John-Fullerton_guard..

トービン税が回復することができる市場において高頻度取引は
障害である
High-frequency trading is a blight on markets that the Tobin tax can
cure
金融取引に対する課税はコンピューターを駆使したアルゴリズムが煽る投機の熱狂を鎮めること
ができる。
ジョン・フラートン(John Fullerton)
2014 年 4 月 4 日
今週、金融市場におけるアルゴリズム取引の世界の影の部分に焦点が当てられた。第一はマイケ
ル・ルイスの爆発的な新しい本「フラッシュボーイズ:お金の暗号を解読する」の発表でそれはニ
ューヨークやロンドン証券取引所のすべての取引の半分を占める業界での多くのやっかいな慣行
に焦点を当てている。第二はその業界の不正行為に犯罪捜査を開始するという 4 月 2 日の FBI の宣
言であった。
JP モルガンでの 18 年間とそれ以来 10 年以上の間、私は技術の進歩による市場の容赦のない変化
を観察しまた参加してきた。資本の調達や資金の効率的分配やリスクの軽減といったその基本的な
役割は熱狂的投機の不協和音によりゆっくりと、しかし確実にかき消されてきた。
資本市場はもはや実体経済の資本分配需要に奉仕する手段ではなく、それ自身が目的となってしま
っている。その目的とは投機という「仕事」で、それはバランスに欠けているので実体経済にとっ
ては不健康なものである。
最初に設計され利用されたように、デリバティブ契約は等しく借り手、投資家、そして仲介者の利
益のために国内資本市場を、もっと効率的で相互に連携している世界市場に連絡した。
それらはまた、たとえばあるトラック運送会社がその操業費用を予測可能にすることを保証するた
めに石油ヘッジを買うというような真にリスク管理の目的で使われた。しかしそれらは攻撃的で規
模の大きな投機家の選択ツールとなってしまった。
高頻度取引として知られるアルゴリズム取引の向上ほど金融により大きな影響をあたえた技術は
どこにもない。最初はコンピューターを駆使したアルゴリズムは人間のトレーダーの効率性、流動
性を高め、それによって売買のコストを削減した。
時間が経過するにつれ、これらの同じ量的取引戦略はそれ自身、性質上ときに略奪的性質をもつ非
常に投機的な所有権取引の中心となった。その優勢はすでに 2010 年 5 月のときのような数分間で
ダウ平均が 9%の下落し、会社の価値を数十億も吹き飛ばした「フラッシュ・クラッシュ」につな
がった。
アルゴリズムを駆使した取引は多くの適法な応用がある一方で、高頻度取引は最悪の場合注文の流
れに対する体系的な先回り売買である。我々はこの取引を窃盗と呼んでいる。FBI が捜査していて
も全然不思議ではないものである。
システム科学者はどんな所与のシステムにおいても、システムの効率性(高スループットに帰着す
る)とシステムの弾力性(ショックに耐える能力に帰着する)のバランスをとる必要性を理解してい
る。
けれども金融市場の場合には、速度や看取される効率性を優遇するので、バランスは崩れ市場を非
常に脆く、より崩壊しやすいものにする。
高度の金融レバレッジはこれの原因となり、2008 年の金融危機やそれ以来起こり継続してきた多
くの小規模な崩壊のような出来事に対して市場をもろいものとする。
取引量を増加させることは市場が反応しショックを吸収することを助けるのでいいことであると
いう反論がある。しかしこの論は取引量と流動性を混同している。
投機者はアルゴリズムをやめ、(偽の)流動性を市場から引き揚げるので取引量は危機の時には消え
てなくなる。それはほとんど蜃気楼のようなものである。このことは実際の資金の投資家が防御に
まわって撤退したり、ときにはパニックに陥って逃避する際に急落させる効果を引き起こしうる。
もっとも必要な時に突如として市場は真の流動性が全くなくなる。
このことがなぜ私がちょうど今表題となっている政策、つまり 0.01%から 0.1%の間で提案された
株式や債券やデリバティブ取引に課税する金融取引税を実行する 11 か国の欧州諸国の取組に調和
した金融取引税やトービン税の支持者であるかということである。
高頻度取引の最悪な部分のような短期的投機に税は不釣合いな率で課税され、おそらく新しい規制
の複雑な部分よりもはるかにもっと効果的にそれを根絶する。
ジェームズ・トービンが 40 年前に金融取引税を提案したときに言ったように、税の影響がとるに
足らないものである長期的な真の投資戦略に転換することを奨励しながら、それは国際取引市場の
「車輪に砂を投げる」ことになるだろう。
もし金融取引税が真に問題となる実体経済の長期的な効率性にとってたいへん有害な市場の脆弱
性と深化する将来の危機の両方のリスクをわずかでさえ削減するという転換の原因となるならば、
それは値打ちのあるものになっているだろう。
もしその過程で、金融取引税が何人かの「ロケット科学者」にその創造的能力を投機よりも社会に
とってもっと生産的な目的に応用することを奨励するならば、さらに良いことだろう。そうして私
たちは増加する数百億にのぼる収入の良い使い方を確実に見つけることができる。
金融取引税を実行する 11 の欧州諸国は前例を設定するということにはならないだろう。香港やシ
ンガポール、南アメリカ、インドやスイスのような奥深く、急速に成長している市場をもついくつ
かの国を含め様々な国が毎年数十億の歳入を政府にもたらす金融取引税を持っている。
欧州金融取引税に反対しつづけている世界の二つの最大の金融センターのアメリカとイギリスは、
それを認めたことを決して聞くことがないが、すでに自国の金融取引税をもっている。
既存の良く機能している取引税がもたらす実体経済あるいは資本市場でさえの問題についての言
葉はほとんどない。なぜなら、それらは事実上目に見えないものであり、継ぎ目なく取引制度や投
資慣行の中に組み込まれているからだ。しかしながら、それらはすべての取引手段に公平に適用す
る必要がある。
元銀行家として、私は金融取引税が一部の人々が望むようにウォールストリートのすべての不正に
取り組む奇跡の解決法ではないということを十分に認識している。テディー・ルーズベルトが理解
していた構造的改革だけがそれを達成することができる。
しかし、痛烈な投機に苦しめられている金融業界のより広域な経済への否定的影響と戦うことを援
助するのは実績のある資金調達者とレーザーのように鋭い政策的介入である。
ジョン・メイナード・ケインズは彼自身投機家であったが、おそらくそれを最もよく言及している:
「投機家は,企業の着実な流れに浮かぶ泡沫としてならば,なんの害も与えないであろう。しかし,
企業が投機の渦巻のなかの泡沫となると,事態は重大である。一国の資本発展が賭博場の活動の副
産物となった場合には,仕事はうまくいきそうにない」
危機にあるとき我々の無視しがちな教訓である。
*原文:
http://www.theguardian.com/business/economics-blog/2014/apr/04/high-frequency-trading-m
arkets-tobin-tax-financial-transactions-algorithms
(翻訳: 深谷哲久)