(57)【要約】 【課題】 様々な放射性廃棄物に含まれるアクチノイド を

(57)【要約】
【課題】 様々な放射性廃棄物に含まれるアクチノイド
を、アパタイトなどのリン酸を含む化合物を用いること
により処分場内に長期間安定に閉じこめるためのもので
ある。
【解決手段】 ウラン、プルトニウム、ネプツニウムな
どのアクチノイドは、原子力発電所や研究所など原子力
関連施設から発生する様々な放射性廃棄物、例えばRI
廃棄物、研究所廃棄物、TRU廃棄物、高レベル放射性
廃棄物などに含まれる。アクチノイドは全て放射性であ
り、その半減期は極めて長くかつ毒性が強い。アクチノ
イドを放射性廃棄物処分場に安定に閉じこめることは、
放射性廃棄物地層処分の実現のために重要な課題であ
る。そこで、放射性廃棄物処分場において廃棄物を取り
囲んで設置されるベントナイトあるいは土砂などの層に
リン酸を含む化合物を添加することによって、放射性廃
棄物から溶出するアクチノイドを放射性廃棄物処分場内
に長期間安定に閉じこめる。
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特開2003−14892
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【特許請求の範囲】
リン酸化合物を数重量%混合したのち、埋め戻し材ある
【請求項1】 放射性廃棄物処分場において廃棄物を取
いは緩衝材として設置する。
り囲んで設置されるベントナイトあるいは土砂などの層
【0007】リン酸化合物を構成する陽イオンが2価以
にリン酸を含む化合物を添加することによって、放射性
上であれば難溶性であり、難溶性リン酸化合物の代表で
廃棄物から溶出するアクチノイドを放射性廃棄物処分場
あるヒドロキシアパタイト(Ca5 (PO4 )3 OH)は安価な工
内に長期間安定に閉じこめる方法。
業製品として市販されている。リン酸化合物はアクチノ
【発明の詳細な説明】
イドに対する吸着容量が高く、かつ廃棄物処分場周辺で
【0001】
は地下水流が非常に遅いため、リン酸化合物の混合率が
【発明の属する技術分野】本発明は、様々な放射性廃棄
低くても効率よくアクチノイドをリン酸化合物に吸着保
物に含まれるアクチノイドを、アパタイトなどのリン酸
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持させることが可能である。本発明において使用される
リン酸化合物としては、上記ヒドロキシアパタイト以外
を含む化合物を用いることにより処分場内に長期間安定
に閉じこめるためのものである。
に、フッ素アパタイト(Ca5 (PO4 )3 F)、塩素ア
【0002】ウラン、プルトニウム、ネプツニウムなど
パタイト(Ca5 (PO4 )3 Cl)、炭酸アパタイト
のアクチノイドは、原子力発電所や研究所など原子力関
(Ca5 (PO4 ,CO3 OH)3 (F,OH))、リン酸
連施設から発生する様々な放射性廃棄物、例えばRI
三カルシウム(CaHPO4 )、及びそれらと同型のマ
(ラジオアイソトープ)廃棄物、研究所廃棄物、TRU
グネシウム化合物(カルシウムがマグネシウムに置き換
(超ウラン)廃棄物、高レベル放射性廃棄物などに含ま
わったもの)等のリン酸化合物が使用される。
れる。アクチノイドは全て放射性であり、その半減期は
【0008】リン酸化合物はアクチノイドを容易にかつ
極めて良く吸着し、リン酸とアクチノイドの難溶性化合
極めて長くかつ毒性が強い。アクチノイドを放射性廃棄
物処分場に安定に閉じこめることは、放射性廃棄物地層
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物あるいはリン酸錯体を形成する。天然における観察例
処分の実現のために重要な課題である。
では、このようなアクチノイドを保持したリン酸化合物
【0003】
は地層中に数十万年以上安定に存在していたことが知ら
【従来の技術】放射性廃棄物の最終処分には、放射性廃
れている。以上の方法により、放射性廃棄物から溶出し
棄物の発生源、種類等に関わらず共通する方法が検討さ
たアクチノイドを埋め戻し材あるいは緩衝材中に長期間
れている。つまり、放射性廃棄物はセメント・ガラスな
安定に閉じこめることができる。以下、本発明を実施例
どなんらかの形態で固定化され、放射性廃棄物固化体を
に基づいて説明する。
さらにコンクリートや炭素鋼などに封入して地中に処分
【0009】
される。その際、放射性廃棄物固化体と周辺土壌・岩盤
【実施例】図1は、埋め戻し材あるいは緩衝材を模擬し
との間には、ベントナイトと土の混合物層などが設置さ
た粘土(モンモリロナイト)単独とこれににリン酸化合
れる。放射性廃棄物固化体が地下水と接触することによ
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物の一形態であるヒドロキシアパタイトを4%混合した
って放射性核種が溶出する。
試料を調製し、5価のアクチノイドであるネプツニウム
【0004】従来の技術では、地下の還元雰囲気環境に
の吸着させた結果について示す。5価のネプツニウムは
おいてアクチノイドは溶解度が低い化学状態になるこ
アクチノイドの中で土壌等に対する吸着性が最も低く、
と、及び、緩衝材または埋め戻し材中において地下水の
従って地中を最も移動しやすい元素である。リン酸化合
移行速度が低いことによって、アクチノイドの周辺地層
物を混合した試料へのネプツニウム吸着率は粘土単独の
への移行が遅延されるとしている。しかしながら、従来
場合に比べて著しく向上する。
の技術が前提としている化学的環境及び地層の安定性が
【0010】図2は、粘土とアパタイトに吸着したネプ
長期間継続することに対する何らの保証はない。
ツニウムの脱離特性を示す。粘土に吸着したネプツニウ
ムは地下水に含まれるカリウムイオン、カルシウムイオ
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、放射性廃棄
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ンなどによって粘土から脱離する。一方、リン酸化合物
物から溶出したアクチノイドを、放射性廃棄物処分場の
に吸着したネプツニウムは地下水に含まれるイオン成分
化学的環境に依存すること無く、放射性廃棄物処分場内
と接触させても全く脱離されることなくリン酸化合物に
に長期間安定に閉じこめる簡便な方法を提供することで
安定に保持される。
ある。
【0011】この様な違いから、リン酸化合物を混合し
【0006】
た試料における粘土−リン酸化合物間でのネプツニウム
【課題を解決するための手段】放射性廃棄物は地中に処
の分配が判断できる。その結果を図3に示す。粘土にリ
分されることが検討されている。放射性廃棄物を埋設す
ン酸化合物(ヒドロキシアパタイト)を4%混合した試
る際、放射性廃棄物の周囲には埋め戻し材あるいは緩衝
料では、混合した少量のリン酸化合物に大部分のネプツ
材として土壌、粘土、あるいはそれらの混合物が設置さ
ニウムが分配していることがわかる。
れる。本発明においては、この土壌などに予め難溶性の
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【0012】以上の結果は、埋め戻し材あるいは緩衝材
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にリン酸化合物を添加する方法によって、放射性廃棄物
棄物処分の早期実施に大いに貢献できる。
固化体から溶出するアクチノイドを埋め戻し材あるいは
【図面の簡単な説明】
緩衝材中に長期間安定に保持することが可能となること
【図1】 粘土のみの場合のネプツニウムの吸着性、及
を示している。
び粘土とリン酸化合物との混合物の場合のネプツニウム
【0013】
の吸着性を示した図である。
【発明の効果】放射性廃棄物の地層処分は、早急に解決
【図2】 PH約7における粘土とリン酸化合物へのネ
すべき課題であるが、低レベル放射性廃棄物を除いて処
プツニウムの吸着特性を示した図である。
分方法及び処分サイトが未定である。本発明によれば、
【図3】 粘土とリン酸化合物の混合物でのネプツニウ
アクチノイドを廃棄物処分場の化学的環境に依存せず廃
ムの吸着分配特性を示した図である。
棄物処分場内に閉じこめることが可能になり、放射性廃
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【図2】
【図1】
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【図3】
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フロントページの続き
(72)発明者 松本 潤子
茨城県那珂郡東海村白方字白根2番地の4
日本原子力研究所東海研究所内
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