が丘中学校
小谷和弘校長
平成19年11月27日(火)訪問者:山岡委員、亀田委員
[概要]
《目標設定、PDCAサイクル、教職員の意欲喚起について》
○ 校長として着任する前、学校を外部から見て思っていた以上に、教職員の横のつながりはできて
いる。学校日誌や通知表のOA化では、課題を示しただけで、教職員同士で自律的な意見交換が行
われ、課題解決につながる機能が十分果たされた。学校にはそれができる土壌がある。それらの状
況を踏まえ、教職員の意欲喚起のためには校長によるバックアップという信頼が重要である。
○ 教職員には目標を提示するのではなく、現状を示すことで、合意形成が円滑に進む。
一例であるが、本校における「図書貸出冊数」が、平成16、17年度は250冊。平成18年
度は1800冊。経年変化が比較できる資料を学年毎に示しながら、何故そうなったのか考えても
らっている。そのことが更なる貸出冊数の増加、学校図書館教育の改善充実につながる。
しかし、
「図書貸出冊数」と学力や生徒の落ち着き度などとの因果関係があるのかないのかを検証
できるデータがなく、そうなった理由や背景についてはっきりとは分からない。少なくとも10年
間は同じデータを取って、その因果関係を明らかにする社会科学的なアプローチが必要である。
○ 宇都宮市が実施する「うつのみや いきいき学校プラン」において、さまざまなデータを取って
いるが、トレンドは上昇なのか下降なのかについて、教職員に意識を持たせることが大切である。
経年変化によるトレンド(悪化、現状維持、改善)や市の目標との比較などによって、いろいろ
な取り組むべきことが見えてくるはずである。現状の数値を踏まえ、短中期的な展望を示し、取り
組むべき方向性を意識付けることが必要である。その際、核になるようなデータを洗い出すことが
大切である。
○ 教職員を動かす力は、達成感、やりがいであり、子どもへの思いにある。
校長の仕事は教職員の意識を変えること。具体的な取組みとして教職員には自分自身の付加価値
を高めることを求め、自分にとって何が付加価値なのか自分で考えさせる。そのことでやる気を出
させる。結果的に、更に勉強しようという意欲が増し、資質向上に向けた校内研修、内地留学や社
会体験などとても積極的になった。
○ 課題に対し、常に何をどのようにしたらできるのかについて考えさせている。状況を変えるため
には、システムを変えるのでなく教職員の意識を変えることが重要である。
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経年変化(ガラス破損件数、図書貸出冊数等)を通して、数値として明確に改善されていること
について、教職員を評価しほめることで、教職員の意識は高まり、子どももその気になり、改善の
方向に向かう。
何か一つのことがきちっとできれば、他の取組みすべてに波及効果が出ていくものだと思う。取
組み目標は重点化し、取組みは焦点化させなければ成果はあがらない。
[感想]
○ 本校は、校舎内のきれいさ、生徒の落ち着き、部活動への表彰の多さ等、学校として非常にいい
状況にあることが伝わってくる。
○ 小谷校長先生は、まず教職員の頑張りと連携の良さを高く評価するところから出発されている。
また、教職員が何に頑張り、何を連携するのか、具体的な指摘をされていることが、教職員のモチ
ベーションのアップに繋がっているのではないかと考えられる。
学校の状況について、より客観的、実証的にとらえ、如何にして的確に教職員に取組み指示を行
うのか腐心しておられる。
つい見落としてしまうようなことについてもいろいろな角度から光を当てることに努力され、
データ項目を検討されている。経年変化、及び本校以外との数値比較を行う中で、単に現象面だけ
にとどまることなく、何故そのようになったのかについての背景や理由を捉えられるところまで追
究しておられる。
○ 校長がフレーム、方向性を示し、教職員自らが企画立案を進める手法と、校長の示すデータ内容
の説得力が、学校状況の好転をもたらし、安定感、安心感が持てる学校につながっているように思
う。
神奈川県立舞岡高等学校
吉田幸一校長
平成19年12月12日(水) 訪問者:中條委員、向畦地委員、亀田委員
[概要]
1)数値目標について
○ まず、教員の組織についての話から始めたい。
○ 現任校の組織は、前任の校長のものを受け継いだもの。教員は学習支援、キャリア支援、生徒指
導などの縦の仕事は行政のようにきちんとやっているが、横断的な部分が弱い。打合せなどもほと
んどない。そのためか教員が一人で仕事を抱え込んでしまい、グループでシェアする形になってい
ない。
○ 教員は、互いに干渉するのは嫌がる傾向にある。よその仕事も見てもらいたい。学校全体を横軸
で見ていく必要がある。干渉はしなくてよいが、よその仕事に興味、関心を持ってもらいたいと思っ
ている。
○ また知識の伝承などは必ずやって欲しい。一人でやってきて、その人が替わるとできなくなると
いうのはよくない。良いノウハウや、良いやり方というのは是非学んで欲しい。
○ 神奈川では総括教諭等で構成する「企画会議」というのがある。それぞれ自分のグループのこと
はきちんと話をするが、他のグループが担当する部分についての発言を求めると話せない状況が
あった。
○ そこで、会議に月次業務報告の提出を求めることにした。校長も出す。はじめは業務の羅列だっ
たが、校長が年度当初に「これをやって」と指示していたことの進捗状況が書かれていないのはど
うしてか、と尋ねるようにした。ここが学校の弱かったところだろう。これにより、次第に「いつ
までにやる方向である」とか「いつまでにやりきる」など課題の解決について記入するようになっ
てきた。
○ 数値目標については、教員はやったことがないので、いきなりはできないだろう。そこで、県か
らも特に指示はないが、学校のマニフェストをつくることにした。教員には、
「数値目標は将来的に
は入ってくるので、トレーニングしておく必要がある」と話している。
○ 例えば、遅刻指導の担当ならどんなふうに遅刻を減らすのか、補充的な授業をするというならど
んなふうにするのか、そうした具体的なことが出せる人は出すようにといっている。教員も、具体
的にあげられるものはあげていかないといけないと思うようになってきたようだ。
○ 教員評価の自己観察票については、具体的なことを書くと、それができないとネガティブな評価
になるのではないか、という不安があったのかもしれない。だから「出せる人は出して」と言って
いる。ただ、もし具体的に書かれていなければ、面談の中で聞いて記入できるように促しをしてい
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る。
○ 「具体的にどのくらい待てばいいのか、半年で出るのか。十年かかるのか。期間を出して欲しい」
というと、「期間は言えない」という答えが返ってくるので、「方向性は最低でも 1 年以内で出すよ
うに」と言っている。基礎学力の目安なども考えていかないと、先生方の満足度も高まらないと思
う。
○ これまでは学校評議員会議に授業を見てもらわなかったが、今年は見てもらった。すると「緊張
感が出るように生徒に負荷をかければ?」という意見をいただいた。この意見を教員に投げかけた
ところ、方向性を出そうとしてくれている。一方、生徒に負荷をかけることを危惧したり、これ以
上何をすればいいのかという意見も出たりしている。今やっていることに間違いなければ、今のま
まやっていくと言ってくれて構わないのだが。学校評議員会議の議事録にも「方向性を出す」と明
記して各評議員に配付している。議事録も次回開催の直前に出していては半年経過してしまう。1ヶ
月以内に解決策(場合によっては方向性)を盛り込んだものとして配付するようにしている。
○ ちなみに、学校評議員には議事録を送付することにした。また会議では評議員から「バスの乗車
指導」について苦情が寄せられた。すぐに、生徒指導グループに検討させ、生徒に注意を促すべく、
正門前の掲示板に注意書きを出すなどを行った。この対応に関しては、提案者の評議員からも迅速
な対応でびっくりしたとお礼の連絡があった。これが「対応する」ということ(と教員に示した)。
例えば 1 週間以内に起案するとか、1ヶ月以内に対応するとか、そうした「いつまでに」というイ
メージが、だんだん出てきたように感じる。
2)教員組織を動かすマネジメント
○ あるとき、ある教員に改善点を指摘したがなかなかアクションが起きない。聞くと「校長の話は
ききました」という反応で驚いた。このような状況では指示は徹底しない。それ以来、校長が指摘
したことについては、
「どうなっていますか?」と聞くようにしている。最初は自分でやっていたが、
最近は副校長や教頭を通じてやるようにしている。
○ (このような教員の姿勢は)それは、「一国一城の主」であるとか、「前例踏襲主義」であること
の表れ。自分のやっていることに自信があるからかもしれないが一面、責任の所在が不明確である。
○ ただ、
「授業改善のため」の教員のアクションは起きなくても、生徒のためといった事柄ならばア
クションは起きる。
○ そこで、生徒を授業に集中させるよう取り組んだ。全校で17クラスあるが、6月15日までに、
生徒が授業に集中するための各クラスの目標を作らせた。生徒がHRで考えたが、例えば「生徒も
先生もチャイムで始業」など、クラス毎の目標が設定されたので、クラスに掲示させて、一年間自
分たちの立てた目標を守り、授業集中する態勢が整ったように思う。
○ また、本年度の学校目標の5点(学力向上、開かれた学校づくり、キャリア教育の充実、生徒の
学校生活充実を支援する、教育環境整備と事故防止の徹底)については、ことあるごとに話してい
る。(PTA、近隣中学校をはじめとする校外に対しても)
○ 保護者の間では進路指導と学習指導に対する要望が強い。これは入学式の際の保護者へのアン
ケートにもよく表れている。このことも常に職員会議で話している。第三者の客観的なDATAを
示すことで、校長が勝手に言っているのではないということを(教職員に)理解してもらえる。
○ 教員のチームプレーについては、本当はもっと侃々諤々の議論をしたいが……。教員が変わって
くれるのが一番だが、時間がかかるので、まずは生徒からだと考えている。それと第三者の意見。
保護者や中学生の保護者などの意見は重要。そのために広報活動に力を入れる。ホームページを頻
繁に更新したりしている。よく見てくださる人も多く、外から攻めて、教員に危機感を持って欲し
いと思っている。
○ 乗車指導や授業時の起立など、教員も漫然とやっているが、世の中の動きを敏感に感じてもらう
様にしている。民間人校長が来たのだから世の中のことを今まで以上に敏感に感じ取ってほしいと
期待している。教員は子どもに対する指導はできても保護者対応が必ずしも上手くない。そのため
にも、世の中の動きをきちんと知ってもらうことが大切だと思う。
○ あるとき、特別指導をした際に、保護者から「先生は、一所懸命やってませんよ」という指摘が
あった。そこで、
「校則を破ったという認識はありますね」と確認し、それはあるということなので、
「先生を信頼できなければ、そこは学校として工夫していきたい」とその場を納めた。これに対し、
教員が「校長は保護者の肩を持つ。われわれは一所懸命やっていると保護者に言って欲しい」と言っ
てきた。
「あなたたちをけなしているのではなく、課題があれば工夫すると言っているだけ」と説明
したが、こういう保護者対応の感性をもっと磨く必要があると感じる。
○ 教員には、
「経営」という言葉に対する違和感があるようだ。だが、現場に入って思うのは、教員
はよくやっているということ。それが上手く世の中に伝わらない。
○ 教員の学年グループは強い。運命共同体的なところがある。校長が言うと「反対」となるが、学
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年リーダーが言って、理解が早まり動く、というところがある。何でもかんでも指示を出すのでは
なく、要は、うまく動いてくれれば、生徒のためになる。
○ また教員には、60歳までどんな教員生活を送りたいのかよく考えてもらい、そのライフプラン
に沿った活動をしてもらいたい。生徒に考えさせる割に、自分の将来設計が希薄である。
3)生徒とのかかわり
○ (教育理念は)学校は、生徒と教員と保護者・地域の三位一体。生徒にとっては、この学校にい
ることが大切であること。なによりも安心して通え、安全である学校。教員にとっては、教えるこ
とで満足度が享受できる学校。保護者・地域にとっては、満足度が高く、参加しやすい学校である
こと。
○ 生徒との対話を重視している。そのため、自分で校内をまわる時間を決めている。校長の「時間
割」を作って、始業前、昼食後、放課後に生徒と触れあう時間をとっている。学校をまわるといろ
いろなことがよくわかる。良い発見はすぐに先生方に伝えている。先生方も「校長がやってるな」
ということは見ている。全校生徒675人のうち半数ぐらいは名前と顔が一致する。これも生徒と
常日頃コミュニケーションを図っている校長の生徒を大切にしている表れである。
○ 誕生月懇談会を実施。生徒だけでなく、これまで教員も4人、保護者も1人参加してくれた。生
徒会の生徒も参加してくれたので、いろいろと提案を言ってほしいと頼んでいる。また、この様子
をプリントにして保護者に配付したところ、担任が書いたのかと思ったら校長先生が書いてくれた
と聞いて驚いたと激励の電話をしてきてくれた保護者もいた。
[感想]
○ 「わかりやすいスローガンを機会あるごとに話している。『より良き明日のために Ever Better
Tomorrow』というもの」とのことだった。
○ 校長が、自分の考え方をうまく表現する、人を惹きつけるスローガンを唱えて、そのもとで教員
も生徒も保護者(地域)も一緒になって学校をつくっていくというのが、今まさに求められている
マネジメントなのかもしれない。こうしたスローガンも、生徒や教員を動かしていく一つの重要な
「仕掛け」なのである。
○ 吉田校長先生にお話しを伺っていると、いろいろな「仕掛け」があるなと感じる。こうした「仕
掛け」をうまく使っていくことで、学校全体が、生徒も教員も、活気をもって、動いていくことが
できるようになる。今回お聞きした多くの「仕掛け」の中でも、
「生徒が授業に集中するよう、生徒
に目標を立てさせた」というのが特に印象的であった。これは「自分たちもがんばるから、先生も
がんばってね」という、生徒から教員へのメッセージになる。こういうメッセージを生徒からもらっ
たら、教員も意欲をかき立てられる。大変参考になった。
○ 示唆に富んだお話しをいろいろとお伺いできたうえに、校長室で校長先生自らお茶をたてていた
だきました。ごちそうさまでした。また、貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございまし
た。
岡山県立倉敷南高等学校
高木二三男校長
平成19年12月3日(月)訪問者:向畦地委員、亀田委員
[概要]
1)教員組織について
○ 学校現場に入って思ったのは、教員の組織人としてのあり方が、会社勤めの自分とは違うという
こと。校長は「商店街の会長」的な存在だと感じる。
会社はデパート。店長がいて、各フロアの責任者がいる。歳暮の販売について考えるとすると、
まずその会議をして、年末に何億円を売り上げるかと目標があって、キャンペーンの日程はどうだ
とか、食品に力を入れるとかを決める。決まったことを各フロアの責任者が行い、うまくいけば各
フロアにボーナスがでる。責任者は店長だから、うまくいけばボーナスがでるし、ダメなら責任を
取らされてどこかに行くことになる。
商店街の場合、みんなが話し合って決める。会長が洋服屋の飾りをもっときちんとしろと言って
も、言い切れるものではない。副会長(学校なら教頭)が説得してもっていく。責任が明確ではな
い。「主体性に任せる柔らかな組織」である。
○ 校長には人事権があるというが、この程度のものは人事権とは言わない。ヒト・カネなしで、カ
リスマ性で校長に学校経営を求めるのは違うと思う。
-8-
会社では社員は下から上に上がっていこうという動きがある。上のポジションを志向する。しか
し学校は管理職と教員の間に「大きな川」がある。教員の中から管理職になる者を一本釣りしてこっ
ち側に連れて行く。教員は管理職になると生徒との関係がなくなり、後ろめたさを感じるのかもし
れない。校長・教頭は憧れのポジションではない。ヒト・カネがない中で、どう学校運営を行うか、
難しい。
2)タスク・フォースについて
○ 教員は組織で動くのは難しいし、慣れていない。学年団や生徒課・進路課・教務課等でやってい
るが、横の部分のつながりが薄い。学年団をこえて何かするとか、生徒課と教務課の連携とか。そ
こで、横断的にこちらがメンバーを組んで、「答申」を出してもらっている。
○ 例えば学級の二人担任制について。本校は二人担任制だが正と副の担任制。岡山市は二人担任で
半分ずつ面倒を見るところもある。本校は正担任が進路指導等にあたり、副担任がサポートする体
制であるが、果たしてそれでよいのだろうか。教員の仕事の平準化や担任が病気で倒れたときに副
担任がすぐに代われるのかなど、リスク管理の問題もある。これを考えさせた。2月に出た答申で
は、
「現状で正副のバランスをもう少しとっていく」というもの。1年半前に自分が赴任したときは、
「正正担任制でいく」と教員皆が共通理解していると思っていたが、タスク・フォースで検討する
と、こんな案が出された。そこで、とりあえず1年間、自分の目で見ることとし、来年初頭までに
結論を出すことにしている。
○ また「授業力向上チーム」について、生徒に学力を付けさせるのに組織的なものが必要と考え更
にもっと教員同士が話し合わなくてはいけないということもあり立ち上げた。メンバーは各科の主
任で構成し、力量のあるものをトップに据えている。学校で委員会をつくると長期間引っ張る傾向
にあるが、タスク・フォースでは検討が終われば解散させる。しかし、今回の授業力向上について
は、長期的にやろうとしている。委員会に昇格させた。
共に横断的に人を集めるが、タスク・フォースでは、一つの目的に対し、短期的に行い、これに
対し、長期的に行うのが「プロジェクトチーム」と分けて使用している。
○ 教員の組織に対する考え方は、上からポッと言ってすぐに変わるものではない。いわば石を投げ
ている。
3)
「一部署一見直し」について
○ (赴任して)いろいろやりたいことがあったが、現在の一番の問題は、教員の多忙感。いわばコッ
プに水がいっぱいの状態。新しいことをやるためには、この水を減らす必要がある。教員はまじめ
だから、一つのことをやるのに10(の力)でやろうとする。5つのことをやるなら50になる。
6つ目を入れるとそれも10でやろうとするので60になっていまい、50というキャパに収まら
ない。キャパは限られているのだから一つひとつの質は低下するがその意識が薄い。仕事にメリハ
リを付けたりいい意味での手抜きが出来ない。生徒にゆとりの創造をさせる前に、教員にゆとりが
必要。
そこで、
「一部署一見直し」をしている。具体的には、図書なら、年3回発行の図書だよりを年2
回に減らしたり、会議を減らしたり。
今は日曜日も生徒が自習に来る。教員も結構日曜日に来ているので、職員室にいくと誰かがいて、
教えてもらったりできる。例えば3年生を教員が「来い」と言って責任もって面倒見るのはよいが、
だらだらと相手をするというのは良くないので、原則登校禁止にした。保護者の中には「面倒見の
良い学校」に反するという考えもあるかもしれないが、土日にまで働くことを求めるのは違うと思
う。本当は、週1,2日はノー残業デーで早く帰してあげたいが、人によっても仕事が違うから、
なかなかうまくいかない。
4)教員に自信をもたせるためには?
○ ほとんどの教員はよくやっている。
「家庭のことを省みないでどうするんだ。そんなに給料もらっ
てないだろう」というと、
「民間的発想だ」と答えが返ってくる。
ほんとに教員はよくやっている。それにきちんと対応してやりたい。自信を持たせたい。教員は
たたかれっぱなしの状態。
○ 私のミッションは、学校でのありのままの姿を外に出すこと。新聞などのマス・メディアに出た
り、経済界の仲間に話をしたり情報発信に心掛けている。あるがままの学校を評価してもらえれば
よい。
今はいろいろな人がいろいろなことを言い、マス・メディアはパターン化した報道をし、
「モンス
ター・ペアレント」なども出てくる。
こんな中で教員に自信を持たすことが大切。このままだと教員志望者が減ってしまうのではない
-9-
か。教員の親が(自分の子どもに)これから教員は大変だからやめろというのが多いらしい。
○ 教員の真の評価は「先生みたいな先生になりたい」という生徒が何人出てくるか。
「先生のおかげ
で更生しました」とか、
「学校に行くようになった」などのことは、教員のインセンティブを高める
ことになる。
教員によく言うのは、教員になったときの気持ちを持ち続けてほしいということ。年をとると往々
にしてくすんでくるが、そこを磨き続けることが大切だと思う。
5)民間出身の校長について
○ 民間人校長が民間の手法を学校に持ち込むことは大切だが、それが根付かないと意味がない。退
職したときにもとに戻るなら、学校を混乱させて終わることになる。
学校で40年も50年も育った人は、そのDNAを持っている。民間から(校長が)来て、ポッ
と変わるわけがない。
○ 岡山県には民間人校長が二人おり、ともに来年が定年。それもあり、先日、教育長ヒアリングが
あった。民間人校長は開かれた学校の象徴で、継続すべきである。ウナギを輸入するときに魚を入
れておくと活性化するのと同じということを話した。また、経営手腕は必要だが、まずは子どもの
ことを第一に考える人に主眼をおかないといけないことも付け加えた。
○ 民間から校長になってとまどうことも多いが、教職員や保護者の協力を得ながら、そして生徒た
ちに囲まれ楽しく充実した毎日である。子どもが好きで教育に関心がある方に是非この気持ちを味
わって欲しいと思っている。
[感想]
○ 私自身も常々、教員がもっと自信を持って生徒や保護者に対応できることが大切だと思っていた
ので、「教員が自信を持つために、校長としてできることは?」と質問すると、「責任をとることで
しょう」と即答された。その上で、
「トップのやることは3つしかない。方向性を決めること、決断
すること、責任をとること」とのことだ。
「私のミッションは、学校でのありのままの姿を外に出す
こと」という言葉とも相まって、教職員にとっては頼もしい校長先生なのだろうという印象が強まっ
た。
確かに、少しの時間ではあれ高木校長先生のお話をうかがいながら、自分自身も元気づけられた
(癒された)ような気がした。
○ 「教員は、常に24時間、仕事をしている。これは教員の性」
、
「校長になって常に見られている。
これは結構つらい」、「教員は農耕民族。土着してそこを動かない。1年やって、また1年同じこと
をやっていく」、「校長が(教員にとって)目指すポジションなら、学校に求心力がある」等々、印
象に残ったお言葉も多い。それぞれ、教員や教員組織の風土をよく表しているように感じた。
これらの言葉には教員の多忙感の軽減、学校の組織的運営などを考えていく上でも重要な切り口
が多く含まれている。今後、行政としての学校支援に活かしていけるように考えていきたい。
○ 貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。
広島県立宮島工業高等学校
本田和哉校長
平成19年11月22日(金) 訪問者:向畦地委員、亀田委員
[概要]
1)数値目標の設定について
○ 教職員は数値目標の設定作業や数値そのものに慣れていないと感じる。例えば、
「前年比5%アッ
プ」という目標を立ててきた者がいるが、前年実績は8人であり、その5%は0.4人ということ
になる。おそらく「10%アップは難しいので5%アップにしておこう」という感覚だったのだろ
う。
「現状がどうで、来年は、その後は……」という考え方ではないようで、数値目標に対する捉え
方や責任感がない。
○ 企業の場合、利益があって企業が存続するという前提のもとでの数値目標であり、達成すれば処
遇や昇進等に跳ね返るので、目標に対し責任が持てる。学校では、組織の存続の前提がなかったり、
処遇にも跳ね返らないのでピンと来ないのだろう。
学校の場合、数値目標を立ててやるべき項目とやらない項目があったとすると、やらなかったこ
とに対して誰が責任を取るのかが曖昧である。銀行なら支店長のボーナスが増減し、責任は明確で
ある。
○ 学校で「国公立進学20人」という目標を立てて、10人が合格したとすると、
「マイナス10人」
ということに誰が責任をとれるのか。この点について言えば、数値目標を立てることに意味がある
- 10 -
のか、と思える。数値目標を立てることはよいが、結果責任をどうするか、という点が、何もない。
人をほめるのは「金銭的処遇か名誉」で、学校には「金銭的処遇」も「名誉」も関係ないので難
しいのは確かだが、数値目標をあげないと組織は伸びないだろう。
本校では7割が就職するので、いかに就職をかなえてやるかが重要だ。しかし、170数名の就
職希望者に対して求人数は700あり、就職はできる。目標を100%と言ったところで無意味で
ある。がんばれば手が届く目標設定が重要である。
例えば、資格試験で現状は1種が10人程度なら、2年で2種をとり、3年で全員が1種をとる
という目標を立てて、そのためにどうするか、という取組みが必要だ。
○ 「皆がんばった」といってもがんばり具合には差があるので、数字で目に見える目標は大切であ
る。
ただ、学校の場合、
「中退ゼロ」とか「特別指導を減らす」などといっても、生徒の状況に左右さ
れる。生徒指導面でのこれらの目標は、結果責任を問うものではないので、数値目標を立ててはい
けない部分である。
○ 学校は、いま、
「数値目標」と言い過ぎる。例えば「国公立○○人」ということについては、そこ
に至るまでに授業など教員の努力があって初めてできるもの。
私も,かつて銀行で渉外係をしていた頃「積立預金を1ヶ月で20件獲得」というノルマを与え
られた頃,一つの取引先から月5万円の積み立てに付き合うと言ってもらった時,5万円を一口と
するより、1万円を5口として処理するほうが、目標を達成しやすくなると考え,そのようにして
いた。こっちの方がノルマを達成でき,ほめられた。しかしこれでは事務手続きが増加するだけで,
収益が伸びないことが分かった。このような行動をとる渉外係が増加したので,結果的に純増(額)
の目標に変わっていった。これではじめて、数値が伸びると収益が伸びるということになった。
学校は、この初期の段階にいる。今後、先生が数値目標に慣れていくだろう。大阪の私立学校で
一人に何人も(大学を)受けさせるという学校があったが、
(初期の段階では)当然この罠に落ちる。
一回罠におちて、これから、ということになるのだろう。
○ 数値目標は成果と結びつく。企業では、単年度決算においての数値目標であり、
「十年計画」がま
ずあり、
「5年後はこう、だから今年はこう」という中でのもの。経営計画には「5年後はこうしよ
う」というのが必ずある。その上で単年度目標がある。5年間をトータルでみるのではない。しか
し、学校は1年で入学し、3年で卒業するというサイクルで、単年度は難しいのは確か。例えば1
年の担任にどんな目標があるか。1年で中退が多いなら、そうならないような仕組み作りをする必
要があるが、5人中退が出たとして、この責任は誰にあるのか。担任か、学年か……学校の仕組み
の問題があるので校長の責任となるのか。
「数値の悪さ」には必ず「誰かがしなかった」という結果
責任が伴わないと意味がない。
そこで、教員自身が今年の状況を判断して、その上で数値化できるような数字を、まず出しても
らう。この目標が、
「ちょっとがんばって手が届くかどうか」という判断は校長が行い、面談を通じ
て、少しがんばって届くというところに持って行く。
○ こちらから「国公立10人」などと目標を言えば、数値化に対するアレルギーもでるだろう。話
し合いで、自分が出した数値は、アレルギーはでないだろう。
○
2)OJTツールの作成中とのことだが、その活用をどのように図っていくか。
○ OJTについては長い計画を持っている。
1年目の先生も30年の先生も、教科レベルでは(生徒に対しなければならないことは)同じ。
だからベテランが1年目の教員を教えるのはおかしいという考えがあるが、これは教科の話。今、
取り組んでいるのは分掌でのOJT。
○ 教務主任にOJTノートを作るよう昨年から指示している。
教務の仕事が列挙されており、それぞれの仕事の注意事項があって、その横に本人のその仕事の
評価と指導者の評価が記入できるような内容のもの。教務部に新しい人が来たときに、これを見せ
て、できたかできていないかがわかるもの。これを一つの冊子として、何月何日頃にはこういう仕
事がある。一つひとつの仕事について「今日はこれを教えよう」というノートである。それが管理
職にもまわってくればよい。これを参考に、次は生徒指導部などに広げていきたい。
○ 教科面では、それぞれのやり方もあり、イメージがわきにくいので、まず、年間でやることが決
まっていることからOJTをやる。分掌でうまくやり出すと、教科にも応用していけるのではない
か。
3)教員の意識からすると、急激な改革ではなく、
「いつの間にか変わっていた」との改革をしたいと
のお考えだが。
○ 民間出身の校長が学校に来て何をやるのか。いきなり「これをやれ」では、自分がいなくなると
元に戻ってしまうのではないか。できることから少しずつ変わっていった方が何年か残るのではと
思う。できるかどうかは、教員の反応をみているとわかる。
○ 平成16年に採用され、2校で半年ずつ研修をした。研修を通じて校長によっても経営が違うこ
とがわかった。例えば、校長が何でも決めていく学校なら、校長にあげる情報も、校長が怒るかど
- 11 -
うかで判断することもあり、校長の耳に心地よい情報だけが届いたりする。
本校に赴任し、2学期の始業式を8月31日にするという提案が職員会議に出たときがあった。
台風対策で前年度の教訓からこのようにしたのだが、校長が何でも言って欲しいと発言すると、
「な
ぜ9月1日じゃないのか……」という意見が出て、調べると授業日数は変わらないということがわ
かった。そこで校長が再検討させると判断した。このころから話が出るようになった。
校長室もオープンにしている。中には耳の痛い話もある。最初はこんなことも言いに来るのかと
いうこともあった。先生のわがままのときもあるが、よく聞くことにしている。その場でダメとい
うともう言わなくなるので、ダメなときもよく考えて言うことにしている。
○
4)教育委員会からどのような支援をしてもらいたいか。
○ 報告類やデスクワークを極力減らして欲しい。教員は生徒に対して授業で教育している。事業を
受けると、出張や報告で多忙になり、授業にも穴があく。
○ 教員の数が絶対的に不足している。3月末に校長が臨採と時間講師を探さなくてはならない。ま
た新採はあらゆる研修で鍛えるが、臨採や時間講師の教育は学校任せで、責任を全部学校に任せて
いる、教員の品質管理を学校に負わせている。県教委が負うべきもの。
○ 教育次長を民間にするくらいがよいのではないか。私は、
「民間の感覚でやってほしい、朱に交わっ
て赤くなってはダメ」と言われて採用されたが、こうしたらどうかと言っても「それはできません」
と跳ね返される。行政の壁があるのだろうが。
5)生徒の課題が深刻化する中、教員の組織化が必要だが、何か方策は?
○ 担任は生徒のことをかかえる。工業高校は次に科でかかえる。校長のところに来たときはどうに
もならないこともある。
○ 本校では養護教諭を教育相談の委員長にした。保健室に相談に来る生徒も多いからだ。だから養
護教諭を委員長にして、何かあったら教科担当者、学年会で相談するように、教育相談をみんなで
やらないといけないものとしており、ずいぶんと定着してきている。
○ 校長が情報をつかんだときに、これはみんなのものだよと、管理職から教員に言うことも大切で
ある。
[感想]
○ 数値目標についてのお話しをはじめ、大変興味深く、また勉強になるお話をたくさんうかがった。
上記の他にも、次のようなお話が特に印象深かった。
* 人は「ほめて育てる」ことが大切。ほめることは「心をこちらに向けさせる」ことにつなが
る。特別指導の申し渡しのときなどにも、まずほめることを考える。ほめることで保護者もにっ
こりとし、こちらを向いてくれる。その上で話をする。
ほめて育てる「コーチング」が大切だが、教員はティーチャーだから教えたがる。まず相手
の話をしっかり聞くことが大切だ。
* 行動指針を作成し、教職員や生徒に示している。例えば教職員なら「そのことは、生徒の将
来につながることですか」など5項目。毎年4月に教職員に(名刺大のカードで)配付してい
る。今年は裏面にミッションとキーワードをいれた。困ったときに考える指針になれば、と思っ
ている。毎年パワーアップしながら、しつこく続けていく。
○ 行動指針については、
「将来私が校長になったときに使わせていただきたい」という厚かましいお
願いにもご快諾いただいた。貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。
- 12 -
イ.アンケートについて
A)アンケート結果概要
民間出身校長に対するアンケートは、全国の73人の校長に郵送した。
回答を回収できたのは47件、回収率は64%であった。
内訳は以下のとおり。
・学校種
小学校
8
中学校
5
高
校
33
特別支援学校
1
50歳以下
0
・年齢
51~55歳
10
56~60歳
36
61歳以上
1
・TQM活動推進
経験あり
29
経験なし
4
TQMかどうか分からないが品質向上には取り組んでいた
9
回答なし
5
B)分析項目
アンケートの項目は、下記参考のとおりであり、回答番号「3」から「6」までは自由
記述になっている。
このうち、以下の項目について分析を行った。これらの項目は、学校運営の改善及び教
育委員会の支援に比較的関係が深いからである。
○「3(3)上記(2)の学校にするために、どのような方法を用いているか
(記入内容の例)具体的な活動・方策
マネジメントの仕組みやシステム
現状把握の方法、改善成果を把握する方法の工夫
学校評価結果の活用方法
※これまでの民間でのご経験を生かしている点があれば、併せて記入」
⇒表1
○
「3(4)教職員への指導・支援や教職員との関係づくりで配慮している点
(特に、教職員の意欲を引き出すため、あるいは教職員のチームワークを高めるために努
13
力している点があれば、記入)」
⇒表2
○
「3(7)学校経営の面で苦労した点」
⇒表3
○
「5(1)教育委員会は学校に対してどのような支援をすべきか」
⇒表4
○
「4(2)今後、民間出身校長の力をどのように活用すべきか」
⇒表5
(参考)アンケート項目
1
学校種
2
年齢
3
学校経営について
(1)学校経営の理念(あるいは方針)
(2)具体的にはどのような学校にしたいと考えるか(学校経営目標など)
(3)上記(2)の学校にするために、どのような方法を用いているか
(記入内容の例)具体的な活動・方策
マネジメントの仕組みやシステム
現状把握の方法、改善成果を把握する方法の工夫
学校評価結果の活用方法
※これまでの民間でのご経験を生かしている点があれば、併せて記入
(4)教職員への指導・支援や教職員との関係づくりで配慮している点
(特に、教職員の意欲を引き出すため、あるいは教職員のチームワークを高
めるために努力している点があれば、記入)
(5)児童生徒への指導、児童生徒とのかかわりで工夫している点
(6)保護者・地域(マスコミ含む)への対応で工夫していること
(7)学校経営の面で苦労した点
4
民間出身校長について
( 1 )こ れ ま で の 民 間 出 身 校 長 へ の 行 政 に よ る 支 援 の 在 り 方( 受 け 入 れ 態 勢 ・ 研 修 ・
その後のフォローなど)についてどう考えるか
(2)今後、民間出身校長の力をどのように活用すべきか
5
教育委員会について
(1)教育委員会は学校に対してどのような支援をすべきか
(2)いまの教育委員会の在り方はどういう点に課題があるか
14
6
7
その他
民間企業等に勤務をしていた間に、全社又は部門のTQM活動(=総合的品質
管理、品質経営、経営品質向上などを含む)の推進に携わった経験があるか
C)分析方法
自由記述の回答内容を見ると、いくつかの回答内容は、何人かの校長が同じような趣旨
で回答していることがわかる。多くの校長が同じ内容を回答していれば、その回答内容は
多くの学校で共通した課題であると考えることができる。
このことから、
①
自由記述の回答を、内容によっていくつかの項目(例えば「学校評価や保護者・児
童生徒へのアンケート実施」
「授業改善・学力向上」など)に分類し(→「表」の「回
答内容」
)、
②
それぞれの項目について、全体(47人)のうち何人の校長がその項目にあてはま
る記述をしたか(「表」の「回答数」
)、
を分析した(したがって、一人の校長が複数の「回答内容」を回答している場合がある)。
D)分析結果
分析結果は以下の表のとおりである。
ただし、この表の「回答数」は、民間出身校長がどのようなことを重視しているかの大
まかな目安にはなるが、その多寡はあまり厳密な意味を持たないことに注意すべきである
(=回答数が少ないからと言って重要度が低いとは言えない)。その理由は次のとおりであ
る。
①
アンケートは自由記述なので、各校長の取組がすべて記述されているものではなく、
各校長の取組の一部が記述されたに過ぎない。
②
記述内容をどの回答内容にあてはめるかの判断に分析者の主観が含まれている。
③
全体の回答数が47という少数の調査であり、また、その質問内容からも厳密な数
値の比較にはなじむものではない。
15
表1 学校経営目標などの実現に向けてどのような方法を用いているか
20
18
16
14
12
回
答 10
数
8
6
4
方 針 管 理 の実 施
報 告 連 絡 相 談 の徹 底
部 活 動 の活 性 化
めざ す 子 ども 像 を 明 示
教 職 員 の異 動 を 推 進
全 教 職 員 の経 営 参 画 を 推 進
教 職 員 の努 力 を 評 価
評 価 や ア ンケー ト結 果 の公 表
数 値 目 標 の設 定
教 職 員 の意 識 改 革
業 務 の期 限 を 明 示
保 護 者 と の連 携
主 任 等 に仕 事 を ま か せる
回答内容
校長講話
教 職 員 に対 す る 研 修 を 実 施
P D C Aの推 進
教 職 員 間 コミ ュニケー シ ョンや共 通 理 解
仕 事 ・出 張 の精 選
校 長 と教 職 員 と の コミ ュニケー シ ョン
中 学 ・高 校 ・大 学 等 の連 携
課 題 に応 じた プ ロジ ェク ト チー ムの設 置
キ ャリ ア教 育 の推 進
学 校 目 標 ・経 営 計 画 を 設 定 ・公 開
目 標 管 理 の推 進
校 内 運 営 会 議 の充 実 ・体 制 の整 理
地 域 と の連 携
広 報 の充 実
授 業 改 善 ・学 力 向 上
学 校 評 価 や保 護 者 ・児 童 生 徒 へのア ンケー ト実
学校評価や保護者 .児童生徒へのアンケート実施
施
0
-16-
2
表2 教職員への指導・支援や教職員との関係づくりで配慮している点
20
18
16
14
12
回
答 10
数
8
6
4
若 年 者 や女 性 の積 極 的 起 用
校 長 室 の ド アを 開 放
教 職 員 の業 務 量 の平 準 化
教 職 員 ど う し 助 け 合 う 関 係 を つく る
教 職 員 の 学 校 経 営 への 参 画 意 識 を 向 上
学 校 の活 動 を 外 部 に発 信
O J Tの推 進
校 内 研 修 の 実 施 ・研 修 機 会 の 提 供
回答内容
校 長 と 教 職 員 と の信 頼 関 係 の構 築
教 職 員 に課 題 を 持 た せる
校 長 が率 先 し て行 動
校 長 が出 向 いて教 職 員 と 話 を す る
教 職 員 に積 極 的 に声 を か ける
教 職 員 の 努 力 を 認 め る ・ほ め る
教 職 員 の意 識 改 革 に努 める
教 職 員 の自 主 性 を 尊 重
校 内 の 情 報 共 有 ・方 針 の 共 通 理 解
教 職 員 と の 面 談 (教 員 評 価 制 度 の 活 用 な
教職員との面談(
教員評価制
度の活用など)
ど )
教 職 員 の話 を 聴 く
0
-17-
2
表3 学校経営の面で苦労した点
14
12
10
回 8
答
数 6
2
-18-
4
予 算 が足 り な い
報 告 連 絡 相 談 が 徹 底 し て いな い
各 教 職 員 の業 務 量 が不 均 衡
教 職 員 への 指 示 が 徹 底 し な い
コス ト 意 識 の 不 足
校 内 の人 材 不 足
学 校 教 育 に関 す る 知 識 不 足
業 務 処 理 が 遅 い ・変 化 が 遅 い
回答内容
職 員 会 議 への 対 応 な ど
学 校 運 営 に継 続 性 がな い
顧 客 満 足 意 識 の不 足
教 育 委 員 会 の意 識 が不 十 分 な ど
教 職 員 の人 事 や処 遇 のあ り 方
教 職 員 に社 会 性 が不 足
教 職 員 と の人 間 関 係
新 し い こと への 教 職 員 の 抵 抗
校 長 に 権 限 (人 事 ・予 算 )が な い
教 職 員 集 団 が 組 織 化 さ れ て いな い
の方
前例
例踏
踏襲襲.・
的教
な職
教員職
考え方
前
硬硬
直直
的な
の員
考え
0
表4 教育委員会は学校にどのような支援をすべきか
12
10
8
回
答 6
数
4
教 職 員 の 業 務 量 の 削 減 ・適 正 化
出 張 の削 減
ト ラ ブ ル や 苦 情 への 対 応
回答内容
適 正 な 人 事 (適 材 適 所 )
上 意 下 達 を や め 、学 校 現 場 と 一 緒 に 考 え
る 姿 勢 が必 要
教 委 の 戦 略 ・ビ ジ ョ ンを 明 確 に 示 す
個 々 の 学 校 の 実 情 に応 じ た 支 援
学 校 現 場 の課 題 を 把 握 す る 必 要
人的財政的支援
校 長 に 権 限 (人 事 ・予 算 )を 付 与
0
-19-
2
表5 民間出身校長の力をどう活用すべきか
12
10
8
回
答 6
数
4
民 間 出 身 教 員 の 数 を 増 や す べき
各 種 の 審 議 会 委 員 への 登 用
回答内容
民 間 出 身 校 長 への 期 待 を 明 確 に す べき
民 間 出 身 校 長 の 数 を 増 や す べき
意識
長長
期期
的な
を革
推を
進す
割る 役 割
意
識改
改革革.・
的改
な革改
推る
進役す
民間
校校
長長
を教
員委
会事
に務
登用
民
間出
出身身
を育
教委育
員務
会局事
局 に登 用
マ ネ ジ メ ン ト な ど の 成 果 を 検 証 ・普 及
0
-20-
2
ウ.結果の考察
a.以上の調査結果を見ると、次のような民間出身校長の全体像が見えてくる。
それは、“学校目標・経営計画を示し、学校評価やアンケートを活用しながら改善を進める。
そのために機動的な組織体制をつくるとともにコミュニケーションを大切にすることで教職員
を動かしていく”という校長の姿勢である。
b.「表1
学校経営目標などの実現に向けてどのような方法を用いているか」を見ると、学校経
営に関して大きく4つの要素をあげることができる。
1点目は「学校目標・経営計画を設定・公開」
「数値目標の設定」
「めざす子ども像を明示」な
ど、方向性やめざすべき姿を示すことである。
目標をどのように設定するかに関し、
「数値目標には結果系と要因系がある。
(中略)要因系が
大切であり、子どもが努力する姿を数値にして初めて動き出す」(宇都宮市立簗瀬小学校小堀校
長との指摘があった。
2点目は「学校評価や保護者・児童生徒へのアンケート実施」
「広報の充実」
「PDCAの推進」
「目標管理の推進」など、学校評価等を生かして改善を進めるシステムづくりである。
・
「保護者や中学生の保護者などの意見は重要。そのために広報活動に力を入れる。ホームペー
ジを頻繁に更新したりしている。よく見てくださる人も多く、外から攻めて、教員に危機感
を持って欲しい」(神奈川県立舞岡高等学校吉田校長)、
・「経年変化によるトレンド(悪化、現状維持、改善)や市の目標との比較などによって、い
ろいろな取り組むべきことが見えてくるはずである」(宇都宮市立星が丘中学校小谷校長)、
・「顧客の側に立った、特色ある学校(中略)を目指して学校経営方針を作成し、個々の具体
的な取組みを進めてきた。その結果を確認する為に、PDCAサイクルを回し評価を行って
改善向上に取り組んでいる」
(茨城県立つくば工科高等学校田賀校長)
、
・「PDCAサイクルでは、CからAに移る時、達成していなかったら教員自らに何故なのか
考えさせる」
(宇都宮市立簗瀬小学校小堀校長)、
などの意見があった。
3点目は、
「校内運営会議の充実・体制の整理」
「課題に応じたプロジェクトチームの設置」
「主
任等に仕事をまかせる」など改善を進めるための組織体制の整備である。
・
「総括教諭等で構成する『企画会議』というのがある。
(中略)会議に月次業務報告の提出を
求めることにした。(中略)これにより、次第に『いつまでにやる方向である』とか『いつ
までにやりきる』など課題の解決について記入するようになってきた」(神奈川県立舞岡高
等学校吉田校長)
・
「校務分掌やプロジェクトチームできちんと原案をつめて、その上で職員会議に出す」
(山形
県立南陽高等学校小口校長)、
・
「横断的にこちらがメンバーを組んで『答申』を出してもらっている」
(岡山県立倉敷南高等
学校高木校長)
、
-21-
などの取組がある。
4点目は、
「校長と教職員とのコミュニケーション」
「教職員間コミュニケーションや共通理解」
など、学校全体で改善を進めるために最も大事な部分となる人間関係づくりである。
「校長室もオープンにしている」
(広島県立宮島工業高等学校本田校長)との意見からもコミュ
ニケーションを重視していることがわかる。
c.上記の4点目とも関わるが、次の「表2
教職員への指導・支援や教職員との関係づくりで配
慮している点」では、「教職員の話を聴く」「教職員との面談(教員評価制度の活用など)」等が
あげられている。特に、
「教職員に積極的に声をかける」
「校長が出向いて教職員と話をする」な
ど、積極的に話を聴く姿勢が特徴としてあげられる。
d.一方、
「表3
学校経営の面で苦労した点」を見ると、
「前例踏襲・硬直的な教職員の考え方」
「新しいことへの教職員の抵抗」など、改善が思うように進まないことをあげている。また、
「教
職員集団が組織化されていない」
「教職員との人間関係」などもあげられており、上記「b.」
「c.」
に掲げる点は、裏を返せば、それだけ各校長が苦労している部分であると考えられる。
e.以上のとおり、民間出身校長は、上記「b.」「c.」や前掲のインタビュー結果のようにさま
ざまな経営上の工夫や努力をしている。目標を明示して評価結果やデータを生かしながら改善を
進めるという点やコミュニケーションを意識的に行う点などをモデル内容に反映させた。
一方、
「d.
」に示したとおり、学校組織が思ったようになかなか動かず、各民間出身校長が苦
労していることもうかがえる。学校運営改善モデルは改善に向けて学校組織を動かすためのモデ
ルであることから、今後、各学校でこのモデルを活用することにより、改善に向けた取組をより
一層進めることを期待したい。
f.
「表4 教育委員会は学校にどのような支援をすべきか」では、
「校長に権限(人事・予算)を
付与」すべきとしている。これは、上記「d.
」の課題に対応しているものと考えられる。
また、
「人的財政的支援」とともに、教育委員会は「戦略・ビジョンを明確に示す」こと、
「学
校現場の課題を把握」し、
「上意下達をやめ、学校現場と一緒に考え」
「個々の学校の実情に応じ
た支援」を行うことが必要であるとの意見があった。
g.「表5
民間出身校長の力をどう活用すべきか」を見ると、各学校での改革を地域全体に広げ
る必要があると考えていることが読みとれる。民間出身校長の「マネジメントなどの成果を検
証・普及」するとともに、「民間出身校長を教育委員会事務局に登用」すべき、あるいは「各種
の審議会委員への登用」をすべきとの意見があった。また、改革を進めるため、「民間出身校長
の数を増やすべき」との意見もあった。
-22-
(参 考 )
学 校 経 営 に関 するアンケート
お忙 しい中 、アンケートにご協 力 いただきありがとうございます。
お答 えいただいた結 果 は、整 理 ・分 析 の上 、「学 校 の改 善 支 援 の在 り方 に関 する調 査
研 究 」報 告 書 に掲 載 し、文 部 科 学 省 に提 出 するとともに公 表 させていただく予 定 です。
な お 、 文 章 で 記 述 い た だ い た 内 容 は 、 原 則 とし て そ の ま ま 報 告 書 に 掲 載 さ せ て い た だ き
ますが、 学 校 名 及 び校 長 先 生 のお名 前 は報 告 書 に掲 載 いたしません。率 直 にお答 えいた
だければ幸 いです。
1 貴 校 の学 校 種 に○をつけてください
①小 学 校
②中 学 校
③高 等 学 校
④特 別 支 援 学 校 (盲 ・聾 ・養 護 学 校 )
2 差 し支 えなければご自 分 の年 齢 に○をつけてください
①44歳 以 下
②45~50歳
③51~55歳
④56~60歳
⑤61歳 以 上
3 学 校 経 営 について
(1)貴 校 の学 校 経 営 の理 念 (あるいは方 針 )をご記 入 ください
(2)具 体 的 にはどのような学 校 にしたいとお考 えですか(学 校 経 営 目 標 など)
-23-
(3)上 記 (2)の学 校 にするために、どのような方 法 を用 いていますか
(記 入 内 容 の例 )具 体 的 な活 動 ・方 策
マ ネジ メントの仕 組 みやシス テム
現 状 把 握 の方 法 、改 善 成 果 を把 握 する方 法 の工 夫
学 校 評 価 結 果 の活 用 方 法
※これまでの民 間 でのご経 験 を生 かしている点 があれば、併 せてご記 入 ください
(4)教 職 員 への指 導 ・支 援 や教 職 員 との関 係 づくりで配 慮 されている点 があればご記 入 くだ
さい ( 特 に 、 教 職 員 の 意 欲 を 引 き 出 す た め 、 あ る い は 教 職 員 の チ ーム ワ ー ク を 高 め る た め に 努 力
さ れて いる点 が あれ ば、 ご記 入 ください)
(5)児 童 生 徒 への指 導 、児 童 生 徒 とのかかわりで工 夫 されている点 があればご記 入 ください
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(6)保 護 者 ・地 域 (マスコミ含 む) への対 応 で工 夫 されていることがあればご記 入 ください
(7)校 長 になられて学 校 経 営 の面 で苦 労 されたのはどのような点 ですか
4 民 間 出 身 校 長 について
( 1) これまでの民 間 出 身 校 長 への行 政 による支 援 の在 り方 (受 け入 れ態 勢 ・ 研 修 ・ そ の後 の
フォローなど)についてどのようにお考 えですか
(2)今 後 、民 間 出 身 校 長 の力 をどのように活 用 すべきだとお考 えですか
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5 教 育 委 員 会 について
(1)教 育 委 員 会 は学 校 に対 してどのような支 援 をすべきだと考 えますか
(2)いまの教 育 委 員 会 の在 り方 はどういう点 に課 題 があると思 いますか
6 その他 、ご意 見 などありましたらご自 由 にご記 入 ください
7 民 間 企 業 等 に勤 務 をされていた間 に、全 社 又 は部 門 のTQM活 動 ( = 総 合 的 品 質 管 理 、 品 質 経
営 、 経 営 品 質 向 上 な ど を 含 む ) の推 進 に携 わった経 験 がありますか
① ある
②ない
③T QM かどうか は分 か らないが 品 質 向 上 に は取 り組 んでいた
☆ アンケート結 果 を基 に、何 人 かの校 長 先 生 に直 接 お話 をおうかがいできればありがたいと考
えております。学 校 をご訪 問 しお話 をうかがうことにご了 解 いただける場 合 には、下 記 に学 校
名 とお名 前 をご記 入 いただけますでしょうか。こちらからご連 絡 するかもしれませんので、その
際 にはどうぞよろしくお願 い申 し上 げます。
学校名
校 長 先 生 のお名 前
お忙しいところ、ご協力どうもありがとうございました
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