乳清タンパク食品 - So-net

JP 2007-68453 A 2007.3.22
(57)【 要 約 】
【課題】 より強い整腸作用を有する乳清タンパク食品を提供すること。
【解決手段】 乳清タンパクにフラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラクチュロース、マル
トオリゴ糖などの難消化性のオリゴ糖と、ペクチン、グアーガム、サイリウム、ガラクト
マンナン、キシログルカン、ローカストビーンガムなどの水溶性食物繊維を配合する。形
態は顆粒状が好ましい。
【選択図】 なし
(2)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳清タンパクと、オリゴ糖および水溶性食物繊維を含有することを特徴とする乳清タンパ
ク食品。
【請求項2】
形状が顆粒状である請求項1に記載の乳清タンパク食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳清タンパク食品に関し、さらに詳しくはより整腸作用に優れた乳清タンパ
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ク食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトや動物の腸管内には各種の微生物が定着しており、微生物叢を形成していることが
知られている。このような微生物のなかには宿主に対して有害な作用をもたらす悪玉菌と
呼ばれる微生物と、宿主に対して有益な作用をもたらす善玉菌がある。そして、これらの
微生物は共生または括抗関係を保っている。悪玉菌としては、アンモニア、硫化水素、ア
ミン等の有害産物を生産し、これにより肝機能に過剰な負担をかけたり、発癌に関連した
りするもの等が挙げられ、具体的な菌種としては例えばウェルシュ菌等のクロストリジウ
ム、腸球菌、連鎖球菌等が挙げられる。また、善玉菌としてはビフィズス菌、ラクトバチ
20
ルス菌等が挙げられる。
【0003】
腸内微生物叢の改善、すなわち、前記善玉菌の生育が活発で悪玉菌に比べて優勢にする
ことにより、宿主にもたらされる有益な効果として、下痢、便秘を中心とする消化器症状
の改善、免疫賦活を介して、癌予防、感染抵抗等の向上、有害微生物代謝産物及び有害酵
素の抑制等、宿主が健康な生活を維持するために必要な、良好な腸内環境をもたらすこと
につながる各種の効果が挙げられる。
【0004】
一方、乳清タンパクはアミノ酸の構成が人乳に近く栄養価に富み、必須アミノ酸をすべ
て含み、吸収率が非常によく、また、分岐鎖アミノ酸の含有率も高いため、たんぱく質を
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補給するための栄養補助食品として、主にスポーツ選手や運動負荷の高い人向けに商品化
されている。
【0005】
乳清タンパクには原料の生乳に由来する抗体が多量に残存しているものもある。抗体は
ヒトにおいても体内で産生されているが、加齢とともに産生量は減少するため、高齢者の
免疫機能は低下する。また、ストレスや免疫抑制作用を有する医薬品の使用によっても抗
体産生は低下する。
【0006】
乳清タンパク中の抗体には腸内の悪玉菌に特異的に結合する抗体も含まれており、抗体
が悪玉菌と特異的に結合すると、有害菌が腸壁から体内へ侵入することを防ぎ、便と一緒
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に排泄されるので、腸内環境の改善につながる。
【0007】
また、整腸作用を有する食品素材にオリゴ糖と食物繊維が挙げられる。オリゴ糖の中に
は消化酵素では分解されずに大腸まで届くものがある。この大腸まで届くオリゴ糖は、ビ
フィズス菌の栄養源になるため、便秘の改善や腸内環境を整えるのに役立つと考えられる
。また、食物繊維も、大腸まで到達し、ビフィズス菌やその他の善玉菌の栄養源になるほ
か、善玉菌の増殖を妨害する悪玉菌や腸内の有害物質の吸着や排泄をも促進する。
【0008】
本発明者らは乳清タンパクに便臭改善効果があり、オリゴ糖等の難消化性糖類を組み合
わせると、改善効果が大きくなることを見出し、先に提案した(特願2004−3163
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(3)
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31号明細書、0015)。しかし、さらに強い整腸作用を有する食品が望ましく、検討
を続けた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、より強い整腸作用を持つ乳清タンパク食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、乳清タンパクとオリゴ糖および水溶性食物繊維の三者
を、同時に摂取することで、より強い整腸作用が得られることを見出し、本発明に到達し
10
た。
【0011】
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
1)乳清タンパクと、オリゴ糖および水溶性食物繊維を含有することを特徴とする乳清タ
ンパク食品、および
2)形状が顆粒状である前記1)に記載の乳清タンパク食品。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、乳清タンパク自体にも整腸作用は見られるが、オリゴ糖
および水溶性食物繊維を同時に摂取することにより、乳清タンパク、オリゴ糖および食物
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繊維の相乗効果が発揮され、より強い整腸作用を奏する食品を提供することができる。請
求項2記載の発明によると、これに加えて、他の食品に混合して摂取する場合に分散性の
よい乳清タンパク食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において用いる乳清タンパクの原料となる乳は牛、ヤギ、ヒツジ、馬等いずれの
哺乳動物の乳でもよい。また、その乳はワクチン接種を受けた哺乳動物から採取された乳
でも、ワクチン接種を受けていない哺乳動物から採取された乳でもよい。
【0014】
これらの乳由来の乳清タンパクとしては、通常の市販されている牛乳由来のもの、すな
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わち、ホエータンパク濃縮物(WPC)、ホエータンパク単離物(WPI)、脱塩ホエー
粉等が使用できる。生乳からの分離法についても、マイクロフィルタレーション法、クロ
スフローマイクロフィルタレーション法、イオン交換法、その他いずれの方法によるもの
でも使用できる。
【0015】
乳清タンパクには、原料の生乳に由来する抗体が残存しているものもある。このような
乳清タンパクに含まれる抗体も本発明の乳清タンパク食品の整腸効果に寄与する。したが
って、本発明で用いる乳清タンパクには、抗体が0.5質量%以上含まれていることが望
ましい。
【0016】
40
本発明に用いるオリゴ糖は、人体内の消化酵素では難消化の二糖類∼十糖類であり、一
般に食品に使用されるオリゴ糖であればいずれを用いることもできる。これらの例として
、例えば、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)、ラクチュロース、マ
ルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖
、ラフィノース、スタキオース、パラチノースオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ゲンチオオリ
ゴ糖、トレハロース、カップリングシュガー、ペクチンオリゴ糖、アルギン酸オリゴ糖、
グアーガムオリゴ糖、フコースオリゴ糖、シクロデキストリン等を挙げることができる。
【0017】
本発明において、食物繊維とは、人体内の消化酵素では分解されない非消化の炭水化物
で十分子を超える糖類が結合しているものをいい、難消化性糖質とは区別される。食物繊
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(4)
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維は水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維に大別されるが、本発明では水溶性の食物繊維を
用いる。水溶性食物繊維としてはペクチン、グアーガム、サイリウム、ガラクトマンナン
、キシログルカン、ローカストビーンガム、グルコマンナン、ポリデキストロース、可溶
性ヘミセルロース、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、低分子アルギン酸、低
分子グアーガム、ファイバロン等を挙げることができる。また、これらの水溶性食物繊維
を含有する食品素材、例えば、寒天、豆類加工品、いも類加工品等を用いても良い。
【0018】
本発明の乳清タンパク食品は、乳清タンパク100質量部に対して、オリゴ糖を5∼1
000質量部、水溶性食物繊維を5∼1000質量部含有することが好ましい。オリゴ糖
、水溶性食物繊維の含有量が5質量部未満では整腸効果が不十分である。一方、1000
10
質量部を超えると、乳清タンパクの含量が低くなってしまい、乳清タンパクを摂取する目
的が達成されにくくなる。
【0019】
また、本発明の乳清タンパク食品の形状を顆粒状とすると、他の食品、特に、水分含量
の多い食品と混合して摂取しようとするとき、乳清タンパク食品の分散性を向上させるこ
とができ、他の食品との混合が容易となる。乳清タンパクは水分散性が悪く、本発明にお
いては、オリゴ糖および食物繊維を含有するため、乳清タンパク単独よりいくらか分散性
は改良される。しかし、顆粒状にして牛乳やヨーグルト等の他の食品に添加すると、分散
性がさらに改善され、「ままこ」にならず、容易に混合することのできるものとなる。
【0020】
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前記オリゴ糖は、顆粒化に際してのバインダーになると考えられるが、バインダーとし
て、さらに、CMC(カルボキシメチルセルロース)や糖質等を添加してもよい。また、
顆粒化は噴霧造粒法、押出し造粒法等の通常の方法で行うことができる。顆粒の大きさに
も制限はないが、平均粒径0.02∼2mm程度とすることが好ましい。
【0021】
本乳清タンパク食品には、甘味料、酸味料、香料、増粘多糖類等の通常、食品に添加さ
れる原料を含有することもできる。
【0022】
本発明の乳清タンパク食品の形態は限定されない。例えば、前述した顆粒の他、錠剤、
キャンディー、粉末、カプセル剤でも良いし、ペースト状、液状でも良い。乳清タンパク
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添加後に抗体が失活するような加熱加工工程がなければ、いずれの加工食品の形態をとる
こともできる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定される
ものではない。
【0024】
[実施例1、比較例1、2]
下記表1に示す配合(数値は質量比)で3種類の乳清タンパク食品を作製した。表1中
、Proliant(登録商標) 8000は乳清タンパク(WPC,James Fa
40
r r e l l & C o .製 ) 、 メ イ オ リ ゴ ( 登 録 商 標 ) P は フ ラ ク ト オ リ ゴ 糖 ( 明 治 製 菓 ( 株
)製)である。
【0025】
(表1)
実施例1 比較例1 比較例2 Proliant8000 90 90 90
メ イ オ リ ゴ P 5 10 ペ ク チ ン 5 - 10 【0026】
(ビフィズス菌、ウェルシュ菌の測定法)
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(5)
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ビフィズス菌数の測定:BL寒天培地「ニッスイ」(日水製薬(株))を滅菌後、50℃
まで冷却し、BS培地用添加液(プロピオン酸ナトリウム30%、塩化リチウム6%、硫
酸パロモマイシン0.1%、硫酸ネオマイシン0.1%)を5%、ウマ脱繊維血液を5%
添加し、シャーレに分注して、平板とする。希釈した試料をコンラージ棒で塗布し、37
℃、20時間嫌気培養を行い、算定した。
【0027】
ウェルシュ菌数の測定:カナマイシン含有CW寒天基礎培地「ニッスイ」(日水製薬(株
))を滅菌し、シャーレに分注して、平板とする。希釈した試料をコンラージ棒で塗布し
、37℃、20時間嫌気培養を行い、算定した。
【0028】
10
被験者3名に、実施例1、比較例1、比較例2の粉末を表2に示したような順序で2週
間ずつ(計6週間)、それぞれ1日10gを100mlの水に懸濁させ、毎朝食後に飲用
してもらった。各2週間のうち、後半の1週間について糞便を採取した。なお、試験開始
前の1週間も糞便を採取した。これらの糞便中のビフィズス菌数、ウェルシュ菌数を上記
の方法で測定し、各試験区の値を平均した。これらの測定結果を図1のグラフに示す。
【0029】
(表2)
飲用順序 被験者A 実施例1→比較例1→比較例2
被験者B 比較例1→比較例2→実施例2
20
被験者C 比較例2→実施例1→比較例1 【0030】
図1に示すとおり、善玉菌であるビフィズス菌は、試験開始前に比べ比較例1、比較例2
の乳清タンパク食品を摂取するとやや増加したが、実施例1のものを摂取することで大き
く増加した。一方、悪玉菌であるウェルシュ菌は試験開始前に比べ比較例1、比較例2の
食品を摂取すると減少し、実施例1のものを摂取するとさらに減少した。
【0031】
これらのことから、実施例1に示す乳清タンパク食品を摂取することにより、比較例1
、比較例2のものよりも腸内環境が大きく改善されることが示された。
【0032】
30
[実施例2](整腸作用の検討1)
被験者として、男女15名(21∼30歳:9名、31∼40歳:3名、41∼60歳
:3名)を3つの群(各群5名)に分け、それぞれ実施例1、比較例1、2の乳清タンパ
ク食品の粉末を1日10g、100mlの水に懸濁させ、毎朝食後に飲用してもらった。
2週間継続飲用してもらい、継続飲用中の後半の1週間について排便に関するアンケート
調査を行った。なお、継続飲用前の1週間についても同様のアンケート調査を行っている
。調査項目は(1)排便回数、(2)排便量、(3)糞便色調、(4)糞便臭気とし、結
果(各群の平均値±標準偏差)を表3に示した。
【0033】
(1)排便回数では、比較例1、比較例2の乳清タンパク食品の粉末を飲用することによ
40
り回数が増える傾向が見られたが、実施例1のものを飲用すると、有意に増加した。(2
)排便量は比較例1、比較例2、実施例1の食品とも飲用することによる大きな差は見ら
れなかった。(3)糞便色調は比較例1、比較例2の食品を飲用することにより色調が良
好になる傾向が見られたが、実施例1のものを飲用すると、明らかに色調が改善された。
(4)糞便臭気は比較例1、比較例2で改善されたが、実施例1ではさらに大きく改善さ
れていた。
【0034】
(1)∼(4)をまとめると、比較例1、比較例2の乳清タンパク食品でも若干の整腸作
用は見られるが、実施例1の乳清タンパク食品を飲用することにより、明らかに整腸作用
が見られ、抗体とオリゴ糖と食物繊維の三者を同時に摂取することの優位性が示された。
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【0035】
表3中、各数値は下記を意味する。
(3)糞便色調;0:黄色、1:薄い黄土色、2:黄土色、3:茶色、4:こげ茶色、
(4)糞便臭気;0:ほとんど気にならない、1:わずかに臭い、2:普通、3:臭い、
4:ひどく臭い
【0036】
(表3)
継続飲用前 継続飲用中 ( 1 ) 排 便 回 数 / 週 比 較 例 1 5.7± 0.8 6.1± 0.6
比 較 例 2 5.5± 0.8 5.9± 0.7
10
実 施 例 1 5.8± 0.8 6.8± 0.6 ( 2 ) 排 便 量 / 週 比 較 例 1 28.7± 10.6 30.6± 10.7
比 較 例 2 29.3± 10.5 29.8± 10.7
実 施 例 1 29.6± 10.8 30.9± 10.6
( 3 ) 糞 便 色 調 比 較 例 1 3.5± 0.8 2.8± 0.6
比 較 例 2 3.7± 0.8 3.0± 0.7
実 施 例 1 3.6± 0.8 1.5± 0.5
( 4 ) 糞 便 臭 気 比 較 例 1 2.8± 0.6 1.5± 0.4
比 較 例 2 2.6± 0.6 1.6± 0.5
実 施 例 1 2.7± 0.6 0.4± 0.3 20
【0037】
[実施例3](整腸作用の検討2)
実施例1、比較例1のメイオリゴPをラクチュロースに置き換えた乳清タンパク食品を
作製し、実施例2と同様の試験を行ったところ、実施例2と同様の結果が得られ、抗体と
オリゴ糖と食物繊維の三者を同時に摂取することの優位性が示された。
【0038】
[実施例4](整腸作用の検討3)
実施例1、比較例1のメイオリゴPをトレハロースに置き換えた乳清タンパク食品を作
製し、実施例2と同様の試験を行ったところ、実施例2と同様の結果が得られ、抗体とオ
リゴ糖と食物繊維の三者を同時に摂取することの優位性が示された。
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【0039】
[実施例5](整腸作用の検討4)
実施例1、比較例2のペクチンをアルギン酸ナトリウムに置き換えた乳清タンパク食品
を作製し、実施例2と同様の試験を行ったところ、実施例2と同様の結果が得られ、抗体
とオリゴ糖と食物繊維の三者を同時に摂取することの優位性が示された。
【0040】
[実施例6](整腸作用の検討5)
実施例1、比較例2のペクチンをグルコマンナンに置き換えた乳清タンパク食品を作製
し、実施例2と同様の試験を行ったところ、実施例2と同様の結果が得られ、抗体とオリ
ゴ糖と食物繊維の三者を同時に摂取することの優位性が示された。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1、比較例1,2で測定した糞便中のビフィズス菌数およびウエルシュ菌
数を示すグラフである。
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(7)
【図1】
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