<道徳の授業> 主題名: 生命の尊重 大津市立仰木中学校 指導者名 ねらい 第3学年 生徒数34人 教諭 中西 浩一 他人や自分の命の大切さについ て考えさせる。 資料等 ・相田みつをの詩 ・自分の子供を殺害された御手洗 恭二さんの手記 準備物 ・植木鉢に入った花 ・相田みつをの詩の拡大コピー ・相田みつをの詩・ワークシート 次 に 発問した 。「相田みつをさんは 、『根は みえねんだなあ』と書いています。きれいに 咲いている花が自分だとしたら、根にあたる ものは何でしょうか 。」 生徒は以下のような色々な答えをあげた。 自 分 を 支 え て く れ る 人 ( 大 多 数 )、 自 分 の 周 り の 人 々 ( 多 数 )、今までの努力(多数 )、 地 球 ( 多 数 )、 金 ( 2 人 )、怒ってくれた親や 一緒に笑った友達、今までで乗りこえてきた いろんなこと、足、人生の中でかかわる人、 空気、自分の心、家族、親、脇役、サポータ ー、命、夢、心臓、大事なトコ、命の恩人、 家族、友達。 相田みつをの詩「いのちのバトン」を読ん だ。 授 業 の 実 際 まず、植木鉢に入った花を教卓において発 問 し た 。「 花 ・ 茎 ・ 根 の う ち 、 ど れ が 一 番 好 き で す か 。 ま た な ぜ そ う 思 っ た の で す か 。」 挙手をさせ 、何人の生徒がどれを選んだのか 、 また 、誰がどの答えを選んだのかを把握した 。 多くの生徒は花が好きだという答えを選ん だ。理由はきれいだからや目立つからなどだ っ た 。 数 人 が 根 を 選 び 、「 縁 の 下 の 力 持 ち の ようだから」といった理由を挙げた。茎を選 んだのは一人だけだった。 資料1「相田みつをの詩」の拡大コピーを 黒板に掲示して読んだ。 資料1 花を支える枝 枝を支える幹 根は だなあ。 ここでワークシートを配布し、詩を一行ず つ視写させた。全員が写した後 、「最後の 『根 だ な あ 。』 には何が入るはと思いますか。自分がいいと 思う言葉をワークシートに書き込みなさい 。」 と指示した。 全員起立させ、前列の生徒から順番に書い た言葉を言って座らせた。同じ言葉を入れた 生徒も着席していき黒板に全員の言葉を書き 上 げた。 最後に長崎佐世保の事件で子を失った御手 洗恭二さんの手記を読んだ。 今日の学習で考えたこと、思ったことをワ ークシートに書く時間をとった。ここでは色 々な家庭環境の生徒がいるので指名しなかっ た。また、道徳の授業の生徒の感想を学級通 信で紹介しているが、今回は自分の感想を通 信に載せて欲しくない人はそのことも感想の 最後に書いておくようにと指示した。 最 後 に 担 任 が命 に つ い て の 思 い を 話 し た 。 生徒がこの学習をして思ったことや考えた ことは以下のようであった。一部紹介する。 ・みつをさんの詩はとってもいいと思いまし た。カッターナイフの事件でお父さんの手記 みたいなのはとてもかわいそうだと思った。 家族だけじゃなく、友達とか知ってる人が死 ぬのはとっても悲しいことやと思った。 ・人は、みんな支えて支えられているんだと 思った。一人の人が死ぬだけで、たくさんの 人が悲しむと思った。 ・自分はやっぱりたくさんの人たちから支え られてるんだなあと「みつをさんの詩」を聞 き見てわかった。詩はとても短い文なのにこ んなにたくさんの感情がこめられているのが スゴイと思う。やっぱり人生はバラ色だな。 ・自分はいろんな人に支えられてんにゃなあ …と思った 。だ け ど 、それに気づいてへんと 、 毎日だらっと過ごしてる…。もう少しありが たみを感じなアカンと思った。 ・自分一人では生きていれないことがわかっ た。みんなの力で自分が生きているんだなあ と思った。 ・自分を支えてくれる人に感謝しなきゃと思 った。 ・長く続いてきたいのちのバトンを自分でと ぎらせないようにしたい。自分のことだけじ ゃなく人の命もとぎらせていけないと思っ た。自分のせいで人の命を終わらせてしまう ようなことがないように、自分の行動に気を つけ、命にもっと関心をもち、大切にしてい きたい。 ・自分一人では生きれへんなあと思う。いろ んな人に支えられてうれしいなあと思った。 命を大切にしんとなっ。 ・みつをさんが好きやったので良かったで す。小6の事件は残念やったけど、早く立ち 直って欲しい。あと周りの人がとても大事に 思った。やっぱみつをさんの詩はすごいと思 います。1つ1つが考えさせられる詩で。 ・この学習で、あらためて自分の周りには自 分を支えてくれる人がいるんだと思った。ま たその人を亡くした時の悲しさも新聞の学習 でわかった。私は自分のことを支えてくれて いる人を大切にしたいし、自分もだれかの支 えになりたいと思う。 ・人間も植物もみんな支えてられるんだなあ って思った。 ・何か支えが合ってこそ一人の人や一つの物 が成り立っているんだなと思った。 ・要するに、一番下がないと何も始まらない と い う こ と が よ く わ か っ た 。( 僕 が 「 三 」 で 「金」としたのは僕→食べ物→金となるから である。金がないと何もできないし、特に食 べ物に困ると僕は間違いなく死ぬだろうとい う考えからである 。) ・支えてくれる人がいるうれしさがこの授業 を受けてわかった。 ・見えない所でも力を発揮する根もいいと思 った。 ・周りの人が自分を支えてくれていることが あると思った。でもこれからは自分が他の人 を支えられるようになれたらいいと思った。 ・十代前は千二十四人で二十代前では百万人 を超すんなんて知らなかった。 ・長崎の事件はとてもかわいそうだと思う。 将来日本は犯罪大国になりそうでこわい。 授 業 を 終 え て 生徒の感想から、ある程度はねらいのよう に命の大切さについて考えさせることができ たということがわかった。また、自分を支え てくれる家族や友達や地球といった存在につ いてや、子を失った親の手記からは家族を失 った人の悲しさについて考えさせることがで きた。しかし、前半の「自分が花なら根は何 か」という問いに対して、予想していた答え とはかなり違う幅広い答えが出てきた。努力 や今一生懸命に生きることの大切さについて 考えた生徒がいた。根が努力で、花は努力の 成果が花開いた様子だと考えたのだと思われ る。しかし、そのあとの生徒の意見交流、詩 「いのちのバトン」や御手洗恭二さんの手記 によってそれらの生徒にもねらいとなる命の 大切さに視点を向けさせ考えさせることがで きた。 今回の授業では、長崎佐世保で小学生の娘 を殺害された父親の手記を加えた。自分自身 がその手記により、子を亡くした親の深い悲 しみを感じたからである。相田みつをの1つ め の 詩 で は 、「 自 分 を 支 え て く れ て い る 周 り の 人 や 物 へ の 感 謝 」、2つめの詩では 、「命の つながり 」、 御 手 洗 さ ん の 手 記 で は 、「子を思 う親の気持ち」に焦点が当てられている。3 種類のことを取り上げた。どれも「命」でつ ながっているが、他の教材を付け加えて2時 間の道徳にするという方法も考えられた。全 国的に凶悪事件や他者を思いやらない事件が 多 発 し て お り 、「 命 の 大 切 さ 」 を 訴 え る こ と の重要性が叫ばれていいる。他の動物の命を 頂いて生きていること、生命の誕生、お年寄 り・幼い子・障害者について、いじめや他者 を傷つけること、思いやり、誰かの人生等、 多くの内容で「命の大切さ」と結びつけ学習 させることができる 。「 自分と他者の大切さ 」 を考えさせたい。 また、この3年生の1学期には、総合的な 学習で、救命講習や性教育、防犯教育といっ た「生命の学習」を行っていたので、その学 習ともつながりが持てたことが良かった。
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